JP3549107B2 - 暗所観察装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物に影響を与えない暗所で、精密作業を行うことができる植物の暗所観察装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物は一般的に光を受けて光合成を行う。図7は、葉による光合成の作用スペクトルである。この図に示すように光合成に用いられる光は約350nm(紫外)から約730nm(近赤外)である。また、植物は、フィトクロムと呼ばれる色素蛋白の一種を有し、環境から受けた光情報に応答して、発生・分化など巨視的過程から遺伝子発現や膜機能の微視的過程にいたるまで広く調節を行うことが知られている。このフィトクロムの一種は、例えば約300nm〜約780nmの光照射により効果が顕れる。更に、約250nm〜約350nmの紫外光によっても、植物は影響を受けることが報告されている。
【0003】
光の植物に与える影響を解明するためには、植物に影響を与える光を遮断した環境を人為的に作りだし、通常の環境化での成長と比較する必要がある。例えば、光に応答した根毛分化の促進機構を調べ、それに関する突然変異体をスクリーニングするような場合、植物に影響する波長の光パルスを与え、植物に影響を与えない暗所でこれを経過観察する。
また、植物の各組織・器官の光に応答した遺伝子発現の変化を研究するためには、暗所で材料の収穫や必要な組織の切断と固定を行う必要がある。この場合、植物に影響を与えない暗所で、非常に小さい植物の根を多数切り取って固定液中で固定し、これからRNAを単離・分析して遺伝子発現機構を解明することが行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、植物に影響を与えない安全光として緑色光を用い、その照射下でこのような作業を行ってきた。しかし、上述したように、植物がごく微量の可視光〜近赤外光を感知して遺伝子発現の変化を起こすことが近年明らかとなっている。そのため、従来の安全光(緑色光)は、その影響が回避できない問題点があった。
また、その影響を回避するため、作業者自身が装着して用いる赤外線暗視スコープが一部で提案されているが、赤外線暗視スコープは、視角が狭く、かつ至近距離の焦点があわない問題点があり、特に細かい作業ができなかった。また、この赤外線暗視スコープは、高価で作業能率が悪く、かつ装着面から光が漏れて材料に影響を与えるおそれもあった。
【0005】
一方、暗箱中でカメラ内のフィルムを取り出すために、図8に示すような暗箱用明視装置(特開平10−83060号)が提案されている。この装置は、暗箱1内を赤外照明器2で照明し、CCDカメラ3で撮影した画像をモニター7に表示し、腕挿入口6から手を入れ、モニターを見ながらカメラ5の中のフィルムを取り出すものである。なお、この図で、4は出入口、8は扉、9はモニター支え台である。
【0006】
しかし、植物の暗所観察の場合、上述した従来の手段には以下の問題点があった。
(1)暗箱用明視装置では、CCDカメラ3が暗箱の上部にあり、モニター7が箱の後方のモニター支え台9の上にあるので、CCDカメラとモニターの向きを一致させることができない。そのため、明視する対象物(この場合カメラ5)とモニター上の画像との上下が不一致となり、手探りによるような簡単な作業しかできない。すなわち、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業を行うことができなかった。
(2)また、植物に影響を与えない暗所で、精密作業を行うためには、全体を表示すると共に、微細な対象部分も必要に応じて自由に拡大表示できる必要がある。
(3)更に精密作業のため両手を内部に挿入した姿勢のまま、各機器の操作を行う必要がある。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の主目的は、植物に影響を与えない暗所で、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業を行うことができる暗所観察装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、植物に影響を与えない暗所で、特定の光の影響を観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる暗所観察装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、外光の侵入を完全に遮蔽しかつ内部に手を入れて作業可能なグローブ(12a)を有する暗箱(12)と、該暗箱内に配置され植物に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明する赤外光源(14)と、暗箱内の植物を撮影する赤外用CCDカメラ(16)と、暗箱の外部に配置され前記CCDカメラで撮影した画像を表示するモニター(18)とを備え、前記CCDカメラ(16)の向きとモニター(18)の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ(12a)から手を入れた作業者の視線上にほぼ位置する、ことを特徴とする暗所観察装置が提供される。
【0009】
上記本発明の構成によれば、CCDカメラ(16)の向きとモニター(18)の背面の向きがほぼ一致し、かつそれらがグローブ(12a)から手を入れた作業者の視線上にほぼ位置するので、対象物(微細な植物)とモニター上の画像との上下が一致し、かつモニター上の画像をあたかも実際の対象物を直視している感覚で扱うことができる。従って、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業であっても、誤動作を起こすことなく確実に行うことができる。
また、植物に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明するので、照明・撮影時間が長時間に及ぶ場合でも、実質的に完全な暗所で育成したと同一の効果を得ることができる。
更に、この暗箱内に特定の光を照射することにより、その影響を観察し、かつその突然変異体をスクリーニングすることが容易にできる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記CCDカメラ(16)は、撮影倍率が異なる複数のカメラからなり、かつ前記モニター(18)は、複数のカメラの画像を同時に表示する。
同一のモニター上に倍率の異なる複数の画像を同時に表示することにより、作業者の視線上に複数の画像をほぼ位置することができ、精密作業のため両手を内部に挿入した姿勢のまま、必要に応じて見る画像を変えるだけで、全体と細部を随時観察することができる。
【0011】
前記赤外光源(14)の波長は、植物に影響を与えない約780nm以上であり、かつ赤外用CCDカメラ(16)で撮影可能な約1300nm以下である。
かかる波長の光源を用いることにより、植物に影響を与えずに暗所内の植物を観察することができる。
【0012】
前記赤外光源(14)は、水蒸気の吸収波長と一致しない波長約1060nm又は約1200nmのLED又はレーザー光であるのがよい。
かかるLED又はレーザー光を光源として用いることにより、植物自体またはその周囲の水分の昇温を回避し、植物への影響を更に低減することができる。
【0013】
また、前記赤外用CCDカメラ(16)の画像を経時的に録画する録画装置(21)と、録画された画像を解析する画像解析装置(22)を備えるのがよい。
この構成により、録画した画像の解析から、植物の各器官や組織の成長速度等を定量的に解析することが可能となる。
【0014】
更に、暗箱内の植物を録画と連動させて昇降させるラボジャッキ(23)を備え、植物の一部の拡大像を高倍率で連続して撮影し全体像を再構築するのがよい。
この構成により、上下に伸びる試料(例えば植物の根)を高倍率で観察しながら全体像を高精度に再構築することができる。
【0015】
また、植物に影響を与える特定波長の光を暗箱内の植物に一時的に又は継続して照射する光照射装置(24)を備える、ことが好ましい。
かかる光照射装置(24)により、例えば特定の波長の可視光(青色光、赤色光、近赤外光)をLED又は光ファイバ等で照射して、特定の光の影響を暗所で直接観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明による暗所観察装置の第1実施形態を示す正面図であり、図2は、図1のA−A線における断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の暗所観察装置10は、暗箱12、赤外光源14、赤外用CCDカメラ16及びモニター18を備える。
【0018】
暗箱12は、外光の侵入を完全に遮蔽しかつ内部に手を入れて作業可能なグローブ12aを有する。この例において、暗箱12は、幅及び奥行きが約400mm、高さが約350mmの矩形の箱であり、その側面の2ヶ所にグローブ12aが取付けられ、このグローブ12aから内部に両手を挿入して、外光の侵入(光漏れ)を防止しながら内部の対象物11(例えば植物の根)を両手で操作できるようになっている。また、暗箱12の上面又は任意の箇所に開閉扉(図示せず)を有し、内部へ計測機器や試料を搬入できるようになっている。
【0019】
赤外光源14は、暗箱内に配置され植物11に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明する。植物11に影響を与える波長は、上述したように、約250nm〜約780nmの紫外光、可視光、近赤外光である。従って、植物に影響を与えない波長として、少なくとも約780nm以上、好ましくは約800nm以上の赤外光を用いるのがよい。
【0020】
赤外用CCDカメラ16は、赤外光源14で照明された暗箱内の植物11を撮影する。従って、赤外用CCDカメラ16は、使用する赤外光源14の波長に対応した感度分布を有する必要がある。
【0021】
図3は、本発明を構成する赤外光源14の発光スペクトル特性の例である。この図において、(A)は発光波長950nmのLEDの例であり、約950nmをピークとし、約870nmから約1050nmの赤外光を発光する。また、(B)は発光波長1200nmのLEDの例であり、約1200nmをピークとし、約1000nmから約1300nmの赤外光を発光する。従って、これらのLEDを赤外光源14として用いることができる。また、例えば約980nm、約1060nmのレーザー光も赤外光源14として用いることができる。
【0022】
図4は、本発明を構成する赤外用CCDカメラの感度分布例である。この例において、CCDカメラの感度範囲は、約400nm〜約1300nmの範囲である。従ってこの赤外用CCDカメラを用いる場合、約1300nmを超える赤外光源は使用できない。従って、赤外光源14の波長は、植物に影響を与えない約780nm以上であり、かつ赤外用CCDカメラ16で撮影可能な約1300nm以下である必要がある。
なお、この要件は、本質的ではなく、約1300nmを超える範囲で高い感度特性を有するCCDカメラと赤外光源を用いてもよい。
【0023】
図5は、水蒸気により吸収される波長を示す図である。この図から、波長約780nm〜約1300nmの範囲において、約950nmと約1150nmにおいて水蒸気による吸収が大きいことがわかる。
従って、赤外光の照射により植物自体への直接的な影響はないが、植物自体またはその周囲の水分の昇温を回避するために、赤外光源14は、水蒸気の吸収波長と一致しない波長、例えば約1060nm又は約1200nmのLED又はレーザー光であることが特に望ましい。
なお水温の影響が少ない場合には、発光波長950nmのLEDを用いてもよい。
【0024】
図1及び図2において、モニター18は、暗箱12の外部に配置され、CCDカメラ16で撮影した画像を表示するようになっている。
【0025】
CCDカメラ16は、この例では、低倍率正面カメラ16a、高倍率正面カメラ16b、魚眼平面カメラ16c及び図示しない側面カメラからなる。このうち、低倍率正面カメラ16aと高倍率正面カメラ16bは、グローブ12aから手(この場合両手)を入れた作業者の試料11を見るための視線上に同一の向きでほぼ位置している。
低倍率正面カメラ16aは、暗室内の試料11(植物)の正面全体を撮影するように倍率の低いレンズを備えたCCDカメラである。高倍率正面カメラ16bは、試料11(植物)の正面の一部を拡大撮影するように倍率の高いレンズを有する。魚眼平面カメラ16cは、試料を含む暗箱内全体を上面から撮影するように広角又は魚眼のレンズを有する。側面カメラは、例えば低倍率のレンズを備え、正面から把握しにくい視覚領域を撮影するように配置される。
【0026】
なお、CCDカメラ16は、この組合せに限定されず、例えば正面カメラ16a,16bの一方又は両方をズームレンズにしてもよい。また、この例では、低倍率正面カメラ16aを視線上のわずかに上側、高倍率正面カメラ16bをわずかに下側に配置しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、上下を逆にし、或いは左右に配置してもよい。
【0027】
CCDカメラ16(この例では16aと16b)の向きとモニター18の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ12aから手を入れた作業者の視線上にほぼ位置して配置される。すなわちグローブ12aから手を入れた作業者が暗箱12内の試料11を見る方向に、モニター18、CCDカメラ16、試料11の順でほぼ並ぶように配置されている。
また、この例で、モニター18は、4つのカメラの画像を同時に表示するように、4分割されたディスプレイ面18a,18b,18c,18dを有する。各ディスプレイ面には、それぞれ低倍率正面カメラ16a、高倍率正面カメラ16b、魚眼平面カメラ16c及び図示しない側面カメラの画像が表示され、精密作業のため両手を内部に挿入した姿勢のまま、必要に応じて見る画像を変えるだけで、全体と細部を随時観察することができるようになっている。
【0028】
上述したように、本発明の暗所観察装置は、低倍率正面カメラ16aと高倍率正面カメラ16bを備えて実体顕微鏡としての機能も併せもっている。すなわち、倍率の異なる2つのCCDカメラ16aと16bを正面に設けたことにより、両手が暗箱12の中で作業している状態、例えば片手で試料を持ち、片手でハサミを持っている状態で、倍率を変える操作をすることなく、微細な試料を扱うことができる。なお、ズームレンズのついた1台のCCDカメラを内部で或いは足で操作して代用することも可能である。
【0029】
また、作業者の視線に配置した2台のCCDカメラは角度が固定されているため、暗箱内に死角が生じるが、4分割モニタで別の角度からの映像を含む複数(3〜4台)のCCDカメラの映像を同時に見ることができるため、死角の影響をなくすことができる。
なお、モニタ18は、分割型の液晶モニタを暗箱12の手前に配置するようにしたが、作業者の視線上にほぼ位置し、かつ作業者が無理のない姿勢で映像を見ることができる範囲であれば、これに限定されない。例えば、分割モニタの替わりに複数のモニタを用いたい場合には、上述の範囲内で暗箱12の上部に配置してもよい。
【0030】
更に、カメラが作業者の視線上にあり、かつ作業の邪魔にならない位置(暗箱の角)にカメラを配置したため、自然な感覚でモニタの画像を見ながら作業を進めることができる。すなわち、CCDカメラ16aと16bとモニター18を適切に配置することにより、あたかもモニターの位置にある窓を透視して暗箱12内の試料11を直接見ているようにできる。また、作業中に不自然な姿勢にならないので、長時間の作業が可能である。特に、細かい作業を行うために、CCDカメラが作業者の視線にあることが重要である。
【0031】
図2において、本発明の植物の暗所観察装置10は、更に、赤外用CCDカメラ16の画像を経時的に録画する録画装置21と、録画された画像を解析する画像解析装置22を備える。録画装置21は、パソコン又はビデオデッキ、画像解析装置22は例えばパソコンであり、CCDカメラの映像をパソコンのビデオボードまたはビデオデッキで受け取り、経時的に画像を録画し、更に録画した画像を画像解析ソフトウェアで解析し、各器官や組織の成長速度を定量することができる。これにより、例えば、暗所でのシロイヌナズナの成長(根毛の分化)の解析を行うことができる。
【0032】
図6は、縦長のシャーレに育てている試料11(植物)の成長過程を水平方向から観察できるようにした場合の図2と同様の断面図である。
作業者の視線上にあるCCDカメラ(この例では16a)の向きとモニター18の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ12aから手を入れた作業者の視線上にほぼ位置する点で、図2と同様である。
この例において、CCDカメラ16bは、試料11を水平方向から撮影するように配置されている。また、モニター18を、破線で示したように、CCDカメラ16bの位置に移動することによって、試料11をCCDカメラ16bに対して水平になるように微調整することができる。
【0033】
更に、この例において、本発明の植物の暗所観察装置10は、暗箱12内の植物11を録画と連動させて昇降させるラボジャッキ23を備えている。この構成により、複数の植物個体を連続して自動で撮影することができ、かつ個体の一部の拡大像を高倍率で連続して自動で撮影し、全体像を再構築することができる。なお電動マニピュレータ或いは電動ステージを用いて試料11を水平移動させ、複数の植物個体を連続して自動撮影してもよい。
【0034】
また、本発明の植物の暗所観察装置10は、更に、植物11に影響を与える特定波長の光を暗箱内の植物に一時的に又は継続して照射する光照射装置24を備える。この光照射装置24は、例えば暗箱の外部に設置された図示しない光源とこの光を暗箱内の特定の箇所まで導入する光ファイバとからなる。かかる光照射装置24により、例えば特定の波長の可視光(青色光、赤色光、近赤外光)をLED又は光ファイバ等で照射して、特定の光の影響を暗所で直接観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる。
更に、長時間の培養実験中に、温度及びガス環境を一定に保つために、換気システムや温度制御システムを備えることが好ましい。
【0035】
上述した本発明の暗所観察装置により、光に応答した根毛分化の促進機構を調べ、野生型のシロイヌナズナの根毛分化過程を解析し、そのデータを基に突然変異体をスクリーニングすること等ができる。また、様々な光刺激を与えた後、暗培養しているシロイヌナズナの根毛分化の解析、或いはそれ以外の器官(胚軸や根の伸長、子葉の開閉、フック形成等)の解析にも適用できる。更に、例えば目的の突然変異体が見つかった場合、暗所で必要な個体あるいは培養容器のみを取り出し、残りの植物に関しては引き続き暗培養しながら観察することもできる。
すなわち、上述した植物の暗所観察装置を用い、赤外線でモニタリングしながら、非常に小さい植物であるシロイヌナズナをポットから抜き出し、根を切り取り、固定液に浸す作業が容易にできる。
【0036】
なお本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、本発明は可視光の影響を排除したいいかなる作業にも応用できる。
【0037】
【発明の効果】
上述したように、本発明の暗所観察装置は、植物に影響を与えない暗所で、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業を行うことができ、かつ植物に影響を与えない暗所で、特定の光の影響を観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による暗所観察装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】本発明を構成する赤外光源の発光スペクトル特性図の例である。
【図4】本発明を構成する赤外用CCDカメラの感度分布例である。
【図5】水蒸気により吸収される波長を示す図である。
【図6】本発明の暗所観察装置の第2実施形態を示す図2と同様の断面図である。
【図7】葉による光合成の作用スペクトルである。
【図8】先行出願の暗箱用明視装置の模式図である。
【符号の説明】
1 暗箱、2 赤外照明器、3 CCDカメラ、4 出入口、
5 カメラ、6 腕挿入口、7 モニター、8 扉、9 モニター支え台、
10 暗所観察装置、11 試料(植物)、12 暗箱、
12a グローブ、14 赤外光源、16 赤外用CCDカメラ、
16a 低倍率正面カメラ、16b 高倍率正面カメラ、
16c 魚眼平面カメラ、18 モニター、
18a〜18d 分割ディスプレイ面、21 録画装置、
22 画像解析装置、23 ラボジャッキ、24 光照射装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物に影響を与えない暗所で、精密作業を行うことができる植物の暗所観察装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物は一般的に光を受けて光合成を行う。図7は、葉による光合成の作用スペクトルである。この図に示すように光合成に用いられる光は約350nm(紫外)から約730nm(近赤外)である。また、植物は、フィトクロムと呼ばれる色素蛋白の一種を有し、環境から受けた光情報に応答して、発生・分化など巨視的過程から遺伝子発現や膜機能の微視的過程にいたるまで広く調節を行うことが知られている。このフィトクロムの一種は、例えば約300nm〜約780nmの光照射により効果が顕れる。更に、約250nm〜約350nmの紫外光によっても、植物は影響を受けることが報告されている。
【0003】
光の植物に与える影響を解明するためには、植物に影響を与える光を遮断した環境を人為的に作りだし、通常の環境化での成長と比較する必要がある。例えば、光に応答した根毛分化の促進機構を調べ、それに関する突然変異体をスクリーニングするような場合、植物に影響する波長の光パルスを与え、植物に影響を与えない暗所でこれを経過観察する。
また、植物の各組織・器官の光に応答した遺伝子発現の変化を研究するためには、暗所で材料の収穫や必要な組織の切断と固定を行う必要がある。この場合、植物に影響を与えない暗所で、非常に小さい植物の根を多数切り取って固定液中で固定し、これからRNAを単離・分析して遺伝子発現機構を解明することが行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、植物に影響を与えない安全光として緑色光を用い、その照射下でこのような作業を行ってきた。しかし、上述したように、植物がごく微量の可視光〜近赤外光を感知して遺伝子発現の変化を起こすことが近年明らかとなっている。そのため、従来の安全光(緑色光)は、その影響が回避できない問題点があった。
また、その影響を回避するため、作業者自身が装着して用いる赤外線暗視スコープが一部で提案されているが、赤外線暗視スコープは、視角が狭く、かつ至近距離の焦点があわない問題点があり、特に細かい作業ができなかった。また、この赤外線暗視スコープは、高価で作業能率が悪く、かつ装着面から光が漏れて材料に影響を与えるおそれもあった。
【0005】
一方、暗箱中でカメラ内のフィルムを取り出すために、図8に示すような暗箱用明視装置(特開平10−83060号)が提案されている。この装置は、暗箱1内を赤外照明器2で照明し、CCDカメラ3で撮影した画像をモニター7に表示し、腕挿入口6から手を入れ、モニターを見ながらカメラ5の中のフィルムを取り出すものである。なお、この図で、4は出入口、8は扉、9はモニター支え台である。
【0006】
しかし、植物の暗所観察の場合、上述した従来の手段には以下の問題点があった。
(1)暗箱用明視装置では、CCDカメラ3が暗箱の上部にあり、モニター7が箱の後方のモニター支え台9の上にあるので、CCDカメラとモニターの向きを一致させることができない。そのため、明視する対象物(この場合カメラ5)とモニター上の画像との上下が不一致となり、手探りによるような簡単な作業しかできない。すなわち、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業を行うことができなかった。
(2)また、植物に影響を与えない暗所で、精密作業を行うためには、全体を表示すると共に、微細な対象部分も必要に応じて自由に拡大表示できる必要がある。
(3)更に精密作業のため両手を内部に挿入した姿勢のまま、各機器の操作を行う必要がある。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の主目的は、植物に影響を与えない暗所で、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業を行うことができる暗所観察装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、植物に影響を与えない暗所で、特定の光の影響を観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる暗所観察装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、外光の侵入を完全に遮蔽しかつ内部に手を入れて作業可能なグローブ(12a)を有する暗箱(12)と、該暗箱内に配置され植物に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明する赤外光源(14)と、暗箱内の植物を撮影する赤外用CCDカメラ(16)と、暗箱の外部に配置され前記CCDカメラで撮影した画像を表示するモニター(18)とを備え、前記CCDカメラ(16)の向きとモニター(18)の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ(12a)から手を入れた作業者の視線上にほぼ位置する、ことを特徴とする暗所観察装置が提供される。
【0009】
上記本発明の構成によれば、CCDカメラ(16)の向きとモニター(18)の背面の向きがほぼ一致し、かつそれらがグローブ(12a)から手を入れた作業者の視線上にほぼ位置するので、対象物(微細な植物)とモニター上の画像との上下が一致し、かつモニター上の画像をあたかも実際の対象物を直視している感覚で扱うことができる。従って、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業であっても、誤動作を起こすことなく確実に行うことができる。
また、植物に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明するので、照明・撮影時間が長時間に及ぶ場合でも、実質的に完全な暗所で育成したと同一の効果を得ることができる。
更に、この暗箱内に特定の光を照射することにより、その影響を観察し、かつその突然変異体をスクリーニングすることが容易にできる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記CCDカメラ(16)は、撮影倍率が異なる複数のカメラからなり、かつ前記モニター(18)は、複数のカメラの画像を同時に表示する。
同一のモニター上に倍率の異なる複数の画像を同時に表示することにより、作業者の視線上に複数の画像をほぼ位置することができ、精密作業のため両手を内部に挿入した姿勢のまま、必要に応じて見る画像を変えるだけで、全体と細部を随時観察することができる。
【0011】
前記赤外光源(14)の波長は、植物に影響を与えない約780nm以上であり、かつ赤外用CCDカメラ(16)で撮影可能な約1300nm以下である。
かかる波長の光源を用いることにより、植物に影響を与えずに暗所内の植物を観察することができる。
【0012】
前記赤外光源(14)は、水蒸気の吸収波長と一致しない波長約1060nm又は約1200nmのLED又はレーザー光であるのがよい。
かかるLED又はレーザー光を光源として用いることにより、植物自体またはその周囲の水分の昇温を回避し、植物への影響を更に低減することができる。
【0013】
また、前記赤外用CCDカメラ(16)の画像を経時的に録画する録画装置(21)と、録画された画像を解析する画像解析装置(22)を備えるのがよい。
この構成により、録画した画像の解析から、植物の各器官や組織の成長速度等を定量的に解析することが可能となる。
【0014】
更に、暗箱内の植物を録画と連動させて昇降させるラボジャッキ(23)を備え、植物の一部の拡大像を高倍率で連続して撮影し全体像を再構築するのがよい。
この構成により、上下に伸びる試料(例えば植物の根)を高倍率で観察しながら全体像を高精度に再構築することができる。
【0015】
また、植物に影響を与える特定波長の光を暗箱内の植物に一時的に又は継続して照射する光照射装置(24)を備える、ことが好ましい。
かかる光照射装置(24)により、例えば特定の波長の可視光(青色光、赤色光、近赤外光)をLED又は光ファイバ等で照射して、特定の光の影響を暗所で直接観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明による暗所観察装置の第1実施形態を示す正面図であり、図2は、図1のA−A線における断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の暗所観察装置10は、暗箱12、赤外光源14、赤外用CCDカメラ16及びモニター18を備える。
【0018】
暗箱12は、外光の侵入を完全に遮蔽しかつ内部に手を入れて作業可能なグローブ12aを有する。この例において、暗箱12は、幅及び奥行きが約400mm、高さが約350mmの矩形の箱であり、その側面の2ヶ所にグローブ12aが取付けられ、このグローブ12aから内部に両手を挿入して、外光の侵入(光漏れ)を防止しながら内部の対象物11(例えば植物の根)を両手で操作できるようになっている。また、暗箱12の上面又は任意の箇所に開閉扉(図示せず)を有し、内部へ計測機器や試料を搬入できるようになっている。
【0019】
赤外光源14は、暗箱内に配置され植物11に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明する。植物11に影響を与える波長は、上述したように、約250nm〜約780nmの紫外光、可視光、近赤外光である。従って、植物に影響を与えない波長として、少なくとも約780nm以上、好ましくは約800nm以上の赤外光を用いるのがよい。
【0020】
赤外用CCDカメラ16は、赤外光源14で照明された暗箱内の植物11を撮影する。従って、赤外用CCDカメラ16は、使用する赤外光源14の波長に対応した感度分布を有する必要がある。
【0021】
図3は、本発明を構成する赤外光源14の発光スペクトル特性の例である。この図において、(A)は発光波長950nmのLEDの例であり、約950nmをピークとし、約870nmから約1050nmの赤外光を発光する。また、(B)は発光波長1200nmのLEDの例であり、約1200nmをピークとし、約1000nmから約1300nmの赤外光を発光する。従って、これらのLEDを赤外光源14として用いることができる。また、例えば約980nm、約1060nmのレーザー光も赤外光源14として用いることができる。
【0022】
図4は、本発明を構成する赤外用CCDカメラの感度分布例である。この例において、CCDカメラの感度範囲は、約400nm〜約1300nmの範囲である。従ってこの赤外用CCDカメラを用いる場合、約1300nmを超える赤外光源は使用できない。従って、赤外光源14の波長は、植物に影響を与えない約780nm以上であり、かつ赤外用CCDカメラ16で撮影可能な約1300nm以下である必要がある。
なお、この要件は、本質的ではなく、約1300nmを超える範囲で高い感度特性を有するCCDカメラと赤外光源を用いてもよい。
【0023】
図5は、水蒸気により吸収される波長を示す図である。この図から、波長約780nm〜約1300nmの範囲において、約950nmと約1150nmにおいて水蒸気による吸収が大きいことがわかる。
従って、赤外光の照射により植物自体への直接的な影響はないが、植物自体またはその周囲の水分の昇温を回避するために、赤外光源14は、水蒸気の吸収波長と一致しない波長、例えば約1060nm又は約1200nmのLED又はレーザー光であることが特に望ましい。
なお水温の影響が少ない場合には、発光波長950nmのLEDを用いてもよい。
【0024】
図1及び図2において、モニター18は、暗箱12の外部に配置され、CCDカメラ16で撮影した画像を表示するようになっている。
【0025】
CCDカメラ16は、この例では、低倍率正面カメラ16a、高倍率正面カメラ16b、魚眼平面カメラ16c及び図示しない側面カメラからなる。このうち、低倍率正面カメラ16aと高倍率正面カメラ16bは、グローブ12aから手(この場合両手)を入れた作業者の試料11を見るための視線上に同一の向きでほぼ位置している。
低倍率正面カメラ16aは、暗室内の試料11(植物)の正面全体を撮影するように倍率の低いレンズを備えたCCDカメラである。高倍率正面カメラ16bは、試料11(植物)の正面の一部を拡大撮影するように倍率の高いレンズを有する。魚眼平面カメラ16cは、試料を含む暗箱内全体を上面から撮影するように広角又は魚眼のレンズを有する。側面カメラは、例えば低倍率のレンズを備え、正面から把握しにくい視覚領域を撮影するように配置される。
【0026】
なお、CCDカメラ16は、この組合せに限定されず、例えば正面カメラ16a,16bの一方又は両方をズームレンズにしてもよい。また、この例では、低倍率正面カメラ16aを視線上のわずかに上側、高倍率正面カメラ16bをわずかに下側に配置しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、上下を逆にし、或いは左右に配置してもよい。
【0027】
CCDカメラ16(この例では16aと16b)の向きとモニター18の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ12aから手を入れた作業者の視線上にほぼ位置して配置される。すなわちグローブ12aから手を入れた作業者が暗箱12内の試料11を見る方向に、モニター18、CCDカメラ16、試料11の順でほぼ並ぶように配置されている。
また、この例で、モニター18は、4つのカメラの画像を同時に表示するように、4分割されたディスプレイ面18a,18b,18c,18dを有する。各ディスプレイ面には、それぞれ低倍率正面カメラ16a、高倍率正面カメラ16b、魚眼平面カメラ16c及び図示しない側面カメラの画像が表示され、精密作業のため両手を内部に挿入した姿勢のまま、必要に応じて見る画像を変えるだけで、全体と細部を随時観察することができるようになっている。
【0028】
上述したように、本発明の暗所観察装置は、低倍率正面カメラ16aと高倍率正面カメラ16bを備えて実体顕微鏡としての機能も併せもっている。すなわち、倍率の異なる2つのCCDカメラ16aと16bを正面に設けたことにより、両手が暗箱12の中で作業している状態、例えば片手で試料を持ち、片手でハサミを持っている状態で、倍率を変える操作をすることなく、微細な試料を扱うことができる。なお、ズームレンズのついた1台のCCDカメラを内部で或いは足で操作して代用することも可能である。
【0029】
また、作業者の視線に配置した2台のCCDカメラは角度が固定されているため、暗箱内に死角が生じるが、4分割モニタで別の角度からの映像を含む複数(3〜4台)のCCDカメラの映像を同時に見ることができるため、死角の影響をなくすことができる。
なお、モニタ18は、分割型の液晶モニタを暗箱12の手前に配置するようにしたが、作業者の視線上にほぼ位置し、かつ作業者が無理のない姿勢で映像を見ることができる範囲であれば、これに限定されない。例えば、分割モニタの替わりに複数のモニタを用いたい場合には、上述の範囲内で暗箱12の上部に配置してもよい。
【0030】
更に、カメラが作業者の視線上にあり、かつ作業の邪魔にならない位置(暗箱の角)にカメラを配置したため、自然な感覚でモニタの画像を見ながら作業を進めることができる。すなわち、CCDカメラ16aと16bとモニター18を適切に配置することにより、あたかもモニターの位置にある窓を透視して暗箱12内の試料11を直接見ているようにできる。また、作業中に不自然な姿勢にならないので、長時間の作業が可能である。特に、細かい作業を行うために、CCDカメラが作業者の視線にあることが重要である。
【0031】
図2において、本発明の植物の暗所観察装置10は、更に、赤外用CCDカメラ16の画像を経時的に録画する録画装置21と、録画された画像を解析する画像解析装置22を備える。録画装置21は、パソコン又はビデオデッキ、画像解析装置22は例えばパソコンであり、CCDカメラの映像をパソコンのビデオボードまたはビデオデッキで受け取り、経時的に画像を録画し、更に録画した画像を画像解析ソフトウェアで解析し、各器官や組織の成長速度を定量することができる。これにより、例えば、暗所でのシロイヌナズナの成長(根毛の分化)の解析を行うことができる。
【0032】
図6は、縦長のシャーレに育てている試料11(植物)の成長過程を水平方向から観察できるようにした場合の図2と同様の断面図である。
作業者の視線上にあるCCDカメラ(この例では16a)の向きとモニター18の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ12aから手を入れた作業者の視線上にほぼ位置する点で、図2と同様である。
この例において、CCDカメラ16bは、試料11を水平方向から撮影するように配置されている。また、モニター18を、破線で示したように、CCDカメラ16bの位置に移動することによって、試料11をCCDカメラ16bに対して水平になるように微調整することができる。
【0033】
更に、この例において、本発明の植物の暗所観察装置10は、暗箱12内の植物11を録画と連動させて昇降させるラボジャッキ23を備えている。この構成により、複数の植物個体を連続して自動で撮影することができ、かつ個体の一部の拡大像を高倍率で連続して自動で撮影し、全体像を再構築することができる。なお電動マニピュレータ或いは電動ステージを用いて試料11を水平移動させ、複数の植物個体を連続して自動撮影してもよい。
【0034】
また、本発明の植物の暗所観察装置10は、更に、植物11に影響を与える特定波長の光を暗箱内の植物に一時的に又は継続して照射する光照射装置24を備える。この光照射装置24は、例えば暗箱の外部に設置された図示しない光源とこの光を暗箱内の特定の箇所まで導入する光ファイバとからなる。かかる光照射装置24により、例えば特定の波長の可視光(青色光、赤色光、近赤外光)をLED又は光ファイバ等で照射して、特定の光の影響を暗所で直接観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる。
更に、長時間の培養実験中に、温度及びガス環境を一定に保つために、換気システムや温度制御システムを備えることが好ましい。
【0035】
上述した本発明の暗所観察装置により、光に応答した根毛分化の促進機構を調べ、野生型のシロイヌナズナの根毛分化過程を解析し、そのデータを基に突然変異体をスクリーニングすること等ができる。また、様々な光刺激を与えた後、暗培養しているシロイヌナズナの根毛分化の解析、或いはそれ以外の器官(胚軸や根の伸長、子葉の開閉、フック形成等)の解析にも適用できる。更に、例えば目的の突然変異体が見つかった場合、暗所で必要な個体あるいは培養容器のみを取り出し、残りの植物に関しては引き続き暗培養しながら観察することもできる。
すなわち、上述した植物の暗所観察装置を用い、赤外線でモニタリングしながら、非常に小さい植物であるシロイヌナズナをポットから抜き出し、根を切り取り、固定液に浸す作業が容易にできる。
【0036】
なお本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、本発明は可視光の影響を排除したいいかなる作業にも応用できる。
【0037】
【発明の効果】
上述したように、本発明の暗所観察装置は、植物に影響を与えない暗所で、微細な植物の根を切り取って固定液中に浸すような、精密作業を行うことができ、かつ植物に影響を与えない暗所で、特定の光の影響を観察することができ、かつそれに関する突然変異体をスクリーニングすることができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による暗所観察装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】本発明を構成する赤外光源の発光スペクトル特性図の例である。
【図4】本発明を構成する赤外用CCDカメラの感度分布例である。
【図5】水蒸気により吸収される波長を示す図である。
【図6】本発明の暗所観察装置の第2実施形態を示す図2と同様の断面図である。
【図7】葉による光合成の作用スペクトルである。
【図8】先行出願の暗箱用明視装置の模式図である。
【符号の説明】
1 暗箱、2 赤外照明器、3 CCDカメラ、4 出入口、
5 カメラ、6 腕挿入口、7 モニター、8 扉、9 モニター支え台、
10 暗所観察装置、11 試料(植物)、12 暗箱、
12a グローブ、14 赤外光源、16 赤外用CCDカメラ、
16a 低倍率正面カメラ、16b 高倍率正面カメラ、
16c 魚眼平面カメラ、18 モニター、
18a〜18d 分割ディスプレイ面、21 録画装置、
22 画像解析装置、23 ラボジャッキ、24 光照射装置
Claims (7)
- 外光の侵入を完全に遮蔽しかつ内部に手を入れて作業可能なグローブ(12a)を有する暗箱(12)と、該暗箱内に配置され植物に影響を与えない波長の赤外光で暗箱内の植物を照明する赤外光源(14)と、暗箱内の植物を撮影する赤外用CCDカメラ(16)と、暗箱の外部に配置され前記CCDカメラで撮影した画像を表示するモニター(18)とを備え、
前記CCDカメラ(16)の向きとモニター(18)の背面の向きがほぼ一致し、かつグローブ(12a)から手を入れた作業者の視線上にほぼ位置する、ことを特徴とする暗所観察装置。 - 前記CCDカメラ(16)は、撮影倍率が異なる複数のカメラからなり、かつ前記モニター(18)は、複数のカメラの画像を同時に表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の暗所観察装置。
- 前記赤外光源(14)の波長は、植物に影響を与えない約780nm以上であり、かつ赤外用CCDカメラ(16)で撮影可能な約1300nm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の暗所観察装置。
- 前記赤外光源(14)は、水蒸気の吸収波長と一致しない波長約1060nm又は約1200nmのLED又はレーザー光である、ことを特徴とする請求項1に記載の暗所観察装置。
- 前記赤外用CCDカメラ(16)の画像を経時的に録画する録画装置(21)と、録画された画像を解析する画像解析装置(22)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の暗所観察装置。
- 暗箱内の植物を録画と連動させて昇降させるラボジャッキ(23)を備え、植物の一部の拡大像を高倍率で連続して撮影し全体像を再構築する、ことを特徴とする請求項5に記載の暗所観察装置。
- 植物に影響を与える特定波長の光を暗箱内の植物に一時的に又は継続して照射する光照射装置(24)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の暗所観察装置。
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