【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に半導体分野で使用される各種装置の加熱源として有用な長期の安定使用が保証される非汚染性のカーボン発熱体に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素質発熱体は、耐熱性や化学的安定性に良好で、熱膨張係数が小さいなどの特性を備えており、このうち特に黒鉛材質の発熱体は非酸化性雰囲気中において3000℃を越える高温度域でも極めて安定であるため、苛酷な高温条件下で使用されるヒータ部材として有用されている。
【0003】
一般に、黒鉛発熱体は石油コークスやピッチコークスなどの粉粒体を骨材に、タール、ピッチのような炭化性バインダーを加えて混練、成形し、成形体を焼成炭化したのち黒鉛化処理し、次いで所定の発熱体形状に切削加工して製造されている。ところが、この工程で製造された黒鉛発熱体には、通常、微量の金属成分が混入しており、通電発熱させた際にこれら金属不純物が組織内から蒸発、揮散する現象が生じる関係で、例えば不純物による汚染を嫌う半導体単結晶引上装置用としてはそのまま使用することができない。したがって、黒鉛材料をハロゲン含有ガスで処理して金属不純物をハロゲン化物として気化除去した高純度発熱体が有効とされている(特開平2−242579号公報)。しかし、黒鉛発熱体は組織の結合力や緻密性が十分でないため、高温発熱時において骨材の粉粒体が脱落したり、内蔵ガス成分が発生する等の問題があり、前記の高純度処理を施しても汚染に対する安全性は確保できない。
【0004】
このため、上記のような通常の黒鉛材とは異なる炭素質発熱体が提案されている。例えば特開昭58−128686号公報には有機高分子物質及びアスファルトピッチ類、乾留ピッチ類等の混合物を線状体に成形した有機質線状体をコイル状に賦形したのち炭素化した炭素系コイル状抵抗発熱体が開示されている。また特開平5−135858号公報には、主成分が固有抵抗1600μΩcm以上、曲げ強度500kg/cm2以上のカーボン材からなるカーボンヒーターが開示されており、ヒーターの材質形状として樹脂を焼成して作製されたガラス状カーボン材(グラッシーカーボン)からなる渦巻状のカーボンヒーターが例示されている。
【0005】
ガラス状カーボンは、ガラス質の緻密な組織構造を有する異質な炭素材料であり、黒鉛材や他のカーボン材に比べて気体不透過性、耐磨耗性、耐食性、自己潤滑性、表面平滑性および堅牢性等に優れ、更に真空下または発熱時に内部組織からの脱ガス成分が極めて少なく、発熱体とした場合に黒鉛発熱体のように外部汚染を招くことが少ない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高温加熱用として用いられるカーボン発熱体は、装置内部を非酸化性雰囲気に保持しても系内に微量に存在する酸素やその他のガスと反応して漸次材質の消耗が進行する。この現象はガラス状カーボンで構成された発熱体であっても十分に避けることができず、長期に亘る安定使用を期待することができない。そのうえ、消耗の進行に伴って組織から微細なパーティクルが発生して被加熱物を汚染する事態を招き易い。
【0007】
本発明者らは、ガラス状カーボン材の組織改良について多角的に研究を進める過程で、ガラス状カーボン材の組織中に一定量のSiを均一に分散含有させると化学的安定性(耐酸化性)が改善され、発熱体とした場合に使用寿命が向上するうえ、パーティクルの発生を効果的に抑制することができることを確認した。
【0008】
本発明は上記の知見に基づいて開発されたもので、その目的とする解決課題は、長期の使用に際しても材質消耗が少なく、パーティクルの発生に伴う製品汚染を招くことのない安定かつ非汚染性のカーボン発熱体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるカーボン発熱体は、熱硬化性樹脂と1分子中に単一のSi原子を含むSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で攪拌混合して−O−Si−O−で架橋された硬化成形体、あるいは1分子中に単一のSi原子を含むアミノシラン化合物またはエポキシシラン化合物を熱硬化性樹脂液中に滴下して攪拌混合し成形した硬化成形体、を焼成炭化して得られ、ガラス状カーボン組織中に原子レベルのSiが0.1〜10重量%の範囲で均一な連続相として分布する組織性状を備えるSi含有ガラス状カーボン材からなることを構成上の特徴とする。
【0010】
原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布する組織性状とは、実質的にSiとCとの粒界が存在せず、透過型電子顕微鏡(TEM) の観察によってSi成分が識別できない組織状態を指す。
【0011】
【発明の実施の形態】
ガラス状カーボン組織中に分散するSiは、基材カーボン組織と酸素をはじめとする反応性ガスとの反応による材質消耗を抑制して化学的安定性を向上させると共に、脆弱なガラス状カーボン組織を強化してパーティクルの脱落を防止するために機能する成分で、その含有量は0.1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の範囲に設定する。このSi含有量が0.1重量%を下回ると実用上十分な化学的安定性を確保することができず、また10重量%を越えると原子レベルのSi分散状態を維持できなくなって寧ろパーティクルの発生を増加させる要因となる。
【0012】
上記の組織性状を備えるSi含有ガラス状カーボン材からなる本発明のカーボン発熱体は、熱硬化性樹脂と1分子中に単一のSi原子を有するSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合し、架橋反応により得られるゲル化物を硬化成形したのち、成形体を非酸化性雰囲気下で800℃以上の温度域で焼成炭化処理する方法で製造することができる。あるいは、1分子中に単一のSi原子を含むアミノシラン化合物またはエポキシシラン化合物を熱硬化性樹脂液中に滴下して撹拌混合し、アミノ基やエポキシ基と熱硬化性樹脂との反応により生成したアミノシラン含有樹脂組成物またはエポキシシラン含有樹脂組成物を硬化成形したのち、成形体を非酸化性雰囲気下で800℃以上の温度域で焼成炭化処理する方法で製造される。具体的な製造プロセスは、以下のとおりである。
【0013】
ガラス状カーボンの原料となる熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール系樹脂、フラン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカルボジイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ピレン−フェナントレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂あるいはこれらの混合樹脂等が用いられる。特に樹脂を非酸化性雰囲気下で800℃の温度により焼成したときに残留する残炭率が45重量%以上のフェノール系樹脂、フラン系樹脂もしくはこれらの混合樹脂が好ましく使用される。
【0014】
Si源として選択使用される1分子中に単一のSi原子を有するSiアルコキシドは、一般式Si(OR)n またはRn Si(OR)n (但し、Rはアルキル基またはアリール基、nは1以上の整数を表す)で示される化合物であれば種類に限定はないが、2個以上のSi原子が結合するポリシラン、ポリシロキサン、ポリシラザン等の化合物は対象とならない。使用可能な単一Si原子を有するSiアルコキシドとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン、ブトキシシラン、プロポキシシラン、イソプロポキシシラン、ジエトキシシラン、ジブトキシシラン、ジプロポキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリブトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン等を挙げることができる。しかし、本発明の目的には反応性の良好な低分子量のテトラメトキシシラン〔Si(OCH3)4 〕やテトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕が好ましく、とくに後者のテトラエトキシシランが好適に使用される。
【0015】
1分子中に単一のSi原子を有するSiアルコキシド(以下、単に「Siアルコキシド」という)は、有機溶媒に対し50容量%以下の濃度になるように添加し、予め適量の水(Siアルコキシドに対して1〜2モル相当量)を加えて加水分解し、有機溶媒中で熱硬化性樹脂と混合する。Siアルコキシドと熱硬化性樹脂は、それぞれ水分を除去したアルコール系の有機溶媒に添加して十分に撹拌したのち、さらに超音波分散処理を施してから混合することが好ましく、この撹拌混合と超音波分散処理を順次に施すことにより凝集している構成分子を効果的に解体することが可能となる。このため、その後の操作段階におけるSiアルコキシド相互の反応および凝集化が抑制され、安定した単分子の分散状態が保持される。
【0016】
Siアルコキシドと熱硬化性樹脂の混合は、加水分解したSiアルコキシド溶液を撹拌しながら、熱硬化性樹脂液に徐々に添加する方法で行われる。この際、熱硬化性樹脂の添加量は、最終的にガラス状カーボン組織に占めるSiの含有量が0.1〜10重量%になる量比に調整する。混合時、溶液がアルカリ性であると急激に重縮合が進行して球状ポリマーを形成するため、例えば水分を含まないアルコール可溶性の有機酸を用いて溶液のpHを酸性側に調整することが好ましい。
【0017】
Siアルコキシド溶液と熱硬化性樹脂液を混合すると、熱硬化性樹脂中のC−OH基と加水分解されたSiアルコキシドのシラノール基(Si−OH) 間で架橋反応が起こり、次第にゲル化する。この架橋反応は、シラノール間の脱水縮合反応に比べて極めて速いため、容易に熱硬化性樹脂を−O−Si−O−で架橋した状態のゲル化物が得られる。したがって、成形体はSiアルコキシド溶液と熱硬化性樹脂液の混合液がゲル化する前に型枠に流し込み、必要に応じて真空脱泡処理を施したのち室温から70℃に加温し、ゲル化と同時に硬化させる方法により形成することが好ましい。成形手段としては、このほか遠心成形、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形、積層成形など適宜な方法を採用することができ、目的とする発熱体形状に応じて選択される。
【0018】
また、Si源として1分子中に単一のSi原子を含むアミノシラン化合物を使用することもできる。1分子中に単一のSi原子を含むアミノシラン化合物は、下記の一般式(化1)で表され、通常、アミン系シランカップリング剤として市販されている。1分子中に単一のSi原子を含むアミノシラン化合物を選択使用するのは、1分子中に2個以上のSi原子が結合したポリシランでは熱硬化性樹脂液との混合段階で凝集現象が発生し易く、またアミノ基以外の有機官能基、例えばメチル基、ビニル基等の有するシラン化合物では熱硬化性樹脂と直接反応しないため、混合時に分離したり、会合、多量化(高分子化)が生じて原子レベルでのSi分散化が不可能となるためである。
【0019】
【化1】
【0020】
アルコキシ基を含有するアミン系シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(SiC9H23NO3)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(SiC8H22N2O3) 、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SiC8H22N2O2) 、p−〔N−(2−アミノエチル)アミノメチル〕フェネチルトリメトキシシラン(SiC14H26N2O3)、4−アミノブチルジメチルメトキシシラン(SiC7H19NO) 、4−アミノブチルトリエトキシシラン(SiC10H25NO3) 、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2−エチルヘキシソ)シラン(SiC29H64N2O3)、p−アミノフェニルトリメトキシシラン(SiC9H15NO3)、p−アミノフェニルトリエトキシシラン(SiC9H15NO3)、3−(1−アミノプロポキシ)3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン(SiC11H25NO4) 、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン(SiC18H41NO9) 、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン(SiC7H19NO) 、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(SiC8H21NO2)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(SiC9H23NO3)、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン(SiC14H33NO3) 、1−トリメトキシシリル−2−(p,m−アミノメチル)フェニルエタン(SiC12H21NO3) 、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン(SiC12H30N2O3)、N−(トリエトキシシリルプロピル)尿素(SiC10H14N2O4)、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン(SiC10H27N3O3)などが例示される。
【0021】
また、アルコキシ基を含有しないアミン系シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメチルシラン(SiC6H17N)、3−アミノプロピルジエチルメチルシラン(SiC8H21N)などが挙げられる。
【0022】
これらのアミノシラン化合物は、炭化する際にSi以外の有機成分が熱分解して揮散するため可及的に低分子量のものを用いることが好ましい。したがって、本発明に最も好適なアミノ基含有シラン化合物は3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0023】
上記の1分子中に単一のSi原子を含むアミノシラン化合物(以下、単に「アミノシラン化合物」という)は、熱硬化性樹脂液中に直接滴下して撹拌混合を施す。アミノシラン化合物の滴下量は、最終的にガラス状カーボン組織に占めるSiの含有量が0.1〜10重量%、好ましくは2.0〜8重量%の範囲になるように調整する。このSi含有率が0.1重量%未満では耐酸化性の向上などの複合効果が不十分となり、また10重量%を越えると組織中のSiが粒状化して粒界が生じるようになり、原子レベルの連続相が崩れて微細粒子の脱離や機械的強度の低下を招くようになる。
【0024】
この段階で滴下混合を進めると、アミノシラン化合物中のアミノ基がアルコキシ基に優先して熱硬化性樹脂と結合し、脱水縮合反応が進行する。例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシランをフェノール系樹脂液中に滴下しながら撹拌混合すると、下記の化2および化3に示すような二段階の反応が進行する。
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
上記の反応を介してアミノシラン化合物は熱硬化性樹脂中に均一に分散した均質組成の溶液となる。この段階で、アミノシラン化合物中のアルコキシ基は熱硬化性樹脂と殆ど反応せず、アミノ基が樹脂成分と結合した形態はSiを中心として分子が巨大化することにより相対的にアルコキシ基の反応性は低下する。このため、アルコキシ基と樹脂成分との反応は抑制され、同時にアミノシラン同士の重合に伴う凝集化が抑制されるため、混合溶液は凝集粒子を含まない極めて均質な連続相を呈する。
【0028】
熱硬化性樹脂液にアミノシラン化合物は混合する過程で発熱を伴うため、このままの状態を放置すると硬化反応が進行して不均質組成の混合分散状態となり易い。このような現象を避けるため、混合後の溶液を冷却保存して硬化反応を抑制し、その後に緩徐な流動を与えて混合状態の均質性を高める操作を行うことが好ましい。
【0029】
混合溶液は、必要に応じて真空脱気処理して吸蔵する空気を除去したのち、成形する。成形手段は、通常、注型成形や遠心成形により行われるが、半硬化した段階で圧縮成形、押出成形、トランスファー成形などを適用することができる。成形された成形体は、70〜150℃の温度に加熱して硬化する。
【0030】
1分子中に単一のSi原子を含むエポキシシラン化合物は、下記化4の一般式(式中、R1 は酸素を1つ含む飽和炭素鎖または環状炭素鎖、R2 、R3 およびR4 は炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基である。)で表される。
【0031】
【化4】
【0032】
かかるエポキシシラン化合物としては、例えば3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルジイソプロピルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。しかし、本発明の目的には3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが最も好ましく使用される。この理由は、該3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランは低分子量であるため炭化時における揮発成分が相対的に少なく、収縮に伴う材質歪みが生じない有利性があるからである。
【0033】
上記の1分子中に単一のSi原子を含むエポキシシラン化合物(以下、単に「エポキシシラン化合物」という)は、熱硬化性樹脂液に滴下する。熱硬化性樹脂液は焼成炭化処理によりガラス状カーボンに転化する炭素源となるもので、例えば液状のフェノール系樹脂、フラン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカルボジイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ピレン−フェナントレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂あるいはこれらの混合樹脂等を用いることができる。特に樹脂を非酸化性雰囲気下で800℃の温度により焼成したときに残留する残炭率の高いフェノール系樹脂またはフラン系樹脂の初期縮合物もしくはこれらの混合樹脂液が好適に使用される。
【0034】
エポキシシラン化合物を熱硬化性樹脂液へ滴下するに当たっては、十分な撹拌条件下で行う。この際、エポキシシラン化合物と熱硬化性樹脂との反応は起こらないから、混合樹脂組成物の発熱、増粘などの反応トラブルが生じることはない。したがって、特に冷却その他の煩雑な反応抑止操作を施す必要はなく、多量のエポキシシラン化合物を滴下しても十分な流動性が確保でき、また混合時の巻き込んだ空気も容易に脱気できるからボイドを残留させることなしに成形することが可能となる。なお、アルコキシ基をもつシラン化合物を用いた場合にも、この時点ではアルコキシ基と樹脂の反応は殆ど起こらないから、ゲル化に伴う作業性の減退現象が生じることはない。
【0035】
滴下操作により得られたエポキシシラン含有樹脂組成物は、混合の均一性を一層高めて原子レベルでの分散を促進するため、一昼夜以上流動状態で保存しておくことが好ましい。粘度が低い流動液状で保存された混合物はSiが原子レベルで分散する極めて均質な組成状態を呈しており、メチル基などの疎水性基のみのシラン化合物を混合する場合に起きるシラン化合物の分離等の現象は生ずることはない。
【0036】
エポキシシラン含有樹脂組成物は、ついで必要に応じて真空脱気処理して吸蔵する空気を除去したのち所定形状に成形する。成形手段は、通常、注型成形や遠心成形により行われるが、半硬化した段階で圧縮成形、押出成形、トランスファー成形などを適用することもできる。成形された成形体は、70〜150℃の温度に加熱して硬化しガラス状カーボンの前駆体とする。
【0037】
室温混合過程で熱硬化性樹脂と反応しなかったエポキシシラン化合物は、成形や硬化時の加熱段階でエポキシ基の開環反応が起き樹脂成分との反応が開始される。したがって、成形工程での加熱温度を制御することによりエポキシシラン化合物は均一分散状態を維持しながら緩やかに樹脂成分と反応し、硬化過程を通じて樹脂の硬化反応と同時にエポキシ基と樹脂成分との反応が進行する。この作用で樹脂の硬化反応は緩徐な速度で進行するから、エポキシシラン化合物と樹脂成分の反応による歪みの発生は効果的に抑制される。
【0038】
例えばエポキシシラン化合物とフェノール系樹脂との反応は、下記化5に示す反応式で進行するものと推測される。
【0039】
【化5】
【0040】
このようにして得られた硬化成形体は黒鉛坩堝に詰めるか、黒鉛板で挟持した状態で、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気に保たれた電気炉、あるいはリードハンマー炉に詰めて800℃以上の温度域、好ましくは1000〜2500℃の温度範囲で焼成炭化処理して、熱硬化性樹脂成分をガラス状カーボンに転化する。この焼成炭化段階で脱酸素反応が進行し、Siが0.1〜10重量%の範囲でガラス状カーボン組織中に原子レベルの均一な連続相として分布する組織性状となる。
【0041】
このようにして得られるSi含有ガラス状カーボン材からなるカーボン発熱体は、必要に応じて最終的に表面をバフ研磨あるいはダイヤモンドラッピング処理して表面平滑度を高め、製品化する。なお、例えば渦巻状、櫛形状など複雑形状の発熱体を製造する場合には、焼成炭化前の成形体に予め炭化時の寸法収縮率を見込んで加工あるいは型成形するか、焼成後の炭素体に機械加工するかのいずれかの方法で行うことができる。
【0042】
本発明に係るカーボン発熱体は、ガラス状カーボン組織中のSiを0.1〜10重量%の範囲で分散含有する複合組成を示し、原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布する組織性状を備えている。この組織性状は、Si成分が微粒子状態で分散する組織とは異なり、組織内にSiとCとの粒界が存在しないアロイ状の連続固溶相を呈しており、巨視的にはガラス状カーボン単独の組織構造と実質的に相違は認められないが、微視的にはガラス状カーボン組織の一部のCがSiに置換して−C−Si−C−で結合された連続相を有する特有の複合形態を呈している。
【0043】
上記の組織性状は、発熱体を高温発熱させた際、加熱装置系内に存在する微量な酸素その他の反応性ガスとの反応を効果的に抑制して長期に亘る化学的安定性を発揮し、同時にパーティクルの発生がない状態での長期使用が可能となる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1〜5、比較例1〜3
テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕を濃度が50容量%になるように水分を含まないエタノールに溶解し、スターラーで30分間撹拌したのち超音波振動装置により2時間分散処理を施した。この溶液にテトラエトキシシラン1モルに対して0.03モル相当量の水分を含まない酢酸と1モル相当量の水を滴下し、スターラーで1時間撹拌混合してテトラエトキシシランを加水分解させた。ついで、加水分解後のテトラエトキシシランを撹拌しながら、予め水分を含まないエタノールに溶解しスターラーで30分間撹拌したのち超音波振動装置により2時間分散処理を施したフェノール樹脂液を徐々に添加し、引き続きスターラーで1時間撹拌して均一になるまで混合した。この混合液を型枠に流し込み、真空装置内で脱泡処理して室温から70℃まで加温して、架橋反応により生成したゲル化物を硬化した。得られた硬化成形体を窒素雰囲気に保持された加熱炉に移し、10℃/hrの昇温速度で2000℃まで加熱して焼成炭化した。このようにしてSi含有量の異なるSi含有ガラス状カーボン材(縦横200mm、厚さ4mm) を製造した。得られた各Si含有ガラス状カーボン材の物理特性を測定し、表1に示した。
【0046】
製造された板状の各Si含有ガラス状カーボン材を、図1に示す円盤状の発熱体形状に機械加工した。図1において、1は発熱体本体(直径146mm)、2は発熱体本体1に設置されたスリット部(巾2mm) 、3はターミナル部である。ついでその表面を粒度 #800の研磨材を用いて平滑にバフ研磨してカーボン発熱体を得た。該カーボン発熱体を10Torrに減圧したチャンバー内に取付け、中央発熱部が1600℃になるように通電発熱させた。このようにして300時間通電発熱した後のカーボン発熱体の重量減少率およびチャンバー内に脱落した0.3μm 以上のパーティクル発生個数を測定し、その結果を表2に示した。
【0047】
実施例6、7
Si含有率が5Wt%になるように3−アミノプロピルトリエトキシシラン〔チッソ(株)製A0750)および3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製AY43−026〕をフェノール樹脂〔住友デュレズ(株)製PR940〕中に滴下したのち、1時間撹拌混合した。なお、3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加した樹脂溶液は一旦2℃の冷蔵庫に入れて発熱を抑えた後、24時間さらに緩やかに撹拌混合を行った。また3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを添加したフェノール樹脂溶液は24時間の緩やかな撹拌混合を行った。次いで、これらの混合溶液を型枠に流し込み、真空装置内で脱泡処理したのち、室温から70℃まで加熱硬化処理して樹脂成形板を得た。得られた硬化成形体を実施例1と同一の方法により窒素雰囲気中にて10℃/hrの昇温速度で2000℃まで加熱して焼成炭化し、Si含有ガラス状カーボン材(縦横200mm、厚さ4mm) を製造した。得られたSi含有ガラス状カーボン材の物理特性を測定して、その結果を表1に併載した。
【0048】
このようにして製造したSi含有ガラス状カーボン材について実施例1と同一の方法により機械加工およびバフ研磨して図1に示す形状のカーボン発熱体を作製した。このカーボン発熱体について、実施例1と同一の条件により通電発熱試験を行い、発熱試験後の重量減少率およびパーティクル発生個数を測定し、その結果を表2に併載した。
【0049】
比較例4
SiC焼結体を機械加工して図1に示す形状の発熱体を作製し、実施例1と同一条件により通電発熱試験を行った。この場合のSiC発熱体の物理特性を表1に、発熱試験後の重量減少率およびパーティクル発生個数を表2にそれぞれ併載した。
【0050】
比較例5
等方性黒鉛材〔東海カーボン(株)製、G347〕を機械加工して図1に示す形状の発熱体を作製し、実施例1と同一条件により通電発熱試験を行った。この場合の黒鉛発熱体の物理特性を表1に、発熱試験後の重量減少率およびパーティクル発生個数を表2にそれぞれ併載した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1および表2の結果を考察して明らかなように、実施例によるSi含有ガラス状カーボン材からなるカーボン発熱体は、Si成分を含有するにもか拘らず発熱体として適正な物理特性を備えており、通電発熱試験後の重量減少率が低く、パーティクルの発生個数も極めて少ない。これに対しSi含有率が0.1重量%を下回る比較例1およびSi成分を含有しない比較例3では重量減少率およびパーティクル発生個数が増大し、Si含有率が10重量%を越える比較例2では重量減少率は少ないもののパーティクル発生個数が多くなって、いずれも長期安定性と非汚染性に難点があることが判る。また、SiC焼結体で作製した比較例4の発熱体、等方性黒鉛材で作製した比較例5の発熱体は、共にパーティクル発生が著しく、汚染による歩留りの低下が問題となる。
【0054】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によればガラス状カーボン組織中に一定量のSiが分散含有するSi含有ガラス状カーボン材を選択することにより、高温発熱に際しても消耗が少ないうえ、組織からのパーティクル発生が極めて少ない高性能のカーボン発熱体を提供することができる。したがって、長期の安定使用ならびに非汚染性が要求される半導体装置の発熱体として有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で作製した発熱体形状を示した平面図である。
【符号の説明】
1 発熱体本体
2 スリット部
3 ターミナル部[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention particularly relates to a non-polluting carbon heating element which is useful as a heating source for various devices used in the field of semiconductors and which guarantees long-term stable use.
[0002]
[Prior art]
The carbonaceous heating element has characteristics such as good heat resistance and chemical stability and a small coefficient of thermal expansion. Among them, the heating element made of graphite is particularly high in a non-oxidizing atmosphere, exceeding 3000 ° C. Since it is extremely stable even in a temperature range, it is useful as a heater member used under severe high temperature conditions.
[0003]
In general, a graphite heating element is obtained by adding a carbonized binder such as tar or pitch to an aggregate of powder or granules such as petroleum coke or pitch coke, kneading and molding, calcining and compacting the molded body, and then graphitizing. Then, it is manufactured by cutting into a predetermined heating element shape. However, the graphite heating element manufactured in this step is usually mixed with a trace amount of a metal component, and when energized and heated, these metal impurities evaporate and evaporate from within the tissue. It cannot be used as it is for a semiconductor single crystal pulling apparatus which dislikes contamination by impurities. Therefore, a high-purity heating element in which a graphite material is treated with a halogen-containing gas to vaporize and remove metal impurities as a halide is effective (Japanese Patent Laid-Open No. 242579/1990). However, the graphite heating element does not have sufficient bonding strength and denseness of the tissue, and thus has a problem that the aggregate particles fall off during high-temperature heat generation and a built-in gas component is generated. Does not guarantee safety against contamination.
[0004]
For this reason, a carbonaceous heating element different from the usual graphite material as described above has been proposed. For example, Japanese Unexamined Patent Publication (Kokai) No. 58-128686 discloses a carbon-based material obtained by forming a mixture of an organic polymer substance and asphalt pitches, carbonized pitches and the like into a linear body, shaping the organic linear body into a coil, and then carbonizing the same. A coiled resistance heating element is disclosed. JP-A-5-135858 discloses a carbon heater whose main component is a carbon material having a specific resistance of 1600 μΩcm or more and a bending strength of 500 kg / cm 2 or more. A spiral carbon heater made of a glassy carbon material (glassy carbon) is exemplified.
[0005]
Glassy carbon is a heterogeneous carbon material that has a vitreous dense structure, and is gas-impermeable, abrasion-resistant, corrosion-resistant, self-lubricating, and surface smoother than graphite and other carbon materials. In addition, it has excellent robustness and the like, and further has a very small amount of degassed components from the internal structure under vacuum or heat generation, and when it is used as a heating element, it hardly causes external contamination like a graphite heating element.
[0006]
[Problems to be solved by the invention]
However, the carbon heating element used for high-temperature heating reacts with a small amount of oxygen or other gas present in the system even if the inside of the apparatus is kept in a non-oxidizing atmosphere, and the material is gradually consumed. This phenomenon cannot be sufficiently avoided even with a heating element made of glassy carbon, and long-term stable use cannot be expected. In addition, fine particles are generated from the tissue as the wear progresses, which easily causes contamination of the object to be heated.
[0007]
The present inventors have been conducting various studies on the improvement of the structure of a glassy carbon material, and in the course of conducting research on the improvement of the structure of the glassy carbon material, if a certain amount of Si is uniformly dispersed and contained in the structure of the glassy carbon material, the chemical stability (oxidation resistance ) Was improved, the service life was improved when a heating element was used, and the generation of particles could be effectively suppressed.
[0008]
The present invention has been developed based on the above findings, and the object of the present invention is to provide a stable and non-contaminating material that does not cause material contamination due to the generation of particles even when used for a long time. To provide a carbon heating element.
[0009]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, a carbon heating element according to the present invention is obtained by stirring and mixing a thermosetting resin and a hydrolyzate of a Si alkoxide containing a single Si atom in one molecule in an organic solvent. A cured molded article crosslinked with Si—O—, or a cured molded article formed by dropping an aminosilane compound or an epoxysilane compound containing a single Si atom in one molecule into a thermosetting resin liquid, stirring, mixing, and molding; And a Si-containing glassy carbon material having a structural property in which atomic level Si is distributed as a uniform continuous phase in a range of 0.1 to 10% by weight in the glassy carbon structure. This is a feature of the configuration.
[0010]
The structural property in which atomic-level Si is distributed as a uniform continuous phase in the glassy carbon structure means that there is substantially no grain boundary between Si and C, and the Si component is observed by observation with a transmission electron microscope (TEM). Refers to an organizational state that cannot be identified.
[0011]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
The Si dispersed in the glassy carbon structure suppresses material consumption due to the reaction between the base carbon structure and a reactive gas such as oxygen, improves chemical stability, and reduces fragile glassy carbon structure. A component that strengthens and functions to prevent particles from falling off, and its content is set in the range of 0.1 to 10% by weight, preferably 2 to 8% by weight. If the Si content is less than 0.1% by weight, practically sufficient chemical stability cannot be ensured. If the Si content exceeds 10% by weight, it is not possible to maintain an atomic Si dispersion state. It is a factor that increases the occurrence.
[0012]
The carbon heating element of the present invention made of a Si-containing glassy carbon material having the above-mentioned structural properties is obtained by stirring a hydrolyzate of a thermosetting resin and a Si alkoxide having a single Si atom in one molecule in an organic solvent. It can be manufactured by a method of mixing and gel-forming a cured product obtained by a cross-linking reaction, and then subjecting the molded product to a calcination treatment at a temperature of 800 ° C. or more in a non-oxidizing atmosphere. Alternatively, an aminosilane compound or an epoxysilane compound containing a single Si atom in one molecule is dropped into a thermosetting resin liquid, mixed by stirring, and formed by a reaction between an amino group or an epoxy group and the thermosetting resin. After the aminosilane-containing resin composition or the epoxysilane-containing resin composition is cured and molded, the molded body is calcined and carbonized at a temperature of 800 ° C. or more in a non-oxidizing atmosphere. The specific manufacturing process is as follows.
[0013]
Examples of the thermosetting resin as a raw material of the glassy carbon include, for example, a phenol resin, a furan resin, a polyimide resin, a polycarbodiimide resin, a polyacrylonitrile resin, a pyrene-phenanthrene resin, a polyvinyl chloride resin, and an epoxy resin. A system resin or a mixed resin thereof is used. In particular, a phenolic resin, a furan-based resin, or a mixed resin thereof having a residual carbon ratio of 45% by weight or more when the resin is fired at a temperature of 800 ° C. in a non-oxidizing atmosphere is preferably used.
[0014]
The Si alkoxide having a single Si atom in one molecule selected and used as a Si source is represented by the general formula Si (OR) n or R n Si (OR) n (where R is an alkyl group or an aryl group, and n is The compound is not limited as long as it is a compound represented by an integer of 1 or more. However, compounds such as polysilane, polysiloxane, and polysilazane to which two or more Si atoms are bonded are not included. Examples of usable Si alkoxide having a single Si atom include methoxysilane, ethoxysilane, butoxysilane, propoxysilane, isopropoxysilane, diethoxysilane, dibutoxysilane, dipropoxysilane, trimethoxysilane, triethoxysilane , Tributoxysilane, tripropoxysilane, tetramethoxysilane, tetraethoxysilane, tetrabutoxysilane, tetrapropoxysilane, trimethylmethoxysilane, trimethylethoxysilane, tri-n-propylmethoxysilane, tri-n-propylethoxysilane, tri- -N-butylmethoxysilane, tri-iso-butylmethoxysilane, tricyclohexylmethoxysilane, tricyclohexylethoxysilane, bis (2-ethylhexyl) dimet Shishiran, and bis (2-ethylhexyl) diethoxysilane and the like. However, for the purpose of the present invention, low-molecular-weight tetramethoxysilane [Si (OCH 3 ) 4 ] or tetraethoxysilane [Si (OC 2 H 5 ) 4 ] having good reactivity is preferred, and the latter tetraethoxysilane is particularly preferred. Is preferably used.
[0015]
Si alkoxide having a single Si atom in one molecule (hereinafter simply referred to as “Si alkoxide”) is added so as to have a concentration of 50% by volume or less with respect to the organic solvent, and an appropriate amount of water (Si alkoxide is previously added). (Equivalent to 1 to 2 moles) and hydrolyze, and mixed with a thermosetting resin in an organic solvent. It is preferable that the Si alkoxide and the thermosetting resin are each added to an alcohol-based organic solvent from which water has been removed, sufficiently stirred, and then subjected to an ultrasonic dispersion treatment and then mixed. By sequentially performing the dispersion treatment, the aggregated constituent molecules can be effectively dismantled. For this reason, the reaction and agglomeration of the Si alkoxides in the subsequent operation stage are suppressed, and a stable unimolecular dispersion state is maintained.
[0016]
The mixing of the Si alkoxide and the thermosetting resin is performed by a method of gradually adding the hydrolyzed Si alkoxide solution to the thermosetting resin liquid while stirring the solution. At this time, the addition amount of the thermosetting resin is adjusted to an amount ratio at which the Si content in the glassy carbon structure finally becomes 0.1 to 10% by weight. At the time of mixing, if the solution is alkaline, polycondensation proceeds rapidly to form a spherical polymer. Therefore, it is preferable to adjust the pH of the solution to an acidic side using, for example, an alcohol-soluble organic acid containing no water.
[0017]
When the Si alkoxide solution and the thermosetting resin liquid are mixed, a cross-linking reaction occurs between the C-OH group in the thermosetting resin and the silanol group (Si-OH) of the hydrolyzed Si alkoxide, and the gel is gradually gelled. Since this crosslinking reaction is much faster than the dehydration condensation reaction between silanols, a gelled product in a state where the thermosetting resin is easily crosslinked with -O-Si-O- can be obtained. Therefore, the molded body is poured into a mold before the mixture of the Si alkoxide solution and the thermosetting resin liquid gels, and if necessary, subjected to vacuum defoaming treatment, and then heated from room temperature to 70 ° C. It is preferably formed by a method of curing simultaneously with the formation. As the molding means, an appropriate method such as centrifugal molding, injection molding, transfer molding, compression molding, lamination molding, etc. can be adopted, and is selected according to the desired shape of the heating element.
[0018]
In addition, an aminosilane compound containing a single Si atom in one molecule can be used as a Si source. An aminosilane compound containing a single Si atom in one molecule is represented by the following general formula (Formula 1), and is usually commercially available as an amine-based silane coupling agent. An aminosilane compound containing a single Si atom in one molecule is selectively used because polysilane in which two or more Si atoms are bonded in one molecule causes an agglomeration phenomenon in a mixing step with a thermosetting resin solution. A silane compound having an organic functional group other than an amino group, for example, a methyl group or a vinyl group, does not directly react with a thermosetting resin, so that separation, association, and multiplication (polymerization) occur during mixing. This makes it impossible to disperse Si at the atomic level.
[0019]
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[0020]
Examples of the amine silane coupling agent containing an alkoxy group, 3-aminopropyl triethoxysilane (SiC 9 H 23 NO 3) , N- (2- aminoethyl) -3-aminopropyltrimethoxysilane (SiC 8 H 22 N 2 O 3), N- (2- aminoethyl) -3-aminopropyl methyl dimethoxy silane (SiC 8 H 22 N 2 O 2), p- [N-(2-aminoethyl) aminomethyl] Fenechirutori silane (SiC 14 H 26 N 2 O 3), 4- aminobutyl dimethylmethoxysilane (SiC 7 H 19 NO), 4- aminobutyl triethoxysilane (SiC 10 H 25 NO 3) , N- (2- amino ethyl) -3-aminopropyl tris (2-Echiruhekishiso) silane (SiC 29 H 64 N 2 3), p-aminophenyl trimethoxysilane (SiC 9 H 15 NO 3) , p- aminophenyl triethoxysilane (SiC 9 H 15 NO 3) , 3- (1- aminopropoxy) 3,3-dimethyl-1 - propenyl trimethoxy silane (SiC 11 H 25 NO 4) , 3- aminopropyl tris (methoxyethoxy) silane (SiC 18 H 41 NO 9) , 3- aminopropyldimethylethoxysilane (SiC 7 H 19 NO), 3 - aminopropylmethyldiethoxysilane (SiC 8 H 21 NO 2) , 3- aminopropyltrimethoxysilane (SiC 9 H 23 NO 3) , ω- amino undecyl trimethoxysilane (SiC 14 H 33 NO 3) , 1 -Trimethoxysilyl-2- (p, m-aminomethyl) Phenylethane (SiC 12 H 21 NO 3) , 6- ( aminohexyl aminopropyl) trimethoxysilane (SiC 12 H 30 N 2 O 3), N- ( triethoxysilylpropyl) urea (SiC 10 H 14 N 2 O 4), trimethoxysilylpropyl diethylene triamine (SiC 10 H 27 N 3 O 3) , etc. are exemplified.
[0021]
As the amine-based silane coupling agent containing no alkoxy group, 3-aminopropyl trimethyl silane (SiC 6 H 17 N), such as 3-aminopropyl diethyl methyl silane (SiC 8 H 21 N) and the like.
[0022]
As these aminosilane compounds, when carbonized, organic components other than Si are thermally decomposed and volatilized, so that it is preferable to use one having a molecular weight as low as possible. Therefore, the most preferred amino group-containing silane compound for the present invention is 3-aminopropyltriethoxysilane.
[0023]
The above-mentioned aminosilane compound containing a single Si atom in one molecule (hereinafter, simply referred to as “aminosilane compound”) is directly dropped into a thermosetting resin liquid and stirred and mixed. The amount of the aminosilane compound to be dropped is adjusted so that the content of Si in the glassy carbon structure is finally in the range of 0.1 to 10% by weight, preferably 2.0 to 8% by weight. If the Si content is less than 0.1% by weight, the composite effect such as improvement of oxidation resistance becomes insufficient. If the Si content exceeds 10% by weight, Si in the structure becomes granular to form grain boundaries, and atomic The level of the continuous phase collapses, leading to desorption of fine particles and reduction in mechanical strength.
[0024]
When drop mixing is advanced at this stage, the amino group in the aminosilane compound is bonded to the thermosetting resin in preference to the alkoxy group, and the dehydration condensation reaction proceeds. For example, when 3-aminopropyltriethoxysilane is stirred and mixed while being dropped into a phenolic resin solution, a two-stage reaction as shown in the following chemical formulas 2 and 3 proceeds.
[0025]
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[0026]
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[0027]
Through the above reaction, the aminosilane compound becomes a solution having a homogeneous composition uniformly dispersed in the thermosetting resin. At this stage, the alkoxy group in the aminosilane compound hardly reacts with the thermosetting resin, and the form in which the amino group is bonded to the resin component is relatively reactive with the alkoxy group due to the large molecule around Si. Drops. For this reason, the reaction between the alkoxy group and the resin component is suppressed, and at the same time, the aggregation caused by the polymerization of aminosilanes is suppressed, so that the mixed solution exhibits a very homogeneous continuous phase containing no aggregated particles.
[0028]
Since the aminosilane compound generates heat in the process of mixing with the thermosetting resin liquid, if left as it is, the curing reaction proceeds and a mixed and dispersed state of a heterogeneous composition is likely to occur. In order to avoid such a phenomenon, it is preferable to perform an operation of suppressing the curing reaction by cooling and storing the mixed solution to suppress the curing reaction, and then giving a slow flow to increase the homogeneity of the mixed state.
[0029]
The mixed solution is subjected to vacuum degassing as needed to remove the occluded air, and then molded. The molding means is usually performed by cast molding or centrifugal molding, but compression molding, extrusion molding, transfer molding or the like can be applied at the stage of semi-curing. The molded body is cured by heating to a temperature of 70 to 150 ° C.
[0030]
An epoxysilane compound containing a single Si atom in one molecule is represented by the following general formula (wherein R 1 is a saturated carbon chain or a cyclic carbon chain containing one oxygen, R 2 , R 3 and R 4) Is an alkyl group or an alkoxy group having 1 to 3 carbon atoms.).
[0031]
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[0032]
Examples of such an epoxysilane compound include 3-glycidoxypropylmethyldimethoxysilane, 3-glycidoxypropyldimethylmethoxysilane, 3-glycidoxypropyltrimethoxysilane, 3-glycidoxypropyldimethylethoxysilane, Glycidoxypropylmethyldiethoxysilane, 3-glycidoxypropylmethyldiisopropenoxysilane, 3-glycidoxypropyldiisopropylethoxysilane, 2- (3,4-epoxycyclohexyl) ethyltrimethoxysilane, etc. Can be. However, for the purposes of the present invention, 3-glycidoxypropylmethyldimethoxysilane is most preferably used. The reason for this is that 3-glycidoxypropylmethyldimethoxysilane has a low molecular weight, has a relatively small amount of volatile components during carbonization, and has the advantage of not causing material distortion due to shrinkage.
[0033]
The epoxy silane compound containing a single Si atom in one molecule (hereinafter simply referred to as “epoxy silane compound”) is dropped into the thermosetting resin liquid. The thermosetting resin liquid serves as a carbon source that is converted into glassy carbon by a calcination treatment, and is, for example, a liquid phenol resin, a furan resin, a polyimide resin, a polycarbodiimide resin, a polyacrylonitrile resin, a pyrene resin. A phenanthrene-based resin, a polyvinyl chloride-based resin, an epoxy-based resin, a mixed resin thereof, or the like can be used. Particularly, an initial condensate of a phenol resin or a furan resin having a high residual carbon ratio remaining when the resin is fired at a temperature of 800 ° C. in a non-oxidizing atmosphere, or a mixed resin liquid thereof is suitably used.
[0034]
The dropping of the epoxysilane compound into the thermosetting resin liquid is performed under sufficient stirring conditions. At this time, since the reaction between the epoxysilane compound and the thermosetting resin does not occur, no reaction trouble such as heat generation and thickening of the mixed resin composition occurs. Therefore, there is no need to perform cooling or other complicated reaction suppressing operations, and sufficient fluidity can be ensured even if a large amount of epoxysilane compound is dropped, and air entrained during mixing can be easily degassed. Can be formed without remaining. In addition, even when a silane compound having an alkoxy group is used, the reaction between the alkoxy group and the resin hardly occurs at this time, so that the workability does not decrease due to the gelation.
[0035]
The epoxysilane-containing resin composition obtained by the dropping operation is preferably stored in a fluid state for one day or more in order to further enhance the uniformity of mixing and promote the dispersion at the atomic level. The mixture stored as a low-viscosity fluid liquid has a very homogeneous composition state in which Si is dispersed at the atomic level, such as separation of silane compounds that occurs when mixing silane compounds with only hydrophobic groups such as methyl groups. Does not occur.
[0036]
The epoxy silane-containing resin composition is then subjected to vacuum degassing as necessary to remove occluded air, and then molded into a predetermined shape. The molding means is usually performed by cast molding or centrifugal molding, but compression molding, extrusion molding, transfer molding or the like can also be applied at the semi-cured stage. The formed body is heated to a temperature of 70 to 150 ° C. to be hardened to form a glassy carbon precursor.
[0037]
The epoxy silane compound that has not reacted with the thermosetting resin during the mixing process at room temperature undergoes a ring-opening reaction of the epoxy group at the heating stage during molding and curing, and starts reaction with the resin component. Therefore, by controlling the heating temperature in the molding process, the epoxy silane compound reacts slowly with the resin component while maintaining a uniform dispersion state, and the reaction between the epoxy group and the resin component simultaneously with the curing reaction of the resin through the curing process. proceed. Due to this action, the curing reaction of the resin proceeds at a slow rate, so that the occurrence of distortion due to the reaction between the epoxysilane compound and the resin component is effectively suppressed.
[0038]
For example, it is presumed that the reaction between the epoxysilane compound and the phenolic resin proceeds according to the reaction formula shown in Chemical Formula 5 below.
[0039]
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[0040]
The cured product obtained in this manner is packed in a graphite crucible, or sandwiched between graphite plates, and placed in an electric furnace maintained in an inert atmosphere such as nitrogen or argon, or in a lead hammer furnace, and heated to 800 ° C. or higher. In a temperature range of, preferably, 1000-2500 ° C. to convert the thermosetting resin component into glassy carbon. In this calcining carbonization stage, the deoxidation reaction proceeds, and the Si has a texture characteristic of being distributed as a uniform continuous phase at the atomic level in the glassy carbon structure in the range of 0.1 to 10% by weight.
[0041]
The carbon heating element made of the Si-containing glassy carbon material thus obtained is finally buff-polished or diamond-wrapped, if necessary, to increase the surface smoothness and commercialize the product. In the case of manufacturing a heating element having a complicated shape such as a spiral shape or a comb shape, for example, the molded body before firing and carbonization is processed or molded in consideration of the dimensional shrinkage ratio at the time of carbonization, or the carbon body after firing is formed. Or by any method.
[0042]
The carbon heating element according to the present invention has a composite composition in which Si in the glassy carbon structure is dispersed and contained in the range of 0.1 to 10% by weight, and the atomic level of Si is a uniform continuous phase in the glassy carbon structure. With a tissue property distributed as This structure is different from a structure in which a Si component is dispersed in a fine particle state, and has an alloy-like continuous solid solution phase in which a grain boundary between Si and C does not exist in the structure. Although there is no substantial difference from the single structure, microscopically, the glassy carbon structure has a continuous phase in which a part of C is substituted by Si and bonded by -C-Si-C-. It has a unique complex form.
[0043]
When the heating element is heated to a high temperature, the above-mentioned structural properties effectively suppress the reaction with a trace amount of oxygen or other reactive gas present in the heating device system, and exhibit long-term chemical stability. At the same time, it can be used for a long period of time without generating particles.
[0044]
【Example】
Hereinafter, examples of the present invention will be specifically described in comparison with comparative examples. However, the scope of the present invention is not limited to these examples.
[0045]
Examples 1 to 5, Comparative Examples 1 to 3
Tetraethoxysilane [Si (OC 2 H 5 ) 4 ] is dissolved in ethanol containing no water so as to have a concentration of 50% by volume, stirred with a stirrer for 30 minutes, and then subjected to a dispersion treatment with an ultrasonic vibrator for 2 hours. did. To this solution, 0.03 mol equivalent of acetic acid containing no water and 1 mol equivalent of water were added dropwise to 1 mol of tetraethoxysilane, and the mixture was stirred and stirred for 1 hour with a stirrer to hydrolyze the tetraethoxysilane. . Then, while stirring the hydrolyzed tetraethoxysilane, the phenol resin liquid which was previously dissolved in ethanol containing no water, stirred for 30 minutes with a stirrer, and subjected to a dispersion treatment for 2 hours by an ultrasonic vibrator was gradually added. Subsequently, the mixture was stirred with a stirrer for 1 hour and mixed until uniform. The mixed solution was poured into a mold, defoamed in a vacuum device, and heated from room temperature to 70 ° C. to cure the gel formed by the crosslinking reaction. The obtained cured molded body was transferred to a heating furnace maintained in a nitrogen atmosphere, and heated to 2,000 ° C. at a heating rate of 10 ° C./hr to be fired and carbonized. In this way, Si-containing glassy carbon materials (200 mm in length and 4 mm in thickness) having different Si contents were produced. The physical properties of each of the obtained Si-containing glassy carbon materials were measured and are shown in Table 1.
[0046]
Each of the manufactured plate-shaped Si-containing glassy carbon materials was machined into a disk-shaped heating element shape shown in FIG. In FIG. 1, reference numeral 1 denotes a heating element main body (146 mm in diameter), 2 denotes a slit portion (width 2 mm) provided in the heating element main body 1, and 3 denotes a terminal section. Then, the surface was buffed smoothly using an abrasive having a particle size of # 800 to obtain a carbon heating element. The carbon heating element was mounted in a chamber decompressed to 10 Torr, and the central heating section was heated to 1600 ° C. to generate heat. In this way, the weight loss rate of the carbon heating element after 300 hours of heat generation and the number of particles of 0.3 μm or more that fell into the chamber were measured. The results are shown in Table 2.
[0047]
Examples 6 and 7
3-aminopropyltriethoxysilane (A0750 manufactured by Chisso Corporation) and 3-glycidoxypropylmethyldimethoxysilane [AY43-026 manufactured by Dow Corning Toray Silicone Co., Ltd.] so that the Si content is 5 Wt%. Was dropped into a phenol resin (PR940, manufactured by Sumitomo Durez Co., Ltd.), and the mixture was stirred and mixed for 1 hour. The resin solution to which 3-aminopropyltriethoxysilane was added was once placed in a refrigerator at 2 ° C. to suppress heat generation, and then further gently stirred and mixed for 24 hours. Further, the phenol resin solution to which 3-glycidoxypropylmethyldimethoxysilane was added was subjected to gentle stirring and mixing for 24 hours. Next, the mixed solution was poured into a mold, defoamed in a vacuum device, and then heat-cured from room temperature to 70 ° C. to obtain a resin molded plate. The obtained cured molded body was heated to 2000 ° C. in a nitrogen atmosphere at a rate of 10 ° C./hr and baked and carbonized in the same manner as in Example 1 to obtain a Si-containing glassy carbon material (200 mm in length and width, 200 mm in thickness). 4 mm). The physical properties of the obtained Si-containing glassy carbon material were measured, and the results are shown in Table 1.
[0048]
The Si-containing glassy carbon material thus manufactured was machined and buffed in the same manner as in Example 1 to produce a carbon heating element having the shape shown in FIG. With respect to this carbon heating element, an electric heating test was performed under the same conditions as in Example 1, and the weight loss rate and the number of generated particles after the heating test were measured. The results are also shown in Table 2.
[0049]
Comparative Example 4
A SiC sintered body was machined to produce a heating element having the shape shown in FIG. Table 1 shows the physical characteristics of the SiC heating element in this case, and Table 2 shows the weight loss rate and the number of generated particles after the heat generation test.
[0050]
Comparative Example 5
An isotropic graphite material (manufactured by Tokai Carbon Co., Ltd., G347) was machined to produce a heating element having the shape shown in FIG. 1, and a heating test was conducted under the same conditions as in Example 1. Table 1 shows the physical properties of the graphite heating element in this case, and Table 2 shows the weight loss rate and the number of generated particles after the heat generation test.
[0051]
[Table 1]
[0052]
[Table 2]
[0053]
As is apparent from a consideration of the results in Tables 1 and 2, the carbon heating element made of the Si-containing glassy carbon material according to the example has proper physical properties as a heating element despite containing the Si component. The weight loss rate after the heat generation test is low, and the number of generated particles is extremely small. On the other hand, in Comparative Example 1 in which the Si content is less than 0.1% by weight and Comparative Example 3 in which no Si component is contained, the weight loss rate and the number of generated particles increase, and Comparative Example 2 in which the Si content exceeds 10% by weight. Thus, although the weight reduction rate is small, the number of generated particles increases, and it can be seen that both have problems in long-term stability and non-staining properties. Further, the heating element of Comparative Example 4 made of a SiC sintered body and the heating element of Comparative Example 5 made of an isotropic graphite material both generate remarkable particles, which causes a problem of reduction in yield due to contamination.
[0054]
【The invention's effect】
As described above, according to the present invention, by selecting a Si-containing glassy carbon material in which a certain amount of Si is dispersed and contained in a glassy carbon structure, even at high-temperature heat generation, wear is small and particles are generated from the structure. An extremely low-performance carbon heating element can be provided. Therefore, it is expected to be useful as a heating element of a semiconductor device requiring long-term stable use and non-contamination.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a plan view showing the shape of a heating element manufactured in an example of the present invention.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 Heating element main body 2 Slit part 3 Terminal part