JP3545551B2 - 液体燃料用燃焼器具 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコール類による液体燃料を吸い上げて燃焼する燃焼芯を備えたライター等の液体燃料用燃焼器具に関するものである。
【0002】
特に、本発明は、喫煙具用ライター、トーチ、ランタン等の点火器、照明具などの燃焼器具において、アルコール類を燃料とした際に、製品を長期間貯蔵した場合等に燃焼芯よりの液体燃料の揮発または/および空気中よりの吸湿を防止することに関する。
【0003】
【従来の技術】
一般に、喫煙具用ライター、点火器、トーチ、照明具等の燃焼器具における燃料としては、エチルアルコール等のアルコール燃料、石油ベンジン系のベンジン燃料、ブタンガス、プロパンガス等の液化ガス燃料が利用されている。
【0004】
そして、使用燃料の種類に応じてそれぞれの燃焼器具の性能、使い勝手、設計構造が異なり、それぞれの特徴を有する。
【0005】
例えば、石油ベンジン系炭化水素化合物の混合物によるベンジン燃料の場合は、この燃料がそれぞれ沸点の異なる化合物の混合体であり、燃焼器具に着火した使用初期は沸点の低いベンジン成分が揮発し、順次沸点の高い炭化水素へと揮発成分が移行するため、燃焼時間に応じて燃焼器具内に残留する燃料組成が変化し、このために炎長の変化を生起する。また、ベンジンは揮発性が高くこれを使用する燃焼器具においては、燃料貯蔵部および燃焼芯の部分から揮発を低減する密閉構造が必要であり、この密閉が不十分であると燃料が揮発して失われ、燃料の補充頻度が高く煩雑であり、さらに、このベンジンには特有の臭いがあり、好まれない場合がある。
【0006】
液化ガス燃料の場合には、燃焼器具の使用温度範囲でガス圧が高く、燃料を貯蔵する容器は耐圧構造が必要とされる。また、上記ガス圧の変動に応じて炎長が変化し、特にそのガス圧は温度に対し対数的に大きく変動する特性があり、温度に対する炎長の変化が大きい問題を有する。この炎長変化を少なくするためには燃焼器具の燃料供給機構に温度補正を行う特別の設計対策を要し、構造が複雑になると共にコスト面で不利となる。
【0007】
一方、アルコール燃料の場合には、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール等の低級1価アルコールは常温で液体であり、蒸気圧も比較的低く、燃料貯蔵部および燃焼芯に対する密閉はアルコールが揮散しない程度の密閉構造でよく、燃焼器具の構造の簡素化、コスト面で有利となるが、アルコール燃料を注入した燃焼器具を使用者が使用を開始する以前に、長期に保存、保管すると、燃焼芯の密閉構造を通じてアルコール燃料の揮発放散によって貯蔵燃料量が低減したり、アルコール燃料の吸湿性によって着火性が低下する問題を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題点に対しては、前述の燃焼芯の密閉構造のシール性を高めることによって解消されるが、構造の複雑化、コストの上昇を招くことになる。そして、実際には、上記密閉構造としては、ゴムその他のパッキングを介して或いは金属蓋の嵌合による比較的簡易な構造がとられることになり、シール性のバラツキ等により前述のような揮発または吸湿の問題が生じる恐れがある。
【0009】
特に、燃焼器具に貯蔵した液体燃料の全体量に対して、その燃焼芯の大気との接触面積が小さいものでは、この燃焼芯からの燃料の揮発による影響は少ないが、燃料貯蔵量の少ない燃焼器具においては、その影響が大きくなる。また、この燃料の揮発に対しては、燃料を補給することによって対処することは可能であるが、液体燃料の注入補給が不能な使い捨て方式の燃焼器具においては、貯蔵している燃料量の減少は商品の信頼性を損なう問題を有している。
【0010】
一方、アルコール類を主体とした液体燃料は吸湿性を有するものであって、燃焼芯が長時間放置されると、表面に燃料が浸出した燃焼芯が湿気を含む大気に接触することで、この燃焼芯の表面部分に水分が吸収される。この吸湿状態の燃焼芯に対して着火を行うべく着火手段によって火花を飛ばしても、燃料の揮発分が薄くて着火が行えず燃焼器具としての機能が発揮されない問題を有し、商品の信頼性が低下することになる。
【0011】
そこで、本発明では、上記のようなアルコールを主成分とした液体燃料を使用するについての揮発と吸湿に伴う問題に対処して、長期間の保存後においても注入した燃料量の減少が少なく、良好な着火性が得られるようにした液体燃料用燃焼器具を提供せんとするものである。
【0012】
つまり、低級1価アルコールを主成分としたアルコール燃料を使用する燃焼器具では、石油ベンジン系の混合炭化水素化合物を使用する燃焼器具におけるベンジンの揮発性への考慮、液化ガス燃料を使用する燃焼器具での高圧ガスへの考慮を不要として、構造の簡素化が可能となり、燃焼炎の炎長の安定化等の優れた特性が得られ、これらに加えて厳密な密閉構造を採用することなく比較定簡易な密閉構造によって保存時の燃料揮発の抑制および吸湿作用の抑制を図って、製品が長期保存されてもその品質が安定して保持できるようにしたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の液体燃料用燃焼器具は、メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備え、この燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の揮発防止液を塗布または含浸してなることを特徴とするものである。
【0014】
前記揮発防止液は、前記液体燃料より沸点の高い炭化水素類または前記液体燃料より沸点の高いアルコール類を含有するものが好適である。この炭化水素類としては、特に、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンの少なくとも1種を含んでいることが望ましい。また、前記アルコール類としては、特に、ベンジルアルコールの塗布または含浸が望ましいが、アルコール類の場合には吸湿防止には寄与しない。
【0015】
本発明の他の液体燃料用燃焼器具は、メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備え、この燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の吸湿防止液を塗布または含浸してなることを特徴とするものである。
【0016】
前記吸湿防止液は、前記液体燃料より沸点の高い炭化水素類の塗布、あるいは燃焼芯内においてこれらを燃料に含有するものが好適である。この炭化水素類としては、オクタン、ノナン等が使用可能であるが、特に、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンの少なくとも1種を塗布、あるいはこれらが燃焼芯内の燃料に含まれていることが望ましい。これらのn−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンは、前記揮発防止液としても使用でき、両者の機能を有し特に好適である。
【0017】
一方、本発明のさらに他の液体燃料用燃焼器具は、メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備え、この燃焼芯の一部に揮発防止液を含浸し、他部に吸湿防止液を含浸してなることを特徴とするものである。
【0018】
上記のような燃焼器具においては、その燃焼芯には揮発防止液または/および吸湿防止液が存在することで、保存期間中において燃料貯蔵部からの液体燃料の揮発を防止すると共に、燃焼芯の表面に水分が吸着する吸湿防止を行い、さらに、上記揮発防止液および吸湿防止液は可燃性で通常の着火手段によって着火が可能であって、使用初期において燃焼除去され、その後には前記液体燃料が燃焼芯の表面に浸出して燃焼することになる。
【0019】
【発明の効果】
本発明の液体燃料用燃焼器具によれば、燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の揮発防止液または/および吸湿防止液を塗布または含浸したことにより、この燃焼芯によって吸い上げられる低級1価アルコールを主成分とする液体燃料は、保存期間中には、上記揮発防止液によって燃焼芯表面からの揮発が防止されて貯蔵燃料量の減少が阻止されるか、または、上記吸湿防止液によって燃焼芯表面に吸湿によって水分が吸着するのが防止されて着火不良の発生が阻止され、長期間の保存後においても、貯蔵している燃料が揮発減少することなく、さらに、吸湿による着火性の低下も発生することなく、燃焼器具としての商品性能を維持することができるものである。これにより、燃焼器具の密閉性の簡素化、燃焼炎の安定性等のアルコールを主成分とする液体燃料用燃焼器具としての特徴が十分に発揮できるものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の液体燃料用燃焼器具の実施の形態を図面に沿って説明する。図1に液体燃料用燃焼器具の一例としての喫煙具用ライターの概略断面構造を示している。
【0021】
本例のライター1は、有底筒状のタンク2を有し、このタンク2の内部には繊維材3(中綿)が挿入され、タンク2の上部には上蓋4が固着されて、液体燃料を貯蔵する燃料貯蔵部5が構成されている。
【0022】
例えば、上記タンク2は、ポリプロピレンによる成形品で、内容積が5cm3 に設けられている。繊維材3は、太さが1〜2デニールのポリプロピレン繊維を、タンク2内に密度0.1g/cm3 で押し込んでなり、この繊維材3にエチルアルコール95wt%、n−ヘキサン5wt%を混合した液体燃料が4cc注入含浸されて貯蔵される。
【0023】
さらに、前記上蓋4の中央をタンク2内に垂直に貫通して燃焼芯6が嵌挿されている。この燃焼芯6は、上端で燃料を燃焼する燃焼部61と下部の液体燃料を吸い上げ燃焼部61に供給する吸上部62とを有している。この例では、上部の燃焼部61と下方の吸上部62とは異なる素材で形成され、燃焼部61の下端部と吸上部62の上端部とが接触された状態で両者が連結部材63によって結合されている。
【0024】
前記燃焼部61は、ガラス繊維糸を束ね、これを中間で折り曲げて、折曲部分を金属による円筒状の連結部材63に挿入し、楔状の固定部材64を押し込んで止めている。また、前記吸上部62は、ポリエチレン粉体を成型焼結して、径の大きい頭部62aを有する棒状に形成してなり、この頭部62aを前記連結部材63の下部に挿入して、前記燃焼部61の下端部に接触させ、この状態で連結部材63の下端部をかしめて、燃焼部61と吸上部62とを結合して一体化することによって燃焼芯6を構成したものである。
【0025】
なお、予め連結部材63の下端部を小径に絞っておき、この連結部材63の内部に吸上部62の脚部を挿入してその頭部62aを係止した後、前記燃焼部61の折曲部分を挿入して固定部材64の押し込みで両者を接触した状態で固定するようにしてもよい。
【0026】
そして、上記のような燃焼芯6に対し、少なくともその燃焼部61に、さらに吸上部62に、予め揮発防止液および吸湿防止液として、液体燃料より沸点の高い炭化水素類を塗布または含浸している。この炭化水素類として、n−デカン、n−ウンデカンまたはn−ドデカンを使用する。
【0027】
また、他の実施の形態としては、前記燃焼芯6の少なくともその燃焼部61に、さらに吸上部62に、予め揮発防止液として前記液体燃料より沸点の高いアルコール類を塗布または含浸している。このアルコール類として、ベンジルアルコールを使用している。
【0028】
なお、前記燃焼芯6は、燃焼部61のガラス繊維の太さ、本数、長さにより、着火した場合の燃料消費量、炎の形状、炎の長さが設定される。これに対し、前記吸上部62は、その太さ、焼結ポリエチレン粉体の粒径、焼結密度等により、内部の空隙の形成態様が異なり、燃料の吸い上げ、供給特性が設定される。また、吸上部62の頭部62aは径が大きく形成されて容積が大きく、液体燃料を保持する燃料溜を構成するもので、この燃料溜により燃焼の安定化が得られる。
【0029】
例えば、喫煙具用ライターに組み込む燃焼芯6の場合には、前記燃焼部61のガラス繊維は、太さが6μm、繊維密度(目付量)が150mg/cm3 、長さが20mmのものを半分に折り曲げて外径が3mm、長さが10mmとなったものを連結部材63に挿入して、連結部材63の先端部から5mmの長さ突出するように設けている。一方、吸上部62は、平均粒子サイズが140メッシュで、70〜200メッシュの粒子の混合物であるポリエチレンの粉体を成形型に入れ、170℃で10分間焼結してなり、頭部62aの外径が4.2mmで長さが3mm、下方の脚部は外径4mm、長さが37mmに形成している。
【0030】
上記のような揮発防止液または/および吸湿防止液を塗布または含浸させた燃焼芯6は、燃焼器具としてのライター1に組み込んでなる。この燃焼芯6においては、その連結部材63の部分が上蓋4に固着されている。この燃焼芯6の吸上部62の下端部は前記タンク2内の繊維材3に接触し、該繊維材3に含浸された液体燃料を毛管現象を用いて吸い上げる。そして、この燃焼芯6の燃焼部61には着火され炎を生じて燃焼する。
【0031】
さらに前記上蓋4には燃焼芯6の燃焼部61の先端と対向して着火手段10が配設され、この着火手段10は上蓋4に固定されるブラケット11内に上下方向に移動可能に発火石12が挿入され、ブラケット11の上端には回転ヤスリ13が設けられ、該ヤスリ13の周面に発火石12の先端が石押しスプリング14の付勢力によって押圧される構造に設けられ、回転ヤスリ13の回転操作によって燃焼芯6に向けて火花が飛ぶように設けられている。
【0032】
また、前記燃焼芯6および着火手段10の上方を開閉可能に覆うキャップ16が設けられ、このキャップ16は上記上蓋4の上面の一端部にピン17によって回動可能に枢支されている。上記キャップ16とタンク2または上蓋4との当接部分にはシール材18が介装されて気密性を得ている。
【0033】
なお、前記燃焼芯6における燃焼部61は、耐熱性焼結体で構成するようにしてもよい。すなわち、燃焼部61を多孔ガラス焼結体または多孔セラミック焼結体によって形成し、内部には連続気泡(毛管通路)を含んでいる。また、吸上部62は、繊維体を接着剤を使用して棒状に成形した繊維成形体、繊維体を接着剤を使用しないで結束した繊維成形体で形成してもよい。
【0034】
さらに、燃焼芯6の燃焼部61と吸上部62とを、同一素材によって一体に形成するようにしてもよく、この場合においても予め揮発防止液または/および吸湿防止液を含浸させている。この同一素材としては、例えば、ガラス繊維(長さ55mm、重さ0.2g)を、直径が1.4mmになるように棒状に束ね、さらにその外周を木綿繊維で覆い、直径2.8mmになるように銅線を巻き付けて補強して、多孔質棒状に構成される。この燃焼芯の芯先端燃焼部は、所定の炎長が得られるように突出して配設される。
【0035】
なお、前記のような実施の形態および後述の実験例では、その燃焼芯に対して燃焼部のみに、または燃焼部と吸上部とに、1種類の揮発防止液または吸湿防止液を含浸させているが、燃焼部に揮発防止液または吸湿防止液を、吸上部にはこれと異なる吸湿防止液または揮発防止液を含浸させるようにして、両者の防止機能を得るようにしてもよい。
【0036】
さらに、前記揮発防止液としては、上記例の他、液体燃料より沸点が高い炭化水素類またはアルコール類であれば、液体燃料より揮発性が低いことで揮発防止効果が期待できるものであり、保存環境等を考慮して種々の組成のものが適宜使用可能である。同様に、前記吸湿防止液としては、炭化水素類は基本的に吸湿性がないことで、前記液体燃料より沸点が高いものであれば、燃焼芯に保持されて吸湿防止機能が得られるものであり、保存環境等を考慮して種々の組成のものが適宜使用可能である。
【0037】
次に、前記喫煙具用ライターを使用して、揮発・吸湿防止処理の効果を評価した実験結果を示す。
【0038】
<実験例1>
この実験は、前記図1に示すような燃焼芯を備えたライターを使用し、前記のような揮発防止液を含浸させたものと、含浸させていないものとで、液体燃料の自然蒸発速度を測定した。
【0039】
前述の液体燃料をライターに4cc注入し、そのキャップを開放し、自然放置した際の時間の経過に対する燃料蒸発量を求めた。揮発防止液としては、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンを使用し、燃焼芯の燃焼部にのみ含浸させ、これらを含浸させていない未処理(液体燃料が浸出)のものと比較している。
【0040】
その結果を図2のグラフに示す。未処理のもの(短破線)に対して、n−デカン(長破線)、n−ウンデカン(1点鎖線)、n−ドデカン(実線)を含浸したものが順に液体燃料揮発量が低下し、揮発防止作用が大きくなっている。
【0041】
なお、液体燃料のみの揮発量を求めることは困難で、揮発防止液を含めた揮発量を測定している(実験例2も同様)。
【0042】
<実験例2>
この実験は、揮発防止液としてベンジルアルコールを使用し、実験例1と同様の自然蒸発速度を測定したものである。
【0043】
その結果を図3のグラフに示す。1点鎖線で示すベンジルアルコールを含浸させていない未処理のものに対して、実線で示すベンジルアルコールを燃焼部にのみ含浸させたもの、および、破線で示すベンジルアルコールを燃焼部および吸上部の両方に含浸させたものでは、大きな揮発防止効果が得られている。
【0044】
<実験例3>
この実験は、燃焼芯の吸湿性に伴う着火性の変化を測定した。前記と同様の図1のライターを使用し、吸湿防止液として、前記n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンを使用し、燃焼部のみ、または全体に含浸させ、ライターのキャップを開放し、湿度85%、室温22℃の雰囲気中に放置した際の時間の経過に対する回転ヤスリによる着火性を求めた。
【0045】
結果を表1に示す。着火性の判定は、○が着火するまでに回転ヤスリを擦った回数が1〜3回以下、×が10回以上擦っても着火しなかった着火不能状態を示している。吸湿防止液を含浸していない未処理のものでは放置時間が5分を経過すると、着火燃焼が行えず使用不能となった。これに対し、吸湿防止液を含浸したものでは、いずれも放置時間が増大しても着火が行え、良好な燃焼状態となり大きな吸湿防止効果が得られている。
【0046】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る液体燃料用燃焼器具の一例としてのライターの概略断面図
【図2】揮発防止液として炭化水素類を使用した場合の燃料揮発量を求めた実験例1の結果を示すグラフ
【図3】揮発防止液としてベンジルアルコールを使用した場合の燃料揮発量を求めた実験例2の結果を示すグラフ
【符号の説明】
1 ライター
2 タンク
3 繊維材
5 燃料貯留部
6 燃焼芯
61 燃焼部
62 吸上部
10 着火手段
16 キャップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルコール類による液体燃料を吸い上げて燃焼する燃焼芯を備えたライター等の液体燃料用燃焼器具に関するものである。
【0002】
特に、本発明は、喫煙具用ライター、トーチ、ランタン等の点火器、照明具などの燃焼器具において、アルコール類を燃料とした際に、製品を長期間貯蔵した場合等に燃焼芯よりの液体燃料の揮発または/および空気中よりの吸湿を防止することに関する。
【0003】
【従来の技術】
一般に、喫煙具用ライター、点火器、トーチ、照明具等の燃焼器具における燃料としては、エチルアルコール等のアルコール燃料、石油ベンジン系のベンジン燃料、ブタンガス、プロパンガス等の液化ガス燃料が利用されている。
【0004】
そして、使用燃料の種類に応じてそれぞれの燃焼器具の性能、使い勝手、設計構造が異なり、それぞれの特徴を有する。
【0005】
例えば、石油ベンジン系炭化水素化合物の混合物によるベンジン燃料の場合は、この燃料がそれぞれ沸点の異なる化合物の混合体であり、燃焼器具に着火した使用初期は沸点の低いベンジン成分が揮発し、順次沸点の高い炭化水素へと揮発成分が移行するため、燃焼時間に応じて燃焼器具内に残留する燃料組成が変化し、このために炎長の変化を生起する。また、ベンジンは揮発性が高くこれを使用する燃焼器具においては、燃料貯蔵部および燃焼芯の部分から揮発を低減する密閉構造が必要であり、この密閉が不十分であると燃料が揮発して失われ、燃料の補充頻度が高く煩雑であり、さらに、このベンジンには特有の臭いがあり、好まれない場合がある。
【0006】
液化ガス燃料の場合には、燃焼器具の使用温度範囲でガス圧が高く、燃料を貯蔵する容器は耐圧構造が必要とされる。また、上記ガス圧の変動に応じて炎長が変化し、特にそのガス圧は温度に対し対数的に大きく変動する特性があり、温度に対する炎長の変化が大きい問題を有する。この炎長変化を少なくするためには燃焼器具の燃料供給機構に温度補正を行う特別の設計対策を要し、構造が複雑になると共にコスト面で不利となる。
【0007】
一方、アルコール燃料の場合には、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール等の低級1価アルコールは常温で液体であり、蒸気圧も比較的低く、燃料貯蔵部および燃焼芯に対する密閉はアルコールが揮散しない程度の密閉構造でよく、燃焼器具の構造の簡素化、コスト面で有利となるが、アルコール燃料を注入した燃焼器具を使用者が使用を開始する以前に、長期に保存、保管すると、燃焼芯の密閉構造を通じてアルコール燃料の揮発放散によって貯蔵燃料量が低減したり、アルコール燃料の吸湿性によって着火性が低下する問題を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題点に対しては、前述の燃焼芯の密閉構造のシール性を高めることによって解消されるが、構造の複雑化、コストの上昇を招くことになる。そして、実際には、上記密閉構造としては、ゴムその他のパッキングを介して或いは金属蓋の嵌合による比較的簡易な構造がとられることになり、シール性のバラツキ等により前述のような揮発または吸湿の問題が生じる恐れがある。
【0009】
特に、燃焼器具に貯蔵した液体燃料の全体量に対して、その燃焼芯の大気との接触面積が小さいものでは、この燃焼芯からの燃料の揮発による影響は少ないが、燃料貯蔵量の少ない燃焼器具においては、その影響が大きくなる。また、この燃料の揮発に対しては、燃料を補給することによって対処することは可能であるが、液体燃料の注入補給が不能な使い捨て方式の燃焼器具においては、貯蔵している燃料量の減少は商品の信頼性を損なう問題を有している。
【0010】
一方、アルコール類を主体とした液体燃料は吸湿性を有するものであって、燃焼芯が長時間放置されると、表面に燃料が浸出した燃焼芯が湿気を含む大気に接触することで、この燃焼芯の表面部分に水分が吸収される。この吸湿状態の燃焼芯に対して着火を行うべく着火手段によって火花を飛ばしても、燃料の揮発分が薄くて着火が行えず燃焼器具としての機能が発揮されない問題を有し、商品の信頼性が低下することになる。
【0011】
そこで、本発明では、上記のようなアルコールを主成分とした液体燃料を使用するについての揮発と吸湿に伴う問題に対処して、長期間の保存後においても注入した燃料量の減少が少なく、良好な着火性が得られるようにした液体燃料用燃焼器具を提供せんとするものである。
【0012】
つまり、低級1価アルコールを主成分としたアルコール燃料を使用する燃焼器具では、石油ベンジン系の混合炭化水素化合物を使用する燃焼器具におけるベンジンの揮発性への考慮、液化ガス燃料を使用する燃焼器具での高圧ガスへの考慮を不要として、構造の簡素化が可能となり、燃焼炎の炎長の安定化等の優れた特性が得られ、これらに加えて厳密な密閉構造を採用することなく比較定簡易な密閉構造によって保存時の燃料揮発の抑制および吸湿作用の抑制を図って、製品が長期保存されてもその品質が安定して保持できるようにしたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の液体燃料用燃焼器具は、メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備え、この燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の揮発防止液を塗布または含浸してなることを特徴とするものである。
【0014】
前記揮発防止液は、前記液体燃料より沸点の高い炭化水素類または前記液体燃料より沸点の高いアルコール類を含有するものが好適である。この炭化水素類としては、特に、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンの少なくとも1種を含んでいることが望ましい。また、前記アルコール類としては、特に、ベンジルアルコールの塗布または含浸が望ましいが、アルコール類の場合には吸湿防止には寄与しない。
【0015】
本発明の他の液体燃料用燃焼器具は、メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備え、この燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の吸湿防止液を塗布または含浸してなることを特徴とするものである。
【0016】
前記吸湿防止液は、前記液体燃料より沸点の高い炭化水素類の塗布、あるいは燃焼芯内においてこれらを燃料に含有するものが好適である。この炭化水素類としては、オクタン、ノナン等が使用可能であるが、特に、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンの少なくとも1種を塗布、あるいはこれらが燃焼芯内の燃料に含まれていることが望ましい。これらのn−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンは、前記揮発防止液としても使用でき、両者の機能を有し特に好適である。
【0017】
一方、本発明のさらに他の液体燃料用燃焼器具は、メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備え、この燃焼芯の一部に揮発防止液を含浸し、他部に吸湿防止液を含浸してなることを特徴とするものである。
【0018】
上記のような燃焼器具においては、その燃焼芯には揮発防止液または/および吸湿防止液が存在することで、保存期間中において燃料貯蔵部からの液体燃料の揮発を防止すると共に、燃焼芯の表面に水分が吸着する吸湿防止を行い、さらに、上記揮発防止液および吸湿防止液は可燃性で通常の着火手段によって着火が可能であって、使用初期において燃焼除去され、その後には前記液体燃料が燃焼芯の表面に浸出して燃焼することになる。
【0019】
【発明の効果】
本発明の液体燃料用燃焼器具によれば、燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の揮発防止液または/および吸湿防止液を塗布または含浸したことにより、この燃焼芯によって吸い上げられる低級1価アルコールを主成分とする液体燃料は、保存期間中には、上記揮発防止液によって燃焼芯表面からの揮発が防止されて貯蔵燃料量の減少が阻止されるか、または、上記吸湿防止液によって燃焼芯表面に吸湿によって水分が吸着するのが防止されて着火不良の発生が阻止され、長期間の保存後においても、貯蔵している燃料が揮発減少することなく、さらに、吸湿による着火性の低下も発生することなく、燃焼器具としての商品性能を維持することができるものである。これにより、燃焼器具の密閉性の簡素化、燃焼炎の安定性等のアルコールを主成分とする液体燃料用燃焼器具としての特徴が十分に発揮できるものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の液体燃料用燃焼器具の実施の形態を図面に沿って説明する。図1に液体燃料用燃焼器具の一例としての喫煙具用ライターの概略断面構造を示している。
【0021】
本例のライター1は、有底筒状のタンク2を有し、このタンク2の内部には繊維材3(中綿)が挿入され、タンク2の上部には上蓋4が固着されて、液体燃料を貯蔵する燃料貯蔵部5が構成されている。
【0022】
例えば、上記タンク2は、ポリプロピレンによる成形品で、内容積が5cm3 に設けられている。繊維材3は、太さが1〜2デニールのポリプロピレン繊維を、タンク2内に密度0.1g/cm3 で押し込んでなり、この繊維材3にエチルアルコール95wt%、n−ヘキサン5wt%を混合した液体燃料が4cc注入含浸されて貯蔵される。
【0023】
さらに、前記上蓋4の中央をタンク2内に垂直に貫通して燃焼芯6が嵌挿されている。この燃焼芯6は、上端で燃料を燃焼する燃焼部61と下部の液体燃料を吸い上げ燃焼部61に供給する吸上部62とを有している。この例では、上部の燃焼部61と下方の吸上部62とは異なる素材で形成され、燃焼部61の下端部と吸上部62の上端部とが接触された状態で両者が連結部材63によって結合されている。
【0024】
前記燃焼部61は、ガラス繊維糸を束ね、これを中間で折り曲げて、折曲部分を金属による円筒状の連結部材63に挿入し、楔状の固定部材64を押し込んで止めている。また、前記吸上部62は、ポリエチレン粉体を成型焼結して、径の大きい頭部62aを有する棒状に形成してなり、この頭部62aを前記連結部材63の下部に挿入して、前記燃焼部61の下端部に接触させ、この状態で連結部材63の下端部をかしめて、燃焼部61と吸上部62とを結合して一体化することによって燃焼芯6を構成したものである。
【0025】
なお、予め連結部材63の下端部を小径に絞っておき、この連結部材63の内部に吸上部62の脚部を挿入してその頭部62aを係止した後、前記燃焼部61の折曲部分を挿入して固定部材64の押し込みで両者を接触した状態で固定するようにしてもよい。
【0026】
そして、上記のような燃焼芯6に対し、少なくともその燃焼部61に、さらに吸上部62に、予め揮発防止液および吸湿防止液として、液体燃料より沸点の高い炭化水素類を塗布または含浸している。この炭化水素類として、n−デカン、n−ウンデカンまたはn−ドデカンを使用する。
【0027】
また、他の実施の形態としては、前記燃焼芯6の少なくともその燃焼部61に、さらに吸上部62に、予め揮発防止液として前記液体燃料より沸点の高いアルコール類を塗布または含浸している。このアルコール類として、ベンジルアルコールを使用している。
【0028】
なお、前記燃焼芯6は、燃焼部61のガラス繊維の太さ、本数、長さにより、着火した場合の燃料消費量、炎の形状、炎の長さが設定される。これに対し、前記吸上部62は、その太さ、焼結ポリエチレン粉体の粒径、焼結密度等により、内部の空隙の形成態様が異なり、燃料の吸い上げ、供給特性が設定される。また、吸上部62の頭部62aは径が大きく形成されて容積が大きく、液体燃料を保持する燃料溜を構成するもので、この燃料溜により燃焼の安定化が得られる。
【0029】
例えば、喫煙具用ライターに組み込む燃焼芯6の場合には、前記燃焼部61のガラス繊維は、太さが6μm、繊維密度(目付量)が150mg/cm3 、長さが20mmのものを半分に折り曲げて外径が3mm、長さが10mmとなったものを連結部材63に挿入して、連結部材63の先端部から5mmの長さ突出するように設けている。一方、吸上部62は、平均粒子サイズが140メッシュで、70〜200メッシュの粒子の混合物であるポリエチレンの粉体を成形型に入れ、170℃で10分間焼結してなり、頭部62aの外径が4.2mmで長さが3mm、下方の脚部は外径4mm、長さが37mmに形成している。
【0030】
上記のような揮発防止液または/および吸湿防止液を塗布または含浸させた燃焼芯6は、燃焼器具としてのライター1に組み込んでなる。この燃焼芯6においては、その連結部材63の部分が上蓋4に固着されている。この燃焼芯6の吸上部62の下端部は前記タンク2内の繊維材3に接触し、該繊維材3に含浸された液体燃料を毛管現象を用いて吸い上げる。そして、この燃焼芯6の燃焼部61には着火され炎を生じて燃焼する。
【0031】
さらに前記上蓋4には燃焼芯6の燃焼部61の先端と対向して着火手段10が配設され、この着火手段10は上蓋4に固定されるブラケット11内に上下方向に移動可能に発火石12が挿入され、ブラケット11の上端には回転ヤスリ13が設けられ、該ヤスリ13の周面に発火石12の先端が石押しスプリング14の付勢力によって押圧される構造に設けられ、回転ヤスリ13の回転操作によって燃焼芯6に向けて火花が飛ぶように設けられている。
【0032】
また、前記燃焼芯6および着火手段10の上方を開閉可能に覆うキャップ16が設けられ、このキャップ16は上記上蓋4の上面の一端部にピン17によって回動可能に枢支されている。上記キャップ16とタンク2または上蓋4との当接部分にはシール材18が介装されて気密性を得ている。
【0033】
なお、前記燃焼芯6における燃焼部61は、耐熱性焼結体で構成するようにしてもよい。すなわち、燃焼部61を多孔ガラス焼結体または多孔セラミック焼結体によって形成し、内部には連続気泡(毛管通路)を含んでいる。また、吸上部62は、繊維体を接着剤を使用して棒状に成形した繊維成形体、繊維体を接着剤を使用しないで結束した繊維成形体で形成してもよい。
【0034】
さらに、燃焼芯6の燃焼部61と吸上部62とを、同一素材によって一体に形成するようにしてもよく、この場合においても予め揮発防止液または/および吸湿防止液を含浸させている。この同一素材としては、例えば、ガラス繊維(長さ55mm、重さ0.2g)を、直径が1.4mmになるように棒状に束ね、さらにその外周を木綿繊維で覆い、直径2.8mmになるように銅線を巻き付けて補強して、多孔質棒状に構成される。この燃焼芯の芯先端燃焼部は、所定の炎長が得られるように突出して配設される。
【0035】
なお、前記のような実施の形態および後述の実験例では、その燃焼芯に対して燃焼部のみに、または燃焼部と吸上部とに、1種類の揮発防止液または吸湿防止液を含浸させているが、燃焼部に揮発防止液または吸湿防止液を、吸上部にはこれと異なる吸湿防止液または揮発防止液を含浸させるようにして、両者の防止機能を得るようにしてもよい。
【0036】
さらに、前記揮発防止液としては、上記例の他、液体燃料より沸点が高い炭化水素類またはアルコール類であれば、液体燃料より揮発性が低いことで揮発防止効果が期待できるものであり、保存環境等を考慮して種々の組成のものが適宜使用可能である。同様に、前記吸湿防止液としては、炭化水素類は基本的に吸湿性がないことで、前記液体燃料より沸点が高いものであれば、燃焼芯に保持されて吸湿防止機能が得られるものであり、保存環境等を考慮して種々の組成のものが適宜使用可能である。
【0037】
次に、前記喫煙具用ライターを使用して、揮発・吸湿防止処理の効果を評価した実験結果を示す。
【0038】
<実験例1>
この実験は、前記図1に示すような燃焼芯を備えたライターを使用し、前記のような揮発防止液を含浸させたものと、含浸させていないものとで、液体燃料の自然蒸発速度を測定した。
【0039】
前述の液体燃料をライターに4cc注入し、そのキャップを開放し、自然放置した際の時間の経過に対する燃料蒸発量を求めた。揮発防止液としては、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンを使用し、燃焼芯の燃焼部にのみ含浸させ、これらを含浸させていない未処理(液体燃料が浸出)のものと比較している。
【0040】
その結果を図2のグラフに示す。未処理のもの(短破線)に対して、n−デカン(長破線)、n−ウンデカン(1点鎖線)、n−ドデカン(実線)を含浸したものが順に液体燃料揮発量が低下し、揮発防止作用が大きくなっている。
【0041】
なお、液体燃料のみの揮発量を求めることは困難で、揮発防止液を含めた揮発量を測定している(実験例2も同様)。
【0042】
<実験例2>
この実験は、揮発防止液としてベンジルアルコールを使用し、実験例1と同様の自然蒸発速度を測定したものである。
【0043】
その結果を図3のグラフに示す。1点鎖線で示すベンジルアルコールを含浸させていない未処理のものに対して、実線で示すベンジルアルコールを燃焼部にのみ含浸させたもの、および、破線で示すベンジルアルコールを燃焼部および吸上部の両方に含浸させたものでは、大きな揮発防止効果が得られている。
【0044】
<実験例3>
この実験は、燃焼芯の吸湿性に伴う着火性の変化を測定した。前記と同様の図1のライターを使用し、吸湿防止液として、前記n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンを使用し、燃焼部のみ、または全体に含浸させ、ライターのキャップを開放し、湿度85%、室温22℃の雰囲気中に放置した際の時間の経過に対する回転ヤスリによる着火性を求めた。
【0045】
結果を表1に示す。着火性の判定は、○が着火するまでに回転ヤスリを擦った回数が1〜3回以下、×が10回以上擦っても着火しなかった着火不能状態を示している。吸湿防止液を含浸していない未処理のものでは放置時間が5分を経過すると、着火燃焼が行えず使用不能となった。これに対し、吸湿防止液を含浸したものでは、いずれも放置時間が増大しても着火が行え、良好な燃焼状態となり大きな吸湿防止効果が得られている。
【0046】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る液体燃料用燃焼器具の一例としてのライターの概略断面図
【図2】揮発防止液として炭化水素類を使用した場合の燃料揮発量を求めた実験例1の結果を示すグラフ
【図3】揮発防止液としてベンジルアルコールを使用した場合の燃料揮発量を求めた実験例2の結果を示すグラフ
【符号の説明】
1 ライター
2 タンク
3 繊維材
5 燃料貯留部
6 燃焼芯
61 燃焼部
62 吸上部
10 着火手段
16 キャップ
Claims (8)
- メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備えたライター等の液体燃料用燃焼器具において、前記燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の揮発防止液を塗布または含浸してなることを特徴とする液体燃料用燃焼器具。
- 前記揮発防止液が、前記液体燃料より沸点の高い炭化水素類または前記液体燃料より沸点の高いアルコール類を含有することを特徴とする請求項1に記載の液体燃料用燃焼器具。
- 前記揮発防止液が、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料用燃焼器具。
- 前記揮発防止液が、ベンジルアルコールを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料用燃焼器具。
- メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備えたライター等の液体燃料用燃焼器具において、前記燃焼芯の少なくとも一部に予め、可燃性の吸湿防止液を塗布または含浸してなることを特徴とする液体燃料用燃焼器具。
- 前記吸湿防止液が、前記液体燃料より沸点の高い炭化水素類を含有することを特徴とする請求項5に記載の液体燃料用燃焼器具。
- 前記吸湿防止液が、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項5に記載の液体燃料用燃焼器具。
- メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコール等の低級1価アルコールを主成分とした液体燃料を使用し、毛管現象を用いて吸い上げ燃焼する燃焼芯を備えたライター等の液体燃料用燃焼器具において、前記燃焼芯の一部に揮発防止液を含浸し、他部に吸湿防止液を含浸してなることを特徴とする液体燃料用燃焼器具。
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