JP3542968B2 - 病気または罹病性の特徴を検出するための免疫学的検定法 - Google Patents
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Description
発明の分野
ここに開示される本発明は、病気および罹病性の診断および予後に関する遺伝医学の分野、特に腫瘍学の分野にある。より詳細には、本発明は、標的とされる全長タンパク質の細胞レベルを検出する免疫学的検定法に関し、標的とされる全長タンパク質の異常に低いレベルまたはそのような標的とされる全長タンパク質の不存在は、被験者の遺伝子における突然変異を示す。関心のある遺伝子突然変異は、病気または罹病性、例えば癌または癌になる素因に関するものである。
【0002】
発明の背景
有害な突然変異対立遺伝子のキャリアの検出は、患者の臨床的治療を導くのに医学的に非常に有用である。すなわち、人が病気または罹病性と関係する生殖細胞系または後天性突然変異を有するか否かを知ることは重要である。
【0003】
例えば、遺伝性非ポリポーシス結腸癌(HNPCC) に関するミスマッチの修復遺伝子中に生殖細胞系突然変異を有する結腸癌患者を手術前に同定することにより、全結腸切除または部分的結腸切除を行うべきか否かの決定が外科医に導かれる。患者が生殖細胞系突然変異を有する場合、第二の一次結腸癌が生ずる可能性は非常に高い(おそらく70 %)。この場合、通常は全結腸切除が初期の手術による治療として推奨される。手術の目的は、すでに存在する結腸癌を治療し、新しい悪性腫瘍の発生を防ぐことにある。癌患者における生殖細胞系突然変異の存在により、癌の手術による治療において違いが生じるだけでなく、結腸切除後のアジュバント化学療法の必要性において違いが生ずる。
【0004】
患者中の生殖細胞系突然変異の存在を同定できることにより、癌を予防するためのより有効なアプローチおよびそのような患者が発生させる危険のある他の癌のタイプ(例えば結腸癌を除く)の早期の検出も可能となる。言いかえれば、HNPCC に冒された結腸癌患者を同定するテストからの情報は、同じく生命を脅かす結腸外の癌について患者を二次臨床スクリーニングするきっかけとなる。
【0005】
さらに、癌患者における生殖細胞系突然変異の陽性診断により、家族構成員において生殖細胞系突然変異キャリアを検出するためのテストが容易になる。そのようなテストにより、より有効な癌予防方法および家族構成員において検出される癌のより良い臨床治療技術が生ずる。したがって、本発明により提供される情報はまた、生殖細胞系突然変異の発見により個人は結腸癌および他の癌になる高い危険性にあると推定されるので、医師が患者の家族の他の構成員のスクリーニングを推奨することにおいて有用である。
【0006】
遺伝性の病気の診断/予後における主な問題は、HNPCC のような病気または罹病性に関する遺伝性の特徴を同定するための現在の分子に基づくアッセイの実施に必要とされる大量の労力および費用である。本発明は、そのような遺伝性の特徴を検出するための、より実行可能な方法である、免疫学的検定法を提供する。本発明のアッセイは、相対的に簡単であり、素早く(24 時間の所要時間)、高処理量で費用がかからない。本発明のアッセイにより、そのような遺伝性の病気になる危険性のある全個体群のスクリーニングが可能となる。また、本発明のアッセイにより、癌のような病気を発生する前に、病気に関連する遺伝性の特徴のキャリアを同定することができる。
【0007】
本発明のアッセイは、遺伝子発現は遺伝子量に直接関係する、すなわち二つの野生型の対立遺伝子はただ一つの野生型の対立遺伝子が存在する場合に生ずるよりも二倍量の全長野生型タンパク質を発現するという仮定に基づく。本発明によれば、免疫学的検定法を使用して、被験者の遺伝子により発現される全長タンパク質の量の正常からの減少を測定する。対照的に、ミスマッチ修復(MMR) 遺伝子のような、遺伝子における突然変異を、高価で、時間がかかり、限られた学問的および商業的参考実験所でのみ提供されるDNA 配列分析および/またはインビトロにおける翻訳型アッセイ[Giardiello, F.M., 「遺伝性結腸癌における遺伝子テスト」JAMA, 278: 1278−1281(1997)] により一般的に検出する。
【0008】
遺伝性の結腸直腸癌(CRC) のあるタイプまたは遺伝性CRC の素因についてのスクリーニングに主に使用される典型的な免疫学的検定法が開示される。遺伝性CRC またはその素因をスクリーニングするそのような典型的な免疫学的検定法は、(1)家族性腺腫様ポリポーシス(FAP) に関連する突然変異である、腺腫様ポリポーシス遺伝子(APC) の突然変異、または(2)遺伝性非ポリポーシス結腸癌(HNPCC) に関連する突然変異である、ミスマッチ修復(MMR) 遺伝子、特にMLH1 、MSH2 、PMS1 、PMS2 、およびMSH6 の突然変異のいずれかによる細胞性全長タンパク質レベルの変化の検出に基づく。
【0009】
関心のある遺伝子の対立遺伝子のDNA 配列中の突然変異の検出に基づくような分子遺伝学的方法が、HNPCC およびFAP のような遺伝性結腸癌を有する個体の診断に使用されてきた。そのようなテストは非常に特異的であることが可能であり、正確な標的突然変異が分かっている場合、例えばHNPCC 家系をスクリーニングする場合に実施するのがかなり容易であるが、正確な標的突然変異がわかっていない場合にはそのようなテストは行うのが困難である。後者の場合、大きいMMR 遺伝子のパネルから小さいDNA 突然変異を見つけるのは、干草の山で針を見つけるのと同様に、困難である。この場合、本発明の免疫学的検定法は、素早く相対的に費用がかからないので、まさに非常に実際的である。
【0010】
さらに、本発明の免疫学検定法のテストにおける陽性の所見は、DNA テストだけが使用された場合に必要とされる時間のほんの一部の時間で、DNA 配列により確かめることができる。したがって、本発明の免疫学的検定法は、補助的な「予備試験」として有用になるかもしれない。本発明はまた、突然変異がすでに同定されている既知の家系の病気に冒された構成員の診断において分子遺伝学的テストの補助となる。
【0011】
上述のように、未知の突然変異は、分子遺伝学的テストにより検出することが非常に困難である。未知の突然変異は、まだ研究されていない発端者、隔離患者および家系において発見される突然変異である。主に単一の塩基対変化、小さい挿入、および小さい欠失を含むそのような個体群における生殖細胞系突然変異は、遺伝子の大部分に分布し、多くの可能な遺伝子座の任意の一つを含むかもしれない。さらに、コード領域のサイズが大きいことにより、遺伝子配列による突然変異の同定が非常に困難になり、大きな労力を要し、費用がかかる。したがって、他の技術が発達し、DNA 変異および突然変異の存在を検出するために使用される。そのような技術には、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE) 、一本鎖立体配座多型(SSCP) 分析およびRNA アーゼ保護分析が含まれる。しかしながら、これらの他のアプローチは、特に感度において、欠点および/または制限を有する。例えば、FAP 患者においてAPC 突然変異を検出するためのこれらの技術の感度は、使用される方法に依存してわずかに30 −70% である。インビトロにおいて合成された翻訳産物を分析することにより突然変異を検出するより新しい技術が発達したが、わずかに良い感度を有するに過ぎない。
【0012】
上述される分子遺伝学的方法の大部分は、単一の塩基対変化、小さい挿入、および小さい欠失および/または翻訳を終了させる突然変異の検出を意図している。しかしながら、例えば、患者の生殖細胞系において全遺伝子の欠失が起こり得る。全遺伝子の欠失は、分子遺伝学的アプローチによると見逃されるので、これは初期の方法のさらに別の欠点である。さらに、正常な転写のレベルを減少させるプロモーターまたはスプライシングの突然変異、すなわち多くの分子的方法により分析されるコード領域の外側に位置する突然変異を有する患者もいる。対照的に、標準的な突然変異に加えて、対立遺伝子の喪失を含む突然変異、およびプロモーター、エンハンサーおよびスプライシング部位領域における突然変異を検出することができるので、本発明の免疫学的検定法は、野生型タンパク質のレベルを検出することにより、分子遺伝学的方法よりも大きい感度を有するかもしれない。
【0013】
現在の分子遺伝学的技術の別の欠点は、分子遺伝学の技術は多くの病理学の研究所で確立されていないということである。また、分子遺伝学的アッセイの結果はしばしば、素早く、例えば手術の前に得ることができない。分子遺伝学的テストは癌組織サンプルにおいて行うことが可能であるが、癌細胞中の突然変異が後天性であるか生殖細胞系であるかの問題は解決されない。
【0014】
例えば、現在調査されている一つのアプローチは、特定のMMR 突然変異の検出[Dietmaier et al., 「診断ミクロサテライト不安定性:定義およびミスマッチ修復タンパク質発現との相関」 Cancer Res., 57: 4749−4756(1997)] というよりも、腫瘍検体におけるミクロサテライト(microsatellite) 不安定性(すなわち反復性DNA 配列における突然変異)の検出である。ミクロサテライト法には、異なる遺伝子座のパネルにおける遺伝子変化についてスクリーニングするための分子生物学的技術(PCR またはサザンブロット分析)が含まれる(通常5 つ以上の遺伝子がミクロサテライト不安定性について同時に分析される)。ミクロサテライト法は、分子遺伝学者によりかなり容易に行われ、その目的はいずれのポリープがMMR 突然変異から生じたかを同定することにある。しかしながら、この方法はまた、後天性および生殖細胞系MMR 突然変異の区別をせず、5 つの既知のMMR 遺伝子のいずれが突然変異体であるかを同定する情報を何ら提供しない。
【0015】
対照的に、本発明の免疫学的検定法は、任意の病理学の実験室で行うことができ、短い時間で多くの個体をスクリーニングするために、費用に対し最も効率良く発達させることができる。このアッセイは素早く行うことができ、結果が直ちに得られる。本発明の免疫学的検定法により、特定の遺伝子の産物における変化を同定した後、分子遺伝学的テストを使用して突然変異の正確な位置を決定することができる。
【0016】
発明の概要
本発明の免疫学的検定法を適応させて、植物、ウィルス、動物、菌類、および細菌および原生動物のような原核生物上界および原生生物界の構成員における病気または罹病性の特徴を検出することができる。本発明の免疫学的検定法を使用して、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類、さらに好ましくはヒトにおいて病気または罹病性を検出する。
【0017】
本発明の免疫学的検定法は、正常な個体、すなわち対象遺伝子中に突然変異を有しない個体は、対象の野生型遺伝子産物を100%発現し、野生型関連遺伝子産物を100%発現するという理論に基づく。対照的に、同じ遺伝子の1つの対立遺伝子に突然変異を有する個体は、理論上は、関連野生型遺伝子産物の発現を100%維持するのに対し、対象野生型遺伝子産物を50%しか発現しない。
【0018】
ある好ましい実施の態様において、本発明の免疫学的検定法は、対象遺伝子の一方または両方の対立遺伝子における生殖細胞系突然変異に関連する病気または罹病性を検出する。本発明の免疫学的検定法はまた、この態様において、一個体の二つの異なる遺伝子における生殖細胞系突然変異は非常にまれであるという仮定を前提とする。
【0019】
本発明の典型的な免疫学的検定法は、ヒトにおけるHNPCC およびFAP に対する罹病性を検出するものである。HNPCC の罹病性の特徴についてのスクリーニングの場合、MLH1 およびMSH2 野生型タンパク質(二つの主要なMMR 遺伝子の発現産物)の量を個体からのサンプルから、例えば新しく調製されたリンパ球から測定する。生殖細胞系MMR 突然変異を有するほとんどすべての個体は、二つの全長MMR タンパク質の一つを100 %有するが、他の全長タンパク質は50 %のみである。
【0020】
これらの方法を、(a) 正常個体群および(b) 証明されたHNPCC 患者の個体群に適用した後、本発明の免疫学的検定法により、全長MMR タンパク質の発現の正常なおよび異常なレベルを識別することを可能にする基準の設定が見込まれる。本発明の方法は、関心のある対象野生型遺伝子産物と関連遺伝子産物との発現レベルの割合、および一方の他方に対する割合の予測に依存する。例えば、MMR 突然変異の場合、MSH2 タンパク質の量対MLH1 タンパク質の量の割合を使用できる。次に、割合の絶対値が正常な範囲に明らかに下がるまたは対象遺伝子産物の発現が50 %失われると予測される範囲、例えばHNPCC についてスクリーニングする場合にMSH2 またはMLH1 のいずれかの発現が50 %失われる範囲に明らかに下がるか否かが決定される。
【0021】
本発明の免疫学的検定法についての別の好ましい標的個体群は、CRC を有するとして同定される患者である(CRC 患者の10 %は、MMR 突然変異を有すると予測される)。CRC 患者がMMR 突然変異のキャリアであることが分かる場合、患者(例えば発端者)の血縁関係に、これらの血縁関係はCRC になる危険性が高いことが同定されているので、ポリープおよび/またはCRC 関連癌についてのスクリーニングを奨励することが望ましい。(発端者とは、HNPCC の特徴のような遺伝的特徴を有するとして確定的に同定された家族の最初の構成員である。)
ある態様において、本発明の免疫学的検定法は、遺伝性HNPCC およびFAP の特徴のような、病気に関連する遺伝的特徴のキャリアの同定を意図する。アッセイの読出し、すなわち野生型タンパク質のレベルは、遺伝子型と相関する。このようにして、本発明のアッセイにより野生型対立遺伝子について同型接合の細胞および異型接合の細胞が識別され、したがって遺伝的特徴を有するおよび有しない個体が識別される。本発明は、CRC を有すると診断された患者の約10 %の原因である疾患である、遺伝性結腸癌のHNPCC の最も一般的な形態の改良されたおよびより早い診断を提供することにより、CRC の不十分な治療技術の問題の一つを扱う。
【0022】
本発明の免疫学的検定法を適応させて、タンパク質切断(生殖細胞系および後天性)を引き起こすまたは対立遺伝子タンパク質発現をなくす突然変異による多くの他の遺伝性および遺伝的疾患(癌および癌以外)に関連する全長(野生型)タンパク質を測定してもよい。切断を起こす突然変異および/または対立遺伝子の喪失を受ける典型的な遺伝子、およびそのような遺伝子における突然変異に関連する病気を以下に列挙する:
APC −CRC およびGI 癌
ATM −毛細管拡張性運動失調;血管芽細胞腫;腎細胞癌;褐色細胞腫
BRCA1 −乳癌
BRCA2 −乳癌
CFTR −膵嚢胞性繊維症
c−myb −血液悪性疾患
ジストロフィン −デュシェーヌ筋ジストロフィー
E− カドヘリン −乳癌および結腸癌
(HSECAD)
EMD −エメリー−ドライフス筋ジストロフィー
FAA −ファンコーニ貧血
IDS −ハンター症候群
MLH1 −CRC 、GI 、GU およびGYN 癌
MSH2 −CRC 、GI 、GU およびGYN 癌
NF1 −神経繊維腫症タイプ1
NF2 −神経繊維腫症タイプ2
p16(CDKN2A −家族性黒色腫
およびMTS1)
PKD1 およびPKD2 −多発性嚢胞腎症
PTCH −母斑様基底細胞癌
VHL −リンダウ病
APC 遺伝子およびMMR 遺伝子中の突然変異を検出するための典型的なアッセイがここに開示される。しかしながら、当業者はそのようなアッセイを、他の遺伝子における類似する突然変異の検出に容易に適応させることができ、そのような突然変異は病気または罹病性と関連することが知られている(以下の、「他の全長タンパク質についての免疫学的検定法」参照)。
【0023】
ある意味で、本発明の方法を使用して、標的とされる野生型タンパク質の異常に低いレベルまたは生体サンプル中の標的とされる野生型タンパク質の不存在についてスクリーニングすることができる。生体サンプル中の関連タンパク質の量に対する前記野生型タンパク質の量の割合を計算し、該割合が変化を受けていない個体の個体群研究において計算された類似する正常な割合と比較して正常であるか異常であるかを決定することにより、前記標的とされる野生型タンパク質のレベルを測定することができる。関連タンパク質は、アッセイを方向付ける病気または罹病性の特徴に関連しなくてもよい、またはアッセイを方向付ける病気または罹病性に関連する別の対象遺伝子の発現産物でもよい。後者の実施の形態において、アッセイは、多くの遺伝子のいずれが病気に関連する突然変異により影響を受けるかをあるアッセイにおいて決定する、差異に基づく診断/予後の一形態として特徴付けることができる。それについての例は、ここに明確に記載されるアッセイ方法であり、MLH1 およびMSH2 は対象遺伝子であり、HNPCC に対する罹病性は、アッセイを方向付ける特徴である。
【0024】
ある好ましい実施の形態において、本発明の免疫学的検定法は、生体における病気または罹病性の特徴を検出することを意図し、前記病気または前記罹病性の特徴が対象遺伝子における突然変異に関連することを特徴とし、
(a) 前記対象生体から生体サンプルを単離し、
(b) 前記サンプル中の前記対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量、および前記サンプル中の第二の遺伝子により発現される関連タンパク質の量を免疫学的に定量し、
(c) 前記サンプル中の前記対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量対前記サンプル中の前記第二の遺伝子により発現される関連タンパク質の量の割合を計算し、
(d) 前記対象遺伝子により発現される野生型タンパク質が前記サンプル中に存在するか否か、または前記計算された割合が、前記サンプル中における前記対象遺伝子により発現される前記野生型タンパク質の異常に低いレベルを表すか否かを決定し、
(e) 前記サンプル中に野生型タンパク質が存在しない場合、前記対象遺伝子はそれぞれの対立遺伝子中に突然変異を含有する、または工程(c) において計算された割合により前記サンプル中で野生型タンパク質のレベルが異常に低いことが示される場合、前記対象遺伝子は対立遺伝子の一つにおいて突然変異を含有する、およびいずれかである場合、対象生体は前記突然変異に関連する病気または罹病性の特徴に冒されているという結論を出す、
各工程を含む。そのような実施の形態における好ましい関連タンパク質の例は、アクチン、チューブリン、またはグリセルアルデヒド−3 −ホスフェートデヒドロゲナーゼである。
【0025】
本発明の免疫学的検定法の実施の形態の工程(d) は、工程(c) で計算された割合を、前記病気によりまたは前記罹病性の特徴により冒されていない、対象生体と同じ分類学的分類の生体からの比較可能な生体サンプルにおいて、前記対象遺伝子から発現された前記野生型タンパク質の量対前記関連タンパク質の量の割合の平均と比較する工程を含んでもよい。
【0026】
上述のように、切断を引き起こす突然変異または対立遺伝子の喪失を起こす突然変異の場合における全長タンパク質の細胞性レベルにおける予想される減少は、対象遺伝子により発現される全長タンパク質の量における50 %の減少である。両方の対立遺伝子がそのような突然変異により影響を受ける場合、一方は、前記全長タンパク質の発現において100 %減少すると予想される。しかしながら、生体変異性により、正常からの全長タンパク質発現における減少(単一の対立遺伝子突然変異について)は、一般個体群からの病気のない個体における正常値の範囲から統計的に測定される限界レベルにより、陽性の結果であると考えられる。対象遺伝子の残存する対立遺伝子が、癌の場合にしばしば起こるように、突然変異対になる場合、本発明の予想される読出しは50 %から0 %に下がる。陽性の結果についての理論上の基準線からの変異性は、±20 %、好ましくは±15 %、より好ましくは±10 %である。
【0027】
別の好ましい実施の形態において、本発明の免疫学的検定法により、生体における病気または罹病性の特徴を検出することができ、前記病気または前記罹病性の特徴は、二つ以上の対象遺伝子の一つにおける突然変異と関連することを特徴とし、
(a) 前記生体から生体サンプルを単離し、
(b) それぞれの対象遺伝子から発現される、前記サンプル中の野生型タンパク質の量を免疫学的に定量し、
(c) 前記サンプル中で他の対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量、または前記サンプル中で他の対象遺伝子のそれぞれにより発現される野生型タンパク質の量に対する前記サンプル中で前記対象遺伝子の一つにより発現される野生型タンパク質の量の割合を計算し、
(d) 対象遺伝子のいずれかによりまたは任意の対象遺伝子により発現される野生型タンパク質が前記サンプルに存在しないか否か、または工程(c) で計算された割合が、前記サンプル中で対象遺伝子のいずれかまたは任意の対象遺伝子により発現される異常に低いレベルの野生型タンパク質を表すか否かを決定し、
(e) 対象遺伝子の一つにより正常に発現されることが知られる野生型タンパク質が前記サンプル中に存在しない場合、該対象遺伝子はそれぞれの対立遺伝子中に突然変異を含有する、または工程(c) において計算された割合により前記サンプル中で対象遺伝子の一つにより発現される野生型タンパク質のレベルが異常に低いことが示される場合、該対象遺伝子は対立遺伝子の一つにおいて突然変異を含有するという結論を出す;および、いずれかである場合、対象生体は前記突然変異に関連する病気または罹病性の特徴により冒されていることを決定する、
各工程を含むことを特徴とする。
【0028】
前記実施の形態の工程(d) は、工程(c) で計算された割合を、前記病気によりまたは前記罹病性の特徴により冒されていない、対象生体と同じ分類学的分類の生体からの比較可能な生体サンプルにおいて、対象遺伝子により発現された野生型タンパク質の量から計算された割合の比較可能な平均と比較する工程を含んでもよい。
【0029】
別の態様において、本発明は、生体における病気または罹病性の特徴を検出する方法であって、前記病気または前記罹病性の特徴は、対象遺伝子における突然変異と関連することを特徴とし、
(a) 前記生体から正常細胞のサンプルを単離し、
(b) 前記サンプル中で対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量を免疫学的に定量し、
(c) 前記サンプル中に野生型タンパク質が存在するか否か、およびその場合、前記サンプル中に存在する野生型タンパク質の量が、対照サンプル中で対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量と比較して異常に低いか否かを決定し、
(d) 前記サンプル中に前記野生型タンパク質が存在しない場合、対象遺伝子はそれぞれの対立遺伝子中に突然変異を有すると結論する;または前記サンプル中の前記野生型タンパク質の量が、対照サンプル中の野生型タンパク質の量と比較して異常に低いと測定された場合、対象遺伝子は一つの対立遺伝子中に突然変異を有すると結論する;およびいずれかである場合、該結論と前記突然変異と関連する病気または罹病性の特徴を有する対象生体との相関関係を算定する、
各工程を含むことを特徴とする方法に関する。アッセイ結果により対象遺伝子が一つの対立遺伝子に突然変異を有することが示される場合、野生型タンパク質の異常に低い量は通常、正常な量の約50 %であり、上述の変異性は機能可能に作用している。
【0030】
本発明の免疫学的検定法により検出される病気または罹病性の特徴に関連する突然変異は、生殖細胞系または体性でもよく、好ましくは生殖細胞系である。そのような突然変異は、切断を引き起こす突然変異または対立遺伝子の喪失を起こす突然変異である。突然変異の例は、ナンセンス突然変異、読み枠突然変異、プロモーター突然変異、エンハンサー突然変異、スプライシング部位突然変異、ヌル突然変異、およびポリ−A テール突然変異からなる群より選択される。
【0031】
生物学的サンプルが単離される生体は、ウィルス、植物、菌類、動物、または原核生物上界および原生生物界の構成員から単離される。前記生体は、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類、およびさらに好ましくはヒトである。
【0032】
本発明の免疫学的検定法によりテストされる生物学的サンプルには、組織標本、体液(例えば、血液、血清、血漿)、組織抽出物、細胞、細胞溶解産物、細胞抽出物、正常な細胞溶解産物からの上澄、新生物発生前の細胞溶解産物からの上澄、および新生細胞溶解産物からの上澄が含まれる。
【0033】
好ましい生物学的サンプルは、細胞サンプル、細胞抽出物、細胞溶解産物、細胞溶解産物からの上澄、組織サンプルおよび組織抽出物である。さらに好ましいのは、正常な細胞サンプル、正常な細胞抽出物、正常細胞からの溶解産物、および正常な細胞溶解産物の上澄である。特に好ましいのは、末梢血リンパ球(PBL) 、PBL の溶解産物、PBL の溶解産物からの上澄み、およびPBL の抽出物である。
【0034】
体液のサンプルの例には、特に以下の液体が含まれる:血液、血清、血漿、精液、胸部滲出液、胃の分泌液、糞の懸濁液、胆液、唾液、涙、痰、粘液、尿、リンパ液、細胞質ゾル、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液(bladder wash) 、気管支肺胞洗浄液、および髄液。体液が、本発明の方法によりテストされる生物学的サンプルである場合、例えばウェスタンブロット、フローサイトメトリ、またはサンドイッチ免疫学的検定法によるような免疫学的方法により定量する前に、一つ以上の標的とされる全長、野生型遺伝子産物および、関係のある場合には、関連タンパク質を大量の体液から濃縮することが好ましい。
【0035】
本発明の方法は、自動化に適合することができる。上記で概略されるアッセイは、自動化形式で実施できる。本発明の方法を適合させることができる好ましい自動化免疫学的検定法システムは、化学発光および磁気分離を使用するものである。
【0036】
略語
以下の略語をここで用いる:
AFAP − 弱毒化家族性腺腫様ポリポーシス
APC − 腺腫様結腸ポリポーシス
ATCC − アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション
ATM − 毛細管拡張性運動失調
BL − 生物発光
CL − 化学発光
CRC − 結腸直腸癌
DGGE − 変性勾配ゲル電気泳動
DMEM − ダルベッコ調製イーグル培地
DTT − ジチオスレイトール
EDTA − エチレンジアミン四酢酸
EGTA − [ エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)] 四酢酸
EIA − エンザイムイムノアッセイ
ELISA − 酵素結合免疫吸着アッセイ
FAP − 家族性腺腫様ポリポーシス
FBS − 胎仔ウシ血清
FITC − フルオレセインイソチオシアネート
GAPDH − グリセルアルデヒド−3 −ホスフェートデヒドロゲナーゼ
GI − 胃腸の
GU − 尿生殖器の
GYN − 婦人科の
HNPCC − 遺伝性非ポリポーシス結腸癌
kDa − キロダルトン
MAb − モノクローナル抗体
MCR − 突然変異密集領域
MMR − ミスマッチ修復
MW − 分子量
PBL − 末梢血リンパ球
PBS − リン酸緩衝化生理食塩水
PCR − ポリメラーゼ連鎖反応
PE − フィコエリトリン
PMP − 常磁性粒子
PMSF − フェニルメチルスルホニルフッ化物
PPV − 陽性の予測価
PTT − タンパク質切断テスト
Rb − 網膜芽細胞腫
RBC − 赤血球
RIA − ラジオイムノアッセイ
RIPA − ラジオイムノプレシピテーションアッセイ
RT − 室温
SDS − ドデシル硫酸ナトリウム
SDS−PAGE − ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動SSCP − 一本鎖立体配座多型分析
TGFBR2 − トランスホーミング増殖因子、ベータレセプター2
WBC − 白血球
w/v − 溶液濃度の単位記号
詳細な説明
本発明のアッセイは、非常に感度が高く、特異的であり、容易で、素早く(24 時間の所要時間)、費用がかからず、自動化技術に適合することができる。本発明により、遺伝子の野生型産物の細胞性レベルが最終的に減少する対象遺伝子の突然変異と関連する遺伝性の病気についての診断/予後アッセイが提供される。本発明の免疫学的検定法により、関心のある遺伝子によりコードされる全長タンパク質について分析される。例えば、本発明の免疫学的検定法を使用して、FAP に関連するAPC 遺伝子、およびHNPCC に関連するMMR 遺伝子のタンパク質産物の細胞性レベルにおける変化を検出する。
【0037】
形質に関連する遺伝性突然変異を有する個体は、野生型対立遺伝子の遺伝子量が減少しておりそのため形質の素因がつくられると考えられる。以下に示される実施例により、本発明のアッセイは、遺伝子量に関連する遺伝子産物発現における変異を検出できることが示される。ここに記載される実験により、ウェスタンブロット分析のような免疫学的検定法がMMR およびAPC のような標的遺伝子タンパク質の細胞性発現レベルを検出し定量する能力、およびそのようなレベルが対象遺伝子の野生型遺伝子量に関連することを示す能力を確立する。
【0038】
ここで「遺伝子」という用語は、タンパク質産物についての完全なコード配列を含有するヌクレオチド配列を意味すると定義される。通常、「遺伝子」には、コードされたタンパク質の発現に影響を与えるコード配列の上流(例えばプロモーター配列、エンハンサーなど)または下流(例えば転写終止シグナル、ポリアデニル化部位など)で見られるヌクレオチド配列を含むと考えられる。「対立遺伝子(allele) 」という用語は、DNA 配列中で異なり、単一の産物(RNA および/またはタンパク質)の機能に影響を与える所定の遺伝子の一連の可能な対の形態の一つである対立遺伝子(allelomorph) の速記形態である。
【0039】
本発明のアッセイは、診断および/または予後(予測)である、すなわち診断/予後である。「診断/予後」という用語はここで、それぞれまたは漸増的に臨床的状況に依存して以下の工程を含むと定義される:病気になる素因を決定し、病気の性質を決定し、病気を識別し、病気の状態の可能性のある結果に関して予測し、症例の性質および症状により示されるような病気からの回復に関する見通し、患者の病気の状態の観察、病気の再発についての患者の観察、および/または患者についての好ましい治療養生法の決定。本発明の診断/予後方法は、例えば腫瘍性のまたは新生物発生前の病気の存在についての個体群のスクリーニング、腫瘍性の病気が発生するリスクの測定、腫瘍性のおよび/または新生物発生前の病気の存在の診断、腫瘍性の病気を有する患者の病気の状態の観察、および/または腫瘍性の病気の過程についての予後の決定に有用である。
【0040】
任意の従来の免疫学的検定法の形式は、標的遺伝子タンパク質、または本発明に従って標的遺伝子タンパク質および一つ以上の関連タンパク質の検出および定量に適合することができる(少なくとも半定量的に)。そのような形式には、診断産業において通常使用される他のアッセイの中で、好ましくは免疫沈降されたタンパク質のウェスタンブロット、ELISA 、RIA 、競争的EIA および二重抗体サンドイッチアッセイが含まれる。免疫沈降されたタンパク質のウェスタンブロットおよびサンドイッチ免疫学的検定法が好ましく、サンドイッチ免疫学的検定法が特に好ましい。
【0041】
特に好ましいサンドイッチ免疫学的検定法は、蛍光標識された、酵素結合されたまたは化学発光結合したものである。ここに記載されるように自動化した免疫学的検定法も好ましい。
【0042】
ELISA テストのあるタイプの例は、マイクロタイタープレートが、対象遺伝子により発現される全長タンパク質、またはそのアミノまたはカルボキシ末端に作製された抗体でコーティングされている形式である。それに、患者のサンプル、例えば組織または細胞抽出物あるいは細胞溶解産物が加えられる。一定時間インキュベーションしてタンパク質を抗体に結合させた後、プレートを洗浄し、標識された、例えば酵素に結合された関連抗体の別のセットを加え、インキュベートして、反応を起こさせ、その後プレートを再び洗浄する。その後、例えば酵素基質をマイクロタイタープレートに加え、一定時間インキュベートして酵素を基質に作用させ、採集標本の吸光度を測定する。吸光度における変化は、サンプル中の対象全長タンパク質の量に比例する。
【0043】
脊椎動物サンプルにおける野生型標的遺伝子産物および関連タンパク質を検出および定量するための本発明の免疫学的検定法の例は、
a) 一つのセットは野生型標的遺伝子産物に結合し、他方のセットは関連タンパク質に結合する二つのセットの抗体であって、それぞれの抗体のセットは標識されているまたはそうでなければ他のセットと異なって検出可能である抗体とともに前記脊椎動物サンプルをインキュベートし、
b) インキュベートされたサンプルを調べて、野生型標的遺伝子産物を含む免疫複合体の量および関連タンパク質を含む免疫複合体の量を測定し、該二つの量の比を計算する、
各工程を含む。
【0044】
本発明による別の免疫学的検定法の例は、競争的免疫学的検定法を使用して、標的遺伝子中に突然変異が存在するか否かを決定するために脊椎動物中の野生型標的遺伝子産物および関連タンパク質を検出および定量するものであって、
a) 二つのセットの抗体であって、それぞれのセットが野生型標的遺伝子産物または関連タンパク質、およびある量の標識された(他の視覚化方法を含む)野生型標的遺伝子産物およびある量の標識された関連タンパク質にそれぞれ特異的であって、前記標識された遺伝子産物および標識された関連タンパク質は異なって標識され、前記それぞれの抗体への結合についてサンプル中に存在する野生型標的遺伝子産物および関連タンパク質と競合する抗体とともに脊椎動物サンプルをインキュベートし、
b) 該インキュベートされたサンプルを調べて、前記抗体に結合した標識された野生型遺伝子産物または関連タンパク質の量を測定し、
c) 工程b) における調査の結果から、前記サンプル中に存在する標的遺伝子産物および関連タンパク質の量を測定し、その割合を計算し、前記サンプル中で標的全長タンパク質の量が減少している場合、標的遺伝子中に突然変異が存在することを決定する、
各工程を含む。
【0045】
適切な特異性を有する抗体(生物学的に活性の抗体フラグメントを含む)を調製すると、様々の免疫学的アッセイ方法が特異的抗体−抗原複合体の形成の測定に利用できる。多くの競合および非競合タンパク質結合アッセイが科学および特許文献に記載されており、そのようなアッセイの多くは市販されている。抗原の検出に適切な免疫学的検定法の例には、米国特許第5,686,258 号;同第5,695,928 号;同第5,770,457 号;同第3,984,533 号;同第3,996,345 号;同第4,034,074 号;および同第4,098,876 号のものが含まれる。
【0046】
アッセイにおいて使用される抗体は、標識してもよく標識しなくてもよい。未標識の抗体を凝集反応に使用してもよい;様々の標識を使用して、標識した抗体を様々のアッセイに使用してもよい。
【0047】
適切な検出方法には、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光剤、色原体、酵素基質または補因子、酵素阻害剤、フリーラジカル、粒子、色素などのような標識の使用が含まれる。そのような標識された試薬を、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、例えばELISA 、蛍光免疫測定法などのような様々のよく知られるアッセイに使用してもよい。例えば、米国特許第3,766,162 号;同第3,791,932 号;同第3,817,837 号;および同第4,233,402 号参照。
【0048】
免疫学的検定法テストキット
上記で概略されたアッセイをテストキットで実施して、野生型標的遺伝子産物、または標的遺伝子産物および関連タンパク質を検出および定量することができる。関連野生型遺伝子産物および/または関連タンパク質を検出および定量するためのそのようなキットには、関心のある遺伝子産物または関連タンパク質およびそのような野生型遺伝産物または関連タンパク質に特異的なポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体が含まれてもよい。そのような診断/予後テストキットには、サンドイッチ形式について一つ以上のセットのポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体が含まれてもよく、該抗体は全長タンパク質上のエピトープを認識し、一つのセットは適切に標識されるまたはそうでなければ関心のあるそれぞれの遺伝子産物または関連タンパク質について検出可能である。
【0049】
酵素免疫測定法において使用するためのキットには通常、酵素が結合した抗体および該酵素に対する基質が含まれる。酵素は例えば、関心のあるタンパク質に特異的な抗体またはそのような特異的な抗体に対する抗体に結合してもよい。
【0050】
結腸直腸癌についてのアッセイ
結腸直腸癌(CRC) の改良されより早い診断が必要である。米国で毎年約140,000 の結腸癌の新しい症例が診断され、世界の他の国ではさらに多い。それらの症例の多く(約10 %)は、遺伝性非ポリポーシス結腸癌(HNPCC) または家族性腺腫様ポリポーシス(FAP) のような結腸癌の遺伝性のタイプの一つを有する。結腸癌のそれらの遺伝性形態の診断により、多くの場合、医師は、高い費用の手術をすべきである、および/または手術上のアジュバント化学療法に対する適応が異なるかもしれない、および/または患者の家族の構成員をスクリーニングしなければならないと考える。しかしながら、現在までのところ、本発明者は、結腸癌の遺伝性の形態を有する患者を同定するための実際的なテストを何ら認知していない。したがって、簡単で、広く利用でき、素早く、費用のかからない、遺伝性結腸癌についてのテストの発達が、医師にとって臨床的に価値がある。
【0051】
前悪性の結腸病変の早期診断の価値を高めることが最近の研究であり、これにより、個人および家族におけるHNPCC を同定しその後精密な臨床的追跡調査(例えば腫瘍性ポリープについての定期的な結腸鏡検査)を行うことによって罹病率および死亡率の実質的なおよび大きな減少を達成できるということが示される。[Jarvinen, H.J., Mecklin, J.P., Sistonen, P. 「遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌を有する家族における結腸直腸癌の割合がスクリーニングにより減少する」 Gasterontology, 108: 1405−1411(1995)] 。
【0052】
頻度
ミスマッチ修復遺伝子(HNPCC の原因である)を含む生殖細胞系突然変異の頻度は、西洋人において200 から300 人に約1 人である。生殖細胞系MMR 突然変異(すなわちHNPCC 患者)に付随する浸透率が少なくとも90 %存在するので、ほとんどすべてのキャリアは、寿命の間に癌を発生させる。西洋では10 億人を超える人が存在するので(米国およびヨーロッパ)、500 万人を超える人が生殖細胞系MMR 突然変異を有すると予想される。キャリアが癌を発生させる前にそのようなMMR 突然変異を同定することが重要である。
【0053】
西洋に住む10 億人以上のうち、約50 %(2 人に1 人)が、70 歳までに結腸直腸腫瘍性ポリープ(以下単に「ポリープ」と称する)を発生する。[Ransohoff and Lang, N. Engl. J. Med., 325: 37(1991).] 西洋でCRC を発生する生涯の見込みは、約10 倍小さいまたは20 人に1 人である。
【0054】
米国癌協会(American Cancer Society) は、50 歳を超えるすべての人はポリープについてスクリーニングすることを推奨する。そのようなスクリーニングの目的は、(1)治療可能な程度(通常は手術)でのCRC の早期検出;および癌に発達する前のポリープの同定および除去による癌予防である。
【0055】
すべてのCRC 症例の約10 %は、遺伝性の癌であると判断される。それらのうち、ほんの一部のみが、APC 遺伝子中の生殖細胞系突然変異による。多くの遺伝性結腸癌は、生殖細胞系MMR 突然変異と関連する。腺腫は、CRC の散在性の非遺伝性形態を発生する患者よりも、MMR 突然変異を有する患者においてより早く癌に進行することが知られている。柔軟なS 状結腸鏡検査法(ポリープまたはCRC についての最初の臨床スクリーニング)の結果が陽性である場合、胃腸病学者は通常、さらなるポリープまたは結腸直腸腫瘍を検出するために全結腸の検査(全結腸鏡検査)を続ける。この場合、胃腸病学者は、本発明の免疫学的検定法を使用してMMR 突然変異を検出することを勧める。
【0056】
MMR 免疫学的検定法
HNPCC に関連する突然変異を検出するための本発明の免疫学的検定法は、MMR 突然変異に関する二つの仮定に基づく:(1)HNPCC キャリアは、以下の4 つのDNA ミスマッチ修復(MMR) 遺伝子−hMLH1 、hMSH2 、hPMS2 およびhPMS1 の一つに単一の生殖細胞系突然変異を有する;および(2)そのような突然変異により、遺伝子によりコードされる全長野生型タンパク質の細胞レベルが減少する(遺伝子産物は、理論上遺伝子量に比例すると考えられる)。MMR 遺伝子の二つの対立遺伝子の一つが突然変異体である場合、本発明に従って、個人の体組織中で合成される全長タンパク質の量が50 %減少すると想定される。そのような免疫学的検定法は、内視鏡検査中にポリープが陽性であることが発見された後に特に有用である。
【0057】
以下の式1および2は、MMR 遺伝子−MSH2 およびMLH1 中の突然変異を検出するためのアッセイの臨床的使用を示す。
【0058】
【数 1】
【数 2】
以下の実施例は、HNPCC および他の癌に関連するMMR 突然変異を検出する本発明を発達させるために使用される免疫学的検定法を示す。本発明のHNPCC アッセイは、主に二つのMMR 遺伝子(MLH1 およびMSH2 )に集中する、なぜなら、該二つの遺伝子中の突然変異は、HNPCC 症例における同定可能な突然変異の大部分( 〜90%) の原因であることが示されたからである。[Peltomaki and de la Chapelle, 「遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌になりやすい突然変異」 Adv. Cancer Rev., 71: 93−119(1997)] 。MMR タンパク質中の既知の突然変異の多くにより、タンパク質が切断される。[Id.]
生殖細胞系にミスマッチ修復遺伝子欠損を有する患者は、結腸癌を発生させやすいだけでなく、子宮、卵巣、前立腺、胃、小腸、膵臓、および胆道癌も発生させるリスクが非常に高い。隔離患者の浸透率および頻度に基づき、生殖細胞系ミスマッチ修復突然変異を有する患者の40 %以上が癌を発生させ、癌の家族歴を有しない(400,000 を超える遺伝性癌患者は、陰性の家族歴を有する)。
【0059】
本発明のアッセイの潜在的な制限は、ミスセンス突然変異のような、全長遺伝子産物を生ずる突然変異を検出しないということである。MMR 突然変異についての制限の評価は、以下の情報から測定できる[Peltomaki and de la Chapelle, supra] :(1)異なる突然変異に起因するHNPCC 患者の割合−MSH2 およびMLH1 が90 %を占め、その他(MSH6; PMS2; PMS1; TGFBR2) が残りの10 %を占める;(2)MSH2 およびMLH1 遺伝子中の切断および非切断突然変異は、MSH2[ 非切断(ミスセンス)=7 %および切断(フレームシフト、ナンセンスおよびフレーム内欠失)=93 %] 、およびMLH1[ 非切断(ミスセンス)=31 %および切断(フレームシフト、ナンセンスおよびフレーム内欠失)=69 %] である。該情報に基づき、本発明のアッセイにより抗MLH1 および抗MSH2 を使用して検出できるすべてのMMR 突然変異の割合は、少なくとも70% と予測される。
【0060】
HNPCC 症例の約30 %を検出できないことは、他の分子遺伝学的テストについて報告されるのとほぼ同じ大きさである。[Peltomaki and de la Chepelle, supra; Giardiello, F.M., supra] 。しかしながら、非切断突然変異を含む半接合体症例の割合は過大評価されているかもしれない、なぜなら、対立遺伝子喪失のような他の突然変異およびプロモーター突然変異(他の分子遺伝学的テストにより容易に検出されない)は、対立遺伝子喪失またはプロモーター領域を含むそのような突然変異はMMR 遺伝子の一つの対立遺伝子からの発現を停止するまたは減少する場合、本発明のアッセイにより検出すべきだからである。さらに、MLH1 およびMSH2 アッセイに関連して全長PMS1 およびPMS2 タンパク質を検出するための本発明の免疫学的検定法により、同定されていないMMR 突然変異の数が大きく減少する。
【0061】
さらに、タンパク質のポリペプチド主鎖の全長を変化させる変化である、アミノ酸の置換を含む非切断ミスセンス突然変異において、異なるアプローチを使用して、免疫学的検定法を診断に使用する場合に突然変異を検出することができる。例えば、アミノ酸置換の重大な潜在的結果として(それらを検出する能力に関して)、そのような置換により3 次元天然タンパク質構造が天然MMR タンパク質中のエピトープ表示を変化させるほど十分に変化し、これは特異的なエピトープに対する抗体を使用する免疫学的検定法により検出できる。
【0062】
したがって、フローサイトメトリには浸透性の細胞の分析が含まれるので、フローサイトメトリ免疫学的検定法により、3 次元天然MSH2 およびMLH1 タンパク質構造が保たれている状態で、ミスセンス突然変異によるタンパク質変化のいくつかのタイプを検出することができる。MMR 突然変異についてのアッセイは、細胞性ミスマッチ修復のための酵素活性における作用変化の検出に基づく他の実験室において発達しているので、そのような突然変異は、別の方法により検出できる[Bennett et al., Cancer Res., 57: 2956(1997)] 。別の可能性には、異常血色素症を診断するためのアッセイに類似する2 次元ゲル電気泳動システムまたは高速液体クロマトグラフィ(HPLC) を使用するタンパク質移動度の変化の検出が含まれる[ESA, Inc.; Chelmsford, MA(USA)] 。
【0063】
MMR タンパク質に対する抗体
抗ヒトMLH1 、抗ヒトMSH2 および抗マウスPMS2 は、PharMingen 社(San Diego, CA) から市販されている。抗ヒトMLH1 および抗ヒトMSH2 は、Oncogene Research Products 社(Cambridge, MA) からも市販されている。表1は、これらの市販されている抗体の特性を示す。
【0064】
【表1】
APC 免疫学的検定法
以下に示される実施例により、FAP タイプの遺伝性結腸癌を同定するための免疫学的検定法の原理が提供される。FAP はHNPCC より頻度はずっと少ないが、本発明の免疫学的検定法が遺伝性の特徴を検出する能力を評価するためのモデルシステムを提供する。
【0065】
FAP は、米国で5000 人に約1 人(すなわち約50,000 人)に影響を及ぼす常染色体優性遺伝病である。結腸および直腸において数百から数千の腺腫様ポリープを発生させることにより特徴付けられる[Boman, B.M and Levin, B., 「家族性ポリポーシス」 Hosp. Prac., 21: 155−170(1986)] 。予防の結腸切除を行った場合、これらのポリープは癌に進行することはない[Lynch et al. H. T., Boman, B.M., Fitzgibbons, R.J., 「家族性結腸ポリポーシス:遺伝的性質、サーベイランスおよび治療」Nebr. Med. J., 73: 329−334(1988)] 。実際に、治療していないFAP 患者は、生涯に結腸癌を発生させる可能性をほぼ100 %有する。
【0066】
腺腫様結腸ポリポーシス(APC) 遺伝子の生殖細胞系突然変異は、家族性腺腫様ポリポーシス(FAP) において起こる。APC 突然変異は、FAP 患者における遺伝性結腸癌の原因であり、散在性結腸直腸癌の発生における臨界開始因子であると考えられる。本発明の免疫学的検定法は、他の分子遺伝学的方法の欠点を回避できるので、まだ研究されていないFAP の発端者、隔離患者および家系における従来知られていないAPC を有する個体の診断において有用である。FAP を含む生殖細胞系APC 突然変異を保有する患者の診断により、有効な救命癌予防法が生ずる。
【0067】
多くの生殖細胞系APC 突然変異(>90%) は、カルボキシル部分の様々なサイズの欠失を有する切断されたAPC タンパク質を産生する機構である、翻訳終了の原因となる新しい停止コドンおよび他の遺伝的変化を引き起こす[Miyoshi et al., 「53 の家族性腺腫様ポリポーシス患者におけるAPC 遺伝子の生殖細胞系突然変異」 Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 4452−4456(1992); Spirio et al., Cell, 75: 951−957(1993); Groden et al., Cell, 66: 589(1991)] 。FAP 患者におけるすべての生殖細胞系突然変異が結腸癌になるのに対し、切断されたAPC タンパク質の長さにおける変化は、FAP 患者における他の形質発現に関すると考えられる。例えば、コドン1250 と1464 との間の領域で生ずる生殖細胞型突然変異は、多量のポリープ(cm2 毎に10 以上)の臨床的発見に関連するのに対し、この領域外で生ずる突然変異は、散在性のポリープ(cm2 毎に10 未満)の観察に関する[Nagase et al., Cancer Res., 52: 4055(1992)] 。さらに、突然変異が5 ’からエキソン9 までで生ずる場合、FAP に関連する眼底損傷はほとんど存在しない[Olschwang et al., Cell, 75: 959(1993)] 。最後に、第5 エキソンの前で生ずるAPC 突然変異により、ポリポーシスのより軽い形態および腫瘍形成の後の発症が起こる。APC 突然変異が細胞学的変化および表現型の相違を起こす機構をさらに洞察するには、結腸上皮細胞および他の細胞タイプにおいてAPC が実際に果たす役割の決定が必要である。
【0068】
FAP におけるAPC 遺伝子の突然変異の多くは、細胞中で切断されたAPC タンパク質を生ずる新しい停止コドンを産生するので、発現された全長APC タンパク質の量は減少ずると仮説を設けた。したがって、APC 突然変異を検出する方法は、全長遺伝子産物の50 %減少したレベルを検出する簡単な免疫学的検定法に基づく。したがって、野生型に加えて突然変異対立遺伝子を含む、APC 遺伝子座に異なる対立遺伝子を有する細胞において、前記仮説により、そのような異型接合体は、全長APC タンパク質のレベルの50 %しか有しないということが予測される。
【0069】
この仮説をテストするために、定量的免疫沈降分析を使用して、FAP 患者からの細胞を、抗APC 抗体と共に「モデル」システムとして使用した[Boman et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 206: 909(1995); Chop et al., Anticancer Res., 15:991(1995)] 。以下の実施例1により該仮説が立証され、生殖細胞系においてAPC 突然変異を保有する個体を診断するための臨床的に有用なアッセイを発達させることができることの証拠が提供される。
【0070】
本発明の免疫学的検定法は、全長APC タンパク質のレベルを検出する。ウェスタンブロットにおいてより低い分子量の位置に移動することにより決定されるものとして、切断されたAPC タンパク質を同定する方法がとられてきた[Smith, et al., 「正常および腫瘍細胞中のAPC 遺伝子産物」 Proc. Natl. Acad. Sci., 90: 2846−2850(1993)] 。切断されたAPC タンパク質の分子量は、突然変異部位の配置において有用な情報を提供するが、多くの短くなったAPC タンパク質は不安定であり、ウェスタンブロットにおける検出を妨げる[Id.] 。例えば、ウェスタンブロット分析は、タンパク質切断を引き起こすAPC 突然変異を含有するとして以前同定された7 つのFAP リンパ芽球細胞系の3 つにおける切断されたAPC タンパク質に対応するより低い分子量バンドを検出できなかった[Id.] 。本発明のアッセイは、切断されたAPC タンパク質を検出しないが、残っている全長APC タンパク質の存在および量を測定する。
【0071】
免疫学的方法を、どうやって生殖細胞系突然変異の検出のための他の分子遺伝学的方法と比較するか疑問かもしれない。APC 突然変異がすてに特徴付けられているFAP 家系において、関連した突然変異について直接テストする分子遺伝学的方法を使用して簡単におよび正確に、病気に冒されている構成員においてこれらの突然変異を容易に検出および同定することができる。したがって、分子遺伝学的テストを使用して、そのような家族において危険性のある構成員を、生殖細胞系APC 突然変異を有するまたは有しないとして正確に診断することができる。それにもかかわらず、免疫学的検定法は実際的であるので、APC 突然変異がすでに同定されている既知のFAP 家系の病気に冒されている構成員の診断において補足的なテストとして有用である。
【0072】
対照的に、おもに単一の塩基対変化、小さい挿入、および小さい欠失を含む様々の生殖細胞系APC 突然変異はAPC 遺伝子の大部分に分布することが知られているので、未知のAPC 突然変異は、まだ調査されていないFAP 発端者、隔離患者および家系において検出するのがずっと困難である[Miyoshi et al., supra] 。また、APC コード領域のサイズが大きいこと(8535 塩基対)により、遺伝子配列決定による突然変異の同定は、非常に困難で、大きな労力を必要とし、費用がかかる。したがって、APC 遺伝子内の突然変異の位置を検出および同定するための他の技術が発達し使用された。
【0073】
そのような技術には、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE) 、一本鎖立体配座多型(SSCP) 分析およびRNA アーゼ保護分析が含まれる。FAP 患者においてAPC 突然変異を検出するためのこれらの技術の感度は、Powell et al., 「家族性腺腫様ポリポーシスの分子的診断」 N. Engl. J. Med., 329: 1982−1987(1993) に記載されるように、使用される方法に依存してわずかに30 −70% である。インビトロにおいて合成されたAPC 翻訳産物の分析を含むAPC 突然変異を検出するために発達したより新しい技術は、わずかに良い感度を有するに過ぎない[Id.; van der Luijt et al., 「直接のタンパク質切断テストによる結腸腺腫様ポリポーシス(APC) 遺伝子における翻訳を終了させる突然変異の急速な検出」 Genomics, 20: 1−4(1994)] 。さらに別の新しいアッセイには、クローン化されたAPC 遺伝子断片と共にフレームに挿入されたβ−ガラクトシダーゼコード配列を使用する急速比色法が含まれる[Varesco et al., 「ナンセンスおよびフレームシフト突然変異を検出するための急速なスクリーニング方法:病気を引き起こすAPC 対立遺伝子の同定」 Cancer Res., 53: 5581−5584(1993)] 。しかしながら、臨床的設定におけるこの後者の技術の感度は、まだ測定していない。
【0074】
上述の分子遺伝学的方法の多くは、単一の塩基対変化、小さい挿入、および小さい欠失および/または翻訳を終了させる突然変異の検出を目的とする。しかしながら、いくつかの例において、全APC 遺伝子の欠失がFAP 患者の生殖細胞系において起こり[Herrera et al., 「5q の間質性欠失を有するヒトにおけるガードナー症候群」Am. J. Med. Genetics, 25: 473−476(1986); Joslyn et al., 「家族性ポリポーシス遺伝子座における欠失突然変異および3 つの遺伝子の同定」Cell, 66:601−613(1991); Groden et al., 「腺腫様ポリポーシスを有する患者の突然変異分析:血縁でない個体における突然変異の同一不活性化」 Am. J. Hum. Genet., 52: 263−272(1993)] 、これは分子遺伝学的方法によって見落とされるイベントである。さらに、正常な転写のレベルを減少させるプロモーターまたはスプライシングの突然変異を有するFAP 患者もいる[Powell et al.(1993), supra] 。したがって、ある最近の分子遺伝学的方法は、生殖細胞系APC 突然変異の検出において89 %の改良された感度を共に有する、インビトロで合成されるAPC 翻訳産物の分析によるAPC の切断を引き起こす突然変異の分子的検出と、対立遺伝子特異的発現アッセイとを組み合わせた[Powell et al.(1993), supra] 。
【0075】
例えばAPC のような全長遺伝子産物のレベルを測定できることに基づく本発明の免疫学的検定法の予想される感度は、例えばAPC 生殖細胞系突然変異のような生殖細胞系突然変異の存在の検出においてほぼ100 %である。この方法は、タンパク質切断並びに対立遺伝子発現の喪失を含む突然変異の検出において重要である。
【0076】
全体的に、細胞中の全長APC タンパク質の量を測定するための免疫沈降分析は、FAP 患者において異型接合状態で存在する生殖細胞系APC 突然変異の検出において特に有用である。他の分子的テストを使用することができるが、本発明の免疫学的検定法は、比較的簡単で、信頼でき、費用がかからないので、および全長遺伝子産物の検出により他のアッセイの欠点が開比されるので、多くの利点を有する。本発明の免疫学的検定法は、多くの病因または病理学研究室において実施が比較的容易である。さらに、APC−1 およびAPC−2 以外の多くの抗APC 抗体を利用できる。本発明の免疫学的検定法の予想される感度は非常に高いので、このアッセイは、所定のFAP 家系において以前に特徴付けられたAPC 突然変異を検出し、そのような家族における病気に冒された構成員を評価することを目的とする分子遺伝学に基づく他の方法の増加にも有用である。
【0077】
さらに、全長APC タンパク質についての免疫学的検定法は、別な方法では診断が困難な個体群である、まだ調査されていないFAP 発端者、隔離患者および家系における、以前は未知のAPC 突然変異の検出において特に有用である。FAP 患者についての本発明の発見の最大の価値は、全長APC レベルの免疫学的検定法により臨床的背景において有用な役割を発見する場合に認識される。この場合、予防的方法(例えば結腸切除)を行って、生殖細胞系に有害な突然変異体のAPC 対立遺伝子を保有すると同定される個体群において結腸直腸癌が発生することを予防できる[Boman and Levin, 「家族性ポリポーシス」 Hosp. Pract., 21: 155−170(1986); and Lynch et al. 「家族性結腸ポリポーシス:遺伝的性質、サーベイランスおよび治療」 Nebr. Med. J., 73: 329−334(1988)] 。
【0078】
PBL 中のタンパク質レベルを分析するための技術
ヒト血液の小さいサンプル (20mL) からのリンパ球の精製
リンパ球を単離するための市販されている方法は、VACUTAINER (登録商標)CPTTM 単核細胞精製チューブ(Beckton Dickinson; Franklin Lakes, NJ) のものである。血液をVACUTAINER (登録商標)チューブに入れ、遠心させる。チューブ中のゲルの境界により、底部の遠心されたRBC および好中球と上部のリンパ球および単球とが分離される。
【0079】
タンパク質抽出
精製されたリンパ球からタンパク質を抽出する方法を、定量的および再現可能に設定し、免疫学的技術によりアッセイ可能なタンパク質を生ずる。タンパク質抽出方法の例は以下のようである。サンプルを5mL のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS) で1 −2 回洗浄し、4 ℃で10 分間2000rpm で遠心する。細胞を溶解するために、1 ×強度のSDS ゲルローディングバッファー(50mM Tris−Cl[pH 6.8] 、100mM ジチオスレイトール[ 新鮮なDTT] 、2% SDS 、0.1% ブロモフェノールブルー、10% グリセロール)をそれぞれの洗浄したペレット(培養した結腸癌について1mL 、リンパ球およびリンパ芽球細胞について200 μL )に加える。細胞を完全に混合し(ボルテックス)、沸騰水中に配置する(10 分間)。次に細胞をミクロフュージ(microfuge)(Beckman Instruments Inc.; Fullerton, CA) 中で10 分間遠心し、不溶性の物質を沈殿させ、捨てる。
【0080】
他の全長タンパク質についての免疫学的検定法
本発明の免疫学的検定法を利用して、タンパク質切断の原因となる(生殖細胞系および後天性)または対立遺伝子タンパク質発現欠如の原因となる突然変異による多くの他の遺伝性および遺伝学的な疾患(癌および癌以外)に関連する全長(野生型)タンパク質を測定できる。例として、切断されたタンパク質または対立遺伝子喪失の原因となる突然変異を受ける以下の対立遺伝子がある。
【0081】
野生型標的タンパク質を検出および定量するための本発明のアッセイを、標的タンパク質に対する抗体が市販されている場合、抗体を使用して発展することができる。標的タンパク質に対するそのような抗体が市販されていない場合、または標的タンパク質に対する市販されている抗体が適切でない場合、従来の方法により標的タンパク質に対する適切な抗体を調製できる[ 以下の表題「抗体」を参照] 。本発明の好ましい例としての免疫学的検定法の形式は、サンドイッチ型の、ビーズ結合免疫学的検定法である。
【0082】
1.BRCA1 遺伝子中の突然変異は、乳癌のある遺伝性形態の原因である[Hogervorst FBL, Cornelis RS, Bout M, van Vliet M, Oosterwijk JC, Olmer Renske et al., “タンパク質切断テストによるBRCA1 突然変異の素早い検出” Nature Genetics 10: 208−212(1995); Genbank Database, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/irx/cgi−bin/birx_doc?genbank] 。mRNA は5711 塩基対の長さであり、染色体17q21 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは90 %である[Hogervorst et al.(1995), supra] 。BRCA1 タンパク質に対するモノクローナル抗体は、Upstate Biotechnology 社[Waltham, MA(USA)] およびOncogene Reseatch Products[Cambridge, MA(USA)] から市販されている。
【0083】
2.BRCA2 中の突然変異は、乳癌のある遺伝性形態の原因である[Lancaster, J.M., Wooster, R., Mangion, J., Phelan, C.M., Cochran, C., Gumbs, C. etal., “一次乳癌および卵巣癌におけるBRCA2 突然変異” Nature Genetics, 13: 238−240(1996); Genbank Database, supra] 。mRNA は10,987 塩基対の長さであり、染色体13q12−q13 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは90 %である[Lancaster et al., supra] 。BRCA2 タンパク質に対するポリクローナル抗体は、Lab Vision 社[Fremont, CA(USA)] 、Oncogene Reseatch Products[Cambridge, MA(USA)] およびSanta Cruz Biotechnology[Santa Cruz, CA(USA)] から市販されている。
【0084】
3.ATM 遺伝子中の突然変異は、毛細管拡張性運動失調の原因である[Fitzgerald, M.G., Bean, J.M., Hegde, S.R., Unsal, H., MacDonald, D.J., Harkin, D.P. et al., “異型接合体ATM 突然変異は、乳癌の初期段階の一因ではない” Nature Genetics, 15: 307−310(1997); Genbank Database, supra] 。mRNA は9385 塩基対の長さであり、染色体11q22−q23 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは90 %である[Fitzgerald et al., supra] 。ATM タンパク質に対する抗体は、Serotec 社[Kidlington, Oxford(UK)] から市販されている。
【0085】
4.CFTR 遺伝子中の突然変異は、膵嚢胞性繊維症の原因である[Romey et al., “逆転写ポリメラーゼ連鎖反応技術およびタンパク質切断テストの使用によるリンパ球中のCFTR フレームシフト突然変異の転写分析” Hum. Genet., 98: 328−332(1996); Genbank Database, supra] 。mRNA は6129 塩基対の長さであり、染色体7q31.3 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは15 %である[Romey et al., supra] 。CFTR タンパク質に対する市販されている抗体は、Linscott の索引に記載されていない。
【0086】
5.DMD 遺伝子中の突然変異は、デュシェーヌ筋ジストロフィーの原因である[Roset et al., “翻訳を終了させる突然変異を素早く検出するためのタンパク質切断テスト(PTT) ” Hum. Mol. Genet., 2: 1719−1721(1993); Gardner et al., “逆転写PCR およびタンパク質切断テストの使用によるデュシェーヌ筋ジストロフィー患者における点突然変異の同定” Am. J. Hum. Genet., 57: 311(1995); Genbank Database, supra] 。mRNA は2110 塩基対の長さであり、染色体xp21.3−p21.1 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは95 %である[Roest et al., supra; Gardner et al., supra] 。DMD タンパク質のカルボキシ末端部に対する抗体は、Biomedia 社[Foster City, CA(USA)] 、Biogenesis 社[Sandown, NH(USA)] 、およびBiogenix Labs[San Ramon, CA(USA)] から市販されている。DMD タンパク質のN 末端部に対する抗体もまた、これらの会社から市販されている。
【0087】
6.EMD 遺伝子中の突然変異は、エメリー−ドライフス筋ジストロフィーの原因である[Leiden, unpublished as cited in Hogervorst, F.B.L., ”タンパク質切断テスト” Promega Notes Magazine, 62: 7−14(1997)] 。mRNA は503 塩基対の長さであり、染色体Xq28 上に位置する。タンパク質切断を有する症例のパーセンテージは80 %である[Leiden, supra] 。EMD タンパク質に対する抗体は、市販されているものとしてLinscott の索引に記載されていない。
【0088】
7.FAA 遺伝子中の突然変異は、ファンコーニ貧血の原因である[Lo Ten Foe et al., “主要なファンコーニ貧血遺伝子であるFAA についてのcDNA の発現クローニング” Nat. Genet., 14: 320−323(1996); Genbank Database, supra] 。mRNA は5503 塩基対の長さであり、染色体16q24.3 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは80 %である[Lo Ten Foe et al., supra] 。FAA タンパク質に対する抗体は、市販されているものとしてLinscott の索引に記載されていない。
【0089】
8.IDS 遺伝子中の突然変異は、ハンター症候群の原因である[Hogervorst et al., Am. J. Hum. Genet., 55: A223(1994); Genbank Database, supra] 。mRNA は36845 塩基対の長さであり、染色体xq27.3−q28 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは〜50 %である[Hogerborst et al.(1994), supra] 。IDS タンパク質に対する抗体は、市販されているものとしてLinscott の索引に記載されていない。
【0090】
9.NF1 遺伝子中の突然変異は、神経繊維腫症タイプI の原因である[Heim et al., “切断されたNF1 タンパク質についてのスクリーニング” Net. Genet. 8: 218−219(1994); Genbank Database, supra] 。mRNA は9026 塩基対の長さであり、染色体17q11.2 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは50 %である[Hein et al., supra] 。NF1 タンパク質に対する抗体は、市販されているものとしてLinscott の索引に記載されていない。
【0091】
10.NF2 遺伝子中の突然変異は、神経繊維腫症タイプII の原因である[MacCollin et al., “神経繊維腫症2 を有する患者の突然変異分析” Am. J. Hum. Genet. 55: 314(1994); Genbank Database, supra] 。mRNA は339 塩基対の長さであり、染色体22q11−q13.1 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは65 %である[MacCollin et al., supra] 。NF2 タンパク質に対する抗体は、Transduction Labs[Lexington, KY(USA)] から市販されている。
【0092】
11.PKD1 遺伝子中の突然変異は、多発性嚢胞腎症の原因である[Ward et al., “多発性嚢胞腎症1 遺伝子は、14kb の転写物をコードし、染色体16 上の重複領域内に存在する” Cell, 77: 881−894(1994); Roelfsema and Breuning(Abstract), Am. Soc. Hum. Genet.: A240(1994); Genbank Database, supra] 。mRNA は53522 塩基対の長さであり、染色体16p13.3 上に位置する。突然変異を起こすタンパク質切断を有する症例のパーセンテージは95 %である[Roelfsema and Breuning, supra] 。PKD1 タンパク質に対する抗体は、市販されているものとしてLinscott の索引に記載されていない。
【0093】
12.PTCH 遺伝子中の突然変異は、母斑様基底細胞癌の原因である[Johnson et al., “基底細胞母斑症候群についての候補遺伝子であるパッチ物のヒト相同体” Science, 272, 1668−1671(1996); Genbank Database, supra] 。mRNA は6568 塩基対の長さであり、染色体9q22/3 上に位置する。PTCH 遺伝子中の突然変異は、タンパク質を切断し得ることが知られている[Johnson et al., supra; Hahn et al., Cell, 85: 841−851(1996); Gailani et al., Nature Gen., 14: 78−81(1996); Unden et al., Cancer Res., 56: 4562−4565(1996); およびWicking et al., Am. J. Hum. Genet., 60: 21−26(1997)] 。PTCH タンパク質に対する抗体は、市販されているものとしてLinscott の索引に記載されていない。
【0094】
13.c−myb 遺伝子中の突然変異は、血液内悪性腫瘍の原因である[Badiani et al., Genes Dev., 8(7): 770−782(1994); Schaefer et al., J. Biol. Chem., 271(23): 13484−13496(1996); Genbank Database, supra] 。mRNA は40433 塩基対の長さであり、染色体6q22 上に位置する。この遺伝子中の突然変異はタンパク質切断を起こし得ることが知られている[Tomita et al., “ヒト白血性細胞系TK−6 中の切断されたc−myb 発現” Leukemia, 12: 1422−1499(1998); Jiang et al., “急に始まるB 細胞リンパ腫におけるc−myb 遺伝子産物の最小切断” J. Virol., 71: 6526−6533(1997)] 。c−myb タンパク質に対する抗体は、Upstate Biotechnology 社[Waltham, MA(USA)] から市販されている。
【0095】
14.VHL 遺伝子中の突然変異は、リンダウ病の原因である[Latif et al., “リンダウ病腫瘍抑制遺伝子の同定” Science, 260: 1317−1320(1993); Genbank Database, supra] 。mRNA は14543 塩基対の長さであり、染色体3p25 上に位置する。この遺伝子中の突然変異はタンパク質切断を起こし得ることが知られている[Olschwang et al., “リンダウ病および散在性血管芽細胞腫中のVHL 遺伝子の生殖細胞系突然変異特性” Human Mutation, 12: 424−430(1998); Ye et al., “リンダウ病遺伝子産物の亜細胞性局在は、細胞周期依存性である” International Journal of Cancer, 78: 62−69(1998); Maher et al., “リンダウ病における表現型発現−生殖細胞系VHL 遺伝子突然変異との相関” Journal of Medical Genetics, 33: 328−332(1996); Crossey et al., “リンダウ病腫瘍抑制遺伝子における遺伝子内突然変異の同定および病気の表現型との相関” Human Molecular Genetics, 3: 1303−1308(1994); Shuin et al., “頻繁な体細胞突然変異および一次ヒト腎細胞癌におけるリンダウ病腫瘍抑制遺伝子の異型接合の喪失” Cancer Research, 54: 2852−2855(1994)] 。リンダウ(VHL) 病は、優性遺伝性家族性癌症候群であり、網膜、小脳および脊髄性血管芽細胞腫、腎細胞癌、褐色細胞腫および膵臓癌になりやすい[Glavavc et al., “VHL 腫瘍抑制遺伝子中の突然変異および中央ヨーロッパからのリンダウ病を有する家族における関連する病巣” Hum. Genet., 98(3): 271−280(1996)] 。対立遺伝子喪失およびVHL 遺伝子の突然変異は、散在性腎細胞癌 [Brauch et al., “ヒッペル−ランドー症候群および散在性腎細胞癌” Pathologe, 16(5): 321−327(1995)] および小脳血管芽細胞腫[Lee et al., “散在性小脳血管芽細胞腫におけるリンダウ遺伝子の異型接合および突然変異の喪失” Proc. Annu. Meet. Am. Assoc. Cancer Res., 38: A3600(1997)] に関係するのと同様に腫瘍発生に関係することが示されている。タンパク質に対する抗体は、Oncogene Research Products(Cambridge, MA) およびPharMingen[San Diego, CA(USA)] から市販されている。
【0096】
15.E− カドヘリン(HSECAD) 遺伝子中の突然変異は、乳癌および結腸癌の原因である[Bussemakers et al., “ヒトE− カドヘリンcDNA の分子クローニングおよび特徴付け” Mol. Biol. Rep., 17: 123−128(1993); Genbank Database, supra] 。mRNA は248 塩基対の長さであり、染色体16q22.1 上に位置する。この遺伝子中の突然変異は、タンパク質を切断し得ることが知られている[Guilford et al., “家族性胃癌におけるE− カドヘリン生殖細胞系突然変異” Nature, 392: 402−405(1998); Vos et al., “胸部におけるインサイチュの小葉癌中のE− カドヘリン不活性化:腫瘍形成の初期イベント” British Journal of Cancer, 76: 1131−1133(1997); Berx et al., “E− カドヘリンは、細胞外領域における切断突然変異により多くの侵入性ヒト小葉乳癌において不活性化される” Oncogene, 13: 1919−1925(1996); Berx et al., “E− カドヘリンは、ヒト小葉乳癌において突然変異される腫瘍侵入抑制遺伝子である” EMBO Journal, 14: 6107−6115(1995)] 。E− カドヘリンタンパク質に対する抗体は、ICN Biomedicals[Costa Mesa, CA(USA)] 、Biogenex Labs[San Ramon, CA(USA)] 、Zymed Labs[South San Francisco, CA(USA)] 、American Research Products(Belmont, MA) 、およびImmunotech SA[Marseilles, France] から市販されている。
【0097】
16.p16 遺伝子(CDKN2A 腫瘍抑制遺伝子およびMTS1 遺伝子としても知られる)中の突然変異は、家族性黒色腫の原因である[Hussussian et al., “家族性黒色腫中の生殖細胞系p16 突然変異” Nature Genetics, 8: 15(1994); Genbank Database, supra] 。mRNA は422 塩基対の長さであり、染色体9p21 上に位置する。この遺伝子中の突然変異は、タンパク質を切断し得ることが知られている[Monzon et al., “多発性一次黒色腫中のCDKN2A 突然変異” N. Engl. J. Med., 338(13): 879−887(1998)] 。Pp16 タンパク質に対する抗体は、Alexis 社[San Diego, CA(USA)] 、PharMingen[San Diego, CA(USA)] およびOncogene Research Products[Cambridge, MA(USA)] から市販されている。
【0098】
自動化免疫学的検定法システム
本発明の方法は、自動化免疫学的検定法分析に容易に適合できる。本発明の方法の自動化を容易にするためにおよび所要時間を短くするために、本発明の免疫学的検定法において捕捉抗体を磁気粒子に結合してもよい。
【0099】
Dynal 社[Lake Success, NY(USA)] からのM−280 ヒツジ抗ウサギIgG コーティングDynabeads (登録商標)および標的タンパク質に対するウサギ抗体のような市販されている技術を使用することにより、またはDynal 社からのM−450 トシル活性化Dynabesds を使用し関連抗体を共有結合させることにより、抗体をそのような磁気ビーズに結合できる。あるいは、グルタルアルデヒドのような試薬を使用して、対象抗体を固体支持体、好ましくは磁気粒子に共有結合させてもよい。結合剤の例には、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンのような有機化合物が含まれる。
【0100】
標的野生型遺伝子産物および関連タンパク質は、例えば定量的な磁気ビーズに基づく、サンドイッチ型の免疫学的検定法で定量することができる。そのようなアッセイは、市販されている自動化免疫学的検定法システムに統合できる。
【0101】
好ましい自動化/免疫学的検定法システムは、ACS:180 (登録商標)自動化化学発光システム[Bayer 社; Tarrytown, NY およびMedfield, MA(USA); ACS:180 PLUS システム; ACS:180 SE システム; およびACS: CENTAUR (登録商標)システムを含む] である。ACS:180 (登録商標)自動化免疫学的検定法システムは、Dudley, B.S., J. Clin. Immunoassay, 14(2): 77(Summer 1991) に記載されている。該システムは、トレーサーとして化学発光標識をおよび固相試薬として常磁性粒子(PMP) を使用する。ACS:180 システムは、競合結合およびサンドイッチ型アッセイを適応させ、それぞれの工程は自動化されている。ACS:180 は、利用可能な表面積を最大にするミクロンのサイズの常磁性粒子を使用し、遠心分離せずに結合したトレーサーを結合していないトレーサーと急速に磁気で分離する方法を提供する。試薬は、同時にまたは連続的に加えてもよい。酵素的標識のような他の標識を、アクリジニウムエステルのような化学発光標識の代わりに使用してもよい。化学発光シグナルは、好ましくはルミノメーターにより検出する。また好ましいのは、Bayer Immuno 1 (登録商標)免疫学的検定法システムである。
【0102】
そのような自動化免疫学的検定法システムについての対照は、ここに記載されるMMR タンパク質についてのウェスタンブロット分析について使用されるものにより例示される。ポジティブコントロールは、健康な正常体からの細胞系でもよい。ネガティブコントロールは、突然変異遺伝子産物についての同型接合であることが知られている細胞系、例えばHCT116 細胞(突然変異MLH1 タンパク質についての同型接合)およびLoVo 細胞(突然変異MSH2 タンパク質についての同型接合)でもよい。
【0103】
MLH1 および/またはMSH2 のような全長遺伝子産物を検出および定量するための自動化免疫学的検定法形式の例には、以下のものが含まれる:(1)磁気ビーズに結合した、遺伝子産物に特異的な、例えば該遺伝子産物のアミノ末端に特異的な第一の一次抗体;(2)細胞溶解産物を前記第一の一次抗体によりコーティングされた前記磁気ビーズと共にインキュベートし;(3)非特異的結合を減少させるために洗浄し;(4)全長遺伝子産物のカルボキシル末端に特異的な大にの一次抗体であって、直接標識されている、このましくは化学発光標識されている抗体;および(5)前記標識から、シグナルレベルが前記細胞溶解産物中の遺伝子産物の量に比例するシグナルを検出および定量する。遺伝子産物のカルボキシル末端に特異的な抗体につながったレポーターシステムは、定量されるのが全長タンパク質である場合に好ましい。
【0104】
前記基礎自動化免疫学的検定法形式に対する様々の変更は、当業者により容易に考えられる。例えば、そのようなアッセイ形式を変更して、例えばMLH1 およびMSH2 のような二つの遺伝子産物、または例えばAPC およびチューブリンのような遺伝子産物および関連タンパク質、またはβ−アクチンまたはGAPH を、同じ細胞溶解産物サンプル中で、好ましくは同時に、検出および定量できる。概説された形式の例において、二つの抗体のセットを使用し、それぞれのセットは標的タンパク質上の異なるエピトープを認識する二つの一次抗体を含む。
【0105】
MSH2/MLH1 自動化免疫学的検定法の例
全長MSH2 タンパク質を検出および定量するために、例えばMSH2 のアミノ末端に対するマウスの抗MSH2 MAb を、Dynabeads (登録商標)(M−450 トシル活性化; Dynal 社)のようなビーズに共有結合させてもよい。前記モノクローナル抗体に結合されたビーズを細胞溶解産物と共にインキュベートし、その後洗浄する。次に前記洗浄されたビーズを、例えば第二の一次抗体として、MSH2 のカルボキシル末端に対するマウスMAb のような、マウスの抗MSH2 、AB1 と共にインキュベートする。
【0106】
同様に、MLH1 に対するウサギポリクローナル(例えばOncogene Research Products からのAB2 )のような抗MLH1 抗体を、M−280 ヒツジ抗ウサギIgG コーティングされたDynabeads (登録商標)に結合してもよい。第二の一次抗体は、突然変異体MLH1[Thibodeau et al., Cancer Res., 56: 4836(1996)] ではなく全長MLH1 に結合するマウスの抗MLH1 MAb[ 例えばClone G168−728; PharMingen, (San Diego, CA)] でもよい。
【0107】
MLH1/MSH2 アッセイの結果、単一のサンプルにおける、好ましくは細胞溶解産物サンプルにおける、より好ましくは結腸腫瘍(腺腫、癌)を有する被験者のPBL から、または結腸腫瘍を有する被験者および対照の被験者の家族構成員からの溶解産物における、MLH1 対MSH2 の全長タンパク質レベルの割合、または野生型タンパク質対関連タンパク質のレベルの割合が得られる。異常なMLH1/MSH2 は、発現する野生型の、全長遺伝子産物の量が減少することが示される遺伝子中の突然変異を示す。
【0108】
抗体
「抗体」という用語はここで、抗体全体、並びに抗体の生物活性断片、好ましくは抗原結合領域を含有する断片を含むと定義される。さらに抗体の定義には、二重特異性抗体が含まれる。
【0109】
本発明の抗体は好ましくは、従来の方法によりおよび/または遺伝子工学により調製してもよい。抗体断片は、好ましくは超可変領域を含む軽鎖および/または重鎖の可変領域(VH およびVL) から、およびさらに好ましくはVH およびVL の両方から遺伝的に処理してもよい。例えば、ここで用いたように「抗体」という用語には、特に「一価」抗体[Glennie et al., Nature, 295: 712(1982)] ;共有結合したまたは共有結合していないFab ’およびF(ab ’)2 断片を含むFab タンパク質;軽鎖または重鎖のみ、好ましくは可変重鎖および軽鎖領域(VH およびVL 領域) を含み、より好ましくは超可変領域[ さもなければ前記VH およびVL 領域の相補性決定領域(CDR) として知られる] ;Fc タンパク質;一つ以上の抗原を結合できる「ハイブリッド」抗体;恒常可変領域キメラ;異なる起源の重鎖および軽鎖を有する「合成」免疫グロブリン;一般的なっ組換え技術およびオリゴヌクレオチド有向突然変異誘発技術により調製された改良された特異性および他の特性を有する「変化した」抗体[Dalbadie− McFarland et al., PNAS(USA), 79: 6409(1982)] を含む、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体およびその生物学的活性断片が含まれる。
【0110】
二重特異性抗体は、所望の特異性の二つの抗体を化学的に結合することにより産生できる。二重特異性MAb は好ましくは、二つのハイブリドーマの体細胞ハイブリダイゼーションにより発生できる。二つの標的タンパク質を標的とするための二重特異性MAb は、一つの標的の特異的MAb を産生するハイブリドーマを別の標的タンパク質に特異的なMAb を産生するハイブリドーマと融合することにより産生できる。生じたクアッドローマ(quadroma) をスクリーニングして、親のMAb の特異性を有するハイブリッド抗体を産生するクアッドローマを選択することができる。
【0111】
免疫学的検定法の分野でよく知られる、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作製するための従来技術が存在する[ 例えば、Galfre and Milstein, “モノクローナル抗体の調製:方法および工程” in Methods in Enzymology: Immunochemical Techniques, 73: 1−46(Langone and Vanatis (eds); Academic Press; 1981); and in the classic reference, Kohler and Milstein, Nature, 256: 495−497(1975)] 。本発明のための特異的なモノクローナル抗体は、適切な哺乳類、好ましくは必要ならキャリアタンパク質に結合した、適切な免疫抗原を有するネズミ、より好ましくはウサギ、ラット、またはマウスを免疫化することにより調製できる。本発明のアッセイにおいて有用な特に好ましい抗体は、対象野生型タンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端上のエピトープに方向付けられたネズミモノクローナル抗体である。
【0112】
本発明のハイブリドーマの例は、ネズミ細胞系の融合により形成することができ、ヒト/ヒトハイブリドーマ[Olsson et al., PNAS(USA), 77: 5429(1980)] およびヒト/ネズミハイブリドーマ[Schlom et al., PNAS(USA), 77: 6841(1980); Shearman et al. J. Immunol., 146: 928−935(1991); and Goman et al., PNAS(USA), 88: 4181−4185(1991)] を特に調製することができる。
【0113】
抗ペプチド抗体もまた、欧州特許公報第44,710 号(1982 年1 月27 日に刊行された)に記載されているように当該技術における従来の方法により作製される。簡単に言えば、そのような抗ペプチド抗体は、標的のアミノ酸配列からペプチドを選択し、化学的に合成し、適切な免疫原性タンパク質に結合させ、適切な動物、通常ウサギまたはマウス中に注射することにより調製される;次に、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を、後者を例えばKohler−Milstein 法により作製する。
【0114】
従来のハイブリドーマ技術の他に、より新しい技術を使用して、本発明による抗体を産生することができる。例えば、抗体V 遺伝子をクローン化し発現するためのPCR を使用することによりおよび結合活性を有する断片をコードする抗体遺伝子を選択するためのファージ表示技術を使用することにより、免疫化されたマウスまたはヒトを使用するPCR 増幅されたV 遺伝子のレパートリーから抗体断片が単離される[ 参考のためMarks et al., BioTechnology, 10: 779(1992 年7 月); Chiang et al., BioTechniques, 7(4): 360(1989); Ward et al., Nature, 341: 544(1989 年10 月); Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581(1991); Clackson et al., Nature, 352(1991 年8 月15 日); and Mullinax et al., PNAS(USA), 87: 8095(1990 年10 月)] 。
【0115】
生物学的活性抗体断片を含むとここで定義される用語である、組換え技術により抗体を調製するための方法の記載は、米国特許第4,816,567 号(1989 年3 月28 日に出願された);欧州特許出願公開番号(EP) 第338,745 号(1989 年10 月25 日に出願された);同第368,684 号(1990 年5 月16 日に出願された);同第239,400 号(1987 年9 月30 日に出願された)、国際特許出願公開第90/14424 号(1990 年11 月29 日に出願された);同第90/14430 号(1990 年5 月16 日に出願された);Huse et al., Science, 246: 1275(Dec. 8, 1989); Marks et al., BioTechnology, 10: 779(July 1992); La Sastry et al., PNAS(USA), 86: 5728(August 1989); Chiang et al., BioTechniques, 7(40): 360(1989); Orlandi et al., PNAS(USA), 86: 3833(May 1989); Ward et al. Nature, 341: 544(October 12, 1989); Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581(1991); and Hoogenboom et al., Nucleic Acids Res., 19(15): 4133(1991) に見ることができる。
【0116】
固相
本発明のアッセイにおいて使用できる固相は、免疫学的検定法において通常使用される任意の表面でよい。例えば、固相は粒子からなってもよい;例えばガラス、ポリスチレンビーズのようなビーズの表面でもよい;または、例えば遠心分離管、カラム、マイクロタイタープレートウェル、フィルタ、膜およびチューブのような任意の様々の容器の固体の壁面でもよい。
【0117】
固相として粒子を使用する場合、約0.4 から200 ミクロンまで、通常は約0.8 から4.0 ミクロンまでの範囲のサイズであることが好ましい。磁性または磁化可能な粒子は好ましい粒子からなる固相であり、マイクロタイタープレートウェルは好ましい固体壁面である。磁性または磁化可能な粒子は、本発明の方法の工程を自動化免疫学的検定法システムにおいて行う場合に特に好ましい。
【0118】
標識
適切なら、本発明の免疫学的検定法においてトレーサーとして使用される抗体を、可視のまたは可視にできるシグナルを生ずる任意の方法で、直接または間接に標識してもよい。検出可能なマーカー物質には、3H 、125I および131I のような放射性核種;フルオレセインイソチオシアネートおよび他の蛍光色素、フィコビリタンパク質、フィコエリトリン、希土類キレート、テキサスレッド、ダンシルおよびローダミンのような蛍光剤;比色試薬(クロモーゲン);コロイド金のような電子不透明物質;生物発光;化学発光;色素;特にホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6 −ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、α−、β−ガラクトシダーゼのような酵素;酵素基質;酵素補因子;酵素阻害剤;酵素サブユニット;金属イオン;フリーラジカル;または形成された免疫複合体の存在または量を検出または測定する方法を提供する任意の他の免疫学的に活性のまたは不活性の物質が含まれる。酵素基質の組合せの例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびテトラメチルベンジジン(TMB) 、およびあるか理性ホスファターゼおよびパラニトロフェニルホスフェート(pNPP) である。
【0119】
本発明による好ましい検出、または検出および定量システムにより、発光シグナル、生物発光(BL) または化学発光(CL) が産生される。化学発光(CL) または生物発光(BL) アッセイにおいて、強度または全体の発光が測定され、未知の分析物の濃度に関連する。ルミノメーター(検出器としての光電子増倍管)または電荷結合素子を使用して定量的に、または写真またはX 線フィルムにより質的に光を測定できる。そのようなアッセイを使用する主な利点は、簡単さおよび分析の感度であり、非常に少量の分析物の検出および/または定量が可能となる。
【0120】
発光標識の例は、アクリジニウムエステル、アクリジニウムスルホニルカルボキシアミド、ルミノール、ウンベリフェロン、イソルミノール誘導体、エクオリンのような発光タンパク質、およびホタル、海洋性のバクテリア、Vargulla およびRenilla からのルシフェラーゼである。ルミノールは、必要に応じて、好ましくは4 −ヨードフェノールまたは4 −ヒドロキシ−ケイ皮酸からなる群より選択されるエンハンサー分子と共に使用してもよい。アクリジニウムエステルは、本発明によるCL 標識の好ましいタイプの一つである。通常、CL シグナルは、基礎条件下で酸化剤の処理により産生される。
【0121】
好ましい発光検出システムは、基質上の酵素反応によりシグナル(検出可能なマーカー)が産生されるものである。CL およびBL 検出計画が、特にアルカリ性ホスファターゼ(AP) 、グルコースオキシダーゼ、グルコース6 −ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP) 、およびキサンチン−オキシダーゼ標識のアッセイについて発達した。AP およびHRP は、CL およびBL 反応の範囲により定量できる二つの好ましい酵素標識である。例えば、エンハンサー分子、好ましくは1 −(トリオクチルホスフォニウムメチル)−4 −(トリブチルホスフォニウムメチル)ベンゼンジオクロライドを使用してまたは使用せずに、アダマンチル1,2 −ジオキセタンアリールホスフェート基質(例えばAMPPD またはCSPD ;[Kricka, L.J., “化学発光および生物発光による分析” at p. 167, Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference(ed. R.A. Meyers)(VCH Publishers; N.Y., N.Y.; 1995)] ;好ましくは4 −メトキシ−4 −(3 −ホスフェートフェニル)スピロ[1,2 −ジオキセタン−3,2 ’−アダマンタン] の二ナトリウム塩)と共にAP を使用してもよい。HRP は好ましくは、2 ’、3 ’、6 ’−トリフルオロフェニル3 −メトキシ−10 −メチルアクリダン−9 −カルボキシレートのような基質と共に使用する。
【0122】
CL およびBL 反応は、酵素、並びに他の基質、補因子、阻害剤、金属イオンなどの分析に適合できる。例えば、ルミノール、ホタルルシフェラーゼ、および海洋性バクテリアのルシフェラーゼ反応は、それぞれペルオキシド、ATP 、およびNADPH の産生または消費の指示反応である。これらをオキシダーゼ、キナーゼ、およびデヒドロゲナーゼを含む他の反応物に結合してもよく、結合した反応物の任意の成分(酵素、基質、補因子)の測定に使用できる。
【0123】
検出可能なマーカーを、本発明のアッセイにおいて使用する抗体に直接または間接に結合してもよい。検出可能な標識の間接結合の例は、抗体とマーカーとの間の結合対の使用またはシグナル増幅システムの使用である。
【0124】
本発明のアッセイの抗体を検出可能なマーカーに結合させるために使用できる結合対の例は、ビオチン/アビジン、ストレプタビジン、または抗ビオチン;アビジン/抗アビジン;チロキシン/チロキシン−結合グロブリン;抗原/抗体;抗体/抗−抗体;炭水化物/レクチン;ハプテン/抗ハプテン抗体;色素および疎水性分子/疎水性タンパク質結合部位;酵素阻害剤、補酵素または補因子/酵素;ポリ核酸/相同性ポリ核酸配列;フルオレセイン/抗フルオレセイン;ジニトロフェノール/抗ジニトロフェノール;ビタミンB12 /内因子;コルチゾン、コルチゾル/コルチゾル結合タンパク質;および特異的なレセプタータンパク質に対するリガンド/膜関連特異的レセプタータンパク質である。本発明による好ましい結合対は、ビオチン/アビジンまたはストレプタビジン、より好ましくはビオチン/ストレプタビジンである。
【0125】
標識を直接または間接に抗体に結合するための様々の方法が当該技術において知られている。例えば、抗体は共有結合でまたは非共有結合で結合してもよい。抗体結合方法の例は、Avarmeas et al., Scan, J. Immunol., 8(Suppl. 7): 7(1978); Bayer et al., Meth. Enzymol., 62: 308(1979); Cahndler et al., J. Immunol. Meth., 53: 187(1982); Ekeke and Abuknesha, J. Steroid Biochem., 11: 1579(1979); Engvall and Perlmann, J. Immunol., 109: 129(1972); Geoghegan et al., Immunol. Comm., 7: 1(1978); and Wilson and Nakane, Immunofluorescence and Related Techniques, p. 215[Elsevier/North Holland Biomedical Press; Amsterdam(1978)] に記載されている。
【0126】
標識の性質に依存して、様々の技術を使用して標識を検出および定量できる。蛍光剤について、多くの蛍光計を利用できる。化学発光について、ルミノメーターまたはフィルムを利用できる。酵素により、蛍光、化学発光、または色のついた産物を、蛍光計により、ルミノメーターにより、吸光光度計によりまたは視覚的に測定できる。
【0127】
アクリジニウム、ベンゾアクリジニウム、またはアクリダンタイプの複素環系を有する様々の種類の化学発光化合物が、好ましい標識である。アクリジニウムおよびベンゾアクリジニウムエステルは、目下より好ましい化学発光化合物であり、好ましいアクリジニウムエステルには、当該技術においてよく知られるアクリジニウム、ベンゾ[a] アクリジニウム、ベンゾ[b] アクリジニウム、ベンゾ[c] アクリジニウム、ベンゾイミダゾール陽イオン、キノリニウム、イソキノリニウム、キノリジニウム、環状の置換されたキノリニウム、フェナントリジニウム、およびキノキサリニウムのような環式系を含む陽性酸化状態で異種原子を含有する複素環または複素環系を有する化合物が含まれる。
【0128】
例えばWeeks et al., Clinical Chemistry, 29(8), 1474−1479, (1983) のように当業者によく知られる、アクリジニウムまたはベンゾアクリジニウムエステル上に存在する反応性の官能基を直接または間接に選択された抗体に結合させることにより、トレーサーを調製してもよい。特に好ましい化合物は、アリール環のパラまたはメタ位置に存在するアリール環遊離基および反応性の官能基を有するアクリジニウムおよびベンゾアクリジニウムエステルである[ 米国特許第4,745,181 号および国際特許出願公開第94/21823 号参照] 。
【0129】
本発明の範囲および物質から外れずに、本発明について様々の変更をすることは、当業者にとって明らかであり、容易に行うことができるということを理解すべきである。以下の実施例は例示のためのものであり、いかなる意味においても本発明を制限するものではない。
【0130】
実施例1
(a) 全長 APC 遺伝子産物の免疫沈降
生殖細胞系に一つの突然変異および一つの残存野生型APC 対立遺伝子を有することが知られるFAP 患者のリンパ球から全長APC を免疫沈降するために、本研究において抗APC 抗体を使用した。この研究により、FAP 患者からのリンパ芽球細胞は生殖細胞系APC 突然変異を有しない対照と比較して約50 %少ない(50.1% ±5.1%) 免疫沈降可能な全長APC タンパク質を有することが示されたことにおいて、本発明の免疫学的検定法の根底にある理論が支持される。結果は、FAP 細胞中の異型接合APC 遺伝子型と相関する。
【0131】
物質および方法
抗APC 抗体。他の文献に記載されるように[Boman et al., “中央およびカルボキシル領域に対する抗体を使用するAPC 遺伝子産物のラジオイムノアッセイ” Biochem. Biophys. Res. Commun., 206: 909−915(1995); Chop et al., “ヒト結腸組織中の全長APC 遺伝子産物の存在または不存在の免疫検出” Anticancer Res., 15: 991−998(1995)] 、本発明者の実験室で産生された抗APC ポリクローナルウサギ抗体(APC−2) を使用して、免疫沈降分析を行った。APC−2 抗体は、APC タンパク質の中央領域に位置する限定されたエピトープ(アミノ酸1336 −1350 )を標的とする。この抗体は、全長APC タンパク質に対して活性であるが、多くのFAP 個体中で生殖細胞系APC 突然変異により引き起こされる切断されたAPC タンパク質(APC−2 エピトープを欠く)に対して活性ではない。
【0132】
細胞系。全長APC を含有することが知られるヒト結腸癌細胞系HCT116 を、アメリカンタイプカルチャーコレクション[ATCC, Manassas, VA(USA)] から得た。HCT116 細胞を、37 ℃において10 %の胎仔ウシ血清[Sigma Chemical Co., St Louis, MO(USA)] を含有するDMEM および95 %空気/5 %CO2 の湿った空気中で培養した。25cm2 のプラスチック組織培養フラスコ[Corning Glass, Corning, NY(USA)] 中で約60 −80 %融合したHCT116 細胞の培養物(約3 ×106 細胞)を、リン酸緩衝化生理食塩水[PBS, Sigma] で3 度洗浄し、フラスコの底を機械でこすり、遠心分離によりペレット状にし、その後免疫沈降のために溶解させた。
【0133】
「結婚している」個体に由来する4 つの細胞系を含む5 つのリンパ芽球細胞を調べた。培養液への末梢リンパ球のエプスタイン−バーウィルス形質転換によるこれらの細胞系の確立は、他の文献に記載されている[Spirio et al., “APC 遺伝子の対立遺伝子:家族性ポリープ症の弱毒化形態” Cell, 75: 951−957(1993)] 。そのような細胞を、10 %のFBS を含有するRPMI 1640 を有する懸濁培養液中で培養した。リンパ芽球懸濁培養液を、フラスコからこすらずに遠心分離によりペレット状にした以外はHCT116 細胞と同様に処理した。
【0134】
これらのFAP リンパ芽球細胞系は、既知のAPC 突然変異を有する3 つの血縁でないFAP 家族において病気に冒されている構成員から生じた[Lynch et al., “結腸腹臥家系の平面腺腫” J. Natl. Cancer Inst., 80: 278−282(1988); Lynch et al., “遺伝性結腸直腸癌” Semin. Oncol., 18: 337−366(1991)] 。これらの家族は、詳細な家族歴および遺伝連鎖に基づくFAP の基準を満たした[Lynch et al.(1991), supra; Spirio et al., ”腺腫様結腸ポリポーシス(APC) 遺伝子座への腺腫様結腸ポリポーシス変化したまたは弱毒化した形態の結合” Am. J. Hum. Genet., 51: 92−100(1992)] 。
【0135】
リンパ芽球細胞系には、FAP#1 (家系2764 中の個体V−27 から)、FAP#2 (家族2764 中の個体IV−17 から)、FAP#3 (家系3101 中の個体IV−26 から)、およびFAP#4 (家系6 中の個体V−15 から)が含まれた。APC 生殖細胞系突然変異を、以下のようにしてこれらの家族において同定した[Spirio(1993), supra] 。二つの血縁でない家族2764 および3101 は、エキソン4 に同一のAPC 突然変異を有し(ヌクレオチドの変化:TCATTG →TCTG )、これにより145 アミノ酸のAPC ペプチドが切断される。家系6 は、エキソン3 にAPC 突然変異を含み(TAGATAGC →TAGC )、これにより長さ83 アミノ酸のAPC ペプチドが切断される。
【0136】
APC の免疫沈降。半融合性HCT116 (25cm2 のプラスチック組織培養フラスコ中約3 ×106 細胞)、並びに懸濁培養されたリンパ芽球細胞(107 の正常なまたはFAP 不朽化WBC )を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(1mM EGTA, 12mM EDTA, 4.3mM Na2MoO4, 1mM Na3VO4, 50mM リン酸塩[Na+ 塩], 0.5mM ジチオトレイトール(DTT), および0.5mM フェニルメチルスルホニルフッ化物[PMSF] )を含有する3mL のRIPA 緩衝剤(0.1% SDS, 0.5% デオキシコール酸塩,1% Nonidet P−49, 100mM NaCl, 10mM Tris[pH 7.4] )で溶解した。細胞溶解産物をボルテックスし、ミクロフュージ(エッペンドルフ)中4 ℃で10 分間13,000rpm で遠心分離し、上澄を集めた。それぞれの上澄中のタンパク質濃度を、Bio−Rad タンパク質アッセイキット(Hercules, CA) を使用して測定した後、それぞれの上澄のタンパク質濃度を等しく4.35mg/ml に調整した。
【0137】
非特異的結合を除去するために、上澄(200 μl のアリコート)を、免疫前のウサギ血清(25 μl/ml) および50 %スラリーのタンパク質A− セファロースCL48 ビーズ(15 μl/ml, Sigma) とともに4 ℃で1 時間インキュベートした。サンプルを15 分間上述のように遠心分離し、上澄を免疫沈降のために保持した。次に抗APC 血清(APC−2) を溶解産物に加えた。サンプルを4 ℃で一晩インキュベートした。次にタンパク質A− セファロース4B CL ビーズを加え(50 %スラリーの15 μl/ml )、サンプルを4 ℃で1 時間ロッキングプラットホーム(rocking platform) 上でインキュベートした。タンパク質A− セファロース4B CL 混合物を、上述のように3 分間遠心分離することによりペレット状にし、10mM NaCl を含有するRIPA 溶解緩衝剤で1 度、0.5mM NaCl を含有する緩衝剤で6 度、100mM NaCl 緩衝剤でさらに1 度洗浄した。タンパク質A− セファロース4B CL ペレットをゲルローディング緩衝剤(50mM Tris−HCl[pH6.8], 100mM DTT, 2% SDS, 0.2% ブロモフェノールブルー, 20% グリセロール)に再び懸濁し、3 分間煮沸し、遠心分離した。上澄中に含有される免疫沈降タンパク質を、2.8 %アガロースゲルを使用して電気泳動により分離した。
【0138】
アガロースゲル上で分別されたタンパク質を、従来の垂直毛細管作用ブロッティングにより一晩ニトロセルロース膜(0.45 μm, MSI )に移した。膜を10 %の無脂肪粉乳(PBS 中)で処理し、抗体の非特異的結合を防止し、次に室温で一晩ポリクローナル抗APC 抗体(1:7500 の希釈におけるAPC−2 )とともにインキュベートした。ブロット上のタンパク質バンドを、使用説明書に従って増幅したアルカリ性ホスファターゼヤギ抗ウサギ免疫ブロットシステム(Bio−Rad Laboratories) を使用して検出した。免疫沈降ブロット上のAPC タンパク質の量を、濃度計[Speedmaster Duo−Densitometer, Electronic Systems Engineering Co., Cushing, OK(USA)] を使用して測定した。
【0139】
結果
HCT116 細胞、健康な被験者からのリンパ芽球細胞、および3 つの血縁でないFAP 家族における病気に冒された構成員に由来する4 つのFAP リンパ芽球細胞系における全長APC の存在を、免疫沈降分析により検出した。この分析により、HCT116 関連細胞系(全長APC タンパク質を含有することが知られている)は、野生型APC タンパク質に対応する300kDa のバンドのタンパク質をはっきりと発現することが示される。またこの分析により、HCT116 細胞系と比較して、健康な被験者からのリンパ芽球細胞は等量の全長APC タンパク質を有し、FAP 被験者からのリンパ芽球細胞は野生型APC タンパク質がより少ないことが示される。
【0140】
表2は、免疫沈降ブロットの濃度計評価により測定された、異なる被験者からのリンパ芽球細胞系における免疫沈降された全長APC の相対的レベルを示す。HCT116 培養された癌細胞は、基準レベル(100 %)を定めるのに適した。健康な個体に由来するリンパ芽球細胞は、HCT116 と比較して相対的に同様の量の野生型APC タンパク質(110 %)を有した。対照的に、FAP 細胞系は、対照の39 %から60 %までの範囲のAPC レベルを有した(平均=50.5 %、SEM =5.1 %)。
【0141】
【表2】
実施例には、APC 突然変異が全長APC タンパク質の発現を減少させることを示す最初の研究(本発明者が知る限り)が記載されている。これは、結腸細胞中の全長APC タンパク質の量はおそらく結腸腫瘍形成の基礎をなす機構における基準因子であるので、生物学的関連性を有すると考えられる。例えば、以前は、一つのAPC 対立遺伝子を含むAPC 突然変異により、細胞は細胞成長において他の後天性遺伝的変化または癌原性物質により誘発される有害な効果を受けやすくなると仮設が設けられていた[Boman, B. M., “癌の生物分子遺伝学” In: Lynch, H., (ed.), Genetic Epidemiology of Cancer, pp. 343−347, Boca Raton, FL CRC Press(1989)] 。本発明の結果により、全長APC タンパク質のレベルの減少は、一つのAPC 対立遺伝子を含むAPC 突然変異の結果として生ずることが示される。
【0142】
定量的に、この結果により、FAP リンパ芽球細胞系における抗APC 抗体免疫沈降タンパク質のレベルは、正常な対照の約50 %であったことが示される。免疫反応性のこのレベルは、FAP 患者は一つの突然変異対立遺伝子に加えて野生型APC 対立遺伝子を一つだけ保有すると言う事実、および遺伝子産物発現は遺伝子量に比例するという推定と一致する。
【0143】
モデルシステムとしてFAP 細胞を使用するこの実施例により、本発明の免疫学的検定法は、標的全長タンパク質レベルを減少させる生殖細胞系突然変異の検出に有用であることが示される。この実施例は、そのようなアッセイを、有害な突然変異対立遺伝子を保有する個体を診断するための簡単で、信頼でき、低費用の方法とする助けとなる。全長APC レベルのレベルについての免疫学的検定法は、FAP に冒されている個体を検出するための実際の診断テストとして有用でなければならない。
【0144】
(b)APC 自動化免疫学的検定法の代表例
全長MSH2 タンパク質を検出および定量するために、マウス抗APC MAb 、例えばAPC のアミノ末端に対するAB1(Oncogene Research Products) を、Dynaberds (登録商標)(M−450 Tosylactivated; Dynal Inc.) のようなビーズに共有結合させる。前記モノクローナル抗体に結合されたビーズを、細胞溶解産物と共にインキュベートし、その後洗浄した。次に前記洗浄されたビーズを、第二の一次抗体として、例えばAPC のカルボキシル末端に対するマウスMAb であるAB2(Oncogene Research Products) のようなマウス抗APC と共にインキュベートする。
【0145】
実施例2
MLH1 および MSH2 タンパク質についてのウェスタンブロット免疫学的検定法
この実施例には、新しく調整されたリンパ球および不朽化したリンパ球におけるMLH1 およびMSH2 タンパク質(2 つの主要なMMR 遺伝子の発現産物)の測定が記載される。ウェスタンブロット分析を含むこのアッセイにより、単一のリンパ球サンプルにおける両方の全長タンパク質のレベルが同時に評価される。ウェスタンブロットによるMLH1 およびMSH2 のレベルの半定量的分析により、同じサンプルについて全長MLH1 /全長MSH2 タンパク質を容易におよび直接測定できる。
【0146】
サンプルローディングにおける変異性および他の混乱させる因子のために、使用された方法により二つのタンパク質のそれぞれの個体の発現レベルを測定し、一方の他方に対する割合を計算する。次に、割合の絶対値が正常な範囲に明らかに下がるか、または二つのタンパク質の一つの発現が50% 失われた場合に予測される範囲に明らかに下がるか否かを決定する。
【0147】
方法
サンプル調整
サンプルを、不朽化したリンパ球の培養物から調製した。健康な個体からの単離した末梢リンパ球を、エプスタイン−バーウィルス形質転換により不朽化し、Spiro et al., Cell, 75: 951(1993) に記載されるようにリンパ芽球細胞系を産生する。培養液中で7 日間後得られたリンパ芽球性リンパ球(60 から120 ×106 細胞)の懸濁倍溶液(15mL) 中に含有される不朽化したリンパ球を使用した。
【0148】
それぞれのサンプルを、5mL のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS) で1 から2 回洗浄し、4 ℃で10 分間2000rpm で遠心分離した。細胞を溶解するために、1 ×強度のSDS ゲルローディングバッファー(50mM Tris−Cl[pH6.8] 、100mM ジチオトレイトール[ 新しく作製されたDTT] 、2% SDS 、0.1% ブロモフェノールブルー、10% グリセロール)を、それぞれの洗浄したペレットに加えた(培養した結腸癌細胞および結腸上皮について1mL 、リンパ球およびリンパ芽球細胞について200 μL )。ボルテックスを使用して細胞を完全に混合し、10 分間沸騰水槽に入れた。次に細胞をマイクロ遠心分離機で(Beckman)10 分間遠心分離し、不溶性の物質を沈降させ捨てた。
【0149】
ウェスタンブロット
上述の細胞溶解工程から上澄(20 μL の与えられた細胞溶解産物)を、調製されたゲルのウェルの一つの中に入れた[Sambrook et al.(eds.), A Laboratory Manual: 18.49−18.54[Cold Spring Harbor, NY(USA); 1995]] 。ポジティブコントロール、ネガティブコントロールおよびタンパク質マーカー(Bio−Rad, Cat#1610309) が常に含まれた。ポジティブコントロールには、MLH1 およびMSH2 タンパク質の両方を有する正常な粘膜、SW480 およびDiFi 細胞[ ヒト直腸腺癌細胞系;Novotny−Smith et al., J. Cell Physiol., 157: 253−262(1993)] が含まれた。突然変異ミスマッチ修復タンパク質についての対照には、HCT116 細胞(MSH2 ポジティブ;MLH1 ネガティブ) およびLoVo 細胞(MLH1 ポジティブ;MSH2 ネガティブ)(ATCC CCL−229; ヒト腺癌細胞系)が含まれた。毎回泳動されたネガティブコントロールは、2 %の胎仔ウシ血清(FBS; Irvine Scientific, CA; Cat.#3000) を含有する溶解産物緩衝剤であった。トラッカー色素がゲルの底を流れ出るまで、ゲルをBioRad Protean II ゲル電気泳動装置[Biorad; Hercules, CA(USA)] 上で電気泳動した(60 から70 ボルトで一晩)。Bio−Rad Trans−Blot Semi−Dry 装置を使用して(Bio−Rad の使用説明書に従い)ゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜[NF; MSI, Westboro, MA(USA)] に移した。
【0150】
次に、ブロッキングバッファー[50mL の5 %[w/v] 無脂肪粉乳[Carnation] in PBS] 中でNF をプレハイブリダイズした後、ロッキングプラットフォーム上で室温で2 時間5mL のブロッキングバッファー中で二つの一次抗体(マウスモノクローナル抗MSH2[Catalog #NA27; Titer=1:500; Oncogene Research Products] およびマウスモノクローナル抗MLH1[Catalog #13291A; Titer=1:500; PharMingen] )とともにインキュベートすることにより、ウェスタンブロットハイブリダイゼーションを行った。
【0151】
次にフィルタを200mL のPBS で3 度およびTTBS 緩衝剤(20mM Tris−Cl, pH7.5, 500mM NaCl, 0.05% Tween−20) で1 度洗浄した後、室温で1 時間5 %粉乳中で第二の抗体(Bio−Rad ヤギ抗マウス抗体[GAM][Catalog #1706461; Titer=1:1000] )と共にインキュベートした。NF を200mL のTTBS 緩衝剤で3度洗浄した後、製造者のプロトコルに従いBio−Rad 発色溶液(Catalog #1706461) 中でインキュベートした。Gateway 2000 コンピュータ(G6−200 XL) 、Hewlett Packard Scanjet 5P スキャナ、およびUN−SCAN−ITTM スキャニングソフトウェア[ 自動化デジタルシステム、Silk Scientific 社;Orem, UT 84059(USA)] を使用して、MSH2 またはMLH1 タンパク質についてバンドを定量的に分析した。
【0152】
結果
末梢リンパ球中のMMR タンパク質のレベルの検出。予備データにより、ウェスタンブロット分析を使用してMMR タンパク質を検出できることが示される。市販されている特異的抗体を使用して(表1)、全長タンパク質についてのバンドを、抗体が利用可能な二つのMMR 遺伝子タンパク質のそれぞれについて検出した。ウェスタンブロット分析には、抗MLH1 および抗MSH2 の両方の抗体とのハイブリダイゼーションを使用して、それぞれのタンパク質についてのバンドを、MSH2 について100kDa およびMLH1 について80kDa と示した。これにより、MLH1 およびMSH2 のレベルの半定量(ゲルバンド上の濃度計による測定を使用する)および同じサンプルについて全長MLH1 タンパク質対全長MSH2 の割合の直接の測定が可能となった。予想されたように、バンドの分子量(MW) は、実験の誤差の範囲内で、分析されるタンパク質についての既知の分子量と同じであった。さらに、MSH2 およびMLH1 タンパク質について異なる市販の抗体製剤(表1)を使用した場合、非特異的な交差反応タンパク質による偽陽性の可能性を実質的に除外して、同一の結果が得られた。
【0153】
ウェスタンブロット分析からの予備データからの結果。[1]MMR タンパク質に対する抗体の信頼できる供給源が存在し、本発明の典型的な免疫学的検定法に使用するプロトコルにおいて良好におよび低費用で作用するようである。[2]MMR タンパク質は、ヒトリンパ球において十分なレベルで発現され、免疫学的検定法により検出される。このことは、テストされるMMR タンパク質のそれぞれについて実質的なシグナルを検出し、これらのバンドが正しいMW 範囲にあることを発見できることに基づく。[3] ウェスタンブロット分析によるMLH1 およびMSH2 のレベルの半定量により、同じサンプルについての全長MLH1 /全長MSH2 タンパク質の比を容易におよび直接測定できる。
【0154】
表3は、本発明のMLH1 およびMSH2 アッセイの結果の予想される意味を示し、「プロモーター突然変異」とは、MSH2 またはMLH1 遺伝子の一つの対立遺伝子からの転写を除去するものである。
【0155】
【表3】
実施例2に含まれる研究により、正常な対照として使用されたMMR タンパク質の完全な補体[DiFi およびSW480] を発現する細胞系と比較してネガティブコントロール[HCT116(MSH2+; MLH1 −); およびLoVo(MSH2+; MLH1 −)] として使用した細胞系である、MLH1 またはMSH2 において不完全な細胞系中のそれぞれの全長MMR タンパク質の量が減少することが示された。正常なPBL 中のMMR タンパク質のレベルは、ポジティブコントロールとして作用する細胞系において見られるレベルと近いことが分かった。
【0156】
実施例3
フローサイトメトリによる完全なリンパ球中の全長 MMR タンパク質の検出
この実施例により、全長MMR タンパク質は、フローサイトメトリにより完全なリンパ球中で良好に検出できることが示される。細胞中の全長MMR タンパク質レベルを、フローサイトメトリにより正確に測定できる。フローサイトメトリにより、完全な定量的データが作製されることが予想される。
【0157】
予備データにより、フローサイトメトリを使用してMSH2 タンパク質を検出できることが示される。リンパ芽球系を使用して、二つの異なる抗MSH2 抗体を使用して細胞内MSH2 タンパク質を検出するための条件を設定した。細胞を固定し、透水性にした(Fix & PermTM 細胞透水性キット; Caltag Burlingame, CA を使用する)。二つの一次抗体の一つと共に細胞をインキュベートした。一つは、蛍光プローブ(フィコエリトリン[PE] )で予め標識した抗MSH2 AB1 である(Oncogene Research Products) 。他方の抗体は、蛍光イソチオシアネート[FITC] で予め標識した抗MSH2 AB2(Oncogene Research Products) である。この抗体は、MSH2 のカルボキシル末端に特異的である。それぞれの抗体についてのN/S 比に適当なシグナルを与える抗体力価を測定した。細胞内MSH2 に結合する好体の量を、FACStarPLUS フローサイトメーターシステム(登録商標)(Becton Dickinson; San Jose, CA) を使用して定量した。計器の設定(蛍光チャンネル番号または光電子増倍管ボルト)を調整して、相対的な蛍光強度を検出した。
【0158】
結果。両方の抗体(AB1−PE およびAB2−FITC )により、全長MSH2 タンパク質のみを有することが知られている培養されたリンパ芽球細胞系中の細胞内MSH2 レベルが再現可能に検出された。抗体Ab1−PE (MSH2 アミノ末端に対する)およびAb2−FITC (MSH2 カルボキシル末端に対する)を使用するフローサイトメトリ分析により、リンパ芽球細胞系における細胞内MSH2 タンパク質の存在が示される。
【0159】
フローサイトメトリデータからの結論:[1] フローサイトメトリ分析を使用し、MSH2 タンパク質を不朽化リンパ球細胞系において質的に検出できる。[2] 全長MSH2 タンパク質のフローサイトメトリ検出は、二つの異なる抗MSH2 抗体−AB1−PE およびAB2−FITC −を使用する検出可能なシグナルが得られるので、ほぼ間違いなく特異的である。実際に、免疫蛍光による核染色を確かめた。[3] さらに、本発明の好ましい自動化免疫学的検定法による分析に好ましい種類の細胞系であるリンパ芽球細胞系を使用して、フローサイトメトリ分析を行った。
【0160】
実施例4
ビーズ結合したサンドイッチ免疫学的検定法
(1)MMR タンパク質についてのビーズ結合したサンドイッチ免疫学的検定法
最近の実験により、好ましい自動化した、ビーズ結合した、サンドイッチ型の、本発明の分析システムの実施可能性が確立された。抗MSH2 抗体を、3 つの異なる技術を使用してビーズに結合させた:1)Ab1 抗体(MSH2 のアミノ末端に対する)を、Dynal トシル活性化磁気ビーズに結合させた;2)ウサギポリクローナル抗MSH2 抗体を、ストレプタビジンコーティングされたビーズに結合させた;および3)Ab1 を、架橋させるためにグルタルアルデヒドを使用して磁気ビーズに結合させた。レポーター分子を、二つの技術によるサンドイッチに基づく分析において使用される第二の一次抗体(Ab2) と結合させた:a)Ab2 抗体(MSH2 のカルボキシル末端に対する)を、FITC と結合させた(蛍光のために);これらの同じ抗体を、アクリジニウムエステルに結合させた(化学発光のために)。意義深いことに、二つのタイプのコーティングされたビーズ(トシル活性化ビーズおよびストレプタビジンでコーティングされたビーズ)を使用して、およびFITC 結合した第二の一次抗体によるサンドイッチに基づくアッセイを使用して、同様のMMR アッセイ結果を得た。例えば、フローサイトメトリにより、それぞれ全長MSH2 タンパク質のみを含有するDiFi 細胞およびHCT−116 細胞は、予想されたように、測定可能なシグナルを有したのに対し(55 %陽性のビーズ)、突然変異切断されたMSH2 タンパク質のみを有することが知られるネガティブコントロール細胞系(LoVo) は、予想されたように、ごくわずかなシグナルを有したということが示された。
【0161】
磁気ビーズに基づく免疫学的検定法からの結論。1)この実施例により、ビーズ結合した分析システムからの蛍光シグナルを検出するためにフローサイトメトリを使用するMSH2 についてのビーズに基づくサンドイッチ分析が作用し、定量的であることが示される。2)このビーズに基づく技術は、自動化サンドイッチ型免疫学的検定法方式に容易に適合できる。
【0162】
(2)臨床的/群集研究における HNPCC 検出
上述のセクション1の方法を使用して、CRC 患者のコホートをテストできる。MMR タンパク質のレベルの減少は、CRC 患者の約10 %で生ずると予想される。陽性テストにより、HNPCC の予備的診断が示される。続いて、該予備的診断を、切断されたタンパク質の発現と矛盾しない遺伝子型を示す分子遺伝学的テストにより確かめることができる。
【0163】
また、二重性抗体アッセイを使用して、特に(1)HNPCC 遺伝子型が知られている不朽化リンパ球を使用するHNPCC リンパ球;(2)HNPCC 家族の構成員からの新しいリンパ球;および(3)CRC 患者からの新しい、または冷凍されたリンパ球からのタンパク質をテストできる。
【0164】
(2a )HNPCC リンパ球におけるアッセイのテスト
2a.i.HNPCC 遺伝子型が知られている場合の不朽化リンパ球における MMR レベルのテスト
分子/遺伝的テストの結果として遺伝子型が知られているHNPCC 患者からのリンパ球を使用して、全長MMR タンパク質のレベルを測定することが可能である。基準の対照は、遺伝子型テストにおいてHNPCC についての陰性の、および正常なレベル(100 %)のMMR タンパク質を有すると考えられる家族構成員からの不朽化WBC である。
【0165】
hMLH1 についてのテストは、「サンドイッチ」型の免疫学的検定法により行い、ビーズ結合したタイプのアッセイを行う。そのような「サンドイッチ」型の免疫学的検定法により、免疫学的検定法の特異性が増加する。
【0166】
HNPCC 陽性患者からの細胞は、非常に狭い範囲の統計的分散の中で、正確に一つのMMR タンパク質のレベルが50 %減少することを示すと予想される。比較群は、(a) 正常なヒト志願者からの新しく単離されたリンパ球;および(b) 遺伝子型テストにおいてHNPCC について陰性の家族構成員からのWBC である。また、正常なヒト志願者からの不朽化WBC をテストして、不朽化工程自体によりMMR タンパク質のレベルが変化する可能性を評価する。この研究により、MMR タンパク質分析における標的MMR タンパク質対関連タンパク質の割合の50 %の減少という低い値は、遺伝性CRC のHNPCC 形態と関連し、その予測を可能とすることが確かめられる。
【0167】
2a.ii.HNPCC 診断が行われた場合の HNPCC 家族の構成員からの新しいリンパ球における全長 MMR レベルのテスト
HNPCC (不朽化されていない;利用できる遺伝子型がない)について陽性の家族歴を有するCRC 患者からのWBC サンプルを使用して、テストを行った。アムステルダム基準(Amsterdam Criteria) および遺伝的テストの使用により、そのような家族のCRC 患者の70 から80 %が、HNPCC について(4 つのミスマッチ修復遺伝子の1 つにおける突然変異)陽性の遺伝子型(分子遺伝学的テストから)を有することが示される。
【0168】
(a) 突然変異MMR 遺伝子を受け継いだ危険が50 %である(なぜならこれは常染色体優性遺伝子だからである)HNPCC 家族の構成員のうち50 %は、MMR タンパク質のレベルが著しく減少していることを示す;(b) 突然変異遺伝子(二つの野生型対立遺伝子の一つの欠失による)を含有する細胞により発現される一つのMMR タンパク質のレベルは約50 %減少する;(c) 分子遺伝学的テストを使用して、本発明の免疫学的検定法により測定されるHNPCC の陽性および陰性診断を確かめることができるということが予想される。このサブセクションに記載されるテストにより、現地条件下でHNPCC 家族の構成員のHNPCC を診断することについて本発明のアッセイの予想される価値が確かめられる。
【0169】
2a.iii. 結腸直腸癌を有する患者の一般個体群のテスト
この実験は、より多様な患者の個体群、すなわちCRC を有するすべての患者の個体群を研究した以外は、前記の方法(2aii) と同様である。(1)すべてのCRC 患者の10 %は、アッセイ(公表されている研究に基づく)において陽性の調査結果の特徴により、HNPCC を有することが分かる;(2)分子遺伝学的テストにより、アッセイにおいて陽性の個体はHNPCC 陽性であることが確かめられるということが予想される。
【0170】
このサブセクションに記載されるテストにより、現地条件下でCRC 患者の構成員についてHNPCC を診断するための本発明のアッセイの予測される価値を確かめられる。テストを変化させて、CRC 以外の癌を有するが、子宮癌のようなHNPCC と関連することが知られる患者を研究する。そのような患者の一部がMMR 突然変異について陽性であるか否かが決定される。
【0171】
2a.iv. 癌および癌でない患者における MMR 値のデータベースの確立
正常なヒト志願者およびHNPCC 患者についての「全長」MMR 値のデータベースを確立し、全長MMR タンパク質レベルについての「正常な」範囲を測定できる。HNPCC は現在、CRC のすべてのケースの約10 %、およびすべての癌のより小さい部分を示すと考えられているので、癌の他の形態を有するCRC 患者の大多数は「正常な」範囲の全長MMR 値を有すると予想される。このデータベースには、HNPCC の診断におけるMMR タンパク質テストの正確性を確かめる分子遺伝学的テストからの結果が含まれる。
【0172】
(2b )二つの抗体および「サンドイッチ」技術を使用し自動化に適合可能な、様々の免疫学的検定法のテスト
このアッセイにおいて、MMR タンパク質の一つを認識する抗体を固定する(例えば、96 穴マイクロタイタープレートのウェル中)。患者からの末梢リンパ球のサンプルの溶解産物を加えて、特定のMMR タンパク質をプレートに結合させる。溶解産物を洗浄により除去し、MMR タンパク質上の異なるエピトープを認識しサンプル中の全長タンパク質の量を定量するためのレポーター分子を組み込んだ第二の抗体を加える。サンドイッチアッセイを、自動化したELISA に基づくシステムに適合させる。
【0173】
本発明の実施の形態に関する以上の記述は、説明を目的とするものである。それらは明確な形式で開示されている本発明を網羅するものでも制限するものでもなく、上述の教示に照らし合わせることにより、多くの変形および変更が可能であることは明らかである。本発明の原理およびその実際的な用途を説明するために実施の形態を選択して記載しており、それにより、当業者は、多様な実施の形態において、および特定の利用に適するように多様な変形を行って本発明を利用することが可能である。
【0174】
本明細書中に引用している全ての参考文献をここに引用する。
Claims (22)
- 生体における病気または罹病性の特徴を検出する方法であって、該病気または該罹病性の特徴が対象遺伝子における生殖細胞系突然変異に関連し、
(a) 前記生体から単離した正常な生体サンプル中の前記対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量、および前記サンプル中の第二の遺伝子により発現される関連タンパク質の量を免疫学的に定量し、
(b) 前記サンプル中の前記第二の遺伝子により発現される関連タンパク質の量に対する前記サンプル中の前記対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量の割合を計算し、
(c) 前記計算された割合が、前記サンプル中における前記対象遺伝子により発現される前記野生型タンパク質が異常に低いレベルで存在することを示すか否かを決定し、
(d) 前記工程(b) で計算された割合により前記サンプル中で前記野生型タンパク質が異常に低いレベルで存在することが示される場合、前記対象遺伝子がその対立遺伝子の一つにおいて生殖細胞系突然変異を含有し、対象生体が前記生殖細胞系突然変異に関連する病気または罹病性の特徴に冒されているという結論を出す、
各工程を含むことを特徴とする方法。 - 前記工程(c) が、前記工程(b) で計算された割合を、前記病気によりまたは前記罹病性の特徴により冒されていない、対象生体と同じ分類学的分類の生体からの比較可能な生体サンプル中の、前記関連タンパク質の量に対する前記対象遺伝子から発現された前記野生型タンパク質の量の割合の平均と比較する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 生体における病気または罹病性の特徴を検出する方法であって、該病気または該罹病性の特徴が、二つ以上の対象遺伝子の一つにおける生殖細胞系突然変異と関連し、
(a)それぞれの対象遺伝子により発現される、前記生体から単離された正常な生体サンプル中の野生型タンパク質の量を免疫学的に定量し、
(b)前記サンプル中で他の対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量、または前記サンプル中でそれぞれの他の対象遺伝子により発現される野生型タンパク質のそれぞれの量に対する、前記サンプル中で前記対象遺伝子の一つにより発現される野生型タンパク質の量の割合を計算し、
(c)前記工程(b)で計算された割合が、前記サンプル中で対象遺伝子のいずれかまたは任意の対象遺伝子により発現される野生型タンパク質が異常に低いレベルで存在することを示すか否かを決定し、
(d)前記工程(b)で計算された割合により対象遺伝子の一つにより発現される前記野生型タンパク質が前記サンプル中で異常に低いレベルで存在することが示される場合、前記対象遺伝子がその対立遺伝子の一つにおいて生殖細胞系突然変異を含有し、対象生体が前記生殖細胞系突然変異に関連する病気または罹病性の特徴に冒されているという結論を出す、
各工程を含むことを特徴とする方法。 - 前記工程(c) が、前記工程(b) で計算された割合を、前記病気によりまたは前記罹病性の特徴により冒されていない、対象生体と同じ分類学的分類の生体からの比較可能な生体サンプル中の、対象遺伝子により発現された野生型タンパク質の量から計算される割合の比較可能な平均と比較する工程を含むことを特徴とする請求項3記載の方法。
- 前記正常な生体サンプルが、体液、組織標本、組織抽出物、正常な細胞、正常な細胞からの溶解産物、正常な細胞抽出物、および正常な細胞の溶解産物からの上澄からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
- 前記体液が、血液、血清、血漿、精液、胸部滲出液、胃の分泌液、糞の懸濁液、胆液、唾液、涙、痰、粘液、尿、リンパ液、細胞質ゾル、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液、気管支肺胞洗浄液、および髄液からなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 前記細胞が末梢血リンパ球であり;前記細胞溶解産物が末梢血リンパ球の溶解産物であり;前記細胞抽出物が末梢血リンパ球からのものであり;前記上澄が末梢血リンパ球の溶解産物からのものであることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 前記正常な細胞が末梢血リンパ球であり、前記生体がヒトであることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 前記生体が脊椎動物であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の方法。
- 前記脊椎動物が哺乳類であることを特徴とする請求項9記載の方法。
- 前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項10記載の方法。
- 前記方法が、癌または癌になる罹病性の診断、または診断/予後方法であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の方法。
- 前記生殖細胞系突然変異が、切断を引き起こす突然変異または対立遺伝子を喪失させる突然変異からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の方法。
- 前記対象遺伝子が、毛細管拡張性運動失調、腺腫様結腸ポリポーシス、BRCA1 、BRCA2 、膵嚢胞性繊維症、c−myb 、ジストロフィン、E− カドヘリン、エメリー−ドライフス筋ジストロフィー、ファンコーニ貧血、IDS 、ミスマッチ修復、神経繊維腫症タイプ1 、神経繊維腫症タイプ2 、p16 、多発性嚢胞腎症タイプ1 、多発性嚢胞腎症タイプ2 、PTCH 、トランスホーミング増殖因子ベータレセプター2 、およびリンダウ病の遺伝子からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載の方法。
- 前記病気が、または前記罹病性の対象の病気が、毛細管拡張性運動失調、血管芽細胞腫、腎細胞癌、褐色細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、膵癌、胆道癌、膵嚢胞性繊維症、血液内悪性腫瘍、デュシェーヌ筋ジストロフィー、尿生殖器癌、エメリー−ドライフス筋ジストロフィー、ファンコーニ貧血、ハンター症候群、神経繊維腫症タイプ1 、神経繊維腫症タイプ2 、家族性黒色腫、多発性嚢胞腎症、母斑様基底細胞癌、およびリンダウ病からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から14いずれか1記載の方法。
- 前記対象遺伝子または前記対象遺伝子の一つが結腸ポリポーシス遺伝子であり、前記病気または前記罹病性の特徴が家族性腺腫様ポリポーシスであることを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載の方法。
- 前記対象遺伝子または前記対象遺伝子の一つがミスマッチ修復遺伝子である、または前記対象遺伝子の両方がミスマッチ修復遺伝子であることを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載の方法。
- 前記対象遺伝子または前記対象遺伝子の一つが、MLH1 、MSH2 、MSH6 、PMS1 、およびPMS2 からなる群より選択され;前記病気または前記罹病性の特徴が、遺伝性非ポリポーシス結腸癌であることを特徴とする請求項17記載の方法。
- 前記対象遺伝子または前記対象遺伝子の一つが、MLH1 遺伝子またはMSH2 遺伝子であることを特徴とする請求項18記載の方法。
- それぞれの対象遺伝子により発現される野生型タンパク質の量、および/または関連タンパク質の量を、ウェスタンブロット分析、免疫沈降の後ウェスタンブロット分析、フローサイトメトリ、酵素免疫測定法、酵素結合免疫吸着アッセイ、ラジオイムノアッセイ、競合免疫学的検定法、二重抗体サンドイッチアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、蛍光アッセイ、または凝集アッセイにより測定することを特徴とする請求項1から19いずれか1項記載の方法。
- 自動化されることを特徴とする請求項1から20いずれか1項記載の方法。
- 前記野生型タンパク質の異常に低いレベルが、前記生殖細胞系突然変異に関連する前記病気または前記罹病性の特徴により冒されていない生体からの比較可能なサンプル中の前記タンパク質のレベルの50 %±20 %であり、該冒されていない生体は前記対象生体と同じ分類学的分類であることを特徴とする請求項1から21いずれか1項記載の方法。
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