JP3536086B2 - 有機光学単結晶の清浄方法 - Google Patents
有機光学単結晶の清浄方法Info
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Description
は、高品質かつ清浄で平坦な表面を有することが要求さ
れる。これまでの研究により、高品質DAST単結晶の
育成については本発明者らが開発したポリテトラフルオ
ロエチレン斜面を用いた結晶育成法(特許第30079
72号)を用いることにより、定常的に高品質のDAS
T単結晶を育成することが可能となった。
エチルバゾリウムトシレート(4-dimethylamino-N-meth
yl-4-stilbazolium tosylate:以下、DASTと略す場
合がある)からなる単結晶は、無機材料からなる単結晶
よりもはるかに優れた非線形光学効果を有する有機非線
形光学単結晶として近年注目されている。
子分極率を持つカチオンと、その非線形性を最大に利用
しうる結晶構造を作り出すカウンタ−イオンとがイオン
結合している結晶であり、電気光学効果を利用した電界
センサや、テラヘルツ波の発生素子等、次世代光デバイ
スへの応用が期待されている。
は、高品質かつ清浄で平坦な表面を有することが要求さ
れる。これまでの研究により、高品質DAST単結晶の
育成については本発明者らが開発したテフロン斜面を用
いた結晶育成法(特許第3007972号)を用いるこ
とにより、定常的に高品質のDAST単結晶を育成する
ことが可能となった。
法によって得られたDAST単結晶の表面には微結晶が
吸着しているため、上記電子製品に対して実際に用いる
ためには、表面を清浄、平坦化することが要求される。
ところが、DAST単結晶などの有機単結晶は硬度が低
く柔らかいために、機械研磨などによって上記要求を満
足することは困難であった。
この単結晶表面をメタノールなどの薬品を用いて処理
し、前記微結晶を溶解させて取り除くことが考えられ
た。しかしながら、この方法においては、DAST単結
晶表面に多数のエッチピットを形成させてしまう結果と
なり、結果的に清浄かつ平坦な表面を得ることができな
いでいた。
る有機光学単結晶の表面を清浄かつ平坦化する清浄方法
を提供することを目的とする。
成すべく、育成容器中の、所定の有機物が溶解してなる
溶液中に所定の基板を浸漬させることにより、前記所定
の基板上に前記有機物を核成長させ、前記所定の基板上
に前記有機物からなる有機光学単結晶を作製した後、前
記育成容器中に前記溶液よりも比重が大きくかつ前記溶
液に対して不活性な溶媒を注入して、前記溶液と前記溶
媒とを2層に分離し、前記育成容器の下側に分離存在す
る前記溶媒中に前記有機光学単結晶を移行させ、前記溶
液を除去した後に前記光学単結晶を前記育成容器から取
り出すようにしたことを特徴とする、有機光学単結晶の
清浄方法に関する。
結晶が吸着するメカニズムの解明を試みた。その結果、
下記の事実を見出した。すなわち、DAST単結晶の作
製は、所定の育成容器中のDASTが溶解してなる溶液
に所定の基板を浸漬させ、この所定の基板に前記DAS
Tを析出成長させることにより行うが、前記溶液の溶媒
には揮発性の高いメタノールなどが用いられる。したが
って、DAST単結晶を作製した後、この単結晶を前記
溶液から引き上げる際に、その表面に前記溶液が付着し
て揮発性の高いメタノールのみが蒸発し、残存するDA
STが微結晶として前記表面に吸着することを見出し
た。
液に接触させることなく、育成容器中から取り出すこと
ができれば、DAST単結晶の表面に対する微結晶の吸
着自体を防止できることを想到した。本発明は、本発明
者らによる上記のような鋭意検討の結果としてなされた
ものである。
るのに用いた溶液よりも比重の大きく、かつこの溶液に
対して不活性な溶媒を育成容器中に注入して、層分離を
行う。そして、比重が大きいために育成容器の下側に分
離存在する前記溶媒中に、前記有機光学単結晶を移行さ
せ、前記溶液を除去した後に前記育成容器から取り出す
ようにしている。
晶は、前記溶液と接触することなく育成容器外に取り出
されるため、前記有機光学単結晶の表面への微結晶の吸
着自体を防止することができる。このため、最終的に清
浄かつ平坦な表面を有する有機光学単結晶を得ることが
できる。具体的には、表面平均粗さが1〜5nmの表面
を有する有機光学単結晶を得ることができる。
に基づいて詳細に説明する。図1〜3は、本発明の清浄
方法の一例を示す工程図である。図では、DAST単結
晶を清浄する場合について示している。最初に、図1に
示すように、育成容器1中のDAST溶液2中で、所定
の基板3上にDAST単結晶4を作製する。DAST溶
液2は、有機溶媒中にDASTを所定量溶解させて作製
する。有機溶媒としては、低価格であり入手が容易であ
ることなどの理由からメタノールが一般に用いられる。
いて、基板3としてポリテトラフルオロエチレン部材を
用いるとともにその部材を傾斜させ、主面上に形成され
た溝部3AにDASTを成長させてDAST単結晶4を
作製した場合を示している。これによって、結晶欠陥が
少なく結晶性に優れた高品質のDAST単結晶を得るこ
とができる。しかしながら、従来のような自然核成長法
及び種結晶成長法を用いることもできる。
にDAST溶液2よりも比重が大きく、かつDAST溶
液2に対して不活性な溶媒8を注入する。すると、DA
ST溶液2及び溶媒8は2層に分離し、比重の大きい溶
媒8は育成容器1の下側に位置するようになる。そし
て、DAST単結晶4が形成された基板3をそのまま保
持して、DAST溶液2から溶媒8中に移行させる。
上側に分離して位置するDAST溶液2を除去する。そ
して、残った溶媒8から基板3を引き上げ、これによっ
てDAST単結晶4を育成容器1の外に取り出す。この
ように、DAST単結晶4は、育成容器1から外部へ取
り出すに際してDAST溶液2に接触することがない。
したがって、DAST単結晶4の表面に微結晶が吸着せ
ずに、清浄かつ平滑な表面を具えることができる。
0.791)を用いて構成した場合は、低価格で入手が
容易であることなどの理由から液状高分子フッ化炭素
(商標名フロリナート、3M社製)(比重1.78)を
用いることが好ましい。
ために注入する溶媒の温度が、有機光学単結晶を構成す
る有機物が溶解してなる溶液の温度以上であることが好
ましい。これによって、作製された有機光学単結晶の表
面に対する微結晶の吸着をより効果的に防止することが
できる。これは、前記溶液と前記溶媒とが2層分離して
存在している場合にも、前記溶媒中には前記溶液中の有
機物が拡散して多少なりとも存在するようになるが、前
記溶液と前記溶媒間に温度勾配が存在することによっ
て、前記溶媒中に拡散する前記有機物の量が減少するた
めと考えられる。
も0〜15℃高いことが好ましく、さらには5〜8℃高
いことが好ましい。
の、有機光学単結晶を上記層分離するために用いた前記
溶媒によって超音波洗浄することが好ましい。具体的に
は、図3のような状態において超音波洗浄する。これに
よって、有機光学単結晶の表面にわずかに吸着して残存
した微結晶をも効果的に取り除くことができ、極めて清
浄かつ平滑な平面を具える有機光学単結晶を提供するこ
とができる。
1〜5nmの表面を有する有機光学単結晶を得ることが
できる。さらには、上記温度制御や超音波洗浄などによ
って表面平均粗さが1〜3nmの表面を有する有機光学
単結晶を得ることができる。なお、ここでいう表面平均
粗さは、二乗平均平方根粗さである。
の他に、L−アルギニンフォスフェイトモノハイドレイ
ト(LAP)、2−メチル−4−ニトロアニリン(MN
A)及び3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキサ
イド(POM)などの有機光学単結晶について用いるこ
とができる。
AST単結晶の清浄を実施した。最初に、図1に示すよ
うに、DAST粉末7.0gを育成容器1中の38.2
℃に保持された200mlのメタノール中に入れてDA
ST溶液2を作製した。次いで、この溶液中に傾斜角度
30度で主面に溝部3Aを有するポリテトラフルオロエ
チレン部材3を浸漬させ、溝部3AにDAST単結晶4
を作製した。
に45℃に保持されたフロリナートを注入し、育成容器
1の下側に分離存在するフロリナート8中に、DAST
単結晶4を具えるポリテトラフルオロエチレン部材3を
移行させた。次いで、図3に示すように、育成容器1の
上側に分離存在するDAST溶液2を除去した後、ポリ
テトラフルオロエチレン部材3をフロリナート8から引
き上げ、育成容器1からDAST単結晶4を取り出し
た。
形状測定顕微鏡(レーザ顕微鏡)で観察したところ、図
4に示すような結果が得られた。図4から明らかなよう
に、DAST単結晶の表面にはほとんど微結晶が存在し
ていないことが分かる。また、DAST単結晶の表面を
原子間力顕微鏡(AFM)によって詳細に観察したとこ
ろ、図5に示すような結果が得られた。図5から明らか
なように、一見平滑に見える表面においても、約1μm
程度の微結晶が残存していることが分かる。また、表面
平均粗さは、4.58nmであった。
3.0℃とし、育成容器1中の、このフロリナート中に
おいてDAST単結晶4をさらに5分間超音波洗浄した
以外は、実施例1と同様にして実施した。
晶4の表面の、AFM写真を示す図である。図6から明
らかなように、実施例1において存在していた微結晶は
あらかた消失していることが分かる。さらに、表面平均
粗さは3.15nmであった。すなわち、層分離させる
ためのフロリナートをDAST溶液よりも高くし、かつ
作製したDAST単結晶を超音波洗浄することによっ
て、DAST単結晶の表面の平滑性がさらに向上するこ
とが分かる。
を注入することなく、作製したDAST単結晶を図1に
示す状態においてDAST溶液から引き上げ、育成容器
外に取り出した。なお、DAST単結晶は実施例1と同
様にして作製した。図7は、このようにして得たDAS
T単結晶のレーザ顕微鏡写真である。上記実施例1及び
2と異なり、DAST単結晶の表面にはDAST微結晶
が多数付着していることが分かる。すなわち、上記実施
例1及び2と比較して、DAST単結晶の表面平滑性は
著しく低いことが分かる。
たDAST単結晶の表面に付着した微結晶をメタノール
で除去した。図8は、このようにして得たDAST単結
晶のAFM写真である。図から明らかなように、付着し
た微結晶はほとんど除去されているが、代わりに多数の
エッチピットが形成されていることが分かる。したがっ
て、このようにして得たDAST単結晶の表面は結果的
に平滑性に劣る事が分かる。
態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は
上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸
脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能であ
る。
表面平均粗さが1〜5nm程度の極めて清浄かつ平滑な
表面を有する有機光学単結晶を提供することができる。
したがって、このような有機光学単結晶を用いてなる、
通信波長帯赤外光の波長変換デバイス、超高速ICの計
測プローブ又は電界センサなどの非線形性電子部品を提
供することができる。
図である。
晶表面のレーザ顕微鏡写真である。
晶表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。
単結晶表面のAFM写真である。
面のレーザ顕微鏡写真である。
のAFM写真である。
Claims (9)
- 【請求項1】 育成容器中の、所定の有機物が溶解して
なる溶液中に所定の基板を浸漬させることにより、前記
所定の基板上に前記有機物を核成長させ、前記所定の基
板上に前記有機物からなる有機光学単結晶を作製した
後、前記育成容器中に前記溶液よりも比重が大きくかつ
前記溶液に対して不活性な溶媒を注入して、前記溶液と
前記溶媒とを2層に分離し、前記育成容器の下側に分離
存在する前記溶媒中に前記有機光学単結晶を移行させ、
前記溶液を除去した後に前記光学単結晶を前記育成容器
から取り出すようにしたことを特徴とする、有機光学単
結晶の清浄方法。 - 【請求項2】 前記溶媒の温度を前記溶液の温度以上と
したことを特徴とする、請求項1に記載の有機光学単結
晶の清浄方法。 - 【請求項3】 前記溶媒の温度が前記溶液の温度より
も、0〜15℃高いことを特徴とする、請求項2に記載
の有機光学単結晶の清浄方法。 - 【請求項4】 前記育成容器中において、前記有機光学
単結晶を前記溶媒を用いて超音波洗浄することを特徴と
する、請求項1〜3のいずれか一に記載の有機光学単結
晶の清浄方法。 - 【請求項5】 前記溶液は前記有機物をメタノールに溶
解してなり、前記溶媒はフロリナート(商標名)からな
ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載
の有機光学単結晶の清浄方法。 - 【請求項6】 前記有機物は、4−ジメチルアミノ−N
−メチル−4−スチルバゾリウムトシレートであること
を特徴とする、請求項5に記載の有機光学単結晶の清浄
方法。 - 【請求項7】 前記有機光学単結晶は、前記所定の基板
としてポリテトラフルオロエチレン製の部材を用い、こ
の部材の主面を傾斜させることにより、前記主面に形成
された溝部において前記溶液から核成長させて作製する
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の
有機光学単結晶の清浄方法。 - 【請求項8】 前記有機光学単結晶の表面平均粗さが、
1〜5nmであることを特徴とする、請求項1〜7のい
ずれか一に記載の有機光学単結晶の清浄方法。 - 【請求項9】 前記有機光学単結晶は、4−ジメチルア
ミノ−N−メチル−4−スチルバゾリウムトシレートか
らなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に
記載の有機光学単結晶の清浄方法。
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