JP3526996B2 - 液晶表示装置の駆動方法 - Google Patents

液晶表示装置の駆動方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置の駆
動方法に関し、特にベンド配列を利用した液晶表示装置
の駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、パーソナルコンピュータ等の表示
装置に使用される液晶表示装置の表示性能に対する要求
が厳しくなってきている。特に表示装置の視角特性の改
善及び応答速度の向上が望まれている。ツイストネマチ
ック型(TN型)液晶表示装置において、1画素を複数
の領域に分割して各領域の配向方向を相互に異ならしめ
たマルチドメイン構成の液晶表示装置が提案されてい
る。
【0003】TN型液晶表示装置の各画素をマルチドメ
イン構成にすると、視角特性を改善することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】TN型液晶表示装置
は、液晶分子が基板にほぼ平行に配列したオフ状態と、
液晶分子が基板に対してほぼ垂直に配列したオン状態と
の液晶層の屈折率変化を利用している。基板に平行に配
列した状態を垂直に配列した状態に遷移させるために
は、比較的大きなエネルギを必要とする。このため、応
答速度の向上が困難である。
【0005】これに対し、基板間の液晶分子がベンド配
列した状態における各液晶分子の立ち上がり角の変化に
よる屈折率変化を利用するベンド配列型液晶表示装置が
提案されている。ベンド配列した状態における各液晶分
子の立ち上がり角の変化は、TN型液晶表示装置のオン
状態とオフ状態との間の状態遷移に比べて高速であり、
応答速度の向上の点で有利である。
【0006】しかし、液晶分子を基板間に挟持すると、
通常スプレイ配列する。ベンド配列を利用して屈折率を
変化させるためには、液晶表示装置の使用開始前に、ま
ずスプレイ配列状態からベンド配列状態に遷移させてお
く必要がある。
【0007】本発明の目的は、応答速度が早く、かつ視
覚特性の良好なベンド配列型液晶表示装置の駆動方法を
提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の一観点による
と、一定の間隔で対向配置された2枚の基板、基板間に
挟持された液晶層、及び該2枚の基板の表面上にそれぞ
れ形成され該液晶層に基板法線方向の電界を印加するた
めの電極を有する液晶表示装置を準備する工程と、前記
電極に第1の電圧のピーク電圧を有する交流電圧を印加
する第1工程、及び前記電極への前記交流電圧の印加を
停止し前記第1の電圧よりも小さい第2の電圧を印加す
る第2工程を交互に繰り返し実施し、前記液晶層中の液
晶分子をベンド配列させる工程とを有する液晶表示装置
の駆動方法が提供される。
【0009】第1の電圧のピーク電圧を有する交流電圧
を印加する第1工程と第1の電圧よりも小さい第2の電
圧を印加する第2工程を交互に繰り返し実施することに
より、液晶層をベンド配列状態に遷移させることができ
る。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を説明する前に、
ベンド配列型液晶表示装置の構成を簡単に説明する。
【0011】図2は、ベンド配列型液晶表示装置の一部
分を示す斜視図である。相互に平行配置された基板10
Aと10Bとの間に、液晶分子13を含む液晶層14が
挟持されている。図には示さないが、基板10A及び1
0Bの相互に対向する面には、液晶層に電界を印加する
ための電極、及び液晶の配向方向を規制する配向膜が形
成されている。
【0012】基板10A及び10Bの配向膜には、液晶
分子を基板面から5〜8°程度プレチルトさせる傾斜配
向処理が施されている。両基板は、基板面内における配
向方向(配向方位)が相互に平行になり、両基板にそれ
ぞれ接する液晶分子が、その両端のうち同じ側の端部か
ら立ち上がるように配置されている。以下、このような
基板の配置を「順平行配置」と呼ぶ。基板10A、10
Bから離れるに従って、液晶分子の長軸方向と液晶分子
に近い側の基板面とのなす角(立ち上がり角)が徐々に
大きくなり、液晶層14の厚さ方向のほぼ中央において
90°になる。
【0013】基板10Aの外側に、偏光板11Aが配置
され、基板10Bの外側に、光学補償板12及び偏光板
11Bがこの順番に配置されている。偏光板11Aと1
1Bとは、偏光軸同士が相互に直交し、偏光軸と液晶分
子の配向方位とが45°の角度で交わるように配置され
ている。
【0014】ベンド配列型液晶表示装置においては液晶
分子がツイストしていないため、基板法線方向から視角
を増加させたときの液晶層14の屈折率異方性の変動
が、TN型液晶表示装置のそれよりも少ない。このた
め、良好な視角特性を得ることが期待される。
【0015】図3は、2枚の基板を順平行配置した場合
の、液晶分子の配列の様子を示す基板及び液晶層の断面
図である。なお、液晶層14中に、一部の液晶分子をそ
の長軸方向に着目して示す。
【0016】図3(A)は、スプレイ配列状態を示す。
順平行配置した基板10A及び10Bに挟持された液晶
層14は、通常、その厚さ方向のほぼ中央の液晶分子の
長軸が基板面にほぼ平行になるスプレイ配列状態をと
る。これは、スプレイ配列状態における弾性エネルギが
最も小さいためである。
【0017】図3(B)は、基板10A及び10Bの対
向面に形成された電極(図示せず)間に電圧を印加した
ときの配列状態を示す。液晶層14中の液晶分子13
が、その長軸を基板面に対して垂直にするように立ち上
がる。なお、基板10A及び10Bの配向膜(図示せ
ず)の表面に直接接する液晶分子は、配向膜から強い規
制力を受けているため、傾斜配向状態を維持する。
【0018】図3(C)は、ベンド配列状態を示す。液
晶層14の厚さ方向のほぼ中央の液晶分子の長軸方向
が、基板面に対してほぼ垂直になる。ベンド配列状態
は、高い弾性エネルギを有しているため、スプレイ配列
状態からベンド配列状態に遷移させるために外部からエ
ネルギを与える必要がある。
【0019】スプレイ配列状態の液晶表示装置の電極に
交流電圧を印加すると、基板面内の少なくとも一部の領
域の液晶層がベンド配列状態に遷移する。印加する交流
電圧の大きさによってベンド配列した領域(ベンド領
域)とスプレイ配列した領域(スプレイ領域)との境界
線が移動する。印加電圧を適当に選択すると、この境界
線が停止し一定の状態を維持する。この時の印加交流電
圧のピーク電圧をスプレイ配列状態とベンド配列状態と
の臨界電圧と呼ぶ。臨界電圧よりも高い交流電圧を印加
すると、ベンド領域が広がる向きに境界線が移動し、交
流電圧を印加しないかまたは臨界電圧よりも低い交流電
圧を印加すると、ベンド領域が狭まる向きに境界線が移
動する。なお、臨界電圧は、基板間のギャップ長に依存
する。
【0020】一旦ベンド配列すると、ベンド配列を保持
するために十分な交流電圧を印加しておくことにより、
ベンド配列状態を保持することができる。ベンド配列状
態の液晶層14に印加する交流電圧を変化させると、ベ
ンド配列状態を保持したまま各液晶分子13の長軸方向
と基板面とのなす角度(立ち上がり角度)が変化する。
印加電圧を高くすると、各液晶分子13の立ち上がり角
度が大きくなり、印加電圧を低くすると、立ち上がり角
度が小さくなる。この立ち上がり角度の変化によって液
晶層14の屈折率が変化する。
【0021】高電圧を印加したオン状態と低電圧を印加
したオフ状態との屈折率の差を利用して光の透過率を制
御し、白または黒を表示する。なお、オン状態とオフ状
態のそれぞれの電圧の中間の電圧を印加することによ
り、灰色表示も可能であり、カラーフィルタを用いるこ
とにより、カラー表示も可能となる。
【0022】図2に戻って、ベンド配列型液晶表示装置
の透過率制御方法を説明する。偏光板11Aを通って液
晶層14に入射した直線偏光光は、液晶層14の持つ屈
折率異方性によって偏光状態が変化する。オン状態の時
に、液晶層14と光学補償板12とを透過した光が、入
射直線偏光光の偏光面から90°回転した偏光面を有す
る直線偏光光になるように、光学補償板12のリターデ
ーション値を選択しておく。オン状態の時に、ほとんど
すべての光が偏光板11Bを透過するため白表示にな
る。
【0023】また、オフ状態の時には、液晶層14の屈
折率異方性が大きくなるため、光学補償板12を透過し
た光は、一般に楕円偏光光になる。透過した光のうち偏
光板11Bの偏光軸に平行な成分のみが偏光板11Bを
透過するため、黒(灰色)表示になる。
【0024】なお、偏光板11Aと11Bを、偏光軸同
士が相互に平行になるように配置すると、オン状態の時
に黒表示となり、オフ状態の時に白表示となる。上述の
ように、ベンド配列型液晶表示装置を使用して白黒表示
をさせるためには、スプレイ配列している液晶層をベン
ド配列状態に遷移させる必要がある。しかし、スプレイ
配列状態が弾性エネルギの小さい安定状態であるため、
スプレイ配列からベンド配列への状態遷移は起こりにく
い。ベンド配列状態への遷移を起こり易くするために
は、液晶分子のプレチルト角を大きくすることが有効で
あるが、大画面の全領域に均一なプレチルトを付与する
ことは困難である。プレチルト角の小さな領域はベンド
配列しにくいため、ベンド配列に状態遷移させたときに
スプレイ配列状態の領域がむら状に残る。
【0025】また、印加交流電圧のピーク電圧を高くす
るとベンド配列に状態遷移させ易くなるが、TFTの耐
圧等の制限により印加できる電圧の上限が制限される。
次に、スプレイ配列からベンド配列に状態遷移させるた
めの、本発明の実施例による液晶表示装置の駆動方法を
説明する。
【0026】図2に、実施例で用いた液晶表示装置の構
成を示す。一辺10cmの正方形状の基板10A及び1
0Bが順平行配置され、その対向面にそれぞれ幅180
μm、ピッチ200μmのストライプ状電極が形成され
ている。基板10Aと10Bは、ギャップ長が7μmで
あり、電極の長手方向が相互に直交するように配置され
ている。使用した液晶分子の屈折率異方性Δnは0.1
6、スプレイ弾性率k 11は10.1pN、ツイスト弾性
率k22は5.6pN、ベンド弾性率k33は19.7pN
である。
【0027】光学補償板12のリターデーション値は、
オン状態時に白表示となるように選択されている。図1
(A)は、スプレイ配列からベンド配列に状態遷移させ
るために印加する交流電圧の波形を示す。周波数33.
4Hz、ピーク電圧6V、振幅12Vの矩形波を印加す
る期間と、電圧を印加しない期間が交互に現れる。
【0028】図1(B)は、矩形波を印加する期間の長
さ(電圧印加時間)Tを10秒に固定し、矩形波を印加
しない期間の長さ(電圧無印加時間)tを変化させた場
合の、スプレイ配列からベンド配列への状態遷移の所要
時間を示す。横軸は電圧無印加時間tを単位ms(ミリ
秒)で表し、縦軸は液晶層の全領域がベンド配列状態に
遷移するまでの所要時間を単位s(秒)で表す。
【0029】電圧無印加時間tが350msのとき状態
遷移所要時間が最も短く約70秒であった。電圧無印加
時間tが250ms〜800msの範囲で、85秒以内
に全領域をベンド配列状態にすることができた。電圧無
印加時間tを200ms以下または900ms以上にす
ると、ベンド配列状態に遷移させることができなかっ
た。
【0030】このように、矩形波を印加する期間の間に
適当な長さの電圧を印加しない期間を挿入することによ
り、効果的にベンド配列状態に遷移させることができ
る。これは、矩形波を印加する期間と印加しない期間を
交互に繰り返すことにより、液晶分子にエネルギ的な揺
さぶりがかけられ、液晶層が状態遷移し易くなるためと
考えられる。電圧無印加時間tが短すぎるか長すぎる場
合には、液晶分子に加えられるエネルギ的な揺さぶりが
不十分であるため、状態遷移しにくいと考えられる。
【0031】図1(C)は、電圧無印加時間tを350
msに固定し、電圧印加時間Tを変化させた場合の状態
遷移所要時間を示す。横軸は電圧印加時間Tを単位sで
表し、縦軸は図1(B)と同様である。電圧印加時間T
が10秒のとき、状態遷移時間が最も短く約70秒であ
った。電圧印加時間Tが5秒〜30秒の範囲で、100
秒以内に全領域をベンド配列状態にすることができた。
電圧印加時間Tを3秒以下にすると、ベンド配列状態に
遷移させることができなかった。
【0032】電圧印加時間Tが短すぎると、ベンド配列
状態に遷移する前に電界が消滅してしまうために、もと
のスプレイ配列状態に戻ってしまい、状態遷移しないと
考えられる。電圧印加時間Tが十分長い場合には、電圧
無印加時間tを適当に選択することにより、ベンド配列
状態に遷移させることができると考えられる。
【0033】図1(B)及び(C)の結果から、一般的
に好適な電圧印加時間Tは電圧無印加時間tよりも長い
といえるであろう。一旦ベンド配列状態に遷移した後
は、6Vの交流電圧を印加することにより白表示、2V
の交流電圧を印加することにより黒表示を行うことがで
きる。
【0034】上記実施例では、矩形波のピーク電圧を6
Vとしたが、ピーク電圧がスプレイ配列状態とベンド配
列状態との臨界電圧よりも高ければ、同様の効果が得ら
れるであろう。また、上記実施例では、矩形波を印加す
る期間の間に矩形波を印加しない期間を挿入したが、臨
界電圧以上の矩形波を印加する期間の間に臨界電圧以下
のピーク電圧を有する矩形波を印加する期間を挿入して
もよい。
【0035】また、上記実施例では、電極間に矩形波を
印加する場合を示したが、その他の波形を有する交流電
圧を印加してもよい。例えば、正弦波、三角波、鋸波等
を印加してもよい。なお、波形が異なると臨界電圧も異
なると考えられるため、各波形に対応して好適なピーク
電圧を選択することが好ましい。また、直流電圧を印加
してもよいであろう。
【0036】また、上記実施例では、単純マトリクス方
式の電極を形成した液晶表示装置について説明したが、
TFT駆動の液晶表示装置においても同様の効果が得ら
れるであろう。また、液晶材料によって臨界電圧が異な
るため、種々の実験を繰り返し、印加交流電圧のピーク
電圧の好適値を見つけることが好ましい。
【0037】次に、ベンド配列型液晶表示装置を電子機
器に組み込んだ場合の液晶表示装置の駆動方法の一例を
説明する。電子機器の電源が投入されると、自動的に初
期設定プログラムが起動される。初期設定プログラム
は、上記実施例で示した液晶表示装置の駆動方法を実行
し、液晶層をベンド配列状態に遷移させる。ベンド配列
状態に遷移させるための上記処理は、液晶表示装置の全
領域がほぼ確実にベンド配列状態に遷移するのに十分な
時間とする。その後、電子機器に特有の処理を実行す
る。なお、ベンド配列状態に遷移させるための処理をハ
ードウェアで行ってもよい。
【0038】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
液晶層をスプレイ配列状態からベンド配列状態に効率的
に遷移させることができる。ベンド配列型液晶装置は、
視覚特性、及び応答特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による液晶表示装置の駆動方法
において印加する電圧波形を示すグラフ、ベンド配列状
態に遷移するまでの所要時間を示すグラフである。
【図2】ベンド配列型液晶表示装置の概略を示す斜視図
である。
【図3】スプレイ配列状態、電圧印加状態、及びベンド
配列状態の液晶層を、液晶分子の長軸方向に着目して示
す断面図である。
【符号の説明】
10A、10B 基板 11A、11B 偏光板 12 光学補償板 13 液晶分子 14 液晶層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 龍男 宮城県仙台市宮城野区高砂2丁目11番1 号 (56)参考文献 特開 平9−138421(JP,A) 特開 平9−185037(JP,A) 特開 平5−16430(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/13 - 1/141

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一定の間隔で対向配置された2枚の基
    板、基板間に挟持された液晶層、及び該2枚の基板の表
    面上にそれぞれ形成され該液晶層に基板法線方向の電界
    を印加するための電極を有する液晶表示装置を準備する
    工程と、 前記電極に第1の電圧のピーク電圧を有する交流電圧を
    印加する第1工程、及び前記電極への前記交流電圧の印
    加を停止し前記第1の電圧よりも小さい第2の電圧を印
    加する第2工程を交互に繰り返し実施し、前記液晶層中
    の液晶分子をベンド配列させる工程とを有する液晶表示
    装置の駆動方法。
  2. 【請求項2】 前記ベンド配列させる工程において、前
    記第2工程よりも前記第1工程を長時間実施する請求項
    1に記載の液晶表示装置の駆動方法。
  3. 【請求項3】 前記第1の電圧が、前記液晶層のスプレ
    イ配列状態とベンド配列状態との臨界電圧よりも大き
    く、 前記第2の電圧が、0Vまたは前記臨界電圧よりも小さ
    い請求項1または2に記載の液晶表示装置の駆動方法。
  4. 【請求項4】 前記ベンド配列させる工程において、前
    記第2工程を実施する1回あたりの時間が200msよ
    り長く900msより短い請求項1〜3のいずれかに記
    載の液晶表示装置の駆動方法。
  5. 【請求項5】 前記ベンド配列させる工程において、前
    記第1工程を実施する1回あたりの時間が3秒間以上で
    ある請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置の駆
    動方法。
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