JP3525345B2 - 材料成分決定システム及び接合条件決定システム - Google Patents
材料成分決定システム及び接合条件決定システムInfo
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Description
ステム及び接合条件決定システムに関するもので、特
に、溶接・接合用溶加材料の合金設計およびプロセスパ
ラメータ選定に用いる計算機援用による対話型多目的最
適化手法を含むものである。
酷となり、これに伴い耐熱性や耐食性に優れた高機能材
料が多く開発されてきている。構造材の高精度、高性能
化が進につれて、その加工技術に対しても高精度、高能
率化が要求されている。接合技術に関しても、従来の融
接に変わる高性能接合技術が求められており、これに対
応する接合技術として、液相拡散接合が注目されてい
る。
の長所をあわせもった接合法であり、通常の固相拡散接
合で採用されているほどの接合圧力を必要とせず、また
加工精度の許容度の大きいことや複雑な曲面の接合も行
うことができるという利点がある。さらに、原理的には
母材とほぼ同程度の機械的性質ならびに耐食性を有する
接合継手を得ることが可能な接合方法である。
法精度が要求されたり、融接では溶接割れが起こりやす
い材料、特にNi基超耐熱合金などに適用されたりする
例が多かった。さらに、接合部は母材と同等の機械的性
質を確保できる点、大きな接合圧力を必要としない点、
精密な表面加工を必要としない点等他の接合法にはない
長所を有するため、その適用範囲は汎用材料に拡大しつ
つある。
散接合において継手性能を左右する支配因子の1つであ
るインサート金属に関しては、市販のろう材が流用され
ているのが大部分であり、各種材料に最適なインサート
金属の開発設計手法について系統的な検討はあまり行わ
れていない。また、液相拡散接合において母材とインサ
ート金属の組合せやインサート金属の組成最適化などの
組織学的な検討は比較的多くなされているが、継手の機
械的特性に大きな影響を及ぼすと考えられる接合プロセ
スパラメータ(接合時間、接合温度)の最適化に関して
は、十分な検討が行われていないのが現状である。液相
拡散接合継手においては、要求される継手性能は多岐に
わたり、接合強さによる評価だけでは十分でなく、靭
性、耐食性なども評価対象に加える必要がある。
み、これが実用に耐えうる計算法の開発およびコンピュ
ータ能力の飛躍的な向上により、数理計算法が、問題解
決のより強力な武器となりつつある。応用の分野、適用
のしかたもそれにつれてますます多様になってきてお
り、構造物あるいは電子回路の設計などの工学的分野に
おいても導入が進んでいる。また、近年になって、ニュ
ーラルネットワーク、ファジイ理論、遺伝的アルゴリズ
ムなどの新しい理論が実用レベルに達し、様々な分野で
の通用が試みられるようになった。
接合分野においても有力な武器となり得ることから積極
的な導入が望まれる。また、コンピュータの発達によっ
て、熟練者の技能や経験を機械に置換えたり、データベ
ース化したりする試みがなされるようになってきた。す
なわち、溶接・接合分野でも、ビード形状などの比較的
単純な特性に関して、複数の影響因子をパラメータとし
た予測システムが開発されている。このような予測シス
テムの構築は自動化や省力化に大きく貢献することか
ら、その要求は高まりつつある。しかしながら、単にマ
ニュアル化や機械化を押し進めるだけでは一定の効果は
有するものの、自動化や省力化を過度に進めることで逆
に新たな要求に対応することが困難となる。したがっ
て、今後は人間と機棟が高度に融合した予測システムを
構築する事が必要とされている。
めになされたものであって、その一の目的は、様々な材
料を形成する場合に、その形成される材料に要求される
材料特性を満足する成分含有量を簡単に決定することが
できる材料成分決定システムを提供することにあり、他
の目的は、材料を接合する場合に、その接合される材料
に要求される接合特性を満足する接合条件を簡単に決定
することができる接合条件決定システムを提供すること
にある。
分決定システムは、材料の複数成分の各含有量を決定す
る材料決定システムであって、予め定めた範囲内の複数
の成分含有量と、それによって得られる複数の材料特性
との関係を実験データからニューラルネットワークを用
いて定式化する定式化手段1と、上記定式化手段1にて
求めた数式に基づいて、材料特性が上記範囲内おいて最
大又は最小となる目標理想値での成分含有量を各材料特
性ごとに遺伝的アルゴリズムを用いて探索する極値探索
手段2と、上記極値探索手段2にて求めた目標理想値に
基づいて、要求材料特性を満足する目標最適含有量の範
囲を満足化トレードオフ法を用いて決定する最適化手段
3とを備えたことを特徴としている。
は、定式化手段1にて、予め定めた範囲内の上記成分含
有量と、それによって得られる複数の材料特性との関係
が定式化され、極値探索手段2にて、目標理想値での成
分含有量が探索され、最適化手段3にて、意思決定者の
要求する最適解を得ることができる。すなわち、材料成
分決定の最適化に必要な実験に要する労力と時間を軽減
することができる。また、定式化に、ニューラルネット
ワークを用いているので、成分含有量と、それによって
得られる複数の材料特性との関係式を精度よく求めるこ
とができる。さらに、探索に、遺伝的アルゴリズムを用
いているので、目標理想値を精度よく求めることがで
き、特に、定式化手段1による定式化に、ニューラルネ
ットワークを用いているので、より精度よく最適化を図
ることができる。しかも記最適化手段3の範囲決定に、
満足化トレードオフ法を用いているので、他の方法、例
えばゴールプログラミング法では困難であった目的間の
バランスを考慮した解を容易に求めることができる。
の接合条件を決定する接合条件決定システムであって、
予め定めた範囲内の複数の接合条件と、それによって得
られる複数の接合特性との関係を実験データからニュー
ラルネットワークを用いて定式化する定式化手段11
と、上記定式化手段11にて求めた数式に基づいて、接
合特性が上記範囲内において最大又は最小となる目標理
想値での接合条件を各接合特性ごとに遺伝的アルゴリズ
ムを用いて探索する極値探索手段12と、上記極値探索
手段にて求めた目標理想値に基づいて、要求接合特性を
満足する目標最適条件の範囲を満足化トレードオフ法を
用いて決定する最適化手段13とを備えたことを特徴と
している。
は、定式化手段11にて、予め定めた範囲内の上記接合
条件と、それによって得られる複数の接合特性との関係
が定式化され、極値探索手段12にて、目標理想値での
接合条件が探索され、最適化手段3にて、意思決定者の
要求する最適解を得ることができる。すなわち、接合条
件決定の最適化に必要な実験に要する労力と時間を軽減
することができる。また、定式化に、ニューラルネット
ワークを用いているので、接合条件と、それによって得
られる複数の接合特性との関係式を精度よく求めること
ができる。さらに、探索に、遺伝的アルゴリズムを用い
ているので、目標理想値を精度よく求めることができ、
特に、定式化手段11による定式化に、ニューラルネッ
トワークを用いているので、より精度よく最適化を図る
ことができる。しかも記最適化手段13の範囲決定に、
満足化トレードオフ法を用いているので、他の方法、例
えばゴールプログラミング法では困難であった目的間の
バランスを考慮した解を容易に求めることができる。
が、上記請求項1の材料決定システムにて決定した材料
であることを特徴としている。
は、材料の材料成分決定及び接合条件決定の最適化を確
実に達成することができる。
及び接合条件決定システムの具体的な実施の形態につい
て、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は材料成分
決定システムの簡略ブロック図を示し、この材料成分決
定システムは、材料の複数成分の各含有量を決定するも
のであって、予め定めた範囲内の複数の成分含有量と、
それによって得られる複数の材料特性との関係を実験デ
ータから定式化する定式化手段1と、上記定式化手段に
て求めた数式に基づいて、材料特性が上記範囲内おいて
最大又は最小となる目標理想値での成分含有量を各材料
特性ごとに探索する極値探索手段2と、上記極値探索手
段にて求めた目標理想値に基づいて、要求材料特性を満
足する目標最適含有量の範囲を決定する最適化手段3と
を備える。ここで、材料とは、例えば、液相拡散接合に
使用するインサート金属合金である。
最適化(形成されるインサート金属の材料特性が要求す
る特性に最も合致する成分量とすること)に関して、数
理計画を用いた最適化を行うためには、目的関数となる
評価要素をまず制御変数の関数として定式化する必要が
ある。そこで、定式化手段1として、この発明では、ニ
ューラルネットワークを用いる。
細胞(ニューロン)や脳をモデルにしたシステムであ
る。ニューラルネットワークは、与えられた情報(教師
データ)から学習を行い、未知の情報に対して適切な出
力を出すことができる。この能力は汎化能力と呼ばれ
る。この発明では、ニューラルネットワークの1つであ
る放射状基底関数ネットワーク(RBFネットワーク)
と呼ばれる手法を採用した。
n)とは、中心点から距離が離れるにつれて、値が単調
に減少(または増加)し、その等高線が超球(2次元の
場合、円または楕円)になる関数のことをいい、代表的
なものにガウス関数がある。Rn上でのガウス関数は、
x∈Rnに対し次の数1で表され、鐘状の形をしてい
る。
り、r∈Rnは等高線の半径を制御するパラメータであ
り、rが大きくなると裾の部分が広くなる。また、分子
では通常xとcとの間のユークリッド距離がとられる。
RBFネットワークは、後述する中間層素子の出力関数
としてこのRadial Basis Functionを用いるため、こ
のように呼ばれている。
デルとした階層構造を有したニューラルネットワーク
で、図2の示しように、入力層(素子数n個)、中間層
(素子数m個)、及び出力層(素子数l個)の3層構造
からなる。各層は、入出力の制御を行う素子から構成さ
れており、荷重係数Wiと呼ばれる重み付きの結線によ
って、入力―中間層間、中間―出力層が結ばれている。
RBFネットワークにおけるデータの流れは入力層から
出力層への一方通行であり、同じ層の素子同士は、結合
していない。中間層素子の出力h(x)には、先に述べ
たガウス関数が用いられ、次の数2で表される。
間層素子の出力との結合係数(重み)との積の総和であ
り、次の数3で表される。
ーラルネットワークの出力が最適な値になるように適切
な重みの値を求めることを学習という。中間素子からの
出力は、入力データと出力データによって決まるので、
出力層での最適な出力を得るためには、最適な重みを決
定しなければならない。学習を繰返すことによって、R
BFネットワークは新たな入力情報に対して予測される
出力情報をより正確に出力するようになる。
習入力データxiと対になる教師データをyi(i=
1,・・・,p)、中間素子数をm個とするとき、ネッ
トワークの出力値と教師データとの2乗誤差を考える。
すなわち、ネットワークと教師値の誤差を表している数
4の式が最小になればよい。
を押えるためと次の数5に示す線形(正常)方程式の正
則性を保つように、重みに対する抑制項を加えた式が最
小になるような数6を求めることがRBFネットワーク
における学習となる。
(j=1,・・・,m)について偏微分する。これによ
り、次の数7の式が得られる。さらに、数8をこの数7
の式に代入する。この場合、数9とすると、次の数10
の式が求まる。
り、また、すべてのj(=1,・・・,m)をまとめて
行列に表すと、次の数12の式となる。この場合、Hは
中間層出力行列と呼び、次の数13で表せる。
Wとhの積の総和であるから、次の数14の式が成り立
つとすれば、次の数15の式となり、これから図16の
式となる。
式となり、求める解は次の数18となる。すなわち、R
BFネットワークにおける学習は逆行列(数19)を求
めることと同等であるといえる。
線形連立方程式を解くこと(行列計算)により、簡単に
学習が行えることである。このため、繰返して計算する
ことにより学習する他のニューラルネットワークに比べ
て、計算時間の短縮を図れ、また、逆行列上記数19を
更新することにより、ネットワークを作り替えることな
く、簡単に追加学習や忘却などの作業も行うことができ
る。
基底関数の数と中心点(c)は人間が経験的に決定する
ため、設定によって汎化能力が大きく変わることがあ
る。そこで、この発明では、学習に使う全ての入力デー
タ数の基底関数を用意し、各データの位置を1つの基底
関数の中心とした。また、入力パラメータであるλとr
についても、汎化能力に影響を及ぼすため慎重な設定が
必要となる。
定するパラメータである。基底関数の凹凸は、rの値が
小さければ急な勾配になり、逆にrの値が大きければ穏
やかな勾配になる。すなわち、rが小さすぎると学習デ
ータの近傍に対しては精度がよいが、少し離れたところ
では精度が悪くなり、rが大きすぎれば互いの基底関数
が干渉しすぎて学習が十分にできなくなる。このため、
いずれの場合も(小さすぎても大きすぎても)、汎化能
力を引き起こすことになる。
大きくなりすぎることを抑える働きをするパラメータで
ある。各重みの値が大きくなりすぎると、入力に対し敏
感に数値が働くため、汎化能力が低下する。λ=0では
教師データとの2乗誤差の項のみを考慮することである
から、教師データに対しては完全な学習ができるが、各
重みの係数が大きすぎるために汎化能力が低下する。逆
にλを大きくしすぎた場合には2乗誤差の項の効果が相
対的に小さくなり、学習が十分にできないために汎化能
力が低下する。
は、rとλの値を適切に設定する必要がある。そこで、
この発明にRBFネットワークを適用するにあたり、r
とλの設定を含めた計算方法について検討を行った。
が必要不可欠である。rの値は少なくとも基底関数を覆
う必要があり、かつ必要以上に覆ってはいけない。rに
関しては次の数20のような目安式が与えられている。
この数20は、データ間の密度を考慮した式である。
めに加える抑制項の係数である。この発明では、例え
ば、インサート金属の合金設計する場合においては、λ
の値を決定するために過去にインサート金属の合金設計
に用いられた評価要素の実測データをもとに、これらを
満足に学習できる環境が達成できるλ値を選定し、この
発明を通して同じ値を用いることにした。なお、Ni基
超耐熱合金に対するインサート金属の合金設計を行う場
合、r値は固定(r= 5)した状態でλ値のみを変化さ
せて、RBFネットワークで学習した結果、λの値が10
-6の時が最も精度よく学習できていることから、この発
明ではλ値として10-6を用いることにした。
トワークを適用する際に、評価要素によってその絶対値
に大きな差がある。いずれの評価要素に対しても精度の
よい学習を行うためには、個別にrやλを設定する以外
に、入力する学習データにも工夫が必要である。予備的
検討において、評価要素の絶対値をそのまま入力値とし
て学習しても十分な結果は得られなかったため、以下の
ようなデータ変換を行い入力データとすることにした。
1、最小のものを0として全ての実測データを0〜1ま
での値に規準化した。RBFネットワークによる学習の
結果得られた関数をg(x)とすると、本来の値に再変
換した関数 f(x) は数21の式で与えられる。
考えると、初期の学習データとして用いる実測データ
は、探索領域内において等間隔の格子状にとる方が予測
精度が向上すると考えられる。そこで、初期の実測デー
タは格子点上にとることとした。
て、各評価要素には目標とすべき理想値を設定しなけれ
ばならない。理想値とは探索領域内における各評価要素
の最大(最大値)または最小(最小値)を意味する。上
記定式化手段1では、RBFネットワークにより評価要
素を定式化することは可能であるが、その最適値を直接
算出することはできない。そこで、定式化された目的関
数の最適化を行うモジュール(極値探索手段2)が必要
となる。極値探索手段2(極値探索モジュール)では、
最近注目を浴びている最適化手法の1つである遺伝的ア
ルゴリズム(Genetic Algorithm)を用いて、各目的関
数の最適値を求めることとした。
近似解を逐次修正するのに対し、網をかぶせるようにい
くつもの点を同時に動かし次第に最適解に絞り込む方法
として近年、遺伝的アルゴリズムが注目を集めている。
元来、遺伝的アルゴリズムはその名のとおり生物の進化
過程にヒントを得たもので、解の探索を進化の過程と捉
え、いくつかの遺伝的オペレータと呼ばれる操作を行い
最適解を見いだそうとするものである。目的とする関数
の微分情報が一切必要でないため、様々な系に応用が可
能である。遺伝的アルゴリズムの手順としては次のステ
ップ1(初期化)、ステップ2(交叉)、ステップ3
(評価)、及びステップ4(淘汰)がある。
0としてn個の親をランダムに探索領域内に発生さ
せ、図3(a)に示すように、初期個体群を設定する。
ステップ2(交叉)では、図3(b)に示すように、発
生した個体集合p(t)内で「つがい」をランダムにn
組発生させる(ペアリング)。そして、図3(c)に示
すように、つがい間で交叉を行い新しい個体(子)を生
成する。つまり現時点での個体で増殖が行われる。この
結果、この個体集団には親子ともども2n個の個体がで
きることになる。ステップ3(評価)では、図3(d)
に示すように、個体集合p(t)内の全ての各個体に対
し、適応度を計算する。ステップ4(淘汰)では、得ら
れた適応度によって個体集合に残すものとふるい落とす
ものにわける。すなわち、図3(e)に示すように、適
応度に応じて個体群の中で淘汰を行う。適応度の低いい
くつかの個体は死滅し、残りの評価値の高い個体が次世
代へ生き残る。そして、図3(f)に示すように、n個
の個体を残し、これを親としてt= t + 1としてステッ
プ2に戻る。
は上記の手続きを適当な条件(停止するための条件)が
成り立つまで繰返す。通常は世代数がある値になると停
止する。また上記手続きだけでは比較的早い時期に集団
内の個体が局所的極値に収束し、動かなくなることがあ
る。このようなことを避けるためにステップ2におい
て、2n個の個体に対し突然変異という遺伝的操作を行
うことがある。
であるが、次にこの発明で用いた遺伝的アルゴリズムに
ついて説明する。
0に設定した)の親を探索領域内に発生させる。このう
ち(n−9)個は乱数を用いランダムに発生させる。ま
た、探索領域の境界線上の点が最適解となる場合も多く
考えられることから、あらかじめn個のうち残りの9個
は図4に示すように、探索領域の角の8点と中央の1点
をとるようにした。
重要な役割を果たすものである。交叉とは、選ばれた2
つの個体(親)から新しい個体(子)を生成することで
ある。操作方法は、まず個体群からランダムに親のペア
を選び、コード化/交叉を行う。遺伝的アルゴリズムの
コード化/交叉は、バイナリーコーティングあるいはグ
レイコーティングによってコード化し、文字列上で交叉
するという方法が一般的に用いられているが、この発明
では実数ベクトルをコード化して用いるBLX-αを用
いた。BLX-αは、両親を囲む各辺が、軸に平行な超
直方体の内部において、一様分布に従ってランダムに2
つの子を生成する方法である。BLX-αは、親の付近
にランダムに子を生成することから、親の座標位置を適
切に遺伝することができるという特徴を持つ。BLX-
αの概念を2変数の場合を例に図5に示す。この場合、
親が表現型の空間で離れている時は子を表現型の広い範
囲に生成し、近いときは親の周辺の狭い範囲に生成する
ことになる(この発明では影響範囲αの値を0.50に
設定した)。この操作の結果、個体集団には親子併せて
3n個の個体が存在することになる。この発明で用いた
交叉方法BLX-αでは、特に突然変異を起こす必要が
ないのでこの遺伝的操作は省略した。
き残り、適応能力の低い生物は死滅する。生き残った生
物はさらに適応能力の高い子孫を生み出す。これが自然
淘汰の考えである。遺伝的アルゴリズムにおける淘汰の
操作方法は、適応度によって個体をソーティングし、適
応度の高い個体を決められた数だけ次世代の親候補とし
て残し、それ以外は死滅させる。この操作が最適化に用
いられるのは、最適解の近くには、よりよい解が存在し
ているということを想定しているからである。この発明
では、3n個の個体集団の内、適応度が良いものから順
にn個を残すエリート戦略を用いた。あらかじめ設定し
ておいた最大世代数(この発明では100に設定)に達
していなければ、これを次の世代の個体集団として交叉
操作に戻る。最大世代数に達した時、最も適応度の高い
個体を最適解とし、操作を終了させた。
ず、実験による実測データをもとにニューラルネットワ
ークを用いて評価要素を定式化(予測)し、遺伝的アル
ゴリズムによって理想値を求める作業を行う。これは複
数の評価要素を同時に考慮した最適解を得るために、個
々の評価要素に関して必要な情報を得るためである。最
適解はこれらの情報をもとにして計算を行うため、ここ
までの情報が正確な現象を表していなければ、得られる
最適解は信頼度の低いものとなる。つまり、最適解の信
頼度は予測を行う過程であるニューラルネットワークの
学習状況に依存する。ニューラルネットの学習能力を向
上させるためには、実測データ(教師データ)の量を増
加させればよいが、測定実験に必要な時間と労力を考え
ると実験量の増加には限界がある。そこで、必要最低限
の実験量で効率よい学習を行うために、実験条件を厳密
に選定する実験指定手段4(図1参照)を構築した。実
験指定モジュール(実験指定手段4)は、実験点の追加
を効率よく行うことを目的とし、RBFネットワークと
遺伝的アルゴリズムを組合せて用いることで、現在の学
習状況を常に把握し、実験点を提示する機能を有する。
は、評価要素があらかじめ変数のような関数として表す
ことができず、実験によって初めて評価要素の値が求ま
る。このような目的関数を未知目的関数と呼ぶ。未知目
的関数の最適化に対してRBFネットワークと遺伝的ア
ルゴリズムを用いて、目的関数の評価回数を減らすとい
う試みがなされている。そこでこの発明では、このRB
Fネットワークと遺伝的アルゴリズムを組み合わせた手
法を用いて、定式化が実験に頼らざるを得ない目的関数
を効率よく最適化することを目指した。すなわち、この
実験指定手段4の手法は、ステップ1(学習)、ステッ
プ2(最適化)、ステップ3(収束判定)、及びステッ
プ4(追加点提示)等がある。
データからRBFネットワークにより関数の形を学習す
る。ステップ2(最適化)では、学習によって得られた
関数に対して遺伝的アルゴリズムで理想値を求める。ス
テップ3(収束判定)では、現在の理想点付近(距離が
dnear以下の範囲)で、過去に連続して理想点と予測さ
れた回数Cnearを求める。あらかじめ設定しておいた回
数Cendと一致すれば終了し、一致しなければ次のステ
ップ4(追加点提示)に進む。
加実験点を選び出す。1つ目の実験点を、遺伝的アルゴ
リズムにて予測された理想点付近の点とする。次に、2
つ目の実験点を、予測された理想点から離れ、かつ学習
密度の低い点とする。1つ目の実験点は現在の理想点付
近のより詳しい情報を得ることを目的とし、2つ目の実
験点は未知の領域を学習することを目的としている。そ
の後は、ステップ5(ループ操作)としてステップ1に
戻る。
て以下詳細に述べる。まず、変数が2変数の場合は探索
領域を3×3の格子に区切り、図6(a)に示すように
格子点上の点9点を初期実験点とし、また変数が3変数
の場合には図6(b)に示すような10点を初期実験点
とする。そして、現時点での予測によって得られた理想
値付近(距離がdnear以下の範囲)で、現在までに連続
して理想値をとっている回数Cnearを調べる。次に、回
数に応じて、追加実験点の発生範囲(矩形の1辺の長さ
l'sq)を計算すると、数22となる。
1つ目の追加実験点とする(図7(a)の内側の矩
形)。なお、このとき既に学習した点との距離は考慮し
ない。図7(b)(c)(d)に示すように、2つ目の
追加実験点は、1つ目の追加実験点の発生範囲(矩形)
外で、既に存在する実験点の分布密度が低い点を選ぶ。
また、 実験点の分布密度は次の方法で求めることにし
た。まず、2つ目の追加実験点の発生範囲内(矩形の外
側)にランダムに多数の点を発生させる(図7(c)の
☆印)。ランダムに発生されたそれぞれの点と、既に実
験した全ての点(図7の●印)とのそれぞれ距離を調
べ、距離の小さい方からk個の距離を足し合わせる(図
7(c))。この距離が一番大きいものを、密度の一番低
い点とする(図7(d)の★印 )。この手法により、少な
い実験点で効率よく探索領域の十分な予測が可能であ
り、終了条件を満たした実験点数で現象がほぼ正確に表
されているものと判断できる。
うためには、複数の評価要素(例えば、インサート金属
の融点、CIW、硬さ等)を同時に評価しなければなら
ない。しかしながら、性質の異なる複数の評価要素を全
て同時に最適化した解を得ることは一般に不可能であ
る。これは各評価要素の理想値が全く同じ条件のもとで
得られるわけではないからである。そこで、各評価要素
に対して理想値のみで評価するのではなく、目標領域と
いう概念をもって最適解を求める必要がある。
ば、ゴールプログラミング法と満足化トレードオフ法等
がある。ゴールプログラミング法は、理想値のみを目指
して最適化する方法である。しかしながら、ゴールプロ
グラミング法では目的間の重み付けが困難であることか
ら、得られる解に満足できないことがしばしば生じる。
これに対して、満足化トレードオフ法は、バランスのと
れた解を得るために意思決定者はその希求水準(要求水
準)を変えて試してみることが多いという認識に立ち、
意思決定者の要求する解がいかにすればすばやく得られ
るかについて考慮しながら、その希求水準を修正しつ
つ、最適解を求めていく方法である。そこで、この発明
では、より満足できる解を得るために、満足化トレード
オフ法を適用することとした。満足化トレードオフ法の
手順としては、ステップ0(理想点の設定)、ステップ
1(希求水準の設定)、ステップ2(補助的Min−M
ax問題を解く)、ステップ3(トレードオフ分析)が
ある。
関数をそれぞれ単独で最小化(あるいは最大化)して希
求水準の下限(上限)とする(理想点の設定)。この値
を数23とする。ステップ1(希求水準の設定)では、
各目的に対する希求水準(数24)を意思決定者に尋ね
る。ここで希求水準とは、満たすべき目標値であり、最
初はk=1とする。
解く)では、設定した希求水準に対して以下の数25、
数26の補助的スカラー化関数を最小化する。この解を
xkとする。
では、f(xk)を意思決定者に見せて、この解に満足でき
るかどうか尋ねる。満足した場合にはこの解を最適解と
し終了する。もし、この解における目的関数の値に満足
できず、この値から動いた状態の方が望ましいのであれ
ば、改善したい評価要素とその新たな希求水準を入力す
る。ただし、現在得られているPareto値のままでよいと
いう目的関数については新たな希求水準は現在のPareto
値とする。このとき、現在得られている解はすでにPare
to解であるから、すべての目的を改善することはできな
い。どれかの目的を改善したいのであれば、他のどれか
は犠牲にせざるを得ない。新たな希求水準の設定が終わ
れば、k = k+1としてステップ2に戻る。
ている。満足化トレードオフ法は希求水準をもとに解を
求めるため、最適解を効率良く求めることが可能であ
る。さらに、満足化トレードオフ法は、希求水準を満た
す解が存在する場合には、その条件中で最も良くなる方
向に解(Pareto解)を探索し、また解が存在しない場合
には希求水準にできるだけ近い解を導き出す努力を行う
ため、意志決定者の意図する解が数回の探索で得られる
特徴を有する。
法の計算方法を以下に示す。まず、ステップ0における
理想値の設定には、定式化モジュール(定式化手段1)
と極値探索モジュール(極値探索手段2)によって求め
られた理想値を用いた。次に、ステップ2における補助
的スカラー化関数の最小化問題を解くために、遺伝的ア
ルゴリズムを適用した。ここでの適応度には、次の数2
7を用い、適応度の小さいものから順に次の世代に残す
ことにした。
は極値探索モジュール(極値探索手段2)で用いたもの
と同じである。補助的スカラー化関数の最小化問題の解
法を図解したものを図9に示す。これより数26を解く
ことができ、最適解を得ることができる。
する場合に、参考となるのは、組成が類似した材料に関
する過去の事例である。例えば、液相拡散接合におい
て、母材とインサート金属の組合せは、接合継手特性に
大きな影響を及ぼすことから、液相拡散接合プロセスに
おいて非常に重要な位置を占める。そこで、過去の接合
事例を母材鋼種とインサート金属の合金系で整理し、デ
ータベース化しておけば、母材に適したインサート金属
の合金系の選定や適正接合条件範囲の選定に大きく役立
つと考えられる。そこで、過去の接合事例から母材鋼
種、使用されたインサート金属の合金系、接合条件、継
手特性、その他注目点などを情報化し、データベース化
したデータベースモジュールを構築した。この発明で用
いた段階では、蓄積した実例数が十分なものとは言えな
いが、このモジュールが充実すれば大きな成果をあげる
ものと考えられる。
ば、インサート金属の合金組成の最適化を行うことを目
的とし、以下のような手順にて、最適化を行うことにな
る。まず評価要素の測定に関する実験データをメイン画
面(このシステムを制御するコンピュータのモニタ画
面)に表示し、計算条件を設定する。条件をもとに収束
判定を行い、評価要素を定式化し、その理想値ならびに
理想値を与える組成を求めて提示する。上記メイン画面
に表示される収束判定を利用者が見て満足できない場合
には、追加実験点を提示してもらうことができる。結果
が満足できる場合には、カンターマップの作成を促し、
マップファイル(Mathematical書類)を作成して、視覚
的に特性値の概略を理解する。結果に満足できない場合
は指定された追加実験を行い、上記計算条件の設定に戻
る。また、この場合、メイン画面を多目的最適化画面と
することができ、全ての評価要素に対して同様の手順を
行った後、この多目的最適化画面に移動させ、希求水準
の設定を行い各評価要素を合理的に満足する最適解を求
める。利用者が満足のできる解が得られるまで希求水準
を変化させ、探索を繰り返す。利用者は得られた最適組
成のインサート金属を実際に作成し、検証実験を行う。
求水準の設定のみによって様々な特徴を有する最適な材
料を設計することが可能である。すなわち、液相拡散接
合に関して、各母材に対して良好な接合性能を持つ最適
なインサート金属の合金系を厳密に選定し、添加元素の
最適化を行うことができる。このため、材料成分決定の
最適化に必要な実験に要する労力と時間を軽減すること
ができる。
接合において、接合後の継手性能を支配する因子として
接合条件などのプロセスパラメータの制御が挙げられ
る。そのため、信頼性を有する継手を得るためにはプロ
セスパラメータの最適化が必要不可欠である。プロセス
パラメータの最適化とは、評価要素として接合強さや耐
食性を設定し、その理想値が得られる接合条件(接合時
間、接合温度、加圧力など)を求めることを意味する。
プロセスパラメータの最適化においても、評価対象とす
べき要素は単一項目ではなく複数項目を考慮すべきであ
り、多目的最適化が必要である。この最適化の手順は、
インサート金属組成の最適化の場合と同様であり、同じ
ツールを用いることができる。
接合する場合の接合条件も、図10に示すように、定式
化手段11と、極値探索手段12と、最適化手段13と
を備えた接合条件決定システムにて決定することができ
る。この定式化手段11は上記定式化手段1と同様のニ
ューラルネットワークを使用し、極値探索手段12は上
記極値探索2と同様の遺伝的カテゴリズムを使用し、最
適化手段13は上記最適化手段3と同様の満足化トレー
ドオフ法を使用する。
定式化モジュール(定式化手段11)による評価要素
(例えば、引張強さ、衝撃吸収エネルギー等)の定式化
を行い、次に、極値探索モジュール(極値探索手段1
2)による各評価要素の理想値の探索を行い、その後、
引張強さおよび衝撃吸収エネルギー等の評価要素のバラ
ンスを考慮して、最適化手段13の満足化トレードオフ
法による多目的最適化を図る。これによって、接合条件
(例えば、接合時間等)の最適解を得ることができる。
また、この接合条件決定システムにおいても、実験指定
手段14を設けるのが好ましい。この実験指定手段14
を設ければ、実験点の追加を効率よく行うことができ、
RBFネットワークと遺伝的アルゴリズムを組合せて、
現在の学習状況を把握し、実験点を提示する。
実験データをメイン画面(このシステムを制御するコン
ピュータのモニタ画面)に表示し、計算条件を設定す
る。このデータをもとに収束判定を行い、評価要素を定
式化し、その理想値ならびにその時の組成を求めて提示
する。上記メイン画面に表示される収束判定を利用者が
見て満足できない場合には、追加実験点をシステムから
提示してもらう。結果が満足できる場合には、カンター
マップの作成を促し、マップファイル(Mathematical書
類)を作成して、視覚的に接合性を理解する。結果に満
足できない場合は追加実験を行い、上記計算条件の設定
に戻る。また、この場合、メイン画面を多目的最適化画
面とすることができ、全ての評価要素に対して同様の手
順を行った後、この多目的最適化画面に移動させ、希求
水準の設定を行い各評価要素を合理的に満足する最適条
件を求める。すなわち、利用者が満足できる解が得られ
るまで希求水準を変化させ、探索を繰り返す。これによ
り、利用者は、実際に得られた最適接合条件で接合を行
うことができる。このように、利用者は、カンターマッ
プと計算結果をもとに安全裕度を視覚的かつ定量的に判
断することができる。
用いることで、実用性を考慮した適正接合条件範囲を決
定することが可能である。このため、材料接合条件の最
適化に必要な実験に要する労力と時間を軽減することが
できる。
条件決定システムとを使用すれば、利用者が要求する最
適の材料特性(例えば、融点等)となる含有量を決定す
ることができ、さらには、利用者が要求する最適の接合
特性(例えば、引張強等)となる接合条件(接合時間、
接合温度、加圧力等)を決定することができる。なお、
この場合、探索に用いた母材、インサート金属、接合条
件などに関する情報をデータベースモジュールに蓄積す
るのが好ましい。
合用インサート金属の合金、つまり炭素鋼の液相拡散接
合に用いるインサート金属を設計した。この場合、接合
母材に炭素鋼S45Cを用いた。炭素鋼の液相拡散接合
に用いるインサート金属を開発するにあたり、このイン
サート金属が具備すべき条件としては、母材より融点が
低い点、有害な金属間化合物を形成しない点。比較的短
時間に等温凝縮する点、接合後に母材と同レベルの強度
を有する点等が挙げられる。なお、母材の炭素鋼S45
Cの化学組成を表1に示す。
系を決定するにあたり、過去の接合事例をデータベース
化する必要があり、そこで、Fe基台金の液相拡散接合
に用いたことのあるインサート金属の例(表2に示す
例)を、図1の定式化手段1に実測データを入力する。
点降下元素としてB、Si、P、C等、さらには耐熱強
さなど要求性能を得るためにCrやCo等が添加され
る。しかしながら、この実施例では、Pは拡散が遅く生
成相を形成しやすいため好ましくなく、Pを除外した。
また、母材が炭素鋼であり、比較的多量のC(0.45
重量%)を含むため、耐食性、靭性を考慮してCも除外
した。さらに、B、Si等の融点降下元素は単独で添加
するよりも複合添加するほうが良好な接合部が得られ
る。そのため、インサート金属の合金系としてNi基台
金を選定し、融点降下元素としてB、Siを添加するこ
ととした。また、接合部の耐熱・耐食性の向上を意図し
てCrを添加した。なお、いずれの元素も多量の添加は
生成相を形成させることから望ましくなく、そこで、生
成相の形成を考慮し、それぞれの元素添加量の上限を6
重量%とした。これらのことにより、この実施例では、
純度98%以上のNi、Cr、Siの純金属、Ni−B
合金(B:17.7重量%)をインサート金属作成用溶
解材料として用いた。
って、制御できる要素を変数としたインサート金属の接
合性能を評価する関数を設定する必要がある。すなわ
ち、評価要素は何を最適化したいかを決定するものであ
り、対象とする母材や使用環境にあわせて選定する必要
がある。過去のインサート金属の事例を参照すると、評
価要素(材料特性)として、インサート金属の融点、脆
性生成物性能(CIW)、インサート金属の硬さ、接合
部の硬さ、接合部における欠陥率等が設定されている。
ると、評価すべき目的が多すぎて評価要素間のバランス
を考えた多目的最適化が困難になると共に、実験量が過
多になる問題点がある。そこで、評価要素として、イン
サート金属の融点、接合部の硬さ、脆性生成物性能(C
IW)の3要素を選定することとした。インサート金属
の融点は接合温度を決定する要素であり、接合温度によ
る母材劣化対策を考慮した。また、硬さ、CIWは接合
継手の機械的特性に密着した要素であり、特に、CIW
は接合部に存在する生成の形成抑制を意図している。
データを得るために、次の表3に示す合金を作成し、そ
れぞれの合金についてインサート金属の融点、CIW、
接合部硬さを測定した。この場合、所定の組成になるよ
うに各溶解材料を電子天秤で秤量した後、アセトン脱脂
し、Ar雰囲気中でアーク溶解を行いボタン状の合金に
溶製した。CIW測定試験(脆性生成物形成能試験)に
対しては、機械研磨によりくさび形に加工したものをイ
ンサート金属として用いた。なお、CIW測定試験と
は、図16に示した生成相の生成しない接合幅(Critic
al interlayer width: CIW)を測定し、評価する試
験である。
10×4mm、CIW測定用試料では7mm×7mm×
7mm、引張試験片作製用試料(後述する引張試験に使
用する試料)はφ10×40mm、衝撃試験片作製用試
料(後述する衝撃試験に使用する試料)は10mm×1
0mm×40mmとした。母材の接合面を湿式研磨によ
り#1500のエメリー紙まで研磨し、インサート金属
とともにアセトン中で超音波洗浄を施した。接合にあた
って、組織観察用試験片は図11に示すように配置した
試験片を用い、CIW測定用試験片は図12に示すよう
にくさび形インサート金属およびφ0.8mmのWワイ
ヤを挿入した試験片を用いた。また引張試験片および衝
撃試験片は図13に示すように配置した試験片を用い、
接合面にバインダーを塗布し、一定量の粉末状インサー
ト金属(0.10g)を供給した。これら試験片を真空
接合装置に装着した後、温度計測のため接合近傍にφ
0.3mmのCA熱電対をパーカッション溶接した。そ
の後13.3MPaの真空中で高周波誘導加熱装置によ
り、組織観察用試験片ならびにCIW測定試験片に関し
ては図14に示す接合熱サイクルを与え接合した。また
引張試験片および衝撃試験片の接合にはバインダーの除
去のため、図15に示す接合熱サイクルを与えた。接合
条件については、接合温度は1373K〜1473K、
保持時間は600S〜7200Sとした。
料を形成し、この試料をCA熱電対上に置き、これをA
r雰囲気中にて高温波誘導加熱し、そして、試料が溶融
し液相状態になって熱電対上に流れ落ちた後、冷却過程
において熱分析をおこなった。組織観察用の試料(試験
片)は、接合面に垂直に切断した後、接合面をバフ研磨
まで仕上げアセトン脱脂した。その後、5%ナイタール
腐食液で5sの化学腐食を行い、組織を現出させた。接
合部のミクロ観察は、走査型電子顕微鏡(Scanning Ele
ctron Microscope:SEM)を用いて行った。接合部の
脆性生成相の生成挙動を定量的に取り扱う方法として、
接合層の形状をくさび形にすることにより、接合層幅を
連続的に変化させ、図16に示した生成相の生成しない
接合幅(Critical interlayer width : CIW)を測
定し、評価する手法を用いた。また、接合後の接合部お
よび接合部近傍の硬さを調査するために、マイクロビッ
カース硬さ試験機を用いて接合部の硬さを調査した。試
料は接合面に対して垂直に切断したCIW測定用試料ま
たは組織観察試料を用いた。接合部において5点の硬さ
測定を行い、その平均値を接合部の硬さとした。この際
の荷重は0.049Nである。
分布状況を示す。図17に示すように、実測データ点は
探索領域内に広く均等に分布するように選択した。この
測定結果を学習データとし、定式化モジュール(定式化
手段1)を用いて、各評価要素の定式化を行った。その
結果を視覚的に理解するために、融点、CIW、硬さの
それぞれの評価要素について、等Cr添加量断面のカン
ターマップを描き、整理したものを図18〜図20に示
す。RBFネットワークによる学習の結果、融点はB、
Siの添加量の増加に伴い単調に降下する。また、融点
の関数は、組成に対してなだらかで比較的単調な形状に
なっている。CIWは探索領域内に峰をもつ関数になっ
ているが、その形状は比較的単純であり、特性の変化は
単純である。これに対して、硬さは他の評価要素に比べ
て比較的複雑な形状の関数となっており、組成に対して
その変化が複雑であることが示唆される。
には、定式化された目的関数が現象を正確に表現してい
なければならない。そこで、RBFネットワークによっ
て定式化された各目的関数が、14点の学習データで十
分に学習されているかどうかを評価するために、実験指
定モジュール(実験指定手段4)を用いて目的関数の収
束判定を行った。学習データ点数を7点から14点まで
増加させた場合の各評価要素の理想値とそれを与える組
成の変化を図21〜図23に示す。各評価要素ともデー
タ点が12点までは、理想値の値が変動し、それに合わ
せて理想値を与える組成も変動しているが、13点以上
になると、理想値およびそれを与える組成はほとんど動
かなくなり収束している傾向がみられる。したがって、
14点における学習で各評価要素をほぼ正確に表現でき
ていると判断し、データ点数14点をもって、インサー
ト金属の最適組成の探索を行うこととした。
評価要素に対して、極値探索モジュール(極値探索手段
2)を用いて目標とする理想値を求めた。理想値近傍の
情報も同時に得るために、理想値を含むCr添加量断面
で描いた各評価要素のカンターマップを図24〜図26
に示す。
6.0%、Si=6.0%、Cr=6.0%であり、その
時の予測される融点の理想値は1217Kと求まった。
融点はB、Siの添加量の増加にともない単調に減少し
ており、その変化は比較的緩慢である。また、CIWの
理想値を与える添加元素量は、B=4.6%、Si=
2.0%、Cr=3.2%であり、その時の予測される
CIWの理想値は295.5μmとなった。カンターマ
ップより、CIWは添加元素量によって大幅に変動する
ことがわかる。例えば、理想値が得られるCr=3.2
%においても、B量が2.0%付近ではCIWの値は1
00μm以下になることがわかる。
加元素量は、B=6.0%、Si=3.6%、Cr=
3.0%であり、その時の予測される硬さの値はビッカ
ース硬さでHV208.9となった。硬さは、融点やC
IWに比べて複雑な関数形状をしており、添加元素量に
よってその変化が大きいことがわかる。
定式化モジュール(定式化手段1)によって各評価要素
は定式化され、遺伝的アルゴリズムを用いた極値探索モ
ジュール(極値探索手段2)により、その理想値が求め
られた。しかしながら、性質の異なる複数の評価要素を
全て同時に最適化したインサート金属組成を得ることは
一般に不可能である。そこで、各評価要素に対して理想
値のみで評価するのではなく、目標領域(希求水準)と
いう概念をもって最適解を求める必要がある。すなわ
ち、インサート金属組成の最適化とは、得られる各接合
性能が意志決定者によって定められた範囲にあるような
バランスのとれた解を求めることを意味する。そこで、
意志決定者の要求をすみやかに最適解に反映する方法が
必要となる。
最適化モジュール(最適化手段3)により、この最適化
手順を可能にした。以下にその手順について説明する。
まず、意志決定者は要求性能に基づき最低限度の希求水
準を設定し、これを満たす解が存在するか探索する。全
ての希求水準を満たす解が存在しなければ、要求性能の
見直しを行う必要がある。要求性能の見直しが困難な場
合には、開発するインサート金属の合金系を再選定しな
ければならない。要求性能が見直し可能な場合には、新
たな要求性能を希求水準として探索をやり直す。得られ
た解が希求水準を全て満足する場合、意志決定者はこの
解に満足するかどうかを判断する。評価要素間のバラン
スを変更したい場合には、重要視したい評価要素の希求
水準を厳しく設定し、再度探索を行う。意志決定者が得
られた解に対して満足のいく結果が得られた場合探索を
終了し、得られた解を最適解とする。この手順を経て、
インサート金属組成の最適化が達成される。
は、まず、満たすべき希求水準を設定しなければならな
い。そこで、炭素鋼に対するインサート金属組成の最適
化を行うにあたり、特徴を有するインサート金属を得る
ために表4に示すような4種類の希求水準を設定した。
ート金属の合金系で存在するかどうか確認するために、
最低希求水準として融点に1400K、CIWに50μ
m、硬さにHV500を設定した。次に、各評価要素を
特に重視した解を得るために、それぞれの評価要素につ
いて希求水準を厳しく設定することにした。融点を重視
することを意図したものでは融点の希求水準を低くして
1230Kに、CIWの特性重視を意図したものではC
IWの希求水準を大きくし250μmに、硬さの特性重
視を意図したものでは硬さの希求水準を低くしHV22
0にそれぞれ設定した。
基づき、最適化モジュール(最適化手段3)によって最
適解を探索した結果を表5、表6に示す。この結果、要
求性能を満たす解は探索領域内に存在することがわか
る。まず、要求性能を最低希求水準に設定して得られた
解は、各評価要素間のバランスについて特に考慮してい
ないため、平等解と呼ぶことにする。
2.0%、Cr=3.4%が得られ、その時の予測され
る接合性能は、融点が1262.8K、CIWが23
4.1μm、接合部硬さがHV268となった。これに
対して、融点の希求水準を厳しく設定した融点重視解で
は、最適組成がB=5.2%、Si=5.5%、Cr=
5.1%となり、その時の接合性能は、融点が122
6.3K、CIWが120.6μm、接合部硬さがHV
373.6と、平等解に比べて融点が重視された解が求
まることがわかる。なお、全ての接合性能を同時に改善
することはできないため、平等解に比べて他の接合性能
は劣ることとなる。同様に、CIW重視解では、最適組
成がB=4.5%、Si=3.3%、Cr=4.5%と
なり、得られる接合性能は、融点が1285.3K、C
IWが274.4μm、接合部硬さがHV344.1と
求められる。また、硬さ重視解では、最適組成がB=
6.0%、Si=3.0%、Cr=3.0%で、得られ
る接合性能は、融点が1247.5K、CIWが17
8.4μm、接合部硬さがHV214.2となった。
した希求水準にしたがって、その接合性能が平等解に比
べて重視された解が得られていることがわかる。これら
の最適解の個々の特徴を視覚的に理解するために、図2
7に棒グラフ化したものを示す。個々の最適解はどれも
有用な特徴を有しており、意志決定者の意図する様々な
タイプの最適解が簡単な作業で得られることが示され
た。すなわち、意志決定者は状況に応じて様々なタイプ
の最適解を探索することができ、意志決定者の満足でき
る最適解を簡単に得ることが可能である。
によって得られた最適解が、妥当なものであるかどうか
判断するために、得られた4種類の最適解に対して実際
にインサート金属を作成し、その接合性能を実測した。
接合性能の実測値と計算による予測値を対比して表7お
よび図28に示す。4種類の解全てにおいて、実測値と
予測値はほぼ一致していることから、本最適化手法によ
って得られた最適解の精度は高いものと判断される。
いた多目的最適化によって、様々な特徴を有するインサ
ート金属を得ることができた。しかし、それだけではイ
ンサート金属の接合性能の改善過程とそれぞれの最適解
の持つ特徴を十分に理解できない。図29に探索領域内
における最適解の分布状況を示す。これより、各評価要
素を重視した解は、それぞれ重視した評価要素の理想点
に近い組成の位置に得られていることが理解できる。ま
た、この図29からB量が少ない領域には最適解が存在
していないことがわかる。すなわちB量が少ない領域で
は、融点、CIW、硬さのそれぞれについて良好な性能
が得られないことが予測される。また、平等に考慮した
解が単純に3つの評価要素の理想点を与える組成の中心
に位置するわけではないことも理解できる。さらに、C
IWを重視した解については、CIWの理想値を与える
組成から少し離れていることから、CIWは比較的広範
囲で希求水準を満たす値が得られると考えられる。これ
らの結果を総括すると、このインサート金属の合金系に
おいては、バランスのとれた接合性能が得られる組成
は、B量の多い領域に存在すると考えられる。
母材に適切なインサート金属合金系の選定および評価要
素の選定が容易に行える環境を確立することができた。
また、液相拡散接合で重要な役割を担うインサート金属
に関して、意志決定者の満足のいく接合性能を有するイ
ンサート金属の合金設計が可能なシステムを形成するこ
とができ、母材に適切なインサート金属の開発を容易に
行える環境を確立することができた。構成モジュールと
して、定式化モジュール(定式化手段)、極値探索モジ
ュール(極値探索手段)、実験指定モジュール(実験指
定手段)、最適化モジュール(最適化手段)の4つを備
え、これらは利用者がコンピュータ上で使用できる。し
かも、評価要素を定式化する手法としてニューラルネッ
トワークを適用することで、少ない実験点から評価要素
の概略を正確に表現することが可能となり、インサート
金属の合金設計の最適化に必要な実験に要する労力と時
間が軽減された。さらに、評価要素の理想値を設定する
手法として、遺伝的アルゴリズムを適用し、グリッド探
索法に比べて評価要素の理想値を精度良く求めることが
可能となった。ニューラルネットワークの学習を効率よ
くする方法として、遺伝的アルゴリズムとニューラルネ
ットワークを複合させた理論を適用し、実験の効率化を
達成した。また、多目的最適化手法として、満足化トレ
ードオフ法を適用し、ゴールプログラミング法では困難
であった目的間のバランスを考慮した解を容易に求めら
れる環境を達成した。意志決定者は、希求水準を変更す
るだけで様々な特徴を有する最適解を求めることが可能
となった。
法によるカンターマップの作成ならびに理想値の探索を
行った。図30〜図32にこの内挿法で得られた融点、
CIW、硬さのカンターマップを示す。このカンターマ
ップと上記実施例1のカンターマップとを比較すると、
両者の予測精度に明確な差は見られない。この場合、図
30が図24に対応し、図31が図25に対応し、図3
2が図26に対応する。両者の性能を定量的に比較する
ため、満足化トレードオフ法で最適化した4種類の最適
解について、それぞれの手法で予測される計算値と実測
値の比較を行った。この結果を表8に示す。表中網掛け
で示す部分は、より実測値に近い値を予測している手法
を示している。この結果、内挿法と比べてニューラルネ
ットの方が予測精度において優位であることがわかる。
ルゴリズム以外に、グリッド探索法がある。このため、
このグリッド探索法と遺伝的アルゴリズムの比較を行っ
た。グリッド探索法は、探索格子点のデータ値を比較す
ることにより目的値を求める方法である。したがって、
格子の区切り方によってその計算量も変化し、得られる
解の精度(有効数字)も異なってくる。格子の区切りを
どの程度にするかの判断は、利用者が計算前に行わねば
ならず、判断が難しい。また、格子点を細かく区切り過
ぎるとそれだけ探索する点の数が増え、計算効率が悪く
なる。これに対し、遺伝的アルゴリズムは格子点ではな
く、探索領域内全体を探索対象としているため、より拡
張性が高いといえる。さらに、遺伝的アルゴリズムは探
索領域全体を探索対象にしているが、その計算過程で必
ずしも全ての点について比較を行うわけではないため、
あらかじめ精度の高い解を得たい場合には、グリッド探
索法よりも計算効率がよいと言える。また、利用者は得
られた解を見た後で、その有効精度を判断できるという
利点もある。両者の比較を行うため、CIWの理想値を
与える組成に対して両手法を適用し、計算した結果を表
9に示す。グリッド探索法では、計算条件として探索領
域内のグリッドを0.5%刻みに設定した。このため、
最適解を与える組成は0.5%の精度で与えられる。こ
の結果、有効数字を二桁に設定した場合には、遺伝的ア
ルゴリズムの方がより正確な理想値が得られることがわ
かる。
は、ゴールプログラミング法が用いられてきた。ゴール
プログラミング法は意志決定者の目標を満足化ととら
え、その満足すべき条件を不等式や方程式で表し、その
解を求める手段として、目標の不達成度を最小化すると
いう最適化問題に帰着する方法である。一般的な方法で
は、数28に示すような評価関数Zを用いて最適化が行
われる。
を同等にするため、wiは次の数29に示すように設定
し、各評価要素のデータは標準化される。
組み合わせるだけ、もしくは「適当に」重みつけをして
加えあわせるというスカラー化を行っているに過ぎず、
全体のバランスを考えた解を見いだそうとする努力はな
されていない。また、このゴールプログラミング法で
は、ある目的を改善しようとしてその重みを大きくする
と他の目的が悪くなりすぎたり、あるいは改善するつも
りで重みを大きく設定したにもかかわらず、さらに悪く
なりすぎたりすることがある。つまり、重みつけのみで
バランスをとろうとするゴールプログラミング法では、
目的間のバランスを考慮することが困難である。
バランスのとれた解を得ることに重点を置いた最適化手
法であり、意志決定者はバランスのとれた解を得るため
にその希求水準を変えて試してみることが多いという認
識に立って、意志決定者の希望する解がいかにすればす
ばやく得られるかについて考慮した手法である。満足化
トレードオフ法は、希求水準を満たす解が存在する場合
には、その条件中で最も良くなる方向に解を探索し、ま
た解が存在しない場合にも希求水準にできるだけ近い解
を導き出す努力を行うため、意志決定者の思うとおりの
解を数回の探索で得ることができる。
オフ法を比較するために、炭素鋼のインサート金属の合
金設計にゴールプログラミング法の適用を行った。表1
0にゴールプログラミング法を用いて得られた最適解と
上記実施例1において満足化トレードオフ法を用いて得
られた最適解を合わせて示す。
最適解は、組成がB=6.0%、Si=2.0%、Cr
=3.0%であり、得られる接合性能は、融点が126
0.5K、CIWが225μm、接合部の硬さがHV2
24.8である。この最適解は、満足化トレードオフ法
によって求めた目的間のバランスを考慮しない場合の平
等解(解A)とほぼ同じである。ゴールプログラミング
法では、この最適解に満足のいかない場合に、目的間の
バランスをとることが困難であるため、その後、満足化
トレードオフ法では簡単に得られる融点重視解(解
B)、CIW重視解(解C)、硬さ重視解(解D)のよ
うな、それぞれの接合性能を向上させた特徴を有する最
適解を得ることができない。すなわち、満足化トレード
オフ法を用いることにより、ゴールプログラミング法に
よって得られる平等解を求められるのみならず、様々な
特徴を有する解を希求水準の変更のみによって簡単に求
めることができる。
ート金属の中でCIW重視型(TAM1)を用いて、炭
素鋼S45Cに対するプロセスパラメータ(接合条件)
の最適化を行った。まず、このインサート金属を用いた
場合の接合継手の機械的特性を明らかにするために、常
温で引張試験を行った。この場合、図33に示す引張試
験片にて引張試験を行った。引張速度は0.166mm
/sである。図35に接合強さに及ぼす接合温度および
保持時間の影響を示す。この場合、1423K×7.2
ksの接合条件で、最大接合強さ約680MPaが得ら
れた。接合温度1473Kでは、短時間から母材並の強
度を有する高い継手強度が得られていることがわかる。
これに対して、接合温度が1373Kでは、保持時間が
7.2ksにいたるまで母材並の強度が得られないこと
がわかる。
接合継手の破壊靭性を評価するために、シャルピー衝撃
試験を行って、その衝撃吸収エネルギーを調査した。こ
の場合の衝撃試験片は、図34に示す形状であり、JI
S4号試験片に準拠し、幅を3mmとした。また、衝撃
試験時の試験片の温度を353K(一定)とした。図3
6に衝撃吸収エネルギーに及ぼす接合温度および保持時
間の影響を示す。この場合、1423K×7.2ks
で、最大衝撃吸収エネルギー約5Jが得られた。接合時
間の増加にしたがって、衝撃吸収エネルギーは増加する
ことがわかる。また、接合温度が高くなるほど衝撃吸収
エネルギーは高くなることが明らかとなった。しかしな
がら、母材の衝撃吸収エネルギーが約15Jであること
から、母材並の靭性値はこの接合条件範囲では得られな
いことがわかる。
が最大となる接合条件を選定することを目的とし、実験
による実測データをもとに定式化モジュール(定式化手
段11)による評価要素(引張強さ、衝撃吸収エネルギ
ー)の定式化ならびに極値探索モジュール(極値探索手
段12)による理想値の探索を行った。図37にその結
果得られた引張強さのカンターマップを示す。また、同
様に図38に衝撃吸収エネルギーのカンターマップを示
す。これより、引張強さの最大値を与える接合条件は1
440K×7.0ksと得られ、その時の予測される引
張強さは684.7MPaと推定される。また、衝撃吸
収エネルギーの最大値を与える接合条件は1423K×
7.2ksと得られ、その時の予測される衝撃吸収エネ
ルギーは4.89Jである。
の評価要素のバランスを考慮して、最適化手段13の満
足化トレードオフ法による多目的最適化を図った。この
際の設定した希求水準を表11に示す。
要であると考えられることから、母材S45Cの引張強
さである570MPaを希求水準として設定した。ま
た、衝撃吸収エネルギーに関しては、母材並の値が得ら
れる接合条件範囲が探索領域内に存在しないことが前節
で明らかとなったため、できるだけ高い靭性値を得るこ
とを意図して、希求水準は探索領域内での理想値に近い
4.5Jに設定した。
ール(最適化手段13)によって得られた最適接合条件
を表12に示す。最適接合条件として、1425K×
7.2ksが得られ、その時の予測される各接合性能
は、引張強さが679MPa、衝撃吸収エネルギーが
4.89Jである。
ある場合も考えられる。したがって、最適接合条件は、
接合性能に対してある程度の裕度をもった条件であるこ
とが望ましい。そこで、最適接合条件が各評価要素に対
してどの程度の安全裕度を有するのか調査するために、
各評価要素に対して希求水準を満足する接合条件範囲と
最適接合条件をカンターマップに反映させたものを図3
9および図40にそれぞれ示す。この結果、引張強さに
関しては希求水準を満たす接合条件範囲が最適接合条件
の位置から広範囲にわたることが理解できる。これに対
して、衝撃吸収エネルギーは求められる希求水準が厳し
いため、引張強さに比べて裕度が小さいことがわかる。
しかしながら、この実施例で得られた最適接合条件は、
接合温度に対して約20K、保持時間に対して約600
S程度の十分な安全裕度範囲を有しており、最適接合条
件の安全性はある程度確保されていると言える。
機構に関して検討するために、各接合性能のカンターマ
ップに対し、両者(引張強さおよび衝撃吸収エネルギ
ー)の希求水準を満足する接合条件範囲を反映したもの
を図41および図42に示す。引張強さと衝撃吸収エネ
ルギーのカンターマップを比較すると、その形状は類似
しており、接合条件が高温長時間側になるほど高い接合
性能が得られることがわかる。この要因として、液相拡
散接合において、等温凝固の完了に要する時間が、高温
になるほど短くなることが考えられる。図中、格子状部
で示した領域は、両方の接合性能に対して希求水準を満
足する最適接合条件範囲を示している。この結果、最適
接合条件範囲は探索領域内の最も高温側までには及ばな
いことがわかる。この原因としては、高温長時間の接合
条件では、母材劣化が生じ、接合継手特性の低下をまね
いた可能性が考えられる。
材並の値に及ばなかった原因を明らかにするために、接
合部の硬さ分布を調査した。図43に接合条件1423
K×3.6ksで接合した試料の接合部の硬さ分布を示
す。母材はHV280程度であるのに対して、接合部は
HV420と非常に硬いことがわかる。これは、主とし
て母材と大幅に組成の異なるNi−Cr合金をインサー
ト金属として用いたためではないかと考えられ、十分な
靭性を得られなかった主たる要因の1つであると推察さ
れる。したがって、この合金系のインサート金属を用い
る場合には、良好な靭性を得るための改善策として、均
質化熱処理などの接合後熱処理の必要性が示唆される。
システム(接合条件決定システム)の最大の特徴は、複
数の接合性能を同時に満足する最適接合条件を簡単に求
められることである。このシステムは、材料成分決定シ
ステムと同様、多目的の最適化過程に満足化トレードオ
フ法を適用しているため、意志決定者は希求水準を変更
するだけで、満足のできる接合条件を探索することがで
きる。また、プロセスパラメータの最適化に関しては、
実施工を考えた安全裕度が考慮すべき問題として提示さ
れることが多い。プロセスパラメータの最適化システム
では、接合性能をニューラルネットワークにより定式化
することにより、接合性能のカンターマップを作成する
ことができる。これによって、希求水準を満足する条件
範囲を視覚化することができるため、安全裕度を判断す
ることが容易である。このシステムをより高度に発展さ
せる可能性を拡張性の観点から述べることにする。な
お、接合条件決定システムでは、材料成分決定システム
の場合と同様、接合性能を実測データに基づいてニュー
ラルネットワークで学習し、定式化を行うものであるの
で、実験によるばらつきを考慮した学習方法を組み合わ
せることにより、より発展性のある定式化が可能とな
る。
れるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実
施することができる。決定する材料として液相拡散接合
に使用するインサート金属以外、例えば、溶接条件や溶
接材料、成膜・積層条件、材料開発等であってもよい。
決定の最適化に必要な実験に要する労力と時間を軽減す
ることができる。すなわち、材料成分を安定して決定す
ることができ、意思決定者(材料成分決定者)にとって
最良の材料を形成することができる。材料の材料成分決
定及び接合条件決定の最適化を確実に達成することがで
きる。これにより、より高品質の製品を形成することが
できる。また、定式化に、ニューラルネットワークを用
いているの、成分含有量と、それによって得られる複数
の材料特性との関係式を精度よく求めることができる。
さらに、探索に、遺伝的アルゴリズムを用いているの
で、目標理想値を精度よく求めることができ、特に、定
式化手段による定式化に、ニューラルネットワークを用
いているので、より精度よく最適化を図ることができ
る。しかも記最適化手段の範囲決定に、満足化トレード
オフ法を用いているので、他の方法、例えばゴールプロ
グラミング法では困難であった目的間のバランスを考慮
した解を容易に求めることができる。
定の最適化に必要な実験に要する労力と時間を軽減する
ことができる。これにより、接合条件を安定して決定す
ることができ、意思決定者(接合条件決定者)にとって
最良の条件にて接合することができ、高品質の製品を提
供することが可能となる。また、定式化に、ニューラル
ネットワークを用いているの、接合条件と、それによっ
て得られる複数の接合特性との関係式を精度よく求める
ことができる。さらに、探索に、遺伝的アルゴリズムを
用いているので、目標理想値を精度よく求めることがで
き、特に、定式化手段による定式化に、ニューラルネッ
トワークを用いているので、より精度よく最適化を図る
ことができる。しかも記最適化手段の範囲決定に、満足
化トレードオフ法を用いているので、他の方法、例えば
ゴールプログラミング法では困難であった目的間のバラ
ンスを考慮した解を容易に求めることができる。
成分決定及び接合条件決定の最適化を確実に達成するこ
とができる。これにより、より高品質の製品を形成する
ことができる。
示す簡略ブロック図である。
説明図である。
すグラフ図である。
明図である。
ある。
明図である。
る。
フ法の概念図である。
である。
を示す簡略ブロック図である。
片の簡略図である。
料片の簡略図である。
略図である。
片及びCIW測定用試料片に関する接合熱サイクルを示
すグラフ図である。
衝撃試験片に関する接合熱サイクルを示すグラフ図であ
る。
片の脆性生成物生成能評価方法の説明図である。
の実測データ点の分布状態説明図である。
フ図である。
フ図である。
フ図である。
カンターマップ図である。
のカンターマップ図である。
カンターマップ図である。
値)との対比を示すグラフ図である。
図である。
る。
る。
る。
影響を示すグラフ図である。
保持時間の影響を示すグラフ図である。
る。
件範囲と最適接合条件とを示すカンターマップ図であ
る。
する接合条件範囲と最適接合条件とを示すカンターマッ
プ図である。
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 材料の複数成分の各含有量を決定する
材料決定システムであって、予め定めた範囲内の複数の
成分含有量と、それによって得られる複数の材料特性と
の関係を実験データからニューラルネットワークを用い
て定式化する定式化手段(1)と、上記定式化手段
(1)にて求めた数式に基づいて、材料特性が上記範囲
内おいて最大又は最小となる目標理想値での成分含有量
を各材料特性ごとに遺伝的アルゴリズムを用いて探索す
る極値探索手段(2)と、上記極値探索手段(2)にて
求めた目標理想値に基づいて、要求材料特性を満足する
目標最適含有量の範囲を満足化トレードオフ法を用いて
決定する最適化手段(3)とを備えたことを特徴とする
材料成分決定システム。 - 【請求項2】 材料の接合条件を決定する接合条件決
定システムであって、予め定めた範囲内の複数の接合条
件と、それによって得られる複数の接合特性との関係を
実験データからニューラルネットワークを用いて定式化
する定式化手段(11)と、上記定式化手段(11)に
て求めた数式に基づいて、接合特性が上記範囲内におい
て最大又は最小となる目標理想値での接合条件を各接合
特性ごとに遺伝的アルゴリズムを用いて探索する極値探
索手段(12)と、上記極値探索手段(12)にて求め
た目標理想値に基づいて、要求接合特性を満足する目標
最適条件の範囲を満足化トレードオフ法を用いて決定す
る最適化手段(13)とを備えたことを特徴とする接合
条件決定システム。 - 【請求項3】 材料が、上記請求項1の材料決定シス
テムにて決定した材料であることを特徴とする請求項2
の接合条件決定システム。
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- 2001-07-27 JP JP2001227473A patent/JP3525345B2/ja not_active Expired - Fee Related
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西本和俊、才田一幸、鳥居尚之,材料挙動の理解支援システムの基本概念−溶接エキスパートシステムにおける材料挙動の理解支援システム(第1,溶接学会全国大会講演概要,日本,社団法人溶接学会,2000年 3月13日,第66集,P.234−235 |
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