JP3515164B2 - 穴の軸線設定方法およびワーク端面の傾斜測定方法ならびに座面の修正加工方法 - Google Patents

穴の軸線設定方法およびワーク端面の傾斜測定方法ならびに座面の修正加工方法

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JP3515164B2
JP3515164B2 JP09008794A JP9008794A JP3515164B2 JP 3515164 B2 JP3515164 B2 JP 3515164B2 JP 09008794 A JP09008794 A JP 09008794A JP 9008794 A JP9008794 A JP 9008794A JP 3515164 B2 JP3515164 B2 JP 3515164B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワークに形成された円
形の穴の軸線の設定方法およびこの穴の軸線に対して直
交する端面の傾きを測定する方法ならびにワークに形成
された座面の修正加工方法に関し、特に座面が形成され
たフランジ部とこのフランジ部から突出して円形の穴が
形成された筒部とを有するワークに対して好適なもので
ある。
【0002】
【従来の技術】金型を用いた樹脂等の成型加工を行う場
合、目的とする成型加工品を所定の寸法精度に仕上げる
ため、予め成型加工を試験的に行い、これによって得ら
れる製品の寸法形状を測定し、この測定結果に基づいて
金型の修正加工を行う必要がある。
【0003】例えば、自動車のパワーウィンドウの動力
源となるモータを収納する樹脂製のモータケーシングを
成型加工する場合、このモータケーシングは、当該モー
タケーシングをドアパネルに取り付けるための座面が形
成されたフランジ部や、このフランジ部から突出してモ
ータを収納するための円形の段付き穴が形成された筒部
を有しており、この段付き穴の軸線に対する座面の傾き
や、この段付き穴の同軸度が他の部品との組み付け等の
点で重要となる。
【0004】従来、円形の穴に対してその軸線を設定す
る場合、三次元測定器等を用いて穴の両端部の最小領域
中心や最小自乗中心を求め、これら最小領域中心や最小
自乗中心を結ぶ線を円形の穴の軸線として採用すること
が一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】円形の穴に対する軸線
をこの穴の両端部の最小領域中心や最小自乗中心に基づ
いて設定する従来の方法では、円形の穴が途中で屈曲し
ていたり、湾曲しているような場合、これを定性的かつ
定量的に把握することが困難である。このため、穴に対
して軸物を嵌合する際に、これらのはめ合い精度を所望
の範囲に収めることができなくなったり、修正加工を適
切に行うことができないという不具合が発生する。
【0006】特に、金型を用いた成型加工においては、
上述した理由によって金型に対する適切な修正が困難で
あることから、成型加工後の個々の製品に対して修正加
工を行わざるを得ず、生産コストが高くなってしまう。
【0007】
【発明の目的】本発明の第一の目的は、円形の穴に対す
る軸線を再現性高く適切に設定し得る方法を提供するこ
とにある。
【0008】本発明の第二の目的は、円形の穴が開口す
るワーク端面の傾斜状態を高い再現性で適切に把握し得
る方法を提供することにある。
【0009】本発明の第三の目的は、円形の穴が開口す
るワークのフランジ部に形成された座面の修正加工を適
切に行い得る方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の形態は、
ワークに形成された円形の穴の内壁の全域に亙って6
以上の点の三次元位置座標を測定するステップと、こ
れらの測定点の少なくとも1つを含み、内側に他の測定
点を含まない幾何学的円筒面を形成するステップと、こ
れら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒面を選
択するステップと、この最大径の幾何学的円筒面の軸線
を前記穴の軸線として選択するステップとを具えたこと
を特徴とする穴の軸線設定方法にある。
【0011】また、本発明の第二の形態は、ワークに形
成された端面に開口する円形の穴の内壁の全域に亙って
箇所以上の点の三次元位置座標を測定するステップ
と、これらの測定点の少なくとも1つを含み、内側に他
の測定点を含まない幾何学的円筒面を形成するステップ
と、これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒
面を選択するステップと、この最大径の幾何学的円筒面
の軸線を前記穴の軸線として選択するステップと、前記
ワークの端面の複数箇所の三次元位置座標を測定するス
テップと、これらの測定点と前記穴の軸線に対して垂直
な幾何学的平面とのずれを算出するステップとを具えた
ことを特徴とするワーク端面の傾斜測定方法にある。
【0012】さらに、本発明の第三の形態は、フランジ
部から突出する筒部に形成されたワークの円形の穴の内
壁の全域に亙って6箇所以上の点の三次元位置座標を測
定するステップと、これらの測定点の少なくとも1つを
含み、内側に他の測定点を含まない幾何学的円筒面を形
成するステップと、これら幾何学的円筒面のうち最大径
の幾何学的円筒面を選択するステップと、この最大径の
幾何学的円筒面の軸線を前記穴の軸線として選択するス
テップと、前記ワークのフランジ部に形成された座面の
複数箇所の三次元位置座標を測定するステップと、前記
座面に対するこれらの測定点と前記穴の軸線に対して垂
直な幾何学的平面とのずれを算出するステップと、この
ずれの量に基づいて前記座面の修正加工を行うステップ
とを具えたことを特徴とする座面の修正加工方法にあ
る。
【0013】
【作用】本発明の第一の形態によると、ワークに形成さ
れた円形の穴の内壁の全域に亙って6箇所以上の点の三
次元位置座標を測定し、これらの測定点の少なくとも1
つを含み、内側に他の測定点を含まない幾何学的円筒面
を形成し、これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学
的円筒面を選択し、この最大径の幾何学的円筒面の軸線
を穴の軸線として選択する。
【0014】また、本発明の第二の形態によると、ワー
クに形成された端面に開口する円形の穴の内壁の全域に
亙って6箇所以上の点の三次元位置座標を測定し、これ
らの測定点の少なくとも1つを含み、内側に他の測定点
を含まない幾何学的円筒面を形成し、これら幾何学的円
筒面のうち最大径の幾何学的円筒面を選択し、この最大
径の幾何学的円筒面の軸線を穴の軸線として選択する。
一方、ワークの端面の複数箇所の三次元位置座標を測定
し、これらの測定点と穴の軸線に対して垂直な幾何学的
平面とのずれを算出し、これによってワークの端面の傾
斜状態が把握される。
【0015】さらに、本発明の第三の形態によると、フ
ランジ部から突出する筒部に形成されたワークの円形の
穴の内壁の全域に亙って6箇所以上の点の三次元位置座
標を測定し、これらの測定点の少なくとも1つを含み、
内側に他の測定点を含まない幾何学的円筒面を形成し、
これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒面を
選択し、この最大径の幾何学的円筒面の軸線を穴の軸線
として選択する。一方、ワークのフランジ部に形成され
た座面の複数箇所の三次元位置座標を測定し、座面に対
するこれらの測定点と穴の軸線に対して垂直な幾何学的
平面とのずれを算出し、このずれの量に基づいて座面の
修正加工を行う。
【0016】
【実施例】本発明を金型によって成型加工される乗用車
のパワーウィンドウの動力源である電動モータを収納す
るための樹脂製のモータケーシングに対して応用した一
実施例について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明
する。
【0017】対象となるワークとしてのモータケーシン
グの破断形状を図2に示す。すなわち、裏面側が平坦な
座面11となった矩形をなすフランジ部12の表面側の
中央には、大径穴13を内側に形成した大径筒部14が
突設されており、さらにこの大径筒部14の先端には、
段部15を介して大径穴13に連通する小径穴16を内
側に形成した小径筒部17が当該大径筒部14と同軸状
をなして突設されている。また、大径筒部14を挟んで
フランジ部12の両側には一対のボルト貫通孔18がそ
れぞれ形成されている。
【0018】このモータケーシング19の形状で重要な
ことは、大径穴13と小径穴16との同軸度の他に、こ
れら大径穴13および小径穴16の共通軸線CC に対し
て垂直な平面からのフランジ部12の座面11の傾き、
すなわち直角度を挙げることができる。大径穴13と小
径穴16との同軸度を求めるためには、これら大径穴1
3の軸線CL と小径穴16の軸線CS とを予め設定する
必要がある。
【0019】本実施例におけるこれら一連の作業を図1
のフローチャートに示す。すなわち、S1のステップに
てモータケーシング19を図示しない三次元測定器のワ
ークテーブルに固定し、S2のステップにて本発明の基
準座標系となるXYZ三次元直交座標系の原点O(X0,
0,Z0 )を座面11に臨む大径穴13の開口端の中央
部に設定し、座面11に沿った大径穴13およびボルト
貫通孔18の配列方向を三次元測定器のX軸方向に指向
させ、このX軸と直交する座面11に沿った方向を三次
元測定器のY軸方向に指向させ、これらX軸およびY軸
にそれぞれ直交する座面11に垂直な方向を三次元測定
器のZ軸方向に指向させる。
【0020】そして、S3のステップにて三次元測定器
の図示しない測定ヘッド先端に装着されたプローブをコ
ントローラによって移動し、これを大径穴13の内壁に
順次当接させ、接触した測定点PL1, PL2・・・P
Ln(以下、これらをまとめてPLと記述する場合があ
る)の座標値(XL1, YL1, ZL1), (XL2, YL2, Z
L2)・・・(XLn, YLn, ZLn)をそれぞれプロットし
て行く。同様にして、プローブを小径穴16の内壁に順
次当接させ、接触した測定点PS1, PS2・・・PSn(以
下、これらをまとめてPS と記述する場合がある)の座
標値(XS1, YS1, ZS1), (XS2, YS2, ZS2)・・
・(XSn, YSn, ZSn)をそれぞれプロットして行く。
これらの測定点PL , PS は、大径穴13および小径穴
16毎にこれらの全域に亙ってそれぞれ6点以上、好ま
しくは200点から400点程度プロットする。
【0021】なお、三次元測定器の測定ヘッドの移動量
は、各座標軸に沿って設けられたスケールによって読み
取られ、カウンタ等にディジタル表示される。そしてこ
の測定位置の出力信号が指定の各種コンピュータに入力
され、ワークの二次元および三次元座標や寸法ならびに
形状等を測定するようになっている。
【0022】次いで、S4のステップにてモータケーシ
ング19の座面11に三次元測定器のプローブを順次当
接させ、接触した測定点PF1, PF2・・・PFn(以下、
これらをまとめてPF と記述する場合がある)の座標値
(XF1, YF1, ZF1), (XF2, YF2, ZF2)・・・
(XFn, YFn, ZFn)をそれぞれプロットして行く。こ
れらの測定点PF は、座面11の全域に亙って6点以
上、好ましくは100点から200点程度プロットす
る。
【0023】さらに、上述したS3のステップにて測定
された大径穴13および小径穴16の内壁の測定点
L , PS のデータ処理をS5のステップにて行う。
【0024】このデータ処理は、モータケーシング19
の大径穴13の測定点PL および小径穴16の測定点P
S に基づいてこれらにそれぞれ内接する最大の幾何学的
円筒の半径RL , RS を求め、この最大の幾何学的円筒
の軸線を大径穴13の軸線CL と小径穴16の軸線CS
として演算するものであり、本実施例ではまず大径穴1
3の内壁の測定点PL に対するデータ処理を行った後、
小径穴16の内壁の測定点PS に対するデータ処理を行
うようにしている。これら大径穴13および小径穴16
内壁の測定点PL , PS のデータ処理手順は全く同じで
あるので、以下には大径穴13の内壁の測定点PL に対
するデータ処理について説明する。
【0025】この大径穴13の内壁の測定点PL のデー
タ処理のサブルーチンのフローチャートを図3に示す。
すなわち、S51のステップにてn個の全測定点PL
座標値(XL1, YL1, ZL1), (XL2, YL2, ZL2)・
・・(XLn, YLn, ZLn)からXY座標値(XL1,
L1), (XL2, YL2)・・・(XLn, YLn)を抽出
し、これらの平均座標値(XLA, YLA)を測定平均中心
A として算出する。つまり、
【0026】
【数1】XLA=(XL1+XL2+・・・+XLn)/n YLA=(YL1+YL2+・・・+YLn)/n である。
【0027】そして、S52のステップにて図4に示す
ように測定平均中心OA から各測定点PL までの距離、
すなわち測定円半径RL1, RL2・・・RLn(以下、これ
らをまとめてRL と記述する場合がある)を演算し、S
53のステップにてこれらのうちで最も小さな測定円半
径RL を抽出し、これを最初の内接円半径RLMとして記
録すると共に測定平均中心OA の座標値(XLA, YLA
を最初の内接円中心OI の座標値として記録する。
【0028】次に、S54のステップにて平行移動の適
正化処理を行う。この平行移動の適正化処理は、上述し
た内接円中心OI をXY平面に沿って順次移動し、最大
の内接円半径RLMとこの最大の内接円半径RLMが得られ
る内接円中心OI の座標値(XI , YI )とを探索する
ものである。
【0029】具体的には、XY平面に沿って第1の方向
に所定量(例えば、X軸方向にのみ微小量ΔX)だけず
らした内接円中心OI を設定し、この内接円中心OI
各測定点PL との距離、すなわち測定円半径RL を演算
し、その内の最も小さな測定円半径RL を内接円半径R
LMとして抽出し、この内接円半径RLMが先の内接円半径
LMよりも大きいか否かを判定する。そして、今回抽出
した内接円半径RLMが先の内接円半径RLMよりも大きい
場合には、大径穴13に内接する幾何学的円筒を求める
のであるから、内接円中心OI の移動方向に問題はない
ので、さらに内接円中心OI をXY平面に沿って第1の
方向に所定量だけずらし、上述した操作を繰り返して行
く。
【0030】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、内接円中心
I の移動方向が不適切であることから、先の内接円中
心OI に対してXY平面に沿って第2の方向に所定量
(例えば、X軸方向に対して45度の方向となるX軸方
向に微小量ΔXおよびY軸方向に微小量ΔY)だけずら
した新たな内接円中心OI を設定し、上述した手順と同
様にしてその内接円半径RLMを抽出し、この内接円半径
LMが前回の内接円半径RLMよりも大きいか否かを判定
する。そして、今回抽出した内接円半径RLMが先の内接
円半径RLMよりも大きい場合には、内接円中心OI の移
動方向に問題はないので、さらに内接円中心OI をXY
平面に沿って第2の方向に所定量だけずらし、上述した
操作を繰り返して行く。
【0031】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、内接円中心
I の移動方向が不適切であることから、先の内接円中
心OI に対してXY平面に沿って第3の方向に所定量
(例えば、X軸方向に対して90度の方向となるY軸方
向にのみ微小量ΔY)だけずらした新たな内接円中心O
I を設定し、上述した手順と同様にしてその内接円半径
LMを抽出し、この内接円半径RLMが前回の内接円半径
LMよりも大きいか否かを判定する。そして、今回抽出
した内接円半径RLMが先の内接円半径RLMよりも大きい
場合には、内接円中心OI の移動方向に問題はないの
で、さらに内接円中心OI をXY平面に沿って第3の方
向に所定量だけずらし、上述した操作を繰り返して行
く。
【0032】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、内接円中心
I の移動方向が不適切であることから、先の内接円中
心OI に対してXY平面に沿って第4の方向に所定量
(例えば、X軸方向に対して135度の方向となるX軸
方向と反対方向に微小量ΔXおよびY軸方向に微小量Δ
Y)だけずらした新たな内接円中心OI を設定し、上述
した手順と同様にしてその内接円半径RLMを抽出し、こ
の内接円半径RLMが前回の内接円半径RLMよりも大きい
か否かを判定する。そして、今回抽出した内接円半径R
LMが前回の内接円半径RLMよりも大きい場合には、内接
円中心OI の移動方向に問題はないので、さらに内接円
中心OI をXY平面に沿って第4の方向に所定量だけず
らし、上述した操作を繰り返して行く。
【0033】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、内接円中心
I の移動方向が不適切であることから、先の内接円中
心OI に対してXY平面に沿って第5の方向に所定量
(例えば、X軸方向に対して180度の方向となるX軸
方向と反対方向にのみ微小量ΔX)だけずらした新たな
内接円中心OI を設定し、上述した手順と同様にしてそ
の内接円半径RLMを抽出し、この内接円半径RLMが前回
の内接円半径RLMよりも大きいか否かを判定する。そし
て、今回抽出した内接円半径RLMが前回の内接円半径R
LMよりも大きい場合には、内接円中心OI の移動方向に
問題はないので、さらに内接円中心OI をXY平面に沿
って第5の方向に所定量だけずらし、上述した操作を繰
り返して行く。
【0034】このようにして、本実施例では内接円中心
I の移動方向をX軸方向に対して45度毎に8回続け
て変え、このプロセスを3回継続しても、すなわち内接
円中心OI の移動方向を連続して24回変えても内接円
中心OI の移動方向が不適切である、すなわち内接円半
径RLMの変動がほぼなくなったと判断した場合には、こ
の時点での最終的な内接円半径RLMを移動内接円半径R
LOとして記録する一方、その内接円中心OI の座標値
(XI , YI )を併せて記録する。
【0035】上述したS54のステップでの平行移動の
適正化処理を行った後、S55のステップにて基準座標
系をX軸方向にXI だけ移動すると共にY軸方向にYI
だけ移動し、最終的な内接円中心OI を原点Oとする修
正された基準座標系に変換し、各測定点PL の座標値
(XL1, YL1, ZL1), (XL2, YL2, ZL2)・・・
(XLn, YLn, ZLn)もこれに伴って(XL1+XI , Y
L1+YI , ZL1), (XL2+XI , YL2+YI , ZL2
・・・(XLn+XI , YLn+YI , ZLn)と変換する。
【0036】次に、S56のステップにて回転移動の適
正化処理を行う。この回転移動の適正化処理は、修正さ
れた基準座標系をその原点Oを中心として順次傾斜さ
せ、この時の原点Oから傾斜状態にある新たなXY平面
上の各測定点PL までの距離のうちで最も小さな測定円
半径RL を内接円半径RLMとしてそれぞれの傾斜状態に
おいて抽出し、最大の内接円半径RLMとこの最大の内接
円半径RLMが得られる基準座標系の傾き、すなわち大径
穴13の軸線CL の傾斜方向を探索するものである。
【0037】具体的には、図5に示すように修正された
基準座標系をまずX軸回りに微小角度+θX だけ回転
し、これによって得られる回転後の新たなXyZX 平面
三次元直交座標系を基準として大径穴13の内壁の各測
定点PL のXy座標値(XL1,yL1), (XL2, yL2
・・・(XLn, yLn)に基づき、原点OからXy平面上
の各測定点PL までの距離、すなわち測定円半径RL1,
L2・・・RLn(以下、これらをまとめてRL と記述す
る場合がある)を演算し、これらのうちで最も小さな測
定円半径RL を内接円半径RLMとして記録し、この内接
円半径RLMがS56のステップにて最終的に記録した内
接円半径RLMよりも大きいか否かを判定する。そして、
今回抽出した内接円半径RLMが先の内接円半径RLMより
も大きい場合には、更新された基準座標系の傾斜方向に
問題はないので、さらにこの基準座標系をX軸回りに微
小角度+θX だけ回転し、上述した操作を繰り返して行
く。
【0038】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、更新した基
準座標系の傾斜方向が不適切であることから、先の座標
系をX軸回りにさらに微小角度+θX だけ回転すると共
にY軸回りに微小角度+θYだけ回転し、これによって
得られる回転後の新たな平面三次元直交座標系を基準と
して大径穴13の内壁の各測定点PL のxy座標値に基
づき、原点Oからxy平面上の各測定点PL までの距
離、すなわち測定円半径RL を演算し、これらのうちで
最も小さな測定円半径RL を内接円半径RLMとして抽出
し、この内接円半径RLMが先の内接円半径RLMよりも大
きいか否かを判定する。そして、今回抽出した内接円半
径RLMが先の内接円半径RLMよりも大きい場合には、更
新された基準座標系の傾斜方向に問題はないので、さら
にこの基準座標系をX軸およびY軸回りにそれぞれ微小
角度+θX , +θY だけ回転し、上述した操作を繰り返
して行く。
【0039】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、更新した基
準座標系の傾斜方向が不適切であることから、今度は図
6に示すように先の座標系をY軸回りに微小角度+θY
だけ回転し、これによって得られる回転後の新たな平面
三次元直交座標系を基準として大径穴13の内壁の各測
定点PL のxy座標値に基づき、原点Oからxy平面上
の各測定点PL までの距離、すなわち測定円半径RL
演算し、これらのうちで最も小さな測定円半径RL を内
接円半径RLMとして抽出し、この内接円半径RLMが先の
内接円半径RLMよりも大きいか否かを判定する。そし
て、今回抽出した内接円半径RLMが先の内接円半径RLM
よりも大きい場合には、更新された基準座標系の傾斜方
向に問題はないので、さらにこの基準座標系をY軸回り
に微小角度+θY だけ回転し、上述した操作を繰り返し
て行く。
【0040】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、更新した基
準座標系の傾斜方向が不適切であることから、今度は先
の基準座標系をX軸回りに微小角度−θX だけ回転する
と共にY軸回りに微小角度+θY だけ回転し、これによ
って得られる回転後の新たな平面三次元直交座標系を基
準として大径穴13の内壁の各測定点PL のxy座標値
に基づき、原点Oからxy平面上の各測定点PL までの
距離、すなわち測定円半径RL を演算し、これらのうち
で最も小さな測定円半径RL を内接円半径RLMとして抽
出し、この内接円半径RLMが先の内接円半径RLMよりも
大きいか否かを判定する。そして、今回抽出した内接円
半径RLMが先の内接円半径RLMよりも大きい場合には、
更新された基準座標系の傾斜方向に問題はないので、さ
らにこの基準座標系をX軸およびY軸回りにそれぞれ微
小角度−θX , +θY だけ回転し、上述した操作を繰り
返して行く。
【0041】しかし、今回抽出した内接円半径RLMが前
回の内接円半径RLMよりも小さい場合には、更新した基
準座標系の傾斜方向が不適切であることから、今度は先
の基準座標系をX軸回りにのみ微小角度−θX だけ回転
し、これによって得られる回転後の新たな三次元直交座
標系を基準として大径穴13の内壁の各測定点PL のx
y座標値に基づき、原点Oからxy平面上の各測定点P
L までの距離、すなわち測定円半径RL を演算し、これ
らのうちで最も小さな測定円半径RL を内接円半径RLM
として抽出し、この内接円半径RLMが先の内接円半径R
LMよりも大きいか否かを判定する。そして、今回抽出し
た内接円半径RLMが先の内接円半径RLMよりも大きい場
合には、更新された基準座標系の傾斜方向に問題はない
ので、さらにこの基準座標系をX軸回りに微小角度−θ
X だけ回転し、上述した操作を繰り返して行く。
【0042】このようにして、以下、基準座標系をX軸
およびY軸回りにそれぞれ微小角度−θX , −θY だけ
回転し、これで問題がある場合にはY軸回りにのみ微小
角度−θY だけ回転し、これで問題がある場合にはX軸
およびY軸回りにそれぞれ微小角度+θX , −θY だけ
回転し、これでもだめな場合には再び最初の傾斜方向に
戻って上述した操作を繰り返して行く。そして、基準座
標系の傾斜方向を24回続けて更新してもその傾斜方向
が不適切である、すなわち内接円半径RLMの変動がほぼ
なくなったと判断した場合には、この時点での最終的な
内接円半径RLMを傾斜内接円半径RLOとして記録し、さ
らにS55のステップにて修正された基準座標系に対し
て最終的に更新された基準座標系のX軸回りの回転量お
よびY軸回りの回転量とを記録する。
【0043】上述したS56のステップにて回転移動の
適正化処理を行った後、S57のステップにて平行移動
の適正化処理による移動内接円半径RLOと、回転移動の
適正化処理による傾斜内接円半径RLTとの差が所定範囲
内にあるか否かを判定し、これが所定範囲内にないと判
断した場合には、更新された基準座標系に対して再びS
54〜S56のステップを繰り返す。
【0044】そして、平行移動の適正化処理による移動
内接円半径RLOと、回転移動の適正化処理による傾斜内
接円半径RLTとに差が所定範囲内に収まったと判断した
時点で、S58のステップにてこの傾斜内接円半径RLT
を最終内接円半径RLFとして記録すると共にその基準座
標系の傾きに基づき、図7に示すように最終的な基準座
標系を更新する。つまり、ここで記録される最終内接円
半径RLFが大径穴13に対する最大の幾何学的円筒面の
半径であり、最終的に更新された基準座標系のZ軸がこ
の大径穴13の軸線CL となる。
【0045】かかる大径穴13の内壁の測定点PL に対
するデータ処理を行った後、小径穴16の内壁の測定点
S に対するデータ処理を同様に行い、小径穴16に対
する最大の幾何学的円筒面の半径である最終内接円半径
SFを記録すると共にその基準座標系の傾きを記録す
る。この場合、最終的に更新された基準座標系のZ軸が
この小径穴16の軸線CS となる。
【0046】次に、大径穴13の軸線CL と小径穴16
の軸線CS とから、これらの共通軸線CC をS6のステ
ップにて設定する。この共通軸線CC を設定するに際
し、本実施例では図8に示すように大径穴13の軸線C
L に垂直で少なくとも一つの測定点PL をそれぞれ含む
二つの最も離れた幾何学的平面SLU ,SLDを設定し、こ
れら幾何学的平面SLU ,SLDと軸線CL との交点XLU ,
LDを求め、これら交点XLU ,XLD間の軸線CL の中点
L を設定する。同様に、小径穴16の軸線CSに垂直
で少なくとも一つの測定点PS をそれぞれ含む二つの最
も離れた幾何学的平面SSU ,SSDを設定し、これら幾何
学的平面SSU ,SSDと軸線CS との交点XSU ,XSDを求
め、これら交点XSU ,XSD間の軸線CS の中点MS を設
定する。そして、これら二つの中点ML , MS を通過す
る直線を共通軸線CC として設定している。
【0047】ところで、これら大径穴13および小径穴
16の同軸度は、大径穴13における前記交点XLU ,X
LDから共通軸線CC に下ろした垂線の足の長さの和
L 、および小径穴16における前記交点XSU ,XSD
ら共通軸線CC に下ろした垂線の足の長さの和HS のう
ち、大きいほうの長さで表すことができる。
【0048】そこで、Z軸方向からモータケーシング1
9を観察すると、図7に示すように大径部13の軸線C
L と小径部16の軸線CS とがどの方向にどれだけずれ
ているかを理解することができるので、これに基づいて
図示しない金型における大径部13の軸線CL の向きお
よび位置と、小径部16の軸線CS の向きおよび位置と
を調整することにより、これらの同軸度を所望の範囲に
収めることができる。
【0049】なお、同軸度の別な表し方としては、図9
に示すように、大径穴13における前記中点ML から小
径穴16の軸線CS に下ろした垂線の足の長さhL 、お
よび小径穴16における前記中点MS から大径穴13の
軸線CL に下ろした垂線の足の長さhs のうち、大きい
ほうの長さで表すこともできる。
【0050】一方、S4のステップにて測定された測定
点PF の座標値(XF1, YF1, ZF1), (XF2, YF2,
F2)・・・(XFn, YFn, ZFn)に対してS7のステ
ップにて座面データ処理を行う。
【0051】すなわち、S6のステップにて設定した共
通軸線CC に対して垂直かつ座標原点Oを含む幾何学的
平面、すなわち基準座標系のXY平面を設定し、この幾
何学的平面に対する座面11の測定点PF のZ軸方向の
ずれを演算する。
【0052】しかる後、S7のステップにて上述した演
算結果に基づき、座面11の修正加工を行う。ここで、
正の方向に測定点PF がずれている場合、これと対応す
る金型の部分に肉盛加工を行って、切削し直すと良い。
また、負の方向に測定点PFがずれている場合には、単
にこのずれの量に対応した量だけ金型を切削することで
対応することができる。
【0053】ただし、フランジ部12の厚みや大径部1
3の長さ等の寸法が許容可能な範囲であれば、肉盛加工
を行わずに切削加工だけで金型の修正を行うことも可能
であり、この場合には正の方向の最大のずれの量を基準
としてすべてのずれの量が負となるように、座面11の
修正量を補正すれば良い。
【0054】なお、本実施例では段付き穴に対して説明
したが、段部を有しない円形の穴が形成されたワークに
対しても、上述した手順と同様な手順によって穴の軸線
を設定することができ、さらにこの軸線に対して垂直な
平面からの座面あるいは穴端面の傾き、すなわち直角度
を把握し、その修正を行うことができる。
【0055】
【発明の効果】本発明によると、ワークに形成された円
形の穴の内壁の全域に亙って6箇所以上の点の三次元位
置座標を測定し、これらの測定点の少なくとも1つを含
み、内側に他の測定点を含まない幾何学的円筒面を形成
し、これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒
面を選択し、この最大径の幾何学的円筒面の軸線を穴の
軸線として選択するようにしたので、円形の穴に対する
軸線を再現性高く適切に設定することができる。
【0056】また、ワークの端面の複数箇所の三次元位
置座標を測定し、これらの測定点と穴の軸線に対して垂
直な幾何学的平面とのずれを算出するようにしたので、
円形の穴が開口するワーク端面の傾斜状態を高い再現性
で適切に把握することができる。
【0057】さらに、ワークのフランジ部に形成された
座面の複数箇所の三次元位置座標を測定し、座面に対す
るこれらの測定点と穴の軸線に対して垂直な幾何学的平
面とのずれを算出し、このずれの量に基づいて座面の修
正加工を行うようにしたので、円形の穴が開口するワー
クのフランジ部に形成された座面の修正加工を効率良く
適切に行うことができる。特に、成型加工に用いられる
金型の修正作業が容易となるので、成型品を修正加工す
る場合よりも生産コストを大幅に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をモータケーシングに応用した一実施例
の処理手順を表すフローチャートである。
【図2】本実施例の対象となったモータケーシングの破
断構造を表す斜視図である。
【図3】本実施例における穴内壁データ処理の手順を表
すフローチャートである。
【図4】本実施例における内接円半径RL1の概念を表す
XY平面図である。
【図5】基準座標系をX軸回りに回転した状態を表す斜
視図である。
【図6】基準座標系をY軸回りに回転した状態を表す斜
視図である。
【図7】本実施例における穴の内壁の測定点をプロット
したXY平面図である。
【図8】穴の同軸度の設定方法を説明するための概念図
である。
【図9】穴の同軸度の他の設定方法を説明するための概
念図である。
【符号の説明】
11 座面 12 フランジ部 13 大径穴 14 大径筒部 15 段部 16 小径穴 17 小径筒部 18 ボルト貫通孔 19 モータケーシング CC 共通軸線 CL 大径穴の軸線 CS 小径穴の軸線 O 座標系の原点 PL 大径穴の内壁の測定点 PS 小径穴の内壁の測定点 RL 大径穴に内接する幾何学的円筒の半径 RS 小径穴に内接する幾何学的円筒の半径 OA 測定平均中心 RLM 内接円半径 RLO 移動内接円半径 RLT 傾斜内接円半径 RLF 最終内接円半径 OI 内接円中心 SLU ,SLD 幾何学的平面 XLU ,XLD 交点 ML ,MS 中点 SSU ,SSD 幾何学的平面 XSU ,XSD 交点 HL , HS 垂線の足の長さの和 hL , hS 垂線の足の長さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 赤城 貴 神奈川県横浜市港北区新吉田町4997 デ ュポン株式会社 中央技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭49−29857(JP,A) 特開 昭59−231407(JP,A) 実開 昭56−17504(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01B 21/00 - 21/32

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワークに形成された円形の穴の内壁の
    域に亙って6箇所以上の点の三次元位置座標を測定する
    ステップと、 これらの測定点の少なくとも1つを含み、内側に他の測
    定点を含まない幾何学的円筒面を形成するステップと、 これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒面を
    選択するステップと、 この最大径の幾何学的円筒面の軸線を前記穴の軸線とし
    て選択するステップとを具えたことを特徴とする穴の軸
    線設定方法。
  2. 【請求項2】 ワークに形成された端面に開口する円形
    の穴の内壁の全域に亙って6箇所以上の点の三次元位置
    座標を測定するステップと、 これらの測定点の少なくとも1つを含み、内側に他の測
    定点を含まない幾何学的円筒面を形成するステップと、 これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒面を
    選択するステップと、 この最大径の幾何学的円筒面の軸線を前記穴の軸線とし
    て選択するステップと、 前記ワークの端面の複数箇所の三次元位置座標を測定す
    るステップと、 これらの測定点と前記穴の軸線に対して垂直な幾何学的
    平面とのずれを算出するステップとを具えたことを特徴
    とするワーク端面の傾斜測定方法。
  3. 【請求項3】 フランジ部から突出する筒部に形成され
    たワークの円形の穴の内壁の全域に亙って6箇所以上の
    の三次元位置座標を測定するステップと、 これらの測定点の少なくとも1つを含み、内側に他の測
    定点を含まない幾何学的円筒面を形成するステップと、 これら幾何学的円筒面のうち最大径の幾何学的円筒面を
    選択するステップと、 この最大径の幾何学的円筒面の軸線を前記穴の軸線とし
    て選択するステップと、 前記ワークのフランジ部に形成された座面の複数箇所の
    三次元位置座標を測定するステップと、 前記座面に対するこれらの測定点と前記穴の軸線に対し
    て垂直な幾何学的平面とのずれを算出するステップと、 このずれの量に基づいて前記座面の修正加工を行うステ
    ップとを具えたことを特徴とする座面の修正加工方法。
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