JP3511380B1 - 低温凝縮型の水電解装置及びこれを利用した質量分析の前処理方法 - Google Patents
低温凝縮型の水電解装置及びこれを利用した質量分析の前処理方法Info
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Abstract
の水分を100%電気分解することができ、よってごく
微量の水分であっても水素同位体比・酸素同位体比の迅
速な分析を可能とすることができる水電解装置及びこれ
を利用した質量分析の前処理方法を提供すること。 【解決手段】白金、イリジウム、ロジウム又はイリジウ
ム−ロジウム合金を無電解メッキしたフッ素樹脂系イオ
ン交換膜を、白金メッキした多孔質チタンからなる陽極
及び、0℃における熱伝導率が100W・m−1・K
−1以上である金属からなる陰極で挟んであり、前記陽
極及び前記陰極を露点以下に冷却することにより、陰極
側に注入して接触させた水分を凝縮させて、陽極−陰極
間に直流電流を印加することにより、定電圧定電流にて
電気分解をして、陽極で酸素ガスを発生させ、陰極で水
素ガスを発生させる。
Description
れを利用した質量分析の前処理方法に関する。更に詳し
くは、水の水素安定同位体又は酸素安定同位体について
の低温凝縮型の水電解装置及びこれを利用した質量分析
の前処理方法に関するものである。
有される水素・酸素安定同位体比を測定することによ
り、過去の地球環境変動の推定や未来の予測をする研究
が盛んであり、そのための質量分析装置の開発もされて
いる(例えば、特許文献1参照)。例えば、降水試料の
同位体組成は、特徴的な季節変動を示し、降水の起源が
季節により変化していることを示唆する等、重要な情報
となりうる。大型事業などによる建設計画のアセスメン
トの際に地下水の流動状況変化などを追跡する指標とも
なっている。
段落)
金属に対して親和力の高い吸着性ガスであることから、
水素同位体は水素ガスの形で、酸素同位体は主に二酸化
炭素ガスの形あるいはまれに酸素ガスの形で、別々に測
定される。従来の質量分析の前処理方法としては、還元
法や平衡法がある。還元法は、真空中で高温に加熱され
たウランや亜鉛等の金属表面と水を反応させることで水
分子を還元して水素ガスを発生させて、この水素ガスを
直接質量分析装置に導入する方法である(例えば、非特
許文献1参照)。また、平衡法は、白金触媒存在下で水
と水素ガスを一定温度で化1のように同位体交換平衡反
応をさせる方法である。
976年、丸善、p.485
おいては、真空装置が必要であり、反応に用いる白金触
媒が高価であり、表面が酸化されないように維持するこ
とが困難であることという問題があった。また、上記非
特許文献1記載の平衡法においては、化1の同位体交換
平衡に達するまでに1時間以上必要であり、自動分析装
置が高価であることという問題があった。
酸素安定同位体比分析としては、平衡法や酸化法があ
る。平衡法は、水と二酸化炭素ガスを一定温度で化2の
ように同位体平衡反応させる方法である(例えば、非特
許文献2参照)。また、酸化法は、五フッ化臭素等のフ
ッ化物を利用して水を酸化させて酸素ガスを取り出す方
法である(例えば、非特許文献2参照)。
976年、丸善、p.486−p.491
衡法においては、化2の同位体交換平衡に達するまでに
通常10時間以上必要であること、12C17O16O
と13C16O16Oとはほぼ質量が同じであるため、
低分解能の同位体測定用質量分析装置で17Oの分析が
不可能であること、自動分析装置が高価であることとい
う問題があった。また、上記非特許文献2記載の従来の
酸化法においては、真空装置が必要であること、五フッ
化臭素等の取り扱いが困難であること、また、水素ガス
を酸素ガスと同時には取り出せないという問題があっ
た。
うに等質量では計測できないという制約がないので、
17Oの分析は可能であるが、極めて専門性の高い分析
方法であり、また、精度も現時点では質量分析法に劣っ
ている。
て白金を、カソードとして酸素フリーのカーボン電極を
入れて、1槽式電解槽で電解して酸素ガスを取り出して
17Oの質量分析をしようとする研究が行われている
(例えば、非特許文献3参照)。
W.J.LI,THE USE OF ELECTRO
LYSIS FOR ACCURATE δ17O A
ND δ18O ISOTOPE MEASUREME
NTS IN WATER, “Isotopes E
nviron. Health Stud.,”,
(India),1998年,Vol.34,p.34
9−369
は、電解質を加える必要があり、しかも、かかる電解質
の添加が、発生ガスの質量分析時の測定誤差要因や、質
量分析装置の故障原因となる恐れがある。また、かかる
方法では、酸素しか取り出せず、水素同位体を取り出す
ことができない。また、質量分析するのに十分な量の酸
素ガスを取り出すのに40分かかる。
ガスが混合した状態でしか取り出すことができなかった
ので、同一試料水の酸素安定同位体比分析又は水素安定
同位体比分析を行うには、得られた酸素ガスと水素ガス
の混合気体から酸素ガスと水素ガスを分離するという繁
雑な作業が必要であった。
位体、酸素安定同位体を水素ガス(1H2H、1H1H
等)、酸素ガス(16O17O、16O18O、16O
16O等)の形で試料から直接、しかも迅速に取り出す
ことができる水電解装置を開発した。
素の同位体比の測定法では、質量の軽い原子の方が早く
電解されるために、正確な同位体比を測定するために
は、過剰の量の試料水を電解し、その誤差を少なくする
方法が用いられていた。しかし、成層圏の水分、南極の
アイスコアの水、地球内部の高深度の鉱物中の水分・水
蒸気等はほんの微量しか取り扱うことができない。ま
た、正確な同位体比を求めるためにはその微量な水を1
00%電気分解することが必要で、従来の電解法では不
可能であった。特に水蒸気中の水分を電解することは、
更に不可能なことであった。
な水や、水蒸気等の気体や岩石等の固体中の水分を10
0%電気分解することができない点である。
のであり、したがって、本発明の目的は、微量な水や、
水蒸気等の気体や岩石等の固体中の水分を100%電気
分解することができ、よってごく微量の水分であっても
水素同位体比・酸素同位体比の迅速な分析を可能とする
水電解装置及び質量分析の前処理方法を提供することに
ある。本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意
研究を重ねた結果、試行錯誤の上、本発明を完成するに
至った。
解装置は、含有する水分量が10μL以下である気体若
しくは固体から取り出した水分又は水量が10μL以下
である水を電解する装置であって、白金、イリジウム、
ロジウム又はイリジウム−ロジウム合金を無電解メッキ
したフッ素樹脂系イオン交換膜を、白金メッキした多孔
質チタンからなる陽極及び、0℃における熱伝導率が1
00W・m−1・K−1以上である金属からなる陰極で
挟んであり、前記陽極及び前記陰極を露点以下に冷却す
ることにより、陰極側に注入して接触させた水分を凝縮
させて、陽極−陰極間に直流電流を印加することによ
り、定電圧定電流にて電気分解をして、陽極で酸素ガス
を発生させ、陰極で水素ガスを発生させることを特徴と
するものである。
銅やベリリウムなどが挙げられる。熱伝導率の高さのみ
ならず、コスト及び耐食性の点で、特に銅が適してい
る。
陽極及び前記陰極を露点以下に冷却する手段が、各電極
表面に接触させた、水冷ジャケットを有する電子冷却素
子である。
結させて、酸素や水素の同位体比を測定するのに特に適
している。
前記陽極で発生させた酸素ガス及び陰極で発生させた水
素ガスに含まれる質量分析を妨害する残留気体の除去手
段を有する。
前記質量分析を妨害する残留気体の除去手段として、電
気分解セル及び配管の排気手段及び残留気体吸着手段を
有する。
電気分解を行うセル及び配管を排気し、かつ前記陽極で
発生させた酸素ガス及び陰極で発生させた水素ガスの除
湿を行うことすることにより、水分を質量分析装置に混
入させない。
は酸素についての質量分析をするための試料前処理であ
って、含有する水分量が10μL以下である気体若しく
は固体から取り出した水分又は水量が10μL以下であ
る水から取り出した水分を露点以下に冷却して電気分解
し、水素ガス又は酸素ガスを別々に取り出すことを特徴
とするものである。
試料が、含有する水分量が10μL以下である気体若し
くは固体又は水量が10μL以下である水であっても、
冷却して水分を凝縮させることにより、全ての水分を電
気分解して、水素ガス及び/又は酸素ガスとして取り出
すことにより、水素単体及び/又は酸素単体で直接に水
素同位体比(D/H)及び/又は酸素同位体比(1 8O
/1 6O、17O/1 6O)の分析を可能とすることを特
徴とするものである。
くは、白金、イリジウム、ロジウム又はイリジウム−ロ
ジウム合金を無電解メッキしたフッ素樹脂系イオン交換
膜を、白金メッキした多孔質チタンからなる陽極及び、
0℃における熱伝導率が100W・m−1・K−1以上
である金属からなる陰極で挟んであり、前記陽極及び前
記陰極を露点以下に冷却することにより、陰極側に注入
して接触させた水分を凝縮させて、陽極−陰極間に直流
電流を印加することにより電解槽で前記電気分解を行う
ことを特徴とするものである。
方法は、上述したとおりであるので、微量な水や、水蒸
気等の気体や岩石等の固体中の水分を100%電気分解
することができ、よってごく微量の水分であっても水素
同位体比・酸素同位体比の迅速な分析を可能とする。
試料となる水分を、陰極に接触させることである。従来
は、一般に、陽極に試料水を接触させていた。この場
合、プロトンと共に試料水も陰極に移動するため、全て
の水を電解することができない。本発明においては、陰
極側に電解試料となる水分を接触させ、イオン交換膜に
吸水させることにより水分の移動はなくなり、ほぼ全て
の水分を電気分解してガスを発生させることが可能とな
る。
を露点以下にすることである。これにより電気分解によ
って発生したガス中の水分も、再度、結露凝縮して電極
に接触するため、電解試料である水分が、発生したガス
の中に水蒸気として混合して外部に出ることが非常に少
なくなる。すなわち、電解試料である水分を100%電
気分解できるとともに、発生ガスに水分がほとんど混入
せず、質量分析において精度が向上するため、非常に有
効である。
構成図である。図2は、本発明の質量分析の前処理方法
の実施例1の外観図である。図1に示した本発明の実施
例1の水電解装置(24)は、イオン交換膜(5)を陰
極板(2)と陽極板(3)の間に挟んだ構成の2槽式の
電解槽(1)、水素捕集管(12)、酸素捕集管(1
3)、U字管(11a、11b)、真空ポンプ(20)
を有する。本発明の実施例1の水電解装置(24)は、
質量分析装置における水素同位体比測定や酸素同位体比
測定の試料前処理に用いることができる。
は、電解槽(1)は、イオン交換膜(5)で仕切られ
た、陰極側のセルと陽極側のセルからなる電解セル(1
6)を有する。陰極側のセルは、試料水注入口(23)
を有し、内部に陰極板(2)が設けてある陰極室(4)
となっている。陽極側のセルの内部には陽極板(3)が
設けてある。陰極板(2)と陽極板(3)は、共にイオ
ン交換膜(5)に密着させてある。
(1)の外側まで延び、それぞれ、冷却手段を有する。
冷却手段として、水冷ジャケット(7)を有する電子冷
却素子(6)が、陰極板(2)と陽極板(3)に設けら
れている。本発明の水電解装置の実施例1においては、
電子冷却素子(6)としてペルチェ素子を用いる。ペル
チェ素子はペルチェ効果を利用して、電流と共に熱を輸
送し温度差を作り出す半導体素子であり、高温側の温度
上昇を放熱によって抑えることによって、低温側をより
低温にすることが可能である。
(8)が接続されている。また、水冷ジャケット(7)
には流量スイッチ(19)が付いていて、もし、冷却水
が止まった場合には、冷却素子用電源(8)をOFFに
して電子冷却素子(6)の焼損を防止する。陰極板
(2)表面に接触させた温度センサ(14)と接続した
温度調節器(15)によって、冷却素子用電源(8)の
ON−OFFすることにより、陰極板(2)と陽極板
(3)を、露点以下に冷却する。
タンからなる。一方、陰極板(2)は、0℃における熱
伝導率が100W・m−1・K−1以上である金属から
なる。熱伝導率が低いと、陰極板(2)の温度が十分に
下がらず、微量の水や水蒸気を全量電解することが困難
となる。本発明の水電解装置の実施例1においては、陰
極板(2)としては、銅を用いるが、金、銀、銅やベリ
リウムなどでも良い。銅は、熱伝導率が高い上に、コス
トも安い。本発明の水電解装置の実施例1において陰極
板(2)に用いる銅板は、耐食性を向上するために、ク
ロームめっきし、更に白金めっきを施している。陰極板
(2)及び陽極板(3)には、直流の電解用電源(9)
が接続されている。
したフッ素樹脂系のものを用いた。無電解メッキするの
は、白金以外にイリジウム、ロジウム又はイリジウム−
ロジウム合金も適する。白金、イリジウム、ロジウム又
はイリジウム−ロジウム合金を無電解メッキしたフッ素
樹脂系イオン交換膜は、ガスバリア性が汎用のイオン交
換膜より極めて高い。また、イオン交換膜と電極との接
触抵抗が低く、イオン交換膜の比抵抗も低いため、電解
効率が高い。
室(4)へ注入される。試料水としては、例えば、南極
の氷を融解させたものや、雨水、地下水等がある。試料
とする水蒸気としては、例えば、空気中の水蒸気や、試
料水容器中に蒸発して発生した水蒸気等がある。
試料水注入口(23)に加熱手段を設けた試料室をつな
げる。そして、試料室中に試料である固体を入れて、固
体中の水分を加熱により水蒸気とし、電解セル側からの
真空引きにより試料水注入口(23)から陰極室(4)
へ導く。
給する。陽極板(3)側には電解試料である水分を供給
しない。陽極板(3)側に水分を供給すると、プロトン
と共に水分が陽極から陰極に移動し、移動した水分が水
素ガスと共に出ていくので電気分解に寄与しないためで
ある。陰極室(4)に導入された水分は、陰極板−陽極
板間に直流電流を印加することにより電気分解される。
電気分解により、陽極板(3)の表面で酸素ガスを発生
する。
を隔てて設けられた陰極板(2)の表面では水素ガスが
発生する。陽極板(3)の表面で発生した酸素ガスは、
陽極板(3)が多孔質であること及びイオン交換膜
(5)のガスバリア性が高いことから、陰極室(4)に
移動することはない。
いては、陽極で発生させた酸素ガス及び陰極で発生させ
た水素ガスに含まれる、質量分析を妨害する残留気体の
除去手段を有する。質量分析を妨害する残留気体として
は、アルゴン、ヘリウム、窒素ガスなどがある。本発明
の水電解装置の実施例1における当該除去手段は、電気
分解セル及び配管の排気手段及び残留気体吸着手段であ
る。
おいては、電気分解を行うセル及び配管の排気手段、並
びに、陽極で発生させた酸素ガス及び陰極で発生させた
水素ガスの除湿手段を有し、質量分析を妨害する原因と
なる水分を質量分析装置に混入させない。本発明の水電
解装置は、電気分解によって発生したガス中の水分も、
再度、結露凝縮して電極に接触するため、発生ガスに水
分がほとんど混入しないが、たとえ僅かにでも混入した
水分は当該除湿手段により除去される。
して、より具体的には、真空ポンプ(20)を有する。
解セル(16)及び配管を真空排気することができる。
これにより、真空ライン内への水素・酸素以外の気体、
例えば水蒸気や窒素ガス等、の混入を防ぐことができ、
もって、かかるガスの質量分析を行う際に質量分析装置
に残留気体が混入することを防ぐことができる。
は、モレキュラーシープを充填したU字管(11a、1
1b)を、一旦、液体窒素冷媒で冷却して、その後エタ
ノールと液体窒素を混合した冷媒で冷却することにより
質量分析を妨害する気体をトラップする手段を有する。
液体窒素冷媒は、−176℃、液体窒素エタノール冷媒
は、−123℃である。したがって、液体窒素による冷
却によりモレキュラーシープに捕集された酸素ガス、水
素ガス、窒素ガス、アルゴン、ヘリウム等のガスのう
ち、酸素ガスと水素ガスは、液体窒素エタノール冷媒に
よる冷却に切り替えると、モレキュラーシープから放出
されることとなる。
には、モレキュラーシープを充填したU字管(11a)
を用いるが、陽極側のU字管(11b)には、モレキュ
ラーシープを充填しないで、また、液体窒素による冷却
をせず、液体窒素エタノール冷媒による冷却することに
より残留気体を吸着するという手段を採用することもで
きる。
素吸蔵合金を充填した水素捕集管(12)を有し、放出
された酸素ガスの捕集手段として、モレキュラーシープ
を充填した酸素捕集管(13)を有する。水素捕集管
(12)と酸素捕集管(13)は、液体窒素で冷却す
る。
実施例1のフロー図である。まずは、図1に示した本発
明の実施例1の水電解装置(24)の全ての二方バルブ
(21)と一方二方バルブ(22)を「OPEN」にし
て、水電解装置(24)の全ての配管(10)からガス
を排気する。真空度は、真空計(18a、18b)で測
定する。次に、全ての二方バルブ(21)と一方二方バ
ルブ(22)を「CLOSE」にする。
SE」にして、電解セル(16)に、試料水注入口(2
3)より、試料水又は水蒸気を導入して密閉する。次
に、ペルチェ素子からなる電子冷却素子(6)により陰
極板(2)を冷却し、水蒸気中の水分については電極上
に凝縮させる。つづいて、真空排気を行い、電解セル内
から微量に含まれる質量分析を妨害する残留気体を除去
することが望ましい。
った試料水又は水分を電気分解する。すると、陰極側に
水素ガスが、陽極側に酸素ガスが発生する。
b、21c、21e)を「OPEN」にする。そして、
U字管(11a、11b)を液体窒素で冷却し、電解セ
ル(16)からに導いたガスを、モレキュラーシープを
充填したU字管(11a、11b)で一旦捕集する。U
字管(11a、11b)の液体窒素を液体窒素エタノー
ルに付け替え、酸素・水素ガスのみを放出させる。
体窒素で冷却し、電解セル(16)からに導いたガス
を、モレキュラーシープを充填したU字管(11a)で
一旦捕集し、U字管(11a)の液体窒素を液体窒素エ
タノールに付け替え、水素ガスのみを放出させ、一方、
陽極側のU字管(11b)は、やはりモレキュラーシー
プを充填するが、冷却は液体窒素エタノール冷媒(−1
23℃)で行って酸素ガスのみを放出させてもよい。
を「OPEN」にする。この際、絶対圧力計(17a、
17b)でガス圧を測定する。水素ガスは、液体窒素で
冷却した水素捕集管(12)中の水素吸蔵合金に吸着さ
れる。また、酸素ガスは、液体窒素で冷却した酸素捕集
管(13)中のモレキュラーシープに吸着される。絶対
圧力計(17a、17b)でガス圧を測定しながら完全
に吸着されたことを確認する。ガス吸着後、水素捕集管
(12)及び酸素捕集管(13)は、バーナーで封じ切
る。
た水素ガスと、酸素捕集管(13)に捕集された酸素ガ
スは、質量分析装置で、それぞれ質量分析装置で分析す
る。
ため、18Oより17Oの方が早く電解される。したが
って、電解により試料水が著しく減少すると、徐々に
18Oが濃縮されてきて、最初の頃に発生したガス中の
安定同位体存在比と、電解終了頃に発生したガス中の安
定同位体存在比が異なるという結果になる。しかし、本
発明によれば、試料水の全量を電解して酸素ガス、水素
ガスを取り出す。さらに、標準物とサンプルを同条件で
得ることができるので、かかる問題は生じない。また、
試料水から酸素ガス、水素ガスを得るのに必要な時間は
わずか数分である。しかも、酸素ガスと水素ガスを、電
解と同時に分離して試料水から取り出して分析できる。
理をした後に測定される。水素同位体比は、数1で算出
される値、δDである。試料水中における1Hに対する
重水素(2HまたはD。数1においては「2H(D)」
と表わす。)の存在比から標準物質中における1Hに対
する2H(D)の存在比を差し引いた値を、標準物質中
における1Hに対する2H(D)の存在比で除した値
に、1000を乗じた値である。
前処理をした後に測定される。酸素安定同位体比は、数
2で算出される値、δ17Oである。また、δ18Oは
数3で算出される値である。
電気分解によって発生したガス以外の妨害ガスが混入し
ない。したがって、本発明によれば、例えば硫酸銅等の
電解質を加えることにより引き起こされる質量分析時の
諸問題を回避することができる。
水素安定同位体、酸素安定同位体を水素ガス(1H
2H、1H1H等)、酸素ガス(16O17O、16O
18O、16O16O等)の形でごく微量の試料水や水
蒸気から直接、しかも迅速に、分離して取り出すことが
できるので、微量な水や、水蒸気等の気体や岩石等の固
体中の水分を100%電気分解することができ、よって
ごく微量の水分であっても水素同位体比・酸素同位体比
の迅速な分析を可能とする微量な水や、水蒸気等の気体
や岩石等の固体中の水分を100%電気分解することが
でき、よってごく微量の水分であっても水素同位体比・
酸素同位体比の迅速な分析を可能とする。
いては、バルブの開閉によって、配管(10)内のガス
抜きができる仕組みとなっている。酸素捕集管(13)
及び水素捕集管(12)のバルブは、ガス採集時以外は
閉めてあるので、そのような場合に配管(10)内へガ
スが供給され続けて内圧が上昇して破裂するのを防止す
るため、配管(10)内のガスを外部へ逃がすことがで
きるようになっている。かかる作用によって、安全性を
向上させることができる。また、試験終了毎或いは試験
開始毎に配管(10)内のガス抜きをすることによっ
て、前回試験したときに残っているガスが、次回試験す
るときに混在しないようにできる。したがって、質量分
析の測定結果の信頼性が向上する。
入しないので、質量分析装置の故障や誤測定が生じにく
くなり、より正確な測定が可能となるという効果があ
る。また、破裂防止という、安全性向上の効果もある。
は、含有する水分量が10μL以下である気体若しくは
固体から取り出した水分又は水量が10μL以下である
水から取り出した水分を露点以下に冷却して電気分解
し、水素ガス又は酸素ガスを別々に取り出すため、微量
な水や、水蒸気等の気体や岩石等の固体中の水分を10
0%電気分解することができ、よってごく微量の水分で
あっても水素同位体比・酸素同位体比の迅速な分析を可
能とする。
位体存在比は、16O:17O:18O=99.76
2:0.038:0.200と言われている。酸素同位
体17Oは、18Oと異なり、水、二酸化炭素や一酸化
二窒素等、酸素と他の元素との化合物の形では、水素同
位体D、炭素同位体13Cや窒素同位体15Nの存在に
より、質量分析装置で測定することができない。例え
ば、14N15N16Oの分子量は44.998097
60であり、14N2 17Oの分子量45.00527
90とは、共に質量数が45のために既存の低分解能の
質量分析装置では区別ができない。また、13C16O
2の分子量は44.9931840で、13C16O
17Oの分子量は44.9940456と、より差が小
さく、既存の高分解能の質量分析装置(例えば、特許文
献1参照)でも計測できない。
の実施例1は、水、二酸化炭素又は一酸化二窒素といっ
た化合物では同質量数ピークと重なって直接計測不可能
だった、ごく微量の水や水蒸気等の気体若しくは岩石等
の固体中に含まれる酸素同位体17Oについて、冷却し
て電気分解し、酸素ガスとして取り出すことによって、
酸素単体で直接に酸素同位体17Oを分析する。本発明
の質量分析の前処理方法の実施例1によれば、試料水を
電気分解して酸素ガス、水素ガスを別々に取り出し、酸
素ガスのままで質量分析装置に導入することができる。
17O16O(質量数33)と16O16O(質量数3
2)の質量の違いは既存の低分解能の同位体計測用質量
分析装置により判別可能であるので、試料水中の17O
存在比を高精度で知ることができる。
によれば、水素安定同位体、酸素安定同位体を水素ガス
(1H2H、1H1H等)、酸素ガス(16O17O、
16O18O、16O16O等)の形で試料水から直
接、しかも迅速に(数分で)取り出すことができるの
で、簡易に、安全に、安価に、そして、ごく短時間で、
多数の微量の水や水蒸気を試料とする分析が可能で、し
かも17Oの迅速な分析ができる。
方法の利用は、成層圏の水分、南極のアイスコアの水
や、地球内部の高深度の鉱物中の水分・水蒸気等、ほん
の微量しか取り扱うことができない試料の測定に役立
ち、さらには、過去の地球環境変動の推定や未来の予測
に役立つ。
る。
観図である。
ロー図である。
Claims (8)
- 【請求項1】含有する水分量が10μL以下である気体
若しくは固体から取り出した水分又は水量が10μL以
下である水を電解する装置であって、 白金、イリジウム、ロジウム又はイリジウム−ロジウム
合金を無電解メッキしたフッ素樹脂系イオン交換膜を、 白金メッキした多孔質チタンからなる陽極及び、0℃に
おける熱伝導率が100W・m−1・K−1以上である
金属からなる陰極で挟んであり、 前記陽極及び前記陰極を露点以下に冷却することによ
り、陰極側に注入して接触させた水分を凝縮させて、 陽極−陰極間に直流電流を印加することにより、定電圧
定電流にて電気分解をして、 陽極で酸素ガスを発生させ、陰極で水素ガスを発生させ
ることを特徴とする水電解装置。 - 【請求項2】前記陽極及び前記陰極を露点以下に冷却す
る手段が、各電極表面に接触させた、水冷ジャケットを
有する電子冷却素子であることを特徴とする請求項1記
載の水電解装置。 - 【請求項3】前記陽極で発生させた酸素ガス及び陰極で
発生させた水素ガスに含まれる質量分析を妨害する残留
気体の除去手段を有することを特徴とする請求項1記載
の水電解装置。 - 【請求項4】前記質量分析を妨害する残留気体の除去手
段として、電気分解セル及び配管の排気手段及び残留気
体吸着手段を有することを特徴とする請求項3記載の水
電解装置。 - 【請求項5】電気分解を行うセル及び配管を排気し、か
つ前記陽極で発生させた酸素ガス及び陰極で発生させた
水素ガスの除湿を行うことすることにより、水分を質量
分析装置に混入させないことを特徴とする請求項1記載
の水電解装置。 - 【請求項6】水素又は酸素についての質量分析をするた
めの試料前処理であって、含有する水分量が10μL以
下である気体若しくは固体から取り出した水分又は水量
が10μL以下である水から取り出した水分を露点以下
に冷却して電気分解し、水素ガス又は酸素ガスを別々に
取り出すことを特徴とする質量分析の前処理方法。 - 【請求項7】試料が、含有する水分量が10μL以下で
ある気体若しくは固体又は水量が10μL以下である水
であっても、冷却して水分を凝縮させることにより、全
ての水分を電気分解して、水素ガス及び/又は酸素ガス
として取り出すことにより、水素単体及び/又は酸素単
体で直接に水素同位体比(D/H)及び/又は酸素同位
体比(1 8O/1 6O、17O/1 6O)の分析を可能と
することを特徴とする質量分析の前処理方法。 - 【請求項8】白金、イリジウム、ロジウム又はイリジウ
ム−ロジウム合金を無電解メッキしたフッ素樹脂系イオ
ン交換膜を、 白金メッキした多孔質チタンからなる陽極及び、0℃に
おける熱伝導率が100W・m−1・K−1以上である
金属からなる陰極で挟んであり、 前記陽極及び前記陰極を露点以下に冷却することによ
り、陰極側に注入して接触させた水分を凝縮させて、 陽極−陰極間に直流電流を印加することにより電解槽で
前記電気分解を行うことを特徴とする請求項6又は請求
項7記載の質量分析の前処理方法。
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