JP3507858B2 - 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物 - Google Patents

植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物

Info

Publication number
JP3507858B2
JP3507858B2 JP32940099A JP32940099A JP3507858B2 JP 3507858 B2 JP3507858 B2 JP 3507858B2 JP 32940099 A JP32940099 A JP 32940099A JP 32940099 A JP32940099 A JP 32940099A JP 3507858 B2 JP3507858 B2 JP 3507858B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
expression
plants
gus
foreign genes
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP32940099A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001145491A (ja
Inventor
惇彦 新名
和哉 吉田
晃 加藤
進吾 長屋
道夫 柴田
竜太郎 間
Original Assignee
奈良先端科学技術大学院大学長
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 奈良先端科学技術大学院大学長 filed Critical 奈良先端科学技術大学院大学長
Priority to JP32940099A priority Critical patent/JP3507858B2/ja
Priority to US09/711,933 priority patent/US6573429B1/en
Publication of JP2001145491A publication Critical patent/JP2001145491A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3507858B2 publication Critical patent/JP3507858B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/82Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
    • C12N15/8216Methods for controlling, regulating or enhancing expression of transgenes in plant cells
    • C12N15/822Reducing position variability, e.g. by the use of scaffold attachment region/matrix attachment region (SAR/MAR); Use of SAR/MAR to regulate gene expression

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物細胞において
外来遺伝子の発現を安定化させるDNA断片、及び外来
遺伝子を植物細胞において安定に発現させるための遺伝
子導入方法、更には外来遺伝子を安定に発現させた形質
転換植物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】植物に種々の性質を付与する目的で、外
来の遺伝子を導入した形質転換植物が作製されている
が、その場合に個体間による導入遺伝子発現のばらつき
が大きいことが問題となる。このばらつきは、導入され
た染色体上の位置によると考えられている。外来遺伝子
が活性化クロマチン領域に挿入された場合には高い発現
が得られ、反対に不活性化クロマチン(ヘテロクロマチ
ン)領域に挿入された場合には十分な発現が得られない
とされ(Galli,1:166-172,Current opinion in plant t
echnology (1998) 1:166-172, Matzke et al.,Current
opinion in plant technology (1998) 1: 142-148 )、
このような現象は「ポジション効果」と呼ばれている。
このようなポジション効果のために植物に導入した外来
遺伝子は、しばしば全く発現しないか、発現しても弱い
か、あるいは発現しても植物の成長や外環境により発現
しなくなることがある。この現象は遺伝子組み換え植物
の商業化に際し障害となっており、導入遺伝子の発現を
安定化する手法の確立が必要とされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、多様な遺伝子を
導入した形質転換体の解析から、例外的に染色体上の導
入位置に依存せずに発現する現象が見出され、その後の
解析から、そのような現象は3つのケースに大別されて
いる。すなわち、インスレーター、LCR(locus
control region)およびMAR(ma
trix attachment region)の関
与が示唆され、これら三者は作用機構は異なるが染色体
上の境界として機能し、周辺のクロマチンの影響を遮断
すると考えられている。
【0004】ポジション効果を抑制して、植物において
導入遺伝子の安定した発現を得る目的で、上述したMA
Rが利用されている。MARは、アデニン、チミン(A
T)リッチな配列、トポイソメラーゼIIの認識配列を
含むなどの特徴を持ち、インビトロで核膜結合活性を有
する機能領域である。染色体上では、10〜100kb
に一つは存在しているとされ、これらの領域を介して染
色体は核膜と結合して高次構造を形成している。MAR
は、染色体を限られたスペースである核内にコンパクト
に収めるために必須の存在であるが、近年の研究により
遺伝子発現制御にも関与している事実が知られてきてい
る。
【0005】また、MAR間にクロマチンループが形成
され、このループ内の遺伝子発現の独立性が保証される
と考えられている。発現安定化に、MARを使用した効
果については統一性が見られず、結果として安定発現が
得られない場合が多い。その現象の理由として、多くの
MARが発現を上昇させること、また複数コピー導入時
にはポジション効果以外の特異的なDNAのメチル化な
どによる発現の不活性化が生じることなどが挙げられ
る。このため、全てのMARが染色体上の境界としての
機能を有していない可能性が示唆され(Galli,1:166-17
2,Current opinion in plant technology (1998) 1:166
-172, Matzke et al.,Current opinion inplant techno
logy (1998) 1: 142-148) 、有用技術として手法として
確立されるには至っていない。
【0006】一方、ポジション効果を抑制する目的で、
上述したインスレーターもまた、使用されている。エン
ハンサーやサイレンサーは数kb離れていてもその効果
が及ぶ事が知られており、その様な隣接する遺伝子の干
渉効果を遮断する働きを有する機能領域(DNA断片)
がインスレーターである、と定義されている。高等真核
植物では、エンハンサーやサイレンサーが、特定の一つ
のプロモーターだけではなく、複数のプロモーターの転
写活性にも影響を与える場合があるため、染色体上で
は、複数のエレメントがランダムに影響を与える可能性
がある。これは遺伝子発現に多様性を持たせる反面、無
秩序ではない厳密な秩序ある制御のためには、エンハン
サーやサイレンサーの影響を限定する機構が必要と想像
される。現在では、インスレーターがこれらの影響力を
限定していると考えられている。
【0007】これまでにショウジョウバエを始めとして
多様な生物からインスレーターが同定されており、その
例として、ショウジョウバエ由来のgypsyインスレ
ーター、hsp70scs−scs’インスレーターお
よびFab−7インスレーター、ニワトリ由来のベータ
グロビンインスレーター、およびヒト由来のapoBイ
ンスレーターなどがある。関与しているタンパク質も同
定され始め、特にgypsyインスレーター、hsp7
0scs−scs’インスレーターについて解析が進ん
でいる(赤坂、細胞工学(1997) 16: 1476-1484)。この
中で、ニワトリ由来のベータグロビンインスレーターが
種を超えて遺伝子発現の安定化に効果を示す事が報告さ
れている。また、本発明者らは、ウニのアリルスルファ
ターゼ遺伝子から単離したインスレーターを連結するこ
とによって、植物細胞の染色体に組み込まれた外来遺伝
子の発現を安定化できる事を示した(特願平11−25
3174)。これらの知見を基にして、導入遺伝子の発
現安定化機能を有する、新規の遺伝子を得る事を目的と
して、本発明の研究開発は進められた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、タバコ培
養細胞(Nicotiana tabacum,BY
2)から数種の高発現プロモーターを単離した。その様
にして得た各プロモーターDNA断片にGUSレポータ
ー遺伝子を連結し、タバコ培養細胞に導入し、それぞれ
独立した形質転換クローンにおけるGUS活性を調べ
た。その結果、タバコ由来のアルコールデヒドロゲナー
ゼ(NtADH)遺伝子のプロモーターの発現が、複数
クローン間において非常に安定している事がわかった。
【0009】その様な知見から、NtADHプロモータ
ー内に遺伝子発現安定化機能配列を探索し、本発明の発
現安定化領域であるADH200を得た。ADH200
の詳細については後に述べる。ADH200は、植物に
おける導入遺伝子の発現を安定化させる技術として、大
いに利用価値が高いと考えられ、植物バイオ産業に対す
る貢献が期待される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、植物において導入した
外来の発現を安定化させる目的に使用できる、新規のD
NA断片を提供する。本発明のDNA断片は、タバコ由
来のアルコールデヒドロゲナーゼ(NtADH)遺伝子
プロモーターの、TATA boxから214bp上流
までの領域の遺伝子配列であり、本発明者らは当該配列
が遺伝子発現を安定化させる作用を有する事を見出し、
当該配列をADH200と名づけた。ここで遺伝子発現
の安定化とは、導入した外来遺伝子の活性が認められな
い個体、又は導入した外来遺伝子の活性が非常に低い個
体の割合が顕著に減少する事を示す。本発明のADH2
00の塩基配列は、配列表の配列番号1により特定され
る。ADH200の一部が欠失、置換若しくは付加され
た塩基配列からなるDNA断片も、外来遺伝子の発現を
安定化させる作用を有する限り、本発明の範囲内であ
る。
【0011】ADH200のDNA断片、導入するべき
外来遺伝子、及びADH200のDNA断片と当該外来
遺伝子の間に挟まれる位置に存在し、当該外来遺伝子の
発現を調節する外来プロモーター、を含む融合遺伝子を
含む、ベクターもまた、本発明の範囲内である。即ち、
導入した外来遺伝子の5’上流に外来プロモーター、更
に5’上流にADH200のDNA断片を連結した構造
より成る融合遺伝子を含むベクターも本発明の範囲内で
ある。また、導入した外来遺伝子の3’下流に外来プロ
モーター、更に3’下流にADH200のDNA断片を
連結した構造より成る融合遺伝子を含むベクターも本発
明の範囲内である。ここで、外来プロモーターとは、遺
伝子を導入する植物と異なる種より得られたプロモータ
ーを意味する。下記の実施例で示される様に、ADH2
00のDNA断片は、異種のプロモーターの発現を安定
化する事により導入した遺伝子の発現を安定化するた
め、ADH200のDNA断片がプロモーターの「外
側」に位置している場合にも、導入遺伝子の発現を安定
化する事が可能であり、本発明の顕著な効果となってい
る。
【0012】実施例において示される様に、ADH20
0のDNA断片、外来遺伝子及び外来プロモーターを含
む、上記のベクターを植物に導入する事により、外来遺
伝子の発現を安定化する事が可能であり、その様な過程
より成る遺伝子の導入方法もまた、本発明の範囲内であ
る。更に、その様な方法により外来遺伝子を導入し、外
来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物もまた、本発
明の範囲内である。後に実施例において示す様に、本発
明のADH200を用いる事により、導入した外来遺伝
子が発現しない個体、又発現の程度が非常に低い個体が
見られなくなり、外来遺伝子の発現が安定化する。
【0013】本発明の方法を用いて、種々の外来遺伝子
を安定に発現させる事が可能であり、理論的にはあらゆ
る遺伝子を導入する事が可能である。宿主植物に導入す
るのに好ましい遺伝子の例としては、ペルオキシダーゼ
遺伝子又はキチナーゼ遺伝子の様な病虫害耐性遺伝子、
エクトイン生合成系酵素又はベタイン合成酵素の様なス
トレス耐性遺伝子、及び脂肪酸合成酵素遺伝子等が挙げ
られる。更に、本発明の方法を用いて、種々の宿主に外
来遺伝子を導入する事が可能であり、理論的にはあらゆ
る宿主中に遺伝子を導入する事が可能である。宿主植物
として用いるのに好ましい植物の例としては、タバコ、
シロイヌナズナ又はペチュニアの様な有用栽培植物、イ
ネ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイズ、
イチゴ又はナスの様な農作物、及びユーカリ又はポプラ
等の樹木等が挙げられる。上記の記載及び下記の実施例
は、本発明の説明を行うための記載であり、本発明の範
囲を何ら限定するものではない。
【0014】
【実施例】(プラスミドの構築) 本発明における実験に使用した融合遺伝子を図1に示
す。 (A)35S−GUS:カリフラワーモザイクウイル
ス35S RNA遺伝子のプロモーター(CaMV35
S)の下流に大腸菌由来のβ−グルクロニダーゼ遺伝子
(GUS)を連結した。 (B)35S core−GUS:CaMV35Sコ
アプロモーター(90bpのコア配列)の下流にGUS
遺伝子を連結した。 (C)pNtADH(2.5kb)−GUS:タバコア
ルコールデヒドロゲナーゼ(NtADH)プロモーター
にGUS遺伝子を連結した。 (D)pNtADH(0.3kb)−GUS:NtAD
HプロモーターのTATA boxから214bp上流
までのDNA断片にGUS遺伝子を連結した。 (E)ADH200−p35S core−GUS:A
DH200をCaMV35Sコアプロモーター(90b
p)−GUS融合遺伝子の5’上流に連結した。 (F)ADH100−p35S core−GUS:A
DH200の5’側の110bp(ADH100)をC
aMV35SコアプロモーターGUS融合遺伝子の
5’上流に連結した。 (G)PE200−p35S core−GUS:ペク
チンエステラーゼ遺伝子のTATA boxの5’上流
約200bp(PE200:参考文献:Shinmyoet al.,
Biotech,Bioeng.,1998,58:329-332)をCaMV35S
コアプロモーターGUS融合遺伝子に連結した(負の対
照)。尚、図1の各融合遺伝子の構造において、それぞ
れの記号は下記の遺伝子を示している。 R:T−DNAのライトボーダー配列 L:T−DNAのレフトボーダー配列 Km’:カナマイシン耐性遺伝子 TER:nos遺伝子のターミネーター
【0015】(タバコ培養細胞への導入) 各バイナリープラスミド(上記A−G)を、アグロバク
テリウム感染法により、タバコ培養細胞(BY2)の染
色体上に、Gynheung et al.,Plant.Physiol.(1985) 79:
568-570)に記載されている方法により導入した。目的遺
伝子が導入されたと考えられる形質転換候補細胞は、カ
ナマイシン耐性の表現型によって選抜した。
【0016】(ベータグルクロニダーゼ活性測定) 各遺伝子について独立した形質転換体を独立50クロー
ンずつ取得し(A−F)、ベータグルクロニダーゼ活性
(GUS活性)の測定を行った。尚、負のコントロール
であるGについてのみ、独立25クローンずつ取得し
た。1mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−β−D−グ
ルクロニックアシッドを基質として添加して、37℃で
30分間反応させた。本反応により、GUS活性を有す
るクローンは青色に染色される。GUS活性の測定を行
った際の発色パターンを図2から図8に、また、GUS
活性の結果を定量化してまとめたものを表1に示す。表
1においてGUS活性の強弱を、++:高いGUS活
性、+:低いGUS活性、−:検出限界以下、で示す。
表中の数値は、それぞれのGUS活性を示す形質転換個
体数を示す。
【0017】
【表1】
【0018】(NtADHプロモーターによる遺伝子発
現の安定化) GUS活性を指標として、導入遺伝子の発現の安定化に
ついて検討を行った。35S−GUS融合遺伝子(図
1A)では、約30%程度の割合で染色が見られない形
質転換体が生じる(図2、表1A)。GUS活性の検出
されない形質転換体については、PCR法によって導入
遺伝子が染色体上に組み込まれていることを確認してい
る。これに対して、pNtADH(2.5kb)−GU
融合遺伝子(図1C)では、全クローンにおいて高い
GUS活性が検出された(図4、表1B)。35S−
GUS融合遺伝子においては、数回同様の解析を行うこ
とによって、発現のバラツキが再現する事を確認した。
この結果は、NtADHプロモーターは植物細胞の染色
体において、導入された遺伝子の発現を安定化する機構
を有する事を示している。
【0019】(プロモーターの欠失解析) そこでNtADHプロモーターの欠失解析を行う事によ
り、遺伝子発現の安定化に関与している部位の同定を行
った。その結果、NtADHプロモーターのTATA
boxから214bp上流までのDNA断片にGUSを
連結した導入遺伝子(pNtADH(0. 3kb)−G
US:図1D)を導入したBY2細胞において、全クロ
ーンにGUS染色が見られた(図5、表1)。更に詳
細に部位を特定するために、5’上流から段階的に欠失
させたDNA断片について同様の解析を行った(図
9)。即ち、TATA boxから、それぞれ214b
p、195bp、146bp、104bp、34bpま
でのDNA断片にGUS遺伝子を連結して、BY2細胞
に導入し、それぞれ独立50クローン中で高いGUS活
性を示すクローンの割合(GUS+%)をパーセンテー
ジで示した。その結果、TATA boxから195b
p上流までのDNA断片にGUSを連結した融合遺伝子
の発現においてバラツキが起こり始め、高いGUS活性
を示すクローンの割合は96%であった。TATA b
oxからそれぞれ146bp,104bp、34bp上
流と、更に欠失が増加したDNA断片にGUSを連結し
た場合には、GUS活性を示すクローンの割合は更に減
少した。
【0020】上記の結果より、NtADH遺伝子のTA
TAボックスの直前5’上流214bpが発現安定化に
機能するのに十分な、最小の領域であると結論した。当
該遺伝子領域が、本発明の遺伝子であるADH200で
ある。NtADHプロモーター遺伝子中における、AD
H200領域の位置及びADH200の塩基配列を図1
0に示す。尚、図10の塩基配列中、末端に存在するT
ATA boxはADH200に含まれない。図10に
おいて、TATAはTATA box、ORFは翻訳可
能領域を示す。ADH200の塩基配列の特徴として
は、4−5塩基連続したアデニン(A)またはチミン
(T)が繰り返し存在しており、この様な配列を有する
領域は一般にDNAが折れ曲がり構造をとると言われて
いる。この塩基配列上の特徴が、遺伝子発現の安定化に
寄与していると考えられる。
【0021】(ADH200による異種プロモーター発
現の安定化) 次にADH200が異種プロモーターの発現を安定化で
きるかどうかを調べた。ADH200をカリフラワーモ
ザイクウイルス(CaMV)35Sコアプロモーター
(90bp)−GUS融合遺伝子の5’上流に連結し
ADH200−p35S core−GUS(図1
E)、BY2細胞へ導入し、GUS活性を指標としてC
aMVプロモーターの発現を評価した。p35S co
re−GUS融合遺伝子(図1B)を導入した形質転換
体では発現のバラツキが見られること(図3)に対し、
ADH200−p35S core−GUS融合遺伝子
では全クローンで高いGUS活性が検出された(図
6)。ADH200の5’側110bp(ADH10
0)をCaMV35SコアプロモーターGUS融合遺伝
子の5’上流に連結したADH100−p35S co
re−GUSの場合(図1F)では、GUS活性が低い
クローンが存在し、遺伝子発現を安定化することはでき
なかった(図7、表1F)。
【0022】更に、負の対照としてPE200を連結し
PE200−p35S core−GUS融合遺伝子
(図1G)では、GUS活性の低いクローンが認めら
れ、発現のバラツキが生じた(図8)。図8において、
25サンプル中6サンプルが検出限界以下であった。こ
れらの結果は、ADH200DNA断片を5’上流に連
結することによって、染色体に組み込まれたプロモータ
ーの発現を安定化できることを示している。
【0023】上記のADH200によるプロモーターの
発現安定化を更に詳細に検討するため、図1に示す融合
遺伝子のうち、A、B、Eを保有する形質転換BY2ク
ローンより、それぞれ無作為に10クローンを選び、G
US活性の定量測定を行った(図11)。図11におい
て、Aは35S−GUS(図1A)、Bは35S
core−GUS(図1B)、CはADH200−p3
5S core−GUS(図1E)を導入したクローン
における結果を示す。図11のA、B、Cにおいて、そ
れぞれ図2、図3、図6で選抜した50クローンから無
作為に10クローンを選び、各細胞の粗抽出液をGUS
活性標品として、4−メチル−ウンベリフェリルグルク
ロニドを基質とした酵素反応を行った。図11におい
て、単位時間および単位蛋白質重量あたりの反応生成物
量(pmol)を比活性としている。
【0024】その結果、35Sプロモータ−、および3
5Sコアプロモータ−では、GUS活性が検出限界以下
から極めて低レベルの活性を示すクローンが存在した。
即ち、35S−GUSにおいては1000pmol/m
in/mg未満が3クローン存在し(図11A)、
5S core−GUSにおいては100pmol/m
in/mg未満が4クローン存在した(図11B)。こ
れに対して、5’上流にADH200を連結したCaM
V35Sプロモーター(ADH200−p35S co
re−GUS)では、すべてのクローンが10000p
mol/min/mg以上のGUS活性を有し(図11
C)ていた。以上の結果より、ADH200を付加する
事により、導入したGUS遺伝子が活性を示さないクロ
ーン又は活性が非常に低いクローンが見られなくなり、
遺伝子の発現が安定化している事が示された。
【0025】
【発明の効果】本発明のADH200のDNA断片を導
入遺伝子に連結することによって、形質転換植物を作製
する際に、導入遺伝子発現が活性化しないという発現の
バラツキが回避され、安定な遺伝子の発現が可能とな
る。本技術は、植物の形質転換技術が必須となっている
有用植物の分子育種や植物における有用物質生産などに
おいて、威力を発揮することが期待できる。言い換える
と、ADH200の連結によって導入遺伝子の発現を、
周囲の染色体の転写環境に左右されず、正確に制御する
ことが可能となり、遺伝子発現植物の安全性を高めるこ
とにも寄与できる。
【0026】
【配列表】<110>出願人氏名:奈良先端科学技術大
学院大学長 <120>発明の名称: 植物において外来遺伝子の発
現を安定化させるDNA断片、外来遺伝子を植物におい
て安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定
に発現させた形質転換植物 <160>配列の数:1 <210>配列番号:1 <211>配列の長さ:214 <212>配列の型:核酸 <213>起源:タバコアルコールデヒドロゲナーゼプ
ロモーター <400>配列 GGGTCAAAAC ATCGTTAGGT TTAATAAATC AAATCGATTT TTCTCTTGAA ATATTACCAC 60 CACCTTTTTC TTATTACTCG ACAAAAACTC AAACAGTAAC ACAAAACAAA CAGCCAAAAA 120 CCGGTTTCGA AAACCCAGCG ACCAAAACAT GGAAATGGTT TTACTTTGGC CTGTTGTATT 180 CAACTTTTCG ATTTCACGAT TCTATATTTT CAGG 214
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、構築したバイナリープラスミドのT
−DNAの構造を、模式的に示した図である。
【図2】 図2は、35S−GUSを導入したBY2
細胞のGUS活性染色の写真である。
【図3】 図3は、35S core−GUSを導入
したBY2細胞のGUS活性染色の写真である。
【図4】 図4は、pNtADH(2.5kb)−GU
Sを導入したBY2細胞のGUS活性染色の写真であ
る。
【図5】 図5は、(pNtADH(0.3kb)−G
USを導入したBY2細胞のGUS活性染色の写真であ
る。
【図6】 図6は、ADH200−p35S core
−GUSを導入したBY2細胞のGUS活性染色の写真
である。
【図7】 図7は、ADH100−p35S core
−GUSを導入したBY2細胞のGUS活性染色の写真
である。
【図8】 図8は、PE200−p35S core−
GUSを導入したBY2細胞のGUS活性染色の写真で
ある。
【図9】 図9は、5’側を段階的に欠失して作製した
各ADHプローモーターの模式図、及び各プロモーター
のGUS陽性クローンのパーセンテージを示した図であ
る。
【図10】 図10は、NtADH遺伝子におけるAD
H200領域の模式図、及びADH200の塩基配列を
示した図である。
【図11】 図11は、構築した各遺伝子DNAを導入
したBY2細胞のGUS活性値を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長屋 進吾 奈良県生駒市高山町8916−5 学生宿舎 1−229 (72)発明者 柴田 道夫 三重県津市岩田14−2 (72)発明者 間 竜太郎 三重県津市南新町13−1 古河住宅2− 102 (56)参考文献 GALLI, Current Op inion in Plant Tec hnology, vol.1, p p.166−172 (1998) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/09 A01H 5/00 SwissProt/PIR/GeneS eq GenBank/EMBL/DDBJ/G eneSeq BIOSIS/MEDLINE/WPID S(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列表の配列番号1に示す塩基番号1−
    214で示される塩基配列、又は当該塩基配列と91%
    以上の相同性を有し且つ外来遺伝子の発現を安定化させ
    る塩基配列からなることを特徴とする、DNA断片。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のDNA断片、導入するべ
    き外来遺伝子、及び請求項1記載のDNA断片と当該外
    来遺伝子の間に挟まれる位置に存在し、当該外来遺伝子
    の発現を調節する外来プロモーター、を含む融合遺伝子
    連結した、ベクター。
  3. 【請求項3】 外来遺伝子を植物において安定に発現さ
    せるために、請求項2記載のベクターを植物に導入する
    事を特徴とする、遺伝子導入方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の導入方法により、外来遺
    伝子を安定に発現させた、形質転換植物。
JP32940099A 1999-11-19 1999-11-19 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物 Expired - Lifetime JP3507858B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32940099A JP3507858B2 (ja) 1999-11-19 1999-11-19 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物
US09/711,933 US6573429B1 (en) 1999-11-19 2000-11-15 DNA fragment for stable expression of an exogenous gene in a plant

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32940099A JP3507858B2 (ja) 1999-11-19 1999-11-19 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物
US09/711,933 US6573429B1 (en) 1999-11-19 2000-11-15 DNA fragment for stable expression of an exogenous gene in a plant

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001145491A JP2001145491A (ja) 2001-05-29
JP3507858B2 true JP3507858B2 (ja) 2004-03-15

Family

ID=27666129

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32940099A Expired - Lifetime JP3507858B2 (ja) 1999-11-19 1999-11-19 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物

Country Status (2)

Country Link
US (1) US6573429B1 (ja)
JP (1) JP3507858B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005263745A (ja) * 2004-03-19 2005-09-29 Research Institute Of Biomolecule Metrology Co Ltd 核酸化合物、核酸格子及び核酸多面体

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1395669B1 (en) * 2001-01-26 2009-07-22 Selexis S.A. Matrix attachment regions and methods for use thereof
IN2014DN02483A (ja) 2003-10-24 2015-05-15 Selexis Sa
WO2010122849A1 (ja) 2009-04-24 2010-10-28 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 デルフィニジンを花弁に含有するキク植物を生産する方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
GALLI, Current Opinion in Plant Technology, vol.1, pp.166−172 (1998)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005263745A (ja) * 2004-03-19 2005-09-29 Research Institute Of Biomolecule Metrology Co Ltd 核酸化合物、核酸格子及び核酸多面体
JP4598423B2 (ja) * 2004-03-19 2010-12-15 株式会社生体分子計測研究所 核酸化合物、核酸格子及び核酸多面体

Also Published As

Publication number Publication date
US6573429B1 (en) 2003-06-03
JP2001145491A (ja) 2001-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Rommens et al. Crop improvement through modification of the plant's own genome
RU2559534C2 (ru) Регуляторные молекулы нуклеиновых кислот для усиления семя-специфичной и/или семя-предпочтительной генной экспрессии в растениях
US20030221211A1 (en) Methods of suppressing gene expression
JP2015534834A (ja) Talにより媒介されるトランファーdna挿入
JPH02283275A (ja) 発現カセツトのDNA‐配列を有する癌腫菌、プロテイナーゼーインヒビター2‐プロモータ、ベクターpM14、植物ゲノム、傷誘発性転写調節法及び構成性転写調節法並びに遺伝子の傷誘発性発現法
WO2006036864A2 (en) Promoter, promoter control elements, and combinations, and uses thereof
CN104024412A (zh) 用于植物中可靠基因表达的调节核酸分子
Buyel et al. Predictive models for the accumulation of a fluorescent marker protein in tobacco leaves according to the promoter/5′ UTR combination
Yang et al. MiR858b inhibits proanthocyanidin accumulation by the repression of DkMYB19 and DkMYB20 in persimmon
Jacobs et al. Simple gene silencing using the trans‐acting si RNA pathway
Sun et al. Editing of chloroplast rps14 by PPR editing factor EMB2261 is essential for Arabidopsis development
Nocarova et al. Successive silencing of tandem reporter genes in potato (Solanum tuberosum) over 5 years of vegetative propagation
EP3058073B1 (en) Zea mays regulatory elements and uses thereof
US20230203515A1 (en) Regulatory Nucleic Acid Molecules for Enhancing Gene Expression in Plants
CA2911185C (en) Methods for generating transgenic plants
JP3507858B2 (ja) 植物において外来遺伝子の発現を安定化させるdna断片、外来遺伝子を植物において安定に発現させる遺伝子導入方法、外来遺伝子を安定に発現させた形質転換植物
EP3052633B1 (en) Zea mays metallothionein-like regulatory elements and uses thereof
WO2019234132A1 (en) Base editing in polymerase theta deficient plants
Wesley et al. Posttranscriptional gene silencing in plants
JP2016536979A (ja) トウモロコシ調節エレメントおよびその使用
Mishra et al. Characterization of 5′ UTR of rice ClpB-C/Hsp100 gene: evidence of its involvement in post-transcriptional regulation
JP4627879B2 (ja) 植物細胞において遺伝子の高発現能を有する5’−非翻訳領域配列
JP2018511333A (ja) 導入遺伝子発現のための植物プロモータ
Xiao-Yi et al. Production of marker-free transgenic tobacco plants by Flp/frt recombination system
JP4505626B2 (ja) 花粉特異的発現活性を有するプロモーター

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3507858

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term