JP3477717B2 - 川崎病予防薬および急性期症状治療薬 - Google Patents

川崎病予防薬および急性期症状治療薬

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は川崎病予防薬および急性
期症状治療薬に関する。
【0002】
【従来の技術】川崎病は川崎富作博士により1967年に
「指趾の特異的落屑を伴う小児の急性熱性皮膚粘膜淋巴
節症候群」として初めて報告された病気である。本病の
症状は猩紅熱に類似しながら次の2点を主要な鑑別点と
する。すなわち、患者からA群化膿連鎖球菌が分離さ
れず、抗生物質の投与が無効であること、およびA群
化膿連鎖球菌の産生する溶血素SLOに対する抗毒素A
SLOの値が上昇しないことの2点である。その後、一
部の患者に冠状動脈瘤の形成を主とする心後遺症がみら
れ、時には心筋梗塞を発症して死に至ることが知られて
からは、特にわが国では患者の多い時期には年間1万人
を超える患者が発生することもあって、小児の急性熱性
疾患の中では極めて重要な疾患として認識されるように
なった。
【0003】本症の病因はこれまで明らかにされておら
ず、治療方法も対症的なものに限られてきた。当初は副
腎皮質ホルモンが用いられたが、急性期症状の改善が明
らかでなく、また後遺症としての冠状動脈瘤の発生率も
低下しないところから、現在では全く使用されていな
い。
【0004】川崎病の治療に関し、1979年より3年間に
わたり厚生省川崎病研究班において行われたコントロー
ルスタディでは、アスピリン(非ステロイド系消炎剤)
群、フルルビプロフェン(非ステロイド系消炎剤)群、
プレドニゾロン(ステロイド剤)+ジピリダモール(抗
血栓剤)群の3群に分けて治療研究が行われた。1年後
に、アスピリン群では1%、フルルビプロフェン群では
11.5%、プレドニゾロン+ジピリダモール群では8.9 %
に冠状動脈瘤の発生が認められ、アスピリンの有効性が
証明されたかにみえたが、アスピリン投与によっては急
性期症状の改善は全く認められなかった。その後、アス
ピリンに大量のヒトγ−グロブリンを併用投与する治療
法が行われるようになり、急性期症状の改善には大きく
裨益したが、冠状動脈瘤発生に対する予防効果は先に期
待された程大きくないことが次第に明らかになってき
た。換言すると、ヒトγ−グロブリンの大量投与が急性
期症状を改善することは確認されたが、アスピリン単独
あるいはアスピリンとヒトγ−グロブリンの併用投与が
冠状動脈瘤の発生を含む後遺症の発現を有意には予防し
ていないという報告が相次いでなされた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これまで有
効な対策がなかった川崎病に対する予防薬および急性期
症状治療薬を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】川崎病の予防薬ならびに
治療薬の開発が満足すべきものとならなかった最大の理
由は、本病の病因がこれまで明らかにされなかったため
である。本発明者は川崎病の病因解決のための研究を続
け、本病が特殊な経過をとって成立したA群化膿連鎖球
菌による感染症であることを明らかにし、その結果、川
崎病に対する従来の対症的治療薬ではなく、原因的予防
薬および急性期症状治療薬を見い出し、本発明を完成し
た。
【0007】本発明者は、A群化膿連鎖球菌 (Streptoc
occus pyogenes) は極めてありふれた病原細菌であるに
もかかわらず、A群化膿連鎖球菌の発赤毒 (Streptococ
calpyrogenic exotoxin、以下、SPEと略称する) を
含む本菌関連諸抗原に対する抗体産生だけが特異的に抑
制されているという免疫寛容状態が成立することがあ
り、それがなお継続している期間中にA群化膿連鎖球菌
による再感染が起きた場合に川崎病が発生することを明
らかにした (Acta Paediatre. Jpn. 31:462-468,1989)
。これら諸抗原中、発症の主役はSPEによって演じ
られているので、以下SPE中心に述べる。SPEに対
する免疫寛容状態は新生児期にA群化膿連鎖球菌に感染
することによって成立する。川崎病が1960年代から突如
発生したのはこの頃より抗SPE抗体をもたない妊婦が
多くなり、経胎盤移行性の抗SPE抗体によって新生児
期におけるA群化膿連鎖球菌感染の成立を予防すること
ができなくなったためと推測される。
【0008】そこで、本発明者らは川崎病の予防には、
抗SPE抗体をもたない妊婦に抗SPE抗体の産生を促
して新生児期におけるA群化膿連鎖球菌による感染に引
き続いて起こる、SPEに対する免疫寛容状態の成立を
防ぐこと、ならびに、既に成立しているSPEに対する
免疫寛容状態に対しては、それを積極的に解除すること
が必要であると考え、それらは、この免疫寛容状態を誘
導する原因物質であるSPEをトキソイド化したものを
接種することによって達成しうることを見い出した。S
PEのトキソイドの接種により、被接種者の血清中抗S
PE抗体価を上昇させることができ、また被接種者が免
疫寛容状態にある場合には、この免疫寛容状態を解除す
ることにより川崎病の発生を予防しうる。
【0009】さらに、SPEのトキソイドを抗原として
免疫した動物あるいはヒトボランティアから採取した抗
血清、特にこの抗血清より分離作製したIgG のF(ab')2
画分が川崎病の急性期症状治療薬として有効であること
も見い出した。すなわち、本発明は、A群化膿連鎖球菌
の発赤毒のトキソイドを含有する川崎病予防薬、A群化
膿連鎖球菌の発赤毒に対する抗体を含有する川崎病急性
期症状治療薬、A群化膿連鎖球菌の発赤毒に対する抗体
より分離作製したF(ab') 2 画分、およびこの画分を含
有する川崎病急性期症状治療薬、を要旨とする。
【0010】
【作用】本発明で使用するSPEのトキソイドの作製は
次のようにして行うことができる。まず、A群化膿連鎖
球菌、例えば該菌のNY-5株、K56(8627),T253等を培養
し、その培養上清よりSPEを抽出する。抽出方法は限
定されないが、例えば、Cunninghamらの方法 (Infect.
Immun. 14:767-775, 1976)を修正した方法、Kimand Wat
sonの方法 (J.Exp.Med.131: 611-628, 1970) 等の方法
を使用できる。
【0011】Cunninghamらの方法を修正した方法によれ
ば、A群化膿連鎖球菌を培養し、その培養物を急冷し、
遠心分離して得た上清をミリポアフィルターで濾過す
る。この濾液をエタノールおよび酢酸緩衝食塩水の溶解
度の差を利用して精製し、その後、沈降してくる毒素類
を透析して凍結乾燥し、SPEの粗画分を得る。この粗
画分をイオン交換クロマトグラフィー等を用いてさらに
精製し、溶出液を透析後、凍結乾燥してSPEの精製画
分とする。
【0012】SPEトキソイドは上記のようにして得た
SPEをホルマリン、ヘキサメチレンテトラミン、アセ
トアルデヒド、アンモニア等で処理して作製する。作製
方法は特に限定されないが、ジフテリアトキソイドの作
製に用いた Wadsworthらの方法 (J. Infect. Dis. 61:2
37-250, 1937) や Eatonの方法 (J.Immunol.33: 419-43
6, 1937)等が使用できる。Wadsworth らの方法によれ
ば、SPE精製画分を0.2 %ホルマリンを含む0.05M 燐
酸緩衝液 (pH7.4)に溶解して静置後、ホルマリンを除去
するために燐酸緩衝食塩水による透析を行い、それを凍
結乾燥してSPEトキソイドを得ることができる。
【0013】こうして得たSPEトキソイドは、川崎病
の予防薬として使用することができ、予防は次のような
場合に実施すればよい。 (1) 妊婦の血清中の抗SPE抗体価が陰性と認められた
場合には、急いで抗SPE抗体価を上昇させておかない
と、経胎盤的な抗SPE抗体の移行は期待できず、新生
児期におけるA群化膿連鎖球菌感染に伴って、SPEに
対する免疫寛容状態の成立することが懸念される。従っ
て、妊婦の血清中の抗SPE抗体価が陰性であることが
認められた場合は、妊婦にSPEトキソイドを接種して
抗SPE抗体価を上昇させておけば、新生児期における
A群化膿連鎖球菌の感染は阻止され、SPEに対する免
疫寛容は成立せず、川崎病の発現は未然に予防できる。
【0014】(2) 5、6歳以下の子供の血清中の抗SP
E抗体価が陰性の場合には、SPEに対する免疫寛容状
態が成立している可能性が強いので、SPEトキソイド
を接種することによって、成立しているSPEに対する
免疫寛容状態を解除しておけば、川崎病を予防すること
ができる。ただし、免疫寛容状態が成立していても子供
が5、6歳以上になればこの免疫寛容状態は、ほってお
いても解除されてくるのが普通である。5、6歳以上の
子供川崎病の初発生がほとんど認められないのはその
ためと考えられる。
【0015】(3) ところが、一度川崎病に罹患した子供
は川崎病の再発を起こし易いことが周知であるが、本発
明者らの研究により、川崎病に罹患すると以後極めて長
期にわたってSPEに対する免疫寛容状態が持続するこ
とが明らかにされた。(ActaPaediatr. Jpn. 31:462-46
8, 1989) 。従って、川崎病に罹患した子供は、回復後
速やかにSPEトキソイドを接種して、SPEに対する
免疫寛容状態を解除しておくべきである。
【0016】SPEトキソイドを川崎病の予防に使用す
る場合、皮下接種等の方法で投与することができ、投与
量は投与対象、投与時期、投与方法、投与回数、投与間
隔により異なるが、一回量として3〜5μg の範囲で投
与すればよい。皮下に接種する場合、所定量の凍結乾燥
SPEトキソイドを生理食塩水、燐酸、緩衝食塩水等に
溶解して7〜10日おきに2〜3回接種するのが好まし
い。
【0017】SPEトキソイドの川崎病予防効果 本発明で使用するSPEトキソイドは以下に示すように
川崎病の予防効果を有する。SPEに対する免疫寛容状
態はSPEを接種しても解除されないが、SPEトキソ
イドという抗原性が僅かに修飾された物質を接種するこ
とによって容易に解除される。
【0018】実験例 本発明者は、川崎病患者のモデル動物として、弱毒A群
化膿連鎖球菌B-346 OP株を出生直後のddy 系マウスに感
染させて、SPEに対する免疫寛容状態を誘導させてお
き (抗SPE抗体の産生されていないことはELISA
法で確認した)、マウスが成熟したときに弱毒A群化膿
連鎖球菌S-43株を再感染させるという組み合わせによ
り、このモデル動物が川崎病患者の免疫性状および生物
学的反応性を極めて正確に表現しうること証明した(Act
a Paediatr. Jpn. 30:654-661, 1988; 31:529-536, 198
9; 日本小児科学会雑誌 94, 2320-2327, 1990) 。
【0019】川崎病患者では発症後の数日は明らかな血
小板減少症が発現するものの、発症後1週間以降は顕著
な血小板増多症が発現することが知られている。上記モ
デルマウスについて血小板数を調べると、A群化膿連鎖
球菌の再感染後3〜8日にかけて明らかな血小板の減少
が、12〜21日にかけて顕著な血小板の増多が起こり、そ
の後、血小板数はやや減少するものの、観察終了後41日
まで対照群に比べて有意に高い値を維持していた(Acta
Paediatr. Jpn.33:20-26, 1991) 。
【0020】ところが、次の実験によって、SPEに対
する免疫寛容状態を誘導しておいたマウスでも、再感染
の前にSPEトキソイドで免疫してSPEに対する免疫
寛容状態を解除しておけば、川崎病患者に特徴的な血小
板減少、次いで血小板増多という現象を発現しないこと
が証明されたので、SPEトキソイドの接種が川崎病の
発現の予防に有用であることが明らかにされた。
【0021】出生直後にA群化膿連鎖球菌B-346 OP株を
感染させることによってSPEに対する免疫寛容状態を
誘導しておいたddy 系マウス15匹を5匹ずつ3群(A〜
C)に分けた。2月後にA群には2μgのSPEトキソ
イドを生理食塩水に溶解したものを、皮下に、隔日に、
4回接種し、B群には (対照−1) として2μgのSP
Eを生理食塩水に溶解したものを皮下に、隔日に、4回
接種し、C群 (対照−2) には免疫を行わなかった。な
お、これらとは別に出生直後にA群化膿連鎖球菌による
感染を行わず、免疫も行わなかった5匹の等年齢マウス
を用意しておき、これをD群(対照−3)とした。これ
ら合計20匹のマウスには、生後3カ月にA群化膿連鎖球
菌S−43株のブイヨン培養液(37℃、一夜培養)の50
μl ずつを、隔日に、4回、皮下に接種して(再感
染)、川崎病モデルにおける惹起刺激とした。
【0022】再感染後の血小板数の測定を行った結果を
図1に示す。血小板数は後眼窩静脈巣をガラス毛細管で
穿刺して採取した少量の血液を使って、血球算定盤を用
いた常法に従って測定し、同一のマウスを使用して全観
察期間を通じて9回の計測を行うことができた。
【0023】結果は図1に示すように、B群およびC群
では再感染後3〜8日にかけて血小板数減少、10〜20日
にかけて顕著な血小板数増多、その後も35日後まで血小
板数の有意な増多が認められたのに対して、A群および
D群では血小板数が終始、正常域にとどまっていた。
【0024】SPEトキソイドの安全性 SPEの62.5ng、125ng 、250 ng、500 ng、1,000 ngお
よびSPEトキソイドの62.5ng、250 ng、1,000 ng、4,
000 ng、16,000ngのそれぞれを含む生理食塩水溶液0.05
mlを3匹の体重 2.5kgのNew Zealand White 系ウサギ
(雄) の剃毛した背部皮内に接種した。接種10時間後、2
4時間後および36時間後に発赤部の短径および長径を測
定し、共に10mm以上のものを陽性とした。なお、この実
験では24時間後の測定値で判定を行い、3匹中2匹以上
が陽性となった濃度を最小発赤発現濃度とした。実験結
果を表1に示す。表1より明らかなように、SPE接種
では最小発赤発現濃度が 125ngであったのに対して、S
PEトキソイド接種では16,000ngであった。このように
SPEトキソイドは高い安全性を示した。
【0025】
【表1】
【0026】次に、本発明の川崎病急性期症状治療薬に
ついて説明する。SPEに対する抗体は川崎病の急性期
症状治療薬として有効である。SPEに対する抗体とし
ては、任意の抗体作製法により得られたものが使用で
き、例えばSPEトキソイドを抗原として作製した抗血
、この抗血清から分離したIgGのF(ab')2画分、
るいはモノクローナル抗体などが有効である。
【0027】猩紅熱患者では速やかに抗SPE抗体が産
生されてくるのに対して、川崎病患者では免疫寛容状態
が継続しているため抗SPE抗体が全く産生されない。
これが、両疾患の急性期症状は類似しているものの、川
崎病の症状がより激しい理由と考えられる。抗SPE抗
体は川崎病の急性期症状を改善する能力が極めて大きい
だけでなく、本発明者がマウスを用いた感染実験によ
り、A群化膿連鎖球菌の感染を阻止する能力の強いこと
も明らかになった (未発表) 。従って、SPEトキソイ
ドを抗原として免疫した動物またはヒトボランティアよ
り採取した抗血清は川崎病急性期症状治療薬として利用
できる。また、全血清の形をとる抗SPE抗血清は抗補
体作用を有するため静脈内注射ができないが、この抗血
清から分離したIgGのF(ab') 2 画分を用いれば皮下
や筋肉注射だけでなく静脈内注射も可能となる。
【0028】このSPEトキソイドに対する抗血清は、
SPEトキソイドを抗原として免疫した動物またはヒト
ボランティアーから血清を採取して作製することができ
る。例えば、前記のようにして作製したSPEトキソイ
ドを含む生理食塩水溶液を等量のアジュバンド、例えば
フロインド完全アジュバンドに懸濁させたものをウサ
ギ、ウマ等の動物あるいはボランティア (ヒトに接種す
る場合には水酸化アルミニウムを使ったアジュバントが
好ましい) に接種し、SPEトキソイドを抗原とする抗
体を産生させ、この抗体を含有する血清を分離すること
より、抗SPE抗血清を作製できる。
【0029】なお、IgGのF(ab') 2 画分とは、Ig
Gをペプシンで分解して得られるF(ab') 2 フラグメン
トを含む画分であり、補体結合能を示すFcフラグメント
を含まない。本発明のIgGのF(ab') 2 画分は、上記
のようにして作製した抗SPE抗血清をペプシン処理で
分解したものであるが、同様に抗補体作用の減弱した画
分はβ−プロピオラクトン処理、ポリエチレングリコー
ル処理、S−スルホン化などの方法によっても作製でき
る。F(ab') 2 画分を作るためには、まず抗SPE抗血
清を非特異的にIgGのFc フラグメントと結合する性
質をもっているプロテインAのカラムにかけてIgG画
分を得る。IgG画分を透析後、ペプシンを添加してペ
プシンによる消化を一定時間行わせる。これを濃縮し、
再度プロテインAのカラムにかけて未消化IgGおよび
Fc画分をカラムに結合させた後、結合しないで溶出し
てくるF(ab') 2 画分を集めることにより作製できる。
【0030】従来のようにヒトγ−グロブリンを投与す
る場合には、大量の投与が必要であったが、SPEトキ
ソイドを抗原として作製した抗血清またはこの抗血清か
ら分離したIgG のF(ab')2 画分を川崎病急性期症状治療
薬として用いる場合には、その投与量は、それぞれの抗
SPE抗体価の多寡によって異なるが、約1mg/kg 体重
を一回量として、連続3日間といった極めて少量で十分
であろう。投与方法には皮下注射、筋肉内注射等があ
り、IgGのF(ab') 2 画分を用いる場合はさらに静脈
注射も可能である。
【0031】抗SPE抗血清の治療効果 以下に本発明の抗SPE抗血清からなる治療薬の川崎病
急性期症状に対する治療効果を示す実験例を記載する。実験例 ウサギ抗SPE抗血清から分離作製したIgGのF(a
b') 2 画分の川崎病急性期症状の治療効果川崎病モデル
マウスでは発疹や発熱は観察され難いので、上述の予防
効果を示す実験例と同様にマウスの末梢血中の血小板数
の計測値の変動をもって急性期症状を表すこととした。
【0032】計20匹のマウスのうち15匹は出生直後にA
群化膿連鎖球菌B-346 OP株の感染によってSPEに対す
る免疫寛容状態を誘導しておき、これを5匹ずつ3群
(A〜C)に分けた。残る5匹は出生直後の感染を行う
ことなくD群とした。さらに出生後3カ月にすべてのマ
ウスにA群化膿連鎖球菌S-43株を再感染させた。
【0033】再感染後、隔日、4回の被働免疫を行っ
て、それが血小板数の変動にどのような影響を及ぼすか
を計測した。すなわち、A群にはウサギ抗SPE抗血清
から分離作製したIgGのF(ab') 2 画分の約100 μg
ずつを計4回、B群にはウサギ抗SPE抗血清の10μl
ずつを計4回接種した。なお、C群には被働免疫を行わ
ず、D群にも被働免疫を行わなかった。各群における血
小板数の変動は図2に示すように、C群のみが川崎病の
特徴である、再感染後早期に血小板数減少、次いで血小
板数増多を示した。他の3群では全観察期間を通じて血
小板数は正常域を維持した。この実験結果から、抗SP
E抗血清およびこの抗血清から分離作製したIgGのF
(ab') 2 画分が川崎病患者の急性期症状を改善する効果
を有することは明らかである。
【0034】
【実施例】
(製造例1) SPEの抽出およびSPEトキソイドの
作製 A群化膿連鎖球菌のNY-5株の培養上清よりCunninghamら
の方法を少し修正した方法で抽出した。すなわち、Todd
& Hewitt 培養液 (Difco 社製) に、対数増殖期にある
NY-5株の37℃、一夜培養液を5%容量接種し、37℃で6
時間振盪培養した。この培養物を、氷添加水槽中で急冷
してから3,000rpmで20分間遠心沈殿し、その上清を、孔
径0.45μm のミリポアフィルターで濾過した。この濾液
を、まず、エタノールおよび酢酸緩衝食塩水の溶解度の
差を利用して6回精製を繰り返した後、沈降してきた毒
素類を透析して凍結乾燥し、これをSPEの粗画分とし
た。この粗画分をイオン交換クロマトグラフィーを用い
てさらに精製した。イオン交換ゲルとしてはQAE-Sephad
ex A-50 ( スウェーデン、アップサラ、PharmaciaLKB)
を使用した。溶出に使用した緩衝液は下記の通りであ
り、(1) から(3) の順序で用いた。
【0035】(1) 0.1 M イミダゾール−酢酸(pH7.0) (2) 0.1 M イミダゾール−酢酸(pH5.0)+0.1 M NaCl (3) 0.1 M 酢酸ナトリウム−酢酸(pH4.0)+1M NaCl 第1の緩衝液5ml中にSPE粗画分250 mgを溶解した
ものをカラムに重層し、(1) 、(2) 、(3) の各緩衝液の
少なくとも500 mlを溶出のために使用した。なお、溶出
液は5mlずつフラクションコレクターに集めて、280 nm
における吸光度を測定した。吸光度の高い画分を集めて
72時間透析した後に凍結乾燥して精製画分とした。
【0036】この精製画分は吸光度測定で2つのピーク
から構成されていたが、抗SPEモノクローナル抗体を
使ったELISA法の結果、共にSPEのタイプAであ
ることが確認されたので、共にトキソイドの原材料とし
た。SPEトキソイドの作製はWadsworth らがディフテ
リアトキソイドの作製に用いた方法に準じた。すなわ
ち、 640μgのSPE (精製画分) を0.2 %のホルマリ
ンを含む0.05M燐酸緩衝液(pH 7.4) の2ml中に溶解し
て37℃で5日間静置した。次いで、ホルマリンを除くた
めに溶液を4℃で6時間、燐酸緩衝食塩水を3回交換し
ながら十分に透析を行った後、凍結乾燥した。これをS
PEトキソイドとして−20℃に保存した。SPEトキソ
イドの収量は 600μgであった。
【0037】(製造例2) 抗SPE抗血清の作製 製造例1で作製したSPEトキソイド2μgを含む生理
食塩水溶液0.2ml を等量のフロインド完全アジュバンド
に懸濁させ、体重約2.5 kgのNew Zealand White 系のウ
サギ (雄) 3匹の大腿部筋肉内に接種し、さらに投与後
8、10、12、14および16日目に静脈内に各2μgの生理
食塩水溶解SPEトキソイドを接種し、最終接種後7日
目に全採血して血清を分離してウサギ抗SPE抗血清と
した。
【0038】(製造例3) 抗SPE抗血清からのIg
GのF(ab') 2 画分の分離作製 製造例2で作製したウサギ抗SPE抗血清10mlをプロテ
インAのカラム(AmpureTM PA Kit 、Amersham-Japan、
東京) のキットにかけて、まずIgG画分を分離した。
この分離は次のようにして行った。予めカラムに結合緩
衝液を流してカラムの平衡化を行った後に、上記ウサギ
抗SPE抗血清を等量の結合緩衝液で希釈したものを添
加した。次いで、結合緩衝液(5ml×2)を流して、ゲ
ルに結合していない蛋白質を洗浄した。次いで溶出緩衝
液(3ml)を流して結合しているIgGの41mgを溶出さ
せた。なお、結合緩衝液と溶出緩衝液はキットに添付さ
れていたものを使用した。
【0039】この溶出されたIgGを含む液は0.1 M酢
酸緩衝液(pH 4.0) を用いて4℃で3時間半透析した
後、IgG30mg当たり 0.4mgの割合でペプシン (Sigma
、1:60,000、St. Louis 、U.S.A.) を添加して37℃
に16時間静置して消化させ、次いで、4℃に保った0.01
M燐酸緩衝食塩水(pH7.0)中で透析を行うことによって
反応を停止させた。
【0040】透析膜内液をMinicon B125濃縮器 (Amicon
Corp. Danvers, MA, U.S.A.) にかけて濃縮したもの
を、再度上記のプロティンAのカラムにかけて、微量の
未消化IgGやFc画分をカラムに結合させた後、溶出
してくるF(ab') 2 画分を集めた。これは、プロティン
Aカラムが未消化のIgGやFc画分を吸着するもの
の、F(ab') 2 画分を吸着しえないことを利用したもの
である。
【0041】
【発明の効果】以上詳述した如く、本発明は、従来行わ
れてきた対症的治療法とは異なり、川崎病の原因的予防
および急性期症状治療に有用な、予防薬と治療薬を提供
するものであり、その有用性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明予防薬の効果を示す図である。
【図2】本発明急性期症状治療薬の効果を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−112494(JP,A) Ivan Lefkovits an d Benvenuto Pernis 編集、右田俊介監訳,免疫実験法 基本 から高度テクニックまで,株式会社西村 書店,1985年12月28日,P.1−18 日本臨床,1983年,Vol.41,N o.9,P.2063−2068 Pediatric Researc h,1990年,Vol.27,No.1, P.11−15 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 39/09 A61K 35/74 A61K 39/395 A61P 9/00 A61P 37/04 CA(STN) MEDLINE(STN) BIOSIS/WPI(STN) EMBASE(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 A群化膿連鎖球菌の発赤毒のトキソイド
    を含有する川崎病予防薬。
  2. 【請求項2】 トキソイドがA群化膿連鎖球菌の発赤毒
    をホルマリン処理して得られたものである、請求項1記
    載の川崎病予防薬。
  3. 【請求項3】 A群化膿連鎖球菌関連抗原に対する免疫
    寛容状態を解除することにより川崎病を予防する、請求
    項1または2記載の川崎病予防薬。
  4. 【請求項4】 川崎病に罹患した子供に対して、回復後
    接種して、A群化膿連鎖球菌関連抗原に対する免疫寛容
    状態を解除することにより川崎病の再発を防止するため
    の、請求項1または2記載の川崎病予防薬。
  5. 【請求項5】 新生児におけるA群化膿連鎖球菌関連抗
    原に対する免疫寛容状態の成立を阻止し、川崎病を予防
    するために、妊婦に接種する、請求項1または2記載の
    川崎病予防薬。
  6. 【請求項6】 A群化膿連鎖球菌の発赤毒に対する抗体
    を含む、川崎病急性期症状治療薬。
  7. 【請求項7】 A群化膿連鎖球菌の発赤毒に対する抗体
    から分離作製したF(ab')2 画分。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の画分を含有する川崎病急
    性期症状治療薬。
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Pediatric Research,1990年,Vol.27,No.1,P.11−15
日本臨床,1983年,Vol.41,No.9,P.2063−2068

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