JP3448636B2 - 陽電子を用いた材料評価装置及び評価方法 - Google Patents
陽電子を用いた材料評価装置及び評価方法Info
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- JP3448636B2 JP3448636B2 JP24852499A JP24852499A JP3448636B2 JP 3448636 B2 JP3448636 B2 JP 3448636B2 JP 24852499 A JP24852499 A JP 24852499A JP 24852499 A JP24852499 A JP 24852499A JP 3448636 B2 JP3448636 B2 JP 3448636B2
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、陽電子を用いた材
料評価装置及び評価方法に関し、さらに詳しくは、金
属、半導体、化合物などの材料中における、主として空
孔、空孔集合体、転位などの結晶欠陥情報を検知し評価
するための材料評価装置及び材料評価方法に関する。
料評価装置及び評価方法に関し、さらに詳しくは、金
属、半導体、化合物などの材料中における、主として空
孔、空孔集合体、転位などの結晶欠陥情報を検知し評価
するための材料評価装置及び材料評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の高度かつ精密な技術の進展に伴
い、種々の分野において使用される材料に対する要求は
ますます厳しくなっている。特に、不純物がきわめて少
なく、その上、内在する欠陥も極度に低減された材料が
強く要望されるようになっている。例えば、超高密度集
積回路(超LSI)などの基板に用いられるシリコンで
は、回路の安定動作のため、テンナイン%以上の超高純
度であって、しかも転位は皆無で空孔や空孔集合体のよ
うなわずかな欠陥、すなわち結晶学的微少欠陥も可能な
限り少ない単結晶が要求される。このような、材料中に
存在する原子空孔、空孔集合体、あるいは転位のような
結晶格子の欠陥の種類や量などを、きわめて敏感に検出
する方法として、陽電子寿命を測定したり、陽電子が消
滅する際に発生するγ線を計測評価したりする方法があ
る。
い、種々の分野において使用される材料に対する要求は
ますます厳しくなっている。特に、不純物がきわめて少
なく、その上、内在する欠陥も極度に低減された材料が
強く要望されるようになっている。例えば、超高密度集
積回路(超LSI)などの基板に用いられるシリコンで
は、回路の安定動作のため、テンナイン%以上の超高純
度であって、しかも転位は皆無で空孔や空孔集合体のよ
うなわずかな欠陥、すなわち結晶学的微少欠陥も可能な
限り少ない単結晶が要求される。このような、材料中に
存在する原子空孔、空孔集合体、あるいは転位のような
結晶格子の欠陥の種類や量などを、きわめて敏感に検出
する方法として、陽電子寿命を測定したり、陽電子が消
滅する際に発生するγ線を計測評価したりする方法があ
る。
【0003】陽電子とは、電子と同じ質量を有し、電子
と全く同じ絶対値のプラスの電荷を持った電子の反粒子
の一つである。この陽電子は、金属などの材料の中に入
射すると、短時間で入射の運動エネルギーをなくし、そ
の後の挙動は熱運動となる。金属、半導体、化合物など
の材料は、プラスの電荷を有する核の周りにマイナスの
電荷を持つ電子が取り囲んだ構造である原子の集合体か
らできており、これらの材料の多くは、その集合体を構
成する原子が3次元空間に規則正しく立体的な配列をし
た結晶体の形態を取っている。例えば、金属などの結晶
では、プラスの電荷を持つイオンの配列からできている
ので、その中に入った陽電子は、イオンとは同符号同志
で反発し、主としてイオンから離れた格子間位置で電子
と衝突し、合体して消滅する。
と全く同じ絶対値のプラスの電荷を持った電子の反粒子
の一つである。この陽電子は、金属などの材料の中に入
射すると、短時間で入射の運動エネルギーをなくし、そ
の後の挙動は熱運動となる。金属、半導体、化合物など
の材料は、プラスの電荷を有する核の周りにマイナスの
電荷を持つ電子が取り囲んだ構造である原子の集合体か
らできており、これらの材料の多くは、その集合体を構
成する原子が3次元空間に規則正しく立体的な配列をし
た結晶体の形態を取っている。例えば、金属などの結晶
では、プラスの電荷を持つイオンの配列からできている
ので、その中に入った陽電子は、イオンとは同符号同志
で反発し、主としてイオンから離れた格子間位置で電子
と衝突し、合体して消滅する。
【0004】しかし、空孔や転位など原子の不足した結
晶格子欠陥は、相対的にマイナスに帯電しているので、
プラスの陽電子はその部分にまず捕獲され、やがては電
子と衝突して合体消滅する。この陽電子が電子と衝突し
て合体消滅するとき、エネルギーが511keVで、方
向がほぼ正反対の2本のγ線を放出する。陽電子が材料
に入射してから、電子と衝突して消滅するまでの時間
は、欠陥のない部分に存在している場合と欠陥に捉えら
れた場合とでは異なり、欠陥の形によっても異なる。
晶格子欠陥は、相対的にマイナスに帯電しているので、
プラスの陽電子はその部分にまず捕獲され、やがては電
子と衝突して合体消滅する。この陽電子が電子と衝突し
て合体消滅するとき、エネルギーが511keVで、方
向がほぼ正反対の2本のγ線を放出する。陽電子が材料
に入射してから、電子と衝突して消滅するまでの時間
は、欠陥のない部分に存在している場合と欠陥に捉えら
れた場合とでは異なり、欠陥の形によっても異なる。
【0005】そこで、陽電子の入射より消滅までの時間
変化を解析すれば、欠陥の状態を把握することができる
のである。また、動き回っている電子との消滅から発生
するγ線は、ドップラー効果による波長のずれを生じ、
正反対の方向に放出されるγ線の相対角度も、その電子
の持つエネルギーによってずれを生じる。したがって、
これらを解析することにより、きらに詳しく欠陥の情報
を知ることができる。
変化を解析すれば、欠陥の状態を把握することができる
のである。また、動き回っている電子との消滅から発生
するγ線は、ドップラー効果による波長のずれを生じ、
正反対の方向に放出されるγ線の相対角度も、その電子
の持つエネルギーによってずれを生じる。したがって、
これらを解析することにより、きらに詳しく欠陥の情報
を知ることができる。
【0006】上記のような材料中における結晶格子欠陥
の種類や量を測定するための陽電子評価方法は、上述し
た陽電子の特性を利用して行うものである。陽電子は、
β+壊変型放射性同位体の崩壊過程で発生する。そこ
で、上記のような陽電子を用いた材料評価方法において
は、線源としてこの放射性同位体を用い、線源と被測定
材料とを密着させて前記被測定材料の格子欠陥を計測す
ることが一般に行われている。例えば、22Naは半減
期が長く、入手しやすく、取り扱いが容易で、NaCl
などの形をしていて化学杓にも安定であるから、通常N
i箔などのカプセルに封入されて陽電子線源として使用
されている。
の種類や量を測定するための陽電子評価方法は、上述し
た陽電子の特性を利用して行うものである。陽電子は、
β+壊変型放射性同位体の崩壊過程で発生する。そこ
で、上記のような陽電子を用いた材料評価方法において
は、線源としてこの放射性同位体を用い、線源と被測定
材料とを密着させて前記被測定材料の格子欠陥を計測す
ることが一般に行われている。例えば、22Naは半減
期が長く、入手しやすく、取り扱いが容易で、NaCl
などの形をしていて化学杓にも安定であるから、通常N
i箔などのカプセルに封入されて陽電子線源として使用
されている。
【0007】この22Naはβ+崩壊の際、1.28M
eVのγ線を放出するので、線源を被測定材料にて挟む
形にして密着させておき、シンチレーションカウンター
などの検出器を用意して、1.28Mevのγ線を感知
後、511kevのγ線が検出されるまでの時間を計測
する。すなわち、線源と被測定材料との距離がきわめて
近いので、1.28MeVのγ線が放出された時が陽電
子の材料に入射したスタート時点であり、511keV
のγ線が検出された時が、陽電子の消滅した時点とする
ことができる。このようにして、陽電子の寿命を計測し
たり、ドップラー広がりと言われる放出エネルギー分布
の変化を検出したり、さらには511keVのγ線の放
出角度なども解析したりすることにより、より多くの欠
陥の情報をきわめて高感度に得ることができるものであ
る。
eVのγ線を放出するので、線源を被測定材料にて挟む
形にして密着させておき、シンチレーションカウンター
などの検出器を用意して、1.28Mevのγ線を感知
後、511kevのγ線が検出されるまでの時間を計測
する。すなわち、線源と被測定材料との距離がきわめて
近いので、1.28MeVのγ線が放出された時が陽電
子の材料に入射したスタート時点であり、511keV
のγ線が検出された時が、陽電子の消滅した時点とする
ことができる。このようにして、陽電子の寿命を計測し
たり、ドップラー広がりと言われる放出エネルギー分布
の変化を検出したり、さらには511keVのγ線の放
出角度なども解析したりすることにより、より多くの欠
陥の情報をきわめて高感度に得ることができるものであ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、試料を
加熱又は冷却してその状態を変えたい場合、あるいは異
形形状の試料などの場合には、上記のようにして線源に
被測定試料を密着させる方法では限界があり、被測定材
料の格子欠陥を自由に計測することが困難であった。
加熱又は冷却してその状態を変えたい場合、あるいは異
形形状の試料などの場合には、上記のようにして線源に
被測定試料を密着させる方法では限界があり、被測定材
料の格子欠陥を自由に計測することが困難であった。
【0009】これに対し、本発明者らの一人は、陽電子
線源と被測定材料とを隔離して配置し、前記陽電子線源
と前記被測定材料との間に薄いプラスチックシンチレー
タを置き、そこを陽電子が通過する時刻を検出して、材
料への陽電子の入射時刻を知る方法を提案した。金属な
どの場合においては、陽電子が入射してから消滅するま
での時間は、100〜300ps(ピコ秒:10
−12 )程度とされている。したがって、このような
短時間の計測においては、陽電子線源で発生した陽電子
が空間を飛翔して被測定材料に入射するまでに要する時
間も測定誤差を大きくしてしまう。したがって、上記方
法においては、測定の開始時を陽電子線源での陽電子の
発生時点ではなく、被測定材料により近い場所に設けら
れた陽電子検出器を通過する時点に設定している。
線源と被測定材料とを隔離して配置し、前記陽電子線源
と前記被測定材料との間に薄いプラスチックシンチレー
タを置き、そこを陽電子が通過する時刻を検出して、材
料への陽電子の入射時刻を知る方法を提案した。金属な
どの場合においては、陽電子が入射してから消滅するま
での時間は、100〜300ps(ピコ秒:10
−12 )程度とされている。したがって、このような
短時間の計測においては、陽電子線源で発生した陽電子
が空間を飛翔して被測定材料に入射するまでに要する時
間も測定誤差を大きくしてしまう。したがって、上記方
法においては、測定の開始時を陽電子線源での陽電子の
発生時点ではなく、被測定材料により近い場所に設けら
れた陽電子検出器を通過する時点に設定している。
【0010】しかしながら、上記のように陽電子線源と
被測定材料とを離して配置すると、白色陽電子を用いる
限り、計測及び材料評価のS/N比や時間分解能が低下
するなどの問題が発生する。そこで、陽電子線源から放
出された陽電子を、質量分析に用いるものと同様な平行
に置かれたセクター型磁極の間を通過させたり、電磁レ
ンズを通過させたりして、特定範囲のエネルギーを持つ
陽電子のみを分別し、収束させてから前記被測定材料に
入射させるなどの試みもなされている(白井泰治他:日
本金属学会誌,第59巻第6号(1995),P.67
9、および白井泰治:生産と技術,第48巻第4号(1
996),P.50)。
被測定材料とを離して配置すると、白色陽電子を用いる
限り、計測及び材料評価のS/N比や時間分解能が低下
するなどの問題が発生する。そこで、陽電子線源から放
出された陽電子を、質量分析に用いるものと同様な平行
に置かれたセクター型磁極の間を通過させたり、電磁レ
ンズを通過させたりして、特定範囲のエネルギーを持つ
陽電子のみを分別し、収束させてから前記被測定材料に
入射させるなどの試みもなされている(白井泰治他:日
本金属学会誌,第59巻第6号(1995),P.67
9、および白井泰治:生産と技術,第48巻第4号(1
996),P.50)。
【0011】しかしながら、このような改善によっても
陽電子線源と被測定材料とを大きく隔離して配置した場
合、陽電子線源で発生した陽電子数に対し、被測定材料
に入射する陽電子の数が極めて小さくなる状況は避ける
ことができない状況であった。このため、被測定材料の
計測時間が大幅に増大してしまうととともに、計測及び
材料評価におけるS/N比及び時間分解能も低下してし
まうという問題が生じていた。また、被測定材料への入
射陽電子数を増加させるために、多量の放射性同位体の
陽電子線源を用いることも考えられるが、安全性の観点
から実現は困難視されている。
陽電子線源と被測定材料とを大きく隔離して配置した場
合、陽電子線源で発生した陽電子数に対し、被測定材料
に入射する陽電子の数が極めて小さくなる状況は避ける
ことができない状況であった。このため、被測定材料の
計測時間が大幅に増大してしまうととともに、計測及び
材料評価におけるS/N比及び時間分解能も低下してし
まうという問題が生じていた。また、被測定材料への入
射陽電子数を増加させるために、多量の放射性同位体の
陽電子線源を用いることも考えられるが、安全性の観点
から実現は困難視されている。
【0012】本発明は、陽電子を被測定材料に入射さ
せ、前記陽電子の寿命及び前記陽電子の消滅によって被
測定材料から放出されるγ線を測定することにより、前
記被測定材料の結晶性を評価する材料評価装置及び材料
評価方法において、陽電子線源と被測定材料とを隔離さ
せた場合においても、高いS/N比と時間分解能を有
し、比較的短時間で前記被測定材料の結晶性の評価を正
確に行うことが可能な材料評価装置及び材料評価方法を
提供することを目的とする。
せ、前記陽電子の寿命及び前記陽電子の消滅によって被
測定材料から放出されるγ線を測定することにより、前
記被測定材料の結晶性を評価する材料評価装置及び材料
評価方法において、陽電子線源と被測定材料とを隔離さ
せた場合においても、高いS/N比と時間分解能を有
し、比較的短時間で前記被測定材料の結晶性の評価を正
確に行うことが可能な材料評価装置及び材料評価方法を
提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の材料評価装置
は、上記目的を達成すべく、陽電子線源と、電磁レンズ
と、陽電子検出器と、γ線検出器とを具える。そして、
前記電磁レンズから発生される磁場の中心部の強さが1
000〜8000ガウスであり、前記陽電子線源は前記
電磁レンズ内に設置される。さらに、前記陽電子線源は
前記被測定材料から隔離して設置されるとともに、前記
陽電子線源から前記被測定材料までの陽電子飛翔経路が
真空に保持されていることを特徴とする。
は、上記目的を達成すべく、陽電子線源と、電磁レンズ
と、陽電子検出器と、γ線検出器とを具える。そして、
前記電磁レンズから発生される磁場の中心部の強さが1
000〜8000ガウスであり、前記陽電子線源は前記
電磁レンズ内に設置される。さらに、前記陽電子線源は
前記被測定材料から隔離して設置されるとともに、前記
陽電子線源から前記被測定材料までの陽電子飛翔経路が
真空に保持されていることを特徴とする。
【0014】また、本発明の材料評価方法は、前記陽電
子線源を電磁レンズ内に設置して、前記電磁レンズから
中心部の強さが1000〜8000ガウスである磁場を
発生させ、前記陽電子線源で発生した陽電子を被測定材
料方向に集束させるとともに、前記陽電子線源から前記
被測定材料までの陽電子飛翔経路を真空に保持する。そ
して、前記陽電子線源と前記被測定材料との間に陽電子
検出器を設置することにより、前記陽電子線源から前記
被測定材料へ向けて発せられた陽電子が前記陽電子検出
器を通過する時刻を検出して、この時刻を前記被測定材
料の結晶性の評価開始のための基準時刻とし、前記陽電
子線源を前記被測定材料から隔離させて前記被測定材料
の結晶性を評価することを特徴とする。
子線源を電磁レンズ内に設置して、前記電磁レンズから
中心部の強さが1000〜8000ガウスである磁場を
発生させ、前記陽電子線源で発生した陽電子を被測定材
料方向に集束させるとともに、前記陽電子線源から前記
被測定材料までの陽電子飛翔経路を真空に保持する。そ
して、前記陽電子線源と前記被測定材料との間に陽電子
検出器を設置することにより、前記陽電子線源から前記
被測定材料へ向けて発せられた陽電子が前記陽電子検出
器を通過する時刻を検出して、この時刻を前記被測定材
料の結晶性の評価開始のための基準時刻とし、前記陽電
子線源を前記被測定材料から隔離させて前記被測定材料
の結晶性を評価することを特徴とする。
【0015】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意
検討を試みた。前述のような陽電子を用いた材料評価方
法においては、陽電子線源として一般的には放射性同位
体を用いる。放射性同位体からは全方向に均等に陽電子
が放出されるので、陽電子線源と被測定材料とを隔離し
た場合においては、材料の評価に寄与する陽電子数が極
端に少なくなってしまう。このため、陽電子線源と被測
定材料とを密着させた場合と比較して計測時間が極端に
長くなってしまう。そこで、本発明者らは、陽電子線源
で発生した陽電子をできるだけ多く被測定材料に入射さ
せる方法を検討した。
検討を試みた。前述のような陽電子を用いた材料評価方
法においては、陽電子線源として一般的には放射性同位
体を用いる。放射性同位体からは全方向に均等に陽電子
が放出されるので、陽電子線源と被測定材料とを隔離し
た場合においては、材料の評価に寄与する陽電子数が極
端に少なくなってしまう。このため、陽電子線源と被測
定材料とを密着させた場合と比較して計測時間が極端に
長くなってしまう。そこで、本発明者らは、陽電子線源
で発生した陽電子をできるだけ多く被測定材料に入射さ
せる方法を検討した。
【0016】陽電子の飛翔途中で磁場を通過させ、特定
エネルギーのものを分別する方法は、前述のようにすで
に行われており、他方、電子顕微鏡などでは、電磁レン
ズにより電子線を収束させることが通常に行われてい
る。本発明者らは、かかる観点から、この電磁レンズを
使って、被測定材料の方に向かう陽電子の数を増すこと
を検討した。電子顕微鏡の場合は、電子銃から発射さ
れ、加速された電子の流れをスリットなどである程度平
行にさせた後、電磁レンズで収束させる。これに対し
て、陽電子は陽電子線源からあらゆる方向にほぼ均等に
放出されるため、陽電子線源から電磁レンズの方に飛翔
してきた陽電子だけしか収束の対象にすることできな
い。
エネルギーのものを分別する方法は、前述のようにすで
に行われており、他方、電子顕微鏡などでは、電磁レン
ズにより電子線を収束させることが通常に行われてい
る。本発明者らは、かかる観点から、この電磁レンズを
使って、被測定材料の方に向かう陽電子の数を増すこと
を検討した。電子顕微鏡の場合は、電子銃から発射さ
れ、加速された電子の流れをスリットなどである程度平
行にさせた後、電磁レンズで収束させる。これに対し
て、陽電子は陽電子線源からあらゆる方向にほぼ均等に
放出されるため、陽電子線源から電磁レンズの方に飛翔
してきた陽電子だけしか収束の対象にすることできな
い。
【0017】そこで、電磁レンズ内に入る陽電子の数を
増すために、陽電子線源を電磁レンズの磁場の中に入
れ、電磁レンズの強度を調整してみた。その結果、発生
する陽電子のエネルギーにもよるが、陽電子線源から被
測定材料の方向に対し、0〜±50°の範囲に放出され
る陽電子を、陽電子線源から十分離れた被測定試料に収
束させ得ることがわかった。
増すために、陽電子線源を電磁レンズの磁場の中に入
れ、電磁レンズの強度を調整してみた。その結果、発生
する陽電子のエネルギーにもよるが、陽電子線源から被
測定材料の方向に対し、0〜±50°の範囲に放出され
る陽電子を、陽電子線源から十分離れた被測定試料に収
束させ得ることがわかった。
【0018】また、陽電子線源から放出された陽電子が
被測定材料に到達する以前に、陽電子が気体分子と衝突
して散乱したり、対消滅したりすることなどにより、結
果的に被測定材料に到達する陽電子数が減少しないよう
に試みた。この結果、陽電子線源から被測定材料までの
陽電子飛翔経路を10―4torr程度よりも高い真空
度に設定することにより、計測感度が向上し、材料評価
において高いS/N比が得られることが判明した。
被測定材料に到達する以前に、陽電子が気体分子と衝突
して散乱したり、対消滅したりすることなどにより、結
果的に被測定材料に到達する陽電子数が減少しないよう
に試みた。この結果、陽電子線源から被測定材料までの
陽電子飛翔経路を10―4torr程度よりも高い真空
度に設定することにより、計測感度が向上し、材料評価
において高いS/N比が得られることが判明した。
【0019】さらに、陽電子寿命の正確な測定には、陽
電子線源にて発生した時点からではなく、被測定材料に
入射した時点をスタートとし、それから消滅するまでの
時間を計測する必要がある。陽電子線源と被測定材料と
を離して置いた場合、陽電子線源で発生した際に放出さ
れるγ線の検出を陽電子の材料への入射のスタートとす
ると、測定誤差が大きくなる。したがって、被測定材料
に接近した位置において通過する陽電子を検出し、この
通過した時刻を陽電子寿命のスタート時点とすべく、陽
電子検出器を陽電子線源と被測定材料との間に設置し
た。本発明は、本発明者らによる上記検討の結果として
なされたものである。
電子線源にて発生した時点からではなく、被測定材料に
入射した時点をスタートとし、それから消滅するまでの
時間を計測する必要がある。陽電子線源と被測定材料と
を離して置いた場合、陽電子線源で発生した際に放出さ
れるγ線の検出を陽電子の材料への入射のスタートとす
ると、測定誤差が大きくなる。したがって、被測定材料
に接近した位置において通過する陽電子を検出し、この
通過した時刻を陽電子寿命のスタート時点とすべく、陽
電子検出器を陽電子線源と被測定材料との間に設置し
た。本発明は、本発明者らによる上記検討の結果として
なされたものである。
【0020】本発明によれば、陽電子線源と被測定材料
とを隔離した場合においても、高いS/N比と時間分解
能を有するとともに、比較的短時間において正確な材料
の評価を行うことができる。このため、被測定材料に対
する冷却装置や加熱装置などを設置することができ、材
料が任意の状態にある場合の結晶性を精度良く計測・評
価することができる。なお、本発明でいう結晶性とは、
上述したような被測定材料の格子欠陥などの特性をい
う。
とを隔離した場合においても、高いS/N比と時間分解
能を有するとともに、比較的短時間において正確な材料
の評価を行うことができる。このため、被測定材料に対
する冷却装置や加熱装置などを設置することができ、材
料が任意の状態にある場合の結晶性を精度良く計測・評
価することができる。なお、本発明でいう結晶性とは、
上述したような被測定材料の格子欠陥などの特性をい
う。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態
に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の材料評価
装置の一例を示す模式図である。図1に示す材料評価装
置10は、陽電子線源1と、電磁レンズ3と、陽電子検
出器5と、第1のγ線検出器7―1及び第2のγ線検出
器7−2とを具えている。そして、陽電子線源1は、電
磁レンズ3が発生する磁場内に位置するように、電磁レ
ンズ3の間に設置されている。また、陽電子線源1及び
陽電子検出器5、並びに被測定材料6は真空容器2中に
設置され、真空容器2に設けられた排気口8から真空排
気することにより、陽電子線源1から被測定材料6まで
の陽電子飛翔距離が真空に保持されるようになってい
る。
に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の材料評価
装置の一例を示す模式図である。図1に示す材料評価装
置10は、陽電子線源1と、電磁レンズ3と、陽電子検
出器5と、第1のγ線検出器7―1及び第2のγ線検出
器7−2とを具えている。そして、陽電子線源1は、電
磁レンズ3が発生する磁場内に位置するように、電磁レ
ンズ3の間に設置されている。また、陽電子線源1及び
陽電子検出器5、並びに被測定材料6は真空容器2中に
設置され、真空容器2に設けられた排気口8から真空排
気することにより、陽電子線源1から被測定材料6まで
の陽電子飛翔距離が真空に保持されるようになってい
る。
【0022】さらに、陽電子線源1及び陽電子検出器
5、並びに被測定材料6は、この順に同一線上に配置さ
れている。そして、第1のγ線検出器7―1及び第2の
γ線検出器7−2は、それぞれ被測定材料6の左右にお
いて被測定材料6を挟むようにして配置されている。
5、並びに被測定材料6は、この順に同一線上に配置さ
れている。そして、第1のγ線検出器7―1及び第2の
γ線検出器7−2は、それぞれ被測定材料6の左右にお
いて被測定材料6を挟むようにして配置されている。
【0023】電磁レンズ3は、中心部における磁場強度
が1000〜8000ガウスであるような磁場を発生す
る。陽電子線源1から発せられた陽電子は、電磁レンズ
3が発生する前記磁場の影響を受けることによって被測
定材料6の方向に集束され、陽電子線4を形成する。そ
して、陽電子線4は被測定材料6に向かって進み、途中
に設置された陽電子検出器5を通過する。陽電子線4が
陽電子検出器5を通過した時刻を計測しておき、これを
陽電子寿命の計測基準時刻とする。
が1000〜8000ガウスであるような磁場を発生す
る。陽電子線源1から発せられた陽電子は、電磁レンズ
3が発生する前記磁場の影響を受けることによって被測
定材料6の方向に集束され、陽電子線4を形成する。そ
して、陽電子線4は被測定材料6に向かって進み、途中
に設置された陽電子検出器5を通過する。陽電子線4が
陽電子検出器5を通過した時刻を計測しておき、これを
陽電子寿命の計測基準時刻とする。
【0024】そして、陽電子検出器5を通過した陽電子
線4は被測定材料6中に入射して、材料の結晶性を評価
する。陽電子が材料中の欠陥に捕獲され、そこで電子と
衝突して消滅する際に発生し、被測定材料6から外部に
放出されるγ線を第1及び第2のγ線検出器7−1及び
7−2で検出する。したがって、陽電子検出器5を通過
した際の時刻からγ線を検出するまでの時間を計測する
ことにより、陽電子の寿命を計測することができる。そ
して、このようにして計測した種々の陽電子寿命から被
測定材料6中における結晶性の欠陥の種類や形状を知る
ことができる。
線4は被測定材料6中に入射して、材料の結晶性を評価
する。陽電子が材料中の欠陥に捕獲され、そこで電子と
衝突して消滅する際に発生し、被測定材料6から外部に
放出されるγ線を第1及び第2のγ線検出器7−1及び
7−2で検出する。したがって、陽電子検出器5を通過
した際の時刻からγ線を検出するまでの時間を計測する
ことにより、陽電子の寿命を計測することができる。そ
して、このようにして計測した種々の陽電子寿命から被
測定材料6中における結晶性の欠陥の種類や形状を知る
ことができる。
【0025】図2は、図1における電磁レンズ3の近傍
を拡大して示した図である。陽電子線源は、電磁レンズ
が発生する磁場中に位置するように設置されていれば、
その位置については特に限定されない。しかしながら、
電磁レンズが発生する磁場内の上半分に陽電子線源を設
置することが好ましい。例えば、図1に示すような材料
評価装置10の場合においては、図2に示すように、電
磁レンズ3によって発生する磁場領域11の上半分部1
4中に位置することが好ましい。これによって、陽電子
線源から発生した陽電子の被測定材料方向へ集束される
割合をさらに増すことができ、本発明の目的をより効果
的に達成することができる。
を拡大して示した図である。陽電子線源は、電磁レンズ
が発生する磁場中に位置するように設置されていれば、
その位置については特に限定されない。しかしながら、
電磁レンズが発生する磁場内の上半分に陽電子線源を設
置することが好ましい。例えば、図1に示すような材料
評価装置10の場合においては、図2に示すように、電
磁レンズ3によって発生する磁場領域11の上半分部1
4中に位置することが好ましい。これによって、陽電子
線源から発生した陽電子の被測定材料方向へ集束される
割合をさらに増すことができ、本発明の目的をより効果
的に達成することができる。
【0026】さらに、図1に示す陽電子線源1は、上記
同様の理由から電磁レンズ3の中心軸12上に配置する
ことが好ましい。
同様の理由から電磁レンズ3の中心軸12上に配置する
ことが好ましい。
【0027】電磁レンズの磁場内の中心部、例えば、図
1に示すような材料評価装置10においては図2に示す
磁場内の中心部13において、磁場の強さが、1000
〜8000ガウスであることが好ましく、さらには30
00〜5000ガウスであることが好ましい。これによ
って、陽電子線源から発せられた陽電子の集束度合いが
増し、被測定材料の測定に寄与する陽電子数が増加す
る。したがって、計測時間並びに計測・評価のS/N比
及び時間分解能が増して、本発明の目的をより効果的に
達成することができる。
1に示すような材料評価装置10においては図2に示す
磁場内の中心部13において、磁場の強さが、1000
〜8000ガウスであることが好ましく、さらには30
00〜5000ガウスであることが好ましい。これによ
って、陽電子線源から発せられた陽電子の集束度合いが
増し、被測定材料の測定に寄与する陽電子数が増加す
る。したがって、計測時間並びに計測・評価のS/N比
及び時間分解能が増して、本発明の目的をより効果的に
達成することができる。
【0028】また、陽電子線源から被測定材料までの陽
電子飛翔経路、例えば、図1に示す材料評価装置10の
場合においては、陽電子線源1から被測定材料6までの
間が真空に保持され、本発明の目的を達成することがで
きれば、その間の真空度については、特に限定されな
い。しかしながら、前記陽電子飛翔経路は1×10―4
torr以下の圧力に保持されていることが好ましく、
さらには1×10―6〜1×10―9torrの圧力に
保持されていることが好ましい。これによって、陽電子
線源から発せられた陽電子の散乱される割合が減少し、
被測定材料の計測及び評価に寄与する陽電子の割合を向
上させることができる。
電子飛翔経路、例えば、図1に示す材料評価装置10の
場合においては、陽電子線源1から被測定材料6までの
間が真空に保持され、本発明の目的を達成することがで
きれば、その間の真空度については、特に限定されな
い。しかしながら、前記陽電子飛翔経路は1×10―4
torr以下の圧力に保持されていることが好ましく、
さらには1×10―6〜1×10―9torrの圧力に
保持されていることが好ましい。これによって、陽電子
線源から発せられた陽電子の散乱される割合が減少し、
被測定材料の計測及び評価に寄与する陽電子の割合を向
上させることができる。
【0029】陽電子検出器としては、プラスチックシン
チレ一タを用いることができる。しかしながら、陽電子
の損失を少なくするためにプラスチックシンチレータの
厚さを小さくすると、検出感度が低下してしまうという
問題がある。したがって、プラスチックシンチレータに
代えてアバランチェフォトダイオードを用いることが好
ましい。このアバランチェフォトダイオードによって検
出された信号は、光電子倍増管によって増幅され、上述
したような陽電子寿命を測定する際の基準時刻となる。
チレ一タを用いることができる。しかしながら、陽電子
の損失を少なくするためにプラスチックシンチレータの
厚さを小さくすると、検出感度が低下してしまうという
問題がある。したがって、プラスチックシンチレータに
代えてアバランチェフォトダイオードを用いることが好
ましい。このアバランチェフォトダイオードによって検
出された信号は、光電子倍増管によって増幅され、上述
したような陽電子寿命を測定する際の基準時刻となる。
【0030】また、このような陽電子検出器は、陽電子
が最も効率よく通過(透過)できるように、例えば、図
1に示すように、陽電子線4が集束する位置近傍に配置
する。また、真空容器2の大きさが比較的小さい場合に
おいては、陽電子線源1の直下に配置することもでき
る。そして、上記のようにアバランチェフォトダイオー
ドから陽電子検出器を構成する場合、陽電子の通過率
(透過率)と検出器効率を保持する目的から、その厚さ
は50〜200μmであることが好ましい。
が最も効率よく通過(透過)できるように、例えば、図
1に示すように、陽電子線4が集束する位置近傍に配置
する。また、真空容器2の大きさが比較的小さい場合に
おいては、陽電子線源1の直下に配置することもでき
る。そして、上記のようにアバランチェフォトダイオー
ドから陽電子検出器を構成する場合、陽電子の通過率
(透過率)と検出器効率を保持する目的から、その厚さ
は50〜200μmであることが好ましい。
【0031】さらに、図1に示す材料評価装置10にお
いては、γ線検出器を第1のγ線検出器7−1と第2の
γ線検出器7−2とから構成している。そして、被測定
材料6の左右において、これを挟むようにして対向配置
させている。これにより、被測定材料から正反対の向き
に放出されるγ線を精度よく測定することができ、被測
定材料の結晶性の評価精度を向上させることができる。
しかしながら、このような2つのγ線検出器を用いなく
とも、本発明の目的は十分に達成することができる。
いては、γ線検出器を第1のγ線検出器7−1と第2の
γ線検出器7−2とから構成している。そして、被測定
材料6の左右において、これを挟むようにして対向配置
させている。これにより、被測定材料から正反対の向き
に放出されるγ線を精度よく測定することができ、被測
定材料の結晶性の評価精度を向上させることができる。
しかしながら、このような2つのγ線検出器を用いなく
とも、本発明の目的は十分に達成することができる。
【0032】陽電子線源としては、陽電子を放出するも
のであれば、特に限定されるものではないが、放出陽電
子の数が多く半減期の長い、Tiなどの金属カプセルに
封入された22Na(陽電子平均エネルギー:350k
eV)や68Ge(陽電子平均エネルギー:800ke
V)などを用いることができる。電磁レンズとしては、
電子顕微鏡などに用いられるような、レンズ内に円筒状
の巻線を設置し、この巻線に電流を通じて励磁したもの
などを使用することができる。γ線検出器としては、通
常のシンチレーションカウンタなどを使用することがで
きる。
のであれば、特に限定されるものではないが、放出陽電
子の数が多く半減期の長い、Tiなどの金属カプセルに
封入された22Na(陽電子平均エネルギー:350k
eV)や68Ge(陽電子平均エネルギー:800ke
V)などを用いることができる。電磁レンズとしては、
電子顕微鏡などに用いられるような、レンズ内に円筒状
の巻線を設置し、この巻線に電流を通じて励磁したもの
などを使用することができる。γ線検出器としては、通
常のシンチレーションカウンタなどを使用することがで
きる。
【0033】図3は、図1に示す材料評価装置の変形例
を示す模式図である。なお、図1に示す材料評価装置と
同様の部分については、同じ符号を用いて表している。
図3に示す材料評価装置20は、図1に示す材料評価装
置10の陽電子検出器5と被測定材料6との間に追加の
電磁レンズ15を設置している。これにより、陽電子線
4は陽電子検出器5を通過した後、再度集束されて被測
定材料6に入射するようになるので、計測及び材料評価
のS/N比や時間分解能を向上させることができる。ま
た、陽電子検出器の位置によらず、種々の治具や測定器
を設置することができる。
を示す模式図である。なお、図1に示す材料評価装置と
同様の部分については、同じ符号を用いて表している。
図3に示す材料評価装置20は、図1に示す材料評価装
置10の陽電子検出器5と被測定材料6との間に追加の
電磁レンズ15を設置している。これにより、陽電子線
4は陽電子検出器5を通過した後、再度集束されて被測
定材料6に入射するようになるので、計測及び材料評価
のS/N比や時間分解能を向上させることができる。ま
た、陽電子検出器の位置によらず、種々の治具や測定器
を設置することができる。
【0034】図3に示すような材料評価装置20におい
ても、陽電子線源1などを設置する位置などについて
は、図1に示す材料評価装置10と同じである。
ても、陽電子線源1などを設置する位置などについて
は、図1に示す材料評価装置10と同じである。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明の材料評価装置を
具体的に示す。本実施例においては、図1に示すような
材料評価装置10を作製した。陽電子線源1には、直径
19mm、厚さ0.5mmの金属カプセルに封入された
100マイクロキュリーの68Geを用い、図2に示す
ような電磁レンズ3の磁場領域11の上半分部14中で
あって、磁場内中心13から20mm上昇したレンズ軸
12上に設置した。真空容器2には、直径40mm、肉
厚3mm、長さ約300mmのアルミニウム合金管を用
いた。電磁レンズ3には、励磁コイルの外側を磁場集束
用軟鉄で覆った外鉄心形状とし、軟鉄製ポールピースを
レンズ中に埋め込んでなるものを用いた。また、電磁レ
ンズ3の磁場内中心13における磁場強度は、3200
ガウスであった。
具体的に示す。本実施例においては、図1に示すような
材料評価装置10を作製した。陽電子線源1には、直径
19mm、厚さ0.5mmの金属カプセルに封入された
100マイクロキュリーの68Geを用い、図2に示す
ような電磁レンズ3の磁場領域11の上半分部14中で
あって、磁場内中心13から20mm上昇したレンズ軸
12上に設置した。真空容器2には、直径40mm、肉
厚3mm、長さ約300mmのアルミニウム合金管を用
いた。電磁レンズ3には、励磁コイルの外側を磁場集束
用軟鉄で覆った外鉄心形状とし、軟鉄製ポールピースを
レンズ中に埋め込んでなるものを用いた。また、電磁レ
ンズ3の磁場内中心13における磁場強度は、3200
ガウスであった。
【0036】陽電子検出器5には、有効光電面が5mm
角で厚さが110μmのアバランチェフォトダイオード
を用いた。γ線検出器としては、BaF2のシンチレー
ションカウンタを用いた。被測定材料6には厚さ0.5
mmのシリコンウエハを用いた。そして、陽電子線源1
から被測定材料6までの距離は約250mmとし、排気
口8から排気速度160L/秒の油回転ポンプと、到達
圧力10―8torr、排気速度145L/秒のターボ
分子とを組み合わせて、真空容器2中を1×10 ―6t
orrまで排気した。
角で厚さが110μmのアバランチェフォトダイオード
を用いた。γ線検出器としては、BaF2のシンチレー
ションカウンタを用いた。被測定材料6には厚さ0.5
mmのシリコンウエハを用いた。そして、陽電子線源1
から被測定材料6までの距離は約250mmとし、排気
口8から排気速度160L/秒の油回転ポンプと、到達
圧力10―8torr、排気速度145L/秒のターボ
分子とを組み合わせて、真空容器2中を1×10 ―6t
orrまで排気した。
【0037】上記のように材料評価装置を構成し、陽電
子線源1から陽電子を放出させて被測定材料6であるシ
リコンウエハに陽電子を入射させ、陽電子寿命を計測し
たところ、80カウント/秒であった。
子線源1から陽電子を放出させて被測定材料6であるシ
リコンウエハに陽電子を入射させ、陽電子寿命を計測し
たところ、80カウント/秒であった。
【0038】また、比較のために、同じ100マイクロ
キュリーの22Na陽電子線源をシリコンウエハで直接
挟む通常の方法で陽電子寿命を計測したところ、320
カウント/秒であった。
キュリーの22Na陽電子線源をシリコンウエハで直接
挟む通常の方法で陽電子寿命を計測したところ、320
カウント/秒であった。
【0039】以上から明らかなように、陽電子線源と被
測定材料との距離を約250mmとして隔離したにもか
かわらず、陽電子寿命のカウント数は1/4にしか減少
していない。したがって、陽電子線源と被測定材料とを
十分隔離した場合においても、計測時間が長時間化する
ことなく、高い時間分解能とS/N比で被測定材料の結
晶性を評価できることが判明した。
測定材料との距離を約250mmとして隔離したにもか
かわらず、陽電子寿命のカウント数は1/4にしか減少
していない。したがって、陽電子線源と被測定材料とを
十分隔離した場合においても、計測時間が長時間化する
ことなく、高い時間分解能とS/N比で被測定材料の結
晶性を評価できることが判明した。
【0040】以上、具体例を挙げながら発明の実施の形
態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は
上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸
脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であ
る。
態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は
上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸
脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能であ
る。
【0041】
【発明の効果】本発明の陽電子を用いた材料評価装置及
び評価方法によれば、陽電子線源と被測定材料とを十分
に隔離した場合においても、計測及び材料評価の時間分
解能やS/N比を十分高い状態に保持することができ
る。したがって、陽電子線源と被測定材料との間に種々
の装置や治具を設置することができる。このため、例え
ば、被測定材料を加熱あるいは冷却する装置を陽電子線
源と被測定材料との間に設置して、被測定材料の種々の
状態における結晶性を評価することが可能となる。
び評価方法によれば、陽電子線源と被測定材料とを十分
に隔離した場合においても、計測及び材料評価の時間分
解能やS/N比を十分高い状態に保持することができ
る。したがって、陽電子線源と被測定材料との間に種々
の装置や治具を設置することができる。このため、例え
ば、被測定材料を加熱あるいは冷却する装置を陽電子線
源と被測定材料との間に設置して、被測定材料の種々の
状態における結晶性を評価することが可能となる。
【図1】 本発明の材料評価装置の一例を示す模式図で
ある。
ある。
【図2】 図1に示す材料評価装置の電磁レンズ部分を
拡大して示す図である。
拡大して示す図である。
【図3】 図1に示す材料評価装置の変形例を示す模式
図である。
図である。
1 陽電子線源
2 真空容器
3 電磁レンズ
4 陽電子線
5 陽電子検出器
6 被測定材料
7−1 第1のγ線検出器
7−2 第2のγ線検出器
8 排気口
10、20 材料評価装置
11 電磁レンズによる磁場領域
12 レンズ軸
13 電磁レンズによる磁場内中心部
14 電磁レンズによる磁場領域の上半分部
15 追加の電磁レンズ
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
G01N 23/00 - 23/227
JICSTファイル(JOIS)
Claims (9)
- 【請求項1】 陽電子を被測定材料に入射し、前記陽電
子の寿命を測定することにより、前記被測定材料の結晶
性を評価する材料評価装置であって、 前記材料評価装置は、陽電子線源と、電磁レンズと、陽
電子検出器と、γ線検出器とを具え、前記電磁レンズか
ら発生される磁場の中心部の強さが1000〜8000
ガウスであり、前記陽電子線源は前記電磁レンズ内に設
置されるとともに前記被測定材料から隔離して設置さ
れ、前記陽電子検出器は前記陽電子線源と前記被測定材
料との間に設置されるとともに、前記陽電子線源から前
記被測定材料までの陽電子飛翔経路が真空に保持されて
いることを特徴とする、材料評価装置。 - 【請求項2】 前記陽電子飛翔経路は、1×10―4t
orr以下の圧力に保持されていることを特徴とする、
請求項1に記載の材料評価装置。 - 【請求項3】 前記陽電子検出器は、アバランチェホト
ダイオードであることを特徴とする、請求項1又は2に
記載の材料評価装置。 - 【請求項4】 前記γ線検出器は、第1のγ線検出器と
第2のγ線検出器とからなり、前記第1のγ線検出器及
び前記第2のγ線検出器は、前記被測定材料を挟んで対
向していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか
一記載の材料評価装置。 - 【請求項5】 前記陽電子検出器と前記被測定材料との
間に、追加の電磁レンズを設けたことを特徴とする、請
求項1〜4のいずれか一に記載の材料評価装置。 - 【請求項6】 前記被測定材料を真空中にて加熱するた
めの加熱装置、及び前記被測定材料を真空中にて冷却す
るための冷却装置の少なくとも一方を具えていることを
特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の材料評
価装置。 - 【請求項7】 陽電子線源で発生した陽電子を被測定材
料に入射し、前記陽電子の寿命を測定することにより、
前記被測定材料の結晶性を評価する材料評価方法であっ
て、前記陽電子線源を電磁レンズ内に設置して、前記電磁レ
ンズから中心部の強さが1000〜8000ガウスであ
る磁場を発生させ、 前記陽電子線源で発生した陽電子を
被測定材料方向に集束させるとともに、前記陽電子線源
から前記被測定材料までの陽電子飛翔経路を真空に保持
し、前記陽電子線源と前記被測定材料との間に陽電子検
出器を設置することにより、前記陽電子線源から前記被
測定材料へ向けて発せられた陽電子が前記陽電子検出器
を通過する時刻を検出して、この時刻を前記被測定材料
の結晶性の評価基準時刻とし、前記陽電子線源を前記被
測定材料から隔離させて前記被測定材料の結晶性を評価
することを特徴とする、材料評価方法。 - 【請求項8】 前記陽電子飛翔経路は、1×10―4t
orr以下の圧力に保持されていることを特徴とする、
請求項7に記載の材料評価方法。 - 【請求項9】 前記被測定材料を第1のγ線検出器と第
2のγ線検出器とで挟み、前記被測定材料から互いに反
対方向に放出される消滅γ線を同時に測定するようにし
たことを特徴とする、請求項7又は8に記載の材料評価
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24852499A JP3448636B2 (ja) | 1999-09-02 | 1999-09-02 | 陽電子を用いた材料評価装置及び評価方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24852499A JP3448636B2 (ja) | 1999-09-02 | 1999-09-02 | 陽電子を用いた材料評価装置及び評価方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001074673A JP2001074673A (ja) | 2001-03-23 |
JP3448636B2 true JP3448636B2 (ja) | 2003-09-22 |
Family
ID=17179477
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24852499A Expired - Lifetime JP3448636B2 (ja) | 1999-09-02 | 1999-09-02 | 陽電子を用いた材料評価装置及び評価方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3448636B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6815676B2 (en) * | 2002-06-27 | 2004-11-09 | Osaka University | Material defect evaluation apparatus using positron and its evaluation method |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004340652A (ja) | 2003-05-14 | 2004-12-02 | Hitachi Ltd | 欠陥検査装置および陽電子線応用装置 |
JP4875892B2 (ja) * | 2005-12-28 | 2012-02-15 | 大栄無線電機株式会社 | 陽電子寿命測定装置及び測定方法 |
JP5843315B2 (ja) | 2010-11-24 | 2016-01-13 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 陽電子消滅特性測定装置及び陽電子消滅特性測定方法 |
US10748740B2 (en) * | 2018-08-21 | 2020-08-18 | Fei Company | X-ray and particle shield for improved vacuum conductivity |
-
1999
- 1999-09-02 JP JP24852499A patent/JP3448636B2/ja not_active Expired - Lifetime
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
柚賀正雄 他,アバランシェ・フォトダイオード(APD)による陽電子の検出,KEK Proceedings,日本,1998年11月13日,98−6,p.21−23 |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6815676B2 (en) * | 2002-06-27 | 2004-11-09 | Osaka University | Material defect evaluation apparatus using positron and its evaluation method |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001074673A (ja) | 2001-03-23 |
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