JP3434169B2 - 全光型光位相同期方法および光位相同期光源 - Google Patents

全光型光位相同期方法および光位相同期光源

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JP3434169B2
JP3434169B2 JP15403297A JP15403297A JP3434169B2 JP 3434169 B2 JP3434169 B2 JP 3434169B2 JP 15403297 A JP15403297 A JP 15403297A JP 15403297 A JP15403297 A JP 15403297A JP 3434169 B2 JP3434169 B2 JP 3434169B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の光源の光位
相および光周波数を同期させる全光型光位相同期方法お
よび光位相同期光源に関する。なお、本発明は、例えば
波長多重伝送システムの複数の光源の光位相同期に用い
られる。
【0002】
【従来の技術】2光源の光位相および光周波数を同期さ
せるには、光位相同期ループ(0ptical phase-lock loo
p:以下「光PLL」という)または光注入同期を用い
る。
【0003】光PLLを用いた場合は、2光源の光位相
の誤差情報をフォトダイオードにより検出し、電気回路
でレーザ光源にフィードバックする構成になっている。
実用的な光PLLを実現するには、2光源のフリーラン
ニング時の光周波数差が光PLLの周波数引き込み範囲
以内に常に収まり、位相誤差が小さくなるように、光P
LLの帯域幅を広くする必要がある。
【0004】たとえば、通常の半導体レーザから出力さ
れた線幅10MHzの信号光を検波するホモダイン検波光コ
ヒーレント通信システムの受信器において、符号誤り率
10-9で光PLLによる受信感度劣化を3dB以内に抑える
には、最低でも 250MHzの光PLL帯域幅が必要とされ
ている(コヒーレント光通信工学、108 頁、オーム社、
大越 孝敬 著、1989年)。さらに劣化を抑えるために
は、GHz帯の光PLLの帯域幅が望まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、これまでに
実現されている光PLLの帯域幅は、 100MHz程度であ
る。これをGHz帯にまで広げるには、ループ遅延時間を
最長でも 100psec 程度で、ループ長を2cm程度にす
る必要がある。そのためには、従来の光PLLで個別の
素子を用いている光電変換部品と電気回路部品を集積化
して光PLLを構成する必要があるが、現状では困難で
ある。
【0006】本発明は、電気回路部品と光学部品のハイ
ブリッド集積実装を必要としない簡便な構成により光P
LLのループ遅延時間を小さくし、GHz以上の帯域幅を
有する光PLLを実現する全光型光位相同期方法および
光位相同期光源を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】図1は、本発明の全光型
光位相同期方法の動作概念を説明する図である。本発明
の全光型光位相同期方法は、レーザ光源から出力される
レーザ光(出力光)の光位相を外部から入力される信号
光(入力光)の搬送波成分の光位相に同期させるもので
ある。入力光と出力光の光位相誤差情報は、入力光と出
力光の一部を合波することにより光強度変化として得ら
れる。入力光と出力光の一部を合波した合波光をレーザ
光源のレーザ共振器中の非線形光学媒質に帰還する。
【0008】ここで、光位相の同期が外れかかり、図1
(b) ののように入力光と出力光の光位相差が増大して
合波光の光強度が増大すると、非線形光学媒質の屈折率
が変化する。このとき、非線形光学媒質の屈折率が合波
光強度に応じて減少するとすれば、レーザ共振器の実効
共振器長は合波光強度に応じて短くなる。その結果、発
振光周波数が高くなり(発振波長が短くなり)、入力光
との光位相差がのように小さくなる方向で引き戻され
る。
【0009】図2は、請求項2の光位相同期光源の基本
構成を示す。図において、レーザ光源11は、レーザ共
振器中にレーザ共振モード以外の他のポートより入力さ
れた光の強度に応じて屈折率が変化する非線形光学媒質
12および光増幅媒質13を有する。レーザ光源11の
出力光は、光分波器14を介して光合波光16に入力さ
れ、外部からの入力光と合波され、その合波光が非線形
光学媒質12に入力される。なお、以下に示す実施形態
では、光合波器16と非線形光学媒質12との間に、合
波光の不要な成分を除去する光フィルタが配置される
(請求項4)。
【0010】以下、本光位相同期光源の動作について説
明する。入力光の電界振幅をΕ1 、光周波数をω1
し、出力光の電界振幅をΕ2 、光周波数をω2 とする
と、 E1 =|E1|exp{i(ω1t+θ1)} …(1) E2 =|E2|exp{i(ω2t+θ2−π/2)} …(2) と表される。ここで、ω1 とω2 が非常に接近してお
り、両者の差周波数ω1 −ω2 を近似的に位相誤差とみ
なすことができるとすると、光合波器16から出力され
る合波光強度Ιは、 I=|E1+E22 =|E12 +|E22 +2|E12|sin((ω1−ω2)t+(θ1−θ2)) =|E12 +|E22 +2|E12|sin(θ(t)) …(3) となる。ただし、θ(t) =(ω1−ω2)t+(θ1−θ2)
であり、入力光と出力光の間の光位相差に応じて光合波
器16の合波光強度Ιが変化する。この合波光が、レー
ザ共振器中の非線形光学媒質12に帰還される。
【0011】ここで、入力光の光位相θ1 が進みθ(t)
が増大すると、合波光強度Ιが増大する。すると、非線
形光学媒質12の屈折率が小さくなり、レーザ共振器の
実効共振器長も短くなる。その結果、発振波長が短波長
側に変位し、光周波数は高くなる。このように、非線形
光学媒質12を有するレーザ光源11は、従来の電気P
LL回路の電圧制御発振器(VCO)と同様の機能を果
たす。
【0012】式(3) より、非線形光学媒質12の長さを
ref 、合波光強度変化ΔIに対する非線形光学媒質1
2の屈折率変化をδnとすると、発振波長δλは、 δλ=2δnLref /m …(4) だけ変化する。なお、mは共振器方向のモード次数であ
る。光通信システムで用いられる光波長1.55μmの場
合、発振周波数δνは、 δν=−2.50×1020δnLref /m …(5) だけ変化する。したがって、入力光の光位相θ1 が進
み、レーザ光源の出力光の光位相θ2 との光位相差θ
(t) が増大すると、合波光強度Iも増大して出力光の発
振周波数が高くなる。その結果、入力光と出力光の光位
相差θ(t) が再び0になる。
【0013】図3は、請求項3の光位相同期光源の基本
構成である。本構成は、図2の構成において、レーザ光
源11の非線形光学媒質12として、合波光強度に応じ
て屈折率が増加する非線形光学媒質12−1と、屈折率
が減少する非線形光学媒質12−2を直列に配置したこ
とを特徴とする。なお、光合波器16は合波光を2方向
に出力し、その一方を非線形光学媒質12−1に入力
し、他方を非線形光学媒質12−2に入力する。
【0014】ここで、非線形光学媒質12−1に入力さ
れる合波光強度I1 は、式(3) に示すものとすると、非
線形光学媒質12−2に入力される合波光強度I2 は、 I2 =|E1−E22 =|E12 +|E22 −2|E12|sin((ω1−ω2)t+(θ1−θ2)) =|E12 +|E22 −2|E12|sin(θ(t)) …(6) となる。すなわち、非線形光学媒質12−2へは、非線
形光学媒質12−1と比較して、位相がπずれた光位相
誤差情報が帰還される。この両者の光強度増加に対する
屈折率の変動は逆方向になる。しかし、非線形光学媒質
12−1,12−2の屈折率変化は逆方向に設定されて
いるので、非線形光学媒質12−2に与える光位相誤差
情報は、非線形光学媒質12−1と同一方向にレーザ発
振周波数を変化させる。
【0015】したがって、光位相誤差情報に対するレー
ザ発振周波数変動の応答が強調される。その一方で、光
源の強度雑音によるDC成分|E12 +|E22 の変
動の影響は2つの非線形光学媒質でそれぞれ逆方向に出
るために、これらのレーザ発振周波数変動に寄与する成
分は相殺され安定性が高まる。本構成は、バランスドレ
シーバを光位相検出器として用いたPLL(参考文献:
J.M.Kahn, et al., 1989年エレクトリックレタース、25
号、627 頁)と同等の機能を有する光PLLと言える。
【0016】以上の全光型の構成と動作原理により、電
気PLLによる構成と同様に、外部からの入力光の光位
相と光周波数に同期したレーザ光を出力することが可能
である。
【0017】なお、本発明の手法は、共振器中に光を照
射するという意味で、注入同期法による光位相同期に似
ている。注入同期法の場合は、レーザ共振モードに結合
させる光を入力させ、共振器中の振動モードの引き込み
現象を用いる。それに対して本発明は、レーザ共振モー
ドに関係なく、共振器中にある非線形光学媒質の屈折率
を光位相誤差情報を有する光で直接変調して光位相同期
を実現する方法であり、注入同期法とは異なる構成によ
り実現される。
【0018】
【発明の実施の形態】 (第1の実施形態…請求項1,2,4)図4は、本発明
の光位相同期光源の第1の実施形態を示す。なお、本実
施形態の構成は、図2の基本構成に対応するものであ
る。
【0019】半導体レーザ光源21は、非線形光学媒質
22と半導体光増幅部23が集積化された構成であり、
それぞれに電源24−1,24−2が接続される。半導
体レーザ光源21の出力光は、光分波器25を介してそ
の一部が帰還のために分岐される。光分波器25で分岐
された出力光は、外部からの入力光と光合波器26で合
波される。光合波器26から出力される合波光は、光フ
ィルタ27で不用なスペクトル成分が除去され、光可変
アッテネータ28でその光強度が調整され、半導体レー
ザ光源21の非線形光学媒質22に入力される。なお、
非線形光学媒質22への合波光の入力方法は、図5(a)
に示すような垂直方向からの光入力と、図5(b) に示す
ような横方向からの光入力がある。
【0020】ここで、入力光は、光伝送において有利な
1.55μmの波長に設定されており、10Gbit/s で強度変
調されているものとする。また、半導体レーザ光源21
にInGaAsP 半導体を用いており、合波光を入力する
非線形光学媒質22も半導体を用いる。半導体非線形媒
質22の長さは20μm、半導体光増幅部23の長さは28
0μm、レーザ共振器全体の長さは 300μmとなってい
る。
【0021】半導体レーザ光源21を駆動する電源24
−1は、非線形光学媒質22を順方向にバイアスしてお
り、電源24−2は半導体光増幅部23に所定のバイア
スを印加している。光合波器26は、ハーフミラーで構
成される。光フィルタ27の帯域幅は、10GHzの信号成
分を除去するために6GHz(0.05nm)である。
【0022】半導体レーザ光源21の出力端から非線形
光学媒質22までのループ長は約5cmで、ループ遅延
は約 250psec である。すなわち、遅延により制限され
る制御可能帯域は2GHzである。従来の電気PLLで同
程度の帯域幅を有する光PLLを構成するには、広帯域
のRF電子回路部品と光素子を集積実装する必要がある
が、本発明では遅延量の小さな光部品のみで光PLLが
構成される。
【0023】半導体レーザ光源21より出力される光パ
ワーは、10mW程度である。そのうちの 100分の1にあ
たる 100μWを光分波器25で分岐し、光合波器26に
導く。入力光の光強度も同程度の 100μW程度に調節さ
れる。両者の光が合波され、半導体レーザ光源21の非
線形光学媒質22に入射される。非線形光学媒質22に
合波光を入射する際には、非線形光学媒質22の吸収係
数も同時に変化するが、屈折率の変化と同様に微小であ
り、μWオーダでの発振強度変化は無視できる。そのた
め、強度雑音が光PLLの系に重大な悪影響を及ぼすこ
とはない。
【0024】ここで、合波される出力光と入力光の位相
が 0.1rad ずれると、光強度は62μW変化する。これが
光フィルタ27および光可変アッテネータ28を通過し
て非線形光学媒質22に帰還される。
【0025】非線形光学媒質22は、レーザ発振モード
の光を吸収する。レーザ発振は、この吸収より大きい利
得を有する半導体光増幅部23の寄与により実現してい
る状態である。レーザ発振モードの光を吸収している非
線形光学媒質22中では、図6(a) に示すように、少数
キャリヤ密度が空間的な分布を有する。図6(b) に示す
ように、1.5 μm帯の波長で用いられる半導体レーザ材
料は、2×1018cm-3の少数キャリヤ密度で吸収係数が
0になる。非線形光学媒質22の光増幅部側ではこの程
度の少数キャリヤ密度になっている。しかし、非線形光
学媒質22の光吸収により光が減衰し、外側の少数キャ
リヤ密度は入力側の3/4にまで減少している。その結
果、非線形光学媒質質22の外側部分の吸収係数はα=
25cm-1程度である。
【0026】この非線形光学媒質22の外側10μmの領
域に、合波光をレーザ共振器から見て側面より照射す
る。ここで、合波光強度がΔI変化したとすると、その
領域の少数キャリヤ密度の変化分ΔN(I) は、
【0027】
【数1】
【0028】である。ただし、Lはレーザ共振器の共振
器幅(合波光の入射面から見た媒質の奥行き)でL=2
μm、Sは合波光入射面積でS=10×0.05〔μm2〕(非
線形光学媒質22の膜厚を0.05μmと仮定)、ξは合波
光のうち非線形光学媒質22に入射される光パワーの割
合でξ=0.05、hはプランク定数でh=6.626 ×10-34
〔J・s〕、cは光速でc=3×108 〔m/s〕、nは
非線形光学媒質22の線形屈折率でInGaAsP の場合はn
=3、λは合波光波長でλ=1.55〔μm〕、τnはInGaA
sP の室温での電子寿命でτn ≒1〔ns〕である。
【0029】ここで、合波光の光強度が62μW変化した
とすると、式(7) よりΔN=2.40×1016〔cm-3〕だけ
非線形光学媒質22中の少数キャリヤ密度が増加する。
少数キャリヤ密度が増加すると、電子−正孔プラズマ効
果により半導体の屈折率が小さくなる。これを定式化す
ると、屈折率変化量δnは、 δn=(Δn/ΔN)semiΔN(I) …(8) となる。ただし、(Δn/ΔN)semi は屈折率と半導体
の少数キャリヤ密度の比で、通常は(Δn/ΔN)semi
=−10-20〔cm3 〕である。ΔN(I) は半導体が反転
分布状態でない限り、合波光強度Iに対して増加関数で
ある。その結果、屈折率は、δn=(Δn/ΔN)semi
ΔN(I)=2.40×10-4だけ減少する。
【0030】そのため、半導体レーザ光源21の実効共
振器長が短くなり、レーザ発振光周波数δνは、レーザ
発振の縦モード次数mを1200とすると、 δν=−2.50×1020δnLref /m =−2.50×1020×(2.40×10-4)×10-5/1200 =−5×108 〔Hz〕 だけ瞬時に変化する。すなわち、発振光周波数が高くな
ることにより入力光の光位相に追随し、最終的に入力光
の光位相に同期する。
【0031】また、図7に示すように、光PLLの光回
路をPLC基板31上に構成し、かつ非線形光学媒質2
2を集積化した半導体レーザ光源21もPLC基板31
上のマウントすると、ループ長を1cm以下にできる。
これにより、光PLLの動作帯域幅をさらに広帯域化す
ることができる。
【0032】(第2の実施形態…請求項1,2,4)図
8は、本発明の光位相同期光源の第2の実施形態を示
す。なお、本実施形態の構成は、図2の基本構成に対応
するものである。
【0033】本実施形態の特徴は、第1の実施形態にお
いて集積化されていた非線形光学媒質22と半導体光増
幅部23を分離し、外部共振器構造の半導体レーザ光源
41を構成するところにある。この半導体レーザ光源4
1は、非線形光学媒質22、半導体光増幅部23、反射
ミラー42および光アイソレータ43を用いてリング共
振器を構成する。
【0034】半導体光増幅部23の長さは600 μm、非
線形光学媒質22の長さは100 μm、リング共振器長は
10cmである。レーザ光源の共振器長が長いために、発
振光の光周波数の安定性に優れ、発振線幅は数十kHzに
まで狭窄化されている。しかし、第1の実施形態と比較
して合波光の光強度変化に対する半導体レーザ光源41
の発振光周波数変化は小さくなる。
【0035】第1の実施形態と同様に、100 μW程度の
入力光と同程度の出力光を合波させ、両者の光位相が
0.1rad ずれると光強度は62μW変化する。これを面積
S=2×0.05μm2 、奥行き100 μmの領域に入射す
る。ここで、5%の合波光が非線形光学媒質22に入力
されるとする。その場合は、非線形光学媒質22の屈折
率は第1の実施形態と同様に、δn=(Δn/ΔN)
semiΔN(I)=2.4 ×10-5だけ減少する。したがって、
半導体レーザ光源41の発振周波数は、レーザ発振の縦
モード次数mを147,000 とすると、 δν=−2.50×1020δnLref /m =−4.08×106 〔Hz〕 変化する。その結果、入力光の光位相に追随し光位相同
期が達成される。ただし、外部共振器構造で共振器長が
長いため、発振周波数の変化は第1の実施形態に比べて
小さい。そのため、合波光の入力パワーを大きくして光
位相同期を実現する必要がある。なお、合波光は共振器
中に入射されるが、レーザ発振モードと逆方向であるた
め、レーザ共振器中の注入同期で光位相同期が実現され
ることはない。また、レーザ発振方向は、共振器中に挿
入された光アイソレータ43で決定されている。
【0036】(第3の実施形態…請求項1,2,4)図
9は、本発明の光位相同期光源の第3の実施形態を示
す。なお、本実施形態の構成は、図2の基本構成に対応
するものである。
【0037】本実施形態の特徴は、第2の実施形態にお
ける半導体光増幅部23の代わりに、希土類添加ガラス
44を用いるところにある。半導体励起光源45−1,
45−2から出力される励起光は、希土類添加ガラス4
4を介して光終端器46で終端される。
【0038】希土類添加ガラス44は10cm、光屈折部
長は50μm、共振器長は15cmである。半導体励起光源
45単体の出力は 200mW程度で、これが2個用いられ
ている。本光源は、高出力、高コヒーレンス光源である
ことを特徴とし、平均出力10mW、数十kHz程度の発振
線幅を実現する。ただし、共振器長が20cmと長いため
に、合波光に対する発振光周波数の変調度は第1の実施
形態の場合ほど大きくない。
【0039】(第4の実施形態…請求項1,3,4)図
10は、本発明の光位相同期光源の第4の実施形態を示
す。なお、本実施形態の構成は、図3の基本構成に対応
するものである。
【0040】本実施形態の特徴は、第1の実施形態にお
ける非線形光学媒質22を2つの領域に分割したところ
にある。非線形光学媒質22−1,22−2に印加する
バイアス電圧を変化させて、非線形光学媒質22−1で
は合波光強度に応じて屈折率が減少し、非線形光学媒質
22−2では合波光強度に応じて屈折率が同じ割合で増
加するように設定する。
【0041】非線形光学媒質22−2において、合波光
強度の増大に応じて非線形光学媒質中の屈折率を増大さ
せるには、バイアス電圧を順方向に印加して非線形光学
媒質中に反転分布状態を生成する。その場合、合波光強
度が増大すると、誘導放出により励起電子数が減少す
る。これにより、合波光強度の増大に応じて非線形光学
媒質中の屈折率を増大させることができる。
【0042】ここで、入力光は、光伝送において有利な
1.55μmの波長に設定されており、10Gbit/s で強度変
調されているものとする。また、非線形光学媒質22−
1,22−2の長さはそれぞれ20μmであり、半導体光
増幅部23の長さは260 μm、レーザ共振器全体の長さ
は300 μmである。
【0043】半導体レーザ光源41を駆動する電源24
−2,24−3は、非線形光学媒質22−2と半導体光
増幅部23を順方向にバイアスして利得を有するように
し、電源23−1は非線形光学媒質22−1が吸収とな
るようにしている。光フィルタ27−1,27−2の帯
域幅は、10GHzの信号成分を除去するために6GHz(0.
05nm)である。
【0044】半導体レーザ光源41の出力端から非線形
光学媒質22−1,22−2までのループ長は約5cm
で、ループ遅延は約 250psec である。すなわち、遅延
により制限される制御可能帯域は2GHzである。
【0045】半導体レーザ光源41より出力される光パ
ワーは、10mW程度である。そのうちの 100分の1にあ
たる 100μWを光分波器25で分岐し、光合波器26に
導く。入力光の光強度も同程度の 100μW程度に調節さ
れる。両者の光が合波され、半導体レーザ光源41の非
線形光学媒質22−1,22−2に入射される。非線形
光学媒質22−1では、合波光強度Iの増大に伴い屈折
率が減少し、非線形光学媒質22−2ではそれの逆の動
作が実現されている。
【0046】第1の実施形態の場合と同様に、レーザ共
振器の外側に各非線形光学媒質中の共振器方向10μm、
厚さ0.5 μmの領域に合波光を照射し、その領域の少数
キャリヤ密度、ひいては屈折率を変化させる。このと
き、共振器長が同じ 300μmで、レーザ発振周波数を変
化させる領域全体の長さがちょうど2倍のLref =20
(μm)になるので、発振光周波数も同じ合波光強度に
対して倍変化する。
【0047】ここで、合波される出力光と入力光の位相
が 0.1rad ずれると、光強度は62μW変化する。これが
光フィルタ27−1,27−2および光可変アッテネー
タ28−1,28−2を通過し、合波光全体の内5%が
非線形光学媒質22−1,22−2に帰還されると、レ
ーザ発振光周波数δνは、レーザ発振の縦モード次数m
を1200とすると、 δν=−2.50×1020δnLref /m =−2.50×1020×(2.40×10-4)×2×10-5/1200 =−109 〔Hz〕 だけ瞬時に高くなり、入力光位相に追随する。
【0048】このように、本実施形態では、合波光強度
に応じて、屈折率が正負に変化する非線形光学媒質を半
導体レーザ光源中に有しており、合波光強度の強度雑音
によるレーザ発振周波数変動を抑圧できる構成になって
いる。そのため、第1の実施形態と比較しより安定な光
位相同期を実現することができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の全光型光
位相同期方法および光位相同期光源は、外部からの入力
光の光位相と光周波数に同期するレーザ光を出力する光
源を全光型光PLLにより実現することができる。その
結果、PLL長の短尺化が容易になり、光PLLの引き
込み幅の広帯域化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全光型光位相同期方法の動作概念を説
明する図。
【図2】請求項2の光位相同期光源の基本構成を示すブ
ロック図。
【図3】請求項3の光位相同期光源の基本構成を示すブ
ロック図。
【図4】本発明の光位相同期光源の第1の実施形態を示
すブロック図。
【図5】合波光の入射位置を示す図。
【図6】非線形光学媒質および半導体光増幅部の機能を
説明する図。
【図7】本発明の光位相同期光源の第1の実施形態の変
形例を示すブロック図。
【図8】本発明の光位相同期光源の第2の実施形態を示
すブロック図。
【図9】本発明の光位相同期光源の第3の実施形態を示
すブロック図。
【図10】本発明の光位相同期光源の第4の実施形態を
示すブロック図。
【符号の説明】
11 レーザ光源 12 非線形光学媒質 13 光増幅媒質 14 光分波器 16 光合波器 21,41 半導体レーザ光源 22 非線形光学媒質 23 半導体光増幅部 24 電源 25 光分波器 26 光合波器 27 光フィルタ 28 光可変アッテネータ 31 PLC基板 42 反射ミラー 43 光アイソレータ 44 希土類添加ガラス 45 半導体励起光源 46 光終端器

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外部から入力される信号光(以下「入力
    光」という)の搬送波成分の光位相に同期したレーザ光
    (以下「出力光」という)を出力する光位相同期方法に
    おいて、 前記出力光を発生するレーザ光源として、レーザ共振器
    中に非線形光学媒質を配置したレーザ光源を用い、 前記入力光と前記出力光を合波し、前記入力光と前記出
    力光の光位相誤差情報をその合波光の光強度に変換し、 前記合波光を前記レーザ光源の非線形光学媒質に帰還
    し、非線形光学媒質の屈折率を変化させてレーザ光源の
    実効共振器長を変化させ、さらに発振光周波数を変化さ
    せて前記出力光の光位相を前記入力光の光位相に同期さ
    せることを特徴とする全光型光位相同期方法。
  2. 【請求項2】 レーザ共振器中に、レーザ共振モード以
    外の他のポートより入力された光の強度に応じて屈折率
    が変化する非線形光学媒質を有するレーザ光源と、 入力光と出力光を合波する光合波器と、 前記光合波器から出力される合波光を前記レーザ光源の
    非線形光学媒質に入力する光回路とを備えたことを特徴
    とする光位相同期光源。
  3. 【請求項3】 レーザ共振器中に、レーザ共振モード以
    外の他のポートより入力された光の強度に応じて屈折率
    が増加する第1の非線形光学媒質および屈折率が減少す
    る第2の非線形光学媒質を有するレーザ光源と、 入力光と出力光を合波する光合波器と、 前記光合波器から出力される合波光を前記第1の非線形
    光学媒質に入力し、その合波光に対して位相がπずれた
    光位相誤差情報を有する合波光を前記第2の非線形光学
    媒質に入力する光回路とを備えたことを特徴とする光位
    相同期光源。
  4. 【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の光位相
    同期光源において、 合波光から、入力光と出力光の合波によって発生した不
    要な光スペクトル成分を除去する光フィルタを備えたこ
    とを特徴とする光位相同期光源。
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