JP3428813B2 - 電力系統シミュレータ - Google Patents

電力系統シミュレータ

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JP3428813B2
JP3428813B2 JP10592496A JP10592496A JP3428813B2 JP 3428813 B2 JP3428813 B2 JP 3428813B2 JP 10592496 A JP10592496 A JP 10592496A JP 10592496 A JP10592496 A JP 10592496A JP 3428813 B2 JP3428813 B2 JP 3428813B2
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誠 大井
善広 竹田
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Mitsubishi Electric Corp
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Tokyo Electric Power Co Inc
Mitsubishi Electric Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電力系統の電気
的な挙動や応動を計算機を用いた数値計算によって演算
し模擬する電力系統シミュレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】電力系統シミュレータは、電力系統で生
起する各種の電気的な現象や電力系統を構成する各種機
器の動作を、電子計算機を用いた数値計算により模擬
し、シミュレーションを行う装置である。電力系統で生
起する現象を、電子計算機を用いた数値計算により模擬
する場合、発電機やその制御系、あるいは負荷、調相設
備等の時間とともに変化する状態変化を計算する演算
と、系統の電圧分布と電流分布との各時刻における状態
を求める系統状態量の求解演算を、時刻を逐次進めなが
ら交互に演算する必要がある。このような電力系統シミ
ュレータとしては、本願の関連出願である特願平7−2
20933号がある。
【0003】図29は、この電力系統シミュレータの構
成を示す図であり、図において、101はシミュレーシ
ョンの結果を表示あるいはデータ出力等によって外部に
出力するシミュレーション結果出力装置、102はシミ
ュレーションの演算を行うシミュレーション演算部、1
03はシミュレーションに先立って準備処理を行うシミ
ュレーション準備処理部、104はこのシミュレーショ
ン準備処理部103に接続されたシミュレーションデー
タ入力装置である。シミュレーション準備処理部103
では、シミュレーションデータ入力装置104より入力
処理部112を介してオペレータ等が設定した系統定
数、反復回数、加速パラメータ等のシミュレーションデ
ータを入力し記憶する。特に、シミュレーション準備処
理部103内において、109はこの系統定数を記憶す
る系統定数記憶部、110は反復回数を記憶する反復回
数記憶部、111は加速パラメータを記憶する加速パラ
メータ記憶部である。なお、反復回数と加速パラメータ
については後で詳細に記載する。
【0004】次に、シミュレーション演算部102の構
成を説明する。106はシミュレーションの演算結果で
ある電力系統状態量を格納する系統状態データ格納部で
ある。105は、この系統状態データ格納部106に接
続され、演算された系統状態データをシミュレーション
結果出力装置101へ出力する出力処理部である。10
7は、モデル計算に関する演算を行うモデル計算部であ
る。ここで、モデル計算とは、電力系統の各ノードに接
続された発電機やその制御系、負荷、調和設備、その他
の系統制御装置等の各種機器の時間に関する状態変化を
模擬する計算を行うことによって、シミュレーション時
刻を逐次進める毎に、これら各機器の状態を決定し、こ
れら機器の挙動を模擬する計算である。モデル計算の演
算結果は、シミュレーション時刻毎に、各機器と電力系
統との間で入出力される電流、あるいは有効電力及び無
効電力等を表すデータで表現され、演算毎に系統状態計
算部108へ供給される。
【0005】モデル計算の演算結果を、機器と電力系統
との間で入出力される電流データで表す場合、モデル計
算の演算結果は、次式1内の符号Iで示されるN次元の
列ベクトルに相当するデータとなる。
【0006】
【数4】
【0007】ここで、Nは電力系統のノードの総数を表
し、Ii(i=1,...,N、ここでNは正の整数)
はノード番号iのノードに電力系統に接続された機器か
ら流入する注入電流ベクトルを表す。
【0008】系統状態計算部108では、モデル計算部
107の演算結果に従い、各シミュレーション時刻がカ
ウントアップされる周期に、系統全体の電圧分布や潮流
分布を決定する演算を行う。この演算は、系統の電圧分
布と電流分布あるいは有効電力と無効電力の入出力状態
を表す方程式を解くことである。モデル計算の結果を上
記した式1のように、注入電流列ベクトルで表現する場
合、この方程式は以下の式2で表されるノードアドミタ
ンス方程式である。 I=YV (式2) ここで、式2内のYは次式3で表される。
【0009】
【数5】
【0010】この式3は、電力系統のノードアドミタン
ス行列(以下、アドミタンス行列と略する)である。ま
た、式2内のVは次式4で表される。
【0011】
【数6】
【0012】式4は、電力系統の各ノードの電圧ベクト
ルを並べた列ベクトルである。系統状態計算部108で
は、式2のような方程式を求解して電力系統の各ノード
の電圧ベクトルを決定する演算を行い、その演算結果を
系統状態データ格納部106に出力する。なお以下で
は、系統状態計算という用語は、上記したように、電力
系統全体の電圧ベクトルの分布と注入電流ベクトルの分
布(または有効電力と無効電力の入出力状態)との関係
を表す方程式を解くことにより、電力系統全体の電気的
状態を決定する計算を意味する。
【0013】この系統状態計算を行うためのアルゴリズ
ムとして、収束計算の手法に基づいた反復演算を行う方
式が一般的に行われており、この発明は、この収束計算
の手法に基づいた反復演算によって系統状態計算を行う
電力系統シミュレータに関するものである。この収束計
算の手法を、求解する方程式が前記した式2でに示した
ノードアドミタンス方程式である場合を例にとり以下に
説明する。
【0014】式2におけるアドミタンス行列Yに対して
適当な行列Dを選び、以下の式5のように分解する。 Y=D+(Y−D) (式5) ここで、式2に式5を代入すると次式6が得られる。 V=−D-1(Y−D)V+D-1I (式6) 以下では、N次元行列Mを次式7で表す。 M=−D-1(Y−D) (式7) すると、式6は次式8で表される。 V=MV+D-1I (式8)
【0015】系統状態計算における収束計算とは、電圧
の列ベクトルVを反復データとし、適当な初期値V
(0)から始めて、式8の右辺によって演算された結果
を、再度式8の右辺に代入し反復計算を行う計算であ
る。即ち、収束計算では、イタレーション回数をKで表
し、反復毎の逐次演算される電圧列ベクトルの反復列を
{V(K)}K=0,1,...と表すとき反復公式で
ある次式9に従って、次々とV(K)を演算する。 V(K+1)=MV(K)+D-1I (式9) この漸化式に従って、順次V(1),V
(2),...,V(K),V(K+1)を演算してい
くと、{V(K)}は次第に式2のノードアドミタンス
方程式の解に収束していく。
【0016】系統状態計算部108では、このような反
復演算を実行することによって、系統状態計算を実施す
る。以下では、式9を反復公式と呼ぶ。反復演算部12
0は、反復ごとの反復公式である式9の演算及び後述す
る加速演算を実行する回路である。また、反復データ格
納部121は、演算済みの反復データ{V(K)}のう
ち、最新のデータから所定反復回数分前までのデータを
格納する記憶装置である。
【0017】反復演算部120では式9に基づく演算を
行い、演算結果であるV(K+1)を反復データ格納部
121内に格納する。式5の行列Dに対する名称は、一
般に付与されていないが、ここでは「D行列」と呼び、
また式7の行列Mは「反復行列」と呼ぶ。アドミタンス
行列Yに該当するデータは、系統の構成や送電線や変圧
器のインピーダンス値から決定されるが、それらはシミ
ュレーションの開始に先立って系統定数記憶部109内
に記憶される。
【0018】またD行列に相当するデータもオペレータ
が入力する等、外部からシミュレーションデータ入力装
置104を介してシミュレーション準備処理部103内
の系統定数記憶部109内に記憶される。D行列の設定
に関し制限が存在するが、一般では、制限範囲内で自由
度を持って設定可能である。この点については後述す
る。
【0019】シミュレーション準備処理部103におい
て、シミュレーション演算に先立って、アドミタンス行
列YとD行列のデータを予め系統定数記憶部109内に
記憶し、記憶されたこれらのデータに従って、反復演算
部120は、反復公式9に該当する反復演算を実行す
る。
【0020】次に、系統状態計算部108における反復
演算について、その反復を打ち切るための反復回数に関
して説明する。既に説明したように、系統状態計算は、
シミュレーション時刻を逐次進める毎にモデル計算と系
統状態計算を交互に繰り返して演算する。この系統状態
計算は、シミュレーション時刻毎に毎回実施される演算
である。この毎回の演算に際しては、系統状態計算部1
08で実施される反復演算において、反復回数に到達す
ると反復を打ち切って系統状態計算を完了させる。シミ
ュレーション演算開始に先立って、この反復回数は、設
定され反復回数記憶部110で記憶される。
【0021】このように系統状態計算において、反復回
数を固定化する理由に関しては、本願の関連出願である
特願平7−220933号に記載されている。
【0022】次に、系統状態計算における収束の加速手
法について、加速定数法と呼ばれる手法を例にとって説
明する。系統状態計算部108において、反復がK回ま
で達した時、反復公式9に基づいてV(K+1)が演算
されるが、この時、以下の式10によってV(K+1)
を修正しV’(K+1)を演算する。次式10における
ωは、加速定数と呼ばれる定数である。 V’(K+1)=V(K)+ω(V(K+1)−V(K)) (式10) このV’(K+1)を新たにV(K+1)に置き換えた
上で反復データ格納部121内に格納する。
【0023】このような収束加速演算を、反復毎にある
いは特定の反復回数毎に実施する。なお、式10におけ
る加速定数ωは、加速パラメータの一種である。この加
速定数ωは、シミュレーション開始に先立って加速パラ
メータ記憶部111内に設定される。系統状態計算部1
08では、反復演算部120において、加速パラメータ
記憶部111内に記憶された加速定数ω、あるいは他の
手法の場合であれば、その他の加速パラメータに従って
収束加速演算を実施する。
【0024】このような収束加速演算を実施すること
で、収束を加速させ、演算精度の向上または処理速度の
向上を図る手法が従来の電力系統シミュレータでは一般
的に実施されている。このように、電力系統シミュレー
ションで用いられる演算パラメータ、即ちD行列、反復
回数および加速パラメータ等の反復演算アルゴリズムに
関与する演算パラメータとして、ある自由度を持って設
定可能な演算パラメータが存在する。
【0025】次に動作について説明する。図30は、図
29の電力系統シミュレータにおけるシミュレーション
演算部102のシミュレーション演算を示したフローチ
ャートであり、シミュレーション演算部102の全体的
な動作を示している。先ずモデル計算部107によるモ
デル計算処理(ステップST201)と系統状態計算部
108による系統状態計算処理(ステップST202)
を行い、該当シミュレーション時刻のデータを出力する
(ステップST203)。その後、シミュレーション時
刻を進める(ステップST204)。これら一連の処理
は、シミュレーション時刻がシミュレーション終了時刻
に到達するまで繰り返される。また図31および図32
は、系統状態計算部108におけるあるシミュレーショ
ン時刻での系統のノードアドミタンス方程式を、反復演
算によって求解する動作を表すフローチャートである。
【0026】すなわち、図30における系統状態計算処
理ST202での動作を詳細に示したものであり、図3
1は収束加速手法を適用しない場合、図32は収束加速
手法として線型加速演算を適用する場合のフローチャー
トを示す。図31に示す動作は、次のように実施され
る。先ず、反復インデックスKを初期化し(ST30
1)、反復インデックスKが所定の反復回数n回に到達
するまで反復公式9を演算実行する(ST302)。こ
の過程を繰り返すことによって、反復列{V(K)}K
=1,2,...は、次第にノードアドミタンス方程式
の解に収束してくる。反復回数nは、シミュレーション
を通じて固定されていることは前述した。
【0027】次に、図32に示すフローチャートの動作
を説明する。ここでの動作は、反復公式9に従って順次
V(K)を更新していくのは同様であるが、イタレーシ
ョン回数Kがmの倍数であるとき、V(K−m),V
(K−m+1),...,V(K)までのm+1個のデ
ータのある線型結合を演算してV’(K)を得る(ST
402)。このV’(K)を新たにV(K)に置き換え
て、次の反復ステップに進む。反復ステップが所定の反
復回数n回に到達するまで、この反復演算を繰り返す。
この場合、前記線型結合式内の係数データが、加速パラ
メータである。次に、上記したD行列の選定例を、文献
1に基づいて以下に説明する。
【0028】文献1:「電力系統の静的状態推定におけ
る並列計算アルゴリズムについての一研究、佐々木博司
著、電学論B、電気学会、昭57−12、p65」。
【0029】以下の演算方式は、厳密には文献1で記述
されているものと完全に一致しないが基本的概念は同一
である。まず、解析対象とする系統のアドミタンス行列
Yを、次式11のようにブロック分割する。
【0030】
【数7】
【0031】ここで、Yij,1<i,j≦LはYのブロ
ック小行列であり、Lは行および列のブロック分割数で
ある。そしてD行列は、式11に対応したYのブロック
対角行列であるとする。すなわちD行列は、以下の式1
2で表される。
【0032】
【数8】
【0033】また、系統の電圧列ベクトルVと注入電流
列ベクトルIも、式11に呼応したブロック分割を以下
のように行う。
【0034】
【数9】
【0035】このとき反復公式式9は次式13で表わさ
れる。
【0036】
【数10】
【0037】従って、この式は行列のブロック分割によ
り以下に示すL個の式14に分離できる。
【0038】
【数11】
【0039】L個の演算プロセッサを用いて、このL個
の式14を各々並列して演算する方式が電力系統シミュ
レーションで用いられている。この演算方式によって、
系統状態計算を行う従来の電力系統シミュレータでは、
アドミタンス行列Yのブロック小行列への分割を指定す
ると自動的にD行列は決定する。一方、アドミタンス行
列Yを、ブロック小行列へ分割することは、適当なノー
ドに番号付けして、ノードを複数のグループ(この場合
L個)に分割することと等価である。即ち、ノードを複
数のグループに分割することはD行列を選定することと
等価となる。
【0040】従って、この電力系統シミュレーションに
対しては、ノードのグループ分割を選定することがD行
列の選定を意味する。そのため実際のデータ入力ではノ
ードのグループ分割を指定するデータを入力する。な
お、ノードのグループ分割を変更すると、式14に示し
た演算の並列度および個々のプロセッサにおける演算量
が変化して演算時間が変化する。さらに、ノードのグル
ープ分割を変更すると、式9に示す反復演算の収束性も
また変化する。これらに関する詳細事項は、文献1に記
載されている。
【0041】なお、上記のアドミタンス行列をブロック
分割し、対応するノードのグループ毎にプロセッサを割
り当てて並列演算を行う方式は、MIMD(Multi
ple−Instruction Stream Mu
ltiple−Data Systems)と呼ばれて
いる。
【0042】次に演算パラメータについて説明する。電
力系統のシミュレーションを使用するため、シミュレー
ションデータ入力装置104を介して電力系統シミュレ
ータへ入力される入力データは、模擬するべき解析対象
物を規定するためのデータと、演算アルゴリスムを規定
ないし調整するために用いられるデータとに大別され
る。前者は、解析対象とする電力系統のノードやブラン
チの構成を表すデータ、ブランチのインピーダンスを表
すデータ、あるいは発電機や負荷の各々の定数を表すデ
ータ等であり、解析対象とするシミュレーションケース
ごとに唯一に決定される。一方後者は、複数プロセッサ
で処理を並列演算する際の各プロセッサへの処理の分配
指定あるいは系統の複数ノードをグループ分けしてグル
ープごとにまとまった演算を行う場合のグルーピングの
パターン、あるいはアドミタンス行列の成分抽出則を表
現するD行列を表すデータ、あるいは反復演算における
反復回数、あるいは収束加速演算における加速パラメー
タ、あるいはシミュレーションの刻み時間幅等である。
【0043】このように、演算アルゴリスムを規定ない
し調整するためのデータを「演算パラメータ」と称す
る。演算パラメータは、通常自由度を持って設定できる
とともに、シミュレーションケースごとにオペレータの
裁量によって演算パラメータの設定値を決定していた。
演算パラメータは、シミュレーションの演算精度ないし
演算速度を左右するが、オペレータが演算パラメータを
設定する際、演算精度あるいは演算速度の両方または一
方が良好となるように設定する。
【0044】電力系統シミュレータで用いられる演算パ
ラメータとしては、上記したD行列、反復回数、加速パ
ラメータの他、複数プロセッサにて並列演算する際の処
理の分配規定データ、系統のノードを複数のグループに
分割して各々のグループにプロセッサを割り当てた場合
のノードのグループ化のパターンデータ、あるいはシミ
ュレーションの刻み時間幅等がある。
【0045】
【発明が解決しようとする課題】従来の電力系統シミュ
レータは以上のように構成されているので、シミュレー
ションを開始するに先立ってD行列に相当するデータと
系統状態計算における反復回数(以下単に「反復回数」
と呼ぶ)および加速パラメータを各々決定して設定する
必要があるという課題があった。これらのデータは、い
ずれもシミュレーションの演算速度や演算精度を大きく
左右するきわめて重要な要因であるため、要求される演
算速度や演算精度を満足するように決定されねばならな
い。
【0046】しかしながら、D行列や反復回数や加速パ
ラメータ等の演算パラメータが、演算精度や演算速度に
影響する程度、即ち、演算パラメータが演算精度や演算
速度に関与する特性については、解析対象とする電力系
統に応じて、多様に変化するので一義的に把握すること
はできない。即ち、これらの特性を定量的に得ることは
困難なことであり、D行列や反復回数や加速パラメータ
を決定するには、これらのデータを何通りも変化させた
上で、その都度シミュレーションを試行し、かつ個々の
ケースのシミュレーション結果を詳細に比較検討する必
要があった。
【0047】即ち、従来の電力系統シミュレータにおい
ては、シミュレーションケース毎に何度も試行錯誤を繰
り返すことで、D行列、反復回数、加速パラメータ等を
決定せざるを得ず、その結果これらのデータを決定する
作業に多大な時間と労力が必要であるという課題があっ
た。
【0048】各演算パラメータ毎の問題点を、以下で詳
細に説明する。D行列は、反復公式9を用いた反復演算
の演算結果に影響を与える。通常D行列は、アドミタン
ス行列Yの対角成分以外のある特定要素を0とおいて作
成され、例えば、Yの対角成分以外を0とおいた行列を
Dとする。そして、反復解法としてヤコビ法を用いる。
また、Yの対角成分よりも右上の要素をすべて0とおい
た行列(即ち、下三角行列+対角行列)をDとすると、
その解法はガウス−ザイデル法となる。D行列の選び方
としてD-1のスパース性(虫喰い性)が高くなるように
選定すると、反復公式9の演算においては、あらかじめ
行列のどの成分が非零要素であるかは、シミュレーショ
ンに先だって決定され、その内容は、メモリ等に記憶さ
れる。シミュレーション中では、行列要素として0が掛
かる部分は、処理をスキップして演算を飛ばすようなア
ルゴリズムが通常採用されているので、D-1のスパース
性が高い場合その演算速度は速くなる。反面、反復演算
における一回の反復過程での誤差の減少割合、すなわち
収束性は低下する。
【0049】逆に、アドミタンス行列Yのうち0とおく
要素を少なくしてD行列を選定した場合、D-1のスパー
ス性は低下し、演算速度は遅くなるが、D-1がY-1に近
似される度合いが高いので収束性は向上する。このよう
に、D行列の選び方によって演算速度や収束性が左右さ
れ、しかも、この場合の演算速度と収束性の度合いはト
レードオフの関係にある。一方、演算速度が速い場合
は、規定された演算時間内で反復回数を多くすることが
可能なので、最終的に得られる演算精度を向上できる可
能性がある。
【0050】また収束性が良好な場合は、反復回数を減
少させても所定の精度が確保でき、所要演算時間を短縮
できる可能性がある。このことは、系統状態計算に関し
て解析対象としている電力系統毎に、ある一定時間内に
完了する反復演算の結果、最も演算精度の良いD行列の
選び方が存在することを意味する。換言すれば、ある規
定演算精度となる反復演算のうち、最も演算時間が短い
D行列の選び方が存在する。さらに換言すれば、シミュ
レーションのハードウェア(H/W)およびソフトウェ
ア(S/W)特性に従って、電力系統毎に最適なD行列
が存在する。従って、電力系統シミュレーション演算を
行う場合は、このような電力系統毎に最適なD行列を選
定してシミュレーションを行うことが望ましいが、従来
ではD行列の選定パターンと演算速度や演算精度の定量
的関係が不明であったので、定性的知識や経験にもとづ
いて試行錯誤を行い決定せざるを得なかった。
【0051】さらに、反復回数もシミュレーションの演
算時間と演算精度を本質的に左右する要因の一つであ
る。反復回数を増加すると、演算時間は長くなるが演算
精度は向上する。逆に反復回数を減少すると、演算時間
は短くなるが演算精度は劣化する。反復回数を決定する
基準は、上記したように、演算時間を優先させる場合と
演算精度を優先させる場合の二通りがある。前者の場合
は、演算時間を指定しその演算時間内で完了する最大反
復回数を求めて精度の向上を図る必要がある。また、後
者の場合は、演算精度を指定し、その演算精度を満足す
る最小の反復回数を求めて演算時間を短縮する必要があ
る。すなわち、演算速度を向上させる必要がある。反復
回数と演算時間や演算精度との関係を表す特性は、解析
対象とする系統やD行列によって多様に変化するので一
義的に把握できず、このため反復回数の決定に関して
も、従来では試行錯誤して決定せざるを得なかった。
【0052】さらに、加速パラメータもシミュレーショ
ンの演算精度を左右する大きな要因であり、最適な加速
パラメータを選定することができれば、数倍収束性が向
上する等著しい効果を得ることがわかっている。そのた
め、最適な加速パラメータを容易に得ることが従来では
望まれていた。最適な加速パラメータを得る理論につい
ては各種研究がなされているが、電力系統シミュレータ
への適用については、実用段階になく、従来では試行錯
誤によって決定せざるを得なかった。
【0053】上記したように、D行列の選定、反復回
数、加速パラメータ等の演算パラメータを決定すること
は、演算精度および演算速度を本質的に左右するきわめ
て重要な要因であるにも係わらず、それらを容易に決定
する手段や情報が従来では存在しなかった為、試行錯誤
により決定する他なく、その結果、演算パラメータの選
定および決定に多大な時間と労力が必要とされるという
課題があった。
【0054】また、D行列、反復回数、加速パラメータ
等の演算パラメータを決定しシミュレーションを実行し
解析する場合、これらD行列や反復回数や加速パラメー
タの関与による演算精度の度合いを定量的に把握する必
要があり、特に、シミュレーションの結果を分析し実系
統の操作や運用に応用する場合に、演算精度を定量的に
把握することは不可欠の事項である。
【0055】このようなシミュレーション結果の演算精
度の度合いを評価する際、如何なる評価基準を用いて演
算精度を評価するべきかは、従来の電力系統シミュレー
タにおいては明確ではなかった。シミュレーションを行
う目的は、シミュレーション結果のデータ基づいて現実
の電力系統で生起するであろう現象を推定したり、ある
いは現実の電力系統がそこに存在するかのような仮想環
境を提供することであるから、シミュレーションで得ら
れた結果のうち、各現象の信憑性の有無を見極めること
が必要とされる。例えば、シミュレーション結果の精度
の度合いを評価する際、電力系統シミュレータが出力す
る現象のうち、信憑性のある現象の限界を規定し、かつ
限界を評価することが適切な評価となる。この場合、限
界範囲が広い程、精度は良好であると評価される。この
限界は、模擬対象としている電力系統によって変化する
のはもちろんであるが、前述したように、D行列、反復
回数、加速パラメータ等の演算パラメータによって左右
される。
【0056】従来の電力系統シミュレータでは、この演
算パラメータに関して信憑性を有する現象の判断基準
(即ち限界値)と演算パラメータとの定量的関係を把握
することは困難であり、シミュレーション結果に基づい
た各現象の信憑性の見極めは多くの経験的知識および極
めて高度な判断を必要としており、容易に処理すること
はできないという課題があった。
【0057】このように、従来の電力系統シミュレータ
には、演算パラメータの設定と演算精度または演算速度
との関係を得ることが困難であるという課題があった。
換言すると、演算パラメータと演算精度または演算速度
間の関係やこれらの間に生ずる特性が不明であった。そ
して、従来の電力系統シミュレータでは、演算パラメー
タの設定値を決定することは、煩雑で困難な作業であ
り、また演算パラメータに依存したシミュレーション演
算結果の信憑性の判断基準を得ることは、困難であると
いう課題があった。
【0058】この発明は上記のような課題を解決するた
めになされたもので、設定された演算パラメータとこの
演算パラメータを用いて得られたシミュレーションの演
算精度または演算速度との関係を示す情報を迅速にオペ
レータへ提供する電力系統シミュレータを得ることを目
的とする。
【0059】また、この発明は設定された演算パラメー
タの各項目に依存した他の演算パラメータとこれらの演
算パラメータを用いて得られるシミュレーションの演算
精度または演算速度との関係を示す情報をオペレータへ
提供する電力系統シミュレータを得ることを目的とす
る。
【0060】さらに、この発明は設定された演算パラメ
ータと演算パラメータに基づいて実行されるシミュレー
ションの演算精度または演算速度の良否をパラメータの
設定値ごとに比較し評価するための評価データをオペレ
ータへ提供する電力系統シュミレータを得ることを目的
とする。
【0061】さらに、この発明は得られるシミュレーシ
ョンの演算精度または演算速度の両方あるいはいずれか
一方に関する最良な演算パラメータを決定し、この最良
の演算パラメータを用いてシミュレーション演算を自動
的に実行する電力系統シミュレータを得ることを目的と
する。
【0062】さらに、この発明は演算パラメータの設定
値毎のシミュレーション結果の信憑性の限界を判断する
ための支援情報を提供する電力系統シミュレータを得る
ことを目的とする。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【課題を解決するための手段】 請求項記載の発明に係
る電力系統シミュレータは、設定された演算パラメータ
に基づいてシミュレーションの反復回数とシミュレーシ
ョンの演算精度との関係を示すデータを演算する収束因
子計算手段を有する演算手段を備えるものである。この
シミュレーションの反復回数とシミュレーションの演算
精度との関係を示すデータは、演算精度を示すデータの
1つであり、オペレータは、このデータを見て演算パラ
メータを決定し、決定された演算パラメータを基にシミ
ュレーション演算手段は、シミュレーションを実行する
ものである。
【0068】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、収束因子計算手段が、シミュレーションの反
復回数とシミュレーションの演算精度との関係を示すデ
ータとして、反復演算における反復1回あたりの誤差の
減少割合を示すデータ(収束因子)を演算し、表示手段
を介してオペレータへ提供するものである。
【0069】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、収束因子計算手段が、シミュレーションの反
復回数とシミュレーションの演算精度との関係を示すデ
ータとして、反復演算における反復m回(ここで、m>
1)あたりの誤差の減少割合を示すデータを演算し収束
因子計算のスピードの向上を図るものである。
【0070】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、設定された反復演算アルゴリズムを規定する
演算パラメータに関し、規定された演算時間内で反復可
能な最大の反復回数nを演算し、最大の反復回数n繰り
返される反復演算で誤差の減少割合を示すデータを演算
する評価データ計算手段を有し、表示手段は得られたデ
ータをオペレータへ表示するものである。
【0071】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、シミュレーション時刻のカウントアップ毎に
実行される周期的なシミュレーション演算における1周
期の演算に必要な時間と反復回数との関係を示すデータ
を演算する演算速度特性演算手段を有し、得られたデー
タを表示手段を介してオペレータへ提供するものであ
る。
【0072】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、シミュレーション時刻のカウントアップ毎に
実行される周期的なシミュレーション演算内での1周期
の演算に必要な時間を示すデータを演算する演算速度特
性演算手段を有し、得られたデータを表示手段を介して
オペレータへ提供するものである。
【0073】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、設定された反復演算アルゴリズムを規定する
演算パラメータに関し、反復演算1回あたりの誤差の減
少割合を示すデータに基づいて規定された演算精度を満
足するための1周期の演算時間の最短値を示すデータを
演算する評価データ計算手段を有し、得られたデータを
表示手段を介してオペレータへ提供するものである。
【0074】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータは、1周期の演算に必要な時間Tと反復回数nと
の関係がT=an+bで示される場合a,bを示すデー
タを演算する演算速度特性演算手段を有し、得られたデ
ータを表示手段を介してオペレータへ提供するものであ
る。
【0075】請求項記載の発明に係る電力系統シミュ
レータでは、1周期の演算に必要な時間と反復回数との
関係を示すデータを演算し、規定された演算時間内でこ
のデータを基に最大の反復回数を演算する反復回数演算
手段を有し、得られたデータを直接シミュレーション演
算手段へ供給し、自動的にシミュレーションを実行する
ものである。
【0076】請求項10記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、設定された反復演算アルゴリズムを規定す
る演算パラメータの個々の設定パターンもしくは個々の
設定値に対して演算パラメータの設定時のシミュレーシ
ョン演算の演算精度を評価する評価データを演算、比較
し、最高値の演算精度を有する前記演算パラメータのパ
ターンまたは設定値を検索して設定する評価手段を有
し、得られた設定値をシミュレーション演算手段へ送信
し、自動的にシミュレーションを実行するものである。
【0077】請求項11記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータでは、反復回数演算手段が演算精度を示す評価
データとして設定された反復演算アルゴリズムを規定す
る演算パラメータに関し、規定された演算時間内で最大
の反復回数nを演算し、最大の反復回数nでの反復演算
における誤差の減少割合を示すデータを演算し、シミュ
レーション演算手段は、得られたデータを基にシミュレ
ーションを実行するものである。
【0078】請求項12記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、演算パラメータの個々の設定パターンもし
くは個々の設定値に対して、演算パラメータの設定時の
シミュレーション演算の演算速度を評価する評価データ
を演算し、これらを比較し、最高値の演算速度を持つ演
算パラメータのパターンまたは設定値を検索して設定す
る評価手段を有し、この設定値を基にシミュレーション
演算手段は、シミュレーションを実行するものである。
【0079】請求項13記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータでは、演算パラメータとしてD行列のデータが
設定され、評価手段がシミュレーションの演算精度を示
すデータとしてシミュレーションの反復回数とミュレー
ションの演算精度との関係を示すデータを演算し、得ら
れたデータの範囲内で、最短の1周期の演算時間を示す
データを演算し、得られたデータを基にシミュレーショ
ン演算手段は、シミュレーションを自動的に実行するも
のである。
【0080】請求項14記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータでは、評価手段が演算パラメータの個々の設定
パターンもしくは個々の設定値と所定の除外条件とを比
較し、除外条件に該当しない演算パラメータの設定パタ
ーンもしくは個々の設定値に関する評価データを演算す
る。シミュレーション演算手段は、この評価データを基
に選択された演算パラメータを用いて自動的にシミュレ
ーションを実行するものである。
【0081】請求項15記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、電力系統のノードのグループを分割して複
数個の分割指定データを設定するグループ化パターン生
成手段および分割された複数個の分割指定データのそれ
ぞれに対応しノードに附属する機器のモデル計算を演算
し、系統状態量計算における反復演算式V(k+1)=
-1FV(k)+D-1I(ここで、Y=D−F)のうち
複数のプロセッサのそれぞれが、反復演算式を分割した
式を並列演算する複数個のプロセッサを持つ。各プロセ
ッサは、グループ化されたノードの最適パターン毎に配
置され、演算を同時に実行するものである。
【0082】請求項16記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、反復演算における線形加速演算で、1サイ
クル毎の反復演算の完結毎の誤差の減少割合を示す演算
パラメータとしての加速収束因子を評価データとして演
算し、最高の演算精度を有する加速収束因子の存在する
区間を逐次的に縮小して限定し、最良の演算精度を与え
る加速収束因子の値を検索的に演算する加速因子演算手
段を有し、得られた最適の加速パラメータを基にシミュ
レーション演算手段は、シミュレーションを実行するも
のである。
【0083】請求項17記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、加速因子演算手段が以下の3つの条件に基
づいて、最適な加速パラメータを選択するものである。
反復演算にチェビシェフ加速法を適用する場合、シミュ
レーション演算手段でのシミュレーションに先立って、
加速因子演算手段がチェビシェフ加速パラメータを逐次
変化させながら最も加速効果が大きく収束性が向上する
最適なチェビシェフパラメータを検索し、解析対象とす
るシミュレーションケース毎に、最適のチェビシェフ加
速パラメータを演算、設定し、設定された加速パラメー
タを用いてシミュレーション演算手段は、自動的に、シ
ミュレーションを実行するものである。(1)反復演算
における反復がm回実行される毎に、次の線形加速演算
を実行する。
【数12】 ただし、イタレーション回数kはmの倍数であり(チェ
ビシェフ加速)、V’(k)を新たにV(k)に置き換
えて次の反復演算を実行し、ai は次の多項式T’m,η
のxi の係数とする。 T’m,η(x)=Tm (x/η)/Tm (1/η) ここで、Tm はm次のチェビシェフ多項式である。 (2)加速パラメータとして前記条件(1)内のηを用
いる。 (3)最良の加速パラメータの検索において、λ≦η<
1の範囲で検索し、前記検索の初期値はη=λとし、こ
のλは加速を行わない場合の反復演算における反復1回
あたりの誤差の減少割合を示すデータである。
【0084】請求項18記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、シミュレーション演算手段でのシミュレー
ションに先立ち、加速因子演算手段が、以下の3つの条
件に基づいて最適な加速パラメータを選択し、選択され
た最適加速パラメータに従ってシミュレーション演算手
段が、シミュレーションを実行するものである。 (1)反復演算におけるイタレーション回数kが偶数の
とき、次の線形加速演算を実行する。 V’(k)=V(k−2)+ω(V(k)−V(k−2)) ここで、V’(k)をV(k)に置き換えて次の反復演
算を実行する。 (2)加速パラメータとして、前記条件(1)内のωを
用いる。 (3)最良の加速パラメータの検索を、検索の初期値が
ω=2/(2−λ2 )で以下の式を満足する範囲内で実
行する。 2/(2−λ2 )≦ω<2 ここで、λは加速を行わない場合の反復演算における反
復1回あたりの誤差の減少割合を示すデータである。
【0085】請求項19記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、加速パラメータとして実用上充分な加速効
果を得ることが可能な加速パラメータω=2/(2−λ
2 )を用いてシミュレーションを実行するものである。
【0086】請求項20記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、以下の条件(1)および(2)に基づいて
設定された演算パラメータを用いて、ボード線図作成手
段がボード線図を作成し、表示手段がこのボード線図を
表示する。オペレータは、ボード線図作成手段が作成し
たボード線図を基に反復回数を設定するものである。 (1)反復回数を、有限固定値のn回としたシミュレー
ション結果の反復回数を極めて多く(例えば、無限大)
としたシミュレーション結果への動的追従性を表す伝達
関数として、次式、 H(z)=(1−λn )/(1−λn Pr (z)) で示される離散時間系伝達関数を用いる。ここで、Pr
(z)は、以下の(a)〜(c)のいずれかである。 (a)Pr (z)=Z-1(0次予測) (b)Pr (z)=2Z-1−Z-2(1次予測) (c)Pr (z)=3Z-1−3Z-2+Z-3(2次予測) (2)伝達関数の動特性を示すデータとして、前記H
(z)の周波数応答を示すボード線図に該当するデータ
を用いる。
【0087】請求項21記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、反復演算に用いる反復回数と演算精度との
関係を示すデータを演算し、規定された演算精度を満足
する最小値の反復回数を演算する最小反復回数演算手段
を有し、シミュレーション演算手段はこの最小値の反復
回数のデータを基にシミュレーションを実行するもので
ある。
【0088】請求項22記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、演算手段が演算精度のデータとして、以下
の(1)〜(4)のいずれかのデータを決定し、決定さ
れたデータを基にシミュレーション演算手段が、シミュ
レーションを実行するものである。 (1)H(z)の周波数応答における、特定周波数ωで
の、H(eA )のゲインの偏差の許容上限値。(ここで
A=jΔtω) (2)H(z)の周波数応答における、特定周波数ωで
の、H(eA )の位相偏差の許容上限値。(ここでA=
jΔtω) (3)H(z)の共振周波数における、共振点でのピー
クゲインの許容上限値。 (4)H(z)の共振周波数の許容下限値。
【0089】請求項23記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータは、シミュレーションにおける複数個(q個)
の刻み時間幅であるΔtj (j=1,2,...,q)
のそれぞれに対して、1周期のシミュレーション演算時
間幅がΔtj を超過しない最大の反復回数nj を演算す
るものである。q個の刻み時間幅と反復回数の組のパタ
ーン(Δt1 ,n1 ),(Δt2 ,n2 ),...,
(Δtq ,nq )のそれぞれに対して、各パターンに基
づいたシミュレーションの演算精度を示すデータを演算
するボード線図計算手段を有する。オペレータは、表示
手段を介して得られた演算精度を示すデータを基に演算
パラメータを決定し、シミュレーション演算手段は、決
定された演算パラメータを基にシミュレーションを実行
するものである。
【0090】請求項24記載の発明に係る電力系統シミ
ュレータでは、評価データ計算手段が反復回数をn1
2 回とした1周期の系統状態量演算を実行し、反復回
数n1 回の終了時点とn1 +n2 回の終了時点での2回
分の所要演算時間を計測し、これらをt1 ,t2 とし、
以下の式(1)を用いて演算速度特性を演算し、かつ次
の式(2)を用いて収束因子を演算することにより、高
速に評価データを演算し、オペレータは、これらの評価
データを、表示手段を介して入手するものである。 (1)a=(T1 −T2 )/(n1 −n2 ),b=(n
1 2 −n2 1 )/(n1 −n2 )、ここで、T1
1 ,T2 =t2 −t1 なお、Tは演算時間、nは反復
回数であり、演算時間Tと反復回数nは1次式の関係が
あり、これをT=an+bと表す。 (2)λ=<V(n)−V(n−1),V(n−1)−
V(n−2))/<V(n−1)−V(n−2),V
(n−1)−V(n−2)>、ここで(n=n1
2 )である。なお、V(i)はノードアドミタンス方程式を反復解法
で求解する過程での反復回数iにおける電圧ベクトルを
表す。<、>はベクトルの内積演算、λは反復解法にお
ける「収束因子」を表す。
【0091】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を
説明する。 実施の形態1.図1は、この発明の実施の形態1による
電力系統シミュレータを示すブロック図であり、図にお
いて、102はシミュレーション演算部(シミュレーシ
ョン演算手段)、1101はシミュレーション準備処理
部(演算手段)である。シミュレーションの開始に先立
ってオペレータは、シミュレーションデータ入力装置1
04からシミュレーションデータを入力する。シミュレ
ーション準備処理部1101は、入力されたデータを系
統定数記憶部109、反復回数記憶部110および加速
パラメータ記憶部111内に記憶し、またオペレータの
データ設定作業を支援する情報を示すデータを演算す
る。
【0092】1102はオペレータが設定したシミュレ
ーションデータに依存して変化するシミュレーション演
算速度や計算精度に関する情報を、シミュレーション準
備処理部1101から受信し、オペレータ等に対し表示
する演算状態データ出力装置(表示手段)である。11
03は収束因子を演算する収束因子計算部(収束因子計
算手段)、1104は演算状態データの出力処理を行う
出力処理部であり、演算状態データとしての収束因子を
出力する。なお、図29に示した電力系統シミュレータ
と同様のものについては同一符号を付し重複説明を省略
する。
【0093】実施の形態1の電力系統シミュレータは、
系統状態計算における反復演算で反復1回あたりの誤差
の減少割合を示すデータを、シミュレーション演算に先
立ち演算し、演算結果であるこのデータを、演算状態デ
ータ出力装置1102を介してオペレータに通知するも
のである。
【0094】ここで収束因子に関して説明する。収束因
子の詳細は文献2に記載されている。 文献2:「数値計算、赤坂隆著、応用数学講座7、19
91.7、コロナ社」 収束因子は、反復公式9に基づいた反復演算について反
復1回あたりの誤差の減少割合を示す量である。収束因
子をλ(0<λ<1)とすると反復1回について誤差が
λ倍に減少するから、反復回数がn回のときは、誤差が
λn 倍に減少する。従って、収束因子の値を演算するこ
とによって、シミュレータの演算特性として反復回数と
演算精度の関係を把握することができる。すなわち、収
束因子は反復回数と演算精度との関係を示す情報であ
る。つまり、収束因子とは、反復一回あたりの誤差の減
少割合である。反復解法による求解を実際に試行して、
反復過程のデータ{V(i)}i=1・・・nを既知と
したとき、式(2)によって収束因子を演算することが
できる。
【0095】収束因子は、反復公式9における反復行列
Mの絶対値の最大の固有値の絶対値に等しい。この実施
の形態1では、この理論に従い、収束因子計算部110
3において、反復行列Mの絶対値の最大の固有値を計算
する演算を行う。そして、反復行列Mの絶対値最大の固
有値を計算するため、固有値計算における「反復法」と
呼ばれる収束計算の手法を採用し反復演算を実施する。
この手法は、文献2に記載されている。
【0096】反復演算によって収束因子を計算するた
め、収束因子計算部1103は、反復演算を実施する反
復演算部1105と反復過程のデータを格納する反復デ
ータ格納部1106を備えている。収束因子計算部11
03の動作アルゴリズムは後述する。なお、反復行列M
を表すデータは、系統定数記憶部109内に記憶された
対象系統アドミタンス行列Yを表すデータとD行列を表
すデータから、式7に基づいて生成する。
【0097】次に動作について説明する。図2は電力系
統シミュレータによる電力系統シミュレーション時のシ
ミュレーション準備処理部1101の動作を説明するフ
ローチャートであり、図において、ステップST120
1,ST1203,ST1206はオペレータ側の処理
を示し、他のステップはシミュレーション準備処理部1
101での処理を表す。先ず、オペレータは、シミュレ
ーションデータとして、系統データとD行列を表すデー
タをシミュレーションデータ入力装置104を介してシ
ミュレーション準備処理部1101内へ入力する(ステ
ップST1201)。シミュレーション準備処理部11
01は、これらの入力された系統データとD行列を表す
データを系統定数記憶部109内に保存する(ステップ
ST1202)。この系統データはアドミタンス行列Y
を表すデータを含んでいる。
【0098】次に、オペレータが収束因子計算処理を起
動すると、収束因子計算部1103は処理を開始し、設
定された系統データとD行列のデータから反復行列Mの
絶対値、最大固有値を演算し、演算結果が出力処理部1
104を介して演算状態データ出力装置1102へ出力
される(ステップST1203,ST1204,ST1
205)。
【0099】この段階で、解析対象としているシミュレ
ーションケースにおける収束因子がオペレータに提供さ
れ、既知となる。よって、オペレータは、表示された収
束因子を基に反復回数および加速パラメータを決定する
(ステップST1206)。この場合、反復回数は要求
仕様である演算精度を基に決定できる。以後計算された
収束因子をλとする。要求された仕様が、系統状態計算
部108における1回の系統状態計算において、誤差を
10%に減少させるという仕様であるとすると、λn
0.1となる最小のnを反復回数に設定する。加速パラ
メータについては、シミュレータの収束加速手法が加速
定数法である場合、収束因子が既知であれば、最適加速
定数を計算することができる。計算式は、上記した文献
2等に記載されており、反復演算がガウスザイデル法の
場合、最適加速定数ωは次式15で与えられる。
【0100】
【数13】
【0101】あるいは、収束加速手法がチェビシェフ加
速法の場合、チェビシェフパラメータとして収束因子λ
を用いることにより、最適な加速パラメータを設定する
ことができる。チェビシェフパラメータについては後述
する。
【0102】以上で、反復回数と加速パラメータが決定
したので、オペレータはシミュレーションデータ入力装
置104を介して、シミュレーション準備処理部110
1へ反復回数と加速パラメータを入力する(ステップS
T1206)。シミュレーション準備処理部1101で
は、入力されたこれらのデータを、それぞれ反復回数記
憶部110、加速パラメータ記憶部111内に保存する
(ステップST1207)。
【0103】以上の処理で、シミュレーションに必要な
データがすべて揃ったので、データをシミュレーション
演算部102へ転送する(ステップST1208)。こ
れにより、シミュレーション準備処理を終了する。
【0104】次に、収束因子計算部1103における収
束因子の演算アルゴリズムを説明する。図3は、電力系
統シミュレータの収束因子計算部1103が実行する収
束因子の演算処理の動作を示すフローチャートであり、
図においてX(i)(i=0,1,...)はN次元列
ベクトルデータであり、iはイタレーション回数であ
る。まず、イタレーション回数iを1にセットし(ステ
ップST1301)、X(i)の初期値X(0)を設定
する。X(0)は0ベクトルでなければ任意でよい(ス
テップST1302)。反復が(i−1)回まで完了し
たとき、X(i)=MX(i−1)に相当する演算によ
ってX(i)を演算するとともにλi =<X(i),X
(i−1)>を演算する。ここで記号<,>は列ベクト
ルの内積を表す(ステップST1303,ST130
4)。
【0105】λi とλi の前回値λ(i−1)との差が
一定値以下なれば、λi は収束したとみなし反復を打ち
切る(ステップST1305)。次の反復ステップに移
行するに先立って、次式16によってX’(i)を演算
し、X’(i)を新たにX(i)と置き換えて、X
(i)の大きさを1に正規化する(ステップST130
6)。
【0106】
【数14】
【0107】式16は次式17の関係を有する。
【0108】
【数15】
【0109】その後、イタレーション回数iに1を加算
して、次の反復ステップに進む(ステップST130
7)。以上の反復過程をλi が収束するまで繰り返す。
λi が収束すると(ステップST1305)、収束因子
の演算は終了する。
【0110】文献2によれば、図3におけるステップS
T1303の演算とステップST1305の演算を繰り
返し反復すると、X(i)は次第にMの絶対値最大の固
有値に対応する固有ベクトルに収束してくる。X(i)
が、Mの絶対値最大の固有値λに対応する固有ベクトル
に収束したとすると、 X(i)=λX(i−1) であるから、次式18が得られる。 λ= <X(i),X(i−1)> / <X(i−1),X(i−1)> (式18) しかしながら、式17により、式18の分母は1であ
る。従って、 λi =<X(i),X(i−1)> の収束した値が、Mの絶対値最大の固有値、すなわち収
束因子となる。ここで、シミュレーションの演算速度の
定義を以下に記載する。 シミュレーションの演算速度=(シミュレーションの刻
み時間幅)/(1周期の演算に要する演算時間)
【0111】例えば、シミュレーションの刻み時間幅を
10msと設定する。このとき、モデル計算における微
分方程式は積分刻み10msで演算される。また、現象
を10msの刻み時間幅で刻んで時間を離散化した上で
各シミュレーション時刻の状態量として現象の10ms
毎の状態量を演算していく。シミュレーション時間をこ
のように離散化した上での個々の演算処理を1周期の演
算と呼ぶ。シミュレーションの刻み時間幅が10ms
で、1周期の演算に、例えば20msの演算時間を要す
る場合、シミュレーションの演算速度は0.5である。
【0112】1周期の演算に要する演算時間は、シミュ
レーションを通じて均一であるから、あるシミュレーシ
ョン時間の現象を模擬するのに要した演算時間によって
シミュレーションの演算速度を計測することができる。
例えば、電力系統で生起する10秒間の現象を模擬する
のに、総演算時間として20秒要したとすると、シミュ
レーションの演算速度は0.5となる。
【0113】以上のように、この実施の形態1によれ
ば、シミュレーションケースに対応してオペレータが入
力したシミュレーションの入力データに従って、シミュ
レータの演算特性としての反復演算1回あたりの誤差の
減少割合を示すデータを演算し、演算結果をオペレータ
に通知するので、必要な反復回数および最適な加速パラ
メータを速やかにかつ正確に決定することができる。ま
た、指定した反復回数の反復演算による誤差の減少割合
をオペレータが認識することが可能なのでシミュレーシ
ョンの演算結果に含まれる誤差量を、オペレータが定量
的に把握することができる。
【0114】このように、反復演算における反復回数と
演算精度の関係式を示す情報を表すデータ(収束因子)
を演算してオペレータへ提供することにより、オペレー
タは、反復回数や加速パラメータなどの演算パラメータ
を迅速にかつ正確に決定し、設定することができる。ま
たシミュレーションの演算精度を定量的にオペレータは
把握することができる。
【0115】なお、実施の形態1では反復演算における
反復回数と演算精度の関係式を表現するデータ(収束因
子)に従った上で、所望の演算精度を実現するための反
復回数や最適加速パラメータはあくまでもオペレータが
決定する方式としたが、オペレータを介さずにこれらを
演算し自動的にそれらの最適値を決定し電力系統シミュ
レータに与える方式でも良い。
【0116】このように、反復演算の反復回数と演算精
度の関係式を表現する情報を表すデータ(収束因子)を
演算することによって、規定された演算精度を実現する
最小の反復回数を得ることができ、その結果、オペレー
タが必要最小限の反復回数を調整する労力を省力化する
ことができる。換言すれば、規定された演算精度を実現
するための最高の演算速度を与える反復回数(演算パラ
メータ)を即時に得ることができる。また、反復回数を
減少させると1周期の演算(これに関しては、実施の形
態3でさらに説明する。)の演算時間が短縮され、シミ
ュレーションの演算速度が向上する。すなわち、規定さ
れた演算精度を保持し、シミュレーションの演算速度を
高速化できる。
【0117】実施の形態2.図4は、この発明の実施の
形態2における収束因子計算部1103のアルゴリズム
を示したフローチャートであり、図3に示したフローチ
ャートのものと同様のものについては同一符号を付し重
複説明を省略する。実施の形態2では、上記実施の形態
1における収束因子計算部1103内の収束因子を計算
する演算ステップの演算速度の向上を図るものである。
【0118】実施の形態1と実施の形態2との電力系統
シミュレーション処理を比較した場合、異なるのはステ
ップST2101およびステップST2102で示され
る収束因子計算部1103の内部アルゴリズムのみであ
り、他の構成および他の動作については実施の形態1と
同じであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0119】次に動作について説明する。実施の形態2
では、図4のフローチャートで示すように、図3のフロ
ーチャートにおけるステップST1303の処理を、ス
テップST2101の処理に変更し、新たに、ステップ
ST1305と終了処理のステップとの間に、ステップ
ST2102の処理を追加した。すなわち、イタレーシ
ョン回数(i−1)まで動作が完了すると、X(i)=
m X(i−1)に従ってX(i)を演算する。ここ
で、mはある整数の定数である(ステップST210
1)。従って、ステップST2101,ST1304,
ST1305,ST1306の一連の演算を反復すると
文献2に記載の通り、上記実施の形態1と同じ理論によ
って、λi は次第にMm の絶対値最大の固有値に収束す
る。
【0120】次に、Mm の絶対値最大の固有値を演算す
ることがいかに有効であるかを説明する。ここで、Mの
絶対値最大の固有値をλmax 、絶対値が2番目に大きい
固有値をλ2 とする。文献2に記載の固有値計算手法の
反復法によれば、上記実施の形態1における図3のフロ
ーチャートで示したアルゴリズムは、イタレーション回
数iを増加させた場合、次式19が0に収束したとき反
復が完了する。
【0121】
【数16】
【0122】従って、この精度をε0 とすると実施の形
態1における収束因子計算アルゴリズムが収束する為に
必要な反復回数iは、式18<ε0 より、次式20で示
すことができる。
【0123】
【数17】
【0124】ところで、Mm の固有値はMの各固有値を
m乗したものであるからMm の絶対値最大の固有値はλ
max mであり、Mm の絶対値が2番目に大きい固有値はλ
2 mである。従って、実施の形態2において図4に示した
収束因子計算部1103の反復アルゴリズムにおいてλ
i がこのλmax mに収束するのに要する反復回数は式20
の導出と同様に行い、次式21を得る。
【0125】
【数18】
【0126】上記の式20と式21とを比較すると、実
施の形態2における収束因子計算部1103の反復アル
ゴリズムは、上記実施の形態1における収束因子計算部
1103の反復アルゴリズムと比較して、m倍速く反復
演算が収束する。また、1回の反復に要する演算時間の
差はX(i)=MX(i−1)(ステップST130
3)の処理とX(i)=Mm X(i−1)(ステップS
T2101)の処理の相違分のみであるが、Mm は反復
を通じて変化しないので、Mm に相当する演算のみ反復
演算に先だって完了させておくことにより、ステップS
T2101の演算時間はステップST1303の演算時
間とほぼ同じ値で抑止可能である。
【0127】上記のことから、実施の形態2における収
束因子計算部1103の演算は、実施の形態1における
収束因子計算部1103の演算に比較して、約m倍速く
λma x mの演算を実行することが可能である。図4のフロ
ーチャートにおけるステップST1304の処理による
λi は、λmax mに収束するので、反復演算終了後、m乗
根を演算することによって所望の収束因子λmax を求め
ればよい(ステップST2102)。
【0128】以上のように、この実施の形態2によれ
ば、電力系統シミュレータにおける系統状態計算処理の
収束因子をλとすると、λm は系統状態計算処理の反復
演算においてm回の反復による誤差の減少割合を表す。
また収束因子λを演算する反復演算に比較してλm の値
を演算する反復演算はm倍速く収束することが可能とな
る。そして、この原理に基づいて、λm を演算し次にそ
のm乗根を演算することによって収束因子λを演算する
ので、収束因子計算部1103の動作を高速化すること
ができる。
【0129】なお、収束因子λを演算する目的は、系統
状態量計算処理における反復回数をnとした場合、λn
の大小評価を行うこと、あるいはλn を規定値以下に抑
えるnを得ることである。よって、λn =(λm n/m
であるから、λm のみが既知であれば良い。即ち、図4
のフローチャートにおけるm乗根を行う演算(ステップ
ST2102)は、この発明において本質的に必要とさ
れる処理ではなく省略してもさしつかえない。
【0130】実施の形態3.図5は、この発明の実施の
形態3による電力系統シミュレータを示すブロック図で
あり、図において、3104はシミュレーション開始に
先だってシミュレーションデータを読み込み記憶保存し
かつ演算速度特性の演算を実行するシミュレーション準
備処理部(演算手段)である。3101は演算速度特性
演算部(演算速度特性演算手段)、3102は演算速度
特性データを出力する出力処理部、3103は演算速度
特性を外部に表示する演算状態データ出力装置である。
なお、図1に示した上記実施の形態1と同様のものにつ
いては、同一符号を付し重複説明を省略する。
【0131】実施の形態3の電力系統シミュレータで
は、演算速度特性を演算する演算速度特性演算部310
1をシミュレーション準備処理部3104内に備えるも
のであり、その特徴は、シミュレーション演算において
1周期の演算に要する演算時間と系統状態計算で用いら
れる反復回数の関係式を表すデータを演算速度特性演算
部3101で演算して、演算結果を出力処理部3102
で処理し、その後演算状態データ出力装置3103を介
してオペレータへ表示することである。
【0132】ここで、「1周期の演算」に関して説明す
る。従来の技術で記載したように、電力系統シミュレー
タは、シミュレーション時刻を逐次進めながら電力系統
状態を表すデータを逐次演算していく。図30は、シミ
ュレーション演算部102におけるこの動作を表したも
のであり、モデル計算部107によるモデル計算処理
(ステップST201)、系統状態計算部108による
系統状態計算処理(ステップST202)、およびデー
タ出力処理(ステップST203)を実行した後、シミ
ュレーション時刻を表す変数tにシミュレーション刻み
時間幅Δtを加算してシミュレーション時刻を進める
(ステップST204)。このステップST201から
ステップST204までの一連の処理は、シミュレーシ
ョン時刻がシミュレーション終了時刻に到達するまで繰
り返される(ステップST205)。
【0133】また、シミュレーション時刻を表す変数t
が時刻tであるときのモデル計算処理ステップST20
1と系統状態計算処理ステップST202は、時刻t1
における電力系統の状態を演算する。このように、シミ
ュレーション時刻を逐次進めながら時刻毎の状態を求め
る演算を周期的に繰り返すので、ある時刻の電力系統の
状態を演算する処理を「1周期の演算」と称する。即
ち、ステップST201,ステップST202,ステッ
プST203を1グループとみなした処理を1周期の演
算と称する。
【0134】周期毎の各演算において、収束計算を行う
ための反復演算の反復回数は固定であるため、この1周
期の演算に要する演算時間は、シミュレーションを通じ
て一定の値となる。また、1周期の演算において、モデ
ル計算処理ステップST201とデータ出力処理ステッ
プST203の演算時間は、収束計算の反復回数に無関
係であるが、系統状態計算処理ステップST202の演
算時間は収束計算の反復回数に比例する。
【0135】従って、1周期の演算に要する演算時間T
は、反復回数nに比例する部分と、反復回数nに依存し
ない部分との和として次式22で表すことができる。 T=an+b (式22) ここでa,bは定数である。 a,bは、解析対象とする電力系統やアルゴリズム指定
としてのD行列の選定法により変化するが、シミュレー
ションを通じては固定である。なお、Tは演算時間、n
は反復回数であり、Tとnは1次式の関係があり、これ
をT=an+bと表わす。反復回数nを2通りにして2
回演算を実施し、その都度演算時間を計測する。これに
より2通りのnに対応する各々のTの計測値が得られ、
a,bを逆算する。式(1)の技術的意味はこのように
してa,bを計算することで、このa,bは演算速度特
性と称する概念の具体的一例である。
【0136】電力系統をリアルタイムでシミュレーショ
ンする場合、シミュレーション時刻の刻み時間幅をΔt
とするとき、1周期の演算を実時間のΔt以内で完了さ
せなければならない。この制約条件のもとで反復回数n
を最大限に設定して演算精度を確保するためには式22
におけるa,bの値をシミュレーションケース毎に把握
する必要がある。
【0137】1周期の演算に要する演算時間は、シミュ
レーションの演算速度を表現する量であるとともに、上
記のa,bは反復回数nとこの演算速度との関係式を表
す量であるから、上記のa,bを「演算速度特性デー
タ」と呼ぶ。
【0138】次に動作について説明する。図6は、演算
速度特性演算部3103の動作を示すフローチャートで
あり、このフローチャートを用いて演算速度特性演算部
3101が演算速度特性を計算する原理をまず説明し、
次にこの原理に基づいた演算速度特性演算部3101の
動作を説明する。
【0139】まず、異なる反復回数n1 ,n2 により2
回1周期の演算を試行し、各々の演算時間をタイマーで
計測する。これらをT1 ,T2 とすると次式23で表せ
る。 T1 =an1 +b,T2 =an2 +b (式23) これにより、次式24で表されるaおよびbによって計
算する。 a=(T1 −T2 )/(n1 −n2 ), b=(n1 2 −n2 1 )/(n1 −n2 ) (式24)
【0140】次に、この原理に基づいた演算速度特性演
算部3101の動作を説明する。まず、時間を計測する
ためにタイマーを起動する(ステップST3201)。
タイマー起動時、時刻は0でリセットされていると仮定
する。その後モデル計算を実施し(ステップST320
2)、反復回数をn1 回に設定して系統状態計算を実施
する(ステップST3203)。反復回数n1 回とした
ときの1周期の演算の試行がステップST3202とス
テップST3203で完了したので、タイマーを読みと
り時刻を変数t1 に記憶する(ステップST320
4)。
【0141】次に、モデル計算を再度実施し(ステップ
ST3205)、反復回数をn2 に設定して再度系統状
態計算を実施する(ステップST3206)。反復回数
をn2 としたときの1周期の演算の試行が、ステップS
T3205とST3206で完了したので、再びタイマ
ーを読みとり時刻を変数t2 に記憶する(ステップST
3207)。タイマー起動時には時刻は0にリセットさ
れているので、前記t1 が反復回数をn1 としたときの
1周期の演算の所要時間T1 であり、t2 −t1 が反復
回数をn2 としたときの1周期の演算の所要時間T2
ある。これらに従って、T1 =t1 ,T2 =t2 −t1
と設定する(ステップST3208)。その後、式24
によってa,bの値を計算する(ステップST320
9)。
【0142】このように、シミュレーション演算の開始
に先立つシミュレーション準備処理において、シミュレ
ーション演算における1周期の演算を、収束計算の反復
回数を2通り変化させた各々のケースについて実行する
とともに、これら各々の試行ケースでの1周期の演算に
要する処理時間を計測することによって反復回数と1周
期の演算時間との関係式を表すデータを演算し、その演
算結果をオペレータに表示することができ、その結果規
定処理時間を超過しない系統状態量計算の反復回数を、
オペレータは迅速に決定することができる。
【0143】1周期の演算に要する演算時間の大小と、
シミュレーションの演算速度の大小とは同じ意味であ
る。従って、実施の形態3の電力系統シミュレータで
は、反復演算における反復回数とシミュレーションの演
算速度の関係式を示す情報をオペレータに提供できる。
【0144】次に、電力系統シミュレーションにおい
て、反復回数と演算速度の関係式を把握することの必要
性を以下に説明する。電力系統シミュレーションによっ
て、あたかも実際の電力系統が存在するかのような環境
が提供できるが、この場合、現実の現象の進行速度と同
じ速さでシミュレーション演算を行う必要性があり、こ
のためシミュレーションの演算速度を1以上と設定する
必要がある。即ち、1周期の演算に要する演算時間をシ
ミュレーション刻み時間幅以内に抑止して演算を行う必
要がある。この場合、この制限範囲で最良の演算精度を
得るため、演算時間を超過しない条件下で、最大の反復
回数を設定する必要がある。この条件を満足する為に
は、反復回数とシミュレーションの演算速度の関係式を
把握する事により、試行錯誤によることなく迅速に所望
の条件を満足する反復回数を決定可能である。
【0145】なお実施の形態3では、電力系統シミュレ
ータとして反復演算を伴う演算方式に準拠している場合
を説明したが、反復演算を行わない電力系統シミュレー
タに対しても同様の考え方を適用できる。即ち、反復演
算を行わない電力系統シミュレータにおいては、演算速
度特性として、1周期の演算に要する演算時間そのもの
を演算する。これは、前記の演算速度特性データa,b
において、a=0としてbのみ演算し出力することを意
味する。
【0146】反復演算を伴わない電力系統シミュレータ
において、1周期の演算時間を把握することの必要性を
以下に説明する。電力系統シミュレータの演算アルゴリ
ズムとして、発電機などの個々のモデル計算や、系統状
態計算等の演算を複数のプロセッサに分担させることに
より並列演算処理を行う方式が通常良く採用される(例
えば、特開平4−17521号参照)。このタイプの電
力系統シミュレータでは、解析対象とするシミュレーシ
ョンケース毎に、複数プロセッサへの分担内容を決定す
る必要がある。この為、複数プロセッサへの処理分配指
定データを、オペレータ自身の裁量によって決定し、電
力系統シミュレータへ与える必要がある。この処理分配
指定データは演算アルゴリズムを調整するデータである
ので演算パラメータである。この処理分配指定データを
決定するに際しては、並列処理の並列性を引き出すなど
して極力演算速度を速くすることを目標として、処理分
配指定データを決定する。
【0147】従来の電力系統シミュレータでは、このよ
うな処理分配指定データを決定する際、分配パターンを
いろいろと変化させて、その変化の度に長時間のシミュ
レーション演算を実施し、総演算時間を計測しながら調
整していたので、決定するまでに煩雑な作業を伴ない多
くの時間を必要とした。これに対して、この実施の形態
3の電力系統シミュレータでは、演算パラメータを設定
すると、即時に1周期の演算に要する所要時間を表現す
る情報がオペレータに対して出力されるので、個々の分
配パターンに応じた実際の演算速度を容易に相互比較で
き、その結果、オペレータは、最高演算速度を与える処
理分配指定データを容易に決定可能となる。
【0148】以上のように、この実施の形態3によれ
ば、シミュレーション開始に先立ったシミュレーション
準備処理で、シミュレーション演算における1周期の演
算を、収束計算の反復回数を2通り変化させた各々のケ
ースについて実行するので、これら各々の試行ケースで
の1周期の演算に要する処理時間を基に得られた反復回
数と1周期の演算時間との関係式を表す演算速度特性デ
ータをオペレータに提供することができる。その結果、
規定処理時間を超過しない系統状態量計算の最大反復回
数を、オペレータは迅速に決定できる、あるいは、1周
期のシミュレーション演算に要する所要時間を表わすデ
ータが、オペレータに対して提供されるので、オペレー
タは個々の分配パターンに応じた実際の演算速度を、容
易に相互比較でき、最高演算速度を与える演算パラメー
タとしての処理分配指定データを、容易に決定できる。
【0149】実施の形態4.図7は、この発明の実施の
形態4による電力系統シミュレータを示すブロック図で
あり、図において、4101は反復回数演算部(反復回
数演算手段)である。なお、図5に示した上記実施の形
態3と同様のものについては同一符号を付し重複説明を
省略する。前述した実施の形態3の電力系統シミュレー
タでは、演算速度特性データを演算してオペレータに通
知したのち、その演算速度特性に基づいてオペレータが
反復回数の設定値を検討し、その後オペレータが、反復
回数を設定して、シミュレーション演算を実行する場合
を示したが、実施の形態4の電力系統シミュレータで
は、図7に示すように演算速度特性を求めた後、シミュ
レーション準備処理部(演算手段)4102内の反復回
数演算部4101により制限演算時間を超過しない最大
の反復回数を、自動的に計算するものである。
【0150】次に動作について説明する。先ずオペレー
タは、1周期の演算に対する制限時間を設定し、反復回
数演算部4101へ、シミュレーションデータ入力装置
112を介して、当該制限時間を与える。例えば、リア
ルタイムでシミュレーションを行うという制限のときは
この制限時間はシミュレーションの刻み時間幅Δtとな
る。このときは、次式25を超過しない最大の整数値を
演算して、反復回数とする。 (Δt−b)/a (式25)
【0151】次に、反復回数演算部4101は、計算で
得られた反復回数を反復回数記憶部110へ送り、反復
回数記憶部110は、送られてきた反復回数を内部に記
憶する。
【0152】以上のように、実施の形態4によれば、演
算速度特性を表すデータに従って、制限時間を超過しな
い最大の反復回数を、反復回数演算部4101が、自動
的に計算し、反復回数記憶部110内へ設定するので、
オペレータによる反復回数の算出や設定を省力化でき、
操作性を向上できる。
【0153】実施の形態5.図8は、この発明の実施の
形態5による電力系統シミュレータを示すブロック図で
あり、図において、5205はシミュレーション準備処
理部、5201は評価データを計算する評価データ計算
部(評価データ計算手段)、5203はシミュレーショ
ン刻み時間幅Δtを記憶する記憶部、5204は誤差減
少割合の指定値rを記憶する記憶部、5206は演算し
た評価データを外部に出力する演算状態データ出力装
置、5207は入力処理部、5208はシミュレーショ
ンデータ入力装置である。なお、図1および図5に示し
た実施の形態1および3のものと同様のものについては
同一符号を付し重複説明を省略する。
【0154】実施の形態5の電力系統シミュレータは、
解析対象とする電力系統のノードのグループ毎にD行列
を選定するためのD行列の選定規則に基づいて、ノード
のグループ化のパターン毎に評価データを演算する事に
よって、オペレータがノードをグループ化する際の、D
行列の選定作業を支援する機能を有するものである。
【0155】次に、上記した「ノードのグループ化」、
「ノードのグループ化に従ったD行列の選定」、および
「評価データ」に関し、以下に順次説明する。「ノード
のグループ化」とは、系統の各ノードを複数のグループ
に分割することである。ある系統について、ノードをグ
ループ化するパターンは何通りかあるが、それらすべて
のパターンを列挙する事ができる。
【0156】図9は、電力系統内のある系統を示す模式
図であり、図において、5101はノード、5102は
ブランチ、A,B,C,D,は個々のノードであり、例
えばYABはノードAとBをつなぐブランチのアドミタン
スを表す。YBC,YCDも同様にブランチのアドミタンス
を示す。ただし、AとDはブランチで接続されていない
のでYAD=0となり、図では省略している。
【0157】図10は、図9に示すある電力系統でのノ
ードのグループ化を実施した結果を示す説明図であり、
各グループ化のパターンの各々は、P1,P
2,...,P14の記号が付与されている。これらの
記号は、説明の便宜上設けたものである。図10におい
て、例えばパターンP1はノードAのみで1つのグルー
プを構成し、またノードBCDで1つのグループを構成
し、全体として2つのグループで分割されたノードを示
す。同様に、パターンP6は、Bで1つのグループ、C
で1つのグループ、AとDをまとめて1つのグループ、
よって全体で3個のグループにノードを分割した場合を
示す。
【0158】図10に示したノードのグループ化のパタ
ーンは、4個の要素、A,B,C,Dの論理的な組み合
わせパターンを列挙したものである。この際、パターン
を列挙する条件として、グループが部分系統をなすか否
か等の条件とは無関係である。例えば、P3における
(BD)は、BとDをつなぐブランチが実際には存在し
ないので部分系統は形成しないことになる。次に、ノー
ドのグループ化に従ったD行列の選定について説明す
る。ノードのグループ化に従ったD行列の選定とは、ノ
ードのグループ化パターンを1つ指定する毎に、次に記
載する操作(1),(2)によってD行列を選定するこ
とである。
【0159】(1)同一グループに属するノードは、ノ
ード番号が隣接して連結するようにノード番号の番号付
けを行う。 (2)操作(1)の番号付けによるノード番号で、アド
ミタンス行列Yを表したときノードのグループ化のグル
ープ分割の仕方でYのブロック対角行列を抽出しそれを
Dとなす。
【0160】上記の操作(1),(2)を具体例で説明
する。今、ノードのグループ化のパターンとして、図1
0に示したパターンP12を選択としたとする。最初に
各ノードにノード番号を割り当てる。ノード番号を割り
当てるということは、アドミタンス行列や系統全体の電
圧列ベクトル等における要素の並び方を規定することで
ある。
【0161】グループ化パターンとしてP12を選択し
たとき、ノードAとC、BとDは各々同一グループに属
するから上記操作(1)の条件により、AとC、BとD
は隣接したノード番号をつける。符号*のノードのノー
ド番号をi(*)と表すと次式26のように番号付けを
行えば良い。 i(A)=1,i(C)=2,i(B)=3,i(D)=4 (式26) あるいは、次式27のように番号付けを行っても良い。 i(A)=4,i(B)=1,i(C)=3,i(D)=2 (式27) 式25のように番号付けするとき、アドミタンス行列は
次式28で表される。
【0162】
【数19】
【0163】ここに、YA,YB,YC,YDは各々駆
動点アドミタンスを表す。上記のアドミタンス行列につ
いて、上記操作(2)の条件よりD行列を作成する。操
作(2)の条件によれば、P12の場合はAとC、Bと
Dが各々グループであるから、このグループ化に従って
Yのブロック対角行列を抽出する。するとD行列は次式
29で表せる。
【0164】
【数20】
【0165】P12のグループ化において、YACのブ
ランチは、始点,終点とも同一のグループのノードであ
るが、YAB,YBC,YCDは始点のノードと終点ノ
ードが異なるグループに属する。式28で表されるD行
列、即ちアドミタンス行列式29において、始点と終点
が異なるグループに属するブランチ対応した伝達アドミ
タンスを0とおいたものである。
【0166】このように始点と終点が異なるグループに
属するブランチに対応した伝達アドミタンスの要因を0
とおくとき、D行列がブロック対角行列になるようにす
る為に、操作(1)の条件を設けてある。
【0167】次に、上記のグループ化と異なるグループ
化を実施した場合のD行列の選定例を示す。例として、
パターンP5を用いる。このとき、i(A)=3,i
(B)=1,i(C)=2,i(D)=4とノード番号
をつける。アドミタンス行列YとD行列Dは、各々、以
下の式30および式31となる。
【0168】
【数21】
【0169】
【数22】
【0170】上記では、ノードのグループ化を指定して
それに基づいたD行列の選定を説明した。
【0171】次に、このようなD行列を選定する位置付
けを説明する。式9による漸化式に従った反復演算をお
こなって系統状態量を演算する場合、与えられた解析対
象とする系統に対して、式7の反復行列Mの構成の方法
は一通りでないことを説明した。自由度が存在するの
は、ノード番号の番号づけとD行列の選定である。D行
列を全く任意に選定できるか否かという問題が存在する
が、式9による漸化式が収束することが必要条件として
あり、そのためD行列には数学的制限が存在する。しか
し、これはこの発明の主旨と異なるので言及しない。
【0172】また、電力系統シミュレータの演算アルゴ
リズムによっても、アドミタンス行列から特定の操作に
よってD行列を作成するという意味での制限が存在す
る。例えば、ある種の電力系統シミュレータの場合、D
行列はアドミタンス行列の対角成分を抽出した行列に限
るといった制限が存在する。この場合は、解法はヤコビ
法となり、D行列を選出する余地はない。
【0173】この実施の形態5で想定している電力系統
シミュレータは、D行列はアドミタンス行列のブロック
対角行列を抽出した行列に限るという制限を有する電力
系統シミュレータを想定している。この場合、電力系統
のノードのグループ分けを行うと、アドミタンス行列の
ブロック分割を指定することになるから、電力系統のノ
ードのグループ分割を行うことがD行列を選定すること
になる。従って、このシミュレータの場合、解析対象と
する電力系統毎に、ノードのグループ分けを表すデータ
を、電力系統シミュレータに設定する必要がある。この
データは、図10に示したパターンのいずれか1パター
ンを表すデータである。グループ分けを指定すると、上
述した過程によってD行列が決定されるとともに、アル
ゴリズムが準拠する漸化式9の行列データが決定する。
【0174】このように、D行列をブロック対角行列と
したときの反復解法は、「点ヤコビ法」と呼ばれてい
る。また、計算機のプロセッサを複数用いるとともにノ
ードのグループ分けを行った各グループに個々のプロセ
ッサを割り付けるMIMD(Multiple Ins
truction stream MultipleD
ata system)方式も考案されている。このよ
うな方式を示す文献3を以下に示す。 文献3:「電力系統の静的状態推定における並列計算ア
ルゴリズムについての一研究」、佐々木博司著、電学論
B、昭和57−12、p.65。
【0175】この方式の概略的な内容は、従来の技術で
既に記載した。さて、例えば、図9に示した電力系統を
上記の演算方式でシミュレーションする場合、オペレー
タは、図10に示したノードのグループ化パターンのう
ち1つのパターンを選択しシミュレータに設定する必要
がある。その際、パターン毎に演算速度と収束計算の収
束性がトレードオフの関係にあり、選択が非常に難しい
問題となっていることは、既に説明したように、従来技
術の課題となっている。上記文献3の記載によると、あ
るグループ化パターンPiが、他のグループ他のパター
ンPjの細分になっている場合、必ずPjから決まる反
復アルゴリズムは、Piから決まる反復アルゴリズムよ
りも収束性は良くなる。
【0176】例えば、図10の各パターンでは、P2は
P1を細分したものであるから、P2を指定した場合の
収束計算に比較して、P1を指定した場合の収束計算の
方が収束性が良くなる。しかし、グループ毎にプロセッ
サを割り当てるMIMD方式の場合は、P2の方が処理
の並列度が高く高速である。従って、P1とP2のいず
れかを選択する場合、いずれが有利であるかは直ちに判
定できない。このように、グループ化されたパターンの
いずれを選択するかという問題は、収束性と処理速度と
の両方を考慮する必要があり、従来では、上記したよう
な選択の難しさがあった。
【0177】このような従来の電力系統シミュレータに
おける欠点を解消するため、実施の形態5では、パター
ン毎の収束性と処理速度の両者を同時に評価する次の式
32および式33で表される評価データを導入する。 R=λn ,n=(Δt−b)/a (式32) T=a(log r/log λ)+b (式33) 式32および式33において、λは該当するD行列から
定まる反復行列Mの収束因子であり、Δtはシミュレー
ション刻み時間幅、式33内のaおよびbは式22にお
ける定数、式32におけるnは、指定された刻み時間幅
Δtを超過しないための最大反復回数を示す。従って、
式32のRは、1周期の演算の処理時間をΔtに制限し
たときの最大反復回数の反復によって、最終的にどれだ
け誤差が減少するかを表すデータとなり、Rが小さいほ
ど精度が良い事を示す。従って、規定処理時間で1周期
の演算を完了させるという制約条件のもとでは、各グル
ープ化のパターン毎に評価データRを比較することによ
り、グループ化パターンの演算精度の優劣が判明する。
【0178】式33は、式32において、Δt→T,R
→rなる変数の置き換えを行い、Tについて解いた式を
表す。rは、1周期の演算で要求される最終的な誤差の
減少割合を表す指定データであり、Tは誤差の最終減少
割合rが指定されたときの所要演算時間を表す。Tが小
さいほど、要求精度を満足するための所要演算時間は短
くなるので、そのグループ化されたパターンは良好であ
ると言える。なお、上記の評価データRおよび評価デー
タTは、D行列ノードのグループ化のパターン、あるい
は複数プロセッサ使用時の処理分配指定データ、加速パ
ラメータなど演算パラメータのうち演算速度を左右する
要因および収束性の良否を左右する要因に依存するデー
タである。また上記評価データRは、演算精度を表現す
る情報の一種である。また評価データTは、演算速度を
表現する情報の一種である。
【0179】次に動作について説明する。図11は、電
力系統シミュレーションの準備処理としてノードのグル
ープ化のパターンをオペレータが決定するまでの動作を
示すフローチャートである。図11のフローチャートに
おいて、ステップST5301,ST5302,ST5
303,ST5304,ST5309ではオペレータが
操作を行う。ステップST5305,ST5306,S
T5307,ST5308は、この実施の形態5に係わ
る電力系統シミュレータのシミュレーション準備処理部
5205の動作を表す。
【0180】以下、ノードのグループ化を決定するまで
のオペレータの操作方法及びシミュレーション準備処理
部5205の処理を説明する。まずオペレータは、シミ
ュレーションデータ入力装置5208を介して解析対象
としている電力系統のブランチのインピーダンスなどの
電力系統データをシミュレーション準備処理部5205
へ入力する(ステップST5301)。電力系統データ
は、入力処理部5207を介して、系統定数記憶部10
9内に保存される。さらにオペレータは、刻み時間幅指
定値Δtと精度指定値rを決定する(ステップST53
02)。Δtとrは、Δt記憶部5203およびr記憶
部5204内にそれぞれ保存される。系統データ,Δ
t,rはグループ化が決定するまで変化されない。
【0181】次に、オペレータがグループのパターンを
入力して検討していく作業段階に入る。そのため、オペ
レータは、ノードのグループ化を表すデータをシミュレ
ーションデータ入力装置5208を介して入力する(ス
テップST5303)。このデータは、一時的に系統定
数記憶部109内に保持される。その後、オペレータ
は、該当グループ化に対する評価データを求める演算を
実行する処理を起動する(ステップST5304)。シ
ミュレーション準備処理部5205の内部では、収束因
子計算部1103による収束因子λの計算(ステップS
T5305)、演算速度特性演算部3103による演算
速度特性a,bの演算(ステップST5306)、およ
び評価データ計算部5201による評価データ計算(ス
テップST5307)が実行される。評価データとして
は、入力されたλ,a,bに従い式32のR、式33の
Tを両方計算する。
【0182】これら演算がなされた評価データR,T
を、出力処理部5202を介して演算状態データ出力装
置5206へ出力し、評価データをオペレータに提供す
る。オペレータが、さらに異なるグループ化パターンの
評価データを要求する場合、フローはステップST53
03まで戻り、上記した一連の操作が繰り返される。こ
れらの動作は、グループ化が決定されるまで繰り返され
る(ステップST5309)。
【0183】このように、シミュレーション準備処理部
5205は、オペレータがD行列を表すデータあるいは
D行列を決定するデータを入力する毎に、系統データお
よびD行列から決定されるシミュレーション演算の演算
速度特性と収束計算の収束性の両方を統一的に評価する
評価データを演算し、演算結果を演算状態データ出力装
置5206を介してオペレータに提供する。その結果、
個々のD行列を表すデータおよびD行列を決定するデー
タの優劣を的確にオペレータに提供し、オペレータがD
行列を決定する支援を行う。これにより、オペレータが
D行列を決定するために必要な作業を著しく省力化する
ことができる。
【0184】なお、上記の説明では、ノードのグループ
化のパターンを指定することによってD行列を指定する
方式の電力系統シミュレータを説明したが、上記した電
力系統シミュレータの構成および動作より明らかなよう
に、より一般的な方法でD行列を指定する電力系統シミ
ュレータに対しても、同様の方法で評価データを演算す
ることができ、この場合も同様の効果を得ることができ
る。従って、他の方法でD行列を指定する電力系統シミ
ュレータに対しても、この実施の形態5で示された方法
を適用することが可能である。即ち、実施の形態5で用
いた方法はD行列の指定方法には依存しない方式であ
り、1つのD行列に対し評価データとして式32のR、
式33のTを両方を演算してオペレータへ提供するの
で、詳細に評価できるという利点がある。
【0185】演算パラメータの中で、D行列およびノー
ドのグループ化のパターンおよび複数プロセッサ使用時
の処理の分配指定等の演算パラメータは、シミュレーシ
ョンの演算精度とシミュレーションの演算速度の両者を
左右する演算パラメータであり、特に、これらの演算パ
ラメータは反復演算における反復1回あたりの誤差減少
割合すなわち収束性と演算速度特性a,bの各々を左右
する要因となる。
【0186】以上のように、この実施の形態5では、収
束性と演算速度特性の両者を左右する演算パラメータに
対する設定値の優劣を判定するための評価データである
評価対象の演算パラメータに対して、一定演算時間を超
過しない最大の反復回数を演算した後、その反復回数の
反復演算による誤差の減少割合を演算して評価データと
し、この評価データに従って、上記演算パラメータの優
劣を比較するので、つまり演算パラメータの各設定デー
タ毎に反復回数を調整して、常に演算速度を一定とした
上で、おのおのの演算精度を比較するので、演算パラメ
ータの優劣を的確に評価することができる。また、上記
演算パラメータの設定値の優劣を判定するためのデータ
として、1周期の演算での系統状態計算における規定演
算精度を実現するための最小反復回数によって演算した
ときの1周期の演算の演算時間を表すデータを演算し、
これを評価データとする。次に、この評価データに従っ
て上記演算パラメータの優劣を比較する、即ち、演算パ
ラメータの各設定データ毎に反復回数を調整して、常に
演算精度を一定とした上で各々の演算速度を比較するの
で、演算パラメータの個々の優劣を的確に評価すること
ができる。
【0187】実施の形態6.図12は、この発明の実施
の形態6による電力系統シミュレータを示すブロック図
であり、図において、6101は評価データ計算前置処
理部である。なお、図8に示した実施の形態5と同様の
ものについては同一符号を付し重複説明を省略する。
【0188】この実施の形態6の電力系統シミュレータ
では、上記実施の形態5に示した電力系統シミュレータ
において収束因子の演算方式を変更したものである。
【0189】評価データ計算前置処理部6101は、系
統定数記憶部109より系統データと評価対象であるD
行列を表すデータを受けとり、演算速度特性および収束
因子を演算し、演算結果を評価データ計算部5201へ
出力する。
【0190】次に動作について説明する。図13は、評
価データ計算前置処理部6101の内部動作を示すフロ
ーチャートである。ステップST3201〜ステップS
T3209の処理は、図6のフローチャート内の同一符
号のステップと同一処理を意味する。実施の形態3にお
ける演算速度特性演算部3101と同様の処理により、
演算速度特性a,bが計算される。ステップST620
1とST6202は、図6のフローチャートの処理内に
新たに付加された処理である。演算速度特性を演算する
過程において、反復回数をn2 回とした2回目の系統状
態計算ステップST3206が終了するとき、反復デー
タのうち最新の3回の反復データであるV(n2 ),V
(n2 −1),V(n2 −2)を退避しておく(ステッ
プST6201)。ここに、V(k)は反復回数がk回
目である時の反復データであるところの系統の電圧列ベ
クトルを表す。これら3個の列ベクトルデータを用い
て、次式34により収束因子λを得る。
【0191】
【数23】
【0192】ここで<*,*>はベクトルの内積を表
す。この演算をステップST6202で実行する。次に
式34が収束因子に等しい理由を以下に説明する。任意
の反復回数k(>1)に対してV(k),V(k+1)
を演算する式として、反復公式9から以下の式35,3
6を得る。 V(k+1)=MV(k)+D-1I (式35) V(k)=MV(k−1)+D-1I (式36) これらの式35,36により次式37を得る。 (V(k+1)−V(k))=M(V(k)−V(k−1)) (式37)
【0193】従って、系統状態計算処理であるステップ
ST3206における反復演算の反復を繰り返し行うこ
とで、文献2に記載の最大固有値を反復方によって求め
る手法の説明によれば、{V(k)−V(k−1)}
k=0,1,...は、次第にMの絶対値最大の固有値に対応す
る固有ベクトルに収束する。そのため、ステップST3
206における系統状態計算における反復演算によって
V(n2 −1)−V(n2 −2)はMの絶対値、最大の
固有値に対応する固有ベクトルに収束していると見なす
ことができる。従って、次式38を得る。 V(n2 )−V(n2 −1) =M(V(n2 −1)−V(n2 −2)) =λ(V(n2 −1)−V(n2 −2)) (式38) 式38により、式34が収束因子であることがわかる。
【0194】なお、ステップST3206で実行される
系統状態計算において、その反復初期値を、ステップS
T3203の最終演算結果V(n1 )に設定するアルゴ
リズムとする。その結果、ステップST3206の系統
状態計算の結果V(n2 )は合計n1 +n2 回の反復を
経過していることになるので、式34におけるV(n2
−1)−V(n2 −2)についてより固有ベクトルへの
収束性が向上して、演算された収束因子の精度を向上さ
せることができる。
【0195】以上のように、この実施の形態6によれ
ば、演算速度特性を演算する過程で実施する系統状態計
算の試行において、系統状態計算を行うための反復演算
によって、反復列である{V(k)}の階差による反復
列{V(k)−V(k−1)}が、反復行列の絶対値最
大の固有値に対応した固有ベクトルに収束するという原
理に基づいて、式34を用いて収束因子を演算するの
で、実施の形態5の動作における収束因子計算部110
3で実行した反復演算による収束因子の計算処理(ステ
ップST5305)を省略することができ、また、収束
因子を用いた評価データの演算時間を短縮でき、評価デ
ータを高速に演算することができる。このように、演算
速度特性を計測するために行う系統状態計算の試算結果
を流用して、直ちに収束因子を演算するので、収束因子
を演算するための付加的な反復演算を省略でき、これに
より、評価データの演算時間を短縮することができる。
【0196】実施の形態7.図14は、この発明の実施
の形態7による電力系統シミュレータを示すブロック図
であり、図において、7109は電力系統のシミュレー
ションに先だってシミュレーションデータの設定および
データの最適化を行うシミュレーション準備処理部、7
101はシミュレーションデータ入力装置、7102は
入力処理部、7103は系統定数記憶部、7104はノ
ードのグループ化のパターンを表すデータを生成するグ
ループ化パターン生成部(グループ化パターン生成手
段)、7105は評価判定部、7106は最適パターン
記憶部、7107は出力処理部、7108は出力装置、
7110は評価データ計算部である。7111は、評価
部(評価手段)であり、評価データ計算部7110、評
価判定部7105および最適パターン記憶部7106か
ら構成されている。なお、図12に示した実施の形態6
と同様のものについては同一符号を付し重複説明を省略
する。
【0197】実施の形態7は、実施の形態5の電力系統
シミュレータで使用された方式を応用し、計算機によっ
てノードのグループ化のパターンを列挙しつつ、個々の
パターンの評価データに従って最適なグループ化パター
ンを自動選出するものである。オペレータは、シミュレ
ーションデータ入力装置7101によって、解析対象と
する系統の系統データ、およびシミュレーション刻み時
間幅Δtを入力する。入力されたこれらのデータは、入
力処理部7102を介して、系統データは系統定数記憶
部7103へ、ΔtはΔt記憶部5203へ送信され、
そこで記憶される。
【0198】ノードのグループ化のパターンを表すデー
タを生成するグループ化パターン生成部7104は、例
えば、図10に示すようなグループ化のパターンを表す
データを出力する手段である。以下、図10のグループ
化されたパターンに基づいて個々のグループ化のパター
ンの識別をPi なる記号で表す。また、Pi のインデッ
クスiをパターンインデックスと呼ぶ。グループ化パタ
ーン生成部7104は、パターンインデックスiが入力
されたとき、Pi に該当するグループ化パターンデータ
を生成する。評価データ計算前置処理部6101では、
系統データの個々のグループ化パターンデータから決ま
るD行列に従って、該当グループ化パターンに対応する
演算速度特性と収束因子を演算する。
【0199】評価データ計算部7110は、該当グルー
プ化パターンに対応する評価データとして式32におけ
る評価データRを計算する。以後グループ化パターンP
i に対応する評価データをR(Pi )と表記する。評価
判定部7105では、計算がなされたR(Pi )がすで
に演算が完了している他のパターンの評価データと比較
して最小か否かを判定する。最適パターン記憶部710
6では、各パターンのうち評価データR(Pi )が最小
値を有するパターンのパターンデータを記憶して保存す
る。
【0200】出力装置7108は、最小値の評価データ
を有する最適パターンの選定演算が完了した時に、オペ
レータや外部の装置に最適パターンデータを提供する。
なお、最適パターン記憶部7106は、シミュレーショ
ン演算部102に接続されシミュレーション準備処理が
完了した段階で、最適データを自動的にシミュレーショ
ン演算部102に入力する。
【0201】次に動作について説明する。図15は、シ
ミュレーション準備処理部7109により最適なグルー
プ化パターンを自動選定する動作のアルゴリズムを示し
たフローチャートである。図15のフローチャートで
は、実施の形態7において、オペレータが系統データを
入力することによってシミュレーションケースを指定し
た後、シミュレーション準備処理部7109によって、
最適なグループ化パターンを自動選定する動作のアルゴ
リズムを示している。
【0202】図中のtmpは内部のテンポラリ変数を表
す。最初に、テンポラリ変数tmpを初期化する(ステッ
プST7201)。パターンインデックスiも同様に初
期化する(ステップST7202)。パターンインデッ
クスiの値をグループ化パターン生成部7104に入力
することによって、グループ化パターン生成部7104
よりグループ化パターンPi を表すデータを出力する
(ステップST7203)。このPi を表すデータを、
評価データ計算前置処理部6101に入力する。評価デ
ータ計算前置処理部6101では、系統定数記憶部71
03に保存されている系統データとパターンデータPi
からパターンをPi としたときのD行列のデータに従っ
て、シミュレーション演算を試行する。これにより、こ
のパターンPi に該当する演算速度特性a,bを演算す
る(ステップST7204)。さらにまたこのパターン
に該当する収束因子を演算する(ステップST720
5)。
【0203】この演算速度特性と収束因子から評価デー
タ計算部7110によって評価データR(Pi )を演算
する(ステップST7206)。次に、この評価データ
R(Pi )とtmpの値を比較する(ステップST720
7)。R(Pi )がtmpの値よりも小さい場合、tmp
R(Pi )の値を代入し、かつ最適パターン記憶部71
06にPi に該当するパターンデータを保存する(ステ
ップST7208,ステップST7209)。tmpの値
よりもR(Pi )が大きい場合、ステップST7208
とステップST7209は行わない。この段階で、パタ
ーンの評価がすでに完了している範囲内での最適パター
ンのパターンデータが、最適パターン記憶部7106に
格納されている。
【0204】次に、パターンインデックスiに1を加算
し、次のパターン評価処理に移行する。このパターン評
価を、すべてのパターンが完了するまで繰り返す(ステ
ップST7210)。全パターンに対する評価演算が終
了した段階で、最適パターン記憶部7106には、全パ
ターンの中でR(Pi )が最小となる最適パターンのパ
ターンデータが格納されている。
【0205】以上のように、この実施の形態7によれ
ば、解析対象である電力系統シミュレーションの各ケー
スに対し、電力系統のノードのグループ化パターンを指
定する必要がある場合、解析対象とするシミュレーショ
ンケースに対して設定される可能性のあるノードのグル
ープ化パターンの個々に対応した評価データを逐一演算
することによって、検索的に、制限時間内で、最高値の
演算精度を有するノードのグループ化パターンを選定す
るための演算を行うので、最適のグループ化パターンを
自動的に決定することができる。なお実施の形態7で
は、評価データとして式32で示した評価データを採用
した例を示したが、式33に示した評価データを採用し
ても良い。この場合も、規定の演算精度を得るために演
算時間が最短となるノードのグループ化パターンを自動
的に選定できる。またD行列を指定する際、ノードのグ
ループ化パターンを指定するという条件について最適パ
ターンの選定方式を示したが、D行列の指定に関し設定
自由度の全範囲または一部の範囲のD行列の設定パター
ンを計算機を用いた演算で行えば、このような条件に該
当しない電力系統シミュレータに関しても、実施の形態
7と同様の方法を用いることで、シミュレーションケー
ス毎に最適なD行列の選定を自動的に行うことができ
る。
【0206】実施の形態8.図16は、この発明の実施
の形態8による電力系統シミュレータの動作を示すフロ
ーチャートである。図15に示した実施の形態7の電力
系統シミュレータでは、理論的に列挙できるグループ化
パターンをすべて列挙して、個々の評価データの算出を
行ったが、電力系統シミュレータの特性上ある種判定可
能な条件が存在する。つまり、グループ化パターンにつ
いて著しくシミュレータの演算速度が低下することや収
束性が低下することが評価データを演算するまでもなく
判明している場合は、評価データおよび評価データ算出
のために必要な演算を省略可能であり、該当パターンを
最適パターンの候補から除外することができる。
【0207】ここに判定可能なノードのグループ化に関
する条件の例として、下記(a)〜(d)等がある。 (a)同一グループに発電機ノードが複数個存在する
と、演算時間が著しく増大する。 (b)同一グループのノードの総数がある個数以上であ
れば、演算時間が著しく増大する。 (c)分割されたグループの個数が一定個数以上になる
と、収束性が著しく劣化する。 (d)あるノードのグループ化を指定したとき、そのグ
ループ化に対応したアドミタンス行列のブロック分割を
(Yij)1<i,j<Lとして、(ここで、Lはグルー
プの総数である。)iを固定し、jを変化させた
{Yij;1<j<L}のうち、Yijが0行列でない個数
が規定値以上となるiが存在するとき、演算時間が著し
く増大することが判明しているとき。
【0208】これらの条件(a),(b),(c),
(d)に示すように評価データを演算することなく評価
データの値が著しく劣性を示すことが明かな場合のパタ
ーンの判定条件を「除外条件」と呼ぶ。例えば、ある電
力系統シミュレータAにおいて、そのシミュレーション
演算部は上記(a)の性質を持つと仮定する。このとき
「同一グループに複数の発電機ノードが存在する」こと
がシミュレータAにおいて除外条件となる。
【0209】次に動作について説明する。上記した除外
条件を考慮する場合の、最適グループ化パターンを選定
するアルゴリズムを図16に示す。図16のフローチャ
ートにおいて、図15のフローチャートと同一のものに
ついては同一符号を付し重複説明を省略する。実施の形
態8では、ステップST7203で各パターンデータを
生成する度にそのパターンが除外条件に当てはまるか否
かの判定を、ステップST8101で実行する。該当パ
ターンが除外条件に当てはまれば、評価データの演算な
どは省略し、直ちに次のパターンデータの生成に処理の
流れは移行する。なおステップST8101において、
あるパターンが除外条件に当てはまるか否かの判定は、
具体的な除外条件により異なる。例えば、除外条件とし
て前記(a)の性質に基づく場合、図16におけるステ
ップST8101では、具体的には判定対象としている
グループ化パターンについて、同一グループ内に、複数
の発電機ノードが存在するグループが存在するか否かの
判定を実施する。その他のステップの動作は、図15の
フローチャートの場合と同様である。
【0210】以上のように、この実施の形態8によれ
ば、ノードのグループ化パターンデータを生成する毎
に、そのパターンが除外条件に当てはまるか否かのチェ
ックを行い、除外条件に当てはまる場合は、評価データ
の演算並びにパターンの評価演算を省略できる。実際の
電力系統シミュレータにおいて、解析対象とする電力系
統によっては、そのノードをグループ化した全パターン
のうち、除外条件となるパターンが過半数となるような
除外条件の存在するケースが非常に多い。このような場
合、実施の形態8の方法を用いれば、最適グループ化パ
ターンを選定するための演算時間を著しく短縮すること
ができる。
【0211】実施の形態9.図17は、この発明の実施
の形態9による電力系統シミュレータを示すブロック図
であり、図において、9101はシミュレーションの開
始に先だって、シミュレーション入力データの取り込み
及び最適加速パラメータの演算を行うシミュレーション
準備処理部、9102はシミュレーションデータ入力装
置、9103はシミュレーションデータ入力装置910
2に接続された入力処理部である。シミュレーションデ
ータ入力装置9102、入力処理部9103を介して外
部から系統データおよびD行列を表すデータを入力し、
系統定数記憶部109内に記憶する。系統定数記憶部1
09内に記憶された系統データおよびD行列を表すデー
タに基づいて、収束因子計算部1103はもとの反復行
列Mの収束因子λを演算する。9104は最適加速パラ
メータ演算部であり、系統定数記憶部109より系統デ
ータおよびD行列をあらわすデータを受け取り、また収
束因子計算部1103より収束因子を受け取ってシミュ
レーションケースに最適なチェビシェフパラメータを演
算する。
【0212】9105は最適加速パラメータ保存部であ
り、該当シミュレーションケースに最適なチェビシェフ
パラメータおよびその最適なチェビシェフパラメータη
に対応した多項式T’rη(X)(後述の式41を参
照)の係数データを格納する保存部である。9106は
加速因子演算部(加速因子演算手段)であり、最適加速
パラメータ演算部9104および最適加速パラメータ保
存部9105から構成される。なお、最適加速パラメー
タ保存部9105は、シミュレーション演算部102と
接続され、最適加速パラメータの演算が完了した後、そ
の最適加速パラメータηに対応した多項式T’rη
(X)の係数データを、シミュレーション演算部102
に設定する。このため、シミュレーション演算部102
によって行われる系統状態計算において、最適加速パラ
メータに従った線型加速演算が実施される。なお、図1
に示した実施の形態1と同様のものについては同一符号
を付し重複説明を省略する。
【0213】このように、実施の形態9の電力系統シミ
ュレータでは、シミュレーション演算部102の系統状
態計算部において、反復演算によって系統状態計算を行
う場合、収束加速手法を適用する場合について、解析対
象とするシミュレーション毎に最適な加速パラメータを
自動選定する。
【0214】先ず、上記した収束加速手法に関して説明
を行い、その後収束加速手法における問題点を述べる。
式9による反復演算によって系統状態計算を行う場合、
収束加速手法として次の2種類が存在する。 (1)加速定数法 (2)チェビシェフ加速法 (1)の加速定数法の場合は、加速定数が加速パラメー
タであり、(2)のチェビシェフ加速法の場合は、後述
するチェビシェフパラメータが加速パラメータである。
これらのうち、(2)のチェビシェフ加速法について
は、以下の文献4に記載されている。
【0215】文献4:「マトリクスの数値計算、戸川隼
人著、1991.7、オーム社」。(1)の加速定数法
に関する説明は、式10の説明で行った。加速定数法な
らびにチェビシェフ加速法は、いずれも線型加速法とし
て統一的に扱うことが可能なので、ここでは線型加速法
を代表して説明する。式の反復演算において、反復ステ
ップがk回まで進み、kがmの倍数とする最新のm+1
ステップにわたる以下のm+1個のデータ V(k−1),V(k−m+1),...,V(k−
1),V(k) を用いて次式39のV’(k)を演算する。
【0216】
【数24】
【0217】このV’(k)を新たにV(k)と置換
し、次の反復ステップに進む。ここで、a0
1 ,...,am-1 は定数である。この式39による
外そう計算を行う加速手法は、線型加速法と呼ばれる。
加速定数法の場合、加速定数をωとすると、式39に相
当する外そう計算式は V’(k)=V(k−1)+ω(V(k)−V(k−
1)) であるが、これは式39においてm=1,a0 =1−
ω,a1 =ωとした式に相当する。
【0218】次に、r次のチェビシェフ加速法の場合を
説明する。以下、Tr(x)をr次のチェビシェフ多項
式とする。すなわち T1 (x)=x,T2 (x)=2x2 −1,T3 (x)
=4x3 −3x, T4 (x)=8x4 −8x2 +1,...(以下省略) また、もとの反復演算式V(k+1)=MV(k)+D
-1I(反復公式9)における反復行列Mの収束因子の絶
対値をλとする。そして次式40を、 λ<η<1 (式40) 満たすηを選び、r次の多項式T’r,η(x)を次式
41のように定義する。
【0219】
【数25】
【0220】例えば、以下の式42を定義する。
【0221】
【数26】
【0222】以上の記号のもとで、r次のチェビシェフ
加速法は式39において、m=rとし、ai をT’r,
η(x)におけるxi の係数としたものである。例え
ば、3次のチェビシェフ加速法のとき、T’3,η
(x)のx0 ,x1 ,x2 ,x3 の係数は、0,−3η
2 /(4−3η2 ),0,4/(4−3η2 )であるか
ら、式39は次式43になる。
【0223】
【数27】
【0224】すなわちkが3の倍数のときに、式43に
よってV’(k)を演算し、新たにV(k)と置き換え
るのが3次のチェビシェフ加速法である。なお、式43
において、V(k−3)の係数は0のため省略した。以
上説明した線型加速法に関し、系統状態計算部108
(図29参照)の内部アルゴリズムとして、線型加速法
を使用した場合と使用しない場合の各々のアルゴリズム
を図31、図32に示した。図31は線型加速法を使用
しない場合を図示したフローチャートであり、図32は
線型加速法を使用したフローチャートである。これらの
図の説明は、既に従来技術の項で述べたが以下簡単に再
述する。
【0225】線型加速手法を使用しない場合、反復演算
式である式9を反復が終了するまでくりかえす(図31
のステップST301,ステップST302,ステップ
ST303,ステップST304)。ステップST30
4におけるnは、指定された反復回数である。これに対
し、線型加速手法を使用する場合、イタレーション回数
kがmの倍数のとき演算の完了しているV(k−m),
V(k−m+1),...,V(k)を使用して、式3
9に従ってV’(k)を計算する(図32のステップS
T401,ステップST402)。このV’(k)を新
たにV’(k)に置き換えて、次の反復ステップに進む
(ステップST403,ステップST303)。
【0226】次に、図32に示した線型加速手法を適用
したとき、その収束性向上の効果が如何に評価されるか
を説明する。式39において、反復演算式9を繰り返し
代入する。即ち、
【0227】
【数28】
【0228】従って、次式44を得る。
【0229】
【数29】
【0230】ただし、M0 は単位行列であるとする。こ
れにより式39は、次式45で表すことができる。
【0231】
【数30】
【0232】従って、線型加速法を適用したとき、反復
列から反復ステップKがmの倍数K=ml(l=0,
1,...)である反復列のみ抽出すると、lを逐次増
加するごとの反復演算式は、次式46のようになる。 V(ml)=M’V(m(l−1))+BI (式46) ここに
【0233】
【数31】
【0234】従って、抽出反復列{V(ml)}l=
0,1,...は、式46に示される新たな反復漸化式
に従って収束してゆく。よって、式46に従う反復演算
の収束性を評価することによって、適用している線型加
速法の効果を評価することができる。このため、式46
による反復演算の収束因子、即ち式46におけるM’の
絶対値最大の固有値を評価する必要がある。式40およ
び式41内のパラメータηをチェビシェフパラメータと
称する。チェビシェフ加速法の場合、チェビシェフパラ
メータを選定する毎に式39における定数a2
1 ,...,am が決まり、従って式46における
M’が決まる。
【0235】このようにM’は、パラメータηに依存す
るため、式46におけるM’をM’(η)と既述する。
加速定数法の場合も同様に、加速定数ωを選定する毎
に、式46におけるM’が決まるのは同様である。式4
6におけるM’を、線型加速法における「加速反復行
列」と呼ぶ。また、加速反復行列の収束因子、即ち、加
速反復行列の絶対値最大の固有値の絶対値を線型加速法
における「加速収束因子」と呼ぶ。また、式39におけ
るmを、線型加速法の「次数」と呼ぶ。
【0236】反復行列Mの収束因子をλとし、m次の線
型加速法の加速収束因子をλ’とする。ただし、チェビ
シェフ加速法の場合は、λ’はチェビシェフパラメータ
ηに依存するからλ’(η)と記す。加速定数法の場
合、加速収束因子λ’は加速定数ωに依存する。m次の
線型加速法の場合、図32に示したフローチャートに従
うと、式46に示した演算を実現するためには、V(k
−m)を演算した後、V(k−m+1),...,V
(k−1),V(k)を逐次演算するためのm回の反復
演算が必要である。即ち、加速法を適用しない反復演算
をm回反復する毎に、1回の加速する外そうが実施され
る。m回の反復によって、誤差はλm 倍に減少するか
ら、元の収束因子λに対して加速収束因子λ’は、次式
47で表される関係、 λ’<λm (式47) を満足しないと、収束加速法の効果が出ない。λ’が小
さいほど、加速が効果的であり、λm <λ’であれば、
加速は逆効果である。
【0237】線型加速法の場合、λ’はチェビシェフパ
ラメータあるいは加速定数などの加速パラメータに依存
するが、これら加速パラメータの選定に際しては、式4
7が成立することを確認する必要があるとともに、最も
λ’が小さくなるように加速パラメータを選定すること
が望まれる。
【0238】次に、電力系統シミュレータの系統状態計
算における反復演算に、チェビシェフ加速法を適用する
際の問題点を説明する。チェビシェフ加速法におけるチ
ェビシェフパラメータは、式40に示す範囲内で自由度
をもって設定することができるが、解析対象とする系統
データおよびD行列の選定に伴い、元の反復行列Mの収
束因子λ自体が変化するとともに、加速収束因子λ’
(η)を最少とするチェビシェフパラメータηも変化す
る。従来の電力系統シミュレータでは試行錯誤によって
最も収束性がよくなるηを決定していたが、この試行錯
誤からオペレータを解放するため、λ’(η)を最少と
する最適なチェビシェフパラメータηを、自動的に演算
する手段を提供することが望まれる。
【0239】実施の形態9の電力系統シミュレータで
は、この目的のため逐次ηを変化させながらその都度
λ’(η)を演算してλ’(η)の大小を比較し、検索
的にλ’(η)を最少とするηを求める演算を実施す
る。
【0240】次に動作について説明する。図18は、最
適加速パラメータ演算部9104における、最適チェビ
シェフパラメータの演算アルゴリズムを説明するフロー
チャートであり、図において、Δη,η,ηp ,λ’,
λ’p は変数を表す。まず、Δη,η,λ’に反復演算
における初期値を代入する(ステップST9201,ス
テップST9202)。ηの初期値には、元の反復行列
Mの収束因子λを設定する。またηp にはηの値を、
λ’p にはλ’の値を代入する(ステップST920
3)。尚、ηp ,λ’,pは反復演算において、各々
η,λ’の前回値を退避するための変数である。
【0241】次に、チェビシェフパラメータをη−Δ
η,η,η+Δηの3通りとしたときの、各々の加速収
束因子λ’(η−Δη),λ’(η),λ’(η+Δ
η)を演算し、各々を順にλ’0 ,λ’1 ,λ’2 とす
る(ステップST9204,ステップST9205,ス
テップST9206)。即ち、λ’i=λ’(η−Δη
+iΔη)(i=0,1,2)である。なお加速収束因
子λ’(η)の演算アルゴリズムは後述する。次に、3
個のλ’i=(i=0,1,2,)のうち最少となるi
を変数iに格納する(ステップST9207)。即ち、
λ’i=min{λ0 ,λ1 ,λ2 }となるiを選ぶ。
またη−Δη,η,η+Δηの3個の値のうち対応する
加速収束因子λ’を最小値とする値を新たに変数ηに格
納する(ステップST9208)。即ち、λ’i =λ’
(η)となる。またλ’i を変数λ’に格納する(ステ
ップST9209)。ηの前回値ηpとηが異なり、
λ’の前回値λ’pとλ’の差が規定値以下になると収
束したとみなして反復を打ち切る(ステップST921
0,ステップST9211)。
【0242】以上のステップST9203〜ステップS
T9209までの反復演算を繰り返す。反復演算が終了
した際、変数ηには加速収束因子λ’(η)を最少にす
る最適なチェビシェフパラメータが格納されているの
で、最適加速パラメータ保存部9105に保存する。ま
た、多項式T’rη(X)の係数データa0
1 ,...,ar も最適加速パラメータ保存部910
5内に保存する(ステップST9212)。なお、この
係数データa0 ,a1 ,...,ar は、シミュレーシ
ョン演算部102に入力され、シミュレーション演算に
おいて、図32のフローチャートのステップST402
に示す線型加速演算の係数となる。
【0243】図19は上記したアルゴリズムによって、
変数ηの値が最適なチェビシェフパラメータηに収束す
る様子を表した説明図であり、チェビシェフパラメータ
ηと加速収束因子λ’の関係を表している。η,Δηの
初期値に基づき、λ’(η−Δη),λ’(η),λ’
(η+Δη)の三者を比較する。η−Δη,η,η+Δ
ηのうち最もλ’を小さくする値を新たにηとし、幅Δ
ηを1/2として同様の比較を繰り返す。このアルゴリ
ズムによって、ηは次第にλ’(η)を最少にする最適
チェビシェフパラメータに収束する。
【0244】次に、図18のフローチャートにおけるス
テップST9204〜ステップST9205に示した加
速収束因子λ’の演算アルゴリズムを説明する。これら
3処理は、ともに同様の処理であるので、λ’(η)の
演算(ステップST9205)を代表して以下に説明す
る。また簡単のため、線型加速演算の次数mをm=4と
する(ここで、次数とは式39におけるmである)。従
って、4次のチェビシェフ加速の場合を説明する。
【0245】図20は、加速収束因子λ’の演算アルゴ
リズムを示す説明図である。図3においてx(i)(i
=0,1,2,...)はN次元列ベクトルの反復デー
タを表す。iはイタレーション回数である。最初に、線
型加速演算における係数a0 ,...,a4 を演算する
(ステップST9401)。aj は、多項式T’4,η
(x)=T4 (x/η)/T4 (1/η)のxj の係数
である。
【0246】4次のチェビシェフ多項式T4(x)は、 T4 (x)=8x4 −8x2 +1 であるから T’4、η(x)=(8x4 −8η22 +η4 )/(8
−8η2 +η4 ) 従って、 a0 =η4 /(8−8η2 +η4 ),a1 =0、 a2 =−8η2 /(8−8η2 +η4 ),a3 =0,a
4 =8/(8−8η2 +η4
【0247】次に、x(0)に初期値を代入した後、x
(i)=Mx(i−1)によって逐次x(i)を演算す
る。iが4の係数のとき、x(i−4+j)(j=0,
1,2,3,4)より式39に示した演算によってx’
(i)を演算し、新たにx(i)とする(ステップST
9406,ST9407)。従って、iが4の倍数であ
る反復列x(0),x(4),x(8),...に関し
ては、互いにx(4l)=M’x(4(l−1))なる
関係にある。ここにM’は、式46に示した加速反復行
列である。
【0248】この4の倍数のイタレーション回数を抽出
した反復列{x(4l)}l=0,1,2,...につ
いて、ベクトルの正規化演算(ステップST9410)
と前記のx(4l)=M’x(4(l−1))なる演算
を繰り返すので、上記実施の形態1で用いた理論と同様
の理由により{x(4l)}は、次第にM’の絶対値最
大の固有値に対応する固有ベクトルに収束する。従っ
て、 λ’i =<x(i)、x(i−4)> なる演算によって4の倍数であるiに対してλ’i を逐
次計算していくと、λ’i はM’の絶対値最大の固有
値、即ち加速収束因子に収束する。この反復演算をλ’
i が収束するまで繰り返す。
【0249】次に、上記した方式に類似した方式を説明
する。この方式は、この発明の関連出願である特願平7
−220933号に記載の系統状態量計算における反復
演算において、電圧列ベクトルの反復列{V(k)}k
=0,1,2,...の偶数回目の反復列を抽出して、
加速定数を選定に関する方式である。この場合、加速演
算としては反復演算式を与える式9である、 V(k+1)=MV(k)+D-1I に対し、kが偶数のときに次式48で表される。 V’(k)=V(k−2)+ω(V(k)−V(k−2)) (式48) なる加速演算を行い、このV’(k)を新たにV(k)
に置き換えて、次の反復ステップに進む。この場合、式
46において、m−2とおくと式46におけるM’はa
0=1−ω,a1=0,a2=ωより次式49が得られ
る。 M’=(1−ω)E+ωM2 ここで、Eは単位行列である。
【0250】Mの固有値をλ1 ,λ2 ,λ3 ,...,
λN とし、多項式Lω(x)=1−ω+ωx2 とおくと
フロベニュースの定理(例えば、文献2参照)よりM’
の固有値はLω(λ1),Lω(λ2 ),...,Lω
(λN )となる。従って、次式が加速収束因子となる。
【0251】
【数32】
【0252】以下、加速収束因子を最少とする最適加速
定数を求める。図21は、加速収束因子と最適加速定数
の関係を示す説明図である。λ1 ,λ2
λ3 ,...,λN のうちλi 2(i=1,...,N)
の最大値を与えるλi をλ+ 、λi 2(i=1,...,
N)の最小値を与えるλi をλ-とすると、図21に示
されるように、次式50が得られる。
【0253】
【数33】
【0254】Lω(λ)はωの値に係わらずLω(1)
=Lω(−1)=1である。1≦ω≦2の範囲でωを増
加させると、|Lω(λ+ )|は減少するが、|Lω
(λ- )|は増加する。従って|Lω(λ+ )|=|L
ω(λ- )|となるとき式50の値が最少になる。従っ
て、最適加速定数ωopt は、 1−ω+ωλ+ 2=−(1−ω+ωλ- 2) より ωopt=2/(2−(λ+ 2+λ- 2)) よって、次式51を得る。 (式51) 2/(2−λ+ 2)≦ωopt≦2
【0255】ところで、λ+ はMの収束因子であり、こ
の実施の形態9では収束因子計算部1103において計
算される。従って、最適加速定数は式51を満足する範
囲内で検索すれば良いことがわかる。なお、この出願人
らの研究によれば以下の事項が判明している。式48に
基づく線型加速演算式48による収束加速法を適用する
とき、加速定数ωを次式52で得る場合、実用上十分な
加速効果を得ることを確認している。 ω=2/(2−λ2 ) (式52) ここに、λは元の反復行列Mの収束因子である。従っ
て、最適加速パラメータ演算部9104では加速定数を
式52で与え、図18のフローチャートに示した検索処
理を省略しても良い。この場合、最適加速定数を選定す
るための演算時間を短縮できる。
【0256】以上のように、この実施の形態9によれ
ば、反復演算によって系統状態計算を行う電力系統シミ
ュレータにおいて、反復演算にチェビシェフ加速法を適
用する場合、シミュレーションに先立ってチェビシェフ
加速パラメータを逐次変化させながら、最も加速効果が
大きく収束性が向上する最適なチェビシェフパラメータ
を検索的に検索するので、常に解析対象とするシミュレ
ーションケース毎に最適なチェビシェフ加速パラメータ
を演算できる。また、シミュレーションの演算における
反復演算に際して、最適なチェビシェフパラメータに基
づいた加速演算を実行するので、収束性が向上し、シミ
ュレーションの演算精度を向上させることができる。ま
たその結果、少ない反復回数でも高い精度を確保できる
ので、シミュレーションの演算時間を短縮できる。
【0257】実施の形態10.図22は、この発明の実
施の形態10による電力系統シミュレータを示すブロッ
ク図であり、10101はシミュレーションの開始に先
立って入力されたシミュレーションケースに対する特性
伝達関数のボード線図を作成し、外部に出力する機能を
有するシミュレーション準備処理部である。特性伝達関
数に関する説明は後述する。10102はシミュレーシ
ョンデータ入力装置、10103はシミュレーションデ
ータ入力処理部である。シミュレーションケースにおけ
る系統定数、系統状態計算における反復回数n、シミュ
レーション刻み時間幅Δtを表すデータを、シミュレー
ションデータ入力処理部10103およびシミュレーシ
ョンデータ入力処理部10103を介して入力し、各々
系統定数記憶部109、反復回数記憶部110、Δt記
憶部5203内に記憶する。ここで、系統定数とは系統
データおよびD行列を表すデータから得られる定数であ
る。
【0258】10104は特性伝達関数の周波数応答特
性としてのボード線図を表すデータを演算するボード線
図作成部(ボード線図作成手段)、10105は出力処
理部10105を介して外部に出力され、ボード線図出
力部10106により該当するボード線図が表示または
印字出力される。なお特性伝達関数の動特性は該当シミ
ュレーションケースにおける収束因子と反復回数とシミ
ュレーション刻み時間幅の3個のデータによって決定さ
れるので、ボード線図作成部10108は収束因子計算
部1103、反復回数記憶部110、Δt記憶部520
3から各々データを受け取る構成となっている。なお、
図1および図8に示した実施の形態1および5のものと
同様のものについては同一符号を付し重複説明を省略す
る。
【0259】実施の形態10では、シミュレーションケ
ース毎に異なる動特性となる特性伝達関数の周波数応答
を表すデータを演算すると共に、そのデータをボード線
図などの形式で外部出力することによって、特性伝達関
数の動特性を、ケース毎にオペレータが入手し理解可能
なようにしたものである。
【0260】次に、特性伝達関数に関して説明する。特
性伝達関数とは、シミュレーション演算において系統状
態計算の反復回数を反復回数を極めて大きく設定し、シ
ミュレーション演算を実行して得られた高い収束性を有
するシミュレーション結果と、反復回数を所定の固定値
n回で打ち切った場合に得られるシミュレーション結果
とを比較し、即ち、後者を前者に対してある動特性をも
って追従するモデルとして表したときの、その追従を表
す伝達関数のことである。特性伝達関数の持つ意味を以
下に説明する。
【0261】図23(a),23(b)は、あるシミュ
レーションの結果を表す説明図であり、図23(a)
は、反復回数をきわめて多くした場合のシミュレーショ
ン結果である電圧データの時間的変化を示す説明図であ
る。図23(a)に示すシミュレーションでは、102
01に示した時刻で系統事故を発生させ、10202に
示した時刻で事故を除去したケースのシミュレーション
である。この例は、事故中に電圧低下がみられ、事故除
去によって電圧が改復し、その後系統が電力動揺してい
る状況を模擬したシミュレーション結果である。図23
(a)の場合は極めて多くの反復回数を費やしてシミュ
レーションしたもので、電圧の急変状況などを非常に忠
実に再現している。しかしながら、実際にシミュレーシ
ョンを行う場合は、シミュレーションのリアルタイム
性、すなわち現実現象の進行速度と同じ速さでシミュレ
ーションを実行する事が要求される場合など、演算時間
に制限があり、実施の形態4において示した方式などに
よって求めた反復回数に従って、反復を打ち切る反復演
算を毎周期行う場合が多い。即ち、反復回数を所定の固
定値n回として、毎周期の演算における反復を打ち切る
シミュレーションを行う場合が多い。
【0262】図23(b)は、図23(a)に示したシ
ミュレーションと同一ケースのシミュレーションを実行
し、反復回数をn回で打ち切った場合のシミュレーショ
ン結果を示した説明図である。この場合、反復回数をn
回で打ち切っているため、事故除去時などの系統が急変
した場合において、反復演算が充分に収束せず、そのま
ま次のタイムステップに移行する。タイムステップが進
む毎に、各タイムステップでの反復演算によって、前ス
テップで収束の不足している分が挽回されてゆき、時間
の経過とともに徐々に収束が進んでゆく。このため、図
23(b)に示したシミュレーションは、図23(a)
に示したシミュレーションに比べてアルゴリズムに起因
した余分なダイナミックス(動特性)が付加されてく
る。またシミュレーションの反復解法のアルゴリズムで
は、反復演算の反復初期値に過去のシミュレーション時
間の演算結果から変化の傾向を演算することによって予
測値を外そうする手法が一般的に行われている(本願の
関連出願である特願平7−220933号を参照)。
【0263】この予測値計算のため、収束の不足してい
る状態が挽回していく過程において、現実の状態変化に
比べて過度の変化速度を保持しながら状態が変化し、い
わば収束不足分の修正を過度に外そうしようとしてオー
バーシュートを生じる。オーバーシュート後の時間帯の
各タイムステップでは、オーバーシュートを反対側に修
正する方向に外そうしてゆき、このオーバーシュートを
反対側に修正する過程でさらに反対側にオーバーシュー
トが生じる。そのため、結果的に時間の経過とともに、
減衰振動的な状態変化となる。これは、振動性の2次遅
れの動特性をもつシステムにステップ信号を入力した場
合に見られる減衰振動と同様の現象である。
【0264】一方、事故除去後の電力動揺については、
変化の傾向が同様傾向を示す緩慢な状態変化であるた
め、演算周期毎の収束演算と反復初期値への予測値外そ
う演算がよく調和し、電力動揺を忠実に再現する。状態
変化が穏やかなため、各タイムステップ毎に予測値計算
された反復初期値と収束真値の差が僅少なためである。
このように、比較的緩慢な状態変化を示す現象について
は、図23(b)に示したシミュレーションにおいても
再現精度は確保される。従って、図23(b)に示した
反復回数を固定的にn回で打ち切るシミュレーションで
は、図23(a)に示した反復回数を十分多くとったシ
ミュレーションと比較して、現象の変化の度合いが急激
な変化であるか否かによって現象の再現性における忠実
度が変化する。このことは、図23(b)に示したシミ
ュレーションによって系統現象を解析するとき、現象の
変化の度合いとしてどの程度の変化率の現象まで、換言
すればどの程度の時定数を持った現象まで忠実度を有す
るかを見極める必要があることを示している。
【0265】このような事柄に関して、現象を認識する
場合の考え方としては、現象を時間領域で考えるより
も、周波数領域で考えるとより明瞭になる。例えば、電
力動揺の波形について図23(a)と図23(b)とを
比較する時、電力動揺の周波数の波形における振幅の差
または位相の差に着眼して比較するのが合理的な比較で
ある。このように図23(a)と図23(b)とのシミ
ュレーション結果を比較する時、各シミュレーション時
間の個々の時点で個別に値の差の大小を比較しても意味
が薄く、動特性の観点から比較することに意味がある。
これは図23(b)のシミュレーション結果について、
図23(a)のシミュレーション結果に対する動的な追
従性を評価することである。
【0266】すなわち図23(a)のシミュレーション
結果を基準として、反復を常にn回で打ち切った場合の
シミュレーション結果である図23(b)の演算精度を
評価する場合、収束不足分の挽回動作の時間的累積およ
び反復初期値への予測値外そう演算における過大予測ま
たは過少予測など、各種の要因が絡み合った結果生じる
ダイナミックスについて評価する必要がある。このダイ
ナミックスは、シミュレーションのアルゴリズムおよび
反復演算における反復回数を常に固定値n回としている
ことの2つの理由により発生するダイナミックスである
と共に、現実の現象にはないダイナミックスである。こ
のダイナミックスを表す伝達関数が「特性伝達関数」で
ある。
【0267】シミュレーションの結果を解析する場合、
あるいはシミュレーションの演算精度を評価する場合な
どにおいて、なぜ特性伝達関数の動特性を理解すること
が必要であるかをここで説明する。周知のように、電力
系統シミュレータの目的の一つに、電力系統の相差角の
安定性や電圧安定性を解析することがある。電力系統の
過渡現象はその過渡特性としての時定数が非常に短い数
10msである現象から、非常に長い分オーダーの現象
に至るまでの多くの現象が、相互に重なりあって混在す
る現象である。
【0268】即ち、周波数領域で考えると、そのスペク
トル分布が非常に広範囲にわたる現象である。これらの
うち、電力系統に外乱等が生じたときの安定性について
は比較的低い周波数成分によって挙動が決定し、高い周
波数成分についてはほとんど安定性に無関係であること
が知られている。このことは、電力系統シミュレータに
よって系統の安定性を解析する場合、一定周波数より低
い周波数成分の再現精度が確保できていれば、高い周波
数成分の再現精度が確保されなくとも、安定度を解析で
きることを示している。
【0269】一方、電力系統の過渡現象の過程で生じる
過電圧や過電流などの値そのものを解析する場合は、当
然ながら、高い周波数成分の現象を忠実に再現する必要
がある。このように電力系統シミュレータの用途あるい
は解析対象とするケースに応じて、周波数領域における
精度が要求される周波数成分の上限は異なる。一方、特
性伝達関数の具体的な動特性は、後述するが、周波数領
域で考えて低い周波数成分の精度は、比較的少ない反復
回数でも確保することが可能であるが、高い周波数成分
の精度を確保しようとすると極めて多くの反復回数を要
し、演算時間が著しく増大する。一方、特性伝達関数の
特性は、該当シミュレーションケースの収束因子と反復
回数とシミュレーション刻み時間幅に左右される。そし
て、収束因子は系統データとD行列を表すデータと加速
パラメータに依存する。
【0270】そのため、D行列を表すデータの設定、加
速パラメータの設定、反復回数の設定およびシミュレー
ション刻み時間幅の設定に際しては、シミュレーション
の再現精度を周波数領域で考えた上で個々の設定に際し
て、設定の結果、各周波数帯域ごとにどのような再現精
度が得られるかということが設定の結果であるから、そ
れを知る必要がある。すなわちこれらの設定毎に、特性
伝達関数の動特性を把握する必要がある。また、シミュ
レーション結果を解析する上において、あるいはシミュ
レーションの演算精度を評価する上において、例えば、
図23(b)に示したような減衰振動現象が現実の現象
でも生起する振動現象であるのか、それとも演算アルゴ
リズムあるいは反復回数の不足に起因する余分な過渡現
象であるのかを見極める必要がある。
【0271】また、シミュレーション結果を解析する上
において、そのシミュレーションによって周波数領域の
意味で周波数帯域ごとの再現精度がどれくらいであるか
を知ることなく、シミュレーション結果から現実の現象
を推定することはできない。これらを表す情報は、特性
伝達関数の動特性を表す情報によってのみ表されるから
特性伝達関数の動特性を理解することが必要である。従
来の電力系統シミュレータでは、特性伝達関数の動特性
を表す情報がなんら出力されないので、シミュレーショ
ン結果の解析に際して、どの帯域の周波数成分(即ち、
フーリエ成分)まで信憑性があるのか判断する事ができ
なかった。あるいはまた、シミュレーションの結果を示
す図23(b)のような振動現象が生じても、それが現
実の電力系統で生起しうる現象であるのか、あるいは単
に、演算アルゴリズムおよび反復回数の不足に起因した
余分な振動現象であるのか、判断することができなかっ
た。
【0272】実施の形態10の電力系統シミュレータ
は、このような課題を解決する機能を有しており、特性
伝達関数の周波数応答を表すデータをボード線図などの
形式で外部へ出力し、これにより、オペレータがシミュ
レーション結果を解析して、現実の現象を推定すること
を支援する。またシミュレーションを開始する前のシミ
ュレーション準備段階で、このデータを出力するので、
反復回数などのデータ設定に関するチューニングを支援
することができるものである。
【0273】次に動作について説明する。まず、特性伝
達関数の式を導出する。V(t)(k)は、シミュレー
ション時刻tにおける、電圧ベクトルの列ベクトルを反
復演算式9で演算する過程における反復ステップkの時
の、列ベクトル(k=0,1,2,...)である。V
(t)(0)が反復初期値である。V(t)(∞)は、
シミュレーション時刻tにおける電圧ベクトルの列ベク
トルを、反復演算式9で演算する際の収束真値である。
反復回数をnとするとき、反復はn回で打ち切られるの
で、V(t)(n)まで演算されるが、V(t)(∞)
は演算されない。そのため、V(t)(∞)は仮想的な
データである。V(t)(∞)の時間tを変化させた軌
跡に対してnを固定とし、V(t)(n)の時間tを変
化させたときの軌跡がある動特性をもって追従する。そ
の動特性を表すのが特性伝達関数である。
【0274】
【数34】
【0275】この式は、反復公式9における反復行列M
の固有値を、対角成分に並べた対角行列である。Pは、
Mの固有ベクトルを並べてえられる変換行列を表すとす
れば、固有ベクトルの並びは上記のΛに対応するものと
する。次式53が、Mの対角行列Λの相似変換式とな
る。 M=PΛP-1 (式53) また、U(t)(k)は、次式54で定義する列ベクト
ルである。 U(t)(k)=P-1V(t)(k) (式54) 次に、U(t)(∞)は、U(t)(∞)=P-1
(t)(∞)と定義する。ここで、Ui (t)(k)
(i=1,2,3,...,N)は、U(t)(k)の
第i成分であり、Ui (t)(∞) (i=1,2,
3,...,N)は、U(t)(∞)の第i成分であ
り、I(t)は、シミュレーション時刻tにおける注入
電流列ベクトルである。
【0276】以上の記号のもとで、各シミュレーション
時刻tにおける反復演算式である式9は次式55で表さ
れる。 V(t)(k+1)=MV(t)(k)+D-1I(t) (式55) この式でk→∞とした極限を考えると、次式56のよう
になる。 V(t)(∞)=MV(t)(∞)+D-1I(t) (式56) 式55および式56により、次式57が得られる。 V(t)(k+1)−V(t)(∞) =M(V(t)(k)−V(t)(∞)) (式57) 式57をk=0からn−1まで繰り返し代入すると、次
式58が得られる。 V(t)(n)−V(t)(∞) =Mn (V(t)(0)−V(t)(∞)) (式58) したがって、次式59が得られる。 (E−Mn )V(t)(∞) =V(t)(n)−Mn V(t)(0) (式59) ここに、Eは単位行列である。
【0277】式59は、十分多くの反復回数とした仮想
的なシミュレーション結果V(t)(∞)と、反復回数
n回で反復を打ち切った場合の実際のシミュレーション
結果V(t)(n)と、各時刻での反復初期値V(t)
(0)の関係を表す式である。ここで、反復初期値V
(t)(0)は過去のシミュレーション時刻のシミュレ
ーション演算結果V(t−Δt)(n),V(t−2Δ
t)(n)などから、予測計算される。従って、式59
は十分多くの反復回数とした仮想的なシミュレーション
結果V(t)(∞)を入力とする、実際のシミュレーシ
ョン結果の時系列データV(t−2Δt)(n),V
(t−Δt)(n),V(t)(n)に関する差分方程
式である。
【0278】従って、Z変換を施すことにより、離散時
間系の伝達関数として、V(t)(n)のV(t)
(∞)に対する追従性を表す伝達関数を、この差分方程
式から導出する事ができる。以下では、反復行列Mが対
角行列となる座標変換を施した上で、最も追従特性を左
右する座標成分での伝達関数を導出する。式59の左か
らP-1を乗じるとともに、 V(t)(∞)=PU(t)(∞),V(t)(n)=
PU(t)(n),V(t)(0)=PU(t)(n) を代入すると次式60が、 P-1(E−Mn )PU(t)(∞) =P-1PU(t)(n)−P-1n PU(t)(0) (式60) P-1n P=(P-1MP)n =Λn を代入すると次式6
1が得られる。 (E−Λn )U(t)(∞) =U(t)(n)−Λn (t)(0) (式61) 式61の第i成分は、次式62となる。 (1−λn )Ui (t)(∞) =Ui (t)(n)−λn i (t)(0) (式62) 次に式62のUi (t)(0)のZ変換をUi (t)
(n)のZ変換で表すための式を導出する。
【0279】式61のU(t)(0)=P-1V(t)
(0)において、U(t)(0)は、予測値計算により
外そうされるため、過去のシミュレーション時刻t−Δ
t、t−2Δtなどの演算結果V(t−Δt)(n),
V(t−2Δt)などより、変化の傾向を予測して演算
される。予測値計算方式の例として、0次予測、1次予
測、2次予測等がある。各々の場合について、予測値計
算式は以下にそれぞれ示す式63,64,65となる。
【0280】0次予測: V(t)(0)=V(t−Δt)(n) (式63) 1次予測: V(t)(0) =2V(t−Δt)(n)−V(t−2Δt)(n) (式64) 2次予測: V(t)(0)=3V(t−Δt)(n)−3V(t−2Δt)(n)+V( t−3Δt)(n) (式65) 列ベクトルV(t)(k)の第i行目をVi (t)
(k)と書くと、例えば式64の両辺の第i成分は次式
66で表せる。 Vi (t)(0) =2Vi (t−Δt)(n)−Vi (t−2Δt)(n) (式66) 両辺にZ変換を施すと次式67が得られる。
【0281】 Z(Vi (t)(o)) =2Z(Vi (t−△t)(n))−Z(Vi (t−2△t)(n)) =2Z-1Z(Vi (t)(n))−Z-2Z(Vi (t)(n)) =(2Z-1−Z-2)Z(Vi (t)(n)) (式67)
【0282】式66から式67を導出する過程から明ら
かなように、予測値計算結果のZ変換はシミュレーショ
ン刻み時間幅Δtで、シミュレーション時間を離散化し
た離散時間領域における伝達関数Pr(z)を用いて、
次式68と表される。 Z(Vi (t)(0))=Pr(z)Z(Vi (t)(n)) (式68) Pr(z)の具体的な式は、それぞれ下記の式69,7
0,71となる。0次予測のとき: Pr(z)=Z-1 (式69) 1次予測のとき: Pr(z)=2Z-1−Z-2 (式70) 2次予測のとき: Pr(z)=3Z-1−3Z-2+Z-3 (式71)
【0283】これら伝達関数Pr(z)は予測値計算の
演算則を表すから、以後Pr(z)を予測値伝達関数と
称する。 U(t)(0)=P-1V(t)(0) の両辺に行毎にZ変換を施すと、Z変換の線型性により
次式72となる。
【0284】 Z(U(t)(o))=Z(P-1V(t)(o)) =P-1Z(V(t)(o)) =P-1r (z)Z(V(t)(n)) =Pr (z)P-1Z(V(t)(n)) =Pr (z)Z(P-1V(t)(n)) =Pr (z)Z(U(t)(n)) (式72)
【0285】ここで、Z(U(t)(0))などの記号
は、列ベクトルU(t)(0)の各行にZ変換を施した
列ベクトルを示す。また、Pr(z)Z(V(t)
(n))などはZ変換後の列ベクトルZ(V(t)
(n))の各行に伝達関数Pr(z)を乗じた列ベクト
ルを表す。例えば、1次予測の時であれば、式64の両
辺に左P-1を掛けることによって、左辺はP-1V(t)
(0)=U(t)(0)となり、右辺は、P-1(2V
(t−Δt)(n)−V(t−2Δt)(n))=2U
(t−Δt)(n)−U(t−2Δt)(n)よって、 Ui (t)(0)=2Ui (t−Δt)(n)−U
i (t−2Δt)(n) この両辺にZ変換を施すと、次式73となる。 Z(Ui (t)(0))=Pr(z)Z(Ui (t)(n)) (式73) となる。ただし、この場合Pr(z)Z=2Z-1−Z-2
とする。式72に示した変形式は式73の導出をより一
般的に示したものである。
【0286】次に、式62の両辺にZ変換を施すと次式
74となり、 (1−λi n)Z(Ui (t)(∞))=Z(Ui (t)(n))−λi nZ( Ui (t)(0)) (式74) これに、式73を代入すると次式75が得られる。 (1−λi n)Z(Ui (t)(∞))=(1−λi nPr(z))Z(Ui ( t)(n)) (式75) 従って、次式76が得られる。
【0287】
【数35】
【0288】この式76に現れる離散時間系伝達関数を
Hi(z)とおく。すなわち次式77が得られる。
【0289】
【数36】
【0290】式77を用いると式76は Z(Ui (t)(n))=Hi (z)Z(Ui (t)
(∞)) となる。また、列ベクトルで表現すると、次式78とな
る。
【0291】
【数37】
【0292】U(t)(n)=P-1V(t)(n),
(t)(∞)=P-1V(t)(∞)によって座標変換す
ると、次式79となる。
【0293】
【数38】
【0294】式79において、V(t)(∞)は、反復
回数を無限に大きな値とした場合のシミュレーション演
算結果を表すデータであり、実際には、演算されること
のない仮想的なデータである。V(t)(n)は実際の
シミュレーションにおける反復回数n回で打ち切った場
合の演算結果を表すデータである。式79はV(t)
(n)がV(t)(∞)に対して、時間的な動特性の追
従を示す式である。式79中、各々のHi (z)につい
ては、対応する固有値λi が小さいほど、追従性がよい
という意味で特性がよい。V(t)(n)のV(t)
(∞)に対する追従性の評価は、式79に現れた伝達関
数H1 (z),H2 (z),...,Hn (z)のうち
最も追従性の悪い、すなわち動特性の最も悪い伝達関数
i (z)の特性を評価することによってなされる。H
1 (z),H2 (z),...,Hn (z)のうち最も
動特性の悪いのは、λi が収束因子である時のH
i (z)である。従って、λi が収束因子である時のH
i (z)の動特性が、反復回数をn回で打ち切った演算
結果V(t)(n)の反復回数を極めて多くとした演算
結果V(t)(∞)に対する追従性を示すことになる。
従って、λi が収束因子である時のHi (z)が、特性
伝達関数となる。
【0295】この点を、周波数応答の観点からより詳細
に説明する。例えば、ある周波数ωに対して、V(t)
(∞)が周波数ωの波形であるときのV(t)(n)の
応答を評価する場合を考える。このとき、任意周波数に
対して各Hi (z)の周波数応答の入力からの偏差||
A −Hi (eA )||は、λi が収束因子であるiの
とき最も偏差が大きい(ここでA=jΔtω)。したが
ってλi が収束因子であるiについてHi (z)の入力
からの偏差を評価すると、その偏差がすべてのiに対す
るHi (z)の偏差の上限を与える。従って、V(t)
(∞)に対するV(t)(n)の追従性を評価するに
は、λi が収束因子であるiについてのみ伝達関数Hi
(z)の応答を評価すれば十分である。
【0296】次に、特定の予測値伝達関数Pr(z)の
具体例に即して、特性伝達関数H(z)の動特性を説明
する。シミュレーション演算で採用している予測値演算
式を1次予測としPr(z)=2Z-1−Z-2であると
き、特性伝達関数H(z)は次式80となる。
【0297】
【数39】
【0298】図24(a),24(b)は伝達関数の周
波数応答を示す説明図である。図24(a),24
(b)に示すように、周波数が低い帯域ほど特性は良好
であり、例えば10401以下の周波数の帯域に対して
ほとんど特性はフラットである。このように低周波数帯
域の現象については、反復回数が少ない場合などのよう
にλn の値が比較的大きい場合でも現象を忠実に再現で
きることがわかる。周波数が上昇するにつれてゲインは
増加し、10402で示される周波数でピークとなる。
すなわち、10402の周波数が図23(a),23
(b)に示したような振動現象に対応する共振周波数で
ある。
【0299】周波数が高くなるほど、特性伝達関数の特
性は劣化する。また振幅応答、位相応答ともにその応答
を図24(a),24(b)に示すようにボード線図に
より定量的に把握することができる。従って、図24
(a),24(b)に示すようなボード線図が出力され
ると、任意の周波数に対して、周波数領域での反復回数
n回でうち切ったシミュレーションの演算結果V(t)
(n)の再現精度を振幅偏差および位相偏差の両面から
定量的に把握することができる。例えば、図24
(a),24(b)に示した伝達関数の場合、電力系統
における電力の動揺程度の周波数の波形に対して、この
伝達関数は振幅をやや増加されていることがわかる。よ
って、反復回数を有限のn回で打ち切ったシミュレーシ
ョンについては、電力動揺の安定性についてシミュレー
ションした場合、やや不安定である傾向が判明する。図
24(a),24(b)に示すボード線図を出力するこ
とによって、上記した意味でのシミュレーションの演算
傾向を、オペレータは把握することができる。
【0300】以上のように、この実施の形態10によれ
ば、シミュレーション演算に先立って、シミュレーショ
ンケースに対応したシミュレーションの入力データシミ
ュレータの演算特性として、式80に示す伝達関数の周
波数応答を表すデータを演算し、ボード線図を出力す
る。その結果、該当ケースのシミュレーションにおいて
オペレータは、現象の再現精度として周波数帯域ごとの
再現精度を定量的に、また周波数ごとの正弦波出力につ
いて振幅の増減、位相の進み遅れなどの傾向を把握する
ことができる。また、実際のシミュレーション演算を実
施することなく特性伝達関数の周波数応答を表すデータ
を出力するので、シミュレーションの目的である解析の
用途に応じて必要な反復回数を、オペレータは迅速に決
定することができる。
【0301】実施の形態11.図25は、この発明の実
施の形態11による電力系統シミュレータを示すブロッ
ク図であり、図において、11101はシミュレーショ
ン準備処理部、11102はシミュレーション入力装
置、11103は入力処理部、11104は入力データ
のうち許容偏差εと周波数ωを格納する入力データ記憶
部、11105は最小反復回数演算部(最小反復回数演
算手段)である。なお、図22に示した実施の形態10
のものと同様のものについては、同一符号を付し重複説
明を省略する。
【0302】実施の形態11の電力系統シミュレータ
は、実施の形態10の電力系統シミュレータで示した特
性伝達関数に関して、オペレータが指定した特性伝達関
数の特性を満足する最小の反復回数を自動的に演算し、
シミュレーション演算を自動的に実行するものである。
【0303】最小反復回数演算部11105は、収束因
子計算部1103によって演算された収束因子λ、Δt
記憶部5203内に記憶されたシミュレーション刻み時
間幅Δt、入力データ記憶部11104に記憶された指
定周波数ω、および許容偏差εにしたがって後述する式
81に基づいて後述する式82を満たす最少のnを演算
し、演算したnを反復回数記憶部110に出力する最小
反復回数演部(最小反復回数演手段)である。なお、反
復回数を演算するための入力データλ,Δt,ε,ωの
うち、収束因子λは解析対象のシミュレーションケース
での電力系統データとD行列をあらわすデータから決ま
る。またシミュレーション刻み時間幅Δtは、実際のシ
ミュレーション演算において刻まれる時間幅である。こ
れらに対し、しきい値εと指定周波数ωは要求精度を示
すデータであり、直接的に実際のシミュレーションの演
算結果に影響を与えるデータではないが、この実施の形
態11では、シミュレーション演算における反復回数n
がεとωに依存するという意味において、間接的にシミ
ュレーション演算に影響するデータとみなす。
【0304】まず、反復回数の演算原理を説明する。実
施の形態10に示した特性伝達関数の例として式80を
再掲すると
【0305】
【数40】
【0306】この伝達関数の角周波数ωに対する振幅応
答は、式80のZに複素正弦波Z=eA を代入したとき
のH(eA )の絶対値である(ここでA=jΔtω)。
以後、Ω=Δtωとおく。振幅応答は、このΩに依存す
るのでG(Ω)と記載すると、G(Ω)2 は次式81と
なる。
【0307】
【数41】
【0308】この式をグラフで表したのが、図24
(a),24(b)のゲインのグラフであるが、これら
の図によれば、通常の周波数の範囲で、G(Ω)>1で
ある。従って、角周波数ω、シミュレーション刻み時間
幅Δt、収束因子λ、許容偏差εを指定すると、式81
に従って次式82で示される関係を有する最少のnを演
算することができる。 G(Ω)<1+ε (式82) ただし、Ω=ωΔtである。このようにして、反復回数
nを演算する。
【0309】次に、上記した原理に基づいて、反復回数
nを自動演算することの有益性に関して説明する。シミ
ュレーション演算での系統状態量計算における反復演算
について、その反復回数をシミュレーションを通じて固
定値n回とすると、図24(a),24(b)に示した
特性伝達関数の周波数応答によって、そのシミュレーシ
ョン結果は、過渡現象の変化状況を周波数領域で考え
て、低い周波数のスペクトル成分に対応する現象は、比
較的忠実に再現するが、高い周波数のスペクトル成分に
対応する現象は、比較的再現精度が劣る。ここで、反復
回数nを増加させるとλn が減少し、比較的高い周波数
の現象に対しても、再現精度が向上してくる。換言すれ
ば、反復回数nを増加させると、忠実に再現できる現象
の周波数帯域の上限が上昇する。その反面、演算時間は
増加する。
【0310】従って、シミュレータを使用する上におい
て、シミュレーションによって解析対象とする現象のう
ち、精度よく再現させる必要のある最も高い周波数を指
定した上で、その周波数に対して精度を確保しつつ、最
少の演算時間でシミュレーションすることが望まれると
ころである。演算時間は、反復回数に左右されるから指
定された周波数の現象に対して精度を確保できる、最少
の反復回数nを求める必要がある。
【0311】従来では、上記した反復回数は、試行錯誤
で決定する以外に方法がなかった。一方、周波数帯域ご
との再現精度は、特性伝達関数の周波数応答によって評
価できるから、特性伝達関数の周波数応答を示す式にお
いて指定した周波数の値を代入し、その応答値が許容偏
差ε以内とするためのλn の最大値を演算することによ
って、反復回数nの最小値を求めることができる。この
実施の形態11は、この原理に従い、周波数帯域ごとの
再現精度を特性伝達関数の振幅応答で評価した上で、指
定された周波数ωに対して、再現精度が確保できる最少
の反復回数を演算するものである。
【0312】次に動作について説明する。まず、オペレ
ータは、シミュレーションデータ入力装置11102を
介して、シミュレーションの解析対象とする系統デー
タ、シミュレーション刻み時間幅Δt、しきい値ε、指
定周波数ωをシミュレーション準備処理部11101に
設定する。しかる後、シミュレーション準備処理部11
101における内部の演算処理を起動する。その結果、
収束因子計算部1103による該当ケースの収束因子の
演算が行われ、その後、最小反復回数演算部11105
による反復回数の演算が行われる。これらの演算処理が
完了すると、シミュレーション演算に必要なデータがす
べて揃い、シミュレーション開始可能な状態となる。
【0313】またこの実施の形態11では、要求精度の
評価項目として、特性伝達関数の振幅応答に着眼した
が、特性伝達関数の位相応答を要求精度の評価項目と
し、指定周波数ωとその周波数ωに対する位相遅れの許
容値εを指定することによって、要求精度を表現する方
式でもよい。この点に関して、特性伝達関数の式80の
位相応答はψ(Ω)は、次式83で与えられる。
【0314】
【数42】
【0315】要求精度の評価項目を特性伝達関数の位相
応答で表現する場合は、周波数ωと位相遅れの許容値ε
を指定して、式83に従って、次式84で示される関係 |ψ(Ω)|<ε (式84) を満たす最少のnを演算する。また、特性伝達関数式8
0は図24(a),24(b)に見るように、共振周波
数を有する。従って、振幅応答における共振時の振幅値
や共振周波数を要求精度の評価項目としても良い。これ
らに関連して、ここで特性伝達関数の共振周波数ωpと
共振時のピークゲインMp の式を導出する。共振周波数
を求めるため、前掲ゲインの2乗の式81を最大とする
Ωを求める。そのためには、式81の分母を最少にする
Ωを求める。式の分母をΩで微分して得られた式85
を、以下に示す。
【0316】
【数43】
【0317】式85=0とおくことにより以下の式が得
られる。 cosΩ=(1+λn )/2 従って、共振周波数ωp は次式86で表される。
【0318】
【数44】
【0319】共振時の振幅を表すピークゲインMp の2
乗の式は、式81に式86を代入して次式87で表され
る。
【0320】
【数45】
【0321】特性伝達関数の共振時の共振周波数を要求
精度の評価項目とするとき、共振周波数を高く設定する
程、要求精度は厳しくなるため、許容する共振周波数の
下限値を指定する方式を用いる。この場合、許容する共
振周波数の下限値ωLow を指定し、式86に基づけば、
次式88で表される。 ωp >ωLow (式88) となる最少の反復回数nを演算する。共振時の振幅を要
求精度の評価項目とする時は、許容する共振時の振幅値
Low を指定し、式87によって次式89で表される。 Mp <MLow (式89) となる最少の反復回数nを演算する。
【0322】このようにシミュレーションに対する要求
精度の評価項目、すなわち表現方法として特性伝達関数
の特定周波数に対する位相偏差あるいは特性伝達関数の
共振周波数の許容下限値、あるいは特性伝達関数の共振
時の共振振幅の許容値を指定し、各場合における要求精
度を満たす最少の反復回数nを自動的に演算して、シミ
ュレーション演算での反復回数を設定するので、オペレ
ータは、各項目の要求精度を満足させるための最少反復
回数の設定をする手間が省ける。
【0323】以上のように、この実施の形態11によれ
ば、シミュレータによって解析対象としている現象につ
いて要求精度を表現するデータとして、状態変化を周波
数領域で考えたときの精度を確保する必要のある周波数
帯域の上限値と必要精度を表すデータに従って、これら
要求精度を満たすためのシミュレーション演算における
反復演算の最少反復回数を自動計算して反復回数記憶部
へ自動的に設定するので、オペレータにとっての要求精
度を満足するための最少反復回数を調整する労力を省力
化できる。
【0324】実施の形態12.図26は、この発明の実
施の形態11による電力系統シミュレータを示すブロッ
ク図であり、図において、12101はシミュレーショ
ン準備処理部、12102はシミュレーションデータ入
力装置、12103は入力処理部、12104はシミュ
レーション刻み時間幅Δtを記憶するΔt記憶部、12
105はパターンデータ生成部、12106はパターン
データ記憶部、12107はボード線図演算部(ボード
線図演算手段)、12108は出力処理部、12109
はボード線図出力部、12110はパターン選択装置、
12111はデータ選択部である。
【0325】この実施の形態12の電力系統シミュレー
タは、シミュレーション刻み時間幅Δtと反復回数nと
を、リアルタイム性を保った条件の下で連動させ変化さ
せた複数のケースについて、各ケース毎の特性伝達関数
の周波数応答を表すボード線図を、ケース毎に重ねて出
力することで、ケース毎の特性伝達関数の動特性を、総
合的に比較検討するための支援情報を提供するものであ
る。
【0326】シミュレーション準備処理部12101
は、複数のパターンとしてのシミュレーション刻み時間
幅Δtと、反復演算における反復回数nの組み合わせ毎
に該当する特性伝達関数の周波数応答を表す複数のボー
ド線図とを重ねて、外部に表示し、オペレータによって
選出されたパターンに対して、該当するシミュレーショ
ン刻み時間幅Δtを表すデータおよび反復回数を表すデ
ータを、シミュレーション演算に供するデータとして、
内部に設定する2つの機能を有している。シミュレーシ
ョンデータ入力装置12102、入力処理部12103
を介して、オペレータが設定した解析対象のミュレーシ
ョンケースにおける系統データおよびD行列を表すデー
タを取り込み、系統定数記憶部109内に保存する。
【0327】パターンデータ生成部12105は、演算
速度特性演算部3103により演算された該当系統定数
に対応した演算速度特性を取り込み予め設定されている
シミュレーション刻み時間幅のパターンΔt1 ,Δ
2 ,...,Δtq に従い、おのおののΔtj (j=
1,...,q)に対応したリアルタイムシミュレーシ
ョン可能な最大の反復演算における反復回数nj (j=
1,...,q)をそれぞれ演算し、Δtとnの組であ
るパターンデータを生成する。その結果、例えば、図1
0に示したテーブルのようなデータが生成される。この
データを「パターンデータ」と呼ぶ。パターンデータ記
憶部12106は、パターンデータ生成部12105に
よって生成された図10のようなテーブルデータを格納
する記憶部である。ボード線図演算部(ボード線図演算
手段)12107は、収束因子計算部1103によって
演算された該当系統定数から定まる収束因子を取り込
み、かつパターンデータ記憶部12106内に格納され
ているパターンデータを取り込みパターン毎の特性伝達
関数について各々の周波数応答を表すデータを演算す
る。
【0328】出力処理部12108およびボード線図出
力部12109を介して、ボード線図演算部12107
で作成された周波数応答を表すデータをもとに、パター
ンごとのボード線図を外部に印字または表示などの手段
によって出力する。その際、パターン毎のボード線図を
重ねて出力する。図27は、パターン毎のボード線図を
重ねて出力した場合の説明図である。このパターン毎の
ボード線図を重ねて出力した際の印刷出力または表示出
力結果は、パターンの個数が例えば2パターンであれ
ば、図27のようになる。
【0329】パターン選択装置12110は、シミュレ
ーションの刻み時間幅Δtと反復演算の反復回数nの組
み合わせのパターンのうち、どのパターンを選択するか
をオペレータが指示する。また、110は反復演算の反
復回数を記憶する反復回数記憶部である。オペレータが
パターンを選択すると、データ選択部によってパターン
データ記憶部12106に格納されている該当パターン
のデータが取り出され、該当パターンにおけるシミュレ
ーション刻み時間幅Δtは、Δt記憶部12104へ、
反復回数は、反復回数記憶部110へ各々格納される。
【0330】パターンデータが、図28に示されたテー
ブル内の1つである場合、オペレータが、例えば、パタ
ーンNo.3を選択したとする。このときパターンN
o.3ではΔt=20ms,n=190回であるから、
以上の動作により、Δt記憶部12104には20m
s、反復回数記憶部110には190回に相当するデー
タが格納される。
【0331】ここで以下に、実施の形態12で用いるパ
ターンの意味に関して説明する。実施の形態5における
パターンとこの実施の形態12で用いるパターンは、意
味が異なる。実施の形態12におけるパターンとは、複
数の(以下ではq個)個となるシミュレーション刻み時
間幅Δt,Δt2 ,...,Δtq と、該当するシミュ
レーションケースの演算速度特性から定まる各Δti
対応した、リアルタイムシミュレーションが可能な最大
反復回数ni とを組にした類型のことである。該当する
シミュレーションケースの式22における演算速度特性
を、a,bとすると、シミュレーション刻み時間幅Δt
j (j=1,..,q)に対応したリアルタイムシミュ
レーションが可能な最大反復回数nj は、式22より
(Δtj −b)/aを超えない最大の整数である。この
ような規則によりΔt1 に対してはn1 を対応させ、Δ
2 に対してはn2 を対応させる。以下同様にしてΔt
j に対してq個のパターンができる。図28は、各パタ
ーンをまとめた説明図である。
【0332】図28で示した各パターンでは、演算速度
特性を次の値とした。 a=0.1ms/回数 b=1ms 演算速度特性がこの値の場合、Δt1 =5msの場合
は、n1 =(5−1)/0.1=40回、Δt2 =10
msの場合は、n2 =(10−1)/0.1=90回、
Δt3 =20msの場合は、n3 =(20−1)/0.
1=190回、Δt4 =50msの場合は、n4 =(5
0−1)/0.1=490回である。図28では、例え
ばパターンNo.1は、Δt=5ms、n=40回の組
み合わせを意味する。同様にパターンNo.2は、Δt
=10ms、n=90回の組み合わせを意味する。この
ようにパターンを1つ指定することは、リアルタイムシ
ミュレーションを行う場合のシミュレーション刻み時間
幅Δtと、シミュレーション演算における反復演算の反
復回数の組み合わせを1つ指定することに相当する。
【0333】以上より、演算速度特性とシミュレーショ
ン刻み時間幅Δtを指定すると、リアルタイムシミュレ
ーションが可能な最大の反復回数が決まるが、ここのパ
ターンを決定づけるシミュレーション刻み時間幅の集ま
りΔt1 ,Δt2 ,..,Δtq については、シミュレ
ータにおいて固定的に定めたデータとするかオペレータ
によってΔt1 ,Δt2 ,...,Δtq のデータを設
定する方式のいずれかが考えられる。実用上は、Δ
1 ,Δt2 ,...,Δtq のデータはオペレータに
よって設定する方式が便利であると思われるが、ここで
は説明を簡略化するため、Δt1 ,Δt2 ,...,Δ
q は図10のように固定値があらかじめ決まっている
ものとする。
【0334】シミュレーション演算において、該当シミ
ュレーションケースにおける1周期の演算に要する演算
時間Tと系統状態計算処理における反復回数nとの間に
は、以下の式22に示される関係が成立する。T=an
+b式22において、aとbは演算速度特性と呼んだ。
演算速度特性が既知であるとき、シミュレーション刻み
時間幅をΔtとすると、リアルタイムでシミュレーショ
ンするためには、nは次式90を満たす最大整数としな
ければならない。 Δt>an+b (式90)
【0335】シミュレーション刻み時間幅Δtは、シミ
ュレータによっては自由度をもって可変値を設定できる
場合がある。この場合Δtのみを独立して変化させる
と、それに応じて特性伝達関数の動特性が変化するの
で、最適な刻み時間幅Δtを選定する必要性が生じる。
この選定を支援するには、実施の形態10と同様の方式
により設定されたΔt毎に、特性伝達関数のボード線図
を出力することによって、特性をオペレータに提供し、
オペレータの選定を支援することができる。このよう
に、Δtのみを独立に変化させたときの特性伝達関数の
特性は、オペレータに通知することが可能である。ただ
し、Δtのみ独立に変化させた比較は実用上あまり行わ
れない。
【0336】一方、シミュレーションにリアルタイム性
が要求される場合は、シミュレーション刻み時間幅Δt
と反復回数nは式90を満足する必要があるので、Δt
を変化させると式90を満たす最大のnも変化する。す
なわち、リアルタイム性が要求される場合は、Δtとn
を連動して変化させ、各々の場合の特性伝達関数の特性
を比較する必要がある。実用上は、このように連動して
変化させ比較することに意味がある。
【0337】ここで、例えばシミュレーションの刻み時
間幅をΔt1 とした時の、リアルタイムシミュレーショ
ンが可能な最大反復回数がn1 であり、シミュレーショ
ンの刻み時間幅をΔt2 としたときの、リアルタイムシ
ミュレーションが可能な最大反復回数がn2 であったと
する。さらに、Δt1 <Δt2 と仮定する。このとき、
1 <n2 である。シミュレーション刻み時間幅をΔt
1 、反復回数をn1 としたケースをケース1とし、シミ
ュレーション刻み時間幅をΔt2 、反復回数をn2 とし
たケースをケース2とする。このような場合、ケース1
とケース2のいずれを選択すべきかという問題が生じ
る。いずれのケースも、反復演算の反復回数をリアルタ
イム性のある最大の反復回数としているので、模擬対象
としている現象の進行速度と同一の進行速度で現象をシ
ミュレーションする。従って、演算時間に関する点にお
いては、両者は同等である。そのため、演算精度の点に
ついて両者を比較する必要がある。この場合、演算精度
として特性伝達関数の動特性について両ケースを比較す
る必要があるのはいうまでもない。
【0338】ケース1とケース2では、各々Δt1 <Δ
2 ,n1 <n2 となる関係があったが、このような場
合においてケース1とケース2の特性伝達関数の特性の
比較は概略以下のようになる。すなわち、ケース1とケ
ース2の特性伝達関数の周波数特性のうち振幅応答のグ
ラフを重ねて出力すると図27のようになる。図27に
おいて12201はケース1の特性伝達関数の振幅応
答、12202はケース2の特性伝達関数の振幅応答を
表すグラフである。
【0339】解析対象としている系統データに起因する
収束因子をλ(λ<1)とすると、n1 <n2 よりλn1
>λn2である。たとえば、共振時のピークゲインは式8
7によってλn が小さい程抑止され刻み時間幅に依存し
ない。したがって、ケース2の方が共振時のピークゲイ
ンは抑止されている。これに対し低周波数帯域の特性は
λnとΔtについて、どちらかといえばΔtが関与する
度合いが強く、Δt1<Δt2 であるため、一般的には
刻みの細かいケース1の方が特性の良い場合が多い。ま
た、共振周波数についてもΔtの関与する度合いが高
く、Δt1 <Δt2 であれば、ケース1の共振周波数が
高い場合が多い。即ち、一般論としては特性伝達関数の
特性として低周波数帯域の特性または共振周波数につい
ては、ケース1が有利である場合が多く、共振時の振幅
はケース2が有利である。このように特性伝達関数の特
性に関して着眼点によってケース1が有利な場合とケー
ス2が有利な場合にわかれるため、少なくとも単一的観
点から両者の優劣を直ちに判断することはできない。
【0340】もし、シミュレーション刻み時間幅Δtを
固定とし、反復回数nを変化させると特性伝達関数の動
特性はあらゆる観点において、nが多い程λn が減少し
特性はよい。また、もし反復回数nを固定とし刻み時間
幅Δtのみ増減させて比較すると、特性伝達関数の動特
性は、あらゆる観点においてΔtを細かくした方が、特
性は良好となる。よって、これらの場合では前述した問
題は発生せず、ケース毎の良否の比較は単一的観点にお
いて比較すれば良い。それに対し、Δtとnをシミュレ
ーションのリアルタイム性を保って連動させると特性伝
達関数の動特性については評価項目によって特性の良否
が変化し、一概に決定できなくなるという問題が生じ
る。前述したケース1とケース2のいずれを選択するべ
きかという問題は現実的には多々生じる問題であり、こ
のような場合にオペレータは両者のケースの特性伝達関
数の動特性をあらゆる観点から総合的に比較し、解析用
途から考えて適切なケースを選択する必要がある。
【0341】しかしながら、従来技術ではシミュレーシ
ョン刻み時間幅Δtと反復回数nを連動して変化させた
複数のシミュレーションケースについて、各ケース毎の
特性伝達関数の動特性を総合的に比較検討するための情
報を出力していなかった。実施の形態12の電力系統シ
ミュレータでは、シミュレーション刻み時間幅Δtと反
復回数nとを、リアルタイム性を保った条件下のもとで
連動させ変化させた複数のケースについて、それらケー
ス毎の特性伝達関数の周波数応答を示すボード線図を、
ケース毎に重ねて出力する。
【0342】次に動作について説明する。オペレータ
は、シミュレーションの解析対象とする系統データ並び
にD行列を表すデータをシミュレーションデータ入力装
置12102を介して、シミュレーション準備処理部1
2101内へ入力する。これらのデータは、系統定数記
憶部109内に格納される。その後、オペレータは、シ
ミュレーション準備処理部12101に対して、ボード
線図を出力するための処理を起動する。これに呼応し
て、シミュレーション準備処理部12101では、収束
因子計算部1103によって収束因子を演算する。ま
た、演算速度特性演算部3103によって、演算速度特
性を演算する。その後、パターンデータ生成部1210
5によって、図10に示されるように、パターンデータ
が演算され、パターンデータ記憶部12106内に格納
される。しかる後、ボード線図演算部12107が動作
し、パターン毎の特性伝達関数の周波数応答を表すデー
タを演算する。
【0343】次に、ボード線図演算部12107の内部
動作を以下に説明する。収束因子計算部1103によっ
て演算された収束因子をλとする。また、生成されたパ
ターンデータがq個(すなわちq個の組み合わせ)と
し、パターンj(j=1,...,q)におけるシミュ
レーション刻み時間幅をΔtj 、反復回数をnj とす
る。特性伝達関数の式80で、パラメータをλ,Δ
1 ,n1 とすることにより、パターン1に対する特性
伝達関数の周波数応答を表すデータを演算する。ここ
で、周波数応答を表すデータとは、ボード線図をグラフ
にプロットするための座標データの集まり、もしくは、
これと同等のデータの集まりのことである。なお、演算
に際しての計算式は、より具体的には式81および式8
3を基に演算してもよい。つぎに、パラメータをλ,Δ
2 ,n2 とすることにより、パターン2に対する特性
伝達関数の周波数応答を表すデータを演算する。以下同
様にして、パラメータをλ,Δtj ,nj とすることに
より、パターンjに対する特性伝達関数の周波数応答を
表すデータを演算する。この動作を、すべてのパターン
に対して繰り返し行うことによって、全パターンに対し
て、特性伝達関数の周波数応答を表すデータを演算す
る。
【0344】以上で、ボード線図作成部における演算処
理が完了する。その後、出力処理部12108およびボ
ード線図出力部12109を介してボード線図を出力す
る。この際、全パターンのグラフを重ねて出力する。ボ
ード線図が出力されると、オペレータは、どのパターン
を選択するべきかを検討する。この際、比較候補となる
シミュレーション刻み時間幅Δtと反復演算における反
復回数nの組み合わせの全パターンについての特性伝達
関数の周波数応答を表すボード線図を重ねて表示するの
で、シミュレータにおける各パターンごとの演算動特性
を、総合的観点において、一括して把握し、評価するこ
とができる。オペレータは、パターン選択装置1211
0を操作することにより、最適のパターンを指定する。
その結果、該当パターンが表すシミュレーション刻み時
間幅Δtのデータと反復演算における反復回数nを表す
データが、該当シミュレーションケースのシミュレーシ
ョン演算に使用される演算パラメータとして、反復回数
記憶部110内に記憶される。以上の動作が完了する
と、シミュレーション演算に必要なデータがすべて揃
い、シミュレーション開始可能な状態となる。
【0345】以上のように、この実施の形態12によれ
ば、シミュレーション演算における系統状態計算におけ
る反復演算の反復回数を、常に、リアルタイムシミュレ
ーションが可能な範囲で、1周期の演算時間がシミュレ
ーション刻み時間幅を超過しない最大値と設定する条件
下で、シミュレーションの刻み時間幅と反復回数を連動
させるという条件に基づいて、複数のシミュレーション
刻み時間幅のパターンΔt1 ,Δt2 ,...,Δtq
を想定したとき、各パターン毎のシミュレーションの演
算動特性を表す特性伝達関数の周波数応答を表すグラフ
を重ねて出力するものであり、その結果、各パターン毎
の特性伝達関数の全周波数帯域における応答特性を総合
的観点から一度にすべてのパターンについてオペレータ
は比較することができ、解析用途に応じた最適のシミュ
レーションの刻み時間幅を迅速にオペレータは決定でき
る。
【0346】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によ
れば、演算手段は、設定された演算パラメータに基づい
て実行されるシミュレーションの演算精度を示すデータ
を演算し、表示手段が、このデータをオペレータへ表示
するように構成したので、オペレータは、演算パラメー
タと演算精度との関係を入手し検討することができ、迅
速かつ的確に最良の演算パラメータを決定することがで
きる効果がある。また、設定された演算パラメータに対
して、シミュレーションの精度や、信憑性のあるシミュ
レーション結果の限界が判明するという効果がある。
【0347】請求項2記載の発明によれば、演算手段
は、設定された演算パラメータに基づいて実行されるシ
ミュレーションの演算速度を示すデータを演算し、表示
手段は、このデータをオペレータへ提供するように構成
したので、オペレータは、演算パラメータと演算速度と
の関係を入手し検討することができ、迅速かつ的確に演
算パラメータを決定することができる効果がある。
【0348】請求項3記載の発明によれば、演算手段
は、設定された演算パラメータに基づいて、規定された
演算時間内で、シミュレーションの演算精度が最高値と
なる演算パラメータを決定し、決定された演算パラメー
タを、自動的にシミュレーション演算手段へ送信するよ
うに構成したので、オペレータによる反復回数の算出や
設定の労力を省力化し、操作性を向上させることができ
ると共に、演算精度を向上できる効果がある。
【0349】請求項4記載の発明によれば、演算手段
は、設定された演算パラメータに基づいてシミュレーシ
ョンの演算速度が最高値となる演算パラメータを決定
し、自動的にシミュレーション演算手段へ送信するよう
に構成したので、オペレータによる演算パラメータの検
討や、設定に伴う労力を省力化でき、操作性を向上させ
ることができると共に、演算速度を向上できる効果があ
る。
【0350】
【発明の効果】 以上のように、 請求項記載の発明によ
れば、収束因子計算手段は、設定された演算パラメータ
に基づいて、演算パラメータであるシミュレーションの
反復回数とミュレーションの演算精度との関係を示すデ
ータを演算し、得られたデータを、表示手段がオペレー
タに対して表示するように構成したので、オペレータ
は、シミュレーションの反復回数と演算精度との関係を
入手し検討することができ、迅速かつ的確に最良の演算
パラメータを決定することができる効果がある。
【0351】請求項記載の発明によれば、収束因子計
算手段は、シミュレーションの反復回数とミュレーショ
ンの演算精度との関係を示すデータとして、反復演算に
おける反復1回あたりの誤差の減少割合を示すデータ
(収束因子)を演算し、表示手段が、このデータをオペ
レータに表示するように構成したので、オペレータは、
必要とされる反復回数や最適な加速パラメータを、迅速
に決定できる効果がある。また、指定した反復回数の反
復演算による誤差の減少割合を、オペレータは知ること
がで可能なので、シミュレーションの演算結果に含まれ
る誤差量を、定量的に把握できる効果がある。
【0352】請求項記載の発明によれば、収束因子計
算手段は、シミュレーションの反復回数とシミュレーシ
ョンの演算精度との関係を示すデータとして、反復演算
における反復m回(ここで、m>1)あたりの誤差の減
少割合を示すデータを演算し、このデータを基にして、
収束因子を演算するように構成したので、収束因子の演
算速度を向上できる効果がある。
【0353】請求項記載の発明によれば、評価データ
計算手段は、規定された演算時間内で最大の反復回数n
を演算し、最大の反復回数n内の反復演算での誤差の減
少割合を示す評価データを演算し、表示手段が、得られ
た評価データをオペレータに表示するように構成したの
で、この評価データを基にオペレータは、演算パラメー
タの優劣を的確に判断できる効果がある。
【0354】請求項記載の発明によれば、演算速度特
性演算手段は、シミュレーション時刻のカウントアップ
毎に実行される周期的なシミュレーション演算におけ
る、1周期の演算に必要な時間と反復回数との関係を示
すデータを演算し、表示手段は、このデータをオペレー
タに表示するように構成したので、オペレータは、演算
パラメータを設定すると即時に、1周期のシミュレーシ
ョン演算に要する時間を確認できると共に、規定演算時
間内で反復可能な最大の反復回数を、即時に決定できる
ので最高値の演算精度を与える演算パラメータを決定で
きる効果がある。
【0355】請求項記載の発明によれば、演算速度特
性演算手段は、シミュレーション時刻のカウントアップ
毎に実行される、周期的なシミュレーション演算の1周
期分の演算に必要とされる時間を示すデータを演算する
ように構成したので、オペレータは、個々の分配パター
ンに応じた、実際の演算速度を容易に比較でき、最高の
演算速度を与える分配データを、容易に決定できる効果
がある。
【0356】請求項記載の発明によれば、評価データ
計算手段は、設定された反復演算アルゴリズムを規定す
る演算パラメータに関し、反復演算1回あたりの誤差の
減少割合を示すデータに基づいて規定された演算精度を
満たすための1周期の演算時間が最短値を示すデータを
演算し、表示手段は、このデータをオペレータに表示す
るように構成したので、オペレータは、演算パラメータ
の個々の優劣を的確に評価できる効果がある。
【0357】請求項記載の発明によれば、演算速度特
性演算手段は、1周期の演算に必要な時間Tと反復回数
nとの関係がT=an+bである場合、a,bの値を示
すデータを演算するように構成したので、オペレータ
は、演算パラメータを設定すると即時に、1周期のシミ
ュレーション演算に要する時間を確認できると共に、規
定演算時間内で、反復可能な最大の反復回数が即時に決
定できるので、最高の演算精度を与える演算パラメータ
を決定できる効果がある。
【0358】請求項記載の発明によれば、反復回数演
算手段は、1周期の演算に必要な時間と反復回数との関
係を示すデータを演算し、規定された演算時間内で反復
可能な最大の反復回数を演算し、この反復回数をもとに
収束因子計算手段は、シミュレーションを自動的に実行
するするように構成したので、オペレータは、反復回数
の算出や設定に伴う労力を省力化でき、操作性を向上で
きる効果がある。
【0359】請求項10記載の発明によれば、評価手段
が、設定された反復演算アルゴリズムを規定する演算パ
ラメータの個々の設定パターンもしくは個々の設定値に
対し演算パラメータの設定時のシミュレーション演算の
演算精度を評価する評価データを演算し、比較し、最高
値の演算精度を有する演算パラメータのパターンまたは
設定値を検索して設定し、シミュレーション演算手段
は、設定されたパターンまたは設定値を基に、シミュレ
ーションを自動的に実行するように構成したので、最適
の演算パラメータを自動的に決定できる効果がある。
【0360】請求項11記載の発明によれば、反復回数
演算手段が、演算精度を示す評価データとして、設定さ
れた反復演算アルゴリズムを規定する演算パラメータに
関し、規定された演算時間内で最大の反復回数nを演算
し、最大の反復回数n内の反復演算での誤差の減少割合
を示すデータを評価データとして演算するように構成し
たので、最適の演算パラメータを自動的に決定できる効
果がある。
【0361】請求項12記載の発明によれば、評価手段
が、演算パラメータの個々の設定パターンもしくは個々
の設定値に対し、演算パラメータの設定時のシミュレー
ション演算の演算速度を評価するための評価データを演
算し、比較し、その結果、最高値の演算速度を持つ演算
パラメータのパターンまたは設定値を検索し設定するよ
うに構成したので、最適の演算パラメータを自動的に決
定できる効果がある。
【0362】請求項13記載の発明によれば、演算パラ
メータとして、D行列を示すデータが設定され、評価手
段は、シミュレーションの演算精度を示すシミュレーシ
ョンの反復回数とミュレーションの演算精度との関係を
示すデータを演算し、得られたデータの範囲内で最短値
の1周期演算時間を示すデータを演算するように構成し
たので、最適の演算パラメータを自動的に決定できる効
果がある。
【0363】請求項14記載の発明によれば、評価手段
は、演算パラメータの個々の設定パターンもしくは個々
の設定値と所定の除外条件とを比較し、除外条件に該当
しない演算パラメータの設定パターンもしくは個々の設
定値の中から最良の評価データを有する演算パラメータ
を決定するように構成したので、最適パターンを選択す
る時間を短縮できる効果がある。
【0364】請求項15記載の発明によれば、演算手段
は、電力系統を示すアドミタンス行列YがY=D−Fの
場合における行列Dを演算パラメータの1つとして設定
し、グループ化パターン生成手段は、電力系統のノード
のグループを分割して複数個の分割指定データを設定
し、複数のプロセッサが、複数個の分割指定データのそ
れぞれに対応して、前記ノードに附属する機器のモデル
計算を演算し、系統状態量計算における反復演算式を、
自動的に並行して実行するように構成したので、最適の
ノードグループパターンで、MIMDを実行できる効果
がある。
【0365】請求項16記載の発明によれば、加速因子
演算手段が、反復演算の線形加速演算において1サイク
ル毎の反復演算が完結する毎の誤差の減少割合を示す加
速収束因子を評価データとして演算し、最高の演算精度
を有する加速収束因子の存在する区間を逐次的に縮小し
て限定することにより、最良の演算精度を与える加速収
束因子値を検索して演算するように構成したので、収束
性が向上しシミュレーション精度を向上できる効果があ
る。
【0366】請求項17記載の発明によれば、加速因子
演算手段が、反復演算の条件として最適のチェビシェフ
加速パラメータを逐次変化させながら最適のチェビシェ
フの演算パラメータを演算するように構成したので、収
束性が向上し、シミュレーション精度を向上できる効果
がある。
【0367】請求項18記載の発明によれば、加速因子
演算手段が、加速収束因子を最小とする最適な加速パラ
メータである加速定数を、初期値ω=2/(2−λ2
で2/2−λ2 ≦ω<2の範囲で検索するように構成し
たので、収束性がし、シミュレーションの精度を向上さ
せることができる効果がある。
【0368】請求項19記載の発明によれば、加速因子
演算手段が、加速パラメータである加速定数ωを2/
(2−λ2 )に設定するように構成したので、実用上充
分な加速を得ることができる効果がある。
【0369】請求項20記載の発明によれば、ボード線
図作成手段が、所定条件に従って特性伝達関数の動特性
を示すボード線図を表すデータを演算し、表示手段が、
ボード線図を表示するように構成したので、オペレータ
は、シミュレーションの反復回数等の演算パラメータ
を、迅速に設定できる効果があると共に、シミュレーシ
ョン結果のうち、信憑性のある現象の限界が判明する効
果がある。
【0370】請求項21記載の発明によれば、最小反復
回数演算手段が、反復演算に用いる反復回数と演算精度
との関係を示すデータを演算し、規定された演算精度を
満足する最小値の反復回数を自動演算し設定するように
構成したので、オペレータが、最小反復回数を調整し、
設定する労力を省略できると共に、規定精度の条件下
で、最高の演算速度をもたらす演算パラメータを決定で
きる効果がある。
【0371】請求項22記載の発明によれば、演算手段
が、演算精度のデータとして(1)H(z)の周波数応
答における特定周波数ωでのH(eA )のゲインの偏差
の許容上限値、H(z)の周波数応答における特定周波
数ωでのH(eA )の位相偏差の許容上限値、H(z)
の共振周波数における共振点でのピークゲインの許容上
限値、あるいはH(z)の共振周波数の許容下限値のい
ずれかを演算し、それぞれの許容上限を満たす最小の反
復回数を、自動的に演算するように構成したので、オペ
レータが、各精度条件を満たす最小反復回数を調整し設
定する労力を省略できる効果がある(ここでA=jΔt
ω)。
【0372】請求項23記載の発明によれば、ボード線
図計算手段が、q個の刻み時間幅と前記反復回数の組の
パターン(Δt1 ,n1 ),(Δt2
2 ),...,(Δtq ,nq )のそれぞれに対して
各パターンに基づいたシミュレーションの演算精度を示
すデータを演算し、表示手段が、これらのデータをオペ
レータに表示するように構成したので、用途に応じた最
適のシミュレーションの刻み時間幅をオペレータは決定
できる効果がある。
【0373】請求項24記載の発明によれば、評価デー
タ計算手段が、演算速度特性を演算しこの演算結果を基
に収束因子を演算するように構成したので、評価データ
の演算時間を短縮できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による電力系統シミ
ュレータを示すブロック図である。
【図2】 電力系統シミュレータによる電力系統シミュ
レーション時のシミュレーション準備処理部の動作を説
明するフローチャートである。
【図3】 電力系統シミュレータの収束因子計算部が実
行する収束因子の演算処理の動作を示すフローチャート
である。
【図4】 この発明の実施の形態2における収束因子計
算部のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図5】 この発明の実施の形態3による電力系統シミ
ュレータを示すブロック図である。
【図6】 演算速度特性演算部の動作を説明するフロー
チャートである。
【図7】 この発明の実施の形態4による電力系統シミ
ュレータを示すブロック図である。
【図8】 この発明の実施の形態5による電力系統シミ
ュレータを示すブロック図である。
【図9】 電力系統内のある系統を示す模式図である。
【図10】 図9のある系統に関するノードのグループ
化の実行結果を示す説明図である。
【図11】 電力系統シミュレーションの準備処理とし
てノードのグループ化のパターンをオペレータが決定す
るまでの動作を示すフローチャートである。
【図12】 この発明の実施の形態6による電力系統シ
ミュレータを示すブロック図である。
【図13】 評価データ計算前置処理部における動作を
示すフローチャートである。
【図14】 この発明の実施の形態7による電力系統シ
ミュレータを示すブロック図である。
【図15】 シミュレーション準備処理部により最適な
グループ化パターンを自動選定する動作のアルゴリズム
を示したフローチャートである。
【図16】 この発明の実施の形態8による電力系統シ
ミュレータの動作を示すフローチャートである。
【図17】 この発明の実施の形態9による電力系統シ
ミュレータを示すブロック図である。
【図18】 最適加速パラメータ演算部における最適チ
ェビシェフパラメータの演算アルゴリズムを説明するフ
ローチャートである。
【図19】 変数ηの値が最適なチェビシェフパラメー
タηに収束する様子を示した説明図である。
【図20】 加速収束因子λ’の演算アルゴリズムを示
す説明図である。
【図21】 加速収束因子と最適加速定数の関係を示す
説明図である。
【図22】 この発明の実施の形態10による電力系統
シミュレータを示すブロック図である。
【図23】 あるシミュレーションの結果を表す説明図
である。
【図24】 伝達関数の周波数応答を示す説明図であ
る。
【図25】 この発明の実施の形態11による電力系統
シミュレータを示すブロック図である。
【図26】 この発明の実施の形態12による電力系統
シミュレータを示すブロック図である。
【図27】 パターン毎のボード線図を重ねて出力した
場合を示す説明図である。
【図28】 各パターンをまとめた説明図である。
【図29】 電力系統シミュレータの構成を示す図であ
る。
【図30】 図29の電力系統シミュレータのシミュレ
ーション演算部によるシミュレーション演算の全体的動
作を示すフローチャートである。
【図31】 従来の電力系統シミュレータ内のシミュレ
ーション演算部のシミュレーション演算を示すフローチ
ャートである。
【図32】 従来の電力系統シミュレータ内のシミュレ
ーション演算部の線形加速演算を適用したシミュレーシ
ョン演算を示すフローチャートである。
【符号の説明】
102 シミュレーション演算部(シミュレーション演
算手段)、1101,3104,4102 シミュレー
ション準備処理部(演算手段)、1102 演算状態デ
ータ出力装置(表示手段)、1103 収束因子計算部
(収束因子計算手段)、3101 演算速度特性演算部
(演算速度特性演算手段)、4101反復回数演算部
(反復回数演算手段)、5201 評価データ計算部
(評価データ計算手段)、7104 グループ化パター
ン生成部(グループ化パターン生成手段)、7111
評価部(評価手段)、9106 加速因子演算部(加速
因子演算手段)、10104 ボード線図作成部(ボー
ド線図作成手段)、11105 最小反復回数演算部
(最小反復回数演算手段)、12107 ボード線図演
算部(ボード線図演算手段)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 信之 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社内 (72)発明者 山崎 彰 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−182310(JP,A) 小島雪夫、佐藤信之、他,ディジタル 型リアルタイム電力系統シミュレータ, 三菱電機技報,日本,三菱電機技報社, 1995年 8月25日,Vol.69/No. 8,p.67−72 佐藤信之、中澤太郎、他,ディジタル 型リアルタイム系統解析シミュレータの 開発,電気学会論文誌B,日本,社団法 人電気学会,1993年 8月20日,Vo l.113−B/No.8,p.855−864 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02J 3/00 - 5/00 G06F 17/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (24)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 設定された演算パラメータに基づいて実
    行されるシミュレーションの演算精度を示すデータを演
    算する演算手段と、前記演算精度を示すデータを表示す
    る表示手段と、前記表示手段で表示された前記演算精度
    を示すデータを基に決定された演算パラメータを用い
    て、電力系統のシミュレーションを行うシミュレーショ
    ン演算手段とを備え、前記演算手段は、設定された演算
    パラメータに基づいて、シミュレーションの演算パラメ
    ータであるシミュレーションの反復回数とシミュレーシ
    ョンの演算精度との関係を示すデータを演算する収束因
    子計算手段を有し、表示手段は、前記収束因子計算手段
    が演算したデータを表示し、シミュレーション演算手段
    は、前記表示手段で表示された前記データを基に決定さ
    れた演算パラメータを用いて、電力系統のシミュレーシ
    ョンを行い、反復演算によって電力系統の状態量を演算
    することを特徴とする電力系統シミュレータ。
  2. 【請求項2】 収束因子計算手段は、シミュレーション
    の反復回数とシミュレーションの演算精度との関係を示
    すデータとして、反復演算における反復1回あたりの誤
    差の減少割合を示すデータを演算することを特徴とする
    請求項記載の電力系統シミュレータ。
  3. 【請求項3】 収束因子計算手段は、シミュレーション
    の反復回数とシミュレーションの演算精度との関係を示
    すデータとして反復演算における反復m回(ここで、m
    >1)あたりの誤差の減少割合を示すデータを演算する
    ことを特徴とする請求項記載の電力系統シミュレー
    タ。
  4. 【請求項4】 演算手段は、演算パラメータとして設定
    される反復演算アルゴリズムを規定する演算パラメータ
    に関し、規定された演算時間内で反復可能な最大の反復
    回数nを演算し、前記最大の反復回数nによる反復演算
    での誤差の減少割合を示すデータを演算する評価データ
    計算手段を有することを特徴とする請求項1記載の電力
    系統シミュレータ。
  5. 【請求項5】 設定された演算パラメータに基づいて実
    行されるシミュレーションの演算速度を示すデータを演
    算する演算手段と、前記演算速度を示すデータを表示す
    る表示手段と、前記表示手段で表示された前記演算速度
    を示すデータ を基に決定された演算パラメータを用い
    て、電力系統のシミュレーションを行うシミュレーショ
    ン演算手段とを備え、前記演算手段は、シミュレーショ
    ン時刻のカウントアップ毎に実行される周期的なシミュ
    レーション演算における1周期の演算時間と反復回数と
    の関係を示すデータを演算する演算速度特性演算手段を
    有することを特徴とする電力系統シミュレータ。
  6. 【請求項6】 演算手段は、シミュレーション時刻のカ
    ウントアップ毎に実行される周期的なシミュレーション
    演算内での1周期の演算に必要とされる時間を示すデー
    タを演算する演算速度特性演算手段を有することを特徴
    とする請求項記載の電力系統シミュレータ。
  7. 【請求項7】 演算手段は、反復演算アルゴリズムを規
    定する設定された演算パラメータに関し、反復演算1回
    あたりの誤差の減少割合を示すデータに基づいて、規定
    された演算精度を満足するための1周期の演算時間の最
    短値を示すデータを演算する評価データ計算手段を有す
    ることを特徴とする請求項記載の電力系統シミュレー
    タ。
  8. 【請求項8】 演算速度特性演算手段は、1周期の演算
    に必要な時間Tと反復回数nとの関係をT=an+bで
    示す場合、a,bの値を示すデータを演算することを特
    徴とする請求項記載の電力系統シミュレータ。
  9. 【請求項9】 シミュレーションの演算精度が最高値と
    なる演算パラメータを決定する演算手段と、前記演算手
    段で決定された前記演算パラメータを用いて、電力系統
    のシミュレーションを行うシミュレーション演算手段と
    を備え、前記演算手段は、1周期の演算に必要な時間と
    反復回数との関係を示すデータを演算し、前記データを
    基に規定された演算時間内で最大の反復回数を演算する
    反復回数演算手段を有することを特徴とする電力系統シ
    ミュレータ。
  10. 【請求項10】 演算手段は、設定された反復演算アル
    ゴリズムを規定する演算パラメータの個々の設定パター
    ンもしくは個々の設定値に対して、前記演算パラメータ
    の設定時のシミュレーション演算の演算精度を評価する
    評価データを演算し、これらを比較し、その結果最高値
    の演算精度を有する前記演算パラメータのパターンまた
    は設定値を検索して設定する評価手段を有することを特
    徴とする請求項記載の電力系統シミュレータ。
  11. 【請求項11】 電力系統を示すアドミタンス行列Yが
    Y=D−Fで示されV(k+1)=D-1FV(k)+D
    -1Iなる反復演算式に基づく反復演算により、ノードア
    ドミタンス方程式I=YVを解く場合における行列D
    が、演算パラメータとして設定され、反復回数演算手段
    は演算精度を示す評価データとして規定された演算時間
    内で反復可能な最大の反復回数nを演算し、前記最大の
    反復回数nの反復演算での誤差の減少割合を示すデータ
    を演算することを特徴とする請求項9または請求項10
    記載の電力系統シミュレータ。
  12. 【請求項12】 シミュレーションの演算速度が最高値
    となる演算パラメータを決定する演算手段と、前記演算
    手段で決定された前記演算パラメータを用いて、電力系
    統のシミュレーションを行うシミュレーション演算手段
    とを備え、前記演算手段は、演算パラメータの個々の設
    定パターンもしくは個々の設定値に対して、前記演算パ
    ラメータの設定時のシミュレーション演算の演算速度を
    評価するための評価データを演算し、これらを比較し、
    最高値の演算速度を持つ前記演算パラメータのパター
    ン、または設定値を検索して設定する評価手段を有する
    ことを特徴とする電力系統シミュレータ。
  13. 【請求項13】 電力系統を示すアドミタンス行列Yが
    Y=D−Fで示されV(k+1)=D-1FV(k)+D
    -1Iなる反復演算式に基づく反復演算によりノードアド
    ミタンス方程式I=YVを解く場合における行列Dが、
    演算パラメータとして設定され、評価手段は、シミュレ
    ーションの演算精度を示すシミュレーションの反復回数
    とシミュレーションの演算精度との関係を示すデータを
    演算し、得られた前記データの範囲内で最短の1周期の
    演算時間を示すデータを演算することを特徴とする請求
    12記載の電力系統シミュレータ。
  14. 【請求項14】 評価手段は、演算パラメータの個々の
    設定パターンもしくは個々の設定値と所定の除外条件と
    を比較し、この除外条件に該当する設定パターンもしく
    は個々の設定値に関する評価データを演算せずに、除外
    条件に該当しない演算パラメータの設定パターンもしく
    は個々の設定値の評価データを演算することを特徴とす
    る請求項10または請求項12記載の電力系統シミュレ
    ータ。
  15. 【請求項15】 電力系統を示すアドミタンス行列Yが
    Y=D−Fで示されV(k+1)=D-1FV(k)−D
    -1Iなる反復演算式に基づく反復演算によりノードアド
    ミタンス方程式I=YVを解く場合における行列Dが、
    演算パラメータの1つとして設定され、演算手段は、電
    力系統のノードのグループを分割して複数個の分割指定
    データを設定するグループ化パターン生成手段を有し、
    分割された前記複数個の分割指定データのそれぞれに対
    応し、前記ノードに付属する機器のモデル計算を演算
    し、系統状態量計算における前記反復演算式のうち前記
    複数のプロセッサのそれぞれで、前記反復演算式を分割
    した次式を並列に演算する複数個のプロセッサを有する
    請求項4、請求項7、請求項11または請求項13記載
    の電力系統シミュレータ。 Vl (k+1)=Y11-1(ΣYqlq (k)) + Y-1 1lI1 q l ここで、Yqlはアドミタンス行列Yのノードのグループ
    化に対応したブロック分割、Vq は電圧列ベクトルのノ
    ードのグループ化に対応したブロック分割であり、Il
    は注入電流列ベクトルのノードのグループ化に対応した
    ブロック分割である。
  16. 【請求項16】 演算手段は、反復演算における線形加
    速演算において、1サイクル毎の反復演算が完結する毎
    の誤差の減少割合を示す演算パラメータとしての加速収
    束因子を評価データとして演算し、最高の演算精度を有
    する前記加速収束因子の存在する区間を逐次的に縮小し
    て限定し最良の演算精度を与える前記加速収束因子の値
    を検索的に演算する加速因子演算手段を有することを特
    徴とする請求項10記載の電力系統シミュレータ。
  17. 【請求項17】 加速因子演算手段は、以下の条件
    (1)〜(3)に基づいて線形加速演算を実行すること
    を特徴とする請求項16記載の電力系統シミュレータ。 (1)反復演算における反復がm回実行される毎に次の
    線形加速演算を実行する。【数1】 ただしイタレーション(Iteration:反復)回
    数kはmの倍数でありV’(k)を新たにV(k)に置
    き換えて次の反復演算を実行し、ai は次の多項式T’
    m,ηのxi の係数とする。T’m、η(x)=Tm (x/
    η)/Tm (1/η)ここで、Tm はm次のチェビシェ
    フ多項式である。 (2)加速パラメータとして前記条件(1)内のηを用
    いる。 (3)最良の加速パラメータの検索において、λ≦η<
    1の範囲で検索し、前記検索の初期値は、η=λとし、
    このλは、加速を行わない場合の反復演算における反復
    1回あたりの誤差の減少割合を示すデータとする。
  18. 【請求項18】 加速因子演算手段は、以下の条件
    (1)〜(3)に基づいて線形加速演算を実行すること
    を特徴とする請求項16記載の電力系統シミュレータ。 (1)反復演算におけるイタレーション回数kが偶数の
    とき、次の線形加速演算を実行する。 V’(k)=V(k−2)+ω(V(k)−V(k−2)) ここで、V’(k)を新たにV(k)に置き換えて次の
    反復演算を実行する。 (2)加速パラメータとして前記条件(1)内のωを用
    いる。 (3)最良の加速パラメータの検索は、検索の初期値を
    ω=2/(2−λ2 )として、次式、 2/(2−λ2 )≦ω<2 を満足する範囲で実行する。ここで、λは加速を行わな
    い場合の反復演算における反復1回あたりの誤差の減少
    割合を示すデータである。
  19. 【請求項19】 加速パラメータωは、ω=2/(2−
    λ2 )であることを特徴とする請求項18記載の電力系
    統シミュレータ。
  20. 【請求項20】 演算手段は、以下の条件(1)および
    (2)に基づいて、設定された演算パラメータを基にボ
    ード線図を作成するボード線図作成手段を有し、得られ
    たボード線図を表示手段を介して表示することを特徴と
    する請求項1記載の電力系統シミュレータ。 (1)反復回数を有限固定値のn回と設定し、シミュレ
    ーション結果の反復回数を無限大と設定し、得られるシ
    ミュレーション結果に対する動的追従性を表す伝達関数
    として、次式、 H(z)=(1−λn )/(1−λn Pr (z)) で示される離散時間系伝達関数を用いる。ここで、Pr
    (z)は、以下の(a)〜(c)のいずれかである。 (a)Pr (z)=Z-1(0次予測)、 (b)Pr (z)=2Z-1−Z-2(1次予測)、 (c)Pr (z)=3Z-1−3Z-2+Z-3(2次予測) (2)伝達関数の動特性を示すデータとして前記H
    (z)の周波数応答を示すボード線図に該当するデータ
    を用いる。
  21. 【請求項21】 演算手段は、反復演算に用いる反復回
    数と演算精度との関係を示すデータを演算し、規定され
    た演算精度を満足する最小値の反復回数を演算する最小
    反復回数演算手段を有することを特徴とする請求項12
    記載の電力系統シミュレータ。
  22. 【請求項22】 演算手段は、演算精度を示すデータと
    して以下の(1)〜(4)のいずれかを用いて演算する
    ことを特徴とする請求項20記載の電力系統シミュレー
    タ。 (1)H(z)の周波数応答における特定周波数ωでの 【数2】 のゲインの偏差の許容上限値。 (2)H(z)の周波数応答における特定周波数ωでの 【数3】 の位相偏差の許容上限値。 (3)H(z)の共振周波数における共振点でのピーク
    ゲインの許容上限値。(4)H(z)の共振周波数の許
    容下限値。
  23. 【請求項23】 演算手段は、シミュレーションにおけ
    る複数個(q個)の刻み時間幅であるΔtj (j=1,
    2,...,q)のそれぞれに対して1周期のシミュレ
    ーション演算時間幅がΔtj を超過しない最大の反復回
    数nj を演算し前記q個の刻み時間幅と前記反復回数の
    組のパターン(Δt1 ,n1 ),(Δt2
    2 ),...,(Δtq ,nq )のそれぞれに対して
    各パターンに基づいたシミュレーションの演算精度を示
    すデータを演算するボード線図演算手段を有することを
    特徴とする請求項1記載の電力系統シミュレータ。
  24. 【請求項24】 評価データ計算手段は、反復回数をn
    1 +n2 回とした1周期の系統状態量演算を実行し、反
    復がn1 回終了時点とn1 +n2 回終了時点での2回分
    の所要演算時間を計測してこれらをt1 ,t2 とし、以
    下の式(1)で演算パラメータである演算速度特性を演
    算し、以下の式(2)で演算パラメータである収束因子
    を演算することを特徴とする請求項または請求項
    載の電力系統シミュレータ。 (1)a=(T1 −T2 )/(n1 −n2 ), b=(n1 2 −n2 1 )/(n1 −n2 ) ここで、T1 =t1 ,T2 =t2 −t1 なお、Tは演算時間、nは反復回数であり、演算時間T
    と反復回数nは1次式の関係があり、これをT=an+
    bと表す。 (2)λ=<V(n)−V(n−1),V(n−1)−V(n−2)>/ <V(n−1)−V(n−2),V(n−1)−V(n−2)> ここで、n=n1 +n2 なお、V(i)はノードアドミタンス方程式を反復解法
    で求解する過程での反復回数iにおける電圧ベクトルを
    表す。<,>はベクトルの内積演算、λは反復解法にお
    ける「収束因子」を表す。
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佐藤信之、中澤太郎、他,ディジタル型リアルタイム系統解析シミュレータの開発,電気学会論文誌B,日本,社団法人電気学会,1993年 8月20日,Vol.113−B/No.8,p.855−864
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