JP3418375B2 - 血漿分離膜の血漿分離効率の増大方法 - Google Patents

血漿分離膜の血漿分離効率の増大方法

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JP3418375B2 JP2000338172A JP2000338172A JP3418375B2 JP 3418375 B2 JP3418375 B2 JP 3418375B2 JP 2000338172 A JP2000338172 A JP 2000338172A JP 2000338172 A JP2000338172 A JP 2000338172A JP 3418375 B2 JP3418375 B2 JP 3418375B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、臨床検査分野で血
液成分分析の反応素材や血液(血漿)搬送媒体(容器)
として広く利用されているポリエステル系ポリマーを主
材料とする血漿分離膜又はこれを応用した複合素材にお
いて、血液を血漿と血餅(血球)に分離する際、被採血
者の個体差によって生じる血漿中の蛋白や蛋白結合物質
による血漿分離阻害を緩和し、効率的に血漿を得るため
の方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】現在、
医学領域特に臨床検査分野でクロマトグラフィーを原理
として簡単に血漿成分を得る方法として、ポリエステル
系ポリマーを用いた血漿分離膜が開発され市販されてい
る。
【0003】しかし、本発明者らは、これらポリエステ
ル系ポリマーを主材料とする血漿分離膜において、被採
血者の血漿成分存在量の差により血漿と血餅(血球)の
分離率が異なること、特に、高アルブミン血漿や高リポ
蛋白(=高中性脂肪)血漿で血漿分離率が著しく低下す
ることを発見した。図1〜図4は、ポリエステル系ポリ
マーを主材料とする血漿分離膜ヘマセップL及び複合素
材ヘマセップV(登録商標:米国ニューヨーク:ゲルマ
ンサイエンス社製)において血漿中に存在するアルブミ
ン及び超低比重リポ蛋白=中性脂肪が血漿分離を阻害す
る様子を示したものである。
【0004】この実験は、ペパリン採血管(ヘ゛ノシ゛ェクトII
VP−H052:テルモ社製)を用いて採血し、長さ60mm、幅
5mmに切りそろえたヘマセップL及びVにそれぞれ0.25m
l、0.10mlヘパリン血を展開させ、血漿及び血餅(血
球)の展開長を計測して血漿分離率=(血漿/(血漿+
血餅)×100)/(100−ヘマトクリット値)を求
めたものである。アルブミンでは、ヘマセップLで相関
係数0.812、ヘマセップVで0.785、中性脂肪ではそれぞ
れ相関係数0.654及び0.583という高い関連性で存在量増
加とともに血漿分離率を低下させる。
【0005】ところで、血漿分離率が低下すると、分析
反応素材に用いた場合に、十分な血漿量が得られないこ
とに起因する分析値の信頼性低下を引き起こす可能性が
ある。また、血漿搬送媒体として用いて抽出作業を伴う
場合、抽出誤差の拡大につながり、直接測定に用いる場
合、測定項目数の減少につながるという問題点もある。
【0006】本発明は、上記の問題点に鑑みてなされた
ものであって、血漿中の蛋白存在量の個体差による血漿
分離率低下を改善し、個体差を最小限に止めることによ
り安定的かつ効率的に血漿を得る方法を提供することを
課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】(前提的考察)クロマト
グラフィーを原理とする血漿分離膜では、その素材によ
る差や分子修飾の状態による差を議論しない場合、一般
的に血球と血漿の拡散力の差を利用している。血液の拡
散を取り扱う場合、コロイド粒子を含む溶液中の拡散を
取り扱ったFickの拡散法則に近似できると考えら
れ、界面の断面積、濃度勾配及びコロイド分子の持つ固
有の拡散係数に支配されて、分子拡散が行われると考え
られる。
【0008】すなわち、血液が巨大コロイドである赤血
球を含む溶液であり、この溶液が比較的微少な断面積を
有する空間を流れる粘性流と仮定すれば、拡散係数の小
さな溶質である赤血球は大きく拡散せず分離膜内で徐々
に濃度減少する。そして、血球の抵抗がなくなった状態
で溶媒である血漿が内在する成分の濃度勾配によって膜
内を拡散していくという過程が想定される。実際に血漿
分離膜に血液を滴下し、平面展開させた場合、血球成分
の伸展停止後に血漿のみの伸展が観測される(バーロー
の物理化学第3版(下)、P712.G.M.Barrow著、東京化
学同人、1976)。
【0009】しかしながら、血漿は物理化学の理論で取
り扱われるような一様な溶媒ではなく、個体差の存在に
よって血球及び血漿の拡散流に変動が発生し、前記した
アルブミン及びリポ蛋白の存在差(=血漿性状の差)に
よる血漿分離率の差が結果として現れる。この分離率の
差の要因は、血漿の拡散力の不足が原因で分離率が低
下する、血液全体の性状(血漿と血球の相互作用)と
して分離率が低下するの2つが考えられるが、本発明者
による研究によって後者であることが明らかとなった。
【0010】すなわち、図5、図6に示したように、血
漿を分離膜に直接塗布してもアルブミン及びリポ蛋白
(中性脂肪)の存在量差による血漿流動幅の変動(減
少)は見られず、血液全体が持つ粘性流の性状=血漿成
分と血球の相互作用により発生する現象であることが理
解される。血漿蛋白と血球、特に赤血球との相互作用
は、古くから研究されており、臨床検査の分野では、血
液凝集反応や赤血球沈降反応に大きく関与していると言
われている。特にアルブミンは、赤血球沈降速度を遅延
させる働きがあり、理論的にこの遅延はアルブミンと赤
血球の表面電荷がともに負であるため、電気的反発に起
因するといわれている。
【0011】この電気的な反発による沈降の遅延は、物
理化学での沈降と拡散が負の相関関係があること考慮す
れば、赤血球の拡散を意味し、見かけ上拡散係数の上昇
を意味する。すなわち、血球の拡散係数が小さいことを
主眼とした血漿分離膜において血球の拡散係数増大は、
分離能の低下を意味する。
【0012】また、血球の拡散は、血漿分離膜中の血漿
流を中心として見た場合、比較的微細な断面積を有する
空間では血漿流に対して抵抗性(摩擦)の増大として働
くことが考えられ、血漿が膜内を展開する力を減少させ
ると考えられる。
【0013】この考察を裏付けるために、本発明者は、
ヘマセップLを用いて血漿アルブミン濃度差による「血
漿:血球」の伸展距離比較を行った。検体は、中性脂肪
正常で血漿アルブミン量3.8g/dl以下、3.9〜4.2g/dl、
4.3g/dl以上3群に分けてそれぞれ10例、ミリメート
ル単位で計測した。それぞれの群の「血漿:血球」の伸
展距離は、5.8:19.0、4.0:19.3、3.0:20.7となり、アル
ブミン量が少ないほど血球の伸展が抑制され(血球拡
散)、しかも総流動距離(血球抵抗)も延長される結果
を得た。
【0014】また、本発明者らが確認した現象では高ア
ルブミン及び高リポ蛋白血漿を有する血液では、血漿分
離膜上の血球と血漿の分離境界が不明確な像を示すもの
が多く、これらの事実は、上記2点の考察を満足する。
【0015】リポ蛋白についても同様な結果を得てお
り、電気泳動による分画位置から推測して、アルブミン
よりも弱い負帯電ではあるが、アルブミン同様な作用を
有していると考えられる。以上の通り、市販されている
ポリエステルを主材料とする血漿分離膜において、個体
差を最小にするためには血漿中のアルブミン等成分と血
球の相互作用を何らかの方法によって解消する必要性が
ある。
【0016】この課題を解決するためには、Fickの
法則から明らかなように、血漿成分と血球の相互作用分
断する方法を講ずる、もしくは、血球の摩擦抵抗に負け
ない濃度勾配を付与する2つの方法が考えられるが、本
発明者は、血漿分離膜に種々の塩、糖類、アミノ酸を含
浸させることで血漿量の個体差を抑制し、また分離する
血漿量を増大させる方法を発見した。
【0017】すなわち、本発明は、ポリエステル系ポリ
マーを使用した血漿分離膜又は血漿分離膜を応用した複
合素材において、前記血漿分離膜に塩、糖類、アミノ
酸、又は蛋白を、単独又は組み合わせて添加する血漿の
分離効率を増加させる方法である。なお、本発明におい
て添加とは、含浸や被覆などを含む概念である。
【0018】本発明の塩は、無機酸塩、有機酸塩又は塩
化物であるが、無機酸塩としてはリン酸塩、硝酸塩など
が好適であり、有機酸塩としてはクエン酸塩、シュウ酸
塩などが好適である。これらのうち三塩基酸塩であるリ
ン酸塩やクエン酸塩が特に好適である。三塩基酸塩0.25
〜0.05mol/l、好ましくは0.2〜0.1mol/l程度をpH6〜
8(最適範囲はpH7〜8程度)に調整して添加含浸さ
れるのが好ましい。塩化物としては、塩化ナトリウム、
塩化カリウムなどが好適であるが、このうち塩化ナトリ
ウムが特に好適である。また、塩化物の濃度は、0.25〜
0.05mol/l程度が好ましい。
【0019】本発明の糖類としては、単糖類又は二糖類
が好適であり、単糖類としてはマンニトール、ブドウ糖
などが好適であり、二糖類としては蔗糖、トレハロース
などが好適である。このうち、マンニトールと蔗糖が特
に好適である。また、糖類の濃度は、0.25〜0.05mol/l
程度が好ましい。
【0020】本発明のアミノ酸としては、グリシン、ア
ラニンなどが好適であり、特にグリシンが好適である。
好適なアミノ酸の濃度は、0.25〜0.05mol/l程度であ
る。本発明の蛋白としては、血漿蛋白であるフィブリノ
ーゲンやγ−グロブリンが好適である。蛋白の好適な最
終濃度は、40〜100mg/dl程度である。
【0021】
【発明の実施の態様】
【0022】
【実施例1】1.ヘマセップLでの血漿伸展率改善(図
7) 実施例として、ポリエステル系ポリマーを使用した血漿
分離膜ヘマセップL(米国ニューヨーク:ゲルマンサイ
エンス社製)を長さ60mm、幅5mmに切りそろえ、リン酸
アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、塩
化ナトリウム、塩化カリウム、グリシン各0.1mol/l水溶
液を含浸させ、十分乾燥させた修飾膜と無修飾膜を用い
て血漿分離能の比較を行った。
【0023】ペパリン採血管(ヘ゛ノシ゛ェクトIIVP−H052:テ
ルモ社製)を用いて採血したアルブミン濃度4.8g/dl・
中性脂肪103mg/dl(高アルブミン検体)、アルブミン4.
1g/dl・中性脂肪432mg/dl(高中性脂肪検体)、アルブ
ミン4.0g/dl・中性脂肪110mg/dl(正常検体)それぞれ
を各々の修飾、無修飾分離膜に0.25mlづつ滴下し、血漿
/(血餅+血漿)の比率を計測した。
【0024】図7に示したとおり、無修飾膜を100とし
た場合、各リン酸塩、塩化物及びアミノ酸で修飾した膜
は高アルブミン検体、高中性脂肪検体とも2倍以上の血
漿伸展を示した。正常検体でも血漿伸展が見られたの
は、アルブミンの作用が正常範囲でも惹起されることを
示している。
【0025】なお、これと同様な実験をポリエステル繊
維膜にセルロース繊維等を接着した複合素材であるヘマ
セップV(米国ニューヨーク:ゲルマンサイエンス社
製)についても行い同様の結果が得られた。
【0026】
【実施例2】2.フィブリノーゲンの効果(図8) 実施例1と同様、ヘマセップLを用いて、血漿蛋白であ
るフィブリノーゲンについても血漿伸展効果を計測し
た。具体的には、エチレンジアミン四酢酸カリウム塩入
り採血管(自社製)を用いて、採血を行い、生理食塩水
に溶解したフィブリノーゲンを最終濃度0、50、100mg/d
lになるよう調整し、5検体に添加実験を行った。図8
に示したように各検体ともフィブリノーゲン添加量増加
とともに血漿伸展率が増加し、最小で20%、最大で1
10%の血漿伸展が観測された。
【0027】
【実施例3】3.ヘマセップVでの血漿伸展率改善(図
9、図10) ヘマセップV長さ60mm、幅5mmに切りそろえ、リン酸カ
リウム、塩化ナトリウム、マンニトール、スクロース、
クエン酸ナトリウムの0.1mol/l水溶液に浸し十分な乾燥
の後、ペパリン採血管(ヘ゛ノシ゛ェクトIIVP−H052:テルモ社
製)を用いて採血したアルブミン4.0g/dl・中性脂肪526
mg/dlとアルブミン4.0g/dl・中性脂肪107mg/dlの検体そ
れぞれを各々の分離膜に0.1mlづつ滴下し、血漿/(血
餅+血漿)の比率を計測及び血漿部に存在する総蛋白量
を計測した。対象として純水を含浸させて乾燥した無修
飾膜についても同様の操作を行って比較した。
【0028】血漿総蛋白量の測定は、得られた血漿部分
を0.4mlのリン酸緩衝液で抽出し、得られた抽出液を、
稀釈相当量を勘案上で改変(原法との相関性は確認済
み)したビューレット法にて測定した。
【0029】その結果を純水含浸分離膜の平均を100
として、図9、図10に示した。各塩及び糖類において
無修飾膜と比較して血漿伸展及び蛋白量が増加し、特に
リン酸塩及びクエン酸塩の効果が大きく、中性脂肪高値
の検体では血漿伸展率で20〜30%、蛋白量で40%
以上の著しい改善が認められた。
【0030】また、ヘマセップVでは、高脂質検体では
血球が血漿部に浸潤しやすく、血餅と血漿の分離境界の
像が不明確となる場合が多く、血漿収量は、さらに低下
する。これについても本実験で、血餅と血漿分離境界の
像が中性脂肪高値検体において、純水含浸の場合よりリ
ン酸塩で改善され、血球浸潤区間が3mmから1mm程
度に改善された。
【0031】
【実施例4】4.ヘマセップVでの塩pH効果(図1
1、図12) 実施例2と同様の実験方法で、リン酸塩のpHを5.2
〜7.8まで5段階に変化させ、血漿伸展比率と総蛋白
量の変化を計測した。結果として、pHが高くなるほど
血漿伸展率も分離される蛋白量も増大する。ただし、上
記以外にpH8.5についても同様の実験を行ったが、
血漿伸展率及び血漿部蛋白量もpH7.2より低下し、
血餅と血漿境界像も不明確さを増大した。この結果から
pH7〜8が望ましいことが明らかとなった。
【0032】
【実施例5】5.ヘマセップVでの塩の濃度効果(図1
3、図14) 実施例3と同様にpH7.2に調整したリン酸塩の濃度
を0.025〜0.2mol/lの区間で変化させ、血漿伸展率と血
漿部蛋白量を計測した。結果として、塩濃度に従って血
漿伸展率も血漿部蛋白量も増大する。また、塩濃度が上
昇するにつれて血漿分離率及び血漿蛋白量とも再現性が
向上した。ただし、0.2mol/lでほぼ平衡に達し、0.3mol
/l以上では場合によって血球が破壊される現象が生じる
ことから、塩濃度としては0.1〜0.2mol/lが最適であ
る。
【0033】本実験のリン酸塩濃度0.2mol/lの場合、中
性脂肪約500mg/dlと約100mg/dl検体両者はほぼ同様に血
漿分離が行われ、ヘマセップVをそのまま用いた場合に
見られた中性脂肪による障害や再現性の悪さが改善され
た。すなわち、ヘマセップVの好適な塩修飾及び好適な
pHを満足するので、中性脂肪量に関係なく、ほぼ一定
量の血漿が得られた。
【0034】
【実施例6】血漿アルブミン量及びリポ蛋白の差による
個体差の是正例(図15〜図18) 血漿アルブミン量の差による個体差是正を、リン酸カリ
ウムを用いた膜修飾で観測した。長さ50mm、幅6mmに切
りそろえたヘマセップLにリン酸カリウム0.1mol/l、pH
7.2水溶液を含浸させ、十分乾燥させた後にペパリン採
血管(ヘ゛ノシ゛ェクトIIVP−H052:テルモ社製)を用いて採血
した種々のアルブミン及び中性脂肪濃度を有するヘパリ
ン血0.25mlを展開させ、リン酸カリウムによる修飾を行
わなかった分離膜と血漿分離率=(血漿/(血漿+血
餅)×100)/(100−ヘマトクリット値)の比較
を行った。図示の通りリン酸カリウムの分離膜修飾によ
り、個体差はほぼ解消されている。
【0035】
【実施例7】血漿成分の実測例(図19〜図22) 本発明によれば、得られた血漿及び血餅部分それぞれに
存在する各種生体成分を測定できるが、リン酸カリウム
の0.1mol/lで修飾したヘマセップVの血漿部より抽出し
た成分測定値と血清測定値の比較を行った。
【0036】実測例としてグルタミン酸ピルビン酸トラ
ンスアミナーゼ(GPT)と中性脂肪の相関図(図1
9、図21)を示した。比較のため無修飾と血清の相関
関係も例示した(図20、図22)。方法としてヘマセ
ップVは長さ60mm、幅5mmに切りそろえ、修飾、無修飾
それぞれに、ペパリン採血管(ヘ゛ノシ゛ェクトIIVP−H052:テ
ルモ社製)を用いて採血した30例の血液を各々の分離
膜に0.1mlづつ滴下し、一昼夜乾燥して得られた血漿部
分すべてを界面活性剤入りのリン酸緩衝液0.4mlを用い
て抽出し自動分析測定した。
【0037】抽出成分の測定にはオリンパス社製AU6
00自動分析装置、血清はオリンパス社製AU5242
自動分析装置を用いた。GPTの測定法は、JSCC準
拠法を用い、中性脂肪の測定には遊離グリセロール消去
・酵素比色法を用いて行った。血漿分離膜からの抽出物
測定は、稀釈相当量を勘案上で改変(原法との相関性は
確認済み)した方法にて測定した。
【0038】中性脂肪測定例では、リン酸カリウム修飾
ヘマセップVの血漿部と血清との相関は相関係数0.979
と良好であった。無修飾のものと比較して改善度合を見
ると個体差を表現するバラツキ=相関係数が改善され、
得られる血漿量を表現する回帰式の傾きも改善されてい
ることが理解される。この結果は、GPTの測定でも同
様であり、リン酸カリウムでの血漿分離膜修飾によっ
て、個体差及び血漿回収量の増加が確認された。
【0039】[理論的背景の考察]解決すべき課題にて
本発明者らは、血漿分離膜内を流れる血液は血液自身が
持つ性状差(アルブミン等の存在量差)により、血液流
の物理化学的変化=血球拡散係数の低下と血球摩擦抵抗
増大を生じ、血漿分離率が著しく低下すること異なるこ
とを述べた。また、この現象が種々の塩、アミノ酸、糖
類、蛋白を膜に付加することによって解決されることも
述べた。これら付加による分離率改善の理論的背景は、
まだ不明な部分はあるが、下記の予測が成り立つ。
【0040】一つは、血漿濃度勾配の増大である。本発
明において、リン酸やクエン酸のような三塩基酸と塩化
ナトリウムのような一単純塩を比較した場合、実施例
1.又は実施例3に示した様に三塩基酸塩の方が血漿分
離量を増大させる効果があった。この事実は、イオン強
度の差がこの系に有効に働いたためと考えられる。
【0041】もう一つは、血漿成分と血球の相互作用分
断である。これには、2つの考え方が存在し、一つは相
互作用蛋白の変性、もう一つは負電荷に対抗する正電荷
の付与である。
【0042】1)液性変化によるアルブミン等の性状変
性 アルブミンの表面荷電は、電気泳動法等の観測から負で
あることが知られている。しかし、液性の条件変化で蛋
白質の持つ両荷電性の出現や疎水的性状の増大も知られ
ている。筏らの研究では、高分子表面との吸着実験にお
いて、アルブミンはポリスチレン表面への吸着時、高イ
オン強度になれば等電点より高いpHでアルブミン自身
の変性すなわち疎水性増大による吸着量の増大を認めて
いる(筏義人:高分子表面の基礎と応用(上)、p247〜
270、化学同人、1986)。
【0043】リン酸カリウム等三塩基酸塩の血漿分離膜
修飾で、血液に付加されるイオン強度は3倍強となり、
アルブミン等の表面性状が変化している可能性も存在す
る。いずれにしても、イオン強度増大によって、血球と
血漿蛋白の相互作用が断絶されていることは間違いない
と考えられる。
【0044】しかし、闇雲なイオン強度増大は、赤血球
の損傷や血漿成分を測定する際の妨げの原因となり、0.
2mol/lまでが最適であると考えられる。 2)陽性荷電性の付加 血液沈降反応において、免疫グロブリンやフィブリノー
ゲンはアルブミンと逆に沈降促進に働くといわれてい
る。これは、両蛋白がもつ陽性荷電又は疎水性によるも
のと言われている。この事実は、実施例2で示したよう
に、陽性荷電性のフィブリノーゲンにより血漿分離率の
増大が可能である。また、グロブリンも血漿伸展を即す
効果があり、図23に示したとおり、相関係数0.3程
度の弱い作用であるが、血漿分離率を増大方向にする。
【0045】実用面において、これら蛋白の付与は、多
成分特に血漿中総蛋白質測定は行えないこと及び免疫反
応に影響を及ぼす可能性があるが、塩の付与で測定不可
能であった血中ミネラル分の測定は可能となる。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
血漿中の蛋白存在量の個体差による血漿分離率低下を改
善し、個体差を最小限に止めることにより安定的かつ効
率的に血漿を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルブミン量に応じて分離性能が低下すること
を図示したものである。
【図2】中性脂肪量に応じて分離性能が低下することを
図示したものである。
【図3】アルブミン量に応じて分離性能が低下すること
を図示したものである。
【図4】中性脂肪量に応じて分離性能が低下することを
図示したものである。
【図5】血清伸展とTGの関係を図示したものである。
【図6】血清伸展とアルブミンの関係を図示したもので
ある。
【図7】実施例1の結果であり、塩及びアミノ酸による
血漿分離率の改善性能を図示したものである。
【図8】実施例2の結果であり、血漿伸展に及ぼすフィ
ブリノーゲンの効果を図示したものである。
【図9】実施例3の結果であり、塩及び糖類による血漿
分離率の改善性能を図示したものである。
【図10】実施例3の結果であり、塩及び糖類による血
漿分離率の改善性能を図示したものである。
【図11】実施例4の結果であり、血漿伸展に対するp
Hの効果を図示したものである。
【図12】実施例4の結果であり、血漿伸展に対するp
Hの効果を図示したものである。
【図13】実施例5の結果であり、塩濃度による血漿伸
展効果を図示したものである。
【図14】実施例5の結果であり、塩濃度による血漿伸
展効果を図示したものである。
【図15】アルブミン量に応じて分離性能が低下するこ
とを図示したものである。
【図16】実施例6の結果であり、図15と比較して分
離性能が改善されたことを示す図面である。
【図17】中性脂肪量に応じて分離性能が低下すること
を図示したものである。
【図18】実施例6の結果であり、図17と比較して分
離性能が改善されたことを示す図面である。
【図19】実施例7の結果を図示したものである。
【図20】実施例7の結果を図示したものである。
【図21】実施例7の結果を図示したものである。
【図22】実施例7の結果を図示したものである。
【図23】GLBと血漿回収率の関係を図示したもので
ある。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステル系ポリマーを使用した血漿
    分離膜、又は血漿分離膜を応用した複合素材において、 前記血漿分離膜に、三塩基酸塩0.25〜0.05mo
    l/lをH6〜8に調整し添加含浸させる血漿分離膜の
    血漿分離効率の増大方法。
  2. 【請求項2】 前記三塩基酸塩は、リン酸塩又はクエン
    酸塩である請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 高アルブミン血漿又は高リポ蛋白血漿を
    含有する血液から効率的に血漿を得るための方法であっ
    て、ポリエステル系ポリマーを使用した血漿分離膜、又
    は血漿分離膜を応用した複合素材において、 前記血漿分離膜に、無機酸塩、有機酸塩及び塩化物から
    選ばれる塩、マンニトール、ブドウ糖、蔗糖及びトレハ
    ロースから選ばれる糖類、グリシン又はアラニンから選
    ばれるアミノ酸、フィブリノーゲン又はγ−グロブリン
    から選ばれる蛋白を、単独又は組合せて添加する血漿分
    離膜の血漿分離効率の増大方法。
  4. 【請求項4】 高アルブミン血漿又は高リボ蛋白血漿を
    含有する血液から血漿を分離するために用いられる修飾
    膜であって、 前記修飾膜は、ポリエステル系ポリマーを使用した血漿
    分離膜、又は血漿分離膜を応用した複合素析に対して、
    無機酸塩、有機酸塩及び塩化物から選ばれる塩、マンニ
    トール、ブドウ糖、蔗糖及びトレハロースから選ばれる
    糖類、グリシン又はアラニンから選ばれるアミノ酸、
    ィブリノーゲン又はγ−グロブリンから選ばれる蛋白
    を、単独又は組合せて修飾されている修飾膜。
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