JP3394253B2 - 章動型内燃機関 - Google Patents

章動型内燃機関

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、章動型内燃機関に関し、特に高能率章動型
内燃機関に関する。本発明は、円錐状の表面と中央に配
設された球体とを有して対称的な部分球形チャンバ内に
位置決めされたディスクを含む章動型内燃機関から成
る。該チャンバは、ディスクを収容するように構成さ
れ、駆動軸を回転させるために球体を移動可能に係合さ
せ、ディスクをチャンバ内で章動させる軸受を中央に有
する。好ましくは、機関は、4サイクル原理で作動し、
吸気チャンバと圧縮チャンバを一つのチャンバに、燃焼
チャンバと排気チャンバを一つのチャンバに統合して18
0゜毎に点火を行う。
従来技術の説明 4行程内燃機関は、一世紀以上に亘り使用されてき
た。これよりも長く、機械学における部材のすりこぎ運
動及び章動の概念は知られている。また、章動している
部材の回転運動から別の形の運動へのエネルギの移転
も、知られている。これまで内燃機関に章動部材を使用
する概念は試みられてはきたが、あまり成功していな
い。本願に開示された装置まで、内燃機関のチャンバを
画定するための章動部材の効果的な使用は、殆ど成功し
ていなかった。
一般に、部材のすりこぎ運動は、加わったトルクが回
転軸線の方向を変え、この軸線が円錐形のパターンを描
いてトルクの方向に直角に回転する時、回転体(例えば
こま)により呈される効果である。章動は、回転体(例
えばこま)のすりこぎ回転軸線の垂線からの傾きの周期
的変動を指す。
章動機関は、基本的要素として、球形部材と、該球体
の軸線に沿って該球体を貫通する軸を含む。球体と軸
は、軸の運動を円錐形に従動させつつ球体と軸が移動す
るように、チャンバ内に位置決めされる。章動の全体的
な効果は、最終的に回転することなく交互に傾くことに
ある。
章動要素は、種々の機械装置において、エネルギを移
転させるために使用されてきた。例えば、早くも1904年
に、F.E.ホールに授与された米国特許第773206号は、章
動しているボールと軸をピストンが駆動させて駆動軸を
回転させるガソリン機関を開示している。同様に、1908
年に、米国特許第876202号は、章動要素をピストンと駆
動軸との間のリンク装置とした機関用の運動伝達装置を
開示している。即ち、ピストンが章動要素のアームを駆
動して、軸を章動動作で駆動し円錐形パターンを払拭し
ている。軸のエネルギは、歯車機構を介して移転され、
別個の駆動軸を駆動している。
他の多くの特許も、ある形態から他の形態に運動を移
転するために、章動したボールと軸を使用している。19
42年の米国特許第2278696号は、ロータリエンジンに適
用した章動要素を開示した。この引例では、軸に垂直な
アームに取り付けたピストンを記載している。軸は中央
の旋回点を中心に回転して、二つの円錐形の回転を生成
していた。軸の端部は、別個の駆動軸を回転させる手段
に取り付けられている。軸は、ボール及びディスク構造
内で軸受を介して移動する。しかしながら、上述した引
例は全て、章動ボールと軸を、ある形態の運動を他に伝
動するための手段としてのみ用いている。引例のいずれ
も、内燃機関に使用されるチャンバを画定するために実
際の章動要素(即ち、ボール及びディスク、及び軸等)
を使用していない。
1963年にデイに授与された米国特許第3102517号は、
章動部材の概念で作動する章動ディスク型内燃機関を開
示している。ここでは、章動ディスク構造自体が、実際
の内燃機関サイクルの一体部分を成している。即ち、ボ
ールとディスクは、吸気、圧縮、燃焼及び排気の各チャ
ンバを画定している。デイにより開示された機関は、デ
ィスクを含む球面を取り囲んで支持するハウジングを備
えた内燃機関である。該ディスクは、チャンバを二つの
チャンバに分離し、単一のストップによりチャンバの二
つの半部を連通させている。球体とディスクが章動回転
すると、吸気、圧縮、燃焼及び排気用の各チャンバは、
軸を駆動するように相互作用する。デイにより開示され
た機関は、全体として、360゜毎に点火する。
デイにより開示された機関は、駆動軸を一本だけ備え
ている。従って、ボールと軸要素の質量中心は、ボール
の中心にない。本願に開示された章動機関と異なり、ボ
ールと軸の質量中心は常に移動しており、機関に余分な
応力をかけている。デイの引例はストップを一つだけ開
示しているので、デイの装置は二つ又は三つのチャンバ
を有する。更に、吸気及び圧縮はディスクの一方の側で
同時に行われ、膨張及び排気行程は、ディスクの他方の
側で行われる。従って、ディスクの両側で、一つの4行
程プロセスを完了する必要がある。
本発明の目的は、機関の各側で、吸気/圧縮チャンバ
を一つのチャンバに結合し、燃焼/排気チャンバを一つ
のチャンバに結合した、章動内燃機関を提供することに
ある。
本発明の他の目的は、各側で360゜毎に点火して、各
側の位相が180゜ずれた、内燃機関を提供することにあ
る。これにより、この内燃機関は、全体として180゜毎
に点火する。
本発明の他の目的は、吸気/圧縮と燃焼/排気用のチ
ャンバを合併して、内燃機関の寸法を減少することにあ
る。
本発明の他の目的は、チャンバを分割して、下側領域
の容積をディスクの両側で吸気/圧縮に用い、上側領域
の容積をディスクの両側で燃焼/排気に用いることによ
り、内燃機関の寸法を減少させることにある。
発明の概要 本発明は、円錐状の表面と中央に配設された球体とを
有するディスクを含む、章動内燃機関から成る。対称な
部分球形チャンバは、ディスクを収容するように構成さ
れ、中央に、球体を移動可能に係合させ、ディスクをチ
ャンバ内で章動させる軸受を有する。クランク軸はディ
スクの軸線上で球体内に回転可能に配設され、駆動軸は
チャンバの軸線上でチャンバの両側面に位置決め配設さ
れている。駆動軸は、ディスクの章動が駆動軸を回転さ
せるように、クランク軸に偏心的に固定されている。好
ましい実施例において、ディスクは、180゜離間して位
置決めされた二つの間隙を有する。チャンバは、チャン
バを吸気/圧縮部と燃焼/排気部とに分割して機関の各
側を360゜毎に点火させ全体として機関を180゜毎に点火
させるように、ディスクの間隙と整合する同数のストッ
プを有する。
また、本発明の他の実施例は、ストップの構成を異な
らせている。一構成例では、二つ以上のストップと間隙
が設けられている。別の構成では、180゜離間して整列
させた二つのストップの配置から他の角度にストップを
移動することを含む。即ち、180゜以外の位置へのスト
ップの移動は、ストップの上方と下方にそれぞれ大きい
チャンバと小さいチャンバを形成する。この構成例で
は、小さいチャンバに吸気及び圧縮部を形成し、大きい
チャンバに燃焼及び排気部を形成して、アトキンソンサ
イクルを実用的なものにしている。また、吸気/圧縮チ
ャンバを膨張/排気チャンバより大きくして、自己過給
サイクルを効果的に生成することができる。更に、この
構成は、ポンプ又は空気圧縮装置として使用することが
できる。
図面の簡単な説明 図1Aは、ボール及びディスク構造の側面図である。図
1Bは、ボール及びディスク構造の端面図である。図2A
は、図1Bに示したディスクの断面図である。
図2Bは、図1Aに示したディスクの断面図である。
図3は、ディスクの封止手段を示すディスク及びチャ
ンバの断面図である。
図4は、排気マニホールドを示す外側チャンバの平面
図である。
図5は、チャンバ内のボール、軸、及びディスク構造
の破断側断面図である。
図6は、図4の線6−6に沿った章動機関の断面図で
ある。
図7は、図4の線7−7に沿った章動機関の断面図で
ある。
図8は、図6の線8−8に沿った章動機関の断面図で
ある。
図9は、図6の線9−9に沿った章動機関の断面図で
ある。
図10は、図6の線10−10に沿った章動機関の断面図で
ある。
図11は、もう一つの排気ポートを示す章動機関の断面
図である。
図12は、図6に示したような分離状態で、空気取入及
び燃料噴射ストップを示す。
図13は、図9に示したような分離状態で、空気取入及
び燃料噴射ストップを示す。
図14は、機関内の種々のチャンバ、チャンバ部、領域
の構成を示す図である。
図14a乃至図14gは、二次チャンバを生成するための、
ディスクの移動支点効果を示すチャンバの断面図であ
る。
図14h、図14iおよび図14jは、機関が図14a乃至図14g
に示される段階を通じて回転するときの種々の領域の機
能を示す。
図15a乃至図15cは、異なる燃焼容積を示した図、及び
圧縮比を変更する電子制御装置のブロック図である。
図16aは、章動機関の単一の噴射器の実施例の配置を
示す。
図16a−1は、図16aに示された機関配置の燃料及び空
気取入のタイミングを示す。
図16bは、章動機関の希薄燃料噴射器の実施例の配置
を示す。
図16b−1は、図16bに示された機関配置の燃料及び空
気取入のタイミングを示す。
図17a乃至図17cは、機関を、定容燃焼サイクル、自己
過給サイクル、及びアトキンソンサイクルで作動させる
ための、ストップの種々の配置を示す。
図18は、協働するように連続して位置決めした多重章
動ディスク型内燃機関を示す。
好適な実施例の説明 本発明は、チャンバの二つの平行で平坦な壁と物理的
接触を行いつつ章動動作を呈する二分割円錐状ディスク
により可変容積を生成することができる、という力学原
理に基づいた内燃機関から成る。この単一の二分割円錐
状ディスク110が、出力発生要素である。対称的な形状
とチャンバの共有により、物理的空間を効果的に使用し
ている。この形状は、出力/重量比並びに出力密度を実
質的に増加させる一方で、燃料消費量を低減し得る可能
性を有する。
本明細書の全体を通じて、章動機関は、図5に示した
向きで言及されている。即ち、排気弁は機関頂部に位置
決めされ、駆動軸は機関の両側から横方向外側に延びて
いる。しかしながら、この向きは、機関の説明の一貫性
を維持する場合に限り、任意に選定した。機関が作動す
る向きはこの配置に限定されるものではなく、どんな向
きでも本発明の範囲内にある。
先ず、図1Aを参照すると、この図は、側面から見たボ
ール100とディスク110の配置を示す。ディスクの表面
は、平行ではなく、ディスク110を図1Bのように見たと
き明らかなように、円錐状になっている。間隙190及び1
92は、ディスクをディスク部120及び130に分割してい
る。これらの間隙190及び192は、分離した状態で図12及
び図13に示した後述の対応するストップ390及び480を収
容するように位置決めされている。好ましい実施例にお
ける間隙190及び192は、180゜離間させているが、図17
を参照して説明するように、他の角に位置決めしてもよ
い。章動機関のボールとディスクは対称であるので、ボ
ールとディスクの質量中心は、常に一定である。また、
章動ディスク型内燃機関は、質量中心が一定でクランク
軸にかかる応力が最小になるので、高毎分回転数(RP
M)で作動することができる。ストップを180゜離間させ
て位置決めしない場合は、質量中心が一定になるように
ディスク部の重量分布を調整することができる。更に、
別のチャンバを構成するように、任意の数の間隙を使用
してもよい。
次に、図1Bを参照すると、ボールとディスクの配置の
端面図が示されている。ボール100は、該ボールを取り
囲むディスク120及び130と共に示されている。クランク
軸200(図5に示す)は、開口部102を貫通してボールの
両面から外に延出している。クランク軸200は、ディス
クを含む面に垂直である。更に、第一の側面122と第二
の側面124とを有する上側ディスク部120と、側面132及
び134を有する下側ディスク部130とが示されている。デ
ィスク部の識別可能な縁部140は、後に図3を参照して
より詳細に説明する。最後に、上側右のストップ封止部
160と下側右のストップ封止部162が、ボール100からデ
ィスクの縁部140まで延びるディスクの内側縁部に沿っ
て図示されている。
次に、図2乃至図13を参照すると、これらの図はチャ
ンバ内に位置決めされたボール、軸、及びディスクの種
々の断面図を示す。図5は、チャンバ内における図1の
ボールとディスクの配置に対応した側面図を示す。図2
乃至図4に示した冷却及び潤滑装置並びに機関の外側チ
ャンバを、図5を参照して詳細に説明する。
図5に示した章動機関の一般構造について先ず説明す
ると、章動機関は、チャンバ300内に収容されたディス
ク部120及び130により外周を取り囲まれた、ボール100
を含んでいる。ディスク部は、ディスクの側面がチャン
バの壁と接触したときにチャンバの壁と接触線を形成す
るような円錐形状を有する。チャンバ300は、内燃機関
の応力に耐え得る適当な材料から形成される。ボール10
0は、二つのチャンバボール封止部308により、チャンバ
300内で封止されている。チャンバ(図5の部分322及び
352)からのガスの漏出を防ぐために設けた封止部308
は、ボールとディスクを除去したチャンバの断面図を示
す図11に、より明瞭に示されている。封止部308は、円
形であり、チャンバ300の外側に延出したボール100の部
分を封止する。
ボールとディスクの他に、チャンバ300は、ディスク
の間隙190及び192に嵌合される二つのストップ390及び4
80(図9に示し、更に図12及び図13には分離した状態で
示す)を含む。ストップ390及び480は又、機関内での燃
焼に必要な空気及び燃料も供給する。
章動機関の構造と作用についての以下の説明を一貫し
て且つ明確に行うために、機関内の種々のチャンバ、部
分、部を示すチャートである図14に示すように、チャン
バを、ボール及び該ボールに当接する二つのストップに
よって構成される上側チャンバ部分312と下側チャンバ
部分342に関して説明する。上側チャンバ部分は、下方
をボールとストップで囲まれた領域であり、両側を壁32
0及び330(図5)により、ストップの上方で部分球形チ
ャンバ310(図5)により画定される。下側チャンバ部
分は、上方をボールとストップで囲まれた領域であり、
両側を壁350及び360(図5)により、ストップの下方で
部分球形チャンバ340により画定される。
各チャンバ部分は、更に、図14に概略を示したよう
に、左チャンバ部と右チャンバ部とに分割される。即
ち、上側チャンバ部分312は、ディスク部120により右チ
ャンバ部322と左チャンバ部332とに画成される。同様
に、下側チャンバ部分342は、ディスク部130により右チ
ャンバ部362と左チャンバ部352とに画成される。最後
に、各チャンバ部は、吸気、圧縮、燃焼及び排気の各領
域を含む、連続的に変化する種々の領域に分割される
が、これについては、図14a並びに14gを参照して詳細に
説明する。
図8に示した排気ポート368乃至382は、二つの燃料/
排気部用に、上側チャンバ部分312の側壁320及び330に
沿って配設されている。同様に図8に示した排気弁422
乃至438は、排気ポート内に位置決めされている。4個
の排気弁を上側各部の側壁にそれぞれ設けているが、任
意の数の排気ポートを使用してもよい。好ましい実施例
において、排気弁は、従来技術で公知のように、カムを
介して作動する。しかしながら、排気弁を開閉するため
の他の適当な手段を使用してもよい。
クランク軸200は、ボールの両端に向けて延出する駆
動軸210及び220に、偏心的に取り付けられている。好ま
しい実施例においては、ディスクの両側で位相が180゜
ずれたサイクルを維持するために、スプライン230を設
けて、クランク軸200を駆動軸210及び220に固定してい
る。クランク軸を駆動軸に取り付けることにより、本発
明の構成は、歯車リンク機構を設ける必要性も除去す
る。軸受202は、ボール内に位置決めされて駆動軸まで
延びている。クランク軸200は、軸受202内に回動可能に
位置決めされる。好ましい実施例において、軸受はボー
ル100に固定された単一の円筒軸受である。図2A及び2B
に示したように、軸受202は、オイルをディスクからク
ランク軸まで通過させ得るように、ディスクオイル出口
180と整合した開口部203を有する。軸受は、従来技術で
公知の任意の適当な材料から形成される。
ボール及び軸受202内に配設されたクランク軸200は、
駆動軸の中心線に対して一定角度を成して位置決めされ
る。出力及びトルク要求量に応じて、機関内では10乃至
70゜の範囲の角度を使用し得るが、最適なクランク軸角
度は、10゜乃至30゜の間である。好ましい実施例におい
て、クランク軸は、20゜の角度に位置決めされている。
ディスク部分の壁部に作用する膨張ガスにより得られる
ボールとディスクの章動運動は、軸受202を介してクラ
ンク軸を駆動する。クランク軸200の動作は、クランク
軸200の中点から外側端部まで延びる線を考えると、よ
く分かる。クランク軸が中点を中心に回転すると、仮想
線は二つの円錐を生成し、この二つの円錐の頂点はクラ
ンク軸の中点で交わる。クランク軸200が回転すると、
二本の駆動軸210及び220を回転駆動させる。駆動軸の回
転軸線は、駆動軸の中心を通る線である。しかしなが
ら、単一の駆動軸を設けることも可能である。駆動軸に
取り付けられないクランク軸の端部は、軸受を介して機
関内で回転する。ボールと円錐状のディスクが章動する
と、ディスクとチャンバの壁部とにより構成される内燃
機関の各チャンバは、図14a乃至14gに詳細に示したよう
に、連続的に変化する。
章動型内燃機関の各チャンバを一般的に説明すると、
吸気及び圧縮サイクルは、機関の下側チャンバ部分342
内に機関の両側の部内でそれぞ生じる。一方、燃焼及び
排気サイクルは、機関の上側チャンバ部分312内の機関
の両側の部内でそれぞれ生じる。上側右部322と上側左
部332(図8に示す)のそれぞれの燃焼領域は、360゜毎
に点火して、内燃機関を180゜毎に点火している。後に
詳述する図14a乃至14gに示したように、ディスクの位置
に応じて、上側チャンバ312内には2つ又は3つの領域
が存在し、下側チャンバ342内には2つ又は3つの領域
が存在する。これらの領域は、内燃機関の各側で、機関
の4つのサイクルに使用される。
更に図5のチャンバを参照すると、ディスク部120の
表面122に隣接したチャンバ部は、燃焼/排気用のチャ
ンバ部322を形成する。図示された排気ポート374は、上
側右チャンバ部322内の排気サイクルを通じて排気用の
出口を構成する、ポートの一つである。章動体がその全
移動範囲に亘り回転すると、上側チャンバ部312内には
第二の上側チャンバ部が生じる。即ち、ディスク部120
の壁124と、排気ポート382を含む壁330との間には、第
二の上側燃焼領域が形成される。この左側の上側チャン
バ部は、右側の上側チャンバ部と同一であり、右側から
180゜位相がずれて点火する。
図5に示した下側左チャンバ部352は、ディスク130の
壁部134と下側チャンバ部分の外側壁部350とにより画定
されている。下側左チャンバ部352は、吸気/圧縮部で
ある。章動体がその全移動範囲に亘り回転すると、下側
チャンバ部分342内には、第二の下側右チャンバ部362
(図10に示す)が生じる。上側チャンバ部分312又は下
側チャンバ部分342内に2つ又は3つの領域が存在する
こと、並びにこれらの領域が連続的に変化することにつ
いては、図14a乃至図14gの説明を通して詳細に述べる。
以下、図示した冷却装置を説明すると、図2と共に図
5は、機関内に一連の流体通路を示す。即ち、図2Aは、
図1Bの線B−Bに沿ったディスクの断面を示す。ボール
部の右側には、ディスク流体入口170が図示されてい
る。好ましい実施例において、流体は、ディスク部間の
間隙190内に位置決めされた燃料噴射ストップ480(図13
に示す)を介して、ボール及びディスク内に導入され
る。しかしながら、燃料を噴射するための他の適当な位
置又は手段を、採用してもよい。ディスクの冷却及び潤
滑用に任意の適当な流体を使用し得るが、オイルの使用
が好ましい。入口170は、流路アイランド174の周りを縫
うように延びる一連の冷却流路172に連通する。一連の
冷却流路は、ボールの左側付近でディスク流体出口180
に収束する。図2Bは、図1Aの線A−Aに沿ったボールと
ディスクの断面を示す。冷却流路172とアイランド174と
が図示されている。ディスク流体出口180は、流体溜め1
79と直接連通しており、図5のクランク軸内に位置決め
された流体通路181を介して、流体を流体出口通路182ま
で通している。流体出口通路182は、流体を駆動軸内の
流体出口184まで通している。次に、流体は冷却され、
従来技術で使用される適当なオイルポンプにより、燃料
噴射ストップのオイル入口部に再循環される。
次にチャンバ内のボールとディスクの封止について説
明すると、章動ディスク内燃機関は、4つの主な封止部
を有する。先ず、封止部308により、ボールをチャンバ
内に封止する。封止部308、チャンバから延出するボー
ルの部分でチャンバを封止するようにチャンバ内に位置
決めされた、二つのリングシールから成る。これらの封
止部は、ボールとディスクを除去した図11にも見ること
ができる。機関は、ボールに当接するストップ390及び4
80の端部上に位置決めされた、別の封止要素400を有す
る。図11には、空気吸入ストップ390の封止部が示され
ている。燃料吸入ストップの封止部は、空気吸入ストッ
プの封止部と同一である。
残りの封止要素は、ディスク部120及び130の周りに位
置決めされている。これらの封止部は、上側及び下側チ
ャンバ部分内のいずれのチャンバ部からもガスを流出さ
せないように、使用されている。図2Aには、ディスクの
縁部に沿って位置決めされてストップと接触する、スト
ップ封止部160乃至166が示されているが、これについて
は後述する。また、図3は、ディスクの縁部とチャンバ
の球面の一部との間に位置決めされた一対の封止部148
と158を含む円錐状ディスクの断面を示す。これらの封
止部は、ディスクの外縁部の封止要素とチャンバの球状
壁部との間に流体を維持するように封止要素に圧力を加
える、二つのCリング152及び162を含む。ディスクから
の流体は、ディスク内の冷却流路172から通路143を介し
て流体溜め144に移動し、通路145を介して復帰する。こ
の流体は、封止部の潤滑と冷却を行う。
封止部148及び158を含む封止装置は、ディスク部120
が壁部310に沿って右方向に移動すると、壁部124上の高
圧領域は封止部158にも作用して封止部158を右方向に付
勢し壁部142に当接させる、という原理で作用する。同
様に、比較的高圧の領域は、壁部122に沿った右方向へ
のディスクの移動と共に、封止部148を左方向に付勢す
る。その結果、この独特な封止装置は、流体を流体溜め
144内に維持して十分な封止と潤滑を達成する。
次に図4を参照すると、この図は、章動型内燃機関の
外側チャンバを示す。機関の頂部には、排気マニホール
ド302及び304が示されている。空気軸398に連通する空
気取入口396も図示されている。燃料噴射部は、機関の
反対側に全体が図示されている。即ち、後に詳述する燃
料噴射装置は、機関の両側に連通するアキュムレータ通
路502を有するアキュムレータ500を含む。アキュムレー
タ通路502は、アキュムレータからの圧縮空気をプレチ
ャンバ484及び494(図9に示す)内に噴射する、右側の
空気噴射器532と左側の空気噴射器552とに連通してい
る。更に、章動型機関は、右側の燃料噴射器536と、左
側の燃料噴射器556とを含む。駆動軸210及び220は、機
関の両側から延びている。
次に図6を参照すると、図6は線6−6に沿った図4
の断面である。空気通路398を有する空気取入れ口396
は、図の頂部に全体が示されている。空気は、空気取入
口から入り、機関内のチャンバを通って反時計方向に流
動する。機関内の空気の流れは、図14a乃至14gを参照し
て、後に詳述する。圧縮空気は、アキュムレータ供給通
路501(図7に示す)を介してアキュムレータ500に供給
され、圧力弁504を経てアキュムレータ通路502を流動す
る。後述するように、燃料は、燃料噴射器556から噴射
され、プレチャンバ内で、アキュムレータから充填され
た空気と混合される。充填された空気と燃料は、プレチ
ャンバ内でスパークプラグ554により点火される。燃焼
と排気は、一般に、弁432乃至438の全体を図示した、チ
ャンバの右半部内で行われる。
次に、線7−7に沿った図4の断面図である図7を参
照すると、図7は、機関の頂部の略近くに空気通路398
を有する通気取入口396を示す。空気は、取入口及び圧
縮部を通って、アキュムレータ供給通路501まで時計方
向に流動する。アキュムレータ供給通路501は、取入口
及び圧縮部からの空気をアキュムレータ500に供給す
る。一般に、アキュムレータからの圧縮空気は、プレチ
ャンバ内で燃料と混合される。燃料噴射装置は、図示し
たように機関の左側に全体が位置する燃焼部に、燃料を
供給する。排気弁368乃至374及び排気出口302も、この
断面図に示されている。
図7は又、章動機関の空気搬送装置も示している。下
側右チャンバ部のいずれかの部分の圧縮チャンバからの
圧縮空気は、ディスクの各側の下側右チャンバ部から、
アキュムレータ供給通路501を介して、アキュムレータ5
00まで搬送される。ディスクの各側は、クランク軸が36
0゜回転する毎に、一定容量の圧縮空気をアキュムレー
タ内に供給する。各側は、位相が180゜ずれているの
で、アキュムレータはクランク軸が180゜回転する毎に
1回の充填を受ける。一定容量の圧縮空気は、機関の所
要の圧縮比に基づいた所定の圧力で、アキュムレータ50
0内に蓄積される。アキュムレータは機関からの任意の
回数の充填を収容し得る寸法を有することができるが、
充填空気が圧力領域からアキュムレータへ更にはアキュ
ムレータから燃焼領域へと搬送されるので、アキュムレ
ータ内の圧力変動を最小限にするために、アキュムレー
タは十分な回数の充填を収容し得ることが望ましい。
最初の始動時には、アキュムレータ500と空気噴射弁5
32との間に、可変圧力弁504を設定している。圧力弁
は、アキュムレータがその作動圧力を達成するまで閉じ
たままである。作動圧力が達成されると、可変圧力弁50
4は開いて圧縮空気を空気噴射弁まで流動させる。空気
噴射弁は、カム又は他の適当な機構を介して、作動させ
ることができる。好ましくは、電子制御装置により作動
するソレノイド弁を使用する。空気噴射弁が開くと、空
気はストップのプレチャンバ内に充填される。図14a乃
至図14g及び図15により詳細に示したように、燃焼チャ
ンバが膨張し始めると、圧縮空気は、プレチャンバ内に
更には膨張している燃焼チャンバ内に流入する。このイ
ンタバル中、要求量の燃料も供給される。プレチャンバ
内の容量と燃焼チャンバ内の容量とを合わせたものが噴
射空気充填量に等しくなると、空気噴射弁は閉まる。燃
焼を開始させるために点火を行う 次に図8を参照すると、章動機関の平面図が示されて
いる。この視点からは、ディスク部分120のみが見え
る。この図のディスク部分120の位置は、ディスク部分1
20が上側チャンバを3つの領域に分割している、ことを
示している。即ち、領域334と領域336とに分割された左
側チャンバ部332が構成されている。同様に、右側チャ
ンバ部322は、領域326として示されている。上側表面12
2の接触線316は、排気ポート380と一致している。
ボール100及びディスク部分120が章動すると、接触線
316はその位置を変えて種々の領域に対するチャンバ容
量を画定する。接触線316がストップのいずれかの縁部
に達する特定の位置では、上側チャンバには二つの領域
だけが構成される(図14aに示す)。即ち、上側チャン
バ312の右側には領域322を画成し、上側チャンバ312の
左側には領域332を画成しており、ディスク部120は、上
側チャンバ312を横切る対角面を構成する。ボールとデ
ィスクが章動しながら移動し続けると、接触線316は壁3
30に沿って移動し、接触線を有する側には二つの領域を
形成し、接触線を有しない側には一つの領域を形成す
る。
機関の一方の側で、吸気及び圧縮領域が単一のチャン
バ部に結合され、燃焼及び排気領域が単一のチャンバ部
に結合されるので、好ましい実施例においては、一つの
章動内燃機関は、二つの燃焼領域を有する。図8に示し
た燃焼領域がそれぞれ360゜毎に点火することにより、
章動内燃機関は全体として180゜毎に点火することがで
きる。
更に、本発明は、二つの側の位相を180゜ずらして作
動させることにより、章動機関の左チャンバ部と右チャ
ンバ部との間で容積を共有している。即ち、上側左領域
332は領域336内の燃焼段階と領域334内の最終排気モー
ドとを含み、両者は上側チャンバ部分312内で小さな容
積を占めている。同時に上側右部分322は最初の排気モ
ードにあり、上側チャンバ部分312の大きな容積を占め
ている。チャンバを分割して二つの側の位相を180゜ず
らすことにより、効率を大幅に高めつつ、章動内燃機関
の寸法と重量を大幅に減少することができる。
図8には、上側チャンバ用の排気ポートも示されてい
る。即ち、右側チャンバは、壁部320に沿って位置決め
された排気ポートを示す。これらの排気ポートは、開放
位置にある。左側壁部330に沿って位置決めされた排気
ポートは、全て閉鎖されている。排気に際して弁は全て
同時に開くが、接触線の直前で順々に閉じる。好ましい
実施例において、弁は、駆動軸に取り付けたカム240を
介して、作動する。本章動機関の特有の構成により、排
気弁に利用可能な壁部320及び330の面積を実質的に大き
くしている。即ち、章動内燃機関においては、ボール及
びディスクの章動につれてチャンバの大きさが変化する
ので、排気ポートに対し大きな表面積を確保することが
できる。この特徴により、平均的な容積式機関と比べて
ポンプ損失が減少する。
更に、章動機関は、ワンケルロータリエンジンの長く
て狭いチャンバと比較して火炎先端に拘束されることが
ない、球状三角形の開いた燃焼チャンバを構成すること
により、燃焼チャンバ特性を改善している。また、円錐
状ディスクが平坦なチャンバプレートと物理的に接触し
て画定される線は、相対的に滑っていく。この動作は、
拭き取りを行い得るので、有益である。即ち、この動作
により、燃焼及び排気中に表面に堆積した材料の拭き取
り動作を構成する。
次に図9を参照すると、図9は、特有の燃料噴射装置
を有する章動機関の断面図を示す。燃料噴射装置は、燃
料噴射ストップ480、アキュムレータ500、アキュムレー
タ供給通路501(図7に示す)、アキュムレータ出口通
路502、圧力弁504、燃料噴射器536及び556(図8に示
す)、空気噴射弁532及び552、及びスパークプラグ534
及び554を含む。即ち、燃料噴射装置は、機関からの圧
縮空気を蓄積するアキュムレータ500を有する。好まし
い実施例における燃料噴射装置の右側を説明すると、空
気は、カム作動空気噴射弁532を介して、プレチャンバ4
84内に供給される。しかしながら、油圧弁を含め、プレ
チャンバに空気を供給し得る任意の手段を使用できる。
右側燃焼チャンバに言及すると、燃料は、図8に示した
燃料噴射器536を介して、プレチャンバに供給される。
同時に、空気噴射弁が開いて、混合気をプレチャンバに
導入する。次に、スパークプラグ534により、この充填
物を点火する。空気及び燃料の噴射のタイミングは、図
16Aを参照して後に詳述する。
次に図10を参照すると、図10は、下側右チャンバ部36
2と下側左チャンバ部352とを含む、章動機関の底面図を
示す。章動ディスク内燃機関は、好ましくは二つのスト
ップを有するが、別のストップを追加してもよい。図10
には、ストップ390内の、吸気部ポート394と空気通路39
6とから成る空気取入口が示されている。空気取入口ス
トップ390は、章動しつつ空気取入口を横切るディスク
の位置に応じて、空気を機関の両側に選択的に供給す
る。章動内燃機関は、吸気サイクル用の機械的弁要素を
含まない。ディスク部130の下側縁部と接触するチャン
バストップの側面は、特に、該チャンバストップの側面
が平面である場合には相当大きくなるストップ封止部の
角移動を、最小限にするように形成してもよい。
即ち、図10に示したディスク部130とボール100の場
合、接触線346は、壁部360に沿ったチャンバの略中央に
位置決めされている。ディスク部130は、下側チャンバ
内に、吸気及び圧縮領域であるチャンバ部を画成する。
即ち、チャンバの左側に示された下側左チャンバ部は、
圧縮空気をアキュムレータ500(図4)に供給する吸気
領域を構成する。右側に図示された下側右チャンバ部36
2は、壁表面360上の接触線346により、吸気領域364及び
圧縮領域366として構成される。圧縮サイクルで空気を
圧縮した後、この圧縮空気は、アキュムレータに搬送さ
れ更にはプレチャンバに供給されるが、これについては
図14を参照して後に詳述する。
次に図11を参照すると、図11は、排気装置の別の実施
例を示す。即ち、図11に示したような僅かな変形を通し
て、排気弁の幾つかの代わりに、チャンバの球面上に単
一のポート402又は多数のポートを設けることができ
る。ポート402の位置は、ストップのハウジングとの接
触面に隣接している。特に、図11では、ボールとディス
クの構成が省略されて示されている。ストップの位置の
上に、単一の排気ポートが図示されている。従って、単
一のポートが二つの排気チャンバに共用されることにな
る。好ましい実施例においては、単一の排気ポート368
及び376が側壁に沿って残されており、ディスクが排気
ポートを横切った後、排気チャンバ内に残っている残留
ガスを排気している。一般的なポートの形状は、球状ハ
ウジングを横切るディスクの章動動作により形成される
形状を利用するために、球面に含まれる球面三角形であ
る。大きさは、燃焼サイクルを最大化すると共に排気サ
イクルの効率を妨げない程度のものとする。図11におい
て、ボールとチャンバを封止する封止部308と、ボール
に対して空気ストップを封止する空気ストップ封止部40
0が明示されている。ボールに対して燃料噴射ストップ
を封止するために、燃料噴射ストップ上に、同様の封止
手段を設けてもよい。
次に図12及び図13を参照すると、これらの図は、異な
る断面図から分離した二つのストップを示す。図12は、
空気を空気通路398に導入する空気取入口ストップ390の
空気取入口396の全体を示す。空気軸内の空気は、前進
して機関内の空気取入ポートを通って空気チャンバに入
る。図12には、図9で既に説明した燃料噴射ストップ48
0も示されている。図12のストップは、ボールとディス
クの間隙内に位置決めされている。図9で説明した燃料
噴射装置の断面図を示す図13にも、燃料噴射部が示され
ている。
様々な断面図から章動機関を見てきたが、各チャンバ
の向きと相互作用は、図14a並びに図14gの説明から明ら
かである。種々のチャンバ、チャンバ部、及び領域を説
明する図14のチャートを参照すると、下側左チャンバ部
352と上側左チャンバ部332とは、4つのサイクルがそれ
ぞれ生じる機関の一方の半部を形成する。更に、下側右
チャンバ部362と上側右チャンバ部322とは、同様に4つ
のサイクルがそれぞれ生じる機関他方の半部を形成す
る。従って、本願の単一の章動ディスク型内燃機関の動
作は、点火回数の観点から、2ロータ式ワンケルロータ
リエンジン又は4サイクル4気筒容積式機関と同等であ
る。しかしながら、章動ディスク型内燃機関は、大きさ
と重量が大幅に減少され、比肩し得る4気筒容積式機関
の4本の点火プラグに対して、2本の点火プラグのみを
必要とする。
次に、図14における種々のチャンバ、チャンバ部及び
領域を示すチャートと共に説明した図14a乃至図14gを参
照すると、図14a乃至図14gは、章動機関の一連の動作を
示す。図14a乃至図14gは、クランク軸が種々のクランク
軸角を経て回転するとき、同時刻における上側チャンバ
部分312及び下側チャンバ部分342内のディスクの位置を
示す。即ち、クランク軸が90゜の間隔で合計540゜回転
するとき、図14a乃至14gの上半部は上側チャンバ部分31
2に対応し、下半部は下側チャンバ部分342に対応する。
各サイクル(即ち、吸気、圧縮、燃料及び排気)は、27
0゜継続する。また、この配列により、機関は180゜毎に
点火される。上側右チャンバ部322及び上側左チャンバ
部332における燃料及び排気サイクルの全体を見ること
ができ、且つ、下側右チャンバ部362及び下側左チャン
バ部352における吸気及び圧縮サイクルの全体を見るこ
とができるように、540゜全体に亘る回転が図示されて
いる。しかしながら、章動ディスクのサイクルが360゜
毎に反復されるのは明らかであり、540゜の回転は単に
便宜上図示されたに過ぎない。図14a乃至図14gの下方の
説明表は、各領域の状態を示す。
上側チャンバの動作も下側チャンバと共働して行われ
るので、一方の下側チャンバの吸気及び圧縮により、圧
縮空気が上側チャンバの出力及び排気行程に供給され
る。即ち、図14aは、上側チャンバ部分312の対角面上に
位置決めされた上側ディスク部120を示し、クランク軸
の位置は、任意に0゜に位置決めされて、上側右チャン
バ部332と上側左チャンバ部322とを構成している。クラ
ンク軸位置が0゜のとき、上側右チャンバ部322は、上
側右排気領域326を構成し、上側左チャンバ部332は上側
左出力領域334を構成する。
図14aは、更に、下側チャンバ部分342の対角面上に位
置決めされた下側ディスク部130を示し、クランク軸の
位置は0゜であり、下側右チャンバ部362と下側左チャ
ンバ部352とを構成している。クランク軸位置が0゜の
とき、下側右チャンバ部362は下側右吸気領域364を構成
し、下側左チャンバ部352は下側左圧縮領域356を構成す
る。
クランク軸が90゜回転すると、上側ディスク部120は
図14bに示した位置に移動する。このとき、ディスクの
縁部122は、上側チャンバ右側壁320に対して接触線316
を形成する。接触線316は、上側右出力領域324と上側右
排気領域326とを形成する。接触316の移動に伴い、ディ
スクは容積が連続的に変化するチャンバ部を構成する。
上側左チャンバ部332では、上側左出力領域334のみが存
在している。出力行程は出力領域334がその最大容積に
達すると終了し、排気位相が開始される。
同時に、下側ディスク部130は図14bに示した位置に移
動する。ディスク130の縁部は、下側チャンバ左側壁350
に対して接触線346を形成する。接触線346は、下側左半
部吸気領域354と下側左半部圧縮領域356とを形成する。
接触線346が移動すると、下側ディスク部130は、連続的
に変化するチャンバを画定する。圧縮空気は、アキュム
レータに供給されつつあり、点火前の燃焼位相(図14
(C))の間に上側チャンバ内に導入されることにな
る。燃焼チャンバにおける点火のタイミングは、図15を
参照して後に詳述する。下側右チャンバ部362において
は、ただ一つの下側右吸気領域364だけが存在する。吸
気行程は下側右領域364がその最大容積に達すると終了
し、圧縮位相が開始される。
図14cに示すように、クランク軸が更に90゜(合計180
゜)回転すると、ディスク部120は、再び上側チャンバ
部の対角面上に位置決めされ、二つのチャンバだけを構
成する。即ち、右側の出力サイクルが続くとき、上側右
側排気領域326は消失し、上側右出力領域324がより大き
くなる。上側左チャンバ部では、上側左排気領域336の
みが存在する。排気領域336は、左チャンバ部が排気し
続けると、小さくなる。なお、上側チャンバ左側壁330
上に位置決めされた弁は、ディスク部120が章動し続け
ると、接触線316の前方で順次閉じ始める。
この時点で、下側ディスクは再び下側チャンバの対角
面上に位置決めされ、二つのチャンバだけを構成する。
即ち、右側の圧縮サイクルが続くと、下側右吸気領域36
4が消失し、下側右圧縮領域366が小さくなる。下側左チ
ャンバ部では、下側左吸気領域354のみが存在する。こ
の領域は、下側ディスクが吸気ポート394を通過して左
チャンバ部が吸気を続けると、大きくなる。図14dに示
したようにクランク軸が270゜の回転を達成すると、上
側右チャンバ部322は、出力行程の終了時にあるが、ま
だ、単一の上側右出力領域324のままである。この時点
で、弁はちょうど開き、上側右チャンバ部の排気行程が
開始される。上側左チャンバ部では、接触線316は上側
左側壁330に沿って形成されている。接触線316は、上側
左チャンバ部332における出力行程中に形成され始め
る、上側左出力領域334を画定する。出力行程が始まり
上側左出力領域334が膨張し始めると、上側左排気領域3
36は、排気位相が終了に向かうにつれて小さくなる。弁
は、排気位相が終了に向かうとき、順次閉じ始める。
270゜の回転で、下側左チャンバ部352は、吸気行程の
終了時にあるが、まだ、単一の下側左吸気領域354のま
まである。この時点で、下側左チャンバ部の圧縮行程が
始まる。次に、下側右チャンバ部においては、接触線34
6は、下側右側壁360に沿って形成される。接触線346
は、下側右チャンバ部362における吸気行程中に形成さ
れ始める、下側右吸気領域364を画定する。吸気及び圧
縮行程が続くと、下側右吸気領域364は下側右領域にお
ける吸気が続く中で大きくなり、下側右圧縮領域366は
圧縮位相が終了に向かうにつれて小さくなる。圧縮ガス
は、アキュムレータ内に供給され、更に点火前の燃焼位
相の間に上側チャンバに導入される。
図14eに示したように、クランク軸の回転が360/0゜の
位置に達すると、上側ディスク部120は対角面上に位置
決めされるが、これは0゜と同じ位置である。この時点
で、右側の全出力サイクルが完了する。同様に、下側デ
ィスク部130は、対角面上に位置し、0゜と同じ位置に
くる。この時点で、左側の全吸気サイクルが完了する。
図14f及び図14gは、クランク軸角がそれぞれ450゜と540
゜の章動機関を示す。これらの図は、上側の各チャンバ
部における全出力サイクルと全排気サイクルを、下側の
各チャンバ部における全吸気サイクルと全圧縮サイクル
を示すために、便宜上表したものである。
章動機関の重要な利点の一つは、出力行程の部分的重
複にある。出力行程の部分的重複は、図14cと図14dに見
ることができる。図14cにおいて、上側左出力領域334は
生じ始めており、上側右出力領域324は既に存在してい
る。図14dにおいて、チャンバ全体が上側左排気領域336
になろうとしているとき、上側左出力領域334は既に存
在し、上側右出力領域324はちょうど終結しようとして
いる。この出力の重複の度合いは、後述するように、ス
トップの位置に応じて変化させ得る。
図15A乃至図15Cは、機関のハードウェアを著しく変更
することなく、いかに圧縮比を変えることができるかを
示す。より重要なことは、機関の作動中に圧縮比の変更
を行い得ることである。圧縮比の変更は、(1)アキュ
ムレータ内の空気の圧力を変え、(2)燃焼チャンバの
容積を画定するディスクの接触線の位置を変え、(3)
空気噴射弁の噴射動作、燃料噴射及び燃焼段階での点火
のタイミングを変える、ことにより行われる。これらの
変更は、電子制御装置により制御される。
即ち、アキュムレータ内の圧力の変更は、電子制御装
置により制御可能な可変圧力弁を用いて行われる。更
に、電子制御装置は、点火のタイミングと共に、燃焼チ
ャンバとプレチャンバの合計容積を制御することができ
る。図15(A)及び図15(B)は、異なる大きさの燃焼
チャンバ領域を画定する、それぞれ異なった接触線の位
置(斜線部)を示す。圧縮比が可変であることは、混焼
性を考えると重要である。このような混焼性は、軍用を
含め、多くの分野で有用である。
図15(C)のブロック図を参照すると、電子制御装置
は、特定の圧縮比に対してアキュムレータ内で必要とさ
れる圧力を決定する。その圧力が達成されていない場合
は、可変圧力弁が閉じる。該圧力が達成されると、可変
圧力弁は開く。電子制御装置は又、クランク軸角に基づ
いて、接触線の位置も決定する。接触線が所要のクラン
ク軸角に達すると、空気噴射器は閉じ、スパークプラグ
が発火して燃焼を開始する。
図16(A)は、図9に示したような、章動機関の単一
の噴射器の実施例に空気と燃料を供給するタイミングを
示す。即ち、図16(A)は、クランク軸角の関数として
の燃料及び空気の給気を示す。例えば、右側部分を説明
すると、燃料は、一定のクランク軸角の回転により表さ
れる所与の時間、噴射器536を介して給気される。一
方、空気は、空気噴射弁532を開くことにより、給気さ
れる。クランク軸が特定の圧縮比に対して必要な角を達
成すると、空気噴射弁は閉じて機関が点火する。図16
(B)は、右側部分に層状給気を形成するために使用す
る、別の希薄燃料噴射器540を有する図16(A)の実施
例を示す。噴射器540からの燃料は、空気噴射器内の空
気流に添加され、一方、空気はプレチャンバに噴射され
て一定のクランク軸角の間、希薄混合気を形成する。点
火に先立ち、更に一定量の燃料を濃燃料噴射器536を用
いて添加し、プレチャンバ内に濃混合気を形成する。こ
の添加された燃料は、プレチャンバ内に濃混合気を形成
する。この方法により、燃焼チャンバ内に層状給気が形
成される。次に、層状給気は、スパークプラグ534によ
り点火される。層状給気は、より効果的な燃焼を考慮し
ているために有益である。
図17は、ストップ390及び480を位置決めする種々の実
施例を示す。即ち、ストップの位置に応じて重複の程度
は変化する。これらの場合を説明する。ストップがチャ
ンバの周囲に対称的に位置決めされて上側と下側のチャ
ンバの容積を等しくしている第一の場合は、この状況下
の重複は、90゜からストップの弧の厚さの1/2を引いた
値により決定される。例えば、ストップの弧の厚さを20
゜とすると、重複は、等式90−1/2(20)=80゜により
表される。アトキンソンサイクルが使用される図17bに
示した第二の場合、重複の程度は、90゜より大きい。即
ち、アトキンソンサイクルにおいて、吸気及び圧縮には
小さい方のチャンバが使用され、燃焼及び排気には大き
い方のチャンバが使用される。出力及び効率における正
味の増加は、所与の給気量の混合気が点火されてストッ
プの対称配置(等容積)で達成される以上に膨張するこ
とにより、得られる。最後に、図17cに示した第三の場
合は、自己過給構成と呼ばれ、燃焼及び排気には小さい
方のチャンバが使用され、吸気及び圧縮には大きい方の
チャンバが使用される。この場合、燃焼/排気行程の重
複は、aをストップの弧の厚さとすると、最大90−1/2
(a)である。出力の正味の増加は、ストップの対称配
置(等容積)で通常得られる以上に混合気の給気量が大
きい結果であり、給気量が大きいことに起因する高圧に
より達成されるものである。
これまで開示した機関の他に、章動構造をポンプとし
て使用することも考えられるが、これは、本発明の当然
の拡張である。このポンプの重要な特徴の一つは、ポン
プを作動させる手段が二つ設けられていることにある。
即ち、第一の手段は機械的ポンプであり、これにより駆
動軸を、章動ディスクを駆動するために使用している。
そのとき、チャンバはポンプとして機能する。ポンプを
作動させる第二の手段は、チャンバの一つを駆動チャン
バとして使用することであり、これにより他のチャンバ
を被動チャンバとして機能させている。駆動チャンバと
して上側チャンバを使用し、ポンプチャンバとして下側
チャンバを使用することも可能であり、また、駆動チャ
ンバとしてポンプの左側(上側及び下側と左チャンバ)
を使用し、ポンプチャンバとしてポンプの右側(上側及
び下側の右チャンバ)を使用することも可能である。ま
た、ポンプに関しては、容積を変えつつ多重出力を達成
するために、対称配置のストップや多重配置のストップ
を使用することもできる。従って、いろいろな大きさの
容積や種々の流体を汲み上げたり混合したりするために
多重チャンバを使用することができる。
更に、この構造を圧縮装置として使用してもよい。ス
トップを対称配置した場合は、単段圧縮装置が得られ
る。ストップを非対称配置で使用した場合は、大きい方
の容積を給気及び圧縮に使用し、小さい方の容積を第二
段圧縮装置として使用する。即ち、第二のチャンバの容
積がアキュムレータの容積と同じである多段圧縮装置と
して使用することができる。アキュムレータからの圧縮
された空気を第二のチャンバで再び圧縮することによ
り、多段圧縮装置を形成する。
以上、章動機の好ましい構造を説明してきたが、本発
明から逸脱することなく種々の変更が可能である。例え
ば、機関ユニットを結合させて大きな出力を得るよう
に、多重機関ユニットを設けてもよい。これらの理由に
より、添付図面を参照して説明してきた章動機関の特徴
は、例示を目的としたものであり、限定的なものではな
い。従って、本発明の範囲を確定するにあたり、添付請
求の範囲を参照する必要がある。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02B 53/00 F01C 3/06 F01C 9/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円錐状の表面を有して中央に球体(100)
    を配設した章動ディスク(110)と、 前記ディスク(110)を収容するように構成されたチャ
    ンバ(300)であって、前記球体(100)を移動可能に係
    合させ、チャンバ(300)内でディスク(110)を章動さ
    せる軸受を中央に有するチャンバ(300)と、 前記ディスク(100)の軸線上で前記球体内に回転可能
    に配設されたクランク軸(200)と、 前記チャンバ(300)の軸線上で前記チャンバ(300)の
    両側面に位置決め配設された駆動軸(210、220)であっ
    て、前記ディスク(110)の章動が前記駆動軸(210、22
    0)を回転させるように、前記クランク軸(200)に偏心
    的に取り付けられた駆動軸(210、220)と、を備えた章
    動ディスク型内燃機関であって、 前記ディスク(110)が複数の間隙(190、192)を有
    し、前記チャンバ(300)が前記間隙(190、192)と整
    合した複数のストップ(390、480)を有する章動ディス
    ク型内燃機関において、 前記チャンバ(300)が、該チャンバ(300)の軸線を中
    心とした対称的な部分球形を有し、前記ストップ(39
    0、480)が、前記チャンバ(300)を吸気/圧縮部(34
    2)と燃焼/排気部(312)とに分割し、前記ディスク
    (110)が、前記吸気/圧縮部(342)を二つの領域(35
    2、362)に分割する第一の部分(130)を有すると共
    に、前記燃焼/排気部(312)を二つの領域(322、33
    2)に分割する第二の部分(120)を有し、 前記ストップ(390、480)のうち少なくとも一つ(48
    0)が、少なくとも一つのチャンバ部(312)に燃料を供
    給するための少なくとも一つのポートを有する、 ことを特徴とする章動ディスク型内燃機関。
  2. 【請求項2】前記ストップのうち少なくとも一つが、前
    記チャンバの少なくとも一つのチャンバ部に空気を供給
    するための空気取入手段を有する、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  3. 【請求項3】前記ストップの一つが、前記ディスクを潤
    滑して冷却するために前記球体及びディスクに流体を搬
    送するための通路を有する、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  4. 【請求項4】吸気/圧縮部からの圧縮空気を蓄積するよ
    うに構成されたアキュムレータと、 プレチャンバと、蓄積された圧縮空気を前記プレチャン
    バに噴射する手段と、燃料を前記プレチャンバに噴射す
    る第一の手段と、混合気を点火する手段と、を含む燃料
    噴射装置を更に備えた、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  5. 【請求項5】更に、前記アキュムレータ内の空気の圧力
    と、前記燃焼/排気部内の燃焼領域の容積と、前記混合
    気を点火する前記手段の点火のタイミングと、を監視す
    るための制御手段を備えた、 ことを特徴とする請求の範囲第4項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  6. 【請求項6】前記対称的な部分球形のチャンバが、前記
    駆動軸に垂直に配設された平坦な表面を備え、前記平坦
    な表面が該平坦な表面に配置された排気ポートを有して
    いる、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  7. 【請求項7】前記章動ディスクが、該ディスクの外縁部
    に位置決めされた第一の封止手段を有し、該第一の封止
    手段が前記チャンバと接触する前記ディスクの湾曲縁部
    に沿った二つの封止部から成る、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  8. 【請求項8】前記第一の封止手段が、前記ディスクの外
    縁部に沿った二つのCリングを含み、それにより、前記
    Cリングが前記封止部を付勢して、前記ディスクとチャ
    ンバ壁部との間の流体密を維持している、 ことを特徴とする請求の範囲第7項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  9. 【請求項9】吸気/圧縮部の容積が前記燃焼/排気部の
    容積より小さくなるように、前記間隙が、60゜乃至180
    ゜の角度で離間して位置決めされ、 前記球体とディスクが章動するとき、静止した質量中心
    を維持するために、前記ディスクが非対称である、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
  10. 【請求項10】吸気/圧縮部の容積が前記燃焼/排気部
    の容積より大きくなるように、前記間隙が、60゜乃至18
    0゜の角度で離間して位置決めされ、 前記球体とディスクが章動するとき、静止した質量中心
    を維持するために、前記ディスクが非対称である、 ことを特徴とする請求の範囲第1項記載の章動ディスク
    型内燃機関。
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