JP3389515B2 - 蓄積リングへのビーム入射方法及び装置 - Google Patents

蓄積リングへのビーム入射方法及び装置

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JP3389515B2 JP33730898A JP33730898A JP3389515B2 JP 3389515 B2 JP3389515 B2 JP 3389515B2 JP 33730898 A JP33730898 A JP 33730898A JP 33730898 A JP33730898 A JP 33730898A JP 3389515 B2 JP3389515 B2 JP 3389515B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蓄積リングへのビ
ーム入射方法及び装置に係り、特に、産業用電子蓄積リ
ング(以下SRリングと称する)のように、例えば周長
Lが20m以下の小型であることを特徴とするSRリン
グに用いるのに好適な、蓄積ビームが周回中の閉軌道の
一部に摂動磁場を加え、入射軌道に変位させてビームを
入射する際の蓄積リングへのビーム入射及び装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】シンクロトロンでは、図1に示す如く、
周回電子の軌道を形成するための主磁石20、電子ビー
ムの発散を防止するための四極磁石(Q磁石と称する)
22、及び、周回電子を加速するための高周波加速空洞
(RF空洞と称する)24を用いて構成される閉軌道1
0と呼ばれる閉じた軌道上を、入射済み、即ち蓄積中の
ビームが電子バンチ(電子の集団)12となって周回し
ている。
【0003】図において、26は、前記RF空洞24に
高周波電力を供給するためのRF電源、28は、該RF
電源26に電子の周回周波数に対応する周波数の標準信
号を供給するための高周波(RF)標準信号発生器、3
0は、入射時に摂動磁場を加えるためのパータベータ
(キッカーとも称する)、32は、該パータベータ30
を励磁するためのパータベータ電源、34は、該パータ
ベータ電源32を必要なタイミングでのみ作動させるた
めの基準パルス発生器、40は、リングの外からリング
内へビームを入射するためのパルス電磁石であるインフ
レクタである。
【0004】このようなシンクロトロンにおいて、蓄積
中の電子ビームに影響を及ぼさずに入射軌道を生成する
共鳴入射法を使用しない場合、入射時には、パータベー
タ30によりパルス的にこの軌道上の一部分に摂動磁場
を加え、閉軌道10を入射軌道14に変位させる必要が
ある。即ち、前記インフレクタ40に接するように、閉
軌道10を歪ませる。
【0005】これは、既に入射済みで閉軌道10上を周
回中の蓄積ビームが、インフレクタ40の近傍を通過す
るように、周回軌道を入射軌道14に変更することを意
味する。インフレクタ40の位置における、この変位
が、図2(e)に示す如く、最大から減少に転じた後、
即ち、入射軌道14がインフレクタ40に最も近付いた
後、離れつつある最中に、次のビームが新しく入射され
る。ビームの入射とパータベータ励磁のタイミングの関
係を図2に示す。この摂動磁場は、パルス的に印加され
るので、摂動磁場の減少と共に、ビームは元の閉軌道上
に戻ってくる。入射の最中に摂動磁場がダイナミックに
減少しつつあることが重要で、そうでないと、入射ビー
ムは何周かするうちに、インフレクタ40に衝突して失
われてしまう。摂動磁場の減少に伴って閉軌道の歪みが
減るので、入射ビームは、周回毎にどんどんインフレク
タ40から遠ざかり、インフレクタ40に衝突すること
なく、周回し続ける。摂動磁場の消滅により、新しく入
射されたビームは、既に入射済みの蓄積ビームと共に閉
軌道10に沿って周回するが、この時点では、新しく入
射されたビームのサイズが水平方向に大きく、このまま
再度パータベータ30を励磁すると、インフレクタ40
に衝突してしまう。新しく入射された電子ビームは、時
間の経過と共に放射減衰効果でビームサイズが縮小し、
ある時間(放射減衰時間と称する)を経過すると、蓄積
ビームと同じサイズになり、完全に一体となる。その
後、上記の操作を繰り返すことにより、入射ビームを閉
軌道10上に溜めていくことができる。
【0006】従来の入射方法では、基準パルス発生器3
4とパータベータ電源32が連動しており、RF空洞2
4にRF電力を供給する系とは独立の関係にあり、RF
電力は、連続的にRF空洞24に供給されており、ビー
ム入射のタイミングとは何の関係もなかった。なお、図
示されてはいないが、パータベータ電源32と同様にイ
ンフレクタ40の電源にも、タイミングの信号が供給さ
れている。
【0007】従来のSRリングは、大きいと周長Lが1
Km以上有り、小さいものでも50m以上あるため、産
業用に小型リングが考案されるまでは、パータベータ3
0の摂動磁場によって閉軌道10が入射軌道14に変位
しても、入射軌道の周長Liと周回軌道の周長Lsの差
ΔLが実用上問題となるようなことはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、小型SRリ
ングでは、周長Lが10m程度にまで減少しており、こ
の差ΔL(1周当たり数cm程度)が、ビームと加速用
高周波の同期条件に及ぼす影響が無視できなくなってい
る。即ち、1周ではわずかの差であっても、周回を繰り
返すうちに誤差が累積し、無視できない差になってしま
うという問題点を有していた。
【0009】この問題点を回避する一つの手段として、
ビームの周回条件を調整する方法がある。具体的には、
ビーム収束系のパラメータ(Q磁石の強さなど)を変更
する。収束系の強さはSRリングの動作点(オペレーシ
ョンポイント)を決めるもので、通常、予め設計時に決
められており、この変更は望ましいことではない。しか
し、とにかく収束条件の調整でビームの横方向振動(後
出の水平方向のベータトロン振動)が制御できる結果、
設計値の動作点ではΔLが問題になっても、他のどこか
でΔLが問題とならない動作点を見出せるのが通常であ
る。但し、入射効率が悪くなる等の好ましくない作用を
伴うことも多い。従来は、経験的にトライアルアンドエ
ラーで、この入射可能な動作点を探し出していた。
【0010】本発明は、以上のような制約を一切受けず
に、前記の問題点を解決するべくなされたもので、入射
軌道と蓄積軌道との間で周長に有意の差を生じた場合で
も、不都合が生じないようにすることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、蓄積ビームが
周回中の閉軌道の一部に摂動磁場を加え、入射軌道に変
位させてビームを入射する際に、周回ビームを加速する
ための高周波に、前記摂動磁場の励磁と少なくともタイ
ミングを合わせて周波数変調をかけることにより、閉軌
道と入射軌道の周長差による位相ずれを生じないように
して、前記課題を解決したものである。
【0012】又、前記周波数変調を、前記摂動磁場の励
磁とタイミング及び波形を合わせてかけるようにしたも
のである。又、前記周波数変調を、前記摂動磁場を加え
ている間だけ、かけるようにしたものである。
【0013】本発明は、又、周回ビームの軌道を形成す
るための主磁石、ビームの発散を防止するためのQ磁
石、及び、周回ビームを加速するための高周波加速空洞
を用いて構成され、蓄積ビームが周回中の閉軌道の一部
に、パータベータにより摂動磁場を加え、閉軌道の一部
を、入射ビームを入射軌道に乗せるためのインフレクタ
に接する入射軌道に変位させてビームを入射するための
蓄積リングへのビーム入射装置において、ビームの周回
周波数に対応する周波数に、周波数変調を加味した周波
数の標準信号を発生する高周波標準信号発生手段と、該
高周波標準信号発生手段から供給される標準信号に応じ
て、前記高周波加速空洞に、摂動磁場の励起と少なくと
もタイミングが合う周波数変調がかけられた高周波電力
を供給する高周波電源とを備え、閉軌道と入射軌道の周
長差による位相ずれを生じないようにして、同じく前記
課題を解決したものである。
【0014】更に、前記パータベータに印可される波形
と相似の波形を作成する波形発生手段を設け、ビームの
周回周波数に対応する周波数に、該波形発生手段で作成
された相似波形に対応した量の、摂動磁場の励起とタイ
ミング及び波形が合う周波数変調をかけるようにしたも
のである。
【0015】シンクロトロンでは、ビームが安定に周回
する基本原理として、位相安定性の原理が働いている。
即ち、標準的なエネルギ(基準エネルギと称する)E0
を持つ粒子(ここでは電子)が、RF空洞24の中心で
感じるRF電場の位相は常に一定であり、この位相を同
期位相φsと呼ぶ。電子の集団は、基準エネルギE0を
中心に、あるエネルギ範囲±ΔEの中に散らばってお
り、これらの電子は同期位相φsを中心に、図3に示す
如く振動している(シンクロトロン振動)。横軸に位相
φ(又は時間t)をとり、縦軸に電子のエネルギをΔE
/Eでとると、この振動は、図4のAのような回転運動
で表わせる。この振動の大きさは、ΔEに比例するが、
図4に実線で示される閉曲線(セパラトリクスと称す
る)Bで囲まれた領域(RFバケットと称する)の中に
ある限り、安定に存在し続け、ビームとして失われるこ
とはない。逆に言えば、何らかの事情(外的要因)で、
電子がこのバケットから飛び出す事態が生じれば、その
電子は周回を繰り返すうちにやがて失われてしまう。
【0016】位相安定性の原理に基くシンクロトロン振
動の理論は、周長Lが一定の場合に成り立っており、も
し周回軌道長がΔLだけ変化すれば、高周波の波長をλ
としてΔφ=2π(ΔL/λ)だけ、ビームが高周波電
場と遭遇する位相(タイミング)がずれる。これは、図
4において、電子が安定に存在し得るRFバケットB
が、ある瞬間、破線Cに示すごとく、横にΔφだけずれ
たことに相当し、図から分かるように、このときRFバ
ケットBの外周付近のシンクロトロン振動している電
子、即ちエネルギのばらつきΔEの大きい電子は、バケ
ットBから飛び出してしまう。こうして、エネルギのば
らつきの大きい電子から、どんどん失われていくように
なる。
【0017】産業用の小型リングでは、この現象が、入
射時に起こる可能性が高く、通常の入射方法に従ってビ
ームを入射することが困難である場合が多い。即ち、ビ
ーム入射時のように周回軌道長が変化すると、周回毎に
電子と高周波の位相との関係がずれる。図でいうと、セ
パラトリクスがシフトすることに相当し、電子にとって
みれば、RFバケットが左右に移動したようにみえる。
入射時にパータベータが励磁されている間、このずれ量
が累積してゆき(ある小型SRリングの場合、約150
度)、結果的にビームの一部あるいは大部分が、RFバ
ケットの外部に移動する。この現象は一時的なものであ
り、パータベータの励磁が終了し、入射軌道が蓄積軌道
に復帰すると共に、電子とRFバケットとの関係も安定
になるが、元の状態に復元するわけではない。RFバケ
ットの境界、即ちセパラトリクスを越えて外部に飛び出
した電子は、もはや安定な振動を継続することができず
に散逸してしまう。
【0018】そこで本発明では、この周長の変化に起因
する位相のずれを克服するべく、入射時に、高周波に周
波数変調を加えて、例えば周波数をf→f+Δfにし、
波長をλ→λ−Δλと変えることにより、周長の変化分
ΔLの影響を相殺する。具体的には、1周当たりの位相
の進みdφが2πの整数倍になるように調整してやる。
このとき、 dφ=2π(L−ΔL)/(λ−Δλ)=2π(L/
λ)=2nπ となっている筈であるから、Δλ=ΔL/nとなるよう
に高周波を調整すればよい。
【0019】このとき、RFバケットの高さに留意して
おく必要がある。もし、周波数変調を加えることによ
り、RFバケットが小さくなると、図4から判るよう
に、バケット内で安定に存在していた電子のうち、ΔE
/Eの大きいものから順次こぼれ出てしまう。ここで、
RFバケットの高さ(バケット内に存在する電子が持ち
得る最大のΔE/Eで定義される)は、RF空洞の電圧
(図3のVRF)によって決まる量である。一般に、加速
器のRF空洞は周波数に対する共振特性が鋭く、少しの
Δfで、空洞内の電圧VRFが大きく変化(通常は低下)
する。
【0020】この不都合を回避する方法として、二通り
が考えられる。一つは、予めRF空洞をディチューン
(離調)して入射に供しておく方法である。同調時には
鋭い共振特性からΔfに対して敏感なRF空洞も、ディ
チューンの状態ではΔfに対する感度が下がるので、R
Fバケットの低下を問題にならない程度にまで減らし得
る。必要なディチューンの量については、ケースバイケ
ースで決めればよい。第二の方法は、周波数変調と振幅
変調を併用することである。今RF電力を一定として、
SRリングに組込まれているRF空洞の共振特性から同
調点近傍におけるVRFの周波数依存性が判るので、同調
点からの周波数移行量Δfに依存したVRFの変化量が算
出できる。かくして、所定の振幅変調を惹起するのに必
要なRF電力の補正量が決まる。なお、この振幅変調を
前者の方式に対して適用し、より厳密にRFバケットの
高さを制御することももちろん可能である。電子ビーム
の入射効率を最大化しようとする際など、場合によって
は有効な手段となり得る。
【0021】実際に振幅変調を適正に印可しようとする
と、考えておかなければいけない点がいくつかある。例
えば、 実用に際しては、RF振幅器も周波数特性を持ってい
るので、それも考慮しておく必要がある。 RF空洞はQ値が高いので、注入した励振電力に対応
した電圧が発生するまでに、Q値に依存した時定数でも
って、ある時間遅れが生じる。SRリングの標準的なR
F空洞では、この時定数が数十μ秒もあり、ここで議論
している入射時間1μ秒に比べて圧倒的に長いので、こ
の時間遅れを予測した対策を取っておく必要がある。
【0022】実用上は、周波数変調のみ考慮すれば良い
ようにしておくのが好ましく、振幅変調は加速器の研究
開発に際して考慮に値する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して、本発明の実
施形態を詳細に説明する。
【0024】本実施形態は、図1に示す如く、従来と同
様の主磁石20、Q磁石22、RF空洞24、RF電源
26、RF標準信号発生器28、パータベータ30、パ
ータベータ電源32、基準パルス発生器34、インフレ
クタ40を備えた小型SRリングにおいて、更に、前記
パータベータ30に印加される波形と相似の波形を作成
する任意波形発生器50を設け、電子の周回周波数に対
応する周波数に、該任意波形発生器50で作成された相
似波形に対応した量の周波数変調を加味した周波数の標
準信号を前記標準信号発生器28で発生して、RF電源
26から、前記RF空洞24に、摂動磁場の励磁とタイ
ミング信号及び波形が合う周波数変調がかけられたRF
電力を供給するようにして、閉軌道と入射軌道の周長差
による位相ずれを生じないようにしたものである。
【0025】前記主磁石20は、偏向磁石とも称され、
ある定められた軌道に沿って電子が周回するように、電
子の進路を双極磁場で偏向する。1周当たりの偏向角の
総和は360°であり、図のように小型リングの場合は
2台で構成される場合が多い。この場合、1台当たりの
偏向角は180°である。なお、大型になるほど、多数
の磁石が使用され、1台当たりの偏向角が小さくなる。
【0026】前記Q磁石22は、電子ビームが発散して
しまわないように、収束作用を有する四極磁石である。
光と異なり、水平、垂直の同方向に同時に収束作用を及
ぼすことはできず、どちらか一方向に対しては発散作用
となる。図では、2箇所の主磁石20間の直線部に各1
台ずつ、水平方向に収束作用を有するQ磁石22が配置
されている。この場合、垂直方向の収束力は、主磁石2
0内部の磁場で作り出されている。
【0027】前記RF空洞24は、特定の周波数に対し
て共振する、即ち、少ない電力で高い電圧を出せる構造
になっており、周回電子にエネルギを供給する。図のよ
うに、小型リングでは通常1台であるが、大型になると
普通数台設置される。使用される高周波の周波数は、電
子の周回周波数の整数倍(図では7倍)になっており、
その数に応じた電子バンチ12がリングを周回してい
る。
【0028】前記インフレクタ40は、入射ビームを入
射軌道14に乗せるためのパルス電磁石で、リングの直
線部に接して置かれる。電子は、このインフレクタ40
で偏向された後、リングに進入する。
【0029】前期パータベータ30は、リングに組み込
まれたパルス電磁石で、入射時に使用される。即ち、閉
軌道と呼ばれる蓄積ビームの周回軌道10に対して、パ
ルス的に摂動を加えて歪ませ、この歪んだ軌道が入射軌
道14となる。
【0030】ここで閉軌道とは、既に入射済みの電子が
周回する軌道を称する。電子は、ビームの進行方向に対
して垂直な平面内の水平、垂直、各方向と進行方向に対
して、それぞれ振動しながら周回しており、各々ベータ
トロン振動、シンクロトロン振動と呼ばれている。閉軌
道は、ベータトロン振動に対する概念であり、ビームは
何周かする間に、再度同じ地点に戻ってくる(一筆書き
ができる)ので、この呼び名がある。入射時に問題にな
るのは、このうち水平方向の運動である。振動の軌跡を
議論するのでなければ、入射済みのビームが安定に周回
し続ける蓄積軌道の概念と差はない。
【0031】又、前記入射軌道14は、閉軌道にパータ
ベータ30で摂動磁場を加えて歪んだ軌道であり、入射
時にビームが進入するコースに相当する。即ち、入射時
に一時的に生じる軌道である。ここで歪ませるのは、入
射用のパルス電磁石であるインフレクタ40に蓄積軌道
を接近させるためである。
【0032】本実施形態においては、入射軌道14と蓄
積軌道10の間で周長に有意の差を生じても、基準パル
ス発生器34と標準信号発生器28が任意波形発生器5
0で連結されており、高周波に周波数変調が加えられて
いるので、位相ずれが問題となることはない。
【0033】以下、図2を参照して、本実施形態の作用
を説明する。
【0034】まず、基準パルス発生器34により、図2
(a)に示す如く、入射のタイミングを決める信号であ
る基準パルスを発生する。
【0035】パータベータ電源32は、該基準パルス発
生器34から出力される基準信号を受け取ると、正弦半
波の波形でパータベータ30を励磁する。従って、パー
タベータ30は、図2(b)に示す如く、正弦半波の形
状の摂動磁場を生成する。
【0036】同時に、任意波形発生器50は、図2
(c)に示す如く、パータベータ電源32で発生される
正弦半波と相似の波形を作成して標準信号発生器28に
入力する。
【0037】RF標準信号発生器28では、図2(d)
に示す如く、電子の周回周波数に対応する周波数に、該
任意波形発生器50で発生された相似波形に対応した量
の周波数変調Δfを加味した周波数の標準信号をRF電
源26に送出する。
【0038】前記パータベータ30の励磁量に応じて蓄
積軌道が歪み、それに対応した電子の周回軌道長が、図
2(e)(ΔL<0の場合)に示す如く、変化する。よ
って、正弦半波のピークで軌道の変位が最大になり、こ
れ以後のパルスの立ち下がり部分で、ビーム入射が可能
になる。本実施形態においては、この際、軌道長の差に
対応する位相の差がRF空洞で相殺されているので、問
題となることはない。
【0039】
【実施例】SRリングは、周長Lと高周波の周波数fと
の間に、一定の関係L=nλが成り立つように作られて
いる。n(ハーモニック数と呼ばれる)は、電子バンチ
の個数に等しい。ある例では、f=190MHz(従っ
て、λ=1.6m)、n=7で設計されているので、周
長L=11mが得られる。シミュレーションによれば、
L=11mに対して、周回軌道の変化量は最大ΔL=−
5cm程度であるから、周波数変調を印加しない場合の
位相変化量はΔφ=11°である。これは、電子が高周
波の位相に対し11°遅れる、又は、RFバケットの位
相が電子に対し11°進むことを意味する。但し、これ
は1周当たりの最大位相変化量であり、実際には、パー
タベータの摂動磁場は、周期2μsの正弦半波で励起さ
れる(換言すれば、全幅1μsの正弦半波であり、この
間ビームは約27周している)ので、累積では、この位
相変化量は150°にもなる。この場合、高周波の補正
量は、 Δλ/λ=Δλ/nλ=−0.0045 即ちピーク値0.45%の周波数変調(Δf=0.85
MHz)を正弦半波で印加すればよい。
【0040】図5乃至図7は、電子ビームの発するSR
光を主磁石のポートで観測したものである。測定にはス
トリークカメラを用いているので、横軸に水平方向のビ
ーム位置が、縦軸に時間の推移が上から下に示されてい
る。
【0041】図5は、高周波に周波数変調を印加しない
場合で、パータベータを励磁した瞬間にビームが右に振
られて軌道が変位した後(図の最上部)も、シンクロト
ロン振動による軌道の蛇行が減衰せず、ビームが左右に
振動しながら周回していることがわかる。又、上から下
へ時間軸方向にSR光の信号がぼやけていることから、
時間の経過と共に、電子がバンチ状態から解体されて集
群状態からばらばらな状態になり、RFバケットからこ
ぼれて落ちていくことがわかる。
【0042】図6及び図7は、周波数変調の有無でビー
ムの振る舞いがどのように異なるかを、図5よりも長い
時間について、ストリークカメラによるSR光の観測結
果で比較したものである。周波数変調を印加しない図6
の場合(但し、図5のように大部分の電子がこぼれる程
には位相ずれがひどくない場合)、パータベータ励磁の
際に、電子のバンチがRFバケットの中心から周辺に振
られてシンクロトロン振動が励起され、これによるビー
ムの揺動が持続していることが分かる。これは、パータ
ベータの励磁により、ビーム入射時に周回軌道長に差が
生じ、ビームと高周波の位相がずれが生じたためであ
る。これに対して、本発明による周波数変調を印加した
図7では、パータベータの励磁後に、シンクロトロン振
動がほとんど見られず、ビームの揺動が発生してはいな
い。
【0043】なお、前記説明においては、パータベータ
に印加される波形(摂動磁場の励起曲線)が正弦半波と
され、これと相似の波形が、任意の波形を発生可能な任
意波形発生器50で作成されていたが、励起曲線の形状
や、相似波形を発生する方法はこれに限定されず、例え
ば、正弦波発生器を用いたり、前記パータベータ電源3
2の出力を利用して相似波形を発生したり、多少の位相
ずれがあっても、非相似波形を用いたりすることも可能
である。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、小型SRリングにおい
ても、通常の大型リングにおけるときと同様に、入射時
の周長の変化を気にすることなく、従来の入射方法を使
用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す、一部ブロ
ック線図を含む平面図
【図2】同じく各部信号波形の例を示す線図
【図3】シンクロトロン振動と位相安定性の原理を説明
するための、高周波とシンクロトロン振動の関係を示す
線図
【図4】同じくRFバケットとシンクロトロン振動の関
係を示す線図
【図5】従来技術において、電子がバンチ状態から解体
されてRFバケットからこぼれ落ちていく状態のストリ
ーク波形を示す線図
【図6】周波数変調を加えない従来技術において、シン
クロトロン振動によるビームの揺動が持続している状態
のストリーク波形を示す線図
【図7】同じく本発明による周波数変調を加えた場合に
ビームの揺動が解消されている状態のストリーク波形を
示す線図
【符号の説明】
10…閉軌道 12…電子バンチ 14…入射軌道 20…主磁石 22…Q磁石 24…高周波加速空洞(RF空洞) 28…高周波(RF)標準信号発生器 26…高周波電源 30…パータベータ 32…パータベータ電源 34…基準パルス発生器 40…インフレクタ 50…任意波形発生器
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−73998(JP,A) 特開 平8−203699(JP,A) 特開 平3−263800(JP,A) 特開 平8−203700(JP,A) 特開 平1−95500(JP,A) 特開 昭62−198099(JP,A) 特開 平1−100900(JP,A) 特開 平1−143199(JP,A) 特開 平3−236200(JP,A) 特開2000−232000(JP,A) 特開2000−21600(JP,A) 特開 平9−213498(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05H 13/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蓄積ビームが周回中の閉軌道の一部に摂動
    磁場を加え、入射軌道に変位させてビームを入射する際
    に、 周回ビームを加速するための高周波に、前記摂動磁場の
    励磁と少なくともタイミングを合わせて周波数変調をか
    けることにより、 閉軌道と入射軌道の周長差による位相ずれを生じないよ
    うにすることを特徴とする蓄積リングへのビーム入射方
    法。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記周波数変調を、前
    動磁場の励磁とタイミング及び波形を合わせてかけ
    ることを特徴とする蓄積リングへのビーム入射方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、前記周波数変調
    を、前記摂動磁場を加えている間だけ、かけることを特
    徴とする蓄積リングへのビーム入射方法。
  4. 【請求項4】周回ビームの軌道を形成するための主磁
    石、ビームの発散を防止するためのQ磁石、及び、周回
    ビームを加速するための高周波加速空洞を用いて構成さ
    れ、蓄積ビームが周回中の閉軌道の一部に、パータベー
    タにより摂動磁場を加え、閉軌道の一部を、入射ビーム
    を入射軌道に乗せるためのインフレクタに接する入射軌
    道に変位させてビームを入射するための蓄積リングへの
    ビーム入射装置において、 ビームの周回周波数に対応する周波数に、周波数変調を
    加味した周波数の標準信号を発生する高周波標準信号発
    生手段と、 該高周波標準信号発生手段から供給される標準信号に応
    じて、前記高周波加速空洞に、摂動磁場の励起と少なく
    ともタイミングが合う周波数変調がかけられた高周波電
    力を供給する高周波電源とを備え、 閉軌道と入射軌道の周長差による位相ずれを生じないよ
    うにしたことを特徴とする蓄積リングへのビーム入射装
    置。
  5. 【請求項5】請求項において、更に、 前記パータベータに印可される波形と相似の波形を作成
    する波形発生手段を設け、 ビームの周回周波数に対応する周波数に、該波形発生手
    段で作成された相似波形に対応した量の、摂動磁場の励
    起とタイミング及び波形が合う周波数変調をかけること
    を特徴とする蓄積リングへのビーム入射装置。
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