JP3373937B2 - 連続鋳造用鋳型及びその製造方法 - Google Patents

連続鋳造用鋳型及びその製造方法

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JP3373937B2 JP12008194A JP12008194A JP3373937B2 JP 3373937 B2 JP3373937 B2 JP 3373937B2 JP 12008194 A JP12008194 A JP 12008194A JP 12008194 A JP12008194 A JP 12008194A JP 3373937 B2 JP3373937 B2 JP 3373937B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、連続鋳造用鋳型及びそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼等を連続鋳造する場合に用いる連続鋳
造用鋳型は、銅又は銅合金を用いて形成された鋳型の内
壁面上に、耐磨耗性材料からなる保護層を備えている。
従来用いられている保護層としては、鋳型の内壁面上に
ニッケルメッキやクロムメッキを形成したものや、鋳型
の内壁面上に形成したニッケルメッキ層の上に更にNi
−Pやクロムのメッキ層を積層したものがある。最近
は、鋳型の内壁面上に形成したニッケルメッキ層(Ni
を主成分としてホウ素等の他の金属を含有するNi基合
金メッキを含む)や銅メッキ層の上にNi基自溶性合金
粉末や金属炭化物系複合材料等の耐磨耗性溶射材料を溶
射して溶射皮膜を形成した保護層(例えば、特開昭63
−35762号公報,特開平1−186245号公報
等)も提案されている。また鋳型の内壁面上に銅との相
溶性に優れたニッケル単体を超音速フレーム溶射法によ
り吹き付けて溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜を下地と
してその上にコバルトを含有するタングステンカーバイ
ド等の金属炭化物系複合材料単体またはそれとニッケル
との混合物を何層か溶射して、鋳型表面側から保護層表
面に近付くほど金属炭化物系複合材料の含有量が多くな
るように形成された保護層も提案されている(特開昭6
2−227554号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ニッケ
ルメッキやクロムメッキ等のメッキ層を利用した保護層
は、メッキ作業に時間と費用がかかるために高価になる
上、そのわりに耐磨耗性が十分ではないという問題があ
る。これに対して高速フレーム溶射法(HVOF)によ
りコルモノイ(Ni基自溶性合金)等を溶射して保護層
を形成する場合には、メッキ作業が不要にあるため、価
格を下げることができるという利点がある。しかしなが
ら銅又は銅合金の表面に溶射により保護層を直接形成す
る場合には、溶射皮膜と銅又は銅合金との密着強度を高
める必要がある。
【0004】そこで溶射皮膜を直接形成する場合には、
一般的に鋳型の表面をブラスト処理した上で、その上に
耐磨耗性材料を溶射して溶射皮膜を形成している。ここ
で一般的にブラスト処理とは、ブラスト材としてスチー
ルグリットやアルミナグリットを使用し、高圧エアでグ
リットを母材表面に衝突させて表面の酸化皮膜を除去
し、さらに母材表面に粗い凹凸をつける表面処理を言
う。このようなブラスト処理を鋳型の表面に施した後に
溶射皮膜を形成すると、母材表面に形成された凹凸に溶
融粒子が食い込んで溶射皮膜の密着強度が大きくなる。
【0005】しかしながら銅又は銅合金にブラスト処理
を施すと、ブラスト材として使用するスチールグリット
やアルミナグリットがブラスト処理した鋳型の内壁面に
残留し易く、さらに鋳型の内壁面に残留応力が発生した
り、鋳型内壁面が軟弱化する等の問題が生じる。そのた
め銅又は銅合金をブラスト処理をすることは大きな問題
となっている。なお前述の特開昭62−227554号
公報には、直接記載されていないが、銅又は銅合金との
密着強度を高めるために銅との相溶性に優れたニッケル
単体を超音速フレーム溶射法により吹き付けて下地を形
成する場合でも、鋳型表面の酸化膜の除去と粗化のため
にはブラスト処理を必要とする。
【0006】本発明の目的は、ブラスト処理を必要とす
ることなく、溶射皮膜だけで形成された保護層を有する
連続鋳造用鋳型を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、ブラスト処理を必要
とすることなく、溶射皮膜だけで保護層を形成すること
ができる連続鋳造用鋳型の製造方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明は、銅または銅
合金からなる鋳型の内壁面上に耐磨耗性材料からなる保
護層が形成されている連続鋳造用鋳型及びその製造方法
を改良の対象とする。
【0009】本願発明では、保護層が溶射フレームの熱
によっては全体的に溶融することがなくしかも鋳型の内
壁面に食い込み得る硬度を有する金属炭化物系材料を用
いて高圧超高速フレーム溶射法により内壁面上に直接形
成された溶射皮膜からなるアンダーコートと、アンダー
コートの上に形成されたNi基自溶性合金の溶射皮膜か
らなるトップコートとを具備している。本願明細書にお
いて高圧超高速フレーム溶射法とは、溶射ガンの作動圧
力が0.55MPa(メガパスカル)以上で、いわゆる
プラスチックインパクトによる皮膜形成が可能な溶射装
置を用いて溶射皮膜を形成する方法である。ここでプラ
スチックインパクトによる皮膜形成とは、溶射材料粉末
が母材に衝突したときに溶射材料粉末が母材の表面に食
い込んで皮膜を形成する現象を言う。高圧超高速フレー
ム溶射法の溶射ガンの作動圧力は、理論的には0.55
MPa以上であればよいが、現実に実現可能な溶射ガン
の作動圧力には限界がある。またあまりに溶射ガンの作
動圧力を大きくし過ぎると、鋳型表面に大きな残留応力
を残したり、鋳型表面を軟化するおそれがあるため、こ
のような弊害が発生しない程度の作動圧力とするのが好
ましい。ちなみにタングステンカーバイドを主成分とす
る粉末を溶射材料として用いる場合で、その粉末の許容
直径は5〜53μmであり、その硬度は荷重を300g
としてマイクロビッカース硬さ計で測定した値が100
0〜1400の範囲に入るものを用いる場合に、好適な
溶射ガンの作動圧力は、0.55MPa以上1.04M
Pa以下である。この場合に内壁面上に直接形成する溶
射皮膜の膜厚は15μm以上にするのが好ましい。膜厚
がこれより薄くなると、母材である鋳型の表面が部分的
に露出してしまい、母材表面の酸化皮膜を十分に除去で
きなくなるとともにアンダーコートの目的であるブラス
ト効果を得ることができないからである。
【0010】また本願明細書において、金属炭化物系材
料とは、タングステンカーバイドを主成分とするものが
好ましい。タングステンカーバイドを主成分とするもの
のなかでも、特にコバルトを含有するタングステンカー
バイドまたはニッケル及びクロムを含有するタングステ
ンカーバイドを用いると、ブラスト処理を用いない場合
においても、極めて良好な溶射皮膜を形成することがで
きる。理由はチタンカーバイドやクロムカーバイドに比
べて、タングステンカーバイドの比重が大きいので高圧
超高速フレーム溶射によって得られる運動エネルギーが
極大となるからである。
【0011】好ましいタングステンカーバイドの粉末の
許容直径は5〜53μmであり、硬度は荷重を300g
としてマイクロビッカース硬さ計で測定した値が100
0〜1400の範囲に入るものである。なお以下硬度を
表示する場合に、(HV300)と表示する場合もあ
る。また粉末の平均直径が5μmより小さくなると、上
記の運動エネルギーが得られないため鋳型表面の酸化皮
膜の除去が不十分になったり、鋳型表面部に粉末が完全
に付着しない問題が生じ、溶射皮膜が剥離しやすくな
る。また粉末の直径が53μmより大きくなると、プラ
スチックインパクトの効果(食い込み効果)が出ずに溶
射皮膜が剥離しやすくなる。なおこの粉末の直径の許容
寸法は、粉末の材質や形状によって異なってくる。また
粉末の硬度(HV300)が1000より小さくなると
粉末の食い込みが悪くなり付着力が低下し、粉末の硬度
が1400より大きくなると、皮膜内に発生する歪みが
大きくなるという問題が発生する。
【0012】ンダーコートの上に形成する溶射皮膜を
形成するための耐磨耗性材料としては、種々のものを用
いることができるが、Ni基自溶性合金の溶射皮膜を用
いると、タングステンカーバイドを主成分とするアンダ
ーコートとトップコートとして使用するNi基自溶性合
金の親和性が特によいために好ましい結果が得られる。
【0013】なおNi基自溶性合金は、Ni−Si−B
系,Ni−Cr−Si−B系,Co−Ni−Cr−Si
−B系,Ni−Cr−Si−WC系等があるが、実用上
はこれらにMo,Cu,Fe等を添加したものを用いる
こともある。
【0014】
【作用】本発明で用いる金属炭化物系材料は、溶射フレ
ームの熱によっては全体的に溶融することがなくしかも
鋳型の内壁面に食い込み得る硬度を有するものである。
そして高圧超高速フレーム溶射法(HP/HVOF)で
用いる溶射ガンの作動圧力は、高速フレーム溶射(HV
OF)で用いる溶射ガンの作動圧力よりも大きい。その
ため高圧超高速フレーム溶射法により噴射された金属炭
化物系材料の粉末は、プラスチックインパクトにより鋳
型の内壁面に食い込んで鋳型の内壁面にしっかりと固定
され、その際に鋳型の内壁面上の酸化皮膜の殆ど大部分
を除去する。したがって、本発明によれば、ブラスト処
理をしなくても、溶射皮膜の形成と同時に鋳型の内壁面
上の酸化皮膜を除去することができる。また鋳型の内壁
面上の酸化皮膜を除去することができると同時にアンダ
ーコートの目的である適切な表面粗さを形成することが
できる。その結果、ブラスト処理をしなくても、密着強
度の高い即ち剥離し難い溶射皮膜からなる保護層を鋳型
の内壁面上に形成することができる。
【0015】特に本発明によれば、金属炭化物系材料を
用いて高圧超高速フレーム溶射法により形成されたアン
ダーコートにより、皮膜の表面割れや境界部の剥離割れ
を防止することができ、Ni基自溶性合金の溶射皮膜か
らなるトップコートにより耐磨耗性を向上させることが
できる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。図1(A)は連続鋳造用鋳型の一実施例の短辺
側鋳型の断面図を示しており、図1(B)は他の実施例
の短辺側鋳型の断面図を示している。これらの図におい
て、1は銅または銅合金で形成された鋳型本体であり、
その内壁面上には耐磨耗性金属材料からなる溶射皮膜に
よって形成された保護層2が形成されている。図1
(A)の実施例では、溶射フレームの熱によっては全体
的に溶融することがなく、しかも鋳型本体1の内壁面に
食い込み得る硬度を有する金属炭化物系材料を用いて高
圧超高速フレーム溶射法により内壁面上に直接形成され
た溶射皮膜3(以下第1の溶射皮膜と言う)のみから保
護層2が形成されている。図1(B)の実施例では、第
1の溶射皮膜3の上にNi基自溶性合金の第2の溶射皮
膜4が形成されて保護層2が構成されている。図1
(B)の実施例においては、第1の溶射皮膜3がアンダ
ーコート(下地)を構成しており、第2の溶射皮膜4が
トップコートを構成している。
【0017】図1(A)及び(B)の実施例における第
1の溶射皮膜3は、高圧超高速フレーム溶射法により形
成したものであり、第2の溶射皮膜4も高圧超高速フレ
ーム溶射法により形成したものである。なお、第2の溶
射皮膜4を高速フレーム溶射法により形成してもよいの
は勿論である。高圧超高速フレーム溶射法と高速フレー
ム溶射法の基本的な相違点は、溶射ガンの作動圧力の差
である。高速フレーム溶射法で用いる溶射ガンの作動圧
力は、一般的に0.5MPa以下である。
【0018】本発明の効果を確認するため、即ち銅及び
銅合金に溶射した溶射皮膜の密着強度を調べるために、
試験片を作成して熱衝撃試験を行った。試験片として
は、図2(A)及び(B)に示す形状寸法を有するもの
を用いた。図2に示した数値の単位はmmである。図2
において、101は銅または銅合金のベースであり、1
02が保護層を構成する溶射皮膜である。
【0019】使用した試験片のベース101を構成する
銅及び銅合金の組成及び種類は、下記の表1に示す通り
である。そして表1に記載した数値の単位は重量%であ
る。なお銅の連続鋳造用鋳型材としては、Cr−Cu及
びCr−Zr−Cu等の析出硬化型銅合金が多く使用さ
れている。
【0020】
【表1】 また試験に使用した高圧超高速フレーム溶射法(HP/
HVOF)を実行するプロセス(設備)及び高速溶射フ
レーム法(HVOF)を実行するプロセス(設備)の詳
細は下記の表2に示す通りである。なお下記表2中のメ
ーカ名「HOBART-TAFA 」とは、アメリカ合衆国のHOBART
-TAFA TECHNOLOGIES,INC. の略であり、「WHITCO JAPA
N」はウイテコジャパン株式会社の略であり、「SDS 」
はアメリカ合衆国のSTOODY DELORO STELLITE Co.,Ltd.
(ストディー・デロロ・ステライト社)の略であり、
「S.S.T.」は、Sulzer Surface Technology Co.,
Ltd.(スルーザー サーフェース テクノロジィ社)の
略称である。またプロセス名称は、これら各社が設備に
対して使用している商標である。
【0021】また「ガンの作動圧力」とは、燃焼室内の
圧力を圧力センサーにより測定した値である。
【0022】「ジェット温度」とは、各燃料によるフレ
ームの温度の計算値である。
【0023】「ジェットのマッハ」とは、フレームの速
度が音速を超えるときに発生する衝撃波によるダイヤモ
ンドパターンショックの角度により計算されたフレーム
速度である。
【0024】「粒子速度」とは、溶射ガンの噴射口のフ
レーム内粒子をレーザードプラー粒速計によって測定し
た値である。
【0025】「適正溶射距離」とは、溶射時における溶
射ガンの噴射口と母材との間の距離である。
【0026】
【表2】 表1に示した組成及び種類の銅及び銅合金からなるベー
ス101の表面に、ブラスト処理なしで表2に示すよう
な溶射条件で、第1の溶射皮膜及び第2の溶射皮膜から
なる保護層102を溶射により形成した。第1の溶射皮
膜(アンダーコート)は、タングステンカーバイト粉末
(WC−Co等)を約100μの厚みになるまで溶射し
て形成した。第2の溶射皮膜(トップコート)は、Ni
基自溶性合金を約400μの厚みになるまで溶射して形
成した。その際に使用したアンダーコート及びトップコ
ートに使用した溶射材料の粉末の組成、粒度(粉末の直
径)及び硬度は表3に示す通りである。
【0027】
【表3】 上記表3に示したWC−12Co合金とは、コバルトを
12重量%含むタングステンカーバイドの意味である。
またWC−27NiCr合金とは、ニッケル及びクロム
を27重量%含むタングステンカーバイドの意味である
が、ニッケル及びクロムの配合比率は80:20であ
る。またNi基自溶性合金は、Ni−Si−B系の合金
に、CrとFeとを添加したものであり、好ましい組成
はSiが1.25〜5.50重量%、Bが2.00〜
4.50重量%、Crが8.0〜18.0重量%、Cが
0.30/1.00重量%、Feが1.25〜5.50
重量%、Cuが0〜5重量%、Moが0〜5重量%、N
iが残りのものである。
【0028】熱衝撃試験は、まず図2に示す試験片の両
端4ヶ所の取付け孔101a…に台座に取付けた4本の
ボルトをそれぞれ挿入し、このボルトにナットをそれぞ
れ締付トルク1000kgf・cmのトルクレンチでし
っかりと締付けて試験片を固定した。その後、溶射皮膜
からなる保護層102の表面を環状式電気炉内で300
℃になるまで加熱し、300℃に達した後、直ちに10
0℃まで水による急冷を行うことを1回の加熱冷却サイ
クルとして、この加熱冷却サイクルを500回繰り返し
た。加熱冷却サイクルを500回行った後に、溶射皮膜
からなる保護層102の表面割れを観察し、その後皮膜
を切断してその断面から皮膜の剥離割れの有無を観察し
た。
【0029】(試験例1) 表4は、純銅により形成したベース101に溶射皮膜を
形成して保護層を形成した試験片に対する熱衝撃試験に
よる溶射皮膜の評価と、従来法により形成した保護層に
ついて同じ熱衝撃試験を行った際の評価とを示してい
る。
【0030】
【表4】 表4において、溶射装置の欄の従来法の(DJ)の記載
は、表2に示した「Diamond Jet (商標)」の略であ
る。そして従来法の欄のアンダーコートのNiメッキ
は、100μmの厚みに形成したものである。表4の結
果から判るように、本発明の実施例のように高圧超高速
フレーム溶射(HP/HVOF)の溶射装置(JP−5
000及びJ−Gun)を用いて、タングステンカーバ
イト粉末(WC−Co合金等)をベース101の表面に
溶射して、ブラスト処理なしで直接第1の溶射皮膜(ア
ンダーコート)を形成した場合には、純銅との密着強度
が大きくなるため、第1の溶射皮膜(トップコートを形
成しない場合)または第2の溶射皮膜(トップコートを
形成する場合)の表面割れや皮膜境界部の剥離割れの発
生はまったくなかった。表4に示した密着強度は、米国
材料試験協会が定めた試験基準「ASTM C633」
に従って測定した密着強度である。密着強度が68MP
a以上であれば、密着強度は十分であると考えられる。
【0031】しかしながら、比較例として示したよう
に、高圧超高速フレーム溶射法により形成するアンダー
コートを用いずに、Ni基自溶性合金をトップコートと
してベース101の上に高圧超高速フレーム溶射法によ
り直接形成した場合には、トップコートの溶射皮膜の密
着強度が小さい(密着強度が68MPaより小さい)た
めに、皮膜表面割れや境界部の剥離割れが発生した。こ
れはNi基自溶性合金を高圧超高速フレーム溶射法によ
り溶射しても、プラスチックインパクト効果が少ないた
めにベース101の表面に衝突しても食い込みが十分に
なされないためである。
【0032】また、従来法の高速フレーム溶射(HVO
F)の溶射装置(DJ及びJet−Kote)を用い
て、タングステンカーバイト粉末(WC−Co合金等)
をベース101の表面に溶射して、ブラスト処理なしで
直接第1の溶射皮膜(アンダーコート)を形成した場合
には、皮膜の表面割れや境界部の剥離割れが発生した。
ブラスト処理をした後にタングステンカーバイト粉末
(WC−Co合金等)をベース101の表面に溶射して
アンダーコートを形成し、その上にトップコートを溶射
した場合でも、皮膜の表面割れや境界部の剥離割れが発
生した。アンダーコートを形成しないで、トップコート
だけを形成した場合には、ブラスト処理の有無に拘らず
皮膜の表面割れや境界部の剥離割れが多数発生した。し
かし、アンダーコートとしてNiメッキを施したもの
は、皮膜の表面割れや境界部の剥離割れはなかった。こ
のことはアンダーコートの密着強度が高ければ、トップ
コートを高速フレーム溶射法(HVOF)により形成し
ても何も支障がないことを意味している。表4には示し
ていないが、実際にアンダーコートを高圧超高速フレー
ム溶射法で形成し、トップコートを高速フレーム溶射法
で形成した例では、皮膜の表面割れや境界部の剥離割れ
はなかった。
【0033】(試験例2) また下記の表5は、析出硬化型のCr−Cu合金により
形成したベース101に溶射皮膜を形成して保護層を形
成した試験片に対する熱衝撃試験による溶射皮膜の評価
と、従来法により形成した保護層について同じ熱衝撃試
験を行った際の評価とを示している。表4の結果と表5
の結果とを比較すれば判るように、母材がCr−Cu合
金の場合には、母材が純銅の場合と同じ結果が得られる
ことが判る。
【0034】
【表5】 (試験例3) また下記の表6は、析出硬化型のCr−Zr−Cu合金
により形成したベース101に溶射皮膜を形成して保護
層を形成した試験片に対する熱衝撃試験による溶射皮膜
の評価と、従来法により形成した保護層について同じ熱
衝撃試験を行った際の評価とを示している。表4の結果
と表6の結果とを比較すれば判るように、母材がCr−
Zr−Cu合金の場合には、母材が純銅の場合と同じ結
果が得られることが判る。
【0035】
【表6】 (試験例4) 表7は、その他の母材材料により形成したベース101
に溶射皮膜を形成して保護層を形成した試験片に対する
熱衝撃試験による溶射皮膜の評価を示している。各母材
について最初の2つの試験結果は実施例の試験結果を示
しており、3番目の試験結果はアンダーコートを形成し
ない場合の比較例を示してる。なお表7には、従来法の
試験結果は示していないが、これらの母材の場合にも表
4〜6に示した従来法の試験結果とほぼ同様の試験結果
が得られることが確認された。
【0036】
【表7】 上記各試験例では、第1の溶射皮膜(アンダーコート)
だけで保護層を形成する場合に、皮膜の厚みを100μ
mとしていたが、実際に第1の溶射皮膜だけで保護層を
形成する場合には、その厚みを500μm〜1000μ
m程度に形成するのが好ましい。また上記各試験例で
は、第2の溶射皮膜(トップコート)を形成する場合
に、第1の溶射皮膜(アンダーコート)の厚みを100
μmとしているが、第2の溶射皮膜(トップコート)を
形成する場合の第1の溶射皮膜(アンダーコート)の厚
みの最小限界は、15μm以上である。
【0037】また上記各試験例では、第2の溶射皮膜を
Ni基自溶性合金により形成しているが、第2の溶射皮
膜をその他の耐磨耗性材料からなる溶射皮膜により形成
してもよいのは勿論である。
【0038】更に上記各試験例で用いた金属炭化物系材
料は、WC−12CoとWC−27NiCrであるが、
溶射フレームの熱によっては全体的に溶融することがな
くしかも鋳型の内壁面に食い込み得る硬度を有する金属
炭化物系材料であれば、チタンカーバイドやWC−N等
のその他の金属炭化物系材料を用いてもよいのは勿論で
ある。
【0039】以下、本願明細書に記載した複数の発明の
中の幾つかの発明の構成を下記に示す。
【0040】(1)銅または銅合金からなる鋳型の内壁
面上にフレーム溶射法により耐磨耗性材料からなる保護
層を形成して連続鋳造用鋳型を製造する方法であって、
硬度(HV300)が1000以上で許容直径が5〜5
3μmの範囲にあるタングステンカーバイドを主成分と
する粉末を用いて、溶射ガンの作動圧力を0.55MP
a以上にした高圧超高速フレーム溶射法により前記内壁
面上に厚み15μm以上の溶射皮膜からなるアンダーコ
ートを形成し、前記アンダーコートの上にNi基自溶性
合金を用いてフレーム溶射法により厚み100μm以上
の溶射皮膜からなるトップコートを形成して前記保護層
を形成することを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方
法。
【0041】(2)前記タングステンカーバイドを主成
分とする粉末は、コバルトを含有するタングステンカー
バイド粉末またはニッケル及びクロムを含有するタング
ステンカーバイド粉末である上記(1)に記載の連続鋳
造用鋳型の製造方法。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、ブラスト処理をしなく
ても、溶射皮膜の形成と同時に鋳型の内壁面上の酸化皮
膜を除去することができると同時にアンダーコートの目
的である適切な表面粗さを形成することができるため、
密着強度の高い即ち剥離し難い溶射皮膜からなる保護層
を鋳型の内壁面上に形成することができる利点がある。
【0043】特に本発明によれば、金属炭化物系材料を
用いて高圧超高速フレーム溶射法により形成されたアン
ダーコートにより、皮膜の表面割れや境界部の剥離割れ
を防止することができ、Ni基自溶性合金の溶射皮膜か
らなるトップコートにより耐磨耗性を向上させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は連続鋳造用鋳型の一実施例の短辺側鋳
型の断面図を示しており、(B)は他の実施例の短辺側
鋳型の断面図を示している。
【図2】(A)及び(B)は試験片の平面図及び側面図
を示している。
【符号の説明】
1 鋳型本体 2 保護層 3 第1の溶射皮膜(アンダーコート) 4 第2の溶射皮膜(トップコート) 101 ベース 102 保護層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森下 徹 東京都板橋区高島平8−25−1−206 (72)発明者 中島 邦夫 富山県中新川郡立山町西芦原新1番地の 1 中越合金鋳工株式会社内 (72)発明者 石金 良一 富山県中新川郡立山町西芦原新1番地の 1 中越合金鋳工株式会社内 (72)発明者 田中 孝行 富山県中新川郡立山町西芦原新1番地の 1 中越合金鋳工株式会社内 (72)発明者 山本 賢三 富山県中新川郡立山町西芦原新1番地の 1 中越合金鋳工株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−233047(JP,A) 特開 平1−186245(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/059 110 C22C 19/03 C23C 4/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅または銅合金からなる鋳型の内壁面上に
    耐磨耗性材料からなる保護層が形成されている連続鋳造
    用鋳型であって、 前記保護層は、 溶射フレームの熱によっては全体的に溶融することがな
    くしかも前記鋳型の前記内壁面に食い込み得る硬度を有
    する金属炭化物系材料を用いて高圧超高速フレーム溶射
    法により前記内壁面上に直接形成された溶射皮膜からな
    るアンダーコートと、 前記アンダーコートの上に形成されたNi基自溶性合金
    の溶射皮膜からなるトップコートとを具備することを特
    徴とする連続鋳造用鋳型。
  2. 【請求項2】前記金属炭化物系材料はタングステンカー
    バイドを主成分としており、 前記高圧超高速フレーム溶射法により前記内壁面上に直
    接形成された前記溶射皮膜の膜厚は15μm以上である
    請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。
  3. 【請求項3】銅または銅合金からなる鋳型の内壁面上に
    フレーム溶射法により耐磨耗性材料からなる保護層を形
    成して連続鋳造用鋳型を製造する方法であって、 溶射フレームの熱によっては全体的に溶融することがな
    くしかも前記鋳型の前記内壁面に食い込み得る硬度を有
    する金属炭化物系材料を用いて高圧超高速フレーム溶射
    法により前記内壁面上に第1の溶射皮膜を直接形成し、 前記第1の溶射皮膜の上にフレーム溶射法によりNi基
    自溶性合金からなる第2の溶射皮膜を形成して前記保護
    層を形成することを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方
    法。
  4. 【請求項4】前記金属炭化物系材料はタングステンカー
    バイドを主成分とする粉末であり、 その粉末の許容直径は5〜53μmであり、その硬度は
    荷重を300gとしてマイクロビッカース硬さ計で測定
    した値が1000〜1400の範囲に入るもの である請
    求項3に記載の連続鋳造用鋳型の製造方法。
  5. 【請求項5】前記高圧超高速フレーム溶射法の溶射ガン
    の作動圧力が0.55MPa以上1.04MPa以下で
    ある請求項3に記載の連続鋳造用鋳型の製造方法。
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