JP3365648B2 - 光学ミラー - Google Patents

光学ミラー

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JP3365648B2
JP3365648B2 JP05845993A JP5845993A JP3365648B2 JP 3365648 B2 JP3365648 B2 JP 3365648B2 JP 05845993 A JP05845993 A JP 05845993A JP 5845993 A JP5845993 A JP 5845993A JP 3365648 B2 JP3365648 B2 JP 3365648B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の波長の光につい
て高反射とした複数の高反射膜を有し、非線形光学効果
を利用した高調波発生装置やパラメトリック発振装置
等、反射後の複数の波長の光の相対位相が性能に重大な
影響を及ぼす装置に使用して最適な光学ミラーに関す
る。
【0002】
【従来の技術】例えば、レーザに用いられる光学ミラー
は、一般にガラス等の基板上に、高屈折率の誘電体薄膜
(高屈折誘電膜)と低屈折率の誘電体薄膜(低屈折誘電
膜)とを光学的に波長の半分に相当する膜厚、あるいは
その整数倍の膜厚で交互に積層して作られている。複数
の波長の光、例えば第1の波長と第2の波長の2つの波
長に対して高反射とした光学ミラーは、第1の波長の1
/4波長の光学長に相当する膜厚の高屈折誘電膜と低屈
折誘電膜とを交互に積層して形成した周期構造を持つ第
1波長の高反射膜と、第2の波長の1/4波長の光学長
に相当する膜厚の高屈折誘電膜と低屈折誘電膜を交互に
積層して形成した周期構造を持つ第2の波長の高反射膜
とを順次積層した構造となっている。
【0003】ここに、各光学ミラーの各高反射膜でのパ
ワー反射率は、誘電膜の屈折率差、積層周期数によって
決まるため、従来、この種の光学ミラーにおける各高反
射膜の積層周期数、即ち高屈折誘電膜と低屈折誘電膜と
を1周期とした積層数は、所定のパワー反射率を満たし
た周期数に設定されていた。つまり、パワー反射率を例
えば、99.5%以上とした場合、このパワー反射率9
9.5%以上を満たし、かつ積層周期数をこれ以上多く
してもパワー変化率が殆ど変化しない周期数に設定され
ていた。
【0004】即ち、光学ミラーで複数の波長の光を反射
させる場合、パワー反射率をほぼ任意に設計することは
可能であるが、光の位相の相互関係は、誘電膜の屈折率
が波長分散性を持つため一義的に決めることができず、
光の相互の位相関係については一般に考慮されていなか
った。
【0005】しかしながら、非線形光学効果を利用した
高調波発生装置、パラメトリック発振装置等において
は、非線形光学結晶内で複数の光の位相の相互関係がそ
の性能に重要な影響を与える。
【0006】非線形光学結晶を用いた第2高調波発生レ
ーザ装置を例にして、複数の波長の光の相対的な位相差
がこの装置の性能に与える影響について図5及び図6
用いて説明する。
【0007】この例は、非線形光学結晶1に、例えば波
長1.064μmの赤外線(基本波2)を入射すること
によって、波長532nmのグリーン光(第2高調波
3)を得るようにしたものであり、非線形光学結晶1が
適切な結晶方位に切り出され、非線形光学結晶1の温度
が適切に保たれていれば、基本波2と第2高調波3の位
相速度が一致し、この第2高調波3を非線形光学結晶1
外に取り出すことができる。この状態を非線形光学結晶
1の位相整合が取れた状態と呼ぶ。非線形光学結晶1を
基本波2が通過する際に非線形光学結晶1内で生成され
る第2高調波3は、基本波2に対し90度位相が遅れ
る。
【0008】この位相整合が取れた状態から温度の変化
或いは結晶角度の変化などで基本波2と第2高調波3の
位相速度がズレた場合における第2高調波3の出力は、
ジンク関数で与えられることが知られている。即ち、非
線形光学結晶1内での位相不整合量(rad)を横軸
に、第2高調波3の出力を縦軸にとると、図6に示すよ
うになる。
【0009】ここに、非線形光学結晶1を1回通過した
だけの第2高調波3の出力をシングルパスと表記し、こ
のシングルパスのみ横軸を2倍に拡大して、実験データ
との整合性を取っている。
【0010】直線共鳴器型高調波レーザ装置の場合、基
本波は往復するため第2高調波も両方向に放射される。
この一方を折り返して一方向放射とする場合、片側のミ
ラーを基本波と第2高調波で共に高反射となるような光
学ミラーを用いるが、折り返した基本波によって生成さ
れた第2高調波と折り返した第2高調波の位相が合って
いれば互いに強め合うが、最悪の場合位相が反転してい
ると互いに打ち消し合ってしまう。
【0011】即ち、図5に示すように、非線形光学結晶
1を1回通過した基本波2と、これに伴って発生した第
2高調波3とを光学ミラー4で折り返し、再度非線形光
学結晶1内を通過させた場合を考えると、折り返した第
2高調波3aと、折り返した基本波2aで発生した第2
高調波3bとの位相関係が重要になる。
【0012】位相が完全にあった場合には、図6に反射
位相差δij=0として示したように、シングルパスの4
倍の第2高調波を得ることができる。これは、両第2高
調波3a,3bの電界ベクトルが加算され、第2高調波
パワーは電界ベクトルの2乗となるためである。
【0013】しかしながら、前記両第2高調波3a,3
b間に位相差があった場合、即ち、例えば光学ミラー4
で反射された時の基本波2aと第2高調波3aとの反射
位相差δijが0.25π,0.5π,πの各場合、第2
高調波出力は、同図に示すようになる。なお、図示して
いないが、基本波2aと第2高調波3aとの反射位相差
δijが−0.25π,−0.5π,−πの各場合、第2
高調波出力は、位相不整合量0を中心として、左右対象
となる。
【0014】この計算から明らかなように、光学ミラー
4で折り返した基本波2aと同じく第2高調波3aとの
反射位相差の絶対値|δij|が、0≦|δij|<π/2
程度であれば効率の低下が小さいことが判る。
【0015】ここで重要なことは、非線形光学結晶1と
して、位相不整合量を簡単に調節できるものを使うか、
または位相不整合量を調整する手段を予めもった装置で
あれば、光学ミラー4での反射位相差δijに関係なく、
折り返したことでシングルパスの少なくとも2倍の第2
高調波出力を得ることができる。しかしながら、このよ
うな調整手段を持たない場合、最悪の場合には第2高調
波出力が全く得られないという重大な問題が発生する恐
れがある。
【0016】次に、前記反射位相差δijと光学ミラーと
の関係について説明する。2つの波長の光について高反
射とした反射ミラーとして、入射側から第1の波長(例
えば1μm)の高反射膜、第2の波長(例えば0.5μ
m)の高反射膜の順に2つの高反射膜を順次積層したも
のであって、パワー反射率は充分大きく、積層周期数を
これ以上多くしてもパワー反射率は殆ど変化しないもの
を考える。具体的に、第1の波長の高反射膜にTiO2
薄膜(高屈折誘電膜)とSiO2 薄膜(低屈折誘電膜)
を第1の波長(1μm)の1/4波長分(光学長で0.
25μm)の膜厚で交互に6周期、第2の波長の高反射
膜も同様に光学長で0.125μmの膜厚のTiO2
膜とSiO2 薄膜とを交互に15周期積層したものとす
る。
【0017】第1の波長の光は、入射するとすぐに第1
の波長の高反射膜によって反射されるが、第2の波長の
光は、第1の波長の高反射膜を通過した後、第2の波長
の高反射膜によって反射され再び第1の光の高反射膜を
通過した後に放射される。この時、波長1μmの波長の
光で測定した第1の高反射膜の光路長は、6積層周期で
あるから6μmであるが、0.5μmの波長の光で測定
すると、屈折率が約10%大きいため、光学長は約6.
6μmとなり、往復で約13.2μmの光路長となる。
【0018】いま、第1の波長の高反射膜の積層数を7
周期にしたとすると、往復の光路長は約15.4μmと
なり、第1の波長の高反射膜の積層数を1周期増やした
ことにより、約2.2μmの光路長が新たに増えたこと
になる。これは、波長0.5μmの光では約4.4波長
分に相当し、位相に直せば、1周期積層数を増やしたた
めに、波長0.5μmの光は約0.8πの位相遅れを発
生したことになる。一方、波長1μmの光は1周期積層
数を増やしても、パワー反射率は増加するが、位相は変
化しない。
【0019】このように、高反射膜を構成する高屈折誘
電膜と低屈折誘電膜との積層周期数の違いによって、光
学ミラーを反射した後の複数の光の位相の相互関係が変
化することになる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】このため、従来から一
般に使用されているパワー反射率にのみ着目した光学ミ
ラーを、光の位相関係を制御する必要がある非線形光学
結効果を応用した高調波発生装置やパラメトリック発振
装置に使用した場合、複数の光の反射位相のずれ量がそ
れらの波長によって異なるため、複数の波長の相互の位
相関係が保存されずに、高い出力が得られないといった
問題点があった。
【0021】即ち、所望のパワー反射率が得られるよう
に高反射膜の積層周期数を設定したのみでは、例えば上
記直線共鳴器型第2高調波レーザ装置の場合において、
出射方向に生成された第2高調波と、折り返した基本波
によって生成された第2高調波との位相が合わずに、互
いに打ち消しあって、高い高調波出力を得ることができ
なってしまっていた。
【0022】一方、高反射膜の積層周期数を変えると、
反射後の複数の光の位相の相互関係が変化する。本発明
は上記に鑑み、高反射膜の周期構造を延長し、等価的に
位相補償層を挿入することによって、パワー反射率のみ
ならず、位相ズレを考慮し補償した光学ミラーを提供す
ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る光学ミラーは、高屈折誘電膜と低屈折
誘電膜とを交互に積層して形成した周期構造を持つ高反
射膜を複数有し、複数の波長の光について高反射とした
光学ミラーにおいて、波長λ1 からλn の光に対する各
高反射膜M1 からMn の各々の周期構造の積層周期数を
Λ1 からΛn とし、入射表面をP0 、各周期構造のうち
最も入射側に位置する高屈折誘電膜の入射表面をP1
らPn とし、Pa からPb を波長λc で測定した時の光
学的な距離をFabc として、波長λi の反射波と波長λ
j の反射波の相対位相差から入射時の位相差を差し引い
た反射位相差δijを、 2nπ±|δij|=2×2π(F0jj −F0ii )/λj (0≦|δij|<π,n;整数) と定義した時、前記高反射膜Mi の積層周期数Λi を、
所望のパワー反射率を満たし、かつ前記反射位相差の絶
対値|δij|が、 0≦|δij|<π/2 となる整数値に設定したことを特徴とするものである。
【0024】ここに、所望のパワー反射率は、好ましく
は95%以上である。
【0025】
【作用】上記のように構成した本発明によれば、所望の
パワー反射率が得られ、しかも複数の波長の相互の位相
関係が保存されるように設定された積層周期数を有する
複数の高反射膜によって、例えば直線共鳴器型高調波レ
ーザ装置に使用した場合に、出射方向に生成された第2
高調波と、折り返した基本波によって生成された第2高
調波との位相とが互いに強め合うようにして、高い高調
波出力を得ることができる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図
4は、複数の高反射膜M1 ,…,Mh ,Mi ,Mj ,…
を有する複数の波長の光λ1 ,…,λh ,λi ,λj
…について高反射とした光学ミラーを模式的に示すもの
で、これらを保持するガラス等の保持体は、同図におい
て右側であっても左側であっても、また高反射膜の中間
であっても良い。
【0027】いま、一つの高反射膜Mi の積層周期数Λ
i を例にして説明するが、これは他の高反射膜M1
…,Mh ,Mj ,…も同様である。この高反射膜M
i は、波長λi の光について高反射とした反射膜で、高
屈折率の誘電体膜(高屈折誘電膜)5と低屈折率の誘電
体膜(低屈折誘電膜)6とを交互に積層して形成した周
期構造を持つよう構成されているとともに、この高屈折
誘電膜5と低屈折率の低屈折誘電膜)6の膜厚は、波長
λi の1/4波長分、即ち光学長でλi /4に設定され
ている。ここに、光学長とは、光路の長さにその屈折率
を乗じた光学的な長さをいう。
【0028】そして、同図に示すように、入射表面をP
0 、高反射膜Mi の最も入射側に位置する高屈折誘電膜
5の入射表面をPi 、高反射膜Mj の最も入射側に位置
する高屈折誘電膜5の入射表面をPj とし、各入射表面
間の光学長は、簡単のために膜面に垂直であるとする。
【0029】但し、リングレーザ装置などに使用される
垂直入射以外の場合にも光学長を光路に沿って定義すれ
ば全く同じ論理が成立し、同じ効果が得られることは言
うまでもない。
【0030】そして、波長λi の光は、高反射膜Mi
反射され、波長λj の光は、高反射膜Mj で反射され
て、両者の間に反射位相差δijが生じるのであるが、こ
の高反射膜Mi の積層周期数Λi は、この高反射膜Mi
が波長λi の光に対する所望のパワー反射率を有し、か
つP0 からPj を波長λj で測定した時の光学的な距離
をF0jj 、P0 からPi を波長λi で測定した時の光学
的な距離をF0ii として、波長λi の反射波と波長λj
の反射波の相対位相差から入射時の位相差を差し引いた
反射位相差δijを、 2nπ±|δij|=2×2π(F0jj −F0ii )/λj …… (0≦|δij|<π,n;整数) と定義した時、前記反射位相差の絶対値|δij|が、 0≦|δij|<π/2 となる整数値に設定されている。
【0031】この積層周期数Λi の決定は、例えば以下
のようにして行うことができる。前記のように反射位相
差δijを定義すると、この反射位相差δijは、積層周期
数Λi の増減に対し、ほぼ a=(λj /λi )・(1/(2×|1−(Fiji /Fijj )|) ここに、Fiji ;Pi からPj を波長λi で測定した時の光学的な距離 ijj ;Pi からPj を波長λj で測定した時の光学的な距離 とした周期的な振る舞いを示す。
【0032】ここで求められた値aの整数倍a・n
(n;整数)で反転位相差δij≒0となるので、これに
近い整数値を求め、この値を上記に代入することによ
り、積層周期数Λi を求めることができる。
【0033】ここに、高反射膜の最も入射側に位置する
高屈折誘電膜の入射表面を基準にしたのは、以下の理由
による。反射位相差δijの発生は、低屈折誘電膜と高屈
折誘電膜の周期構造を用いた高反射膜内の定在波分布を
考察することで理解できる。
【0034】即ち、高反射膜内の定在波は、低屈折誘電
膜と高屈折誘電膜の界面が節となり、複数の高反射膜
は、互いに界面を共有して接続されているため、各々の
定在波は節の部分が接して空間的に固定されている。ま
た、周期構造による反射の位相は、反射端面(この場
合、誘電膜界面)では低屈折誘電膜から高屈折誘電膜に
入射した界面からの反射は位相反転を起こすが、高屈折
誘電膜から低屈折誘電膜に入射した場合位相は保存され
ることから、高反射膜内では位相ズレは0またはπの2
値しか取り得ない。
【0035】そこで、入射点からこの接続点までの光学
長と位相ズレが0かπかに注意すれば、反射ミラーによ
る相対位相差は、その波長の高反射膜以外の通過する媒
体の屈折率が重要であると考えられる。
【0036】以上の説明から、高反射膜の各周期構造の
最前面を基準点とし、その更に入射側が相対的に高屈折
か否かによってπの位相ズレの有無を反射位相差δij
取り込む方法がより正確ではあるが、低屈折誘電膜が周
期構造の最前部にきたとしても、一般に低屈折誘電膜で
は屈折率の波長分散性が小さく、また光学長も小さいこ
とから実用上無視できるためである。
【0037】次に、前記積層周期数の具体的な決定を、
図1に示すように、λ=860nmの波長の光を反射す
る860nm高反射膜7と、λ/2=430nmの波長
の光を反射する430nm高反射膜8とを有し、高屈折
誘電膜5としてTiO2 膜を、低屈折誘電膜6としてS
iO2 膜をそれぞれ使用して、高反射膜7,8を非線形
光学結晶としてのニオブ酸カリウム(KNbO3 )単結
晶9の端面に形成した例を参照して説明する。
【0038】なお、860nm高反射膜7の高屈折誘電
5及び低屈折誘電膜6の膜厚は、860nmの光学長
で215nmに、430nm高反射膜8の高屈折誘電膜
5及び低屈折誘電膜6の膜厚は、430nmの光学長で
108nmにそれぞれ設定されており、ここでは、86
0nm高反射膜7の高屈折誘電膜5と低屈折誘電膜6と
の積層周期数を求めるものとする。
【0039】この場合、高屈折誘電膜5としてTiO2
膜と低屈折誘電膜6としてSiO2膜の波長860nm
及び430nmに対する屈折率、860nm高反射膜1
層当りの光学長は、下表の通りである。
【0040】
【表1】
【0041】ここで、パワー反射率を、例えば99.5
%以上とすると、860nm高反射膜7及び430nm
高反射膜8の各々の高屈折誘電膜5と低屈折誘電膜6と
の積層周期数は6周期となる。
【0042】従来の光学ミラーでは、パワー反射率から
高反射膜の積層周期数を定めていたため、この種の高反
射膜の積層周期数は、一般に6周期に設定されていた。
しかしながら、860nm高反射膜7の高屈折誘電膜
と低屈折誘電膜6との積層周期数を6周期とした場合、
前記式において、 0jj =(239.12+219.51)×6 =2751.78(nm) F0ii =0(nm) であるため、反射位相差δijは、 |δij|=1.12π となる。
【0043】そして、このように大きな反射位相差δij
が生じると、前述のように、直線共鳴器型高調波レーザ
装置の反射ミラーとして使用した場合、折り返した第2
高調波(430nm)と折り返した基本波(860n
m)で発生した第2高調波(430nm)とが互いに打
ち消し合って、高い第2高調波出力が得られないことに
なる。
【0044】そこで、本実施例では、860nm高反射
膜7の高屈折誘電膜5と低屈折誘電膜6との積層周期数
を8周期としている。このように、積層周期数を8周期
とすると、前記式において、 0jj =(239.12+219.51)×8 =3669.04(nm) F0ii =0(nm) であるため、反射位相差δijは、 |δij|=0.16π となり、0≦|δij|<π/2を満たすことができる。
【0045】これによって、前述のように、直線共鳴器
型高調波レーザ装置の反射ミラーとして使用した場合、
折り返した第2高調波(430nm)と折り返した基本
波(860nm)で発生した第2高調波(430nm)
とが互いに強め合って、高い第2高調波出力を得ること
ができる。
【0046】これらの関係を下表に示す。
【0047】
【表2】
【0048】なお、上記実施例においては、2つの高反
射膜7,8を、非線形光学結晶(KNbO3 結晶)9の
端面に形成しているが、非線形光学結晶9とは別体とし
て、ガラス等の基板の表面に形成しても良いことは勿論
である。
【0049】次に、上記従来例と本実施例における効果
の比較を図2及び図3を参照して説明する。図2は、基
本波(860nm)を非線形光学結晶に入射して第2高
調波(430nm)を発生させた時の第2高調波出力の
測定に用いた光学系の配置を模式的に示すもので、光源
として波長862nmの半導体レーザ(図示せず)を用
い、コリメートした後、シリンドリカルレンズ10を用
いて略円形のビームに整形しガラスフィルタ11を通過
させて偏光ビームスプリッタ12に入射させる。そし
て、焦点距離100mmの球面レンズ13で集光して試
料14に入射させ、波長860nmの光を99.9%遮
り、430nmの光を78%透過するガラスフィルター
15を通過した第2高調波(430nm)出力をパワー
メータのシリコンディテクタ16で測定するようにした
ものである。
【0050】ここに、前記偏光ビームスプリッター12
は、860nmの半導体レーザ光を透過するよう配置し
て、第2高調波(430nm)は偏光が半導体レーザか
らの基本波(860nm)と90゜異なるために透過し
ないようになされている。
【0051】前記試料14として、ペルチェ素子により
温調を可能としたニオブ酸カリウム(KNbO3 )単結
晶を用いた。KNbO3 単結晶は、a軸方向に光を伝搬
するよう切り出され、光学研磨した後にその両面14
a,14bに通常行われる方法と同様の電子ビーム蒸着
法でコーティングを施した。
【0052】そして、第1の試料14(試料A)とし
て、本実施例と同様な高反射膜、即ち試料14の一端面
14aに8周期の860nm高反射膜と15周期の43
0nm高反射膜とを有するものを、第2の試料(試料
B)として、従来例と同様な高反射膜、即ち試料14の
一端面14aに6周期の860nm高反射膜と15周期
の430nm高反射膜とを有するものを、第3の試料
(試料C)として、シングルパスを得るため試料14の
一端面14aに860nm,430nmの2波長で低反
射のコーティングを施したものをそれぞれ使用した。
【0053】なお、前記各試料A〜Cにおいて、試料1
3の他端面には、860nm,430nmの2波長で低
反射のコーティングが施されている。これらの試料14
(試料A〜C)を基に、図2に示す光学系により得られ
た第2高調波(430nm)出力を縦軸に、KNbO3
結晶の温度を横軸にしたものを図3に示す。なお、第2
高調波出力は、シングルパスの出力を1として相対値を
示している。
【0054】このように、波長860nmの光と波長4
30nmの光を共に反射させて共鳴させた場合、原理的
にはシングルパスの4倍の第2高調波出力を期待するこ
とができるが、実験の結果、従来例では最大でシングル
パスの2.2倍であった。一方、本実施例では、シング
ルパスの3.5倍の出力が得られ、本実施例により従来
例の1.6倍の出力増大が図れた。
【0055】
【発明の効果】本発明は上記のような構成であるので、
特に非線形光学効果を利用した高調波発生装置やパラメ
トリック発振装置等、非線形光学結晶内で複数の光の位
相の相互関係がその性能に重大な影響を与える装置に使
用した時に、例えば出射方向に生成された第2高調波
と、折り返した基本波によって生成された第2高調波と
の位相とが互いに強め合うようにして、その性能が最大
に発揮できるよう前もって光学ミラーを設計して製作す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の高反射膜の具体的な積層構
造を示す概略断面図である。
【図2】基本波を非線形光学結晶に入射して第2高調波
を発生させた時の第2高調波出力の測定に用いた光学系
の配置を模式的に示す模式図である。
【図3】図2に示す光学系を用いて第2高調波出力を測
定した時の実験結果を示す特性図である。
【図4】高反射膜の積層構造を示す概略断面図である。
【図5】第2高調波発生を例とした基本波と第2高調波
の位相関係の説明に付する光学部品の概略配置図であ
る。
【図6】図5における反射後の基本波と第2高調波との
相対的な位相差をパラメータとした第2高調波を計算し
た特性図である。
【符号の説明】
1 非線形光学結晶 2,2a 基本波 3,3a,3b 第2高調波 4 光学ミラー 5 高屈折誘電膜 6 低屈折誘電膜 7 860nm高反射膜 8 430nm高反射膜 9 非線形光学結晶(KNbO3 単結晶) 14 試料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−204702(JP,A) 特開 平4−204526(JP,A) 特開 平4−80980(JP,A) 特開 昭63−165806(JP,A) 特開 昭55−46706(JP,A) 特開 昭63−50820(JP,A) 特開 平6−265953(JP,A) 国際公開93/5413(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/37 G02B 5/28

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高屈折誘電膜と低屈折誘電膜とを交互に積
    層して形成した周期構造を持つ高反射膜を複数有し、複
    数の波長の光について高反射とした光学ミラーにおい
    て、波長λ1 からλn の光に対する各高反射膜M1 から
    n の各々の周期構造の積層周期数をΛ1 からΛn
    し、入射表面をP0 、各周期構造のうち最も入射側に位
    置する高屈折誘電膜の入射表面をP1 からPn とし、P
    a からPb を波長λc で測定した時の光学的な距離をF
    abc として、波長λi の反射波と波長λj の反射波の相
    対位相差から入射時の位相差を差し引いた反射位相差δ
    ijを、 2nπ±|δij|=2×2π(F0jj −F0ii )/λj (0≦|δij|<π,n;整数) と定義した時、前記高反射膜Mi の積層周期数Λi を、
    所望のパワー反射率を満たし、かつ前記反射位相差の絶
    対値|δij|が、 0≦|δij|<π/2 となる整数値に設定したことを特徴とする光学ミラー。
  2. 【請求項2】所望のパワー反射率が95%以上のパワー
    反射率であることを特徴とする請求項1記載の光学ミラ
    ー。
  3. 【請求項3】前記複数の高反射膜を基板の表面にコーテ
    ィングして構成したことを特徴とする請求項1記載の光
    学ミラー。
  4. 【請求項4】前記複数の高反射膜を非線形光学結晶の表
    面にコーティングして構成したことを特徴とする請求項
    1記載の光学ミラー。
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