JP3362441B2 - エネルギー吸収部材 - Google Patents

エネルギー吸収部材

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JP3362441B2
JP3362441B2 JP10735193A JP10735193A JP3362441B2 JP 3362441 B2 JP3362441 B2 JP 3362441B2 JP 10735193 A JP10735193 A JP 10735193A JP 10735193 A JP10735193 A JP 10735193A JP 3362441 B2 JP3362441 B2 JP 3362441B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エネルギー吸収部材に
関し、とくに、樹脂と補強繊維との複合材料からなる、
衝撃エネルギー吸収部材の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、航空機の座席周り等や、自動
車の座席周り、バンパー周り、各種構造部材に、衝撃エ
ネルギーを吸収するエネルギー吸収部材が用いられる
(特開昭60−109630号公報、特開昭62−17
438号公報等)。このエネルギー吸収部材には、衝撃
エネルギーを良好に吸収できる性能の他、一般に軽量、
高剛性であることが要求されることから、樹脂と補強繊
維との複合材料、いわゆる繊維強化プラスチック(以
下、FRPと言うこともある。)、中でも炭素繊維強化
プラスチック(以下、CFRPと言うこともある。)が
適しているとされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の樹脂
と補強繊維との複合材料からなるエネルギー吸収部材
は、エネルギー吸収能力、剛性、樹脂と補強繊維との接
着性等に未だ不十分な面があり、十分に実用に供されて
いないのが実情である。
【0004】本発明は、剛性、樹脂と補強繊維との接着
性等に優れ、効率よくエネルギーを吸収できるとともに
十分に高いエネルギー吸収能力を発揮可能なエネルギー
吸収部材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的に沿う本発明の
請求項1に係るエネルギー吸収部材は、樹脂と補強繊維
との複合材料からなり、前記樹脂の破断伸度が前記補強
繊維の破断伸度の1〜4倍であり、前記補強繊維の破断
伸度が1.5%以上であることを特徴とするものからな
る。
【0006】また、本発明の請求項2に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf/mm
2 以上であることを特徴とするものからなる。
【0007】また、本発明の請求項3に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の引張弾性率が23,000kg
f/mm2 以上であることを特徴とするものからなる。
【0008】また、本発明の請求項4に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の表面起伏度が1.08以上であ
ることを特徴とするものからなる。
【0009】また、本発明の請求項5に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引張
強度が450kgf/mm2以上であることを特徴とす
るものからなる。
【0010】また、本発明の請求項6に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引張
弾性率が23,000kgf/mm2 以上であることを
特徴とするものからなる。
【0011】また、本発明の請求項7に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、表面
起伏度が1.08以上であることを特徴とするものから
なる。
【0012】また、本発明の請求項8に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引張
強度が450kgf/mm2以上、引張弾性率が23,
000kgf/mm2 以上であることを特徴とするもの
からなる。
【0013】また、本発明の請求項9に係るエネルギー
吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、前
記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4倍
であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引張
強度が450kgf/mm2以上、表面起伏度が1.0
8以上であることを特徴とするものからなる。
【0014】また、本発明の請求項10に係るエネルギ
ー吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引
張弾性率が23,000kgf/mm2 以上、表面起伏
度が1.08以上であることを特徴とするものからな
る。
【0015】また、本発明の請求項11に係るエネルギ
ー吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引
張強度が450kgf/mm2 以上、引張弾性率が2
3,000kgf/mm2 以上、表面起伏度が1.08
以上であることを特徴とするものからなる。
【0016】また、本発明の請求項12に係るエネルギ
ー吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf/m
2 以上、引張弾性率が23,000kgf/mm2
上であることを特徴とするものからなる。
【0017】また、本発明の請求項13に係るエネルギ
ー吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf/m
2 以上、表面起伏度が1.08以上であることを特徴
とするものからなる。
【0018】また、本発明の請求項14に係るエネルギ
ー吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf/m
2 以上、引張弾性率が23,000kgf/mm2
上、表面起伏度が1.08以上であることを特徴とする
ものからなる。
【0019】また、本発明の請求項15に係るエネルギ
ー吸収部材は、樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
倍であり、前記補強繊維の引張弾性率が23,000k
gf/mm2 以上、表面起伏度が1.08以上であるこ
とを特徴とするものからなる。
【0020】上記各エネルギー吸収部材においては、補
強繊維が炭素繊維からなる場合には、該補強繊維の、表
面の酸素(O)と炭素(C)の原子数比である表面官能
基量(O/C)が0.08以上であることが好ましい。
表面官能基量(O/C)が0.08以上であると、活性
化されたOによって補強繊維表面の接着性が高められ、
樹脂と補強繊維との接着強度が高められて、複合材料全
体として極めて高い剛性、エネルギー吸収能力を発揮で
きる。表面官能基量(O/C)が0.08未満である
と、樹脂と補強繊維との接着性が不十分となり、エネル
ギー吸収時に樹脂と補強繊維との界面で剥離、あるいは
破壊が生じやすくなり、その分エネルギー吸収能力が低
下する。
【0021】また、上記炭素繊維の補強繊維にあって
は、結晶サイズが20Å以上であることが好ましい。こ
の結晶サイズは、とくに引張弾性率に影響し、結晶サイ
ズが20Å以上であると高い引張弾性率を容易に達成で
きるようになる。引張弾性率が高いと、それだけエネル
ギー吸収能力が向上する。
【0022】上記各エネルギー吸収部材においては、補
強繊維は炭素繊維に限定されず、炭素繊維以外の補強繊
維として、たとえば、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊
維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維およびボロン繊維の中
から選ぶことができる。
【0023】上記の複合材料からなるエネルギー吸収部
材について、以下に、さらに詳細に説明する。
【0024】本発明のエネルギー吸収部材を構成する複
合材料における樹脂は、破断伸度が補強繊維の破断伸度
の1〜4倍であるものである。すなわち、樹脂の破断伸
度が相対的に補強繊維の破断伸度に近い値を示す。両者
の破断伸度が近いことで、エネルギー吸収時に、実質的
に両者の同時破壊、あるいはそれに近い破壊状態を現出
でき、複合材料からなるエネルギー吸収部材全体として
効率よくエネルギーを吸収できるようになる。両者間の
破断伸度の差が大きいと、いずれか一方が先に破壊し、
その破壊時期が比較的早いと、高いエネルギー吸収能力
を達成するのが困難になる。
【0025】本発明においては、上記のような破断伸度
を有する樹脂と、破断伸度、引張強度、引張弾性率の少
なくともいずれかが高い補強繊維との複合材料とするこ
とにより、優れたエネルギー吸収能力を発揮でき、高い
比吸収エネルギー量を達成できる。また、補強繊維の表
面起伏度を大きくしておくことにより、あるいは、補強
繊維が炭素繊維である場合には表面官能基量(O/C)
を大きくすることにより、樹脂と補強繊維との接着性が
高められ、両者界面で剥離、破壊しにくい複合材料を実
現でき、優れたエネルギー吸収能力を達成できる。すな
わち、本発明のエネルギー吸収部材においては、補強繊
維の破断伸度と同等かそれよりも少し高い破断伸度を有
する樹脂と、高強度または/および高接着性の補強繊維
とを組み合わせた複合材料とすることにより、効率よ
く、優れたエネルギー吸収能力を発揮でき、高い比吸収
エネルギー量を達成できるようになる。
【0026】本発明における複合材料の樹脂は、使用す
る補強繊維の種類、とくにその破断伸度との関係が上記
の範囲を満たすように選択すればよい。使用する樹脂と
しては、使用する補強繊維にもよるが、たとえば、エポ
キシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルエステ
ル樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂、また、ビス
マレイミド・トリアジン樹脂等のポリイミド樹脂、フラ
ン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリジアリルフタレート樹
脂、さらにメラニン樹脂やユリア樹脂等のアミノ樹脂等
の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、ナイロン6、ナイ
ロン66、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン6
12などのポリアミド、またはこれらポリアミドの共重
合ポリアミド、また、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リブチレンテレフタレートなどのポリエステル、または
これらポリエステルの共重合ポリエステル、さらに、ポ
リカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンス
ルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、
ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、
ポリエーテルイミド、ポリオレフィンなど、さらにま
た、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマ
ーなどに代表される熱可塑性エラストマー、等が挙げら
れる。さらには、上述の範囲を満たす樹脂として、アク
リルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタン
ゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ
素ゴム等のゴムを用いることもできる。さらには、上記
の熱硬化性樹脂、ゴムから選ばれた複数をブレンドした
樹脂を用いることもできる。
【0027】本発明において、補強繊維は、破断伸度が
1.5%以上、引張強度が450kgf/mm2 以上、
引張弾性率が23,000kgf/mm2 以上、表面起
伏度が1.08以上のいずれかの特性、あるいはこれら
特性を任意に組み合わせた特性を有するものである。
【0028】補強繊維の破断伸度が1.5%以上である
と、複合材料からなるエネルギー吸収部材の、破断が予
期される部位が実際に破断に至るまでに、大きなエネル
ギー量を吸収できるようになる。破断伸度が1.5%未
満であると、エネルギー吸収部材の少量の変形で補強繊
維が破断に至り、補強繊維が破断した状態では大きなエ
ネルギーを吸収できないから、結局エネルギー吸収部材
のエネルギー吸収能力が低下することになる。
【0029】補強繊維の引張強度が450kgf/mm
2 以上であると、複合材料からなるエネルギー吸収部材
に加わる衝撃エネルギーに対して、繊維の破断に要する
エネルギー量が大きくなるので、同じ破壊量について大
きなエネルギー量を吸収できるようになる。引張強度が
450kgf/mm2 未満であると、補強繊維が小さな
エネルギー量で破断しやすくなり、大きなエネルギー量
を吸収することが難しくなって、結局エネルギー吸収部
材のエネルギー吸収能力が低下することになる。
【0030】補強繊維の引張弾性率が23,000kg
f/mm2 以上であると、複合材料からなるエネルギー
吸収部材に加わる衝撃エネルギーに対して、高剛性のエ
ネルギー吸収部材を実現でき、大きなエネルギー量を吸
収できるようになる。また、エネルギー吸収部材の座屈
が起こりにくくなり、1個のエネルギー吸収部材の長さ
を長くすることができる。引張弾性率が23,000k
gf/mm2 未満であると、エネルギー吸収部材の剛性
が低く、大きなエネルギー量を吸収することが難しくな
って、結局エネルギー吸収部材のエネルギー吸収能力が
低下することになる。
【0031】補強繊維の表面起伏度が1.08以上であ
ると、表面の起伏による、いわゆるアンカー効果が向上
するので、補強繊維と樹脂との接着性が向上し、極めて
剥離あるいは破壊しにくい界面を達成できる。接着性の
向上により、複合材料における補強繊維の強度を極めて
有効に利用できるようになり、複合材料全体としての剛
性を向上できるので、大きなエネルギー量を吸収できる
ようになる。表面起伏度が1.08未満であると、上記
のようなアンカー効果を期待できなくなるか、あっても
僅かであるので、エネルギー吸収部材の剛性向上が難し
く、結局エネルギー吸収部材のエネルギー吸収能力向上
が難しくなる。
【0032】この補強繊維と樹脂との接着性向上は、前
述の如く、補強繊維が炭素繊維である場合には、さら
に、表面官能基量(O/C)を0.08以上とすること
が有効である。この表面官能基量(O/C)0.08以
上の特性は、補強繊維に、上記破断伸度が1.5%以
上、引張強度が450kgf/mm2 以上、引張弾性率
が23,000kgf/mm2 以上、表面起伏度が1.
08以上の特性とともにもたせることが好ましい。
【0033】さらに前述の如く、補強繊維が炭素繊維で
ある場合には、高い引張弾性率を容易に達成するため
に、結晶サイズが20Å以上であることが好ましい。こ
の結晶サイズに関する特性も、補強繊維に、上記破断伸
度が1.5%以上、引張強度が450kgf/mm2
上、引張弾性率が23,000kgf/mm2 以上、表
面起伏度が1.08以上、さらには表面官能基量(O/
C)0.08以上の特性とともにもたせることが好まし
い。
【0034】本発明のエネルギー吸収部材においては、
複合材料における補強繊維の配列は、特殊な組み合わせ
配列を行う場合を除き、エネルギー吸収部材の圧縮方向
の軸に対して、0°〜±60°の範囲で行えばよい。あ
まり大きな角度の配列では、圧縮方向に作用する衝撃エ
ネルギーの吸収に対し、補強繊維が有効に活用されなく
なる。また、補強繊維の形態としては、とくに限定され
ず、通常のフィラメントの他、補強繊維の織物も使用で
きる。
【0035】また、本発明の複合材料からなるエネルギ
ー吸収部材の形状もとくに限定されず、筒状、柱状、板
状等、各種形状を採用可能である。代表的な形状、ある
いは採用可能な形状を図1ないし図10に例示する。
【0036】エネルギー吸収部材の代表的な形状とし
て、まず、筒状形状を挙げることができる。筒状形状と
して最も代表的な形状は、図1に示すような円筒1であ
る。図における矢印方向が、衝撃エネルギーとしての圧
縮荷重作用方向である。また、図2に示すように、円筒
の頂部を円錐状あるいは球面状に形成した円筒2も適用
できる。さらに、図示は省略するが、角筒、円錐、角
錐、円錐台、角錐台、あるいは、横断面が楕円の筒、さ
らには、図3に示すように、フランジ部3を備えた円筒
(又は角筒)等の筒状形状4も採用できる。
【0037】また、筒状形状に限らず、柱状形状でもよ
い。たとえば、円柱、角柱形状を挙げることができる。
【0038】さらに、板状形状の採用も可能である。た
とえば、波板形状の部材とすれば、座屈に対して強いの
で、エネルギー吸収部材として使用可能となる。また、
図4に示すように、リブ5を有する、たとえば横断面T
字形の形状6、図5に示すように、横断面コ字状の形状
7とすることもできる。図5に示す横断面コ字状の形状
7では、2点鎖線で示すように蓋部材8を設けることも
できる。さらに、図6に示すように、横断面十字状の形
状9とすることもできる。
【0039】さらにまた、各種形状の部材を組み合わせ
た構造とすることも可能である。たとえば、図7、図8
に示すように、大きい円筒10、大きい円錐台11の中
に、小さい細長形状の円柱12、13を入れ、これらを
複合材料で構成することにより、より座屈しにくいエネ
ルギー吸収部材にすることができる。
【0040】さらに、エネルギー吸収部材は、1個の部
材から構成されるものの他、複数の部材を重ねて、ある
いは組み合わせて構成してもよい。たとえば、図9、図
10に示すように、同一あるいは同様の形状の複合材料
からなる部材14、15a、15b、15cを縦に積層
してエネルギー吸収部材16、17を構成するようにし
てもよい。図10の構成にあっては、各部材を中、外交
互に積層してもよい。
【0041】なお、上記のようなエネルギー吸収部材に
おいては、エネルギー吸収部材を端部から逐次破壊させ
るためのトリガ形状を形成しておくことが望ましく、こ
のトリガは、エネルギー吸収部材を押圧する押圧部材側
に設けてもよい。
【0042】〔特性の測定方法および効果の評価方法〕
以下に、本発明における特性の測定方法および効果の評
価方法について説明する。 (1)樹脂の引張破断伸度の測定方法 ASTM−D−638に従い測定する。
【0043】 (2)繊維の破断伸度、引張強度、引張弾性率 JIS−R7601に規定されている樹脂含浸ストラン
ド試験法に準じて測定した。試験に用いた樹脂処方およ
び硬化条件を次に示す。 樹脂処方:“ベークライト”ERL−4221 100部 3−フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3 ・MEA) 3部 アセトン 4部 硬化条件:130℃、30分
【0044】(3)表面起伏度 繊維方向に垂直に複合材料を切断し、切断面を金相研磨
により鏡面研磨する。ここで研磨面に垂直な単繊維の断
面形状を走差型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM
−T300型)を用いて、加速電圧15kV、撮影倍率
10000倍での反射電子組成像をフイルムに撮影す
る。このようにして得られた反射電子組成像写真をさら
に焼付時に2倍に引き伸ばして、すなわち倍率は合計2
0000倍として表面起伏度解析用写真とする。ここで
該表面起伏度解析用写真から、単繊維断面の面積S(m
2 )および外周長さL(mm)を測定する。表面起伏
度は上記Lと、同一のSを有する仮想真円の外周長さの
比として、下式に従って求められる。 表面起伏度=L・(πS)-1/2/2 Lの測定は20000倍にて焼き付けされた写真の単繊
維断面像の外周上に伸縮性のない木綿糸を正確に貼付し
たのち、これを外し、その直線長さを実測する方法にて
行うことができる。また、Sの測定は20000倍にて
焼き付けされた写真上に、単位面積当たりの重量が既知
のトレース紙を置き、単繊維断面像の外周を正確にトレ
ースし、トレース線上を正確に切断したのち、切断され
た単繊維断面像の重量とトレース紙の単位面積当たりの
重量から換算により行うことができる。測定は10本の
単繊維について行い、その平均値をもってその表面起伏
度とする。なお、L、Sの測定にはそれを正確に測定で
きる方法であればその方法に制約はなく、上記の方法以
外に、イメージアナライザーを用いて測定することもで
きる。
【0045】(4)表面官能基量(O/C) X線光電子分光法により、次の手順に従って求めた。先
ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維(束)
をカットして銅製の試料支持台上に拡げて並べた後、光
電子脱出角度を90°とし、X線源としてMgKα1,
2を用い、試料チャンバー中を1×10-8Torrに保
つ。測定時の帯電に伴うピークの補正としてC1Sの主ピ
ークの運動エネルギー値(K.E.)を969eVに合
わせる。C1Sピーク面積をK.E.として958〜97
2eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求
める。O1Sピーク面積をK.E.として714〜726
eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め
る。ここで表面官能基量(O/C)とは、上記O1Sピー
ク面積とC1Sピーク面積の比から、装置固有の感度補正
値を用いて原子数比として算出したものである。なお本
発明者らは、島津製作所(株)製モデルESCA−75
0を用いてO1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比を測定
し、その比を感度補正値2.85で割ることにより表面
官能基量(O/C)を求めた。
【0046】(5)結晶サイズ(Lc) 結晶サイズLcとは、広角X線回折により次の手順に従
って求めた値をいう。すなわち、X線源として、Niフ
ィルターで単色化されたCuのKα線を用い、2θ=2
6.0°付近に観察される面指数(002)のピークを
赤道方向にスキャンして得られたピークからその半価幅
を求め、次の式により算出した値を結晶サイズLcとす
る。 Lc=λ/(β0 cosθ) ここで、λ:X線の波長(この場合1.5418オング
ストローム)、θ:回折角、β0 :真の半価幅をいう。
なお、β0 は次式により算出される値を用いる。 β0 =(βA 2 −β1 2 1/2 ここで、βA 2 :見かけの半価幅、β1 2 :装置定数
(理学電気社製4036A2型X線発生装置を出力35
kV、15mAで使用した場合、1.05×10-2ra
d)をいう。
【0047】(6)比吸収エネルギー量 規格や標準化された手法はまだ無い。図11に示すよう
にエネルギー吸収部材21に押圧部材22を介して圧縮
荷重Pを負荷して部材21を破壊していくと、一般に図
12のような荷重−変位(押圧部材の変位)線図が得ら
れる。この荷重−変位線図において、変位x1 からx2
の間に吸収されたエネルギーは図の斜線部の面積として
求められる。その間に破壊されたエネルギー吸収部材の
重量を求めて(同一断面の部材であれば、断面積と(x
2 −x1 )と比重の積で求まる)、吸収エネルギー量を
重量で除した値を比吸収エネルギー量とする。x1 、x
2 の設定や押圧部材の変位の速度等は適当に設定するこ
とができる。
【0048】
【実施例】
実施例1 東レ(株)製炭素繊維T300(破断伸度:1.5%、
引張弾性率:23,500kgf/mm2 )を補強繊維
とし、マトリクスにエポキシ樹脂(破断伸度2.6%)
を用いて、内径70mm、肉厚約3.0mm、繊維配向
角±14°(円筒軸に対する角度)の円筒を、フィラメ
ントワインディング法により成形した。
【0049】このようにして得られた円筒複合材料か
ら、機械加工により、図13に示すような、内径70m
m、肉厚約3.0mm、繊維配向角±14°、長さlが
70mm、上端の傾斜角θが45度の、円筒形状の複合
材料からなるエネルギー吸収部材31を得た。
【0050】エネルギー吸収部材31を、図14に示す
ように万能試験機32に装着して、クロスヘッド33か
らロードセル34、押圧部材35を介してエネルギー吸
収部材31に圧縮荷重を加えていき、クロスヘッド33
の変位を押圧部材35の変位として荷重−変位特性を測
定した。変位の速度は10mm/分とした。その結果図
15に示すような荷重−変位線図が得られ、変位20〜
40mm間で、比吸収エネルギー量は59kJ/kgと
なった。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のエネルギ
ー吸収部材によるときは、エネルギー吸収部材を樹脂と
補強繊維との複合材料から構成するとともに、樹脂の破
断伸度を補強繊維の破断伸度の1〜4倍とし、かつ、少
なくとも、補強繊維の破断伸度、引張強度、引張弾性
率、表面起伏度のいずれかを特定の値以上としたので、
効率よくエネルギーを吸収でき、しかも、エネルギー吸
収能力の高いエネルギー吸収部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエネルギー吸収部材の形状の一例を示
す斜視図である。
【図2】本発明のエネルギー吸収部材の別の形状例を示
す斜視図である。
【図3】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の形状
例を示す斜視図である。
【図4】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の形状
例を示す斜視図である。
【図5】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の形状
例を示す斜視図である。
【図6】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の形状
例を示す斜視図である。
【図7】本発明のエネルギー吸収部材の別の構造例を示
す斜視図である。
【図8】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の構造
例を示す斜視図である。
【図9】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の構造
例を示す縦断面図である。
【図10】本発明のエネルギー吸収部材のさらに別の構
造例を示す縦断面図である。
【図11】比吸収エネルギー量の測定法を示す分解斜視
図である。
【図12】比吸収エネルギー量の測定における荷重−変
位線図である。
【図13】実施例1におけるエネルギー吸収部材の斜視
図である。
【図14】実施例1における荷重−変位特性の測定を示
す万能試験機の部分正面図である。
【図15】実施例1における荷重−変位線図である。
【符号の説明】
1、2 円筒形状のエネルギー吸収部材 3 フランジ部 4 フランジ部を備えた円筒形状のエネルギー吸収部材 5 リブ 6 横断面T字形のエネルギー吸収部材 7 横断面コ字形のエネルギー吸収部材 8 蓋部材 9 横断面十字状のエネルギー吸収部材 10 円筒形状のエネルギー吸収部材 11 円錐台形状のエネルギー吸収部材 12、13 細長形状の部材 14、15a、15b、15c エネルギー吸収部材を
構成する部材 16、17 組み合わせ構成のエネルギー吸収部材 21 エネルギー吸収部材 22 押圧部材 31 エネルギー吸収部材 32 万能試験機 33 クロスヘッド 34 ロードセル 35 押圧部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−305860(JP,A) 特開 平3−168219(JP,A) 特開 平4−146210(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16F 7/12 C08J 5/04

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上であ
    ることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  2. 【請求項2】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf/m
    2 以上であることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  3. 【請求項3】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の引張弾性率が23,000k
    gf/mm2 以上であることを特徴とするエネルギー吸
    収部材。
  4. 【請求項4】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の表面起伏度が1.08以上で
    あることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  5. 【請求項5】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引
    張強度が450kgf/mm2 以上であることを特徴と
    するエネルギー吸収部材。
  6. 【請求項6】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引
    張弾性率が23,000kgf/mm2 以上であること
    を特徴とするエネルギー吸収部材。
  7. 【請求項7】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、表
    面起伏度が1.08以上であることを特徴とするエネル
    ギー吸収部材。
  8. 【請求項8】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引
    張強度が450kgf/mm2 以上、引張弾性率が2
    3,000kgf/mm2 以上であることを特徴とする
    エネルギー吸収部材。
  9. 【請求項9】 樹脂と補強繊維との複合材料からなり、
    前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1〜4
    倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以上、引
    張強度が450kgf/mm2 以上、表面起伏度が1.
    08以上であることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  10. 【請求項10】 樹脂と補強繊維との複合材料からな
    り、前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1
    〜4倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以
    上、引張弾性率が23,000kgf/mm2 以上、表
    面起伏度が1.08以上であることを特徴とするエネル
    ギー吸収部材。
  11. 【請求項11】 樹脂と補強繊維との複合材料からな
    り、前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1
    〜4倍であり、前記補強繊維の破断伸度が1.5%以
    上、引張強度が450kgf/mm2 以上、引張弾性率
    が23,000kgf/mm2 以上、表面起伏度が1.
    08以上であることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  12. 【請求項12】 樹脂と補強繊維との複合材料からな
    り、前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1
    〜4倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf
    /mm2 以上、引張弾性率が23,000kgf/mm
    2 以上であることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  13. 【請求項13】 樹脂と補強繊維との複合材料からな
    り、前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1
    〜4倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf
    /mm2 以上、表面起伏度が1.08以上であることを
    特徴とするエネルギー吸収部材。
  14. 【請求項14】 樹脂と補強繊維との複合材料からな
    り、前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1
    〜4倍であり、前記補強繊維の引張強度が450kgf
    /mm2 以上、引張弾性率が23,000kgf/mm
    2 以上、表面起伏度が1.08以上であることを特徴と
    するエネルギー吸収部材。
  15. 【請求項15】 樹脂と補強繊維との複合材料からな
    り、前記樹脂の破断伸度が前記補強繊維の破断伸度の1
    〜4倍であり、前記補強繊維の引張弾性率が23,00
    0kgf/mm2 以上、表面起伏度が1.08以上であ
    ることを特徴とするエネルギー吸収部材。
  16. 【請求項16】 前記補強繊維が、表面の酸素(O)と
    炭素(C)との原子数比である表面官能基量(O/C)
    が0.08以上の炭素繊維である、請求項1ないし15
    のいずれかに記載のエネルギー吸収部材。
  17. 【請求項17】 前記補強繊維が、結晶サイズが20Å
    以上の炭素繊維である、請求項1ないし16のいずれか
    に記載のエネルギー吸収部材。
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