JP3335881B2 - 材料設計支援システム、およびコンピュータシステムに系の安定構造や動的挙動を原子や分子レベルで解析させこれにより材料の設計支援を行うためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体 - Google Patents

材料設計支援システム、およびコンピュータシステムに系の安定構造や動的挙動を原子や分子レベルで解析させこれにより材料の設計支援を行うためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は計算機を利用して物
質および材料の設計を行うための支援システム(CAD
システム)に係り、特にMM(分子力学)計算、MD
(分子動力学)計算に関するものである。
【0002】
【従来の技術】計算機を利用して物質および材料の設計
を行う場合、結晶系の構造安定性や動的挙動等を、MM
(分子力学)計算やMD(分子動力学)計算を用いて解
析することが一般に知られている。
【0003】MD計算とは有限温度での原子や分子の運
動の時間変化をニュ−トン方程式に従って追跡する手法
であり、系の徴視的な挙動を調べる手段として物質・材
料設計における必要不可欠な技術の一つとなっている
(文献[1]:「上田顯,コンピュータシミュレーショ
ン,朝倉書店(1990)」)。
【0004】また、MM計算とは、系の最安定構造を解
析するための手法であり、絶対零度(T=0K)でのM
D計算に相当する(文献[2]:「岡田勲,大澤映二
編:分子シミュレーション入門,海文堂(1989)」)。
【0005】MM計算及びMD計算は無限系(例えば結
晶)と孤立系(例えば分子)の両者に対して適用可能で
あるが、本発明におけるMM/MD計算は、無限系を対
象とする。
【0006】ここで「無限系」とは、原子・分子レベル
で見た時に十分な広がりを持つ系、すなわち結晶・アモ
ルファス・液晶等の固体および液体を指す。このような
無限系を計算機シミュレ−ションで扱う場合、そのまま
では取り扱えないため、無限系内に、ユニットセルと呼
ばれる所定の大きさのセル(単位セル)を設定する。そ
して、無限系を、上記ユニットセルが3次元的に周期的
に連続する系として把握するようにする。
【0007】このようにすれば、ユニットセルについ
て、周期的境界条件を課して計算を行うだけで、無限系
についての計算機シュミレーションを行うことができ
る。
【0008】このような周期的境界条件を用いた取り扱
いは、もともと周期性を有する結晶系に対しては妥当な
手法と言える。しかしながら、不純物等の存在で周期性
が消滅してしまった系に対しても近似法として適用がな
されているということがある。
【0009】周期性を消滅させる原因(乱れ)として
は、まず不純物が挙げられる。ここでいう不純物とは、
置換型・侵入型不純物原子及び欠陥の3種類(以下、こ
の3種類を「不純物原子」と称する)のことであり、1
個以上の不純物原子が結晶中で比較的近傍に存在してい
る集合のことを「不純物」と呼ぶ。また、乱れとして
は、不純物の他にも破壊現象等を挙げることができる
が、この明細書では、このような乱れが比較的低濃度で
分散して存在している系(乱れ同士の相互作用がほとん
どない系)を「非周期系」として定義する。
【0010】このような「非周期系」は、前記乱れが不
純物である場合には、「孤立した不純物を含む結晶系」
ということもできる。この「孤立した不純物を含む結晶
系」とは、結晶中にこのような「不純物」が唯1つしか
存在していない場合、或いは複数個存在している場合で
も、それら不純物同士が十分離れて位置しており、不純
物間の相互作用がほとんどない状態をいう。
【0011】このような系は、別の表現によれば「不純
物」の含有率が非常に低い系のことであり、例えば(化
合物)半導体中の欠陥を例として挙げることができる。
これは、DXセンターとして知られ、半導体のエネルギ
ーギャップの中央付近に現れる深い不純物準位を与え、
半導体レーザなどの素子特性に大きな影響を及ぼすもの
である。
【0012】このような「非周期系」の構造安定性や動
的挙動等を前述のMM計算やMD計算によって解析を行
う場合において、前記「周期的境界条件」を用い1つの
ユニットセルに注目してシュミレーションを行う方法
は、「スーパーセル法」として一般に知られている。
【0013】ス−パ−セル法は、ユニットセルに乱れを
1つだけ配置し、ユニットセルのサイズを十分大きく設
定することで乱れ同士の相互作用がない状態を近似的に
記述する方法である。すなわち、スーパーセル法では、
前述した非周期系(乱れが「不純物」である場合には
「孤立した不純物を含む結晶系」)の状態を実現するた
めに、通常、ユニットセル中に唯1つの乱れを設定す
る。しかし、周期境界条件によってこの乱れはは周囲の
ユニットセル(これを「イメージセル」という)にも自
動的に存在するので、それらとの相互作用を小さくして
正しい計算を行うためには、ユニットセルのサイズをで
きるだけ大きく設定する必要がある。
【0014】ただし、スーパーセル法では、シミュレー
ションを開始する前に予めユニットセルのサイズを決め
ておく必要があり(シミュレーション中のサイズ変更は
不可能)、そのサイズは計算精度と計算時間との兼ね合
いで(小さめに)決められる場合が多い。
【0015】このス−パ−セル法を用いることによっ
て、周期系に対する計算手法と同じ枠組み内で非周期系
も取り扱うことができるため、ス−パ−セル法は、従来
より、MD計算やMM計算に対する便宜的な手法として
ごく一般的に用いられているのである。
【0016】ところで、このスーパーセル法を用いてM
M計算やMD計算を行うには、系の各構成原子に働く力
を、原子間相互作用に基づいてMM計算における繰り返
し計算の各ステップやMD計算の各時刻(繰り返し計算
の1ステップ)ごとに計算する必要がある。また同時に
系のポテンシャルエネルギ−も原子間相互作用に基づい
て計算される場合が多い。この原子間相互作用が長距離
相互作用である場合、力やエネルギ−の計算の収束が遅
く、特にr−1 関数であるク−ロン相互作用に関して
は、原子のペアについて単純に総和計算を行ったのでは
精度の良い計算が困難であることが知られている。その
ためク−ロン相互作用による力やエネルギ−の計算を上
述した無限系(周期的境界条件が課された系)に対して
行う場合は、エワルド(Ewald)法と呼ばれる手法
を用いることが一般的である(前述の文献[1])。
【0017】このエワルド法はク−ロン相互作用だけで
なく、r−n関数で与えられる相互作用(多重極相互作
用やファン・デル・ワ−ルス力)の格子和(異なるユニ
ットセルに属する等価な原子に関する和)の計算に適用
可能であり、格子和の計算を実空間と虚数空間の二つに
分けてそれぞれの収束をうまく速めることでr−n長距
離相互作用の力やエネルギ−の計算を効率化する優れた
手法である。
【0018】しかしながら、従来の手法による周期系お
よびス−パ−セル法を適用した非周期系に対するMM/
MD計算は以下のような問題を抱えている。
【0019】すなわち、MM/MD計算の実行時間のほ
とんどは力(およびエネルギ−)の計算によって費やさ
れる。原子間相互作用が長距離相互作用である場合、考
慮しなければならないペアの数が膨大なものとなり、特
にク−ロン相互作用に関してはエワルド法を適用しても
依然計算時間が深刻な間題として残る。
【0020】さらに、MD計算に関しては、統計力学的
に許容される範囲内に温度ゆらぎをおさえるにはユニッ
トセル当たりの原子数Nが数百個程度以上の系に対して
MD計算を行う必要があるため、力に関する計算量を少
しでも減らすことが重要な課題となる。
【0021】特に物質・材料設計を目的とする場合、何
種類もの系に対して温度等のシミュレ−ション条件をい
ろいろ変えてMD計算を繰り返し行うことが要求される
ため、計算時間の短縮、すなわち力の計算の効率化が計
算機による現実的な新材料設計のための大きな鍵となっ
ている。
【0022】またMD計算における繰り返し計算の1ス
テップは現実の系での1ピコ秒以下(0.01PS程
度)にしか相当しないため、物理的に意味のある範囲で
系の時間変化を解析するには何万から何十万ステップ以
上もの繰り返し計算を行う必要がある。そのため計算機
能力の向上にも拘わらず、1回のMD計算に何十日もの
時間を要するという現状が未だ残されている。
【0023】以上の計算時間に関する問題点は、周期系
およびス−パ−セル法で取り扱う非周期系の両者に対し
て長距離相互作用を考慮する場合に生じるものである
が、非周期系に対するMM/MD計算ではさらに次のよ
うな問題が生じる。
【0024】すなわち、非周期系をス−パ−セル法で取
り扱う場合、上述したように異なるユニットセルに含ま
れる乱れ同士の相互作用を無視し得るよう、十分に大き
なサイズのユニットセルを用いて計算を行う必要があ
る。
【0025】しかし原子間相互作用が長距離相互作用で
ある場合、計算時間との兼ね合いから十分なサイズのユ
ニットセルで計算を実行することは現実問題として困難
であり、その結果セルサイズに依存した計算誤差が生じ
ることになる。すなわち、通常のシミュレ―ションでは
計算時間を削減するために程々の大きさのユニットセル
を用いて計算を実行することが多いが、その場合、ユニ
ットセルの大きさによっては、周囲のイメージセルに含
まれる乱れとの相互作用が無視できないことになり、そ
れに応じた計算誤差が生じることになるのである。これ
は、いいかえれば、前に定義した「非周期系」という状
況を正しく扱っていないことになるまたユニットセルの
サイズ依存性を確認するには、ユニットセルのサイズを
変えてMM/MD計算を行い結果の比較を行う必要があ
るが、最も一般的な相互作用であるク−ロン相互作用は
−1 関数であるため、例えば10倍の精度でエネルギ
−の収束を確かめるためには、単純には原子数Nが10
倍のユニットセルを用いてMM/MD計算を行わなけ
ればならない。
【0026】しかし上述したように計算時間がNの二乗
に比例して増大するためク−ロン相互作用に関してはユ
ニットセルのサイズ依存性の碓認さえ難しい現状になっ
ている。
【0027】さらに非周期系でク−ロン相互作用(電
荷)を考慮している場合、ス−パ−セル法では次のよう
な問題が生じる。すなわち、局所的な乱れの有する電荷
の総和が0でない場合、そのような乱れ(例えば置換型
・侵入型不純物イオン等)が導入されることでユニット
セル当たりの電荷の総和自体も0からずれることにな
る。周期的境界条件が仮定されているス−パ−セル法で
は、エネルギ−の発散を防ぐためにユニットセル当たり
の電荷の総和を必ず0にしなければならないという、数
値計算の都合でテクニカルに要求される制約が課され
る。
【0028】この制約の結果、電気的中性を破る乱れを
含む系をス−パ−セル法で取り扱う場合においてユニッ
トセルの電荷の総和が0でない場合には、これを0にす
るために人為的な電荷(通常一様電荷)を各構成原子に
付加しなければならないということがある。これでは、
系の正しい電荷分布での計算が実現できないことにな
る。また、この人為的な電荷の考慮は、特にポテンシャ
ルエネルギ−の値に大きな影響を及ぼすものである。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】以上をまとめると、従
来の周期系及び非周期系をスーパーセル法を用いて解析
する方法では、次のような問題が提起される。
【0030】(1)まず、MM/MD計算においては、
MM/MD計算の実行時間のほとんどは力(およびエネ
ルギ−)の計算によって費やされる。原子間相互作用が
長距離相互作用である場合、考慮しなければならないペ
アの数が膨大なものとなり、特にク−ロン相互作用に関
してはエワルド法を適用しても依然計算時間が深刻な間
題として残る。
【0031】(2)非周期系の計算をスーパセル法に基
づいて行う場合には、異なるユニットセルに含まれる乱
れ同士の相互作用を無視し得るよう、十分に大きなサイ
ズのユニットセルを用いて計算を行う必要がある。
【0032】しかし原子間相互作用が長距離相互作用で
ある場合、計算時間との兼ね合いから十分なサイズのユ
ニットセルで計算を実行することは現実問題として困難
であり、その結果セルサイズに依存した計算誤差が生じ
ることになる。
【0033】またユニットセルのサイズ依存性を確認す
るには、ユニットセルのサイズを変えてMM/MD計算
を行い結果の比較を行う必要があるが、ペアポテンシャ
ルでは、計算時間が原子数Nの二乗に比例して増大する
ため、r−n長距離相互作用に関してはユニットセルの
サイズ依存性の確認さえ難しい現状になっている。
【0034】(3)電気的中性が破れた系に対してスー
パーセル法を使った解析を行う場合には、ユニットセル
当たりの総電荷を0にするために電荷分布を補正する必
要があるが、この場合、系の全ポテンシャルエネルギー
・平衡格子定数・平衡原子座標等が変化してしまうとい
う不都合が生じ、電気的中性が破れた系の電荷分布を厳
密に取り扱うことができない。
【0035】この発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたものであり、その目的とするところは、無限系の安
定構造や動的挙動を、系が周期系であると非周期系であ
るとを問わず、効率的に解析することができる材料設計
支援システムを提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1に記載された発明 (構成)請求項1に記載された発明は、材料の設計支援
に用いられるシステムであって、局所的な乱れを有する
系(非周期系S2 )の構造安定性や動的挙動を原子や分
子レベルで解析する材料設計支援システムにおいて、乱
れを有さない系(リファレンス系S0 )に対する物理量
を処理するリファレンス系S0 処理部と、前記非周期系
2 の構造をリファレンス系S0 からのずれで記述する
ために、前記非周期系S2 に対する物理量、および前記
リファレンス系S0 と前記非周期系S2 の構成原子を1
対1に対応付けるためのリストを処理する非周期系S2
処理部と、原子間または分子間相互作用を記述する関数
形を処理する原子間ポテンシャル処理部と、前記リファ
レンス系S0 のエネルギ−および各原子または各分子に
働く力を計算するリファレンス系S0 計算部と、前記リ
ファレンス系S0 計算部で計算されたリファレンス系S
0 のエネルギ−および構成原子に働く力を用いて、非周
期系S2 のエネルギ−および構成原子に働く力を計算す
る非周期系S2 計算部と、非周期系S2 計算部の計算結
果を用いて、非周期系S2 に対する安定構造あるいは動
的挙動の計算(MM計算あるいはMD計算)を実行する
MM/MD計算部とを有することを特徴とするものであ
る。
【0037】(作用)上述の如く構成すれば、非周期系
2 に対する高速なMM/MD計算を以下のように実現
することができる。
【0038】この発明では非周期系S2 に対するMM/
MD計算を実行する際に、リファレンス系S0 (構成原
子が非周期系S2 の構成原子と1対1に対応した系)を
同時に取り扱う。
【0039】このリファレンス系S0 は、有限温度の下
で温度効果による格子振動を有する系であっても、絶対
零度の下で温度効果による格子振動のない系のいずれで
あっても良い。なお、前者の場合には、リファレンス系
0 を、請求項2,4の発明におけるようにリファレン
ス系S0 (格子振動を考慮しない系)と周期系S1(格
子振動を考慮する系)とに分けて扱うこともできる。
【0040】この発明では、まず、リファレンス系S0
の構造およびポテンシャルパラメ−タ等の処理をリファ
レンス系S0 処理部において行い、非周期系S2 の構造
およびポテンシャルパラメ−タ等の処理およびリファレ
ンス系S0 の構成原子との1対1対応付けを非周期系S
2 処理部において行う。
【0041】次に、リファレンス系S0 に対する力およ
びエネルギ−の計算がリファレンス系S0 計算部で行わ
れる。リファレンス系S0 は周期性を有する系であるた
め、構成原子に働く力の計算には後述の式(18)を適用さ
れ、さらにr−n長距離相互作用の格子和に対してはエ
ワルド法による計算の効率化も可能である。
【0042】このリファレンス系S0 が、温度効果によ
る格子振動を考慮しない系である場合には、ユニットセ
ルU0 当たりの原子数NT= が比較的小さいことか
ら、力の計算量少なくて済むという利点を持っている。
【0043】なお、MM計算は、絶対零度(T=0K)
での解析であるため、常にリファレンス系S0 に対する
力の計算量は少なくなる。
【0044】すなわち、この発明は、非周期系S2 の構
成原子に対する力を求める際に、計算量の少ないリファ
レンス系S0 の構成原子に対する力を用いることで計算
の効率化を図るものである。
【0045】すなわち、この発明では、非周期系S2
構造をリファレンス系S0 からのずれとして記述するこ
とで、従来法(ス−パ−セル法)で扱うような人為的な
周期的境界条件を用いることなく、完全に孤立した乱れ
を含む無限系に対するMM/MD計算を実現する。
【0046】これを行うため本発明は、非周期系S2
理部を有する。この非周期系S2 処理部では、局所的な
乱れによって生じる格子緩和を考慮する領域(実施例で
はRrelax と記述)を設定し、この領域内の原子に関す
る座標やポテンシャルパラメ−タ等、およびこれらの原
子とリファレンス系S0 の原子とを1対1に対応付ける
対応リストを処理する。そして非周期系S2 計算部にお
いて非周期系S2 に対する力(エネルギー)を求める際
に、リファレンス系S0 計算部で計算されたリファレン
ス系S0 に対する力の計算結果を利用することで計算の
効率化を図り、このようにして求めた力を用いてMM/
MD計算部においてMM/MD計算を実行することで、
非周期系S2 に対するス−パ−セル法よりも高精度かつ
高速なMM/MD計算を実現するものである。
【0047】(2)請求項2に記載された発明 (構成)請求項2に記載された発明は、請求項1記載の
材料設計支援システムにおいて、前記非周期系S2 の動
的挙動の解析(MD計算)を有限温度(温度T>0K)
で行う場合に、このシステムは、さらに、前記非周期系
2 の構造を、局所的な乱れを有さないが温度効果によ
る原子の振動を考慮した系(周期系S1 )からのずれで
記述する手段を有し、この手段は、周期系S1 の構造を
リファレンス系S0 (温度効果による原子の振動を考慮
しない系)からのずれで記述するために、この周期系S
1 に対する物理量及びリファレンス系S0 と周期系S1
の構成原子を1対1に対応付けるためのリストを処理す
る周期系S1 処理部と、前記リファレンス系S0 計算部
で計算されたリファレンス系S0 のエネルギ及び構成原
子に働く力を用いて、周期系S1 のエネルギ及び構成原
子に働く力を計算する周期系S1 計算部と、非周期系S
2 の動的挙動を、周期系S1 からのずれとして解析する
ために、周期系MD計算を実行する周期系MD計算部と
を有し、前記非周期系MM/MD計算部は、前記周期系
MD計算部及び非周期系S2 計算部の計算結果を用い
て、非周期系S2 に対する動的挙動の計算(MD計算)
を実行することを特徴とするものである。
【0048】(作用)この発明は、請求項1に記載の発
明において、非周期系Sの動的挙動の解析(MD計
算)を有限温度(温度T>0K)で行う場合に、リファ
レンス系Sのユニットセルが温度効果による格子振動
のために比較的大きなサイズを有する場合にも、非周期
系Sに対する効率的なMD計算を実現しうる手段を提
供するものである。
【0049】すなわち、請求項2記載の発明では、温度
効果による格子振動のために比較的大きなサイズを有す
るリファレンス系Sを周期系Sと呼び、リファレン
ス系Sは温度効果による格子振動を考慮しない系とみ
なす。そして、周期系S1の構造をリファレンス系の構
成原子に働く力を用いることで計算の効率を図り、ひい
ては非周期系Sに対する高精度かつ高速なMD計算を
実現するものである。
【0050】リファレンス系S及び周期系Sの2つ
の系を取り扱うことによる計算の効率化については、後
述する請求項4に記載された発明の説明において説明す
る。なお、請求項1記載の発明においてMD計算部と称
した計算部を請求項2に記載の発明では、周期系MD計
算部と非周期系MD計算部とに分けて取り扱っている。
【0051】この請求項2記載の発明は、非周期系S
に対するMD計算を行う際、リファレンス系S,周期
系S,非周期系Sという3つの系を取り扱うことを
意味するものである。
【0052】(3)請求項3に記載された発明 (構成)請求項3に記載された発明は、請求項1記載の
材料設計支援システムにおいて、非周期系S処理部
は、非周期系Sの格子緩和を考慮する領域をシュミレ
ーション中に変更する手段を有することを特徴とするも
のである。
【0053】(作用)このような構成によれば、格子緩
和(構造変形)が生じる範囲がMM/MD計算開始前に
設定された領域よりも大きくなるような場合に関しても
非周期系Sの安定構造や動的挙動を正確かつ効率的に
計算することが可能になる。
【0054】(4)請求項4に記載された発明 (構成)請求項4に記載された発明は、材料の設計支援
に用いられるシステムであって、局所的な乱れは有さな
いが、温度効果による原子の振動が存在する系(周期系
1 )の原子又は分子の動的挙動を解析する材料設計支
援システムにおいて、温度効果による原子の振動を考慮
しない系(リファレンス系S0 )に対する物理量を処理
するリファレンス系S0 処理部と、前記周期系S1 の構
造をリファレンス系Sからのずれで記述するために、
周期系S1 に対する物理量およびリファレンス系S0
周期系S1 の構成原子を1対1に対応付けるためのリス
トを処理する周期系S1 処理部と、リファレンス系S0
のエネルギ−および各原子または各分子に働く力を計算
するリファレンス系S0 計算部と、前記リファレンス系
計算部で計算されたリファレンス系Sのエネルギ
−および構成原子に働く力を用いて、周期系S1 のエネ
ルギ−および構成原子に働く力を計算する周期系S1
算部と、前記周期系S1 計算部の計算結果を用いて、周
期系S1 に対する動的挙動の計算(MD計算)を実行す
る周期系MD計算部とを有することを特徴とするもので
ある。
【0055】(作用)上述の如く構成すれば、周期系S
1 に対する高速なMD 計算を以下のように実現すること
ができる。
【0056】この発明では周期系S1 に対するMD計算
を実行する際に、リファレンス系S0 (構成原子が周期
系S1 の構成原子と1対1に対応した系)を同時に取り
扱う。
【0057】このリファレンス系S0 は周期系S1 の絶
対零度(T=0K)での構造に相当し、温度効果による
格子振動のない系となっている。そのためリファレンス
系S0 のユニットセルU0 当たりの原子数NT= は、
周期系S1 のユニットセルU1 当たりの原子数NT>
と比較して通常NT= 《NT> となっている。な
お、アモルファス構造等、もともとの最小単位胞がそれ
ほど小さくない系では、NT= 〜NT> という状況
が起こり得る。そのような系に対しては、請求項1にお
いて、リファレンス系Sを温度効果による格子振動を
考慮した系と見なした計算方法によって高精度かつ高速
なMD計算の実現が可能である。
【0058】この発明では、まず、リファレンス系S0
の構造およびポテンシャルパラメ−タ等の処理をリファ
レンス系S0 処理部において行い、周期系S1 の構造お
よびポテンシャルパラメ−タ等の処理およびリファレン
ス系S0 の構成原子との1対1対応付けを周期系S1
理部において行う。
【0059】次に、リファレンス系S0 に対する力およ
びエネルギ−の計算がリファレンス系S0 計算部で行わ
れる。リファレンス系S0 は周期性を有する系であるた
め、構成原子に働く力の計算には後述の式(69)を適用す
ることができ、さらにr−n長距離相互作用の格子和に
対してはエワルド法による計算の効率化も可能である。
【0060】このリファレンス系S0 はユニットセルU
0 当たりの原子数NT= が比較的小さいことから、力
の計算量少なくて済むという利点を持っている。
【0061】すなわち、この発明は、周期系S1 の構成
原子に対する力を求める際に、計算量の少ないリファレ
ンス系S0 の構成原子に対する力を用いることで計算の
効率化を図るものである。
【0062】具体的には、周期系S1 に対する力(およ
びエネルギ−)の計算を周期系S1計算部で行う際に、
以下のように処理する。すなわち、周期系S1 の構成原
子(k0)(基本セルξ= 0に含まれるk番目の原子)
に働く力を計算する際、原子(k0)を中心とするある
領域Rcut を想定し、この領域Rcut 内の原子(k'ξ'
)との相互作用としては周期系S1 における正しい値
を計算し、領域Rcut外の原子(k' ξ' )との相互作
用としては、温度効果による格子振動を無視した場合、
すなわちリファレンス系S0 での相互作用を近似的に用
いる。
【0063】原子間の相互作用は近距離にある原子から
最も強く影響を受けるため、遠距離にある原子との相互
作用のみを近似的に扱うこのような取り扱いは妥当であ
るといえる。
【0064】原子(k0)と相互作用している原子の数
を領域Rcut の内部と外部で比較した場合、領域Rcut
外の原子数の方が圧倒的に多く(正確に言えばそうなる
ように領域Rcut を設定する)相互作用の計算に時間を
要するため、この領域Rcut外の原子との相互作用の計
算に計算量の少ないリファレンス系S0 の計算結果を利
用することで周期系S1 に対する力の計算の効率化が可
能となっている。
【0065】本発明では、このようにして周期系S1
算部で求めた力を用いて周期系MD計算部においてMD
計算を実行することで、周期系S1 に対する従来法より
も高速なMD計算を実現できる。
【0066】(5)請求項5に記載された発明 (構成)請求項5に記載された発明は、請求項1あるい
は4記載の材料設計支援システムにおいて、リファレン
ス系S処理部は、リファレンス系Sにダミー原子又
はダミー分子を設定する手段を有することを特徴とする
ものである。
【0067】(作用)このような構成によれば、リファ
レンス系Sにダミー原子あるいは分子を設置すること
で、格子緩和(構造変形)が任意の大きさで生じるよう
な場合に関しても非周期系S2 あるいは周期系Sの安
定構造や動的挙動を精度良く計算することが可能にな
る。
【0068】(6)請求項6に記載された発明 請求項7に記載された発明は、コンピュータシステム
に、局所的な乱れを有する結晶系(非周期系S2 )の安
定構造性や動的挙動を原子や分子レベルで解析させこれ
により材料の設計支援を行うためのコンピュータプログ
ラムを格納した記憶媒体において、乱れを有さない系
(リファレンス系S0 )に対する物理量を処理するリフ
ァレンス系S0 処理手順と、前記非周期系S2 の構造を
リファレンス系S0 からのずれで記述するために、前記
非周期系S2 に対する物理量、および前記リファレンス
系S0 と前記非周期系S2 の構成原子を1対1に対応付
けるためのリストを処理する非周期系S2 処理手順と、
原子間または分子間相互作用を記述する関数形を処理す
る原子間ポテンシャル処理手順と、前記リファレンス系
0 のエネルギ−および各原子または各分子に働く力を
計算するリファレンス系S0 計算手順と、前記周期系S
1 計算部で計算された周期系S1 のエネルギ−および構
成原子に働く力を用いて、非周期系S2 のエネルギ−お
よび構成原子に働く力を計算する非周期系S2 計算手順
と、非周期系S2 計算部の計算結果を用いて、非周期系
2 に対する安定構造あるいは動的挙動の計算(MM計
算あるいはMD計算)を実行するMM/MD計算手順と
を実行するための指令を格納することを特徴とするもの
である。
【0069】この発明の作用は、請求項1の作用に対応
する。
【0070】(7)請求項7に記載された発明 請求項7に記載された発明は、請求項6記載の記憶媒体
において、前記非周期系S2 の動的挙動の解析(MD計
算)を有限温度(温度T>0K)で行う場合に、この記
憶媒体には、さらに、前記非周期系S2 の構造を、局所
的な乱れを有さないが温度効果による原子の振動を考慮
した系(周期系S1 )からのずれで記述する処理手順が
格納され、この処理手順は、周期系S1 の構造をリファ
レンス系S0 (温度効果による原子の振動を考慮しない
系)からのずれで記述するために、この周期系S1 に対
する物理量及びリファレンス系S0 と周期系S1 の構成
原子を1対1に対応付けるためのリストを処理する周期
系S1 処理手順と、前記リファレンス系S0 計算部で計
算されたリファレンス系S0 のエネルギ及び構成原子に
働く力を用いて、周期系S1 のエネルギ及び構成原子に
働く力を計算する周期系S1 計算手順と、非周期系S2
の動的挙動を、周期系S1 からのずれとして解析するた
めに、周期系MD計算を実行する周期系MD計算手順と
を有し、前記非周期系MM/MD計算手順では、前記周
期系MD計算手順及び非周期系S2 計算手順の計算結果
を用いて、非周期系S2 に対する動的挙動の計算(MD
計算)を実行することを特徴とするものである。
【0071】この発明の作用は、請求項2の作用に対応
する。
【0072】(8)請求項8に記載された発明 請求項8に記載された発明は、請求項6記載の記憶媒体
において、非周期系S2 処理手順は、非周期系S2 の格
子緩和を考慮する領域をシュミレーション中に変更する
手順を含むことを特徴とするものである。
【0073】この発明の作用は、請求項3の作用に対応
する。
【0074】(9)請求項9に記載された発明 請求項9に記載された発明は、コンピュータシステム
に、局所的な乱れは有さないが、温度効果による原子の
振動が存在する系(周期系S1 )での原子又は分子の動
的挙動を解析させこれにより材料の設計支援を行うため
のコンピュータプログラムを格納した記憶媒体におい
て、温度効果による原子の振動を考慮しない系(リファ
レンス系S0 )に対する物理量を処理するリファレンス
系S0 処理手順と、前記周期系S1 の構造をリファレン
ス系Sからのずれで記述するために、周期系S1 に対
する物理量およびリファレンス系S0 と周期系S1 の構
成原子を1対1に対応付けるためのリストを処理する周
期系S1 処理手順と、リファレンス系S0 のエネルギ−
および各原子または各分子に働く力を計算するリファレ
ンス系S0 計算手順と、前記リファレンス系S計算手
順で計算されたリファレンス系Sのエネルギ−および
構成原子に働く力を用いて、周期系Sのエネルギ−お
よび構成原子に働く力を計算する周期系MD計算手順
と、前記周期系S1 計算部の計算結果を用いて、周期系
1 に対する動的挙動の計算(MD計算)を実行する周
期系MD計算手順とを有することを特徴とするものであ
る。
【0075】この発明の作用は、請求項4の作用に対応
する。
【0076】(10)請求項10に記載された発明 請求項10に記載された発明は、請求項6あるいは9記
載の記憶媒体において、リファレンス系S処理手順
は、リファレンス系Sにダミー原子又はダミー分子を
設定する手順を含むことを特徴とするものである。
【0077】この発明の作用は、請求項5の作用に対応
する。
【0078】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1〜第7の実施
形態を図面を参照して説明する。
【0079】(第1の実施形態)非周期系S2 に対する
MM/MD計算 まず、この発明の第1の実施形態を図面を参照して説明
する。
【0080】この実施形態は、請求項1記載の発明に対
応する。この実施形態では、「乱れ」が「不純物」であ
る場合を例にとって説明を行う。また、そのような場
合、非周期系S2 を「孤立不純物系」とも呼ぶ。
【0081】図1は、本発明の第1の実施形態に係わる
材料設計支援システムの構成を示したブロック図であ
る。なお、このシステム構成は、後述する第2、第3及
び第4の実施形態においても基本的に同様である。
【0082】本実施形態の材料設計支援システムは、リ
ファレンス系S0 処理部[1−1]、非周期系S2 処理
部[1−2]、原子間ポテンシャル処理部[1−3]、
リファレンス系S0 計算部[1−4]、非周期系S2
算部[1−5]、MM計算部[1−6]、MD計算部
[1−7]から構成される。本実施形態では、まず図1
の各ブロックにおける処理動作を説明し、その後フロー
チャートを用いて材料設計支援システムにおける処理の
流れを説明する。
【0083】本実施形態の計算方法では、計算対象とし
ている孤立した不純物を含む系(非周期系S2 )の原子
座標を、不純物を一切配置していない系(リファレンス
系S0 )からのずれで表すことを最大の特徴としている
ので、それを図2を用いて説明する。まず、図2におい
て実線で表示されている原子がリファレンス系S0 を構
成する原子であり、ボックスがリファレンス系S0 のユ
ニットセルを表している。
【0084】図2には2次元的に9個のユニットセルが
表示されているが、いま中央のユニットセルを基本セル
(ζ=0)と呼び、この基本セル(ζ=0)のほぼ中心
に位置している原子を他の元素(黒丸で表示)に置換す
ることを考える。これが置換型不純物原子であり、この
ような不純物の存在によってその周囲に格子緩和(構造
変形)が起こる。この格子緩和は、通常、不純物を中心
とする有限な領域のみで生じ、図2ではその領域を点線
で示した。この領域内部の原子は不純物からの相互作用
によって平衡原子座標が変化するため、例えば点線(灰
色丸)で示した原子のような配置をとる。従って、本実
施形態が計算対象としている「孤立した不純物を含む結
晶系」としての非周期系S2 は、リファレンス系S0
ある一部の領域のみの原子座標が異なっているような系
に相当する。
【0085】このような構造を記述する際、リファレン
ス系S0 の結晶構造とリファレンス系S0 からのずれ
(図2では矢印で示されており、以下このずれを緩和量
とも呼ぶ)によって表すことが非常に有効である。何故
なら、まずリファレンス系S0は不純物を一切含まない
ことからユニットセルを比較的小さく設定し得るため、
リファレンス系S0 の結晶構造の記述に必要な情報量
(ユニットセルに含まれる原子の座標やポテンシャルパ
ラメータ等)が少なくて済み、さらにはポテンシャルエ
ネルギーや力の計算量も少なく抑えることができるから
である。
【0086】次に、リファレンス系S0 からのずれに関
してであるが、これは非周期系S2の不純物を中心とす
るある有限な範囲内でのみ存在するものであるため、保
有しておかなければならない情報量(各原子のずれを表
すベクトル)はそれほど多くはない。さらに、非周期系
2 のポテンシャルエネルギーや力などの計算はこのず
れに基づいて計算されるため、この計算量もさほど多く
はならない。
【0087】以上のようなメリットを持つ本実施形態に
よる計算方法と比較して、従来法であるスーパーセル法
では、例えば図2のような格子緩和を計算するにはリフ
ァレンス系S0 のユニットセルの9倍(3次元的には2
7倍)以上の大きさのユニットセルを用いて計算を実行
しなければならないことになり、これは上述の(発明が
解決しようとする課題)で説明したような不都合を含む
ことになる。
【0088】このように本実施形態では、リファレンス
系S0 と非周期系S2 という関係付けられた2つの系を
扱う。この2つの系をそれぞれに関する物理量(原子座
標、ポテンシャルパラメータ、系のポテンシャルエネル
ギー、各原子に働く力など)は明確に区別しておく必要
があるため、以下ではリファレンス系S0 の物理量に関
しては添字0を、非周期系S2 の物理量に関しては添字
2を付加することによってそれらを区別する。
【0089】まず、図1のリファレンス系S0 処理部
[1−1]で行う処理を説明する。上述したようにリフ
ァレンス系S0 は不純物を一切ドープしていない系であ
るため、比較的小さいサイズのユニットセルを取り得
る。例えば、リファレンス系S0として完全結晶を仮定
した場合は、結晶の最小単位胞をリファレンス系S0
ユニットセルと見做すことができる。また、リファレン
ス系S0 としては完全結晶だけでなく、周期性を有する
ものであればアモルファス構造を仮定してもよい。
【0090】リファレンス系S0 処理部[1−1]に
は、リファレンス系S0 の格子定数、ユニットセル当た
りの原子数N0 、N0 個の原子の原子座標r0 (h
0)α、およびこれらの原子のポテンシャルパラメータ
0 (h 0)が入力され、それらの値が保有される。
【0091】周期境界条件の下でユニットセルは全て等
価であるため、ここではζ=0というユニットセルに着
目し、この基本セル(ζ=0)に対して原子座標やポテ
ンシャルパラメータを指定している。r0(h0) α は、
基本セル(ζ=0)に含まれるh番目の原子のα方向の
座標を表している。任意のユニットセルに含まれる原子
の座標r0(h ζ) α は、格子定数(基本並進ベクトル
λα)と原子の相対座標(xλ(h) )から、下記の
(1)〜(3)式のように計算される。
【0092】
【数1】
【0093】ここで、λは3本の基本並進ベクトルを区
別するための添字である。リファレンス系S0 処理部
[1−1]では、原子座標r0(h0) α の代わりに相対
座標xλ(h) を入力し、上記の式に従ってr0(h0) α
を設定する方式を採用したのでもよい。
【0094】次に、ポテンシャルパラメータA0(h0) は
原子間ポテンシャル処理部[1−3]で保持されている
原子間ポテンシャルのパラメータであり、例えばクーロ
ン相互作用の場合は各原子の電荷に相当している。原子
座標r0(h0) α とポテンシャルパラメータA0(h0) に
関しては、周期境界条件のため任意のζに対して、下記
の(4)(5)が成り立っている。
【0095】
【数2】
【0096】以上のリファレンス系S0 の結晶構造を記
述するための取扱いは、通常のスーパーセル法での取扱
いと全く同じである。ポテンシャルパラメータA0(h0)
の取扱いは図1の原子間ポテンシャル処理部[1−3]
での処理動作とも関係することであるため、原子間ポテ
ンシャル処理部[1−3]の説明において詳述する。
【0097】次に、図1の非周期系S2 処理部[1−
2]での処理を説明する。本実施形態では、上述したリ
ファレンス系S0 のいくつかの原子を不純物原子と置き
換えることによって、非周期系S2 の原子を1対1に対
応付けて取り扱う必要がある。また非周期系S2 では、
リファレンス系S0 が有していた周期性が不純物を局所
的に配置したことによって消滅する(図2参照)。その
ため、周期性を表す(hζ)という原子番号の表記方法
はもはや適当ではなく、非周期系S2 の原子に対しては
通し番号(i) を設定する必要がある。
【0098】以上の処理は対応リスト[S0 ←→S2
を用いて行うことができる。この対応リスト[S0 ←→
2 ]の一例を図4に示した。この表は上述した図2に
示した結晶構造に対する対応リスト[S0 ←→S2 ]に
なっている。また、図2のリファレンス系S0 と非周期
系S2 の構成原子に原子番号を割り振ったものが図3で
あり、この図3と対応リスト[S0 ←→S2 ](図4)
の原子番号が対応しているため、以降は結晶構造として
図3を参照することにする。
【0099】図4の対応リスト[S0 ←→S2 ]にはユ
ニットセル中に4個(N0 =4)の構成原子を含むリフ
ァレンス系S0 の原子番号(h ζ)が登録されており、
それに対応する非周期系S2 の構成原子として21個の
通し番号(i) が登録されている。この21個の原子は図
3の点線で囲まれた領域に含まれる原子に相当してい
る。図4の対応リスト[S0 ←→S2 ]によって、非周
期系S2 とリファレンス系S0 の構成原子に1対1の対
応付けが行われていることが分かる。この対応付けは例
えばi=h+ζN0 という関係式によって一意的に行う
ことも可能である。以下では説明を分かりやすいものと
するため、非周期系S2 の不純物を通し番号(i) の代わ
りに不純物番号(σ)でも表すこととする。
【0100】以下、非周期系S2 処理部[1−2]での
処理動作の流れを主にMM/MD計算の初期設定部分に
関して説明する。非周期系S2 の処理部[1−2]に
は、非周期系S2 に含まれる不純物原子の個数Nimp
imp 個の不純物原子の番号、Nimp 個の不純物原子の
ポテンシャルパラメータAimp (σ)、及び格子緩和を
考慮する領域Rrelax が入力される。ここで不純物原子
の番号とは、不純物原子との置き換えを行うリファレン
ス系S0 中の原子の番号である。即ち、不純物原子をN
imp 個発生させる場合は、{(h11 ),(h2 , ζ
2 ),…,(hNi mp,ζNimp)}という組を指定する。
【0101】図3に示された例では不純物原子は1個
(Nimp =1)のみになっており{(h=2、ζ=
0)}が指定される。Nimp としては任意の個数の不純
物原子を取り扱うことが可能であり、また指定する不純
物原子はリファレンス系S0 の基本セル(ζ=0)に含
まれるものでもよいし、イメージセル(ζ≠0)に含ま
れるものでもよい。さらに、この不純物原子を指定する
組み{(h11 ),(h2, ζ2 ),…,(hNimp
ζNimp)}は、対応リスト[S0 ←→S2 ]によって不
純物番号の組み{(σ1 ),(σ2 ),…,
(σNimp)}と対応付けられている。図4の対応リスト
[S0 ←→S2 ]では不純物原子は1個であり、非周期
系S2 の原子(i=2)に不純物番号(σ=1)が割り
振られている。
【0102】次に、格子緩和を考慮する領域Rrelax
ついて説明する。非周期系S2 では、不純物が導入され
たことによって生じる格子緩和が不純物の周辺で生じ
る。この格子緩和は不純物より遠方では殆ど0であるた
め、不純物を中心とする有限な領域内のみで格子緩和を
計算すればよい。この格子緩和を考慮する領域として、
例えば不純物原子の重心を中心とする半径Rrelax の球
を仮定することができる。この領域は必ずしも球形であ
る必要はなく、本実施形態では格子緩和を考慮する領域
を一般的にRrelax で表す。この領域Rrelax は、ユー
ザによって任意に指定されてもよいし、本実施形態の材
料設計支援システム側で設定する方式でもよい。非周期
系S2 処理部[1−2]では、領域Rrelax に含まれる
原子数N2を数え上げる(N2 は、Nの二乗ではなく、
本発明では、Nの二乗はN×Nと記述する)。当然なが
ら、このN2 個の原子にはNimp 個の不純物原子が全て
含まれている。図3に示した例ではN2 =21となって
いる。次に非周期系S2 処理部[1−2]では、N2
の原子の座標r2(i)α を計算し、その値を保有する。
ここでr2(i)α は下記の(6)式によって計算され
る。
【0103】
【数3】
【0104】上述したように、非周期系S2 の原子(i)
は対応リスト[S0 ←→S2 ]によってリファレンス系
0 の原子(h ζ)と1対1に対応付けられている。従
って、式(6)のr0(i)α に対しては対応リスト[S
0 ←→S2 ]とリファレンス系S0 の周期性から
【数4】
【0105】が成り立っており、その値はリファレンス
系S0 処理部[1−1]において既に保有されているr
0(h0) α から簡単に計算される。
【0106】次に、式(6)の第2項であるΔr(i) α
の説明を行う。本実施形態では、非周期系S2 の結晶
構造をリファレンス系S0 からのずれによって記述する
ことを既に述べたが、そのずれがΔr(i) α に相当
し、これは物理的には不純物がドープされたことによる
リファレンス系S0 からの格子緩和を表している。例え
ば、本実施形態の計算方法に基づいて非周期系S2 の安
定構造をMM計算によって求める際は、この緩和量Δr
(i) α を計算する。Δr(i) α にはMM/MD計算
の初期設定段階で初期値が設定される。この初期値はユ
ーザが任意に指定する方式でもよいし、本実施形態の材
料設計支援システムが一括して0に設定する方式でもよ
い。
【0107】次に、非周期系S2 の原子のポテンシャル
パラメータの取扱いを説明する。上述したように非周期
系S2 処理部[1−2]には、Nimp 個の不純物原子
(σ)のポテンシャルパラメータAimp (σ)が入力さ
れる。これを受けて非周期系S2 処理部[1−2]で
は、領域Rrelax に含まれるN2 個の原子(i) のポテン
シャルパラメータA2(i) を
【数5】
【0108】と設定する。このポテンシャルパラメータ
2(i) の取扱いは、リファレンス系S0 のポテンシャ
ルパラメータA0(h0) と同様に原子間ポテンシャル処理
部[1−3]での処理動作と関連しているため、以下原
子間ポテンシャル処理部[1−3]の説明を行う。
【0109】図1の原子間ポテンシャル処理部[1−
3]では、原子間相互作用を表す関数形を保持する。本
実施形態では原子(i) と原子(j)に働く原子間相互作
用を
【数6】
【0110】という関数形によって記述する。ここでA
(i) は、リファレンス系S0 処理部[1−1]や非周期
系S2 処理部[1−2]で述べたポテンシャルパラメー
タA0(h0) 及びA2(i) に相当している。例えば、φ
(ij)がクーロン相互作用を表す場合、A(i) =q
i (qi は原子(i) の電荷)、ψ(r|ij)=1/{r
(ij)}(r(ij)は原子(i) と原子(j)の原子間距
離)となる。
【0111】式(10)のような関数形で記述される原子
間ポテンシャルとして、クーロン相互作用の他に、ファ
ン・デル・ワ−ルス力、多重極相互作用等のr−nで記
述される原子間相互作用がある。これらの相互作用は通
常のシミュレ―ションにおいて基本的に考慮されるもの
であるため、式(10)は原子間ポテンシャルの一般的な
関数形を表しているといえる。本実施形態の材料設計支
援システムでは、例えばクーロン相互作用+ファン・デ
ル・ワ−ルス力というように、同時に複数の原子間相互
作用を扱うことができる。その場合、原子(i) と原子
(j)に働く原子間相互作用φ(ij)は
【数7】
【0112】で記述される。原子間相互作用を1種類の
み考慮する場合も、複数種類考慮する場合も取扱いは同
じであるため、上述したリファレンス系S0 処理部[1
−1]、非周期系S2 処理部[1−2]、及び以下の説
明では添字μを省略する。また、本実施形態では原子間
ポテンシャルに関する説明を行うが、本実施形態による
計算方法では分子性結晶に対する取扱いも可能であり、
その場合は分子間ポテンシャルが原子間ポテンシャルと
同様に処理される。
【0113】非周期系S2 処理部[1−2]の説明での
べたように、リファレンス系S0 と非周期系S2 の原子
は対応リスト[S0 ←→S2 ]によって1対1に対応付
けられており、それらのポテンシャルパラメータは式
(8)及び式(9)によって関係付けられている。式
(8)と式(9)によると、リファレンス系S0 と非周
期系S2 のポテンシャルパラメータを比較した場合、非
周期系S2 の不純物原子はリファレンス系S0 の対応す
る原子とは異なるポテンシャルパラメータの値を持つ
が、それ以外の非周期系S2 の原子はリファレンス系S
0 の対応する原子のポテンシャルパラメータと全く同じ
値を持つ。
【0114】さらに本実施形態の材料設計支援システム
では、不純物原子として置換型・侵入型及び欠陥の3種
類を取り扱うことが可能であり、それらはリファレンス
系S0 と非周期系S2 のポテンシャルパラメータの関係
によって、図5のように区別される。図5に示した3種
類の不純物原子のうち、取扱いに特に注意を要するのが
侵入型不純物原子である。侵入型不純物原子はそれに対
応する原子がリファレンス系S0 にもともと存在しな
い。よって対応リスト[S0←→ S2 ]で1対1の対応
付けを行うため、リファレンス系S0 に予めダミー原子
を設定しておく必要がある。このダミー原子のポテンシ
ャルパラメータA0(h0) は図5に示してあるように常に
0になっているため、ダミー原子が設定されることによ
ってリファレンス系S0 のポテンシャルエネルギーや各
原子に働く力が変化することは一切ない。
【0115】本実施形態の材料設計支援システムでは、
非周期系S2 の安定構造や動的挙動をMM計算やMD計
算によって求めるために、リファレンス系S0 及び非周
期系S2 のポテンシャルエネルギーや各原子に働く力を
計算する。以下この方法を説明する。
【0116】まず、図1のリファレンス系S0 計算部
[1−4]での処理動作を説明する。ここでの計算対象
であるリファレンス系S0 は周期性を有しているため、
その取扱いは従来法であるスーパーセル法における計算
方法と全く同じである。リファレンス系S0 計算部[1
−4]では、リファレンス系S0 のポテンシャルエネル
ギー及び各原子に働く力が計算される。そのために2原
子間の位置ベクトルr0(hζ, h’ζ')α を本実施形
態では下記の(13)式のように定義する。
【0117】
【数8】
【0118】以下で説明を行うポテンシャルエネルギー
や力の計算式の符号は、この式(13)の定義に基づいて
いる。まずポテンシャルエネルギーに関しては、式(1
0)で表される原子間ポテンシャルを用いて原子(h
0)に関して
【数9】
【0119】クーロン相互作用を計算する場合、式(1
4)と式(15)に関してはエワルド法(参考文献1)を
用いて計算の効率化を図ることも可能である。リファレ
ンス系S0 のユニットセル当たりのポテンシャルエネル
ギーE0 cell は式(14)を用いて
【数10】
【0120】のように求められる。従来法であるスーパ
ーセル法では、E0 cell 或いはE0 cel l /N0 (1原子
当たりのポテンシャルエネルギー)が計算される。リフ
ァレンス系S0 に含まれる全てのユニットセル分だけE
0 cell を足し合わせたものが、全ポテンシャルエネルギ
ーE0 whole に相当する。次に、リファレンス系S0
基本セル(ζ=0)中の原子(h 0)に働く力のα成分
0(h0) α は、式(15)を用いて
【数11】
【0121】によって計算される。従来法であるスーパ
ーセル法では、このF0(h0) α を用いてMM計算及び
MD計算が実行される。
【0122】次に、図1の非周期系S2 計算部[1−
5]の動作処理を説明する。非周期系S2 の安定構造等
を求めるため、リファレンス系S0 からの緩和量Δr
(i) αを計算する点が本実施形態の最も大きな特徴であ
る。このΔr(i) α を求めるために本実施形態では、
非周期系S2 に対してΔE 及びΔF(i) α を計算す
る。これら2つの量は
【数12】
【0123】によって定義され、非周期系S2 の物理量
(右辺第1項)からリファレンス系S0 の物理量(右辺
第2項)を差し引いた値になっている。具体的には、Δ
はリファレンス系S0 に不純物がドープされたこと
によって生じる格子緩和によるポテンシャルエネルギー
の変化分を表している。E0 whole もE2 whole も系全
体に対するポテンシャルエネルギーであるため発散量で
あるが、その差ΔE は有限な値となる。これは局所的
に配置された不純物による格子緩和が有限な範囲のみで
生じていることに対応している。
【0124】またF0(i)α とF2(i)α は、それぞれ
リファレンス系S0 と非周期系S2の原子に働く力であ
る。ΔE 及びΔF(i) α の定義は上の式で与えられ
るが、実施の計算は以下のように行う。ΔE 及びΔF
(i) α はそれぞれ2つの項で
【数13】
【0125】と表すことができる。先ずエネルギーに関
しては、
【数14】
【0126】と表される。次に力は、
【数15】
【0127】で与えられる。ここで、式(23)と式(2
8)のe0(i) 及びf0(i)α に関しては、対応リスト
[S0←→ S2] とリファレンス系S0 の周期性から
【数16】
【0128】上述した一連の式は、数学的にはテーラー
展開を表している。非周期系S2 の物理量(E2 whole
及びF2(i)α )をリファレンス系S0 からのずれ(δ
r(ij)或いはΔr(ij)α)によってテーラー展開し、
得られた第0次項からリファレンス系S0 の物理量(E
0 whole 或いはF2(i)α )を差し引いたものが式(2
1)と式(22)の第1項に相当する。そして、テーラー
展開の高次の項が式(21)及び式(22)の第2項に相当
する。この高次の項を与えている式(24)と式(29)で
は2次までの項が書き下されており、O[(δr)3
及びO[(Δr)3 ]は3次以上の任意の次数までの項
を表している。
【0129】また、上記の式(24)と式(29)の代
わりに、後述する式(106)と式(108)におい
て、周期系Sに対する量をリファレンス系Sに対す
る量に置き換えた式を用いても良い。
【0130】次に、図1のMM計算部[1−6]での動
作処理を説明する。このMM計算部[1−6]では、本
実施形態による計算方法に基づいて非周期系S2 の安定
構造をMM計算によって求める。MM計算とは系のポテ
ンシャルエネルギーを最小化することによって安定構造
を求める方法であり、これを実現する手段としていくつ
かの計算手法が存在するが、本実施形態では最急降下法
を例にとって説明する。本実施形態の材料設計支援シス
テムによると、最急降下法による繰り返し計算でMM計
算を実行する場合、非周期系S2 の領域Rrelax に含ま
れるN2 個の原子(i) のnステップ目のずれΔr(i|n)
α
【数17】
【0131】によって計算される。ここでΔF(i) α
は、非周期系S2 計算部[1−5]において式(22)に
従って計算されるものである。またεは定数であり、M
M計算を効率良く実行するためにユーザが任意に指定し
てもよいし、本実施形態の材料設計支援システム側で設
定したのでもよい。上述の式に従ってΔr(i) α がM
M計算部[1−6]で計算されると、それを受けて非周
期系S2 処理部[1−2]においてΔr(i) α の値が
更新されると共に、非周期系S2 の原子座標r2(i)α
が計算される。以上の処理をΔF(i|n) α がある判定
条件の下で殆ど0になるまで繰り返し計算を行うこと
で、計算目的である非周期系S2 の安定構造を求めるこ
とができる。
【0132】本実施形態の計算方法によると、式(37)
によって非周期系S2 の安定構造を求めると同時に、リ
ファレンス系S0 の原子座標r0(h0) α に関しても通
常のMM計算を行うことが可能である。但し、リファレ
ンス系S0 として予め安定構造(平衡構造)を入力して
おく、或いは非周期系S2 に対するMM計算を開始する
前にリファレンス系S0 に対するMM計算を別途実行
し、その安定構造を求めておくことが計算の効率アップ
を図るためには望ましい。このMM計算実行中、非周期
系S2 計算部[1−5]では、任意のステップにおいて
ΔE を式(21)に基づいて計算することもできる。こ
のΔE は、上述したように物理的にはリファレンス系
0 に不純物がドープされたことによって生じる格子緩
和によるポテンシャルエネルギーの変化分である。各ス
テップでΔE を計算しその値をモニタした場合、非周
期系S2 のポテンシャルエネルギーがMM計算によって
最小化されていく過程を追跡することが可能である。
【0133】次に、図1のMD計算部[1−7]での処
理動作を説明する。MD計算では系の動的な時間変化を
解析するために、各原子の座標と共に速度の計算も行
う。よってMD計算を実行する場合、リファレンス系S
0 処理部[1−1]及び非周期系S2 処理部[1−2]
では、各原子の速度を表すv0(h0) α ないしv2(i)α
が追加保有される。また、同時に各原子の質量m0(h0)
ないしm2(i) も保有される。そのためここで、まずリ
ファレンス系S0 処理部[1−1]及び非周期系S2
理部[1−2]に対する補足説明を行い、その後MD計
算部[1−7]での処理動作を説明する。リファレンス
系S0 処理部[1−1]で保有されるv0(h0) α とm
0(h0) に関しては、対応リスト[S0 ←→S2 ]とリフ
ァレンス系S0 の周期性から
【数18】
【0134】が成り立っている。これらの値は、MD計
算の初期設定段階においてユーザによって指定されるも
のである。もしくは、ある基準に従って本実施形態の材
料設計支援システム側が設定する方式でもよい。ここ
で、原子の質量はポテンシャルパラメータと同様の取扱
いが可能であり、ポテンシャルパラメータの1種として
処理することもできる。次に非周期系S2 処理部[1−
2]では、まずv2(i)αに関してはr2(i)α に対する
処理と同様の処置が取られる。即ち、式(6)と同様な
【数19】
【0135】という記述を行い、Δv(i) α に初期値
を設定する。この初期値はユーザが任意に指定してもよ
いし、本実施形態による材料設計支援システム側で一括
して0に設定したのでもよい。次に原子の質量m2(i)
は上述したようにポテンシャルパラメータの1種として
みなすことが可能であるため、A2(i) と同様の処理が
行われる。即ち、非周期系S2 処理部[1−2]にN
imp 個の不純物原子の質量mimp (σ)が入力され、そ
れを受けて式(8)と式(9)に従ってN2 個の原子
(i) の質量m2(i)が設定される。以上がリファレンス系
0 処理部[1−1]及び非周期系S2 処理部[1−
2]に対する補足説明である。
【0136】それではMD計算部[1−7]での処理動
作を説明する。本実施形態ではMD計算のアルゴリズム
としてベルレの方法を例にとって説明する。まずリファ
レンス系S0 に対しては、基本セル(ζ=0)に含まれ
るN0 個の原子(h 0)の時刻tでの位置と速度が
【数20】
【0137】によって計算され、リファレンス系S0
理部[1−1]のそれらの値が更新される。ここで、F
0(h0) α はリファレンス系S0 計算部[1−4]で式
(18)に従って計算される原子(h 0)のα方向の力で
ある。またΔtはMD計算における時間刻みであり、こ
の値はユーザが任意に指定してもよいし、本実施形態の
材料設計支援システム側で設定してもよい。式(41)と
式(42)によるリファレンス系S0 に対するMD計算
は、従来法であるスーパーセル法と全く同じ取扱いにな
っている。
【0138】次に非周期系S2 に対しては、領域R
relax に含まれるN2 個の原子(i) の時刻tでのΔr
(i) α 及びΔv(i) α
【数21】
【0139】によって計算される。これを受けて非周期
系S2 処理部[1−2]でそれらの値が更新されると共
に、r2(i)α 及びv2(i)α が式(6)或いは式(4
0)に従って計算される。ここでΔF'(i) α は、式(2
8)と式(29)を若干変更した
【数22】
【0140】によって非周期系S2 計算部[1−5]で
計算されるものである。式(46)及び式(47)において
0(i) =1、m2(i) =1と置くと、それぞれ式(2
8)及び式(29)と等価となるため、非周期系S2 計算
部[1−5]には式(22)の代わりに式(45)を用意し
ておき、MM計算に関してはm0(i) =1、m2(i) =
1として計算を実行したのでもよい。
【0141】通常のMD計算実行中は、一般に系の全エ
ネルギー(運動エネルギー+ポテンシャルエネルギー)
をモニタしエネルギーの保存則を確認するが、本実施形
態の計算方法においても、任意の時刻tにおいてポテン
シャルエネルギーを計算することが可能である。その
際、非周期系S2 に関してはE0 cell を、リファレンス
系S0 に関してはΔE を計算する。MD計算部[1−
7]では、式(41)〜(44)に基づく繰り返し計算を時
刻tend まで実行し、非周期系S2 の動的な時間変化を
解析する。時刻tend はユーザが任意に指定できる値で
ある。
【0142】以上、本実施形態の材料設計支援システム
の構成を示したブロック図(図1)における処理動作を
各ブロック毎に説明してきた。次に、ブロック間の接続
状態を明確にするため、まずMM計算を行う場合につい
て図6に示したフローチャートを用いて説明する。初め
に、リファレンス系S0 処理部[1−1]にリファレン
ス系S0 に関する物理量が入力される(ステップ[2−
1])。この物理量は、リファレンス系S0 の格子定
数、ユニットセル当たりの原子数N0 、N0 個の原子の
座標r0(h0) α 及びポテンシャルパラメータA0(h0)
である。
【0143】次に、非周期系S2 処理部[1−2]に非
周期系S2 に関する物理量が入力される(ステップ[2
−2])。この物理量は、非周期系S2 に含まれる不純
物原子の個数Nimp 、Nimp 個の不純物原子(σ)の番
号、不純物原子(σ)のポテンシャルパラメータAimp
(σ)、及び格子緩和を考慮する領域Rrelax である。
【0144】これらの物理量が入力されると、非周期系
2 処理部[1−2]において対応リスト[S0 ←→S
2 ]が作成され、非周期系S2 の領域Rrelax に含まれ
るN2 個の原子(i) の座標r2(i)α 及びポテンシャル
パラメータA2(i)が設定され、Δr(i) α の初期値が
設定される(ステップ[2−3])。
【0145】次いで、リファレンス系S0 計算部[1−
4]において、リファレンス系S0に対する部分ポテン
シャルエネルギーe0(h0) 及び部分力f0(h0) α が計
算される(ステップ[2−4])。
【0146】以上までのステップが初期設定に当たり、
これ以降のステップがMM計算に従う繰り返し計算の処
理動作に当たる。まず、非周期系S2 の計算部[1−
5]において、ΔE 及びΔF(i) α が計算され(ス
テップ[2−5])、このΔF(i) α を用いてMM計
算部[1−6]で緩和量Δr(i) α が計算される(ス
テップ[2−6])。これを受けて、非周期系S2 処理
部[1−2]でΔr(i)α の値が更新され、非周期系
2 の原子座標r2(i)α が計算される(ステップ[2
−7])。
【0147】以上ステップ[2−5]からステップ[2
−7]に関して、ある判定条件の下でΔF(i) α が十
分小さくなったと判定されるまで繰り返し計算を実行す
る。そして判定条件が満たされる場合、r2(i)α を非
周期系S2 の安定構造(緩和構造)として出力または表
示する(ステップ[2−8])。上述したステップ[2
−4]及びステップ[2−5]では、ポテンシャルエネ
ルギーe0(h0) ないしΔE を必ずしも計算する必要は
なく、ユーザの目的に合わせて任意に計算を実行するこ
とが可能である。
【0148】次に、MD計算に関して図7に示したフロ
ーチャートを用いて説明する。まず図7のステップ[3
−1]からステップ[3−3]までは、先に図6で説明
したMM計算に関する処理と全く同じ処理を実行する。
但しこのMD計算に関する処理では、ステップ[3−
1]でリファレンス系S0 の原子の速度v0(h0) α
質量m0(h0) とが追加入力される。また、ステップ[3
−2]では不純物原子の質量mimp (σ)も入力され、
ステップ[3−3]では上述したステップ[2−3]で
の処理に加えて、v2(i)α とm2(i) が設定される。
【0149】MD計算では、ステップ[3−4]以降が
繰り返し計算処理に相当する。まず、リファレンス系S
0 計算部[1−4]でe0(h0) 及びf0(h0) α を計算
し(ステップ[3−4])、非周期系S2 計算部[1−
5]でΔE 及びΔF(i) αを計算する(ステップ[3
−5])。次いでMD計算部[1−7]において、リフ
ァレンス系S0 に関してはr0(h0) α とv0(h0) α
を、非周期系S2 に関してはΔr(i) α とΔv(i) α
とを計算する(ステップ[3−6])。そして、リフ
ァレンス系S0 処理部[1−1]と非周期系S2 処理部
[1−2]においてそれぞれr0(h0) α とΔr(i) α
の値が更新され、非周期系S2 処理部[1−2]でr
2(i)α が計算される(ステップ[3−7])。
【0150】以上のステップ[3−4]からステップ
[3−7]までの処理を時刻tend まで繰り返し実行
し、時刻tend での非周期系S2 の構造を出力或いは表
示する(ステップ[3−8])。本実施形態によるMD
計算では、繰り返し計算実行中の任意の時刻において、
リファレンス系S0 に関してr0(h0) α 及びv0(h0)
αを、非周期系S2 に関してr2(i)α 及びv2(i)α
を出力或いは表示することも可能である。また、ステッ
プ[3−4]とステップ[3−5]ではe0(h0) ないし
ΔE を必ずしも毎回計算する必要はなく、ユーザの目
的に合わせて任意の時刻で計算することが可能である。
【0151】以上までが本実施形態による材料設計支援
システムの骨格をなす処理である。
【0152】以下、本実施形態における材料設計支援シ
ステムに関する変形例を第2、第3及び第4の実施形態
として説明する。
【0153】(第2の実施形態)この第2の実施形態
は、請求項3記載の発明に対応した実施形態である。
【0154】まず、非周期系S2 処理部[1−2]で設
定されている格子緩和を考慮する領域Rrelax に関する
取扱いを説明する。
【0155】第1の実施形態の材料設計支援システムで
は、不純物が領域Rrelax のほぼ中心に位置するように
この領域を設定する。そのため、緩和量Δr(i) α
通常、領域Rrelax の中心部分で大きな値を持ち、領域
relax の端では殆ど0になる。MM計算及びMD計算
では、繰り返し計算の各ステップないしは各時刻におい
て非周期系S2 処理部[1−2]で緩和量Δr(i) α
が更新される。緩和量Δr(i) α がシミュレ―ション
実行途中に領域Rrelax の端でもある程度の大きさの値
を持つようになった場合、それは実際に格子緩和が起こ
る範囲が領域Rrelax よりも大きく、そのままシミュレ
―ションを続けたのでは正しい計算結果が得られないこ
とを意味している。
【0156】これを避けるため、本実施形態の計算方法
ではシミュレ―ションの途中で領域Rrelax をより大き
なサイズのものに設定変更することが可能である。この
変更は以下のようにして実現される。まずMM計算に関
しては、フローチャートが図6から図8に変更され、ス
テップ[2−9]とステップ[2−10]が新たに追加
される。図8では、既に説明したようにステップ[2−
7]で緩和量Δr(i)α の値が繰り返し計算の各ステ
ップ毎に更新される。ステップ[2−9]では、領域R
relax の端での緩和量Δr(i) α の値をある基準の下
で判定する。そして、領域Rrelax の端での緩和量Δr
(i) α が基準値Δrmax edge よりも大きくなっている
と判定された場合、ステップ[2−10]に進む。ステ
ップ[2−10]では、まず非周期系S2 処理部[1−
2]で領域Rrelax が再設定される。
【0157】この再設定は、例えば領域の半径Rrelax
を半径R´relax =Rrelax +Rad d に置き換えること
によって実行することができる。この新しく設定された
領域R´relax には、それまでに取り扱っていたN2
の原子を含むN´2 (>N2)個の原子が含まれる。そ
のため、続いてステップ[2−10]では新しく数え上
げられた(N´2 −N2 )個の原子に関する情報を対応
リスト[S0 ←→S2]に追加登録すると共に、これら
の原子のΔr(i) α の初期値を設定する。以上の処理
をステップ[2−10]で行った後、通常の繰り返し計
算に戻る。上述した基準値Δrmax edge 及びRadd は、
計算の効率化が計られるようにユーザが任意に指定して
もよいし、本実施形態の材料設計支援システム側で予め
設定しておいてもよい。
【0158】以上のような手続きによって領域Rrelax
を適宜変更することで、常に正しい計算結果(緩和構
造)を得ることが可能である。次にMD計算に関して
は、フローチャートが図7から図9に変更される。図9
において追加されているステップ[3−9]とステップ
[3−10]では、上述したステップ[2−9]及びス
テップ[2−10]と全く同じ処理が行われる。
【0159】(第3の実施形態)この第3の実施形態
は、請求項5記載の発明に対応した実施形態である。
【0160】ここでは、緩和量Δr(i) α がシミュレ
―ション実行途中で領域Rrelax の中心部分でも大きな
値を持つようになった場合の処理を第3の実施形態とし
て説明する。
【0161】第1の実施形態の材料設計支援システムで
は、非周期系S2 の原子座標をリファレンス系S0 から
のずれΔr(i) α で記述し、非周期系S2 の物理量
(ポテンシャルエネルギー及び原子に働く力)をΔr
(i) α に関するテーラー展開によって近似的に求める
ことを特徴としている。
【0162】一般に、テーラー展開を行う場合、展開変
数が小さい場合(展開点の近傍)は近似の精度は保証さ
れているが、展開変数が大きくなった場合(展開点から
離れた点)の計算は精度が悪くなることが知られてい
る。第1の実施形態の材料設計支援システムでは、リフ
ァレンス系S0 が展開点に相当しており、展開点からの
ずれ、即ち緩和量Δr(i) α が大きくなった場合、テ
ーラー展開を用いて計算している物理量(ΔE 及びΔ
F(i) α )の計算精度が次第に悪くなる。
【0163】これを回避するため本実施形態では、以下
のような手続きによって常に精度のよい計算を実行する
ことができる。まず、MM計算に関してはフローチャー
トが図6から図10に変更される。図10のステップ
[2−11]では、領域Rrela x に含まれるN2 個の原
子に関するΔr(i) α の値が基準値Δrmax whole
りも大きくなっているかどうかを判定し、大きい場合は
ステップ[2−12]に進む。ここで基準値Δrmax
whole はユーザが任意に指定してもよいし、本実施形
態の材料設計支援システム側で予め設定しておいてもよ
い。以下、Nbig (<N2 )個の原子の緩和量Δr(i)
α が基準値Δrmax whole よりも大きくなっていると
判定された場合について説明する。また、このNbig
の原子を(ibi g )で表すことにする。そして、これら
の非周期系S2 の原子を対応リスト[S0 ←→S2 ]で
対応付けられているリファレンス系S0 の原子を(h
big ,ζbi g )で表す。
【0164】以下の処理は、ステップ[2−11]での
判定の結果、ステップ[2−12]が初めて実行される
場合に関してのものである。ステップ[2−12]では
リファレンス系S0 処理部[1−1]においてリファレ
ンス系S0 に対する追加・変更処理を行う。まず、リフ
ァレンス系S0 の基本セル(ζ=0)にNbig 個のダミ
ー原子(hdmy 0)(以下、(hdmy ;ζ=0)と記述
する)を追加設定する。この処理により、リファレンス
系S0 のユニットセル当たりの原子数はN0 +Nbig
なる。そして、新たに設定したリファレンス系S0 のダ
ミー原子(hdm y ;ζ=0)のポテンシャルパラメータ
及び原子位置を
【数23】
【0165】と設定する。
【0166】次にステップ[2−13]では、非周期系
2 処理部[1−2]において非周期系S2 に対する追
加・変更処理を行う。ステップ[2−12]においてリ
ファレンス系S0 にダミー原子が配置されたことによ
り、必然的に非周期系S2 に含まれる原子数も増えるこ
とになる。そのため、まず非周期系S2 の領域Rrelax
に含まれる原子の数え上げを再度行い、対応リスト[S
0 ←→S2 ]にリファレンス系S0 のダミー原子(h
dmy ,ζ)とそれに対応する非周期系S2 のダミー原
子(idmy )との対応リストを書き加える。対応リスト
[S0 ←→S2 ]に書き加えるペアの数をNadd とする
と、Nadd >Nbig となり、具体的なNaddの値はリフ
ァレンス系S0 のユニットセルと領域Rrelax の大きさ
との兼ね合いから決まる。
【0167】また、ステップ[2−13]以降では非周
期系S2 の領域Rrelax に含まれる原子数はN2 +N
add となり、もともとの不純物原子(σ)に加えて原子
(ibi g )とダミー原子(idmy )もこのステップ以降
は不純物原子として取り扱われる。そのために、続いて
原子(ibig )とダミー原子(idmy )のポテンシャル
パラメータの書き換えないしは新規設定を行う。まず原
子(ibig )に関しては、
【数24】
【0168】と変更する。次いで、ダミー原子
(idmy )のポテンシャルパラメータの新規設定を行う
が、それに関しては以下のことを注意しなければならな
い。
【0169】上述のステップ[2−12]でリファレン
ス系S0 の基本セル(ζ=0)に配置されたダミー原子
(hdmy ;ζ=0)は、リファレンス系S0 の周期性の
ためにイメージセル(ζ≠0)にも必然的に存在するこ
とになる。よって、ステップ[2−13]で対応リスト
[S0 ←→S2 ]に追加されるダミー原子として以下の
2種類のものが存在する。これを非周期系S2 のダミー
原子(idmy )に関して説明すると、一つは、リファレ
ンス系S0 の基本セル(ζ=0)に含まれているダミー
原子(hdmy ;ζ=0)と対応リスト[S0 ←→S2
で対応付けられているダミー原子(i(ζ=0) dmy )で
あり、もう一つは、リファレンス系S0のイメージセル
(ζ≠0)に含まれているダミー原子(hdmy ;ζ≠
0)と対応リスト[S0 ←→S2 ]で対応付けられてい
るダミー原子(i(ζ≠0) dmy )である。この2種類
の非周期系S2 のダミー原子に関しては、それらのポテ
ンシャルパラメータを
【数25】
【0170】と設定する。この2つの式が意味している
ところは、非周期系S2 で本来存在していた原子(i
big )の物理量をステップ[2−13]以降ではダミー
原子(i( ζ=0) dmy)の物理量として計算するために、
まず式(51)という設定を行う。そして、不必要である
にも拘らずリファレンス系S0 の周期性のために必然的
に設定されてしまうダミー原子(i(ζ≠0) dmy )に
関しては、式(52)によってそのポテンシャルパラメー
タを0とすることで物理的には存在していないことと同
義の状況を作り出している。次にこれらの原子の緩和量
に関しては、Δr idmy )αの初期値を0と置く。Δ
r(ibigαに関しては、ステップ[2−13]以降
では不必要な量となるため値の設定変更は特に必要な
い。
【0171】以上の一連の処理は、テーラー展開の展開
点をずらすことで展開変数が小さくなるように設定し直
す処理に相当している。具体的には、原子(ibig )の
緩和量Δr(ibig αが大きくなったため、展開点を
0 (ibig αからr0 (ibig α+Δr
(ibig αに取り直すために、リファレンス系S0
この位置(r0 (hdmy ;ζ=0)α=r0 (ibig
α+Δr(ibig α)にダミー原子(hdmy ;ζ=
0)を仮想的に配置する。このダミー原子のポテンシャ
ルパラメータA0 (hdmy ;ζ=0)は式(48)によっ
て0に設定されているため、ダミー原子(hdmy ;ζ=
0)を加えたことによってリファレンス系S0 のポテン
シャルエネルギーや力が変化することは全くない。リフ
ァレンス系S0 に対して以上の処理を行った後、次いで
非周期系S2 に対しては、r2 (ibig αの代わりに
2 (i(ζ=0) dmy αで原子(ibig )の原子座標
を表すための処理を行う。即ち、原子(ibig )の座標
をr2 (i(ζ=0) dmy αを用いて
【数26】
【0172】と表し、ステップ[2−12]以降のMM
計算では原子(ibig )の緩和量としてΔr(ibig
αの代わりにΔr(i(ζ=0) dmy αを求める。
【0173】ダミー原子(idmy )を配置することによ
って非周期系S2 に含まれる見かけ上の原子数は増えて
いるが、原子(ibig )の本来のポテンシャルパラメー
タであるA2 (ibig )が式(50)によって0に変更さ
れ、かつダミー原子(i(ζ ≠0), dmy)のポテンシャ
ルパラメータも式(52)によって0に設定されているた
め、非周期系S2 に含まれている物理的な原子数はステ
ップ[2−13]前後で全く変化していない。
【0174】また、ポテンシャルエネルギーや力の計算
の際に考慮しなければならない原子の数(ペアの数)が
ダミー原子の設定によって急増してしまうように一見思
われるが、ダミー原子のほとんどはそのポテンシャルパ
ラメータAが0になっているため、リファレンス系S0
計算部[1−4]や非周期系S2 計算部[1−5]で計
算される総和計算の際、ダミー原子に関する項は初めか
ら取り扱わなくてもよい場合が多い。従って、ダミー原
子が設定されたことによるポテンシャルエネルギーや力
の計算量の増加分はそれほど大きくはならない。
【0175】上述したステップ[2−12]ではダミー
原子の設定によってリファレンス系S0 の結晶構造が見
かけ上変更されているため、ステップ[2−13]終了
後はステップ[2−4]へ一旦戻ってe0(h0) とf0(h
0) α の計算を再度実行し、その後通常のMM計算に
よる繰り返し計算を引き続き実行する。
【0176】以上のステップ[2−11]からステップ
[2−13]までの処理を行うことによって、非常に大
きな格子緩和が生じるような非周期系S2 に対しても十
分な計算精度でのMM計算を実行することが可能とな
り、本実施形態による材料設計支援システムの汎用性が
格段にアップされるものである。
【0177】ここで、以下のことを注意しなければなら
ない。上述したステップ[2−12]とステップ[2−
13]での処理はこの2つのステップが初めて実行され
る場合の処理であり、ステップ[2−12]とステップ
[2−13]の2回目以降の実行ではその処理が以下の
ように変更される。ステップ[2−11]において同じ
原子の緩和量Δr(i) α が基準値Δrmax whole より
も大きくなっていると2回以上判定された場合、この原
子に対応するダミー原子は既にリファレンス系S0 に設
定されている。よって、このような原子に対する2回目
以降のステップ[2−12]及びステップ[2−13]
ではダミー原子の設定及びポテンシャルパラメータの設
定・変更を行う必要はなく、式(49)のみを実行する。
即ち展開点の位置r0 (hdmy ;ζ=0)αだけを再設
定し、Δr(idmy )αの初期値を再度0に設定するだ
けでよい。
【0178】以上と同様な処理をMD計算に対しても行
うことが可能であり、その場合はフローチャートが図7
から図11に変更される。図11のステップ[3−1
1]からステップ[3−13]までの処理は、上述した
ステップ[2−11]からステップ[2−13]までの
処理と全く同じになっている。
【0179】この図10と図11に示したフローチャー
トは任意の大きさの格子緩和が生じる非周期系S2 に対
する高精度なMM/MD計算を実現するための手続きで
あるが、これと同様の機能を得るために初期設定段階に
おいて予めダミー原子を用意しておく方式を採用するこ
ともできる。即ち、非周期系S2 の領域Rrelax に含ま
れるN2 個の原子(i) 全てに対するダミー原子をもとも
とリファレンス系S0と非周期系S2 に設定しておくこ
とで、図10のステップ[2−12]とステップ[2−
13](或いは図11のステップ[3−12]とステッ
プ[3−13])でダミー原子の新規設定という処理を
省略することも可能である。
【0180】以上MM計算とMD計算に関する第1の実
施形態の変形例を、第2、第3の実施形態として説明し
てきた。MM計算に関する基本的なフローチャートは図
6に示されており、図8と図10のフローチャートが変
形例となっている。説明を分かりやすいものとするため
にこの2つの変形例を別々に取り扱ったが、両方の機能
を備えた材料設計支援システムの構築も可能である。同
様にMD計算に関しても、基本的なフローチャート図7
に対する変形例である図9と図11の機能を兼ね備えた
材料設計支援システムの構築が可能である。
【0181】(第4の実施形態)以下、第4の実施形態
について説明する。
【0182】この実施形態においては、式(10)で与え
られる以外の関数形によって記述される原子間相互作用
の取り扱いについて説明する。以下説明を行う処理は、
上述してきた第1,第2,第3の実施形態全てに対して
適用が可能である。原子間の短距離反発力としては一般
にBorn-Mayerタイプの関数形
【数27】
【0183】が用いられることが多い。ここで、B(i)
はポテンシャルパラメータであり、原子(i) の有効半径
に相当している。このようなポテンシャルパラメータB
(i) を含む関数形を、以下では
【数28】
【0184】で表す。式(10)の関数ψはポテンシャル
パラメータを一切含んでいないのに対し、式(56)では
関数ψ^がポテンシャルパラメータBを含んでいること
を特徴としている。式(56)のような関数形を持つ原子
間ポテンシャルを本実施形態による材料設計支援システ
ムで取り扱う場合、以下のような処理を行う。
【0185】ポテンシャルパラメータAに対する記述と
同様に、リファレンス系S0 に対するポテンシャルパラ
メータBをB0(h0) と書き、非周期系S2 に対するポテ
ンシャルパラメータBをB2(i) と書く。そして、B
2(i) を
【数29】
【0186】で表す。ここでB0(i)に対しては、対応リ
ストおよびリファレンス系S0 の周期性から、
【数30】
【0187】が成り立っている。式(57)を用いてB
2(i) を表した場合、非周期系S2 の不純物原子(σ)
のみが有限な値のΔB(σ)(≠0)を持ち、それ以外
の原子のΔB(i) は全て0になっている。
【0188】次に、非周期系S2 計算部[1−5]にお
いて、非周期系S2 に対する物理量ΔE 及びΔF(i)
α が以下のように計算される。まず、この2つの量は
それぞれ式(21)と式(22)の代わりに
【数31】
【0189】という3つの項によって表される。それぞ
れの項は、先ずエネルギーに関して、
【数32】
【0190】と表され、力に関しては
【数33】
【0191】と表せる。ここで、式(61)(62)(65)
(66)は、それぞれ式(23)(24)(28)(29)と全く
同義であるが、式(61)と式(65)ではリファレンス系
0 に対するポテンシャルパラメータB0 が、式(62)
と式(66)では非周期系S2 に対するポテンシャルパラ
メータB2 が計算に用いられている。
【0192】式(56)で与えられる関数形で表される原
子間ポテンシャルの取り扱いにおいて重要な点は、式
(59)と式(60)の第3項がΔBに関するテーラー展開
の高次の項に相当していることである。この高次の項を
与えている式(63)及び式(67)では1次の項が書き下
されており、O[(ΔB)2 ]は2次以上の任意の項ま
での高次項を表している。
【0193】以上のような方法によって非周期系S2
対する物理量ΔE 及びΔF(i) αを計算することで、
本実施形態による計算方法では式(56)で与えられる一
般的な関数形で表される原子間ポテンシャルを用いたM
M/MD計算を行うことが可能になり、Born-Mayerタイ
プやそれ以外の原子間相互作用を取り扱うことができ
る。
【0194】また、式(10)では記述されない関数形で
表される原子間相互作用に関しては、通常の方法によっ
てポテンシャルエネルギー及び力を求め、それらを本発
明によって計算したポテンシャルエネルギー或いは力と
足し合わせてMM/MD計算を実行することも可能であ
る。
【0195】以上説明してきた第1〜第4の実施形態の
材料設計支援システムによると、従来法であるスーパー
セル法と比較して以下のような効果を得ることが可能で
ある。
【0196】(1)計算時間の短縮 (2)計算労力の削減 (3)完全な孤立形に対する計算を実現 (4)電気的中性が破れている系に対する補正なしの計
算を実現 以上4つの効果をMM計算を例にとり、実際の計算結果
に基づいて具体的に説明していく。
【0197】まず、計算時間の短縮に関して説明する。
説明を分かりやすくするため、簡単な結晶系として代表
的なイオン結晶であるNaClを例にとって説明する。
NaClはfcc構造を形成し、プラス電荷を持つNa
原子とマイナス電荷を持つCl原子が交互に並んだ構造
になっている。いま、NaClの完全結晶をリファレン
ス系S0 とし、リファレンス系S0 のNa原子が1個だ
けCl原子と置き換わった非周期系S2 を考える。この
ような非周期系S2 に対し、本実施形態による計算方法
及び従来法であるスーパーセル法に基づいてMM計算で
安定構造(緩和構造)を計算した結果が図12である。
◇が本実施形態の計算方法による計算結果を、□がスー
パーセル法による計算結果を示す。
【0198】この計算例では、スーパーセル法でのユニ
ットセルを512原子に取っている(実線で表示)。計
算精度に関してこれとの比較を行うため、本実施形態に
よる計算方法では格子緩和を考慮する領域Rrelax とし
てスーパーセル法のユニットセルの体積とほぼ等しい球
を設定している(点線で表示)。また、本実施形態によ
る計算方法でのリファレンス系S0 のユニットセルは、
立方晶としての最小単位胞である8原子からなるユニッ
トセルを考えている。図12において中心に位置してい
る原子(黒く塗り潰した原子)がNaからClに置換さ
れた置換型不純物原子である。この図を見て分かる通り
置換型不純物原子を中心として格子緩和が発生してお
り、本実施形態による計算方法と従来法であるスーパー
セル法とで同じ計算結果が得られている。
【0199】ここで注意しなければならないのは、両者
の比較はスーパーセル法の基本セルに関してのみ行わな
ければならないと言うことである。何故なら、スーパー
セル法では周期性によってイメージセルにも不純物が含
まれているため、スーパーセル法による計算結果では図
12に合計9つの不純物原子とその周囲での格子緩和が
表示されている。それに対し本実施形態による計算方法
では、完全に孤立した不純物系を扱うことが可能である
ため、結晶の全領域に渡って正しい計算結果を得ること
ができている。但し図12に示した例では、格子緩和の
領域がそれほど大きくないためスーパーセル法で用いた
512原子のユニットセルは十分な大きさを持ってお
り、基本セルに関しては本発明の計算方法による計算結
果と同じ結果を得ることができている。
【0200】基本セルに関して両者の結果が同じであっ
たと言うことは、本実施形態による計算方法ではテーラ
ー展開による近似計算を行っているにも拘らず、十分な
計算精度を達成し得ることを意味している。さらに重要
な点は、本実施形態による計算方法に従うと、従来法で
あるスーパーセル法と比較して約80倍の計算時間の効
率化を図れる点である。このような大幅な計算時間の短
縮が可能である理由は以下の通りである。
【0201】MM/MD計算における計算時間は、主に
ポテンシャルエネルギーや力を計算する際に考慮しなけ
ればならない原子のペアの数で決まる。以下、力に関し
て説明を行うと、スーパーセル法では式(18)によって
各原子に働く力を計算する。式(18)では式(15)を用
いてf0(h0) α が計算されるが、この計算ではユニッ
トセルに含まれる原子とそれらが相互作用を持つ結晶内
の全ての原子とのペアについて原子間ポテンシャルの一
次微分を計算しなければならない。そのペアの数はユニ
ットセルが大きくなった場合、飛躍的に増加する。その
ため、スーパーセル法では『孤立した不純物を含む結晶
系』を実現するためにユニットセルのサイズを大きくす
ると、計算時間が格段にアップしてしまう。
【0202】これを回避するため本実施形態では、長い
計算時間を要する式(15)の計算を小さいユニットセル
(例えば、結晶の最小単位胞)に対してのみ実行するこ
とで計算時間の短縮化を可能にしている。これを具体的
に実現しているのが式(22)によるΔF(i) α の計算
である。この計算は、式(28)と式(29)で与えられる
ことを既に説明した。
【0203】まず、式(28)でf0(h0) α を計算する
が、これはリファレンス系S0 に対する物理量であり、
リファレンス系S0 のユニットセルが小さいために計算
量はそれほど多くならない。
【0204】
【数34】
【0205】以上のような理由から、従来法であるスー
パーセル法と比較して本実施形態の計算方法では考慮し
なければならないペアの数が格段に減っており、計算時
間の短縮が可能となっている。また、式(28)のf0(h
0) α の計算では、クーロン相互作用に関してはエワ
ルド法(参考文献1)を用いることができ、従来法で用
いられている効率的な手法をそのまま応用することも可
能である。さらに、f0(i)α はリファレンス系S0
対する物理量であるので、MM計算においてリファレン
ス系S0 として平衡構造を用いる場合、初期設定段階に
おいて1度計算しておけばそれ以降のステップでは計算
が不必要となるため、さらに計算時間の短縮を図ること
ができる。
【0206】以上の力の計算に関する説明は、ポテンシ
ャルエネルギーΔE の計算に対しても同様に該当する
ものであり、以上のような理由によって本発明による計
算方法では従来法であるスーパーセル法と比較して格段
の計算時間短縮を図ることができる。
【0207】次に、本実施形態の2番目の効果である計
算労力の削減について説明する。これを説明するために
再度NaClを例にとり、今回は2個のNa原子をCl
原子と置き換えた系を想定する。この系の安定構造を本
実施形態による計算方法とスーパーセル法によってMM
計算でシミュレ―トした結果が図13である(黒く塗り
潰した2個の原子が不純物原子)。
【0208】この図13では先に説明した図12とは異
なり、スーパーセル法の基本セルに関しても特に基本セ
ルの端のところで2つの計算結果が一致しておらず、隣
接したイメージセルでは2つの計算結果のずれがさらに
目立っている。これは図13の例では格子緩和の起きる
範囲が大きいため、スーパーセル法において仮定したユ
ニットセル(構成原子512個)が十分なサイズを持っ
ておらず、スーパーセル法で得られた計算結果は正しい
安定構造(緩和構造)を与えていないことを意味してい
る。スーパーセル法で得られた計算結果が正しいか否か
を確認するためには、ユニットセルのサイズを変えて計
算を何回か行う必要性がある。そのため、できるだけ妥
当なユニットセルのサイズを予測して設定し、さらに確
認のために計算を行うというように、スーパーセル法で
は計算労力だけでなく計算時間も余分に必要となる。
【0209】これに対し本実施形態による計算方法で
は、図8及び図9で与えられるフローチャートで説明し
たように、格子緩和を考慮する領域Rrelax をシミュレ
―ション実行中に適宜変更することが可能である。その
ため、実際の格子緩和よりも小さいサイズの領域R
relax を初めに設定してしまった場合でも、唯1回のシ
ミュレ―ションで正しい計算結果(MM計算の場合は緩
和構造)を得ることが可能であり、ユーザの労力及び計
算時間をも削減することができる。実際、図13に示し
た本実施形態の計算方法による計算例では、格子緩和を
考慮する領域Rrelaxが図12に示した例よりも大きく
なっている。
【0210】次に、本実施形態による計算方法の3番目
の効果について説明する。従来法であるスーパーセル法
では、基本セルに配置された不純物が周期境界条件のた
めに周囲のイメージセルにも必然的に存在し、ユニット
セルを十分大きくとらない限り『孤立した不純物』とい
う状態を正しく実現することはできない。通常、これは
計算時間との兼ね合いから困難であり、近似的な系(不
純物同士の相互作用を完全には無視できない系)につい
て計算を行わざるを得ない場合が多い。この近似が悪か
った場合の例が、図13に示されているスーパーセル法
による計算結果である。
【0211】これに対して本実施形態による計算方法で
は、計算対象である非周期系S2 は周期性を持っておら
ず、スーパーセル法のようにイメージセルに含まれる
『不純物』との相互作用というものが非周期系S2 では
もともと存在しないため、常に『完全に孤立した不純
物』に対するシミュレ―ションが可能になっている。
【0212】最後に、本実施形態の4番目の効果を説明
する。スーパーセル法では、不純物原子の設定によって
ユニットセル内の電荷の総和が0からずれた場合、0と
なるように不純物原子自体或いは周囲の原子に対して電
荷の補正を行わなければならないため、そのような場合
は正しい電荷分布を扱うことができないという問題点を
持っている。例えば、図13に示したスーパーセル法に
よる計算では、2個のNa原子がCl原子と置換されて
いるためにユニットセル当たりの電荷の総和が−4にな
っている。これを補正するために図13の計算では、ユ
ニットセル内の全ての原子に対して電荷+4/512が
一様に加算されている。このように電荷分布が補正され
た場合、系のポテンシャルエネルギーが変わる、平衡格
子定数や平衡原子座標が変わる等の不都合が生じる。
【0213】これに対し、本実施形態が計算対象として
いる非周期系S2 では、この電気的中性を必ずしも満た
す必要があるわけではないため、図12や図13のよう
な電気的中性が破れている系に対しても電荷の補正を一
切行うことなく計算を実行することが可能である。
【0214】なお、本発明は上述した各実施形態に限定
されるものではない。実施形態に記載した各部の構成
は、ハードウェアで実現するのみならずソフトウェアで
実現することもできる。さらに、実施形態に記載した手
法は、コンピュータに実行させることのできるプログラ
ムとして、磁気ディスク(フロッピディスク,ハードデ
ィスクなど)、光ディスク(CD−ROM,DVDな
ど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布する
こともできる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲
で、種々変形して実施することができる。
【0215】(第5の実施形態)周期系に対するMD計
次に、本発明に係る第5の実施形態を図面を参照して説
明する。
【0216】この第5の実施形態は、請求項4に記載さ
れた発明に対応する。
【0217】まず、この実施形態を説明する前に、周期
的境界条件を課した無限系に対してMD計算を行う場合
の力の計算について簡単に説明を行っておく。
【0218】原子(hζ)と原子(h' ζ' )に働く2
体の原子間相互作用をφ(hζ, h' ζ' )と書くと
((hζ)はζ番目のユニットセルに含まれるh番目の
原子を表す)、着目しているあるユニットセル(ζ= 0
とする)に含まれる原子(h0)に働く力のα成分は
【数35】
【0219】
【数36】
【0220】格子和の計算に対しては上述したように通
常エワルド法が適用され、その計算量を具体的な数値と
して表すことが難しいためここではNall で表したが、
ユニットセル当たりの原子数Nと比較した場合、常にN
all の方が大きな値(Nall>N)>となる。さらにM
D計算では系の時間変化を追うため通常数千から数万ス
テップ以上の繰り返し計算を行う必要があるので、力に
関するト−タルの計算量はN×N×Nall ×Nstepとな
る(係数3は省略)。
【0221】この計算量はユニットセル当たりの原子数
Nの二乗に比例するため、セルサイズを大きくすると計
算時問が飛躍的に長くなる。MD計算(スーパーセル
法)で通常用いられるセルサイズは原子数が数百から数
千個程度が主であるが、最近では超並列計算機による数
百万個以上の系に対する計算も行われている。このユニ
ットセル当たりの原子数Nは計算対象としている系や現
象に依存して決まるものであるが、周期系と非周期系に
対してそれぞれのNの下限値に対する目安を次のように
示すことができる。
【0222】・周期系…統計力学的に許容される精度の
温度ゆらぎを与えるNT> ・非周期系…周期的境界条件のために各ユニットセルに
人為的に配置された乱れ同士の相互作用を無視し得るセ
ルサイズを与えるNSC まず周期系に関して説明すると、MD計算は原子・分子
の運動を有限温度(T>0K)で解析するため、各原子
は温度効果による徴視的な振動を起こす。逆に言えばこ
の振動が系の温度を与えるため、各原子の振動(速度)
を用いてMD計算の各時刻(繰り返し計算の1ステッ
プ)ごとに系の温度を計算することができる。この温度
の時間変化のゆらぎは、系の独立な原子の数(周期的境
界条件を課している場合はユニットセル当たりの原子数
N)に依存(1/ EMBED Equation.2 に比例)して決
まるものである。
【0223】Nが小さい場合、ある指定された温度Tを
実現するためには各原子が極端に激しく振動しなければ
ならず、その結果温度のゆらぎが1/ EMBED Equation.
2に比例して大きくなるため、このようなMD計算は物
理的に正常でない系を取り扱っていることになる。
【0224】そのため周期系に対しては、統計力学的に
許容される精度での小さい温度ゆらぎを与え得る独立な
原子数NT> 以上のセルサイズを持つ系でのMD計算
の実行が要求される。
【0225】次に非周期系に関しては、非周期系をス−
パ−セル法によって近似的に取り扱う場合、周期的境界
条件のために各ユニットセルに対して仮想的な乱れが配
置されることになる。そのため、現実の非周期系(乱れ
同士の相互作用のない系)を表すためにはユニットセル
のサイズを十分大きく設定しなければならない。この十
分なセルサイズを与えるNSCは長距離相互作用を持つ系
においてより大きな値となる。
【0226】以上のMD計算手法をふまえ、以下、第5
の実施形態を説明する。
【0227】図14は周期系S1 に対するMD計算を実
行するための材料設計支援システムの構成を示したブロ
ック図であり、リファレンス系S0 処理部[4−1]、
周期系S1 処理部[4−2]、原子間ポテンシャル処理
部[4−4]、リファレンス系S0 計算部[4−5]、
周期系S1 計算部[4−6]、周期系MD計算部[4−
8]から構成される。第5の実施形態ではまず図14の
各ブロックにおける処理動作を説明し、その後フロ−チ
ャ−トを用いて本発明による周期系S1 に対するMD計
算を実行するための処理の流れを説明する。
【0228】まず、図14のリファレンス系S0 処理部
[4−1]で行なう処理を説明する。リファレンス系S
0 処理部[4−1]では、リファレンス系S0 の結晶構
造、ポテンシャルパラメ−タ等が保有・処理される。リ
ファレンス系S0 は周期系S1 の絶対零度(T=0K)
での構造に相当し、周期性を有する系である。またリフ
ァレンス系S0 の周期性の単位(ユニットセルU0 )は
例えば結晶の最小単位胞で与えられ、後述するようにこ
のユニットセルU0 が周期系S1 のユニットセルU1
構成単位となる。
【0229】リファレンス系S0 処理部[4−1]に
は、リファレンス系S0 の格子定数、ユニットセルU0
当たりの原子数N0 、N0 個の原子の原子座標r0 (h
0)α、ポテンシャルパラメ−タA0 (h0)、質量m
0 (h0)が入力され、それらの値が保有される。
【0230】ユニットセルU0 当たりの原子数N0 は、
前述したNT= に相当するものである。また添字(h
ζ)はリファレンス系S0 のζ番目のユニットセルのh
番目の原子を表す。周期的境界条件の下でユニットセル
は全て等価であるため、ここでは0番目(ζ= 0)のユ
ニットセルに着目し、この基本セル(ζ= 0)に対して
原子座標やポテンシャルパラメ−タ等を指定している。
【0231】次に、r0 (h0)αは基本セル(ζ=
0)に含まれるh番目の原子の座標のα成分を表す。任
意のユニットセルに含まれる原子の座標r0 (hζ)α
は、格子定数(基本並進ベクトルAλα)と原子の相対
座標x λ(h)から
【数37】
【0232】によって計算される。ここでλは3本の基
本並進ベクトルを区別するための添宇である。
【0233】リファレンス系S0 処理部[4−1]で
は、原子座標r0 (h0)αの代わりに基本並進ベクト
ルAλαと相対座標x λ(h)を入力し、上記の式に従
ってr0 (h0)αを設定する方式を採用しても良い。
原子座標r0 (h0)αポテンシャルパラメ−タA0
(h0)、質量m0 (h0)に関しては、周期的境界条
件のため任意のζに対して
【数38】
【0234】が成り立っている。ポテンシャルパラメ−
タA0 の取り扱いは図14の原子間ポテンシャル処理部
[4−4]での処理動作とも関係するため、原子間ポテ
ンシャル処理部[4−4]の説明において詳述する。
【0235】次に、図14の周期系S1 処理部[4−
2]について説明する。この周期系S1 処理部[4−
2]では、周期系S1 の構造、ポテンシャルパラメ−タ
等が保有・処理される。周期系S1 はリファレンス系S
0 の各原子に対して温度効果による徴視的な振動を考慮
した系であり、周期系S1 のユニットセルU1 はリファ
レンス系S0 のM個分のユニットセルU0 で構成され
る。
【0236】前述したように、このユニットセルU1
含まれる原子数(NT> )に相当)が少ないほどMD
計算に要する計算時間は少なくて済むが、系の温度ゆら
ぎが大きくなるために統計力学的に要求される精度での
MD計算が実現できなくなる。そのためMD計算では、
通常、ユニットセル当たりの原子数が数百個以上の系を
用いて計算が行われる。
【0237】周期系S1 処理部[4−2]には、周期系
1 の格子定数、ユニットセルU1当たりの原子数N
1 、N1 個の原子の原子座標r1 (k0)α、速度v1
(k0)α、ポテンシャルパラメ−タA1 (k0)、質
量m1 (k0)が入力され、それらの値が保有される。
ユニットセルU1 当たりの原子数N1 は、前述したN
> に相当するものである。
【0238】このN1 を直接指定する代わりに、ユ−ザ
−が要求する精度の温度ゆらぎΔTを指定し、それに基
づいてN1 を定める方式でもよい。
【0239】また添宇(kξ)は周期系S1 のξ番目の
ユニットセルのk番目の原子を表す。周期的境界条件の
下でユニットセルは全て等価であるため、リファレンス
系S0 処理部[4−1]における処理と同様に0番目
(ξ= 0)のユニットセルに着目し、この基本セル(ξ
= 0)に対して原子座標やポテンシャルパラメ−タ等を
指定している。
【0240】上述したように周期系S1 のユニットセル
1 はリファレンス系S0 のM(=M×M×M
個のユニットセルU0 で構成され、周期系S1 の原子は
リファレンス系S0 の原子と1対1に対応付けられてい
る。この対応付けは、周期系S1 の基本セル(ξ= 0)
の原子(k0)とリファレンス系S0 の原子(hζ)に
関して例えばk= h+ ζN0 (k= 1, …, N1 )とい
う関係式を用いて行うことができ、この情報が対応リス
ト[S0 ←→S1 ]に保存される。
【0241】図16にリファレンス系S0 (構成原子お
よびユニットセルを点線で表示)と周期系S1 (構成原
子およびユニットセルを実線で表示)の対応関係の一例
を示した。図16では二次元的な表記になっており、リ
ファレンス系S0 の9個(M= 9)のユニットセルU0
で周期系S1 のユニットセルU1 が構成されている場合
の例となっている。
【0242】また図18に図16に対する対応リスト
[S0 1←→S1 ]を示す。図16に示した例では、リ
ファレンス系S0 のユニットセルU0 当たりの原子数N
0=4、周期系S1 のユニットセルU1 当たりの原子数N
1=36となっている。周期系S1 処理部[4−2]で
は、周期系S1 の格子定数、ユニットセルU1 当たりの
原子数N1 、N1 個の原子の原子座標r1 (k0)α
ポテンシャルパラメ−タA1 (k0)、質量m1 (k
0)の値をユ−ザ−が直接入力する代わりに、(M×
×M)という情報を入力する方式でもよい。
【0243】そして、この情報に基づいてユニットセル
1 当たりの原子数N1 をN0 ×Mと計算し、対応リス
ト[S0 ←→S1 ]を作成する。その際上述の関係式k
= h+ ζN0 において、例えばζ= (ζ, ζ,
ζ), (ζ= 1, …, M= 1, …M, ζ
= 1, …,M)とおく。さらに対応リスト[S0
→S1 ]とリファレンス系S0 の周期性から
【数39】
【0244】のように、座標r1 (k0)αの初期値、
およびポテンシャルパラメ−タA1 (k0)と質量m1
(k0)の値を設定する方式でもよい。
【0245】速度v1 (k0)αに関しては、例えば温
度TでのMD計算を行う場合、この温度に対応した初速
度を設定する必要があるため、ユ−ザ−によって指定さ
れた温度Tを与える初速度を本発明による材料設計支援
システムが自動的に発生させる方式でもよいし、ユ−ザ
−が適宜設定する方式でもよい。
【0246】次に図14の原子間ポテンシャル処理部
[4−4]では原子間相互作用を表す関数形が保持され
る。本実施例では原子(i) と原子(j )に働く原子間相
互作用を
【数40】
【0247】という関数形によって記述する。ここでA
(i) は、リファレンス系S0 処理都[4−1]、周期系
1 処理部[4−2]非周期系S2 処理部[4−3]で
述べたポテンシャルパラメ−タA0 (hζ)、A1 (k
ξ)、A2(i)に相当する。例えばφ(i,j)がク−ロン
相互作用を表す場合、A(i)=qi(qiは原子(i) の電
荷)、ψ(r|i,j)= 1/r(i,j ) EMBED Equation.
2 (r(i,j )は原子(i)と原子(j )の原子間距
離)となる。
【0248】式(79)のような関数形で記述される原子間
ポテンシャルとして、ク−ロン相互作用の他に、ファン
・デル・ワ−ルス力、多重極相互作用等がある。これら
の相互作用は通常のMD計算において基本的に考慮され
るものであり、式(79)は原子間ポテンシャルの代表的な
関数形を表しているといえる。本発明の材料設計支援シ
ステムでは、例えばク−ロン相互作用+ファン・デル・
ワ−ルス力というように、同時に複数の原子問相互作用
を扱うこともできる。その場合、原子(i) と原子(j )
に働く原子間相互作用φ(i,j )は
【数41】
【0249】で記述される。原子間相互作用を1種類の
み考慮する場合も、複数種類考慮する場合も取り扱いは
同じであるため、上述したリファレンス系S0 処理部
[4−1]周期系S1 処理部[4−2]および以下の説
明では原子間相互作用を識別するための添字μを省略す
る。また本実施例では原子間ポテンシャルに関する説明
を行なうが、本発明による材料設計支援システムでは分
子間ポテンシャルの取り扱いも同様に可能である。
【0250】本発明の材料設計支援システムでは周期系
1 に対するMD計算を行うため、リファレンス系S0
と周期系S1 のエネルギ−および各原子に働く力をぞれ
ぞれ計算する。以下この方法を説明する。
【0251】まず、図14のリファレンス系S0 計算部
[4−5]での処理動作を説明する。リファレンス系S
0 計算部[4−5]では、リファレンス系S0 のポテン
シャルエネルギ−および各原子に働く力を計算する。そ
のために、まず2原子間の位置ベクトルのα成分r0
(hζ, h' ζ' )αを以下のように定義する。
【0252】
【数42】
【0253】後述する周期系S1 や非周期系S2 に対す
る2原子間の位置べクトルも式(82)と同様に定義される
ものである。リファレンス系S0 計算部[4−5]で
は、e0(h0)とf0(h0)αで表される物理量を次式
【数43】
【0254】原子間栢互作用が無視できるほど小さくな
る遠方の原子まで相互作用考慮することを意味してい
る。ク−ロン相互作用の場合、式(83)と式(84)の格子和
に対してエワルド法を用いて計算の効率化を図ることも
可能である。このエワルド法はク−ロン相互作用だけで
なく、関数形がr−nで与えられる相互作用の格子和の
計算に対しても適用が可能である。またe0(h0)とf0
(h0)αを用いれば、リファレンス系S0 のユニット
セルU0 当たりのポテンシャルエネルギ−E0 cellと原
子(h0)に働く力のα成分F0(h0)αをそれぞれ
【数44】
【0255】と計算することができる。
【0256】次に、図14の周期系S1 計算部[4−
6]での動作処理を説明する。周期系S1 計算部[4−
6]では、周期系S1 のユニットセルU1 当たりのポテ
ンシャルエネルギ− EMBED Equation.2 と原子(k
0)に働く力のα成分F1(k0)α
【数45】
【0257】のように計算される。ここでe1(k0)と
f1(k0)αはそれぞれ
【数46】
【0258】で与えられるものである。式(90)のe0(k
0)と式(91)のf0(k0)αはリファレンス系S0 に対
する物理量であり、対応リスト[S0 ←→S1 ]とリフ
ァレンス系S0 の周期性から
【数47】
【0259】この領域は例えば半径Rcut の球として与
えられるものである。領域Rcut はユ−ザ−が指定する
方式でもよいし、本発明による材料設計支援システムが
適宜設定する方式でもよい。
【0260】なお、後で述べるようにユ−ザ−が必要と
する計算精度と計算時間の兼ね合いから領域Rcut を設
定することによって、周期系S1 に対する効率的なMD
計算を実現することができる。またMD計算実行中は、
通常、系の全エネルギ−(運動エネルギ−+ポテンシャ
ルエネルギ−)をモニタ−しエネルギ−の保存則を確認
するが、本発明の計算方法においても運動エネルギ−を
【数48】
【0261】のように計算し、周期系S1 のユニットセ
ルU1 当たりの全エネルギ−をK1 cel l +E1 cell EMBE
D Equation.2 と求めることができる。
【0262】次に、図14の周期系MD計算部[4−
8]での処理動作を説明する。本実施例では、MD計算
のアルゴリズム(ニュ−トン方程式の差分化の方法)と
してベルレの方法を、またアンサンブルとしてはミクロ
カノニカル・アンサンブル(粒子数、体積、エネルギ−
一定)を例に取って説明を行うが、これら以外の方法の
適用も可能である。周期系MD計算部[4−8]では周
期系S1 に対するMD計算を行うため、基本セル(ξ=
0)に含まれるN1 個の原子(k0)の時刻t+Δtで
の位置と速度を
【数49】
【0263】を用いて計算する。ここでF1(k0|t)
αは、周期系S1 計算部[4−6]で式(89)に従って計
算される時刻tでの原子(k0)に働く力のα成分であ
る。ΔtはMD計算における時間刻みであり、この値は
ユ−ザ−が任意に指定してもよいし、本発明の材料設計
支援システム側で設定する方式でもよい。
【0264】周期系MD計算部[4−8]では、式(96)
と式(97)を用いて周期系S1 の構造の動的挙動を時刻t
end まで繰り返し計算する。この終了時刻tend はユ−
ザ−によって任意に指定される値である。
【0265】以上、本発明による周期系S1 に対するM
D計算を実行する材料設計支援システムの構成を示した
ブロック図(図14)における処理動作を各ブロック毎
に説明してきた。次に周期系S1 に対するMD計算を行
うための手順をフロ−チャ−トを用いて具体的に説明す
る。
【0266】図20に周期系S1 に対するMD計算を行
うための手順を示した。
【0267】まず、MD計算のための諸情報(温度T、
時間刻みΔt、終了時刻tend 、Rcut 等)を入力する
(ステップ[5−1])。これらの値の入力は、温度T
のようにこの後のステップでの処理に関係するものを除
けば、以下のステップ[5−2]やステップ[5−3]
の後に入力する方式でもよい。
【0268】次に、リファレンス系S0 処理部[4−
1]にリファレンス系S0 に関する物理量を入力する
(ステップ[5−2])。この物理量は、リファレンス
系S0 の格子定数、ユニットセルU0 当たりの原子数N
0 、N0 個の原子の座標r0 (h0)α、ポテンシャル
パラメ−タA0 (h0)、質量m0 (h0)である。
【0269】次に、周期系S1 処理部[4−2]に周期
系S1 に関する物理量を入力する(ステップ[5−
3])。この物理量は、周期系S1 の格子定数、ユニッ
トセルU1 当たりの原子数N1 、N1 個の原子の座標r
1 (k0)α、速度v1 (k0)、ポテンシャルパラメ
−タA1 (k0)、質量m1 (k0)である。
【0270】次いで、同じく周期系S1 処理部[4−
2]において対応リスト[S0 ←→S1 ]を作成する
(ステップ[5−4])。ブロック毎の説明で既に述べ
たように、周期系S1 処理部[4−2]に対する物理量
の入力は、リファレンス系S0 の物理量や温度Tなどに
基づいて本発明の材料設計支援システムが自動的に値
(座標と速度に関しては初期値)を設定する方式でもよ
い。
【0271】次いでリファレンス系S0 計算部[4−
5]において、f0(h0)αを計算する(ステップ[5
−5])。
【0272】以上までのステップがMD計算の初期設定
に当たり、これ以降のステップがMD計算に従う繰り返
し計算の処理動作となる。繰り返し計算の各ステップが
MD計算の時刻tに対応しており、例えば初期時刻をt
= 0とする。
【0273】まず周期系S1 計算部[4−6]において
F1(k0)αを計算し(ステップ[5−6])、次に周
期系MD計算部[4−8]でF1(k0)αを用いてr1
(k0)αとv1 (k0)αを計算する(ステップ[5
−7])。それを受けて、周期系S1 処理部[4−2]
においてr1 (k0)αとv1 (k0)αの値をそれぞ
れ更新する(ステップ[5−8])。以上のステップ
[5−6]からステップ[5−8]までの処理を、ステ
ップ[5−9]で時刻tがt= tend になったと判定さ
れるまで繰り返し実行し、最後に時刻tend での周期系
1 の構造を出力あるいは表示する(ステップ[5−1
0])。
【0274】本発明によるMD計算では、繰り返し計算
実行中の任意の時刻において、r1(k0)α、v1
(k0)α、およびこれらの値を用いて計算した物理量
を出力あるいは表示することも可能である。またステッ
プ[5−6]では、ポテンシャルエネルギ− EMBED Equ
ation.2 と運動エネルギ− EMBED Equation.2 をユ
−ザ−の希望する任意の時刻において計算・出力するこ
とも可能である。ただしポテンシャルエネルギ−を計算
する場合は、ステップ[5−5]においてe0(h0)の
計算を予め行っておく。
【0275】ここで周期系S1 に対するMD計算のフロ
−チャ−ト(図20)に関する補足説明を行う。
【0276】図20ではステップ[5−6]からステッ
プ[5−8]までの処理を周期系S1 計算部[4−
6]、周期系MD計算部[4−8]、周期系S1 処理部
[4−2]ごとの処理に分けた単純なステップ化で表し
たが、ベルレのアルゴリズムを用いる場合、式(97)によ
れば時刻t+ Δtの速度を求めるために時刻tと時刻t
+Δtでの力が必要となる。
【0277】そのため実際の計算では、例えばベルレの
アルゴリズムを用いる場合、図20のフロ−チャ−トを
図21のように一部変更する。図Sではステップ[5−
11]が新たに設けられ、このステップ[5−11]で
周期系S1 計算部[4−6]において時刻t= 0(初期
時刻を0とする)での力F1(k0|t(= 0))αを求
める。そして、図20のステップ[5−6]からステッ
プ[5−8]までを、図21では次のような処理と置き
換える。
【0278】まず、周期系MD計算部[4−8]におい
て時刻t十Δtでの座標r1 (k0|t+Δt)αを式
(96)を用いて計算し(ステップ[5−12])、これを
受けて周期系S1 処理部[4−2]において座標の値を
1 (k0|t)αからr1(k0|t+ Δt)αに更
新する(ステップ[5−13])。
【0279】次に、この更新された座標r1 (k0|t
+ Δt)αを用いて時刻t+ Δtでの力F1(k0|t+
Δt)αを計算する(ステップ[5−14])。そし
て、このF1(k0|t+ Δt)αと一つ前の繰り返し計
算のステップ[5−14](t= 0の場合はステップ
[5−11])で既に計算済みのF1(k0|t)αとを
用いて、周期系MD計算部[4−8]において時刻t+
Δtでの速度v1 (k0|t+ Δt)αを式(97)を用い
て計算し(ステップ[5−15])、それを受けて周期
系S1 処理部[4−2]において速度の値をv1 (k0
|t)αからv1 (k0|t+ Δt)αに更新する(ス
テップ[5−16])。以上のステップ[5−11]と
ステップ[5−12]〜ステップ[5−16]は、用い
るアルゴリズム(例えぱベルレの方法)に応じて手順が
変化するものであり、本発明による材料設計支援システ
ムでは採用するアルゴリズムによって適宜フロ−チャ−
トを変更することが可能である。
【0280】(第6の実施形態)非周期系に対するMD
計算 この第6の実施形態では、非周期系S2 に対するMD計
算を実行するための材料設計支援システムの一実施例を
説明する。
【0281】この実施形態は、請求項2に記載された発
明に対応するものである。
【0282】図15は非周期系S2 に対するMD計算を
実行する材料設計支援システムの構成を示したブロック
図であり、リファレンス系S0 処理部[4−1]、周期
系S1 処理部[4−2]、非周期系S2 処理部[4−
3]、原子間ポテンシャル処理部[4−4]、リファレ
ンス系S0 計算部[4−5]、周期系S1 計算部[4−
6]、非周期系S2 計算部[4−7]、周期系MD計算
部[4−8]、非周期系MD計算部[4−9]から構成
される。
【0283】この図15は図14に対して非周期系S2
処理部[4−3]、非周期系S2 計算部[4−7]、非
周期系MD計算部[4−9]の3つを新たにつけ加えた
構成になっており、リファレンス系S0 処理部[4−
1]、周期系S1 処理部[4−2]、原子間ポテンシャ
ル処理部[4−4]、リファレンス系S0 計算部[4−
5]、周期系S1 計算部[4−6]、周期系MD計算部
[4−8]は図14の各部と同しものであるため、ここ
では非周期系S2 処理部[4−3]、非周期系S2 計算
部[4−7]、非周期系MD計算部[4−9]について
説明を行った後、フロ−チャ−トを用いて非周期系S2
に対するMD計算の手順を説明する。
【0284】まず、図15の非周期系S2 処理部[4−
3]で行われる処理を説明する。非周期系S2 処理部
[4−3]では、非周期系S2 の結晶構造、ポテンシャ
ルパラメ−タ等が保有・処理される。本実施形態では非
周期系Sの構造を周期系S1からのずれによって記述
する。
【0285】このずれは、局所的に乱れ(例えぱ不純
物)が存在することによって乱れを中心とするある領域
内で構造変形が起こる結果生じるものであり、以下、本
実施例では非周期系S2 として局所的な不純物を含む系
を例にとって説明する。
【0286】このようなずれによる記述を行うため、対
応リスト[S1 ←→S2 ]を用いて周期系S1 と非周期
系S2 の原子を1対1に対応付ける。非周期系S2
は、局所的な不純物の存在のために周期系Sが有して
いた周期性が消滅する。そのため、周期性を表す(k
ξ)という原子番号の表記方法は適切ではなく、非周期
系S2 の構成原子に対しては通し番号(i) を設定する。
このような処理は例えばi=k+ ξN1 という関係式を用
いて行なうことが可能であり、この情報が対応リスト
[S1 ←→S2 ]に保存される。
【0287】図17に、リファレンス系S0 (構成原子
とユニットセルを点線で表示)、周期系S1 (構成原子
とユニットセルを実線で表示)、非周期系S2 (構成原
子を灰色の丸で、後述する領域Rrelax を一点鎖線で表
示)の対応関係の一例を示した。
【0288】図17のリファレンス系S0 および周期系
1 は図16で示した例と同じものであり、この図16
の周期系S1 に対して置換型不純物原子(黒丸で表示)
を1個導入した系が図17の非周期系S2 となってい
る。すなわち非周期系S2 は、領域Rrelax 内の原子は
灰色丸(不純物原子は黒丸)で、領域Rrelax 外の原子
は白丸(実線)で表される原子配置を持つものである。
【0289】図17に対する対応リスト[S1 ←→S
2 ]として、非周期系S2 の21個の構成原子の通し番
号(i) を登録した例を図18に示した。この21個の原
子は図17の一点鎖線で囲まれた領域Rrelax に合まれ
る原子に相当している。図18に示した対応リスト[S
1 ←→S2 ]の例では、対応リスト[S0 ←→S1 ]と
の対応関係を明らかにするために、非周期系S2 の原子
と対応していない周期系S1 の原子(例えば(k= 5,
ξ= 0)や(k= 6, ξ= 0))までリストアップされ
ているが、このような原子に関しては対応リスト[S1
←→S2 ]に登録しない方式でもよい。
【0290】また図17に示した例では領域Rrelax
周期系S1 のユニットセルU1 よりも小さくなっている
が、領域Rrelax がユニットセルU1 よりも大きい場合
も同様な取り扱いが可能である。以下では説明を分かり
易いものとするため、非周期系S2 の不純物原子を通し
番号(i) の代わりに不純物番号(σ)でも表す。
【0291】以下、非周期系S2 処理部[4−3]での
処理動作の流れをMD計算の初期設定部分に関して説明
する。非周期系S2 処理部[4−3]には、非周期系S
2 に含まれる不純物原子の個数Nimp 、不純物原子の番
号、不純物原子のポテンシャルパラメ−タAimp (σ)
および質量mimp (σ)、格子緩和を考慮する領域R
relax が入力される。
【0292】ここで不純物原子の番号とは、不純物原子
との置換えを行なう周期系S1 の原子の番号である。す
なわち、不純物原子をNimp 個発生させる場合は、{
(kξ), (kξ)…,(kNimp ξ
Nimp )} という組みを指定する。
【0293】図17に示した例では不純物原子は1個
(Nimp=1)であり、{ (k= 2; ξ= 0)} のみを指
定する。Nimp として任意の個数の不純物原子を取り扱
うことが可能であり、また、指定する不純物原子は周期
系S1 の基本セル(ξ= 0)に含まれるものでもよい
し、周囲のユニットセル(ξ≠0)に含まれるものでも
よい。さらに、この不純物原子を指定する組み{ (k
ξ), (kξ)…,(kNimp ξNimp )} は、
対応リスト[S1 ←→S2 ]によって不純物番号の組み
{ (σ), (σ)…,(σNimp )} と対応付けら
れている。
【0294】図18の対応リスト[S1 ←→S2 ]では
不純物原子は1個であり、非周期系S2 の原子(i=2)
に不純物番号(σ= 1)が割り振られている。次に、格
子緩和を考慮する領域Rrelax について説明する。非周
期系S2 では不純物を中心として格子緩和が生じ、各原
子の緩和量は不純物より遠方ではほとんど0になるた
め、不純物を中心とするある有限な領域内のみで格子緩
和を計算すればよい。この格子緩和を考慮する領域とし
て、例えば不純物原子の重心を中心とする半径Rrelax
の球を仮定することができる。この領域は必ずしも球形
である必要はなく、木実施例では格子緩和を考慮する領
域を一般的にRrelax で表す。この領域Rrelax は、ユ
−ザ−が任意に指定する方式でもよいし、本発明の材料
設計支援システムが適宜設定する方式でもよい。
【0295】また非周期系S0 処理部[4−3]では、
領域Rrelax に含まれる原子数N2(Nの二乗ではない
ことに注意。混乱を避けるため本明細書ではNの二乗は
N×Nと表記する)を数え上げる。図17に示した例で
はN2=21となっており、常にN2 >Nimp となる。補
足説明となるが、本発明が扱う非周期系S2 と同し系を
ス−パ−セル法で取り扱う場合に必要となるユニットセ
ル当たりの原子数(前述したNSCに相当)は、通常NSC
> N2 となる(ス−パ−セル法では乱れ同士の相互作用
を小さくするために、領域Rrelax の周囲にさらにバッ
ファ−層のような領域を必要とするため)。
【0296】よって計算量を単純に比較しただけでも、
本発明による計算方法の方がス−パ−セル法よりも非周
期系に対する計算量が少なくなっていることが分かる。
次に非周期系S2 処理部[4−3]では、対応リスト
[S1 ←→S2 ]と周期系S1の周期性から、次式
【数50】
【0297】に基づいて座標r2(i)αと速度v2(i)α
初期値を設定する。この初期値は必ずしも式(98)および
式(99)を用いて設定する必要はなく、ユ−ザ−が適宜設
定する方式でもよい。次に、非周期系S2 に対するポテ
ンシャルパラメ−タと質量の取り扱いを説明する。上述
したように非周期系S2 処理部[4−3]には、Nimp
個の不純物原子(σ)のポテンシャルパラメ−タAimp
(σ)と質量mimp (σ)が入力される。これを受けて
非周期系S2 処理部[4−3]では、領域Rrela x 、に
含まれるN2 個の原子(i) のポテンシャルパラメ−タA
2(i)および質量m2(i)を
【数51】
【0298】と設定する。
【0299】周期系S1 処理部[4−2]の説明で述べ
たように、周期系S1 の原子は対応リスト[S0 ←→S
1 ]で対応付けられたリファレンス系S0 の原子と同じ
ポテンシャルパラメ−タを持つ(式(77)参照)のに対
し、非周期系S2 に関しては、不純物原子(σ)につい
ては対応リスト[S1 ←→S2 ]で対応付けられた周期
系S1 の原子とは異なるポテンシャルパラメ−タを持つ
(式(101) 参照)。
【0300】本発明による材料設計支援システムでは、
不純物原子として置換型、侵入型および欠陥の3種類を
取り扱うことが可能であり、それらは周期系S1 と非周
期系S2 のポテンシャルパラメ−タの関係によって図1
9のように指定される。図19にはポテンシャルパラメ
−タAと共に質量mの取り扱いに関する規則も示した
が、この質量mはポテンシャルパラメ−タAと同様の取
り扱いがなされるものであり(上述のリファレンス系S
0 処理都[4−1]、周期系S1 処理部[4−2]、お
よび非周期系S2 処理部[4−3]の説明参照)、質量
mをポテンシャルパラメ−タAの一種とみなすこともで
きる。
【0301】図19に示した3種類の不純物原子のう
ち、取扱いに特に注意を要するのが侵入型不純物原子で
ある。侵入型不純物原子はそれに対応する原子が周期系
1 に本来存在しないため、対応リスト[S1 ←→S
2 ]で1対1の対応付けを行うためには周期系S1 (及
びリファレンス系S0 )に予めダミ−原子を設定してお
く必要が生しる。このダミ−原子はポテンシャルパラメ
−タA1 (及びA0 )が0に設定されており、そのため
ダミ−原子の考慮によって周期系S1 (及びリファレン
ス系S0 )のエネルギ−や各原子に働く力が変化するよ
うな悪影響は一切生じない。
【0302】次に、図15の非周期系S2 計算部[4−
7]での動作処理を説明する。非周期系S2 計算部[4
−7]では、非周期系S2 の差分ポテンシャルエネルギ
−ΔE2および原子(i) に働く力のα成分F2(i) αを、次
【数52】
【0303】を用いて計算する。ここでF1(i) αは周期
系S1 における力であり、対応リスト[S1 ←→S2
と周期系S1 の周期性から
【数53】
【0304】が成り立ち、式(89)を用いて周期系S1
算部[4−6]で計算されるF1(k0)αに相当する。
またΔE2(a ,ΔE2(b ,ΔF2(a (i) α,ΔF
2(b (i) αは、エネルギ−に関しては
【数54】
【0305】と、力に関しては
【数55】
【0306】と記述される量である。ここで式(105) の
e1(i) と式(107) のf1(i) αは周期系S1 に対する物理
量であり、対応リスト[S1 ←→S2 ]と周期系S1
周期性から
【数56】
【0307】ここで差分ポテンシャルエネルギ−ΔE2
関する補足説明を行う。ΔE2は、次式
【数57】
【0308】で定義される物理量であり、E1 WholeとE
2 Wholeはそれぞれ周期系S1 と非周期系S2 の系全体に
対するポテンシャルエネルギ−を表す。すなわちΔE
2は、周期系S1 に不純物が局所的に導入されることに
よって生じるエネルギ−の変化分に相当する。非周期系
2 は周期性の単位(ユニットセル)を持たないため、
リファレンス系S0 や周期系S1 に対するE0 Cell やE
1 Cell のような量を定義することができない。そのた
め、本実施例では周期系S1 からのポテンシャルエネル
ギ−変化分ΔE2 によって非周期系S2 のエネルギ−を
記述する。また運動エネルギ−の変化分ΔK2
【数58】
【0309】と計算することで、非周期系S2 の全エネ
ルギ−を周期系S1 からの変化分ΔK2 +ΔE2として求
めることができる。次に式(106) と式(108) の計算方法
について補足説明を行う。
【0310】
【数59】
【0311】次に、図15の非周期系MD計算部[4−
9]での処理動作の説明を行う。第6の実施形態では、
第5の実施形態と同様にMD計算のアルゴリズム(ニュ
−トン方程式の差分化の方法)としてベルレの方法を、
またアンサンブルとしてはミクロカノニカル・アンサン
ブル(粒子数、体積、エネルギ−一定)を例に取って説
明を行うが、これら以外の方法の適用も可能である。非
周期系MD計算部[4−9]では非周期系S2 に対する
MD計算を行うため、領域Rrelax に含まれるN2 個の
原子(i) の時刻t+ Δtでの位置と速度を
【数60】
【0312】を用いて計算する。周期系MD計算部[4
−8]での扱いと同しく、ΔtはMD計算の時間刻みで
あり、F2(i |t)αは非周期系S2 計算部[4−7]
で式(103) を用いて計算される時刻tでの原子(i) に働
く力のα成分である。本発明による材料設計支援システ
ムで非周期系S2 に対するMD計算を行う場合、この非
周期系MD計算部[4−9]で式(114) と式(115) を用
いて非周期系S2 の構造の時間変化を計算すると同時
に、上述した周期系MD計算部[4−8]においても周
期系S1 に対するMD計算を実行することになる。この
手順について、フロ−チャ−トを用いて以下説明を行
う。
【0313】図22に非周期系S2 に対するMD計算の
手順を示した。ステップ[6−1]からステップ[6−
4]までは、先に説明した図20のステップ[5−1]
からステップ[5−4]までと同じ処理を行う。次に、
非周期系S2 処理部[4−3]に非周期系S2 に対する
物理量を入力する(ステップ[6−5])。この物理量
は、非周期系S2 に含まれる不純物原子の個数Nimp
imp 個の不純物原子(σ)の番号、不純物原子(σ)
のポテンシャルパラメ−タAimp (σ)と質量mimp
(σ)、および格子綬和を考慮する領域Rrelax であ
る。これらの物理量が入力されると、同じく非周期系S
2 処理部[4−3]において対応リスト[S1 ←→S
2 ]を作成し、非周期系S2 の領域Rrelax に含まれる
2 個の原子(i) の座標r2(i)αおよび速度v2(i)α
初期値、ポテンシャルパラメ−タA2(i)と質量m2(i)の
値を設定する(ステップ[6−6])。次いで、リファ
レンス系S0 計算部[4−5]においてf0(h0)α
計算する(ステップ[6−7])。ここまでのステップ
がMD計算の初期設定に当たり、これ以降のステップが
MD計算に従う繰り返し計算の処理動作となる。まず周
期系S1 計算部[4−6]においてF1(k0)αを計算
し(ステップ[6−8])、続いて周期系MD計算部
[4−8]でF1(k0)αを用いてr1 (k0)αとv
1 (k0)αを計算する(ステップ[6−9])。次
に、非周期系S2 計算部[4−7]においてF2(i) α
計算し(ステップ[6−10])、非周期系MD計算部
[4−9]でF2(i) αを用いてr2(i)αとv2(i)αを計
算する(ステップ[6−11])。さらに、周期系S1
処理部[4−2]においてr1 (k0)αとv1 (k
0)αの値を更新し(ステップ[6−12])、非周期
系S2 処理部[4−3]においてr2(i)αとv2(i)α
値を更新する(ステップ[6−13])。以上のステッ
プ[6−8]からステップ[6−13]までの処理をス
テップ[6−14]で時刻tがt= tend になったと判
定されるまで繰り返し実行し、最後に時刻tend での非
周期系S2 の構造を出力あるいは表示する(ステップ
[6−15])。本発明によるMD計算では、繰り返し
計算実行中の任意の時刻において、r2(i)α、v
2(i)α、およびこれらの値を用いて計算した物理量を出
力あるいは表示することも可能である。また、ステップ
[6−10]ではポテンシャルエネルギ−と運動エネル
ギ−に関してΔE2とΔK2 をユ−ザ−の希望する任意の
時刻に計算・出力することも可能であり、ただしポテン
シャルエネルギ−を計算する場合は、ステップ[6−
7]でe0(h0)を、ステップ[6−8]でe1(k0)
を予め計算しておく。上述したように本発明による材料
設計支援システムで非周期系S2 に対するMD計算を行
う場合、同時に周期系S1 に対するMD計算も実行する
ことになる。そのため周期系S1 に対しても、任意の時
刻でのr1 (k0)α、v1 (k0)α、およびこれら
の値を用いて計算した物理量の出力あるいは表示、同じ
く任意の時刻での EMBED Equation.2 および EMBED E
quation.2 の計算と出力(ステップ[6−8])、時
刻tend での周期系S1 の最終構造の出力あるいは表示
(ステップ[6−15])が可能である。この図22の
フロ−チャ−トに関しては、用いるアルゴリズム(例え
ばベルレの方法)に応じて図20に対する図21のよう
な手順の変更が可能であり、本発明による材料設計支援
システムでは非周期系S2 に対しても用いるアルゴリズ
ムに応じたMD計算を適宣実行することが可能である。
【0314】(実施形態7の実施形態)以下、前記第
5、第6の実施形態の材料設計支援システムに関する変
形例を第7の実施形態として説明する。
【0315】まず、式(79)で与えられる関数形以外の原
子間相互作用の取り扱いについて説明する。
【0316】式(79)で記述されるr−n関数形(特にク
−ロン相互作用)は、長距離相互作用であるがために、
計算時間の増大、ス−パ−セル法を適用したことよる計
算誤差などの深刻な問題を抱えており、本発明による材
料設計支援システムではそれの解決を目的としている。
【0317】式(79)で記述されない原子問相互作用とし
ては、例えば短距離反発力を表すBorn-Mayerタイプ(指
数関数形)や共有結合を表すValence-Force Field モデ
ル(多体力)等があるが、これらは一般的に短距離相互
作用となっている。
【0318】この短距離相互作用に関しては上述した計
算時間の増大や計算誤差などの問題は発生しないため、
通常の方法でエネルギ−や力をリファレンス系S0 、周
期系S1 、非周期系S2 に対してそれぞれ計算すること
に問題はなく、本発明による材料設計支援システムでは
そのようにして計算した短距離相互作用によるエネルギ
−や力を本発明による計算方法で求めた長距離相互作用
によるエネルギ−や力と足し合わせることで、一般的な
原子間相互作用を用いたMD計算を実行することが可能
である。
【0319】第6の実施形態の材料設計支援システムに
よって非周期系S2 に対するMD計算を行う場合、上述
したように同時に周期系S1 に対してもMD計算を行う
ことになる。材料設計等の目的で実際に非周期系S2
対するMD計算を行う場合、同じ母体(周期系S1 )に
対して不純物の個数や種類を変えて何度もMD計算を実
行する必要が生じると予想される。そのような場合、周
期系S1 に対しては全く同じ計算を幾度も繰り返すこと
になり経済的でない。これを解決するため、本発明によ
る材料設計支援システムでは周期系S1 に対するMD計
算を1度だけ行い、各時刻の周期系S1 の物理量(原子
の位置、速度、力等)に関するデ−クベ−スを作成し、
そのデ−タベ−スを用いることで非周期系S2 に対する
MD計算を効率的に実行することも可能である。このデ
−タベ−スは、周期系S1 の種類および温度等のシミュ
レ−ション条件ごとに作成されるものである。
【0320】また、第1の実施形態によって非周期系S
2 に対するMD計算を行う場合には、データベースをリ
ファレンス系S0 の種類及び温度などのシュミレーショ
ン条件毎に作成することで効率化を図ることが可能にな
る。
【0321】ここで周期系S1 と非周期系S2 の座標と
速度に関して補足説明を行う。本発明の材料設計支援シ
ステムでは、周期系S1 をリファレンス系S0 からのず
れで、非周期系S2 を周期系S1 からのずれで取り扱う
ことを基本概念としており、それを式で表すと、周期系
1 に関しては
【数61】
【0322】と、非周期系S2 に関しては
【数62】
【0323】とそれぞれ記述することができる。ここ
で、Δr1 (k0)αとΔv1 (k0)αが温度効果に
よる微視的な振動(格子振動)によるリファレンス系S
0 からのずれに、Δr2(i)αとΔv2(i)αが局所的な不
純物の存在による周期系S1 からのずれに相当してい
る。第5の実施形態と第6の実施形態ではr1 (k0)
α,v1 (k0)α,r2(i)α,v2(i)αを直接扱う方
式を説明したが、まずΔr1(k0)α,Δv1 (k
0)α,Δr2(i)α,Δv2(i)αを計算した後、式(11
6) 〜式(119) を用いてr1 (k0)α,v1 (k0)
α,r2(i)α,v2(i)αを求める方式でもよい。その場
合は、周期系S1 と非周期系S2 の力の計算として、F1
(k0)α( 式(89))およびF2(i) α(式(103) )の代
わりに
【数63】
【0324】を求める。そして、周期系S1 計算部[4
−6]では式(96)と式(97)のr1,v1,F1をそれぞれΔr
1,Δv1,ΔF1に、非周期系S2 計算部[4−7]では式
(114)と式(115) のr2,v2,F2をそれぞれΔr2,Δv2,
ΔF2に置き換えて繰り返し計算を行う。式(117) と式(1
19) においてv0 はリファレンス系S0 の原子の速度を
表すが、リファレンス系S0 は絶対零度での系であるた
めv0 は一意的にすぺて0に設定される。
【0325】本発明による材料設計支援システムによれ
ば、非周期系S2 に対して設定される格子緩和を考慮す
る領域Rrelax をシミュレ−ションの途中で適宜変更す
ることが可能であり、それによって領域Rrelax の最適
化を行い、非周期系S2 の構造を効率的に計算すること
ができる。これを行うため、第2の実施形態で説明した
方法との組み合わせによるMD計算も可能である。
【0326】本発明による材料設計支援システムでは、
周期系S1 と比較して非周期系S2が大変形を起こすよ
うな場合でも高精度の計算が可能である。これは式(11
8) で示されるずれΔr2(i)αが大きくなった場合に相
当し、このΔr2(i)αがある程度以上に大きくなると、
式(106) および式(108) の計算精度が悪くなる可能性が
ある。この問題はずれΔr2(i)αが小さくなるように周
期系S1 及びリファレンス系S0 にダミ−原子を設定す
ることで回避可能であり、本発明による材料設計支援シ
ステムでは非周期系S2 が大変形を起こすような場合に
関しても精度の良い計算を行うことができる。
【0327】これを行うため、前述の実施形態3で説明
した方法との組み今わせによるMD計算を行うことも可
能である。また、温度効果による格子振動が激しくなる
等の原因でリファレンス系S0 と周期系S1 の構造差が
大きくなった場合(式(116)のずれΔr1 (k0)α
大きくなった場合に相当)、式(90)および式(91)の計算
精度が悪くなる可能性があるが、上記周期系S1 に対す
る処理と同様にリファレンス系S0 にダミ−原子を設定
することでこの問題も回避可能であり、本発明による材
料設計支援システムは温度効果による格子振動が激しい
場合でも周期系S1 に対するMD計算を実行可能であ
る。
【0328】非周期系S2 に対するMD計算において、
リファレンス系S0 のユニットセルU0 当たりの原子数
0 と周期系S1 のユニットセルU1 当たりの原子数N
1 とが同程度である場合、周期系S1 に対する計算を必
ずしも行う必要はなく、リファレンス系S0 と非周期系
2 のみを考慮してMD計算を実行する方式でも良く、
これは第1の実施形態に相当する。
【0329】この実施形態ではMD計算のみを説明した
が、本発明による材料設計支援システムではMM(分子
力学)計算の実行も可能であり、その場合、原子の質量
をm= 1、速度をv= 0とすることで、本実施例での説
明と同じ手続きによってMM計算を行うことができる。
また、この処理によってリファレンス系S0 と周期系S
1 は全く等価な系となるため、MM計算では周期系S1
に関する計算を省略することも可能である。
【0330】以上説明してきた第5〜第7の実施形態に
かかる材料設計支援システムによると、従来法と比較し
て以下のような効果を得ることができる。
【0331】周期系S1 に対して ・計算時間の短縮 非周期系S2 に対して ・計算時間の短縮 ・完全に孤立した乱れを含む無限系に対する計算(ス−
パ−セル法でサイズ無限大のユニットセルを用いた場合
と等価)の実現 ・電気的中性が破れた系に対する正しい電荷分布での計
算の実現 以上の効果について以下順次説明する。
【0332】まず第5の実施形態による周期系S1 に対
するMD計算における計算時間の短縮について説明す
る。
【0333】
【数64】
【0334】そして式(91)では、領域Rcut 外の原子
(k' ξ' )との相互作用としてリファレンス系S0
おける相互作用を近似的に用いる(これを与えるのが第
1項目のf0(k0)αである)。
【0335】これは、領域Rcut 内部の原子とは周期系
1 における正しい相互作用を考慮し、領域Rcut 外部
の原子とは温度効果による格子振動を無視した近似的な
相互作用を考慮することを意味する。
【0336】本発明による材料設計支援システムではこ
の領域Rcut を適切に設定することで、周期系S1 に対
する効率的なMD計算を次のように実現する。原子(k
0)と相互作用している原子の数を領域Rcut 内部と外
部で比較した場合、領域Rcu t 内の原子数が少なくなる
ように領域Rcut を設定すれば、計算量の多い領域R
cut 外の原子との相互作用にリファレンス系S0 の計算
結果を用いることができる。リファレンス系S0 に対す
る力の計算はユニットセルU0 が小さいためもともと計
算量が少ない上、MD計算の初期設定段階で一度計算を
行えば繰り返し計算中は再計算の必要がない(図20参
照)。
【0337】そのためこのリファレンス系S0 に対する
計算結果を周期系S1 の力の計算で利用することによっ
て、周期系S1 に対するMD計算の大幅な時間短縮を行
うことができる。
【0338】周期系S1 に対するMD計算に要する計算
量の見積は、従来法(スーパセル法)がN1 ×N1 ×N
all ×Nstepであるのに対し、本発明による方法ではN
1 ×Ncut ×Nstepであり(Ncut は領域Rcut に含ま
れる原子数)、Rcut の設定に応じて従来法よりも(N
1 ×Nall )/Ncut 倍の高速化が可能となる。
【0339】式(91)で行う近似が計算精度に与える影響
については、まず原子間の相互作用は近距離にある原子
からより大きな影響を受けるため、遠距離の原子との相
互作用のみに近似を導入する式(91)の取り扱いは妥当な
ものであると言える。
【0340】さらに式(91)はRcut 外の原子との相互作
用を無視しているわけではなく、平衡位置に固定されて
いると仮定(温度効果による振動を無視)しているだけ
であるため、MD計算において通常計算される物理量
(温度、圧力、拡散係数等)は、長時問平均されたマク
ロな量であることから式(91)で扱う近似によって大きな
影響は一般的に受けないと考えられる。
【0341】以上、本発明による材料設計支援システム
では、ユ−ザ−が必要とする計算精度と計算時間の兼ね
合いからRcut を適宜設定することによって、周期系S
1 に対する効率的なMD計算を実現することができる。
実際の材料設計では何種類もの系に対して条件を変えて
MD計算を何回も実行し、材料設計のための指針を得る
ことが重要となるため、そのような状況において本発明
が提供する材料設計支援システムは特に効果を発揮する
ものである。
【0342】次に第6の実施形態による非周期系S2
対するMD計算における効果を説明する。非周期系S2
に対するMD計算を行う際、本発明ではリファレンス系
0、周期系S1 、非周期系S2 の3つの系を取り扱
う。そして、非周期系S2 に対する力F2(i) αの計算を
式(103) を用いて行う。
【0343】式(103) によれば、F2(i) αは周期系S1
の原子に働く力F1(i) αと非周期系S2 に対する物理量
ΔF2(a)(i) αおよび△F2(b (i) αの3つの項で
与えられる。まずF1(i) αに関しては、上述した周期系
1 に対するMD計算における取り扱いと同様に式(91)
において計算の効率化がなされている。
【0344】また式(107) で計算されるΔF2(a)(i)
αは、周期系S1 に対する物理量f1(k0)αとNimp
(《N2 )個の不純物原子に関する総和で与えられるた
め、これも計算量が少ない項となっている。最後にΔF
2(b (i) αは、式(108) が差分量[ ψ'(r2 |i,j)
α- ψ'(r1 |i,j)α] に関する総和で与えられるもの
であり、この差分量は不純物から遠ざかるにつれて急速
に0になるため、式(108) に関する計算は収束が非常に
速いものになっている。
【0345】以上のような理由からF2(i) αの計算の効
率化が行われており、非周期系S2に対するMD計算の
時間短縮が可能となっている。
【0346】非周期系S2 に対するMD計算に要する計
算量の大まかな見積は、従来法(ス−パ−セル法)がN
SC×NSC×Nall ×Nstepであるのに対し、本発明によ
る方法は(N1 ×Ncut +N2 ×N'cut)×Nstepとな
る(N'cutは非周期系S2 計算部[4−7]に関する説
明で述べた領域R'cutに含まれる原子数である)。
【0347】NSC、N1 、N2 はほぼ同じオ一ダ−であ
るため省略すると、本発明による材料設計支援システム
では領域Rcut およびR'cutの設定に応して、ス−パ−
セル法よりも約(NSC×Nall)/( Ncut +N'cut)倍
の高速化が可能である。
【0348】そしてリファレンス系S0 と非周期系S2
の二つのみを取り扱う前記第1〜第4の実施形態と対比
して、第5〜第7の実施形態による材料設計支援システ
ムではリファレンス系S0 と非周期系S2 に加えて周期
系S1 を考慮することで、温度効果による格子振動によ
って周期系S1 が大きなサイズのユニットセルU1 (N
1 》N0 )を有する場合でも非周期系S2 に対する効率
的なMD計算を実現するものである。
【0349】次に、上述した非周期系S2 に対するMD
計算での2番目、3番目の効果について説明する。この
「完全に孤立した乱れを含む無限系に対する計算」およ
び「電気的中性が破れた系に対する正しい電荷分布での
計算」は、いずれも非周期系S2 の構造を周期系S1
らのずれとして記述したことによって実現されたもので
ある。
【0350】本発明による材料設計支援システムでは非
周期系S2 に対して周期的境界条件を課していないこと
から、ス−パ−セル法における異なるユニットセルに含
まれる乱れ同士の相互作用は一切存在せず、完全に孤立
した状態として乱れを取り扱うことができる。また、乱
れ(不純物)が電荷を有する場合、ス−パ−セル法では
ユニットセル当たりの電荷の総和を0にするため人為的
な電荷(通常一様電荷)を各構成原子に割り振る必要が
生じる。これは、ユニットセル当たりの総電荷が0から
ずれた系ではエネルギ−が発散してしまうため、それを
防ぐ目的でテクニカルに要求される制約であり、その結
果、ス−パ−セル法では正しい電荷分布での計算ができ
ないという問題を抱えている。それに対し、本発明では
非周期系S2 に対して周期的境界条件を用いていないた
め、電気的中性が破れた非周期系S2 に対しても正しい
電荷分布での計算が可能である。
【0351】以上本発明による材料設計支援システムに
よれば、周期系S1 に対する高速なMD計算および非周
期系S2 に対する高精度かつ高速なMD計算を実現する
ことができる。
【0352】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、材
料の設計において、周期系や非周期系の構造安定性や動
的挙動などの解析を行うにあたり、高速でかつ精度の高
い計算(シュミレーション)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わる材料設計支援システム
の構成を示すブロック図。
【図2】リファレンス系S0 と非周期系S2 との関係を
説明するための図。
【図3】図2に示したリファレンス系S0 と非周期系S
2 の構成原子にそれぞれ原子番号(h ζ)及び通し番号
(i) を割り振って示す図。
【図4】図3のリファレンス系S0 と非周期系S2 に対
応する対応リストの一例を示す図。
【図5】置換型・侵入型不純物原子及び欠陥のポテンシ
ャルパラメータAをリファレンス系S0 と非周期系S2
に関して比較して示す図。
【図6】第1の実施形態で説明するMM計算を実行する
ためのフローチャート。
【図7】第1の実施形態で説明するMD計算を実行する
ためのフローチャート。
【図8】第2の実施形態で説明するMM計算を実行する
ためのフローチャート。
【図9】第2の実施形態で説明するMD計算を実行する
ためのフローチャート。
【図10】第3の実施形態で説明するMM計算を実行す
るためのフローチャート。
【図11】第3の実施形態で説明するMD計算を実行す
るためのフローチャート。
【図12】置換型不純物を含むNaClのMM計算によ
る安定構造(緩和構造)の計算例を示す図。
【図13】置換型不純物を含むNaClのMM計算によ
る安定構造(緩和構造)の計算例を示す図。
【図14】第5の実施形態による周期系S1 に対するM
D計算を実行する材料設計支援システムに係る一実施例
の構成を示すブロック図。
【図15】第6の実施形態による非周期系S2 に対する
MD計算を実行する材料設計支援システムに係る一実施
例の構成を示すブロック図。
【図16】リファレンス系S0 と周期系S1 の関係を説
明するための図。
【図17】リファレンス系S0 、周期系S1 、非周期系
2 の関係を説明するための図。
【図18】対応リスト[S0 ←→S1 ]および対応リス
ト[S1 ←→S2 ]の一例を示した図。
【図19】第6の実施形態による非周期系S2 に対する
MD計算で取り扱う置換型・侵入型不純物原子および欠
陥のポテンシャルパラメ−タAおよび質量mを、周期系
1 と非周期系S2 に関して比較した対応表。
【図20】第5の実施形態による周期系S1 に対するM
D計算を実行するためのフロ−チャ−ト。
【図21】第5の実施形態による周期系S1 に対するM
D計算のフロ−チャ−トの変形例。
【図22】第6の実施形態による非周期系S2 に対する
MD計算を実行するためのフロ−チャ−ト。
【符号の説明】
[1−1]…リファレンス系S0 処理部 [1−2]…非周期系S2 処理部 [1−3]…原子間ポテンシャル処理部 [1−4]…リファレンス系S0 計算部 [1−5]…非周期系S2 計算部 [1−6]…MM計算部(第1の計算部) [1−7]…MD計算部(第2の計算部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (54)【発明の名称】 材料設計支援システム、およびコンピュータシステムに系の安定構造や動的挙動を原子や分子レ ベルで解析させこれにより材料の設計支援を行うためのコンピュータプログラムを格納した記憶 媒体

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 材料の設計支援に用いられるシステムで
    あって、局所的な乱れを有する系(非周期系S2 )の構
    造安定性や動的挙動を原子や分子レベルで解析する材料
    設計支援システムにおいて、 乱れを有さない系(リファレンス系S0 )に対する物理
    量を処理するリファレンス系S0 処理部と、 前記非周期系S2 の構造をリファレンス系S0 からのず
    れで記述するために、前記非周期系S2 に対する物理
    量、および前記リファレンス系S0 と前記非周期系S2
    の構成原子を1対1に対応付けるためのリストを処理す
    る非周期系S2 処理部と、 原子間または分子間相互作用を記述する関数形を処理す
    る原子間ポテンシャル処理部と、 前記リファレンス系S0 のエネルギ−および各原子また
    は各分子に働く力を計算するリファレンス系S0 計算部
    と、 前記リファレンス系S0 計算部で計算されたリファレン
    ス系S0 のエネルギ−および構成原子に働く力を用い
    て、非周期系S2 のエネルギ−および構成原子に働く力
    を計算する非周期系S2 計算部と、 非周期系S2 計算部の計算結果を用いて、非周期系S2
    に対する安定構造あるいは動的挙動の計算(MM計算あ
    るいはMD計算)を実行するMM/MD計算部とを有す
    ることを特徴とする材料設計支援システム。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の材料設計支援システムに
    おいて、 前記非周期系S2 の動的挙動の解析(MD計算)を有限
    温度(温度T>0K)で行う場合に、 このシステムは、さらに、 前記非周期系S2 の構造を、局所的な乱れを有さないが
    温度効果による原子の振動を考慮した系(周期系S1
    からのずれで記述する手段を有し、 この手段は、 周期系S1 の構造をリファレンス系S0 (温度効果によ
    る原子の振動を考慮しない系)からのずれで記述するた
    めに、この周期系S1 に対する物理量及びリファレンス
    系S0 と周期系S1 の構成原子を1対1に対応付けるた
    めのリストを処理する周期系S1 処理部と、 前記リファレンス系S0 計算部で計算されたリファレン
    ス系S0 のエネルギ及び構成原子に働く力を用いて、周
    期系S1 のエネルギ及び構成原子に働く力を計算する周
    期系S1 計算部と、 非周期系S2 の動的挙動を、周期系S1 からのずれとし
    て解析するために、周期系MD計算を実行する周期系M
    D計算部とを有し、 前記非周期系MM/MD計算部は、前記周期系MD計算
    部及び非周期系S2 計算部の計算結果を用いて、非周期
    系S2 に対する動的挙動の計算(MD計算)を実行する
    ことを特徴とする材料設計支援システム。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の材料設計支援システムに
    おいて、 非周期系S2 処理部は、 非周期系S2 の格子緩和を考慮する領域をシュミレーシ
    ョン中に変更する手段を有することを特徴とする材料設
    計支援システム。
  4. 【請求項4】 材料の設計支援に用いられるシステムで
    あって、局所的な乱れは有さないが、温度効果による原
    子の振動が存在する系(周期系S1 )の原子又は分子の
    動的挙動を解析する材料設計支援システムにおいて、 温度効果による原子の振動を考慮しない系(リファレン
    ス系S0 )に対する物理量を処理するリファレンス系S
    0 処理部と、 前記周期系S1 の構造をリファレンス系Sからのずれ
    で記述するために、周期系S1 に対する物理量およびリ
    ファレンス系S0 と周期系S1 の構成原子を1対1に対
    応付けるためのリストを処理する周期系S1 処理部と、 リファレンス系S0 のエネルギ−および各原子または各
    分子に働く力を計算するリファレンス系S0 計算部と、 前記リファレンス系S計算部で計算されたリファレン
    ス系Sのエネルギ−および構成原子に働く力を用い
    て、周期系S1 のエネルギ−および構成原子に働く力を
    計算する周期系S1 計算部と、 前記周期系S1 計算部の計算結果を用いて、周期系S1
    に対する動的挙動の計算(MD計算)を実行する周期系
    MD計算部とを有することを特徴とする材料設計支援シ
    ステム。
  5. 【請求項5】 請求項1あるいは4記載の材料設計支援
    システムにおいて、 リファレンス系S0 処理部は、 リファレンス系S0 にダミー原子又はダミー分子を設定
    する手段を有することを特徴とする材料設計支援システ
    ム。
  6. 【請求項6】 コンピュータシステムに、局所的な乱れ
    を有する結晶系(非周期系S2 )の安定構造性や動的挙
    動を原子や分子レベルで解析させこれにより材料の設計
    支援を行うためのコンピュータプログラムを格納した記
    憶媒体において、 乱れを有さない系(リファレンス系S0 )に対する物理
    量を処理するリファレンス系S0 処理手順と、 前記非周期系S2 の構造をリファレンス系S0 からのず
    れで記述するために、前記非周期系S2 に対する物理
    量、および前記リファレンス系S0 と前記非周期系S2
    の構成原子を1対1に対応付けるためのリストを処理す
    る非周期系S2 処理手順と、 原子間または分子間相互作用を記述する関数形を処理す
    る原子間ポテンシャル処理手順と、 前記リファレンス系S0 のエネルギ−および各原子また
    は各分子に働く力を計算するリファレンス系S0 計算手
    順と、 前記周期系S1 計算部で計算された周期系S1 のエネル
    ギ−および構成原子に働く力を用いて、非周期系S2
    エネルギ−および構成原子に働く力を計算する非周期系
    2 計算手順と、 非周期系S2 計算部の計算結果を用いて、非周期系S2
    に対する安定構造あるいは動的挙動の計算(MM計算あ
    るいはMD計算)を実行するMM/MD計算手順とを実
    行するための指令を格納することを特徴とする記憶媒
    体。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の記憶媒体において、 前記非周期系S2 の動的挙動の解析(MD計算)を有限
    温度(温度T>0K)で行う場合に、 この記憶媒体には、さらに、 前記非周期系S2 の構造を、局所的な乱れを有さないが
    温度効果による原子の振動を考慮した系(周期系S1
    からのずれで記述する処理手順が格納され、 この処理手順は、 周期系S1 の構造をリファレンス系S0 (温度効果によ
    る原子の振動を考慮しない系)からのずれで記述するた
    めに、この周期系S1 に対する物理量及びリファレンス
    系S0 と周期系S1 の構成原子を1対1に対応付けるた
    めのリストを処理する周期系S1 処理手順と、 前記リファレンス系S0 計算部で計算されたリファレン
    ス系S0 のエネルギ及び構成原子に働く力を用いて、周
    期系S1 のエネルギ及び構成原子に働く力を計算する周
    期系S1 計算手順と、 非周期系S2 の動的挙動を、周期系S1 からのずれとし
    て解析するために、周期系MD計算を実行する周期系M
    D計算手順とを有し、 前記非周期系MM/MD計算手順では、前記周期系MD
    計算手順及び非周期系S2 計算手順の計算結果を用い
    て、非周期系S2 に対する動的挙動の計算(MD計算)
    を実行することを特徴とする記憶媒体。
  8. 【請求項8】 請求項6記載の記憶媒体において、 非周期系S2 処理手順は、 非周期系S2 の格子緩和を考慮する領域をシュミレーシ
    ョン中に変更する手順を含むことを特徴とする記憶媒
    体。
  9. 【請求項9】 コンピュータシステムに、局所的な乱れ
    は有さないが、温度効果による原子の振動が存在する系
    (周期系S1 )での原子又は分子の動的挙動を解析させ
    これにより材料の設計支援を行うためのコンピュータプ
    ログラムを格納した記憶媒体において、 温度効果による原子の振動を考慮しない系(リファレン
    ス系S0 )に対する物理量を処理するリファレンス系S
    0 処理手順と、 前記周期系S1 の構造をリファレンス系Sからのずれ
    で記述するために、周期系S1 に対する物理量およびリ
    ファレンス系S0 と周期系S1 の構成原子を1対1に対
    応付けるためのリストを処理する周期系S1 処理手順
    と、 リファレンス系S0 のエネルギ−および各原子または各
    分子に働く力を計算するリファレンス系S0 計算手順
    と、 前記リファレンス系S計算手順で計算されたリファレ
    ンス系Sのエネルギ−および構成原子に働く力を用い
    て、周期系Sのエネルギ−および構成原子に働く力を
    計算する周期系MD計算手順と、 前記周期系S1 計算部の計算結果を用いて、周期系S1
    に対する動的挙動の計算(MD計算)を実行する周期系
    MD計算手順とを有することを特徴とする記憶媒体。
  10. 【請求項10】 請求項6あるいは9記載の記憶媒体に
    おいて、 リファレンス系S処理手順は、 リファレンス系Sにダミー原子又はダミー分子を設定
    する手順を含むことを特徴とする記憶媒体。
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