JP3321711B2 - 準最適出力フィードバック制御器 - Google Patents

準最適出力フィードバック制御器

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JP3321711B2
JP3321711B2 JP10521292A JP10521292A JP3321711B2 JP 3321711 B2 JP3321711 B2 JP 3321711B2 JP 10521292 A JP10521292 A JP 10521292A JP 10521292 A JP10521292 A JP 10521292A JP 3321711 B2 JP3321711 B2 JP 3321711B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】自動設計を可能とすることによ
り,その運用における,無人化・省力化を図った汎用の
制御器に関するものである.
【0002】
【従来の技術】現在,小規模プラントから,ときにはそ
の計装ループ数が100を越えることもあるような大規
模プラントまで主として利用されている制御方式は,P
ID制御によって占められている.しかし,その設計法
は系統的とはいえず,その安定性と制御性能(速度)を
調和させる調整は人の技能(経験や直感)に頼るところ
が大きい.初期調整あるいは絶えず起こる特性の変化や
目的の変更に応じた再調整を人の技能に頼らざるをえな
いことは,自動化による省力化,無人化を進めるうえで
障害となる.古典的なPIDに対し現代的な制御系設計
法の代表である最適レギュレータ,線型レギュレータ,
極配置法などは理論的裏づけをもっているものの,その
実際の設計には逆行列,固有値,因数分解などの複雑な
数値計算が含まれる.現在知られているこの種の計算機
のための計算法は,多くの処理時間を要するばかりでな
く,その解の精度,信頼性は個々の制御対象に対して定
まる設計方程式のパラメータに依存する.このため,数
値計算の過程を機械的に進めることができず,その精度
を保つために人為的な補助を必要とし自動化できない.
この傾向は制御対象のモデル次数が増加するにつれ顕著
となり,PIDとは別の意味で系統的な運用を困難にす
る.利用者にとって,制御論,計算論の高度な専門知識
を必要とするこれら現代制御法は,直感的ともいえる理
解だけで調整できるPIDに比べて必ずしも優っている
とはいえず,PIDが現在でも重用されている理由とも
なっている.そのほかの制御系設計法として,最小分散
制御,モデル予測制御があげられるが,これらは対象シ
ステムに対し最小位相性,むだ時間要素の有無,自己安
定性などに関する各種制限を設けており,適用の範囲に
普遍性を欠く.ために,適用にあたり事前に対象システ
ムを解析しておかなければならないこと,適用範囲外の
対象に対して別の方策を用意する必要があることなど,
系統的な運用が妨げられる.
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたように.
従来の制御法は制御器の設計,調整の過程の中に省くこ
とができない人的要素を含んでおり,この過程の無人
化,省力化が困難である.無人化,省力化のために,適
用範囲の普遍性,必要とされる数値計算法を含めた設計
過程に系統性をもつ,自動設計が可能な汎用の制御器を
開発しようとするものである.
【0004】
【課題を解決するための手段】制御の対象が次の自己回
帰移動平均モデル で与えられているものとする.ただし,y〔k〕,u
〔k〕はそれぞれ番号kの時刻における出力および入力
の値であり,a=1とする.このシステムに対するy
およびuのある定常値y,uを考える.すなわち,
,uを満たしているものとする.ある時刻kを起点として有
限時間p,qののち,y,uに整定する,すなわち y〔k+ι〕=y forι>p, u〔k+ι〕=u forι >q なる有限整定軌道{y〔k,k〕,y〔k,k+1〕,・・・,y〔k,k+p 〕,y,・・・}, {u〔k,k〕,u〔k,k+1〕,・・・,u〔k,k+q〕,u,・・ ・}を考える.なお,y〔k,k+i〕, u〔k,k+i〕はkを起点とする有限整定軌道の時刻
k+iのy,uの値y〔k+i〕,u〔k+1〕を表わ
す.このような軌道に対してΣa・y〔k −i〕,
Σb・u〔k −i〕はk+p+m+1,k+q+n
+1で整定するから,p+m=q+nでなければならな
い.さらに,軌道{y〔k,k+i〕},{u〔k,k
+i〕}が有限整定することより,次の有限整定条件式 が成り立つ.ただし, y〔k〕=〔y〔k,k〕y〔k,k+1〕・・・y〔k,k+p〕〕 u〔k〕=〔u〔k,k〕u〔k,k+1〕・・・u〔k,k+q〕〕 であり,A,Bは(p+m+1,p+1),(q+n+
1,q+1)の大きさをもつ以下のような 行列,c〔k〕は以下のような(p+m+1)の ベクトルである.逆に上の有限整定条件式が成り立つな
らば,軌道{y〔k,k+i〕},{u〔k,k+
i〕}は有限整定軌道であることは明らかである.以上
に得られた有限整定条件式の解は rank[A B]=p+m+1(=q+n+1) が満たされるならば,つねに存在する.これが満たされ
るためには,行列[AB]の列の数が(p+1)+(q
+1)≧p+m+1=q+n+1でなければならない.
すなわち,pおよびqは を満たすように決定すればよく,このようなp,qはつ
ねに存在する.上式にしたがって決定されたp,qに対
して,なお rank〔A B〕<p+m+1(=q+
n+1)であったとする.このとき,行列〔A B〕の
小行列である(p+m+1)次正方行列Mに対しても
rank M<p+m+1=q+n+1となる.ただ
し, であり,Nは(m+n)次正方行列である.行列Mの最
初の(p−n+1)個の列ベクトルはa=1より他の
列ベクトルとは独立だから,結局rank N<m+n
つまり,det N=0となっている.一方,(1)式
のシステムを,z−1x〔k〕=x〔k−1〕なる遅延
演算子z−1を用いて表わすと, A(z−1)y〔k〕+B(z−1)u〔k〕+c=0 ただし, A(z−1)=a+a−1+・・・+a−m B(z−1)=b+b−1+・・・+b−n となる.detNは多項式AとBに対する終結式である
から,Nが正則でないときAとBは既約でない.その共
通因子をγ(z−1)とし, A(z−1)=α(z−1)γ(z−1), B(z
−1)=β(z−1)γ(z−1) とおくと,既約でないシステムは γ(z−1)v〔k〕=c α(z−1)y〔k〕+β(z−1)u〔k〕+v〔k〕=0 と等価となり,このシステムは制御できない自律的な内
部信号v〔k〕を含むことがわかる.もし,v〔k〕が
一定値,すなわちv〔k〕=vならば,表現に冗長性
を含むにすぎず,無冗長な表現 α(z−1)y〔k〕+β(z−1)u〔k〕+v=0 に対して,有限整定が可能であるから,(2)式は解を
もつ.もし,v〔k〕が定値でなく,かつγ(z−1
の極が不安定ならば,いかなる方法によっても制御でき
ない(y,uを有界に保つことできない)から,もとも
とこのようなシステムが対象に含まれないと仮定するこ
とは自然であり,実用上の制限とはならない.実質的に
(厳密には対象システムの無冗長表現が既約ならば)つ
ねに有限整定条件 (2)式を満たす解が存在することが証明された.さ
て,上で述べた有限整定条件を満たす解は一意に定まる
とは限らない.したがって,利用者にとって都合のよい
最適条件を満たす解を選択する余地が残されている.こ
こではつぎの評価関数を最小にする最適化問題を考え
る. J〔k〕=(y〔k〕−y〔k〕)・Q・(y〔k〕−Y〔k〕) +(u〔k〕−U〔k〕)・R・(u〔k〕−U〔k〕) +Δ〔k〕・S・Δ〔k〕+Δ〔k〕・T・Δ〔k〕→ min (3) ここで,第1,第2項はy〔k〕およびu〔k〕の所望
の軌道 Y〔k〕=〔Y〔k〕Y〔k+1〕・・・Y〔k+p〕〕, U〔k〕=〔U〔k〕U〔k+1〕・・・U〔k+q〕〕 との距離の評価であり,第3,第4項は軌道y〔k〕お
よびu〔k〕上の隣接点の差 Δ〔k〕=〔y〔k,k〕−y〔k−1〕y〔k,k+1〕−y〔k, k〕・・・ ・・・y〔k,k+p〕−y〔k,k+p−1〕y −y〔k,k+p〕〕 Δ〔k〕=〔u〔k,k〕−u〔k−1〕u〔k,k+1〕−u〔 k,k〕・・・ ・・・u〔k,k+q〕−u〔k,k+q−1〕u −u〔k,k+q〕〕 による平滑度の評価である.また,Q,R,S,Tはつ
ぎのような対角の重み行列であり,q,r,s
のいずれか1つは0でないものとする. Q=diag〔q・・・q〕,R=diag〔r・・・r 〕 S=diag〔s・・・sp+1〕,T=diag〔t・・・t+ 1〕 0≦q≦・・・≦q, 0≦r≦・・・≦r 0≦s≦・・・≦sp+1, 0≦t≦・・・≦tq+1 (2)式の束縛条件の下で(3)式を最小化する問題は
ラグランジェの未定乗数法により の最小化問題となる.ただし,μ〔k〕は(p+m+
1)次ラグランジェ乗数ベクトルである.上式の最小解
は変分法により の線型方程式であたえられる.ここで,Dおよびd
〔k〕つぎに示すような行列およびベクトルであり,
Q.Rは3重対角行列である. 題意より,この方程式(5)式はつねに解をもつ.とこ
ろで,d〔k〕は適当なベクトルE,F,G,G
,H,H,Lを用いて,つぎのように展開でき
る. (5)式につねに解が存在することから, を満たす解E,F,G,G,H,H,Lが
存在し,(5)式の解は であたえられる.ベクトル〔μ〔k〕y〔k〕u
〔k〕〕の第2p+m+2成分u〔k,k〕を使って
実際の入力操作を決定する,すなわち,すべての時刻k
においてu〔k〕=u〔k,k〕と決定すれば,(1)
式のシステムの時刻kからk+1での変化(応答)が時
刻kで定まるJ〔k〕を最小とする有限整定軌道を切り
換わりながらたどるように制御することができる.
,f,g,g,h,h,ιをそれぞれE
,F,G,G,H,H,Lの第2p+m+
2成分とすれば,この制御則は の出力フィードバック制御器として得られる.ここで,
所望の軌道を y〔k〕=y=〔y・・・y, U〔k〕
=U=〔u・・・u とすれば,定目標値y,uへの定値制御のための制
御器として がえられ,また,(7)式においてy=Y〔k+p+
1〕,u=U〔k+q+1〕とすれば所望の軌道{Y
〔k〕},{U〔k〕}への追従制御のための制御器と
して, がえられる.以上に述べた準最適出力フィードバック制
御器の設計は(6)式の線型方程式問題に帰着される.
設計方程式(6)式の解は数値解法によらなければなら
ない.この線型方程式の数値解法問題は数値解析の分野
では最も基本的なものであり,ガウスの消去法をはじめ
として各種の計算法が知られている.しかし,その解の
精度,信頼性が設計方程式のパラメータに依存しないあ
るいは機械的に実行できる計算法についてはあまり紹介
されていないので,以下にその計算法の例を1つ挙げ
る.線型方程式 DX=X を考える.この方程式が解をもつならば,この解Xは (DX−X)(DX−X)→min の最小解Xと一致する.(6)式の各方程式ははつねに
解をもつから,この最小解として求めることができる.
最小解Xは変分法により, DDX=DX であたえられる.このとき,DDは非負定値行列とな
り,その全ての固有値は非負の実数となる.いま,Xの
暫定解をXとし, Xi+1=(I−DD/λ)X+DX/λ にしたがって逐次更新すると,この更新解Xは,D
Dの最大固有値λmaxにたいしλ>λmax/2のと
き解Xに収束する,すなわち X→X (i→∞) が以下のように証明できる.Xi+1=κXとする
と,上の更新式の特性方程式 det{κI−(I−DD/λ)=0 または,de
t{(λ(1−κ)I−DD}=0 を得る.DDの全固有値は非負であり,その最大固有
値はλmaxだから,0≦λ(1−κ)≦λmaxが成
り立つ.λ>λmax/2のとき,特性方程式の根κは
収束条件−1<κ≦1を満たすから,XはあるX
収束する.この収束解Xについて更新式は X=(I−DD/λ)X+DX/λ となることより DDX=DX. したがって,この収束解XはXにほかならないことが
わかる.なお,λ>λmax/2なるλは最大固有値の
数値解法であるベキ乗法(Power Method)
により容易に決定される.少なくともここで示した計算
法によれば(6)式の解は機械的に求められ,またその
解の精度はパラメータに依存することもない.以上に,
制御器の構成について述べるとともに,この制御器が,
対象を制限することのない普遍性,かつ人による補助を
要しない系統性をもち,自動設計が可能であることが示
された.
【0005】
【作用】前項において,この制御器の構成と設計法につ
いて述べた.ここでは,この制御器によって構成される
出力フィードバック制御系がつねに安定となっているこ
とを示す.まず,定値制御器の場合から考える.(8)
式によって制御されるとき,(3)式の評価J〔k〕は J〔k〕=(у〔k〕−Y)・Q・(y〔k〕−Y)+(u〔k〕−U )・R・(u〔k〕−U) +Δ〔k〕・S・Δ〔k〕+Δ〔k〕・T・Δ〔 k〕 となる.上のJ〔k〕の第1項について,q≦q
qp・・・≦qを考慮すると,不等式 (y〔k〕−Y)Q(y〔k〕−Y)−q(y〔k〕−y =〔0y〔k,k+1〕−y・・・y〔k,k+p〕−y・Q・ 〔0 y〔k,k+1〕−y・・・y〔k ,k+p〕−y〕 ≧〔y〔k,k+1〕−y・・・y〔k,k+p〕−y0〕・Q・ 〔y(k,k+1〕−y・・・y〔k,k +p〕−y 0〕 が成り立つ.J〔k〕の第3項については,S≦S
≦・・・≦Sを考慮すると, Δ〔k〕SΔ〔k〕−S(y〔k,k〕−y〔k−1〕) =〔0 y〔k,k+1〕−y〔k,k〕・・・y−y〔k,k+p〕〕 ・S・ 〔0 y〔k,k+1〕−y〔k,k〕・・・y −y〔k,k+p〕〕 ≧〔y〔k,k+1〕−y〔k,k〕・・・y−y〔k,k+p〕0〕・ S・ 〔y〔k,k+1〕−y〔k,k〕・・・y −y〔k,k+p〕0〕 が成り立つ.同様に,第2,4項についても (u〔k〕−U)R(u〔k〕−U)−r(u〔k〕−u ≧(u〔k,k+1〕−u・・・u〔k,k+q〕−u 0〕・R ・ 〔u〔k,k+1〕−u・・・u〔k,k+ q〕−u 0〕 Δ〔k〕・T・Δ〔k〕−t(u〔k−1〕) ≧〔u〔k,k+1〕−u〔k,k〕・・・u−u〔k,k+q〕0〕・ T・ 〔u〔k,k+1〕−u〔k,k〕・・・u− u〔k,k+q〕0〕 となる.時刻kを起点とする軌道のk+1以後の軌道
{y〔k,k+1〕,・・・,y〔k,k+p〕,0} {u〔k,k+1〕,・・・,u〔k,k+q〕,0}
は時刻k+1を起点とする有限整定軌道の1つとなって
いるから,その最小軌道y〔k+1〕,u〔k+1〕の
評価関数J〔k+1〕に対して J〔k+1〕≦〔y〔k,k+1〕−y・・・y〔k,k+p〕−y 0〕・Q・ 〔y〔k,k+1〕−y・・・y〔k,k+p〕−y 0〕 +〔u〔k,k+1〕−u・・・u〔k,k+q〕−u 0〕・R・ 〔u〔k,k+1〕−u・・・u〔k,k+q〕−u 0〕 +〔y〔k,k+1〕−y〔k,k〕・・・y−y〔k,k+p〕0〕 ・S・ 〔y〔k,k+1〕−y〔k,k〕・・・y−y〔k,k+ p〕0〕 +〔u〔k,k+1〕−u〔k,k〕・・・u−u〔k,k+q〕0〕 ・T・ 〔u〔k,k+1〕−u〔k,k〕・・・u−u〔k,k+q〕0〕 となり, J〔k〕≧J〔k〕−q(y〔k〕−y−r(u〔k〕−u −s〔y〔k〕−y〔k−1〕)−t(u〔k〕−u〔k− 1〕)≧ J〔k+1〕≧ 0 が成り立つ.{J〔k〕}のような下に有界な単調減少
列は,収束することから,{J〔k〕−J〔k+1〕}
は0に収束し, q(y〔k〕−y+r(u〔k〕−u+s(y〔k, k〕−y〔k−1〕)+t(u〔k,k〕−u〔k−1〕) → 0 (k→∞) が得られる.上式より,q≠0ならばy〔k〕→y
は明らかであり,このyがyに収束したとき,対象シ
ステムは Σbu〔k−i〕=−Σay−c で表わされる自律系となり,uの軌道は一意に決定され
る.このuの軌道はuへの有限整定軌道でなければな
らないから,u〔k〕→u.また,r≠0ならば,
u〔k〕→uであり,y〔k〕→yである.さら
に,s≠0のときy〔k〕−y〔k−1〕→0であ
り,ある値y〔∞〕が存在して,y〔k〕→y〔∞〕.
このようにyが収束したとき,対象システムは Σbu〔k−i〕=−Σay〔∞〕−c で表わされる自律系となり,上と同様に,uの軌道は一
意に決定され,uへの有限整定軌道でなければならな
いから,u〔k〕→u.したがって,y〔k〕→y
=y〔∞〕.また,t≠0のときも,y〔k〕→y
かつu〔k〕→uである.したがって,q,r
,tのいずれかは0でないとしたから,y,uは
,uに収束し,定値制御系は安定であることがわ
かる.ところで,制御則(7),(8)および(9)式
のいずれによっても,構成される出力フィードバック制
御系の閉ループは同一である.上で述べたように定値制
御(8)式についてつねに安定であるから,(7)式あ
るいは追従制御(9)式についてもつねに安定であるこ
とがいえる.このことは,利用者の選択にまかせられた
パラメータである整定時間pあるいはq,重み行列Q,
R,S,Tによって,制御系を好ましい特性を示すよう
に自由に調節できることを意味する.これら調節パラメ
ータのいかなる選択も制御系を不安定にすることはな
く,不安定への恐れから解放されてパラメータの調整に
専念できるという利点を生み出している.整定時間pあ
るいはqの増加は制御(評価関数J)をより最適にし,
無限大のとき最っとも最適となることは明らかである
が,その上限は使用する計算機の性能(記憶容量,演算
速度)により,自ずと定まってしまう.また,重み行列
Q,Rの重みの増加はそれぞれ出力y,入力uの目標値
への収束速度を向上させ,S,Tの重みの増加はその収
束過程をより滑らかにするという一般的な効果をもつ.
これらの効果は直感的に理解することができ,高度な専
門知識を要しないから,設計自動化の効果と相まって利
用者の負担は驚くほど軽く,効率的な運用が図れること
になる.
【0006】
【実施例】つぎのシステムを制御の対象とし,この制御
器の設計と,シミュレーションによる動作の確認を試み
た. y〔k〕+2y〔k−1〕+〔k−1〕−2u〔k−2〕+1=0 このシステムは不安定な極,零点をもつ自己不安定・非
最小位相系であると同時に,その入力操作の出力に対す
る効果が時間の経過とともに逆転する逆応答性を示す非
常に性質の悪い対象である.この対象に対して,m=
1,n=2,p=2,q=1,Q=I,R=S=T=0
とすると(7)式は u〔k〕=−1.2y〔k〕+1.2u〔k−1〕−
0.2Y〔k+1〕+0.4Y〔k+2〕+0.4y
+0.2 と求めらる.したがって,この定値制御器(8)式はu
〔k〕=−1.2y〔k〕+1.2u〔k−1〕+0.
6y+0.2となる.この制御器の目標値yを0か
ら1に変更したときの制御応答のシミュレーション結果
を図1に示す.性質の悪さにもかかわらず完全に制御目
的は達成されている.つぎに,同じ対象に追従制御を試
みた例を示す.この追従制御器(9)式は u〔k〕=−1.2y〔k〕+1.2u〔k−1〕−
0.2Y〔k+1〕+0.4Y〔k+2〕+0.4Y
〔k+3〕+0.2 となる.Y〔k〕=kのランプ状目標軌道に対する制御
応答のシミュレーション結果を図2に示す.この図より
安定な追従制御が得られることがわかる.この図2から
は読み取にくいが,出力yと目標軌道Yの間には定常な
偏差が残っている.この偏差Y−yを図3に示した.整
定時間pを増加させることで設計される制御器はより最
適なものとなるから,この定常偏差は限りなく小さくす
ることができる.pを3,7と選んだ場合も合わせて示
し,この効果を確認した.以上の例は設計に用いられる
モデルが対象システムの動特性と完全に一致しているこ
とを前提としている.実際にはこのような一致は得られ
ないし,モデルは何らかの誤差を含むものと考えてよ
い.この問題の解決のために,前置補償器を使った例と
オンラインモデル同定器を使った例をそれぞれ以下に示
す.前置補償器の例から始める.いま,vを新しい入力
として前置補償器 u〔k〕=u〔k−1〕+v〔k〕 を対象システムに直列につなぐと,(1)式のモデルよ
り, が得られる.これは,やはり自己回帰移動平均モデルだ
から全く同様に制御器が設計できる.このとき,前置補
償器は誤差を積算する働きをもつので,制御系が安定な
らばモデル誤差に由来する定常偏差(オフセット)は0
となる.前述の例で用いたシステムに基づいてシステム
とモデル間に誤差がある場合の定値制御の結果を図4に
示す.前置補償器によってオフセットが除かれている.
ただし,この例では制御は安定となっているが,モデル
誤差が極端な場合には安定性は必ずしも保証されないこ
とはいうまでもない.つぎに,オンラインモデル同定器
を併用したCE(Certainty Eqhuiva
lence)原理による適応制御系の構成例を図5に示
す.制御の対象システム1の入出力の観測値をもとに,
オンラインモデル同定器4によって直接,自己回帰移動
平均モデルのパラメータが決定される.このようなモデ
ル同定器はすでに各種考案されており,ここではその詳
細は省く.この同定されたモデルパラメータを,設計手
順を自動化した自動設計器3において処理することによ
り,制御器のパラメータが決まり,出力フィードバック
制御器2が調整される.この過程はすべて自動的に継続
して繰り返される.このように適応機構で調整された制
御器2は対象システム1を目標値に制御することができ
る.前述の例で用いたシステムをこの適応制御器によっ
て定値制御した結果を図6に示す.初期モデルを実際の
システムとは故意に異なるもの(y〔k〕=u〔k−
1〕)に設定したにもかかわらず,適応期間を経たの
ち,安定化され最初に設定した目標値0に制御されてい
る.その後の目標値1への変更も達成され,最初にあげ
た正確なモデルに基づく実施例の軌道との一致が確かめ
られる.従来の適応制御はCE原理適応制御も含めて,
その多くが,対象システムの最小位相性,むだ時間に仮
定を設けていたために,実用性を欠いていた.この例で
示されるように,適用範囲に普遍性をもつ制御器を用い
ることにより,最小位相性,むだ時間に関わりのない実
用的な適応制御系が構成されることがわかる.
【0007】
【発明の効果】この制御器は,自己回帰移動平均モデル
で表わされる制御の対象に対して,何らかの制限を受け
ることなく普遍的に適用できること,また,数値計算も
含めて系統的に設計されること,そして,得られる制御
系はつねに安定であることが示された.適応制御の実施
例にみられるように,設計から実施にいたるまで自動化
され,しかも常に安定化される.このように,この制御
器は人的要素を,安定な制御を実施するための必須の要
件とはしない.一方,利用者に対しては直感的に理解で
きる方法で安定性を考慮することなく制御特性を調節で
きるようになっている.したがって,この制御器の運用
においては,従来の制御には見られなかったような無人
化,省力化の効果があるといえる.
【図面の簡単な説明】
【図1】 定値制御のシミュレーション結果
【図2】 追従制御のシミュレーション結果
【図3】 追従制御における整定時間パラメータの効果
【図4】 前置補償器の効果
【図5】 適応制御系の構成例
【図6】 適応制御のシミュレーション結果
【符合の説明】
1 対象システム 2 オンラインモデル同定器 3 自動設計器 4 出力フィードバック制御器

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制御の対象システムの出力と入力の動的
    関係(動特性)が自己回帰移動平均(ARMA)モデル
    で表わされているものとする.システムの入出力時系列
    においてk番目の時刻での出力値をy[k],入力値を
    u[k]表わし,kを起点としてモデルから予測される
    k以後の出力の時系列軌道上の値を順にy[k,k],
    y[k,k+1],…と,そして同様に入力の時系列軌
    道上の値をu[k,k],u[k,k+1],…と表わ
    し,また出力と入力の指定された定常値に整定するまで
    の時系列の有限な個数を出力,入力についてそれぞれp
    +1,q+1個とするとき,有限整定条件(y[k,k
    +i]=Y[k+p+1]for i>p,u[k,k
    +i]=U[k+q+1]for i>q)を満たしか
    つ2次形式評価関数 を最小とする出入力の有限整定軌道({y[k,k],
    …,y[k,k+p]},{u[k,k],…,u
    [k,k+q]})が時刻kごとに予測される.ただ
    し,q,…,q,r,…,r,s,…,s
    p+1,t・・・,tq+1は重み係数であり,Y
    [k],Y[k+1],…およびU[k],U[k+
    1],…はシステムの出力および入力に所望の軌道であ
    る.この予測される最適化(J[k]を最小化するとい
    う意味で)された有限整定軌道をシステムの出入力応答
    y[k],u[k]が時刻kごとに切り換わりながらた
    どる,すなわちy[k]=y[k,k],u[k]=u
    [k,k]となるように設計されたことを特徴とする,
    準最適化手法による準最適出力フィードバック制御器.
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