JP3310247B2 - 合成電気石および合成電気石製造法 - Google Patents

合成電気石および合成電気石製造法

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JP3310247B2 JP31953799A JP31953799A JP3310247B2 JP 3310247 B2 JP3310247 B2 JP 3310247B2 JP 31953799 A JP31953799 A JP 31953799A JP 31953799 A JP31953799 A JP 31953799A JP 3310247 B2 JP3310247 B2 JP 3310247B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水処理剤などに使
用される電気石や、繊維添加剤、塗料などに使用される
電気石に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】電気石
は、基本化学式NaX3 2+Al6(BO3)3(Si618)(OH)
4(XはたとえばFe、Mg、(Li+Al)/2)の
物質である。電気石については、1880年にピエゾ電
気、ピロ電気の性質が発見され、1989年には永久電
極を持つことが報告された。そこで、電気石の利用開発
が繊維加工、水処理、触媒など多分野で行なわれるよう
になった。これらの用途において、電気石は多結晶の燒
結体、粉末、繊維などとして用いられている。また、電
気石の一種であるリシア電気石(X2+=(Li+Al)/
2)は古くから宝石として知られ、リシア電気石の合成
法が特開昭59−137389号公報や特開昭59−1
52286号公報に公表されている。これらに記載され
た単結晶合成法では、フラックス法等を用いて電気石結
晶を成長させる。
【0003】電気石にはリシア電気石(淡紅)、苦土電
気石(灰)及び鉄電気石(黒)があるが、工業用原料と
しては鉄電気石が一般的である。鉄電気石の結晶は黒
色、粉末は灰色を呈し、セラミック化する場合やその起
電力を高める場合には、加熱処理が施されるので、加熱
に伴って褐色度が強くなり、強く赤褐色に着色するのが
普通である。水処理や触媒などの利用では色は問題にさ
れないが、繊維や塗料面での利用では一般に着色してい
るのを嫌うために電気石利用の範囲が限定される。特に
白地用として要求される場合には従来の電気石は要求に
応じられないという課題を持っている。また、淡色のリ
シア電気石、苦土電気石を探しても、その産出量が少な
いためにこの問題点の解決にはならない。
【0004】本発明の目的は、繊維、塗料などでの利用
に適した白色または淡色の電気石を提供することであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1の合成
電気石は、NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)4
組成からなる電気石の粉末と、この電気石の粉末を結合
するバインダー(たとえば低融点フリット)とからなる
焼成物である。形状は、たとえば粉末である。好ましく
は、この合成電気石は、さらに放射線源調整物質粉末を
含む。本発明に係る第2の合成電気石は、Na(Zn1-x
Fex)3Al3(BO3)3(Si61 8)(OH)4(ここに0<x
<1)の組成からなる合成電気石の粉末と、この電気石
の粉末を結合するバインダー(たとえば低融点フリッ
ト)とからなる焼成物である。形状は、たとえば粉末で
ある。好ましくは、この合成電気石は、さらに放射線源
調整物質粉末を含む。
【0006】本発明に係る第1の合成電気石製造法で
は、NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)4の化学式
で表わされる組成からなる電気石を構成する化合物のモ
ル比混合物を作製し、作製されたモル比混合物を焼成す
る。次に、得られた一次焼成品を850℃以下の融点の
バインダーと混合し、得られた混合物を850℃以下の
温度で焼成する。これにより、2段階焼成で白色電気石
を得る。本発明に係る第2の合成電気石製造法では、N
aZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)4の化学式で表わ
される組成からなる電気石を構成する化合物のモル比混
合物を作製し、作製されたモル比混合物を850℃以下
の融点のバインダーと混合し、得られた混合物を850
℃以下の温度で焼成する。これにより、1段階焼成で白
色電気石を得る。
【0007】本発明に係る第3の合成電気石製造法で
は、NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)4の化学式
で表わされる組成からなる電気石を構成する化合物のモ
ル比混合物を作製し、作製されたモル比混合物を天然電
気石及び850℃以下の融点のバインダーと混合し、得
られた混合物を850℃以下の温度で焼成する。これに
より、天然電気石の着色をうすめた電気石を製造する。
本発明に係る第4の合成電気石製造法では、NaZn3
l3(BO3)3(Si618)(OH)4の化学式で表わされる組
成からなる電気石を構成する化合物のモル比混合物をか
焼した一次焼成品を作製する。次に、一次焼成品に85
0℃以下の融点のバインダー(及び必要ならばさらに天
然電気石)を加えて混合し、得られた混合物を850℃
以下の温度で焼成する。本発明に係る第5の合成電気石
製造法では、上述の1段階焼成で得られた電気石に、さ
らに、放射線源調整物質及び850℃以下の融点のバイ
ンダー(及び必要ならばさらに天然電気石)を加えて混
合し、得られた混合物を850℃以下の温度で焼成す
る。上述の合成電気石や合成電気石製造法において、バ
インダーはたとえば低融点フリットである。また、上述
の放射線源調整物質とは、放射性物質をその他の非放射
性物質で稀釈したものである。また、上述の合成電気石
製造法において、焼成により得られたものを微粉砕する
ことにより粉末を製造できる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照して本発
明の実施の形態について説明する。白色または淡色の合
成電気石物質について説明する。繊維、塗料面への利用
において、電気石が着色していてその利用範囲を狭めて
いる。粉末材料商品としての電気石の最も欠点とする点
は着色していることである。繊維材料としては着色を最
も嫌い、また、塗料としても使用範囲が限定される。電
気石は起電力を上げるためには加熱が条件であり、加熱
に伴って褐色度が強くなり、用途に支障が生ずるという
矛盾に出会う。淡色の電気石は、宝石屑のリシア電気石
類を集めれば利用できるが、その量が少ないので工業用
途としては全く期待できない。そこで、白色の電気石物
質を合成するすることを試み成功した。
【0009】本実施形態は、天然電気石の着色を物理的
又は化学的方法で改善する代わりに、新しく電気石を合
成し、それぞれに用途が要求する性質を保持するように
して、白色乃至は淡色の繊維用、塗料用などの電気石を
提供するものである。電気石の基本化学式はNaX3 2+
l6(BO3)3(Si618)(OH)4であり、天然にはX2+
Fe2+から成る黒色の鉄電気石、主にCa2+,Mg2+から
成る灰白色の苦土電気石、(Li+Al)/2のピンクの
リシア電気石がある。色の問題を解決する電気石の合成
の対象を苦土電気石とリシア電気石に求め、それらの合
成の検討も行った。しかし、従来電気石といえば鉄電気
石が使用対象として定着している。そのため、Fe2+
置にFe2+と同じ性質を持つ金属イオン、すなわち、遷
移元素の中で、原子価及びイオン半径が同じであり、無
色のイオンの元素を選べば、色の問題を解決した上に、
電気石の本来の性質を変えずに済むことができると考え
た。
【0010】そこで、無色イオンであり、原子価は2
価、イオン半径はFe2+と近似する亜鉛(Zn2+)をX2+
に置換した亜鉛電気石NaZn3Al3(BO3)3(Si618)
(OH)4を鉱化剤を用いて合成することを試みたとこ
ろ、天然には存在しない亜鉛電気石が合成できることが
わかった。また、亜鉛電気石の色は白色であることがわ
かった。Znイオンは2価の金属イオンでイオン半径は
Fe2+のイオン半径と同じ0.74Aであるため、鉄電気
石のFe2+(イオン半径0.74A)との置換は容易であ
ったものと考えられる。亜鉛電気石は、電気石とは同族
であるが、天然には全く賦存しないものであり、天然電
気石の用途上の不備を補うものである。
【0011】電気石は六方晶系菱形異極像晶族に属する
イオン結晶であり、六角柱状のトンネル構造を持ち、そ
の中をNa+が移動することで起電力が生ずる永久電極を
有する。また、イオン結晶であるところから加圧、加熱
(摩擦)によって生ずる特定イオンの内部移動に起因す
る起電力(圧電性、焦電圧)に基づく電流を自然エネル
ギーとするものである。ただ、これらの性質は直接測定
することは容易でない。ここでは合成品について天然電
気石のX線回析で同定することを中心に、用途の要求す
る性質を天然電気石のそれと比較し、その合成電気石の
効果を見ることにした。得られた製品について、X線回
析、油分解能、遠赤外線放射率などの性能が天然電気石
と比較して遜色のないことを確認した。得られた合成物
は、学術的にみた場合、厳密な電気石のレベルに達して
いない恐れもあるので、合成電気石様物質と呼ぶべきで
あるとも考えられる。しかし、本明細書では得られた製
品をすべて合成電気石と呼ぶことにした。
【0012】本実施形態では、新規な白色と淡色の多結
晶電気石を製造する。多結晶電気石は、たとえば、電気
石のモル組成に準じた数種の化合物の混合体又はそのか
焼体に、鉱化剤などを加えて加熱焼成して製造する。天
然の電気石の多くがペグマタイト末期の気成鉱床にイオ
ン結晶として産出するものであり、これにならって合成
することは実験室では困難である。ここでは、製造法と
して、接触変成鉱床で産出する苦土電気石の圧力と熱に
よる生成機構に近い熱による鉱化剤を用いるセラミック
合成法を採用した。
【0013】電気石の合成法は2つの方法に大別でき
る。第一の基本的方法では、電気石を2段階の焼成によ
り製造する。すなわち、電気石のモル組成に準じて配合
した化合物の混合粉末をあらかじめか焼した一次焼成品
に、窯業用低融点無鉛フリットを混合し、電気石の転移
点(約900℃)より低い温度で焼成する。第1の方法
による亜鉛電気石は、NaZn3Al6(BO3)3(Si618)
(OH)4の化学式を持ち、白色であり、主として白色が
要求される繊維練込み又は塗布加工に使用される。第2
の方法では、電気石のモル組成に準じた数種の化合物の
混合粉末に、天然の電気石微粉末及び低融点無鉛フリッ
トを混合し、電気石の転移点以下の温度で焼成する。第
2の方法は、主として淡色の電気石の合成法であり、天
然の電気石粉末を核として合成を行う。
【0014】電気石の合成において留意しなければなら
ない点は、焼成の温度である。鉄電気石は900℃付近
に不可逆の転移点を有し、 NaFe2+Al6(BO3)3(Si618)(OH)4+1/2O2
NaFe2+Fe2 3+(BO3)3+3Al2Si27+2H2O のごとく分解する。したがって、転移点より低温で時間
をかけて焼成することが必要である。
【0015】鉱化剤は、電気石のモル組成に準じて配合
した化合物の混合粉末又はそのか焼物を結晶化させるた
めに使用する。鉱化剤としては、たとえば、850℃以
下の低い融点を持ち、混合物素材とほとんど反応しない
ように一旦ガラス化したうえ、粉砕した窯業用低融点無
鉛フリット(硼珪酸ガラス)を用いる。その種類及びそ
の数量は限定しない。低融点とは電気石の転移点より低
い融点をいう。焼成後は、鉱化剤はバインダーとなる。
ここでは、バインダーとして、融点850℃以下の窯業
用無鉛フリットを用いたが、その種類は特に問わない。
バインダーの使用量は、粉末製品の場合は12.5±2.
5%、成形物の場合は25±5%を適量範囲としてい
る。
【0016】白色の合成亜鉛電気石の標準の製法では、
亜鉛電気石NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)4の構
成化合物のモル比混合物を焼成した一次焼成物に鉱化剤
の低融点無鉛フリットを混合し、本焼成する。この方法
では、まず、電気石のモル組成比に準じて電気石構成元
素の化合物を電気石のモル組成比に準じて配合し、焼成
する。次に、この1次焼成物と窯業用低融点無鉛フリッ
トとを混合し、電気石転移点以下の温度でふたたび焼成
する。この2段階焼成により白色電気石の合成が可能に
なることがわかった。この2次焼成品を乾式微粉砕機で
粉砕し、分級を行なうと、粉末が得られる。
【0017】鉄電気石はその焦電性を利用して起電力を
引上げようとすれば焼成に伴って茶褐色に着色する。こ
の着色を緩和しようとする目的で、白色亜鉛電気石に天
然電気石を組込んだ合成亜鉛鉄電気石を提供する。白色
亜鉛電気石を着色電気石粉と任意の割合で混合して合成
することにより、着色を希釈できる。天然電気石と合成
亜鉛電気石の割合は使用先が許容する着色度によって決
定される。天然の電気石として鉄電気石を用いると、こ
の合成電気石は、Na(FexZn1-x)3Al6(BO3)3(Si6
18)(OH)4(0<x<1)の化学式を持ち、着色はう
すくなり、主として塗料材料として使用される。本明細
書では、「淡色」とは、白色の電気石により天然電気石
を希釈して得られる色を総称する用語である。天然電気
石に白色の亜鉛電気石を加えて天然電気石の着色を希釈
すると、色の濃淡は鉄電気石の添加量で調整され、パス
テルカラー、茶褐色などの種々の中間色の電気石が提供
できる。たとえば、鉄電気石焼成物は赤褐色であるが、
鉄電気石焼成物70部とフリット30部とを混合して焼
成すると、茶褐色になる。また、後に説明する例では、
合成亜鉛鉄電気石の焼成物の色は、鉄:亜鉛=15:6
0=1:4(x=0.2)では淡黄褐色であり、鉄:亜
鉛=50:50=1:1(x=0.5)では淡茶褐色で
あった。(なお、この比は重量比で表わしている。しか
し、NaFe3Al 6(BO3)3(Si618)(OH)4のモル数は
1050であり、NaZn3Al6(BO3)3(Si618)(O
H)4のモル数は1080であるので、両者のモル数は近
似的に同じであり、従って、両者のモル数比と重量比は
ほぼ同じである。)
【0018】ここで、合成亜鉛鉄電気石の組成について
説明する。天然電気石を結晶化の核として電気石を合成
するときは、少なくとも 天然電気石:合成亜鉛電気石=15:85(淡黄褐色) の場合には、合成が可能であることが確かめられてい
る。これが天然電気石の量の下限である。また、天然電
気石の上限については、色の調整が可能な量としては5
0:50が望ましいが、実際にはフリットと放射線源材
料(いずれも白色)が加わるのが普通であるので、 天然電気石:合成亜鉛電気石=65:35(淡褐色) までが実際に採用可能である。すなわち、 天然電気石:合成亜鉛電気石=15〜65:85〜35 が実用的な範囲である。
【0019】淡色の合成亜鉛電気石の標準の製法では、
亜鉛電気石の構成化合物のモル比混合物に、天然電気石
粉末と低融点無鉛フリットを混合し、湿式微粉砕の後、
焼成する。この場合、天然電気石は色の調整と合成亜鉛
電気石結晶生成の核としての役目を果たしている。ま
た、白色の合成電気石1次焼成粉末は、色の調整剤とし
ての効果だけでなく、水分の保持剤、気体の吸収剤とし
て働き、抗菌と脱臭にも効果が期待される。
【0020】簡便法では、希釈用として亜鉛電気石構成
化合物のモル比混合粉末に低融点無鉛フリットを湿式混
合し、乾燥物を焼成して白色の直接合成亜鉛電気石を得
て、次に、天然電気石粉末と混合して調色する。ここ
で、電気石の合成において、核種として用いる天然電気
石は、ブラジル、中国、インド産の鉄電気石であり、そ
れらのX線回析と組成分析は共に地域的な差は少なく、
電気石の選別については特定しない。
【0021】合成電気石においても、電気石の起電力を
高め、電気的性質を強化することが望まれる。特に遷移
や塗料面の用途では、白色である上にマイナス(−)イオ
ンの発生で商品を特徴づけたいという要求が強い。そこ
で、合成時に天然の放射性物質を加えて、合成電気石に
天然放射性鉱物を共存させた材料(加工電気石)を製造
する。加工電気石では、天然放射性鉱物から発生する放
射線のアルファ線、ベータ線及びガンマ線が電気石の内
部で働きかけ、特定の結晶構成イオンをその周辺で移動
させ、それによって電子の移動を促し、起電力を向上さ
せる。または、その放射線が電気石周辺の空気や水蒸気
をイオン化して生ずるマイナス(−)イオンを利用する。
すなわち、起電力のエネルギー増加のために添加した放
射線源調整物質の放射線の一部は、加工電気石にマイナ
スイオン生成の働きを与える利点を持っている。
【0022】加工電気石の原材料は、合成電気石、放射
性物質(具体的には放射線源調整物質)及びバインダー
からなる。放射性物質としては、天然放射性元素のウラ
ン・トリウムを含むレア・アース鉱物が用いられ、レア
・アース工業において原料として使用される鉱石の中、
トリウム(Th)とウラン(U)を比較的多く含むもの、例
えば、モナザイト(化学式(Th,RE)PO4、ThO2
6.0%、U38 0.3%、(RE)23 60%、P25
28%)か、ゼノタイム(化学式YPO4、U38 1.
0%、ThO2 1.0%、(RE)23 50%、P25
5%)が普通である。しかし、レア・アース鉱石の種類
については特に特定するものではない。一般には、天然
放射性物質をその他の物質で稀釈したもの(以下、放射
線源調整物質という)を使用する。たとえば、天然放射
性レア・アース鉱物を白色系の窯業用素材(石英、長
石、粘土、ムライト、ジルコン、ジルコニア、アルミ
ナ、ゼオライト等)で稀釈したものを使用する。ここで
は、モナザイトとジルコンを用い、モナザイト:ジルコ
ン=30:70の割合に混合したものを粉砕して使用す
る場合が多い。放射線源調整物質の使用量は実験的に決
定する。
【0023】放射線源調整物質の添加は、合成電気石の
必須条件ではないが、添加の有無は、電気石原料化合物
のモル比混合物を本焼成の前にあらかじめか焼するか、
か焼と省略して進めることが出来るかなど工程を大きく
左右する。これについては後で詳述する。
【0024】白色繊維用の合成加工亜鉛電気石の標準の
製法では、亜鉛電気石の構成化合物のモル比混合物の一
次焼成物に放射線源調整物質と低融点無鉛フリットを加
え、湿式粉砕法で微粉砕した後に本焼成し、合成亜鉛電
気石と合成加工亜鉛電気石を同時に生成する。また、白
色の繊維用合成電気石の場合と同様に、内装用特殊壁塗
料としてマイナス(−)イオンを発生させ、室内空気を
正常化させる要望に応えて、放射線源調整物質を共存さ
せた淡色の合成加工亜鉛電気石も提供できるようにし
た。淡色の繊維用加工電気石の製法では、たとえば、天
然電気石に上述の白色合成電気石1次焼成物を稀釈剤と
して任意の割合に加え、これに放射線源調整物質と、バ
インダーとしての窯業用無鉛フリットを添加して混合粉
砕する。これを焼成し、微粉砕する。
【0025】放射線源調整物質としては、天然放射性元
素のウラン、トリウムを含むレア・アース鉱物が用いら
れ、レア・アース工業において、原料鉱石として使用さ
れているモナザイト(化学式(Th,RE)PO4、組成
ThO2 6.0%、U38 0.3%(RE)23 60
%,P25 28%)を使用する場合が多い。天然放射
性レア・アース鉱物の多くは、核原料物質として原子力
関連法により管理されているので、届出なしに使用でき
る放射能濃度370ベクレル/g以下のものの使用が一
般的である。そこで使用する天然放射性レア・アース鉱
物を白色の窯業用素材(石英、長石、粘土、ムライト、
ジルコン、ジルコニア、アルミナ、ゼオライト等)で3
70ベクレル/g以下の濃度まで希釈したものが放射線
源調整物質である。ここでは、放射線源調整物質とし
て、モナザイトとジルコンを用い、モナザイト:ジルコ
ン=30:70の割合に混合したものを粉砕して使用す
る。放射線源調整物質において、天然放射性元素のウラ
ンまたはトリウムを含むレア・アース鉱物を他の物質で
稀釈して、放射線濃度を調整できる。放射線源調整物質
の使用量は実験的に決定するが、最高30%まで使用す
ることがあるので、これが合成電気石の原料化合物の混
合粉と直接反応して電気石の結晶形態を狂わすことがな
いように製造手順に配慮することが必要である。
【0026】放射線源調整物質粉末が亜鉛電気石構成化
合物モル比混合物と直接混合され焼成されれば、相互反
応して電気石の結晶生成を妨害する恐れがある。そこ
で、淡色の塗料用合成加工亜鉛電気石の製法では、製造
された合成電気石の粉末、または、亜鉛電気石構成化合
物のモル比混合物の一次焼成品の粉末に、放射線源調整
物質と低融点無鉛フリットを湿式混合した後に、焼成す
る。
【0027】以下では、合成電気石の具体例について説
明する。 (例1)白色の繊維(塗料)用合成亜鉛電気石 白色の亜鉛電気石の製造において、まず、電気石の構成
化合物であるNaCl,ZnO,Al33,B23,SiO2
の化学薬品を、亜鉛電気石NaZn3Al3(BO3)3(Si6
18)(OH)4の構成成分のモル比に従って配合した。表
1に配合割合を示した。なお、参考のため、基本となる
鉄電気石の構成成分を示した。
【表1】
【0028】次に、上述の亜鉛電気石構成化合物のモル
比混合物を予備的に結合させる目的でか焼した。か焼温
度別の混合物の一次焼成品についてX線回析を行い、そ
の結果を表2に示した。ここに、QはSiO2の回析線を
示し、AlはAl23の回折線を示し、Zn−AlはZnA
lO4の回折線を示す。表2の結果から1000℃を越え
ない温度が望ましいことが判る。
【表2】
【0029】合成亜鉛電気石の合成手順は以下の通りで
ある。表1に示す亜鉛電気石構成化合物のモル比混合物
1kgを3kgポット中で玉石1kgを用いて24時間混合し
粉砕した。取り出した亜鉛電気石構成化合物混合物粉末
は、シャモット質サヤに入れ、電気炉中で800℃で4
時間焼成して、混合物の一次焼成品1kg弱を得た。次い
で、亜鉛電気石構成化合物混合物の一次焼成品70部と
無鉛フリット(Na2O,CaO,B23,Al23,Si
2系)30部を3kgポット中に入れ、玉石3kgと水1
リットルを加えて24時間粉砕し、混合した。取り出し
た泥漿物は水切りした後に乾燥し、電気石転移点より低
い800℃で焼成して、白色の合成二次焼成品を得た。
次に、二次焼成品を小型微粉砕機で粉砕し、200メッ
シュで篩がけし、白色の合成亜鉛電気石粉末を得た。同
様に、天然鉄電気石について無鉛フリットと混合し、混
合物の焼成および粉砕を行って、比較品を調製した。
【0030】得られた亜鉛電気石構成化合物の混合物の
一次焼成品、合成亜鉛電気石及び比較試料としての天然
鉄電気石焼成品についてX線回析を行った。図1は亜鉛
電気石構成化合物混合物の一次焼成品のX線回析図であ
り、図2は合成亜鉛電気石のX線回析図である。図1に
よれば、一次焼成品の段階ではZnAlO4(Zn−Alで示
す)、Al23(Alで示す)、SiO2(Qで示す)の回析線
(2θ)が現われているのみで、電気石の回析線はない。
これに対し、図2によれば、一次焼成品に鉱化剤として
フリットを加えて焼成して得た合成亜鉛電気石では電気
石(Tで示す)の回析線が多く現われている。図2で
は、アモルファス状態であるフリットが共存物と反応し
回析線が現われる様子は認められない。これらのことに
より、亜鉛電気石構成化合物のモル比混合物を1000
℃以下の温度で予備焼成して結合させて得られた、電気
石構造になっていない一次焼成品を、硼珪酸低融点フリ
ットと共焼成させることにより、電気石の構造に類似す
る構造に再結合させ、合成亜鉛電気石を得ることが確認
できた。
【0031】白色合成亜鉛電気石を繊維添加用として利
用する場合は、天然電気石に乏しい空気中のマイナス
(−)イオン発生量のレベルを引上げることが要望され
ることが多く、この場合は放射線源調整物質の添加が不
可欠になる。そこで、放射線源調整物質を添加した合成
加工亜鉛電気石が製造された。これの代表的な製造例を
次に説明する。まず、表1の亜鉛電気石構成化合物のモ
ル比混合物を混合粉砕した粉末を800℃で焼成して調
製した亜鉛電気石素材混合物の一次焼成品50kgを、あ
らかじめ用意した放射線源調整物質(モナザイト砂30
部、ジルコン70部の混合微粉砕粉末)30kg及び無鉛
フリット20kgとともに、100kgトロンミル中で玉石
100kgと水50リットルを加えて24時間粉砕した。
次に、捕集したケーキを乾燥し、解砕し、転移点より低
い800℃で4時間保持の条件で焼成し、二次焼成品約
95kgを得た。焼成品は乾式微粉砕機で粉砕、分級を行
い、繊維用合成加工亜鉛電気石粉末約90kgを得た。製
品粉末は白色であり、粒度測定の結果は中位径1.2μm
であった。
【0032】製造した繊維用合成加工亜鉛電気石につい
てX線回析による同定を行った。図3に繊維用合成加工
亜鉛電気石のX線回析図を示した。これによれば、図2
の合成亜鉛電気石の回析線に類似する構造の回析線Tの
他に、添加したジルコン(Zr)とモナザイト(M)の回析
線が混在している。なお、フリットはアモルファス状態
のため回析線を生じない。このことは合成亜鉛電気石が
生成したことを示すとともに、合成亜鉛電気石を含む合
成加工電気石が生成したことを示している。
【0033】また、合成亜鉛電気石及び合成加工電気石
について、繊維用として第一に要望される保温の目安と
なる遠赤外線放射率を測定した。測定用板状物の調製に
当り、焼成の重複を避けるため、各々の本焼成前の粉末
をφ50×3m/mのプレス成形し、800℃にか焼した
測定板を作った。これについて、FT−IR(JIS−
5300、日本電子製)により、測定誤差を最小限にす
るため140℃で遠赤外線放射率を測定した。図4は、
天然鉄電気石(イ)、合成亜鉛電気石(ロ)および合成
加工亜鉛電気石(ハ)の遠赤外線放射率曲線を示す。
【0034】図4の赤外線放射率の比較から、常温では
8〜10μmの波長(140℃では6〜8μm)において
天然電気石(イ)の放射率が90%であるのに対して、
合成亜鉛電気石(ロ)のそれは98%と高いという特長
を持つことが知られる。12μm以上(140℃の10
μm以上)では両者の放射率は平均的には差はないが、
合成亜鉛電気石では82〜95%の間を上下する形を示
しているのが気になる。しかし、総合的にみて、合成亜
鉛電気石は天然電気石に対して遜色のない良好な常温遠
赤外線放射体であることが知られる。
【0035】最近の繊維材料としては抗菌性と消臭性を
必須項目として示すことが要求される。抗菌性と消臭性
について、合成亜鉛電気石粉末と合成加工亜鉛電気石、
そして比較試料としての天然鉄電気石・フリット混合焼
成粉末について試験を行った。抗菌については、菌数測
定法で測定した。すなわち、試料0.2gをバイアルビ
ンに入れ、生菌数105に調製した菌液0.2mlを滴加
し、37.0℃で18時間培養した後、菌を洗い落と
し、10倍希釈系列を作成し、生菌数をカウントし、増
減値差を求める。用いた菌種は黄色ブドウ状菌種であ
る。消臭については、テドラバックに試料1g及びアン
モニアガス600mlを封入し、3時間後のガス濃度を測
定して試験した(2個)。
【0036】さらに最近は、繊維の特徴の1つとしてマ
イナス(−)イオンの発生能力が要求される場合が多
い。そこで、試料を樹脂(アクリル)に混合した分散液
(5%,10%)に綿布を含浸させて固着乾燥したもの
(綿布上の試料濃度は1m2当り5.2g,10.0g)に
ついて、イオンテスター(KST−900神戸電波製)
でマイナス(−)イオン数/cm3を測定した。表3は抗
菌、消臭及び(−)イオンの測定値を示す。なお、抗菌
は、1.6が有効であり、また、自然(−)イオンは、
80個/ccである。表3の結果から、合成亜鉛電気石
及び合成加工電気石は要求させれる属性を天然電気石の
それより大きく改善していることが知られる。なお、表
中の(−)イオンが自然数より低いのは樹脂等に吸収さ
れるためである。
【0037】
【表3】
【0038】白色の加工亜鉛電気石の別の合成法とし
て、直接合成法がある。これは、材料化合物のモル比混
合物に無鉛フリットを混ぜ800℃程度で焼成するもの
である。直接合成法は、粒子間を接近させるため湿式粉
砕混合が必要であり、電気石粉以外の粉末、例えば放射
線源調整物質粉など混合物と反応して結晶妨害の恐れが
あるものを共存させない時に合成が可能なものである。
図6は、直接合成により得られた加工亜鉛電気石のX線
回折図である。図6を図2と比較すると、一次焼成品を
経由するものと結晶生成度では差はある。しかし、図5
に示すX線回析図は、直接合成亜鉛電気石と放射線源調
整物質と追加フリットとの混合物を800℃付近で焼成
して得られた試作品についてのものであるが、図5のX
線回折図と、混合物の一次焼成品を用いた図3に示した
合成加工亜鉛電気石の回析図とはほとんど差がない。
【0039】白色の直接合成亜鉛電気石についてさらに
説明する。亜鉛電気石の直接合成では、電気石を構成す
る化合物のモル比混合物を作製し、得られたモル比混合
物を850℃以下の融点の無鉛フリットと混合し、得ら
れた混合物を850℃以下の温度で焼成する。したがっ
て、1段階の焼成で合成電気石が直接に得られる。
【0040】次に、直接合成亜鉛電気石の製法例を述べ
る。表1の亜鉛電気石構成化合物のモル比混合物2.1k
g及び窯業用低融点フリット0.9kgを3kgポットに入
れ、玉石3kg、水1.5リットルを加えて24時間湿式
粉砕し、水切りすることなく泥漿物と取り出し乾燥し
た。乾燥物は小型解砕機で解砕し、シャモットサヤに入
れて800℃で4時間の条件で焼成した。焼成物は小型
粉砕機で粉砕し、白色の直接合成亜鉛電気石粉末2.8k
gを得た。
【0041】図6は、得られた直接合成亜鉛電気石のX
線回析図である。この図によれば、構成化合物のモル比
混合物をフリットと共に直接加熱しても電気石の主要回
析線が現われ、亜鉛電気石が生成していることが判る。
図2の混合物の一次焼成物を経る合成亜鉛電気石に較べ
ると、次のような違いが認められる。(イ)回析線の数
も少なく、強度も小さい。(ロ)焼成前の原料粒子を密
に接近させるために湿式粉砕が必要条件である。(ハ)
焼成時間をできるだけ長くするか、再焼成が行なわれる
工程が加わることが望ましい。しかし、用途によっては
合成亜鉛電気石中級品又は中間品として使用できる。製
造に当っては構成化合物のモル比混合物と反応する恐れ
のある物質(たとえば放射線源調整物質など)を共存さ
せないことが必要である。
【0042】(例2)淡色合成亜鉛電気石 次に、電気石の焼成で現われる茶褐色の着色を合成途上
で同時に淡色化する合成亜鉛電気石の製法について述べ
る。表1の亜鉛電気石構成化合物のモル比混合物6kg、
天然鉄電気石1.5kg及び低融点フリット2.5kgを10
kgポットに入れ、玉石10kg、水5リットルを加え、2
4時間湿式粉砕した。粉砕後の泥漿は水切りすることな
く取り出し、乾燥して水を蒸発した後、小型解砕機で粉
砕、シヤモットサヤに入れ、800℃で焼成した。焼成
物は小型粉砕機で粉砕、200メッシュ篩を通して淡黄
褐色の合成亜鉛鉄電気石粉末9.5kgを得た。
【0043】図7は、得られた淡黄褐色合成亜鉛鉄電気
石粉末のX線回析図である。図7を図6を比較すると、
淡黄褐色合成亜鉛鉄電気石粉末は、加えられた天然電気
石が全体の中で15%という少ない量であっても、これ
が電気石結晶生成の種となるためか、電気石の回析線も
多く、強度も大きく、合成亜鉛電気石結晶の生成、成長
を見ることができる。
【0044】引き続き、放射線源調整物質を含む合成加
工亜鉛鉄電気石粉末の製法を検討した。ここで、電気石
の着色度を緩和し、電気石の起電力を引き上げると共
に、且つ、抗菌、脱臭の機能ならびにマイナスイオン発
生能力を保持した淡色の塗料用電気石の具体例を説明す
る。
【0045】加工電気石の製造時に添加の必要な放射線
源調整物質(モナザイト30部、ジルコン70部混合
粉)は、亜鉛電気石構成化合物のモル比混合物に対して
反応し電気石結晶生成を妨害する恐れがある。そこで、
加工電気石の製造において、あらかじめ結晶化した (イ)亜鉛電気石構成化合物のモル比混合物の一次焼成
体 (ロ)同じく混合物の直接合成亜鉛電気石 (ハ)上述の合成亜鉛電気石 の何れかを用いる。
【0046】はじめに、(イ)の一次焼成体を用いた加
工電気石製造法について説明する。淡褐色の塗料用加工
電気石粉末10kgは次のように製造した。天然電気石微
粉末と上述の合成1次焼成品を、望む着色度合に応ずる
割合で混合したもの(ここでは亜鉛系合成1次焼成品を
用い等量混合)6kgと、放射線源調整物質3kg、さらに
無鉛フリット1.5kgを10kgポットに入れ、玉石5kg
を用いて24時間粉砕混合した。放射線源調整物質とし
て、モナザイト砂30部とジルコン70部の混合微粉砕
粉末を用いた。次に、混合物を取り出しサヤ詰し、75
0℃で4時間焼成した。次に、焼成物は10kgポットに
入れ、玉石10kg、水5リットルを加えて24時間粉砕
した後に取り出し、水切り後、乾燥し、解砕した。比較
のため、電気石4kg、合成一次焼成品4kg、無鉛フリッ
ト2kgの混合品に対し同様の操作を行って、淡褐色の電
気石、合成一次焼成品及びフリットの混合焼成粉末を用
意した。
【0047】得られた2種の粉末試料についてX線回
析、遠赤外線測定、抗菌、消臭及びマイナスイオン数測
定を実施した。
【0048】図8と図9は、それぞれ、淡褐色の塗料用
加工電気石粉末のX線回析の結果と、淡褐色の電気石、
合成一次焼成品及びフリットとの混合焼成粉末のX線回
析の結果を示す。これによれば、合成一次焼成品(図
9)は電気石を核としてすべて電気石結晶に再編成さ
れ、(T)で示される電気石結晶回析線に移行しているこ
とが判る。また、加工電気石(図8)では、電気石及び
移行電気石(図9)の回折線の他に、放射線源調整物質
からのジルコン(Zr)とモナザイト(M)の回析線が現
れ、三者の混合物として成立っていることを示してい
る。先に説明したように、合成電気石1次焼成物・放射
線源調整物質・無鉛フリットの三者を混合焼成すること
により、電気石の構造を持ち、放射線源鉱物と共存する
白色の合成加工電気石様物質粉末を得ることができた
が、ここでは同様に、電気石・合成電気石一次焼成物・
放射線源調整物質・無鉛フリットの四者を混合焼成する
ことにより、淡褐色の合成加工電気石を得ることができ
た。
【0049】遠赤外線の測定を、図4の場合にならい、
各々の焼成前の粉末をφ50×3m/mの大きさに成形
し、750℃で焼成したものについて、同一条件で測定
した。図10は、その測定結果を示す。図10におい
て、(イ)は塗料用加工電気石粉末、(ロ)は比較用の電気
石、合成一次焼成品及びフリットとの混合焼成粉末の遠
赤外線放射曲線である。両者とも6.3〜8.3μm(常
温に換算すれば8.3〜10.3μm)に極大波長域を持
ち、その放射率は同一レベル(98%)を示している。
10μm以上の波長域では、モナザイト・ジルコン調整
物質を含有する加工電気石粉末(イ)が安定した曲線を示
している。すなわち、合成加工電気石粉末から放射され
る遠赤外線は、塗料に要求される速乾性、表面温度の調
節などの効果をもたらす。
【0050】抗菌、脱臭及びマイナスイオン数の測定は
上述の例に準じて測定した。表4にそれらの結果をまと
めた。
【0051】
【表4】
【0052】次に、直接合成亜鉛電気石(ロ)を用いる
製法を採用した加工電気石製法の具体例を説明する。亜
鉛電気石構成化合物のモル比混合物6.6kgと低融点フ
リット3.4kgを秤量し、10kgポットに入れ、玉石1
0kg、水5リットルを加えて24時間粉砕した。取り出
した泥漿物は水切りすることなく乾燥した後に解砕し、
電気石転移点より低い750℃で4時間焼成して、焼成
物9.6kg(直接亜鉛電気石)を得た。次に、その焼成
物の半量を10kgポットに入れ、天然電気石3kg、放射
線源調整物質粉2.5kg、追加低融点フリット0.5kgを
加え、玉石10kg、水5リットルを加えて24時間粉砕
した後、泥漿物を水切りし乾燥し解砕した後に、800
℃で焼成した。焼成物は、小型粉砕機で粉砕し、200
メッシュの篩を通して、淡褐色の合成加工亜鉛鉄電気石
粉末9.5kgを得た。
【0053】得られた合成加工亜鉛鉄電気石粉末につい
てX線回析を行った。図11にそのX線回析図を示す。
図11の回析図によれば、天然電気石及び合成電気石の
Tで示した電気石の回析線の他にジルコン(Zr)とモナ
ザイト(M)の回析線が現われ、三者の混合物として成り
立っていることを示している。また、図8の回析線は、
図3の白色合成加工亜鉛電気石粉末のそれとも晶癖の差
はあってもほとんど一致していることが知られる。
【0054】次に、淡色の合成亜鉛鉄電気石と淡色の合
成加工亜鉛電気石の遠赤外線放射率を上述の例と同一条
件で測定した。図4の(ハ)に合成亜鉛鉄電気石、
(ニ)に合成加工亜鉛鉄電気石の遠赤外線放射率曲線を
示した。図4の結果によれば、(ハ)及び(ニ)ともに
常温においては8〜10μmの波長(図の140℃では
6〜8μm)の放射率は98%以上を示し、12μm以上
の波長域(140℃では10μm以上)では放射率95
%以上の平坦な波を形成していることが知られる。天然
電気石粉末より、合成亜鉛電気石、合成亜鉛鉄電気石、
合成加工亜鉛鉄電気石の各電気石の如く、合成物の構成
材料の種類と量によって遠赤外線の放射率が大きく変化
する傾向が判る。図4に示すように、合成によって得ら
れた電気石粉末は、天然電気石に勝る遠赤外線放射体で
あり、光、内部の電流、放射線による熱をエネルギーと
して常温の遠赤外線を放射する。これにより繊維用とし
て要求される血行の促進、保温の効果が期待される。塗
料としては湿度の調整などに効果を持つ。
【0055】上述の合成亜鉛鉄電気石粉末及び合成加工
亜鉛鉄電気石粉末について、抗菌、消臭及びマイナス
(−)イオンの測定を行った。測定条件は例1に準じ
た。表5にそれらの結果をまとめた。なお、抗菌は、
1.6が有効であり、また、自然(−)イオンは、80
個/ccである。
【表5】
【0056】表5によれば、本来は加工電気石の起電力
増加のために添加した放射線源調整物質に由来し、その
表面から空気中に出る放射線によって、使用繊維、塗装
塗膜付近の空気(酸素、水蒸気)がイオン化され、定常
的にマイナスイオンが供給されることが知られる。これ
は摩擦電気に基づくマイナスイオンは別として、天然電
気石に望まれなかった点である。表5において、抗菌、
消臭の値が変動する。合成亜鉛電気石含有量が増えれば
数値が上がり、天然電気石が増えれば下がる傾向がみら
れるが、これは合成亜鉛電気石粉末が多孔質であるため
である。
【0057】上述の各種の例で得られた各種合成加工電
気石粉末及び合成加工電気石粉末は繊維加工材料又は塗
料材料として要求される白色乃至は淡色の粉末であり、
特に繊維用として要求される常温遠赤外線のもたらす血
行の促進、保温効果を持ち、塗料用としては塗料表面の
水分の蒸発促進に大きな効果を示す。
【0058】さらに、放射線源調整物質を添加すること
により、加工電気石として電気石の起電力が増強され
る。それと同時に、放射線源調整物質に由来し、粉末の
表面から空気中に出る放射線によって加工繊維、塗装塗
膜付近の空気(酸素、水蒸気など)がイオン化され、定
常的にマイナスイオンが供給されるようになる。これは
摩擦電気に基づく一時的なマイナスイオンは別として、
天然電気石に望むことができなかった点であり、従来天
然電気石が色調と共に積極的に利用されなかった原因の
1つでもあった。
【0059】また、加工電気石や合成加工電気石から微
量溶出するホウ素(B3+)は抗菌作用があること、また
これらが多孔性物質であることから脱臭効果があること
など、有用な効果が認められている。
【0060】
【発明の効果】合成亜鉛電気石は白く、合成亜鉛鉄電気
石は淡色である。したがって合成電気石を用いて白色又
は淡色の電気石材料を提供できる。これにより、繊維、
塗料面への利用において電気石の利用範囲を広げる。
【0061】上述の電気石のモル比混合物とバインダー
を湿式粉砕混合して粒子間を縮めたもので結晶生長を妨
害する他の物質を含まないものを共焼成しても白色の電
気石を提供できた。
【0062】塗料面に主として使用される淡色の電気石
については、上述の亜鉛電気石の構成化合物のモル比混
合物に、天然電気石粉末とバインダーを湿式粉砕したも
のを、着色の原因となる電気石微紛を結晶成長の核とし
て焼成することにより、任意の淡色の合成亜鉛鉄電気石
を提供できた。
【0063】また、一次焼成品・放射線源調整物質・バ
インダーの三者又は直接合成亜鉛電気石・放射線源調整
物質・追加バインダーの三者を混合焼成することによ
り、電気石の構造を持ち、放射線源鉱物と共存する白色
の合成加工亜鉛電気石を提供できた。これにより、電気
石の起電力を高め、電気石の機能強化を図る。
【0064】また、天然電気石、合成亜鉛電気石(直
接)又は電気石のモル比混合物の一次焼成品、放射線源
調整物質及びバインダーの四者を混合焼成することによ
り、淡色の合成加工電気石を提供できた。これにより、
電気石の起電力を高め、電気石の機能強化を図る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 亜鉛電気石構成化合物混合物の一次焼成品の
X線回析図
【図2】 合成亜鉛電気石のX線回析図
【図3】 繊維用合成加工亜鉛電気石のX線回析図
【図4】 天然電気石(イ)、合成亜鉛電気石(ロ)、
合成加工亜鉛電気石(ハ)及び合成加工亜鉛鉄電気石
(ニ)の遠赤外線放射率曲線図
【図5】 直接合成亜鉛電気石を用いた加工電気石のX
線回析図
【図6】 直接加工亜鉛電気石のX線回析図
【図7】 合成亜鉛鉄電気石粉末のX線回析図
【図8】 塗料用加工電気石粉末のX線回析図
【図9】 電気石、一次焼成品及びフリットの混合焼成
粉末のX線回析図
【図10】塗料用加工電気石粉末(イ)と、比較用の電
気石と一次焼成品及びフリットの混合焼成粉末(ロ)の
遠赤外線放射曲線
【図11】 合成加工亜鉛鉄電気石のX線回析図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−192479(JP,A) 特開 平10−89164(JP,A) 特開 平9−110552(JP,A) 特開 平9−110468(JP,A) 特開 平9−157000(JP,A) 特開 平7−11266(JP,A) 特開 昭59−137389(JP,A) 特開 昭59−152286(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/16 C03C 10/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)
    4の化学式で表わされる組成からなる電気石の粉末と、
    この電気石の粉末を保持するバインダーとからなる焼成
    物である合成電気石。
  2. 【請求項2】 前記のバインダーが低融点フリットであ
    る請求項1に記載された合成電気石。
  3. 【請求項3】 さらに放射線源調整物質を含むことを特
    徴とする請求項1に記載された合成電気石。
  4. 【請求項4】 Na(Zn1-xFex)3Al3(BO3)3(Si6
    18)(OH)4(ここに0<x<1)の化学式で表わされ
    る組成からなる電気石の粉末と、この電気石の粉末を保
    持するバインダーとからなる焼成物である合成電気石。
  5. 【請求項5】 前記のバインダーが低融点フリットであ
    請求項4に記載された合成電気石。
  6. 【請求項6】 さらに放射線源調整物質を含むことを特
    徴とする請求項4に記載された合成電気石。
  7. 【請求項7】 NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)
    4の化学式で表わされる組成からなる電気石を構成する
    化合物のモル比混合物を作製し、 作製されたモル比混合物を焼成し、 得られた焼成品を850℃以下の融点のバインダーと混
    合し、 得られた混合物を850℃以下の温度で焼成する合成
    気石製造法。
  8. 【請求項8】 NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)
    4の化学式で表わされる組成からなる電気石を構成する
    化合物のモル比混合物を作製し、 作製されたモル比混合物を850℃以下の融点のバイン
    ダーと混合し、 得られた混合物を850℃以下の温度で焼成する合成
    気石製造法。
  9. 【請求項9】 NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(OH)
    4の化学式で表わされる組成からなる電気石を構成する
    化合物のモル比混合物を作製し、 作製されたモル比混合物を焼成し、 得られた焼成品に放射線源調整物質及び850℃以下の
    融点のバインダーを加えて混合し、 得られた混合物を850℃以下の温度で焼成する合成
    気石製造法。
  10. 【請求項10】 NaZn3Al3(BO3)3(Si618)(O
    H)4の化学式で表わされる組成からなる電気石を構成す
    る化合物のモル比混合物を作製し、 作製されたモル比混合物を850℃以下の融点のバイン
    ダーと混合し、 得られた混合物を850℃以下の温度で焼成し、 得られた焼成物に、放射線源調整物質及び850℃以下
    の融点のバインダーを加えて混合し、 得られた混合物を850℃以下の温度で焼成する合成
    気石製造法。
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