JP3280939B2 - 医学用放射光x線撮像装置 - Google Patents
医学用放射光x線撮像装置Info
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- Apparatus For Radiation Diagnosis (AREA)
Description
学利用のX線撮像装置に関し、特に病院で冠状動脈造影
に使用することができる小型の放射光X線撮像装置に関
する。
子蓄積リングで代表する)に挿入された挿入光源から放
射される放射光は強度が高くしかも波長を任意に選択す
ることができることから、特定波長の高品質X線を活用
した医療用X線撮像装置の研究が進められている。
蓄積リング内を周回し、ウィグラなどの挿入光源を通過
する際に強いX線を含む放射光を発生する。この放射光
は分光器に導かれ単色のX線となり、患者を通過して撮
像装置に入射する。患者の血管に注入されている造影剤
(血液である割合に希釈されている)は、X線を透過し
にくいので、X線で撮影すると血管の影ができる。特に
造影剤にヨウ素を用いた場合、ヨウ素のK吸収端である
33.17 keVのX線を用いると、X線の吸収係数が極大と
なるため、コントラストの良い画像を得ることができ
る。
放射光研究施設では、トリスタン入射蓄積リング(AR
リング)のNE1ビームラインを用いて、放射光を利用
した冠状動脈造影(SRアンジオグラフィ)の臨床応用
研究が行われて良好な結果が得られている。冠状動脈造
影は、特定波長のX線を吸収しやすい造影剤を血液中に
注入してX線撮影をすることにより血管の状態を見るも
ので、現在、ヨウ素を造影剤とし、33.17 keVのK吸収
端を利用したX線撮影で十分明瞭な冠状動脈画像が得ら
れている。
例に使用された放射光発生装置のパラメータはたとえば
次のようなものであった。 電子ビームエネルギー E 5 GeV 最大磁場強さ Bo 0.79 T ウィグラポール数 43 水平エミッタンス εx 9.7×10-8 m-rad 水平方向β関数 βx 8 m
のX線のトータル光子数は、水平方向取り出し角度を2
mradとしたときに、0.1%バンド幅で約3×1013 個とな
り、量子ノイズの少ない良好な画像を得ることができ
た。この数値は臨床において利用できる水準を示すもの
とすることができる。なお、この時の33.17 keVのX線
の水平方向発散角は0.24 mrad程度で、半陰影のない鮮
明な画像が得られていた。
造影は簡便で安全な冠状動脈検査法であり、この実用化
により心臓病の定期検診を行うことが可能になると期待
されている。臨床応用に成功した高エネルギー加速器研
究機構のARリングは十分な性能をもっているが、AR
リングは周長が380 mあり、これと同じ性能を有する装
置を全国各地の病院に設置することは実際上不可能であ
る。一般に利用する医学診断用の放射光発生装置は、病
院に設置可能な程度に小型であって、しかも鮮明な診断
画像が得られるものでなければならない。
の困難があるので、まずはARリングのほぼ1桁小型化
してビーム軌道周長を50 m以下になるように構成する
と、装置が20 m×15 mの敷地内に収まり、比較的大きな
病院なら設置することも可能になる。周長が50 mである
医学用放射光装置用電子蓄積リングでは、挿入光源設置
用直線部および入射部RF部直線部にそれぞれ妥当な4 m
の長さを取れば、偏向部長さが一周分で 2πr = 42 mと
なるので偏向半径 r が6.67 mとなる。したがって、偏
向電磁石の磁場Bが一般的な範囲内で最大とされる1.5
Tであるとして、関係式 P [GeV/c] = 0.3 B[T] r[m] (1) により求めると、電子の運動量Pは3 GeV/c以下にすれ
ばよいことが分かる。ここでcは光速である。この時電
子ビームエネルギーは3 GeVになる。
るような良好な画像を得るには、量子ノイズを抑えるた
めに十分な光子数が必要とされる。多量のX線光子を得
るためには、放射光源としての電子蓄積リングの電子
ビームエネルギーを高くする、電子ビーム電流を大き
くする、ウィグラ磁場を高くする、ウィグラポール
数を多くする、分光器の積分反射効率を高くするなど
の方法が知られている。
すると電子蓄積リングが大型化するばかりでなく、放射
エネルギーを供給するRFシステムのパワーが4乗で大
きくなり施設全体が大型化、高コスト化し、病院設置の
ための小型化の要求に反する。 電子ビーム電流を大きくするのは技術的に限界があ
る。 ウィグラ磁場を高くすることにも技術的に限界があ
る。 ウィグラポール数を多くするのは技術的に限界がある
とともに電子蓄積リングの大型化につながる。 分光器の積分反射強度を上げるのには、分光結晶の表
面を研磨する方法があり、この方法は電子蓄積リングを
大型化しないで多量のX線光子を得るようにすることが
できる。現状では上記各施策を複合して行うことが常識
的な対策である。
を得るために光子数を大きくすればよいとされていた。
しかし、本願発明の発明者らの研究により、特に小型の
電子蓄積リングを使用する場合は、放射光が平行光線と
見なすことができなくなるため画像に半陰影ができて診
断画像として問題が生じることが分かった。たとえば、
分光結晶表面を研磨して積分反射強度を上げて光子数を
大きくしても、光源の発散角や光源見込み幅によっては
半陰影が生じる。また、分光結晶表面でのX線散乱角度
の広がりも半陰影に影響を与える。
体および分光器と被写体の距離を大きくして被写体に入
射する放射光X線を平行光線に近くし、さらに被写体と
撮像器の距離を小さくすればよいが、光源や分光器と被
写体を大きく離しすぎるとせっかく小型の電子蓄積リン
グを使用しても施設全体が大きくなり小型化の要請に応
えることにならない。また、被写体と撮像器が近いと被
写体で発生する散乱線のために診断画像の画質が劣化す
る問題がある。
しようとする課題は、放射光を用いた医学用X線撮像装
置、特に病院で冠状動脈造影に使用することができる小
型の放射光X線撮像装置を提供することである。また、
特に、半陰影の発生を抑制して良好なX線画像を得るこ
とができる小型の放射光X線撮像装置を提供することで
ある。
め、本発明の医学用放射光X線撮像装置は、ビームエネ
ルギーが3 GeV以下の電子もしくは陽電子蓄積リング
(以下電子蓄積リングという)に挿入され放射光X線を
発生する挿入光源と、挿入光源からの放射光を受けて分
光する分光結晶と、撮像装置とを備え、分光結晶と撮像
装置の間に被写体を置いてX線撮影する装置であって、
挿入光源における実効光源の幅と実効光源の位置から被
写体まで光路長と分光結晶と被写体との距離に基づき、
放射光X線の分光結晶におけるX線散乱角を加味して、
被写体から映像における半陰影を見込む角を0.6 mrad以
下とすることにより被写体の映像における半陰影を抑制
したことを特徴とする。
リングを構成する電磁石の数を多くし偏向部の電子軌道
の曲率半径を大きくすることで電子ビームのエミッタン
スを小さくすることができ、これにより光源からの放射
光は発散角が小さく被写体に照射するときには実質的に
平行光線とすることができる。小型電子蓄積リングによ
り大型電子蓄積リングで得られるようなX線撮影画像を
取得できるようにしようとする場合は、光子数を確保で
きるように構成するのが普通である。しかし、小型電子
蓄積リングの場合は、どうしても電磁石の数が少なくな
り偏向部の曲率半径も小さくなるので電子ビームエミッ
タンスが大きくなり、光源からの放射光が比較的大きな
発散角を持ち光源のサイズが無視できなくなる。したが
って、そのままで撮影を行うと取得した画像に半陰影が
生じる。この半陰影は、画像にボケを生じさせるので好
ましくない。
学診断の場合、光子数を増加するため分光器に表面を研
磨した分光結晶を用いると、光源でのX線の発散に加え
て、分光結晶でのX線の散乱によりさらに半陰影が増大
する。この半陰影の幅は被写体と撮像器の距離に比例す
るので、この距離を小さくすることで、半陰影を抑える
ことができる。
写体で発生する散乱線が撮像器に相当量入射し画像のコ
ントラストを劣化させる。したがって良質な画像を得る
ためには被写体と撮像器をある程度離さなくてはならな
い。実験の結果、実用に供するためには、被写体と撮像
器の間は500 mm以上に離すことが好ましいことが判っ
た。なお、本願出願人らが出願した特開平07-236
632には、X線グリッドを被写体と撮像器の間に設置
して被写体で発生した散乱線が撮像器に入射するのを抑
える方法が開示されている。
撮影用X線が有する電子揺動方向の光発散角と分光結晶
の表面におけるX線散乱角の和に注目して、この値が0.
6 mrad以下となるように構成したものである。放射光の
平行光化のために電子蓄積リングを大型化しなくても、
ここで注目した角度の和が0.6 mrad以下であれば、被写
体と撮像器の距離が500 mm程度の場合に実用に耐える鮮
明なX線撮影画像を得ることができることが実証されて
いる。なお、分光結晶として結晶の表面を研磨して積分
強度を強化した分光結晶を使用する場合は、分光結晶表
面のX線散乱角がほぼ0.35 mradであるので、撮影用X
線の光発散角が電子揺動方向において0.25 mrad以下で
あるように構成することが好ましい。
らない場合にも、光源の実効的なサイズが小さければ光
源と分光器と被写体の位置関係を調整することにより半
陰影を小さくすることができる。すなわち、発散角が大
きくても被写体から光源を見込む方向以外から直接光が
被写体に入射することはないから、光源と被写体の間の
距離を大きくすることにより光源見込み角を小さい値に
すればよい。ただし、分光結晶で散乱された光は半陰影
の大きさに直接影響を与えるので、散乱角について補償
して、被写体から映像における半陰影を見込む角が0.6
mrad以下になるようにすれば、目的に適合した半陰影が
小さなX線撮影画像を得ることができる。
は、実効光源の幅をWs(単位mm)、実効光源の位置か
ら被写体まで光路長をLsa(単位m)、分光結晶表面に
おけるX線散乱角を2θm(単位mrad)、分光結晶と被
写体との距離をLma(単位m)としたときに、(Ws−
Lma×2θm)/Lsa+2θm<0.6、あるいは光源と
被写体との距離Lsaに注目すると、Lsa>(Ws−2θm
Lma)/(0.6−2θm)なる関係を満たすように配置す
ることが好ましい。なお、研磨した分光結晶を使うとX
線散乱角2θmが0.35 mradになるので、この値を使用す
ると上記不等式はLsa>4×(Ws−0.35Lma)とな
る。
において研磨した分光結晶を使う場合は、放射光X線に
おける33 keV以上の成分の光子数が、0.1%バンド幅で
1秒あたり3×1013 個以上あればよい。S/N比をいろ
いろに変えたときの血管の影の見え方を検討した結果、
医師の要求する重量濃度1%の直径1 mmの血管が判別で
きる画像を得るためにはS/N比は60程度あればよいこ
とが分かった。
X線光子数Iが3600程度必要であり、心臓診断が可能な
130 mm×80 mmの大きさを有する心臓診断画像を得るた
めに撮像器前で必要となる光子数は約9×108個とな
る。ただし、画素の大きさは0.2mm×0.2 mmであるとす
る。冠状動脈造影は撮影対象が動く心臓であるので、心
臓の拍動の影響を受けないために4 msecで1枚の画像を
得る必要がある。そこで、光源から撮像器の間における
減衰を考慮に入れ、さらに分光結晶の積分反射強度を加
味すると、光源で必要な光子数は約3×1013個となる。
における挿入光源は超伝導電磁石で構成されたウィグラ
であることが好ましい。超伝導電磁石を使用することに
より強力な磁場を発生させることができるので、高いエ
ネルギーを持ったX線の光子数を増大することができ
る。さらに、被写体の位置と撮像装置の間にX線グリッ
ドを挿入することにより被写体と撮像装置の間の距離を
小さくでき半陰影をさらに抑制することができる。X線
グリッドは、X線透過率の低い材料とX線透過率の高い
材料を交互に層状に張り合わせたもので、積層面に平行
に入射する直接線は透過しやすく、角度を持って入射す
るX線は殆ど吸収されるようになっている。従って、撮
像器の前にX線グリッドを設置すると、被写体と撮像装
置の間の距離が小さくても被写体内で散乱したX線は撮
像器に到達しにくく鮮明な撮影画像を取得することがで
きる。
X線撮像装置を、図面を用い実施例に基づいて詳細に説
明する。図1は本実施例の医学用放射光X線撮像装置の
全体構成を示す模式図、図2は本実施例における被写体
を挟んだ部分の配置例を表すブロック図である。
される電子2を電子蓄積リング3の電子周回軌道4に投
入して偏向電磁石5、5・・・により当該周回軌道を周
回的に走行させる。電子蓄積リング3中の所定の偏向電
磁石5、5間の直線部にウィグラー等の挿入光源6が介
装されている。電子蓄積リング3を周回する電子は、挿
入電源6を通過する際に波長幅の狭い強いX線を含んだ
放射光7を発生する。
の分光結晶によりブラッグ反射をして単色のX線10と
なり、患者11の心臓部を透過して撮像装置に入射す
る。撮像装置はイメージインテンシファイア12とCC
Dカメラ13からなる。イメージインテンシファイア1
2はX線を可視光に変換する装置で、可視光に変換され
た映像をその後ろに設置されたCCDカメラ13で読み
込む。CCDカメラ13より出力された画像信号は画像
処理装置14に記録処理され診断画像として保存され
る。
分光器9の間に設置された回転シャッタ8は、撮像に必
要な露出時間だけX線を通過させ、それ以外の時間はX
線を遮蔽するX線照射制御装置である。このようなシャ
ッタ装置を用いることで、不要なX線被曝を最小限に抑
制することが可能となる。
入された挿入光源6から放出された強いX線を含む放射
光7は回転シャッタ8を透過して分光器9に導かれ、単
色のX線10となり、被写体である患者の心臓部11を
透過して撮像装置に入射する。患者の血管にX線に対し
て透過選択性がある造影剤を注入しておくと、撮像装置
で取得する心臓部分の映像に冠状動脈の影が得られるの
で、診断に利用することができる。
である。ヨウ素は骨や軟部組織より大きな吸収係数を持
つので、静脈注射によりヨウ素造影剤を血液中に注入し
てX線撮影すると血管部分が浮き出た画像を得ることが
できる。また、ヨウ素は光エネルギー33.17 keV付近に
X線の質量吸収係数が大きく変化するK吸収端がある
が、このK吸収端付近では骨や軟部組織は吸収係数の変
化が殆ど無い。そこで、K吸収端の直上と直下の2種類
の単色X線で撮像を行い両者の差分を取ることにより、
ヨウ素造影剤の含まれる血管を抽出して冠状動脈の鮮明
な画像を得るK吸収端差分法が開発されている。さら
に、最近の研究により、K吸収端直上の単色X線のみで
撮影を行っても診断可能な良好な画像が得られることが
分かっている。K吸収端直上のX線による冠状動脈造影
では、心臓の拍動による画像のぶれをなくすために1枚
の画像を撮る露出時間は4 msec程度がよいとされる。
7は一般に水平方向の幅は広くても垂直方向の厚みは小
さいので、心臓部分を覆うような2次元ビームを得るた
めには垂直方向を拡大する必要がある。そこで、本実施
例では分光器9の分光結晶における非対称反射を利用し
た方法を用いて放射光ビームを拡大する。図3はこの方
法における分光結晶の作用を説明する図面である。
結晶表面22から非対称角αだけ傾くように切り出した
結晶20を使用する方法で、厚みwの入射X線7が表面
22に対して角度α傾いた反射面21に角度θで入射し
て反射するとすれば、下の式(1)に表した拡大率W/
wで垂直方向に拡大され、大きな厚みWを持った単色X
線ビーム10が得られる。 W/w=sin(θ+α)/sin(θ−α) (1) この手法により、分光結晶で反射された単色X線は所定
の幅と厚みを持った面ビームとなり、冠状動脈造影を二
次元動画像撮影で行うことが可能となる。
内で散乱するが、この散乱線が撮像器に相当量入射する
と画像のコントラストを劣化させる。特に被写体と撮像
器が近い場合には、被写体の影を生成する直接線に対す
る散乱線の割合が大きくなり画像の観察が困難になる。
このような困難を解決するため、本実施例の医学用放射
光X線撮像装置にも、撮像器イメージインテンシファイ
ア12の前にX線グリッド16を設置することができ
る。
開平07-236632により開示したような、X線透過率の低
い材料とX線透過率の高い材料を交互に層状に張り合わ
せたもので、積層面に平行に入射する直接線は透過しや
すく、角度を持って入射するX線は殆ど吸収されるよう
になったグリッドなどを使用すればよい。X線グリッド
を被写体と撮像器の間に設置すると、被写体内で散乱し
たX線は撮像器に到達しにくく直接線のみが撮像器に入
射するので、鮮明なX線撮影画像を取得することができ
る。
らの出射角度の分布が大きいので、被写体と撮像器の距
離を大きくすることによっても散乱線が撮像器に入射し
にくくすることができる。被写体と撮像器の距離を変え
て散乱線と直接線の比率を測定した例を図4に示す。図
4は、横軸に被写体撮像器間距離、縦軸に散乱線対直接
線比率を示し、参考にX線グリッドを用い被写体と撮像
器の距離を約125 mmにしたときの値をプロットしてあ
る。散乱線対直接線比率は被写体と撮像器の間が離れる
につれ指数関数的に減少することが分かる。
ときと同じ程度に散乱線の影響を抑えるには、被写体と
撮像器の距離を500 mm以上にすればよいことが分かっ
た。なお、被写体と撮像器の間に距離を取る方法とX線
グリッドを用いる方法を併用した場合には、より簡単な
X線グリッドを用いて装置間の距離をある程度短くする
ことができることは言うまでもない。
を除去しても、放射光が発散角を持ち、また分光器で散
乱があるとX線を平行光線と見なすことができなくなる
ため画像に半陰影ができる。半陰影が大きいと、血管の
輪郭が曖昧になり細い血管の像を識別できなくしてしま
うので診断に用いることが困難になる。大型の電子蓄積
リングを利用する場合は発散角が小さく光子数が大きい
良質な放射光が得られるので半陰影が問題にならない
が、小型の電子蓄積リングを使用する場合に、特に光子
数を増加させるように電子ビームエネルギーを大きくす
ると発散角が大きくなりがちで半陰影の発生が無視でき
なくなる。
体および分光器と被写体の距離を大きくして被写体に入
射する放射光X線を平行光線に近くし被写体と撮像器の
距離を小さくすればよいが、光源や分光器と被写体を大
きく離しすぎるとせっかく小型の電子蓄積リングを使用
しても施設全体が大きくなり小型化の要請に応えること
にならない。また、被写体と撮像器が近いと被写体で発
生する散乱線のために診断画像の画質が劣化する問題が
ある。
ある。幅Wsを有する光源Sからの光を被写体Aに照射
して撮像器のスクリーンDでその影を生成させると、光
源Sに有限の幅Wsがあるため、スクリーンD面にでき
る被写体Aの影の周囲に幅Wdの半陰影が生じる。半陰
影は被写体位置から光源を見込む角σに関係し、半陰影
の幅Wdは、光源の幅Wsに比例し、被写体Aと撮像器
の距離Ladに比例し、光源Sと被写体Aの距離Lsaに逆
比例するので、下の式(2)で表される。 Wd=Ws×Lad/Lsa=Lad×σ (2)
源がどれだけ大きくても、被写体のある点に直接に到達
するのは光源中の点領域から発生した直達X線だけであ
る。しかしX線が発散角を有するときは、被写体のある
点から光の投射方向に発散角を見込んだときに光源上に
投影される領域から放射されるX線がその点に到達する
ことになる。このように、光源の発散角Σが被写体から
光源を見込む角σより小さい場合は、被写体のある点に
直接入射する光はその点から発散角Σで見込む範囲内の
光源から放射される光だけであるから、(2)式は Wd=Lad×2Σ と書くことができる。
小さくすることで半陰影を抑えることができる。しか
し、先に説明したとおり、被写体で発生する散乱線の影
響を排除するため、X線グリッドを利用しない場合を考
えると被写体と撮像器の距離を500 mm以上取る必要があ
る。したがって、光源を見込む角σや発散角Σが大きけ
れば半陰影の生成を無視することができない。また、放
射光源で発生したX線を利用する医学診断の場合、X線
ビームの厚さを確保するため分光器を用いるので、分光
結晶でのX線の散乱により半陰影が増大する。特に、積
分反射強度を上げるため表面を研磨した分光結晶を使用
するとX線散乱角がさらに大きくなり画像の半陰影が大
きくなる。
散乱角を考慮に入れた実効的な光源に基づいて、半陰影
を評価する方法を説明する図面である。まず、図6を用
いて、放射光の発散角Σが十分小さくて、対象とする被
写体Aのエッジに直接到達するX線は光源Sの一部Sp
から放射されるX線だけである場合について説明する。
光源Sと被写体Aの間に散乱角θmを有する分光結晶M
が介装されているとすれば、被写体Aのエッジに照射す
るX線は光源Spから直達するX線に分光結晶Mで散乱
した分が加わったものになる。
Σと散乱角θmを加えて2倍しただけの角度θを見込む
等価光源Smが分光結晶Mの位置にあって、この等価光
源Smから前記エッジに照射すると考えることができ
る。光源Sから等価光源Smに到達するX線は発散角Σ
を有するから、等価光源Smの境界から角度Σで引いた
直線が光源Sと交わる点で囲まれた実効光源領域Wsの
内部から放射されるX線であって、この領域Wsの外側
から放射されたX線は被写体Aのエッジを照射すること
はない。
は分光結晶Mと被写体Aの距離である。なお、放射光の
発散角、分光結晶における散乱角、また光源サイズなど
は統計的な現象で強度に分布を有するため、その値とし
てのΣ、θm、Wsなどは例えば標準偏差値などで表現
される値であり、どの程度の確実性を要求するかによっ
て使用すべき値が変わることに注意しなければならな
い。
に生じる幅Wdの半陰影の見込み角2θpは放射光の発
散角Σの2倍と分光結晶の散乱角θmの2倍を加えたも
のになる。 2θp=2Σ+2θm (4) Wd=Lad×2θp=Lad×(2Σ+2θm) (5) ここで、Ladは被写体AとスクリーンDの距離である。
したがって、分光結晶の散乱角が与えられているときに
半陰影を小さくするためには発散角Σを小さくすればよ
い。
光源Sを用いた場合について説明する。X線の発散角Σ
が大きくて光源Sの全ての領域から放射される光が被写
体Aの輪郭に到達する場合は、スクリーンDに生じる幅
Wdの半陰影の見込み角2θpは、放射光の発散角Σに
よらず、光源Sと分光結晶Mと被写体Aの配置関係と光
源Sの大きさWsにより決まる。すなわち、半陰影の見
込み角が2θpであるとすると、半陰影の最外領域を形
成するX線は、分光結晶Mにおいて散乱角θmで内側に
屈折した光線であるから、分光結晶Mに対する入射角が
(θp−θm)の光線である。したがって、幅Wd=L
ad×2θpの半陰影を形成する光源の幅Wsは、 Ws=Lsa×(2θp−2θm)+Lma×2θm (6) となる。
の解析に使用したものと同じものである。したがって、
半陰影を小さくするためには、光源Sのサイズを小さく
すること、光源Sから被写体A間での距離を大きくする
こと、分光結晶Mから被写体A間での距離を大きくする
ことが効果があることが分かる。式(7)により、これ
らの効果を定量的に把握することができた。
pが小さければ小さいほど画像中の半陰影が小さくなっ
て良質なX線撮像画面を得られる。しかし、放射光の発
散角Σを無限に小さくすることは困難であるし、また放
射光源を実質的に点光源とすることもできない。そこ
で、心臓病診断に使える程度に鮮明なX線画像が得られ
る半陰影の見込み角2θpの限界を知ることにより、現
実的な設備を構成することができる。発明者らは、血管
のモデルを実機で測定する実験とシミュレーションを行
って、臨床的な許容範囲を確定することができた。
のアクリルブロックに血管を模して太さ1 mmないし5 mm
の細孔を穿ち、この細孔にヨウ素重量濃度5%の造影剤
を充填したものである。血管モデルを撮像器の前500 mm
の位置に置いてX線撮像する場合について、実験とシミ
ュレーションを行った。使用したシミュレーション手法
は実験値とよく合致することが確認されている。
た画像で、太さ1 mmの血管が形成された厚さ160 mmのア
クリルブロックに33.17 keVのX線を照射して撮像した
ものの一部である。図8(a)は2θp=0.4 mrad、図
8(b)は2θp=0.6 mrad、図8(c)は2θp=1.
0 mradの場合である。また、図9は図8の画像について
血管部を横断する方向に隣接画素同士の濃度微分値を取
ったグラフで、図9(a)、(b)、(c)はそれぞれ
図8(a)、(b)、(c)に対応する。
血管の状態を正しく判定することができる。2θp=0.
6 mradのときは血管外部のノイズと紛らわしいが連続し
た像を観察することにより、経験の深い医者なら血管の
状態を正しく判断することができる。しかし、2θp=
1.0 mradの場合は、血管の境界が判然としないので血管
の存在は認識できても形状を正確に知ることは困難であ
る。このように、半陰影の見込み角2θpを変化させて
得られる画像を観察することにより、半陰影の見込み角
が0.6 mrad程度まででなければ診断が可能な鮮明度を有
する画像は得られないことが分かった。
するためには、式(4)あるいは式(7)で得られる半
陰影の見込み角2θpを0.6 mrad以下にすればよい。さ
て、放射光医学利用の冠状動脈造影では、積分反射強度
を上げて光子数を確保するために表面を研磨した分光結
晶が用いられる。表面を研磨した分光結晶では表面が乱
れているためエッチング結晶に比べX線の散乱が大き
い。トリスタン入射蓄積リング(ARリング)における
実験結果によれば、#1200の研磨剤で研磨したSi (311)
面のX線散乱角の倍角2θmは0.35 mradである。
磁石配置を工夫して電子ビームのエミッタンスを小さく
したり、光源点のβ関数を大きくすることにより、33.1
7 keVの放射光X線の発散角の倍角2Σが0.25 mrad以下
になるようにすれば、半陰影見込み角は0.6 mrad以下と
なって、診断に利用できるような良好なX線画像を得る
ことができる。なお、近年研究が進んでいるダンプトキ
ャビティを利用しても、低エミッタンスかつ大電流の電
子蓄積リングを形成することが可能である。
以上ある場合でも、式(7)に従って、(1)実効光源
サイズを小さくする、(2)光源点から被写体までの光
路長Lsaを長くする、(3)分光結晶と被写体との距離
Lmaを大きくする、ことにより半陰影の見込み角2θp
を0.6 mrad以下にすれば、診断に使用できるX線画像を
得ることができる。
なる。したがって、分光結晶における散乱角の倍角2θ
mが0.35 mradのとき、半陰影の見込み角2θpを0.6 m
rad以下にするためには、 Ws<0.25Lsa+0.35Lma (9) であればよい。
ームが振動する間に光が放射されるので、上記の実効光
源サイズは、光源点での電子ビームのサイズと挿入光源
磁場による電子ビームの揺動幅の和になる。したがっ
て、電子ビームのサイズと揺動幅を小さくすることによ
り光源サイズが小さくなる。ただし、電子ビームエネル
ギーの小さい小型の電子蓄積リングを用いて、ここに磁
場の強い超伝導ウィグラを設置したり、蓄積電流値を大
きくするため電子ビームサイズを大きくしたりして、医
学利用放射光リングに好ましい条件を整えようとすれ
ば、光源サイズWsを闇雲に小さくすることはできな
い。
源点から被写体までの光路長Lsaが、 Lsa>(Ws−Lma×2θm)/(2θp−2θm) (10) であれば半陰影の見込み角2θpが所定の値以下にな
る。この場合、利用される具体的な数値、2θm=0.35
mrad、2θp=0.6 mradを代入すると、 Lsa>4×(Ws−0.35Lma) (11) となり、この条件を満たせば半陰影の見込み角2θpが
0.6 mrad以下になる。
は、 Lma>(Ws−Lsa×(2θp−2θm))/2θm (12) となり、具体的な数値を代入すると、 Lma>(Ws−0.25Lsa)/0.35 (13) であれば、半陰影の見込み角2θpが0.6 mrad以下にな
り、明瞭なX線撮像画面を得ることができる。
7 keVのX線を1枚の分光結晶により分光する装置を使
用する場合は、分光結晶通過後のX線は水平入射方向に
対して13度偏向するので、分光結晶と被写体の距離Lma
が大きくなると被写体の位置が高くなって施設配置に支
障を来すことになる。したがって、距離Lmaを3 mから4
m程度にとるのが一般的である。例えば、分光結晶と被
写体の距離Lmaを4 mとし、実効光源サイズWsを10 mm
としたとき、#1200の研磨剤で研磨したSi(311)面のX線
散乱角の倍角2θmは0.35 mradであるので、光源点か
ら被写体までの光路長Lsaは34.4 m以上にすればよい。
は、量子ノイズに関しても注意しなければならない。発
明者らは、血管モデルを用いた実験とシミュレーション
を行って、臨床的な許容範囲を確定することができた。
血管モデルは、半陰影の見込み角について解析するとき
に使用したものと同様に、人体を模した厚さ160 mmのア
クリルブロックに穿った太さ1 mmの血管を模した細孔に
ヨウ素重量濃度1%のヨウ素造影剤を充填したものであ
る。画素の大きさが0.2 mm×0.2 mmの撮像器の前に血管
モデルを置いて、S/N比が10〜100の範囲で変化する
ように光子数を調整した33.17 keVのX線が均一に画面
に入射するようにしてX線撮像する場合について、半陰
影の見込み角2θpについて行ったと同様のシミュレー
ションを行った。シミュレーションは実験とよく合致す
ることが確認されている。
画像について血管部を横断する方向にプロファイルを取
ったグラフで、血管モデルに33.17keVのX線を照射して
撮像したもののうち代表的な一部である。図10(a)
はS/N=100、図10(b)はS/N=60、図10
(c)はS/N=30の場合のプロファイルで、横軸に画
像横断方向、縦軸に任意スケールで濃度を取っている。
各グラフの中央に現れた血管部分を示すへこみが大きけ
れば鮮明な血管像が得られていることになる。
血管が鮮明で状態を正しく判定することができる。図1
0(a)からも血管位置が周囲より顕著に黒化している
ことが読みとれる。S/N=60のときは血管外部のノイ
ズと紛らわしいが経験の深い医者なら正しく判断するこ
とができる。S/N=30の場合は、血管がノイズに紛れ
て形状を正確に知ることは困難で、図10(c)のプロ
ファイルでも血管部分が埋没して判定することは困難で
ある。このように、S/N比をいろいろに変えたとき得
られる画像を観察することにより、S/N比が60程度ま
でであれば診断が可能な鮮明度を有する画像が得られる
ことが分かった。
4)で表され、1個の画素に入射する光子数Iの平方根
に比例する。 S/N=I/√I (14) (14)式より、S/N比60を得るためには33.17 ke
VのX線光子数Iが3600必要であることが判る。心臓診
断画像は、心臓全体を捉えるのに十分な150 mm×150 mm
以上のサイズであることが理想であるが、高エネルギー
加速器研究機構でも確認された通り、臨床応用レベルで
は130 mm×80 mmでも診断可能である。そこで、この画
面サイズに対応するものとし、画素の大きさが0.2 mm×
0.2 mmである撮像器の前で必要な総光子数を算定する
と、 3600×(130×80)/0.2×0.2 = 9.36×108 となる。
器の間で、 アクリル160 mm(被写体を想定)での減衰 5.26×10-3 アルミニウム窓1 mmでの減衰 0.79 分光器の反射 0.6 を原因とする減衰を受ける。ただし、分光器の反射率と
して表面を#1200の研磨剤で研磨したシリコン結晶(311)
面の値を用いた。これらの減衰を考慮すると、光源で必
要な光子数は、 9.36×108/(5.26×10-3×0.79×0.6) = 3.75×1011 となる。
め、心臓の拍動の無視できる4 msecで1枚の画像を得る
必要がある。上記の光源で必要な光子数を4 msecで得る
ためには、光源では 3.75×1011/(4/1000) = 9.38×1013 [photons/sec] の割合で光子を発生する必要がある。分光結晶に表面を
#1200の研磨剤で研磨したシリコン結晶を用いると、反
射のバンド幅が0.3%となるので、0.1%バンド幅ではその
1/3の 3.13×1013 [photons/sec/0.1%b.w.] あればよいことになる。以上の結果から、挿入光源で発
生する放射光に含まれる33 keV以上のX線の光子数が0.
1%バンド幅で1秒当たり3×1013 個以下にならないよ
うに電子蓄積リングや挿入光源を構成すれば、闇雲に光
子数を増やさなくても、量子ノイズが少なく診断に利用
することが可能な画像を得ることができる。
り、各地の医療機関に実際に設置して利用できるような
小型で高性能な医学用放射光X線撮像装置を提供するこ
とができるようになり、アンジオグラフィ等の放射光を
用いた診断装置により多くの患者が正確な診断を受ける
機会を与えることが可能になった。
について全体構成を示す模式図である。
を表すブロック図である。
面である。
対直接線比率の関係を表すグラフである。
に映像中に現れる半陰影の発生機構を表す図面である。
像中に現れる半陰影の発生機構を表す図面である。
陰影発生機構を表す図面である。
X線撮影した画像を例示した図面である。
ラフである。
ルをX線撮影した画像における画像濃度のプロファイル
を示したグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 ビームエネルギーが3GeV以下の電子
もしくは陽電子蓄積リングと、該電子もしくは陽電子蓄
積リングに挿入され放射光X線を発生する挿入光源と、
該挿入光源からの放射光を受けて分光する分光結晶と、
撮像装置とを備え、前記分光結晶と前記撮像装置の間に
被写体を置いてX線撮影する装置であって、前記挿入光
源における実効光源の幅Ws(単位mm)と該実効光源
の位置から前記被写体までの光路長Lsa(単位m)と前
記分光結晶と前記被写体との距離Lma(単位m)に基づ
き、前記放射光X線の前記分光結晶の表面におけるX線
散乱角2θm(単位mrad)を加味して、該被写体から映像
における半陰影を見込む角を0.6mrad以下として
該半陰影を抑制し、さらに、 (Ws−Lma×2θm)/Lsa+2θm<0.6 なる関係を満たすように機器を配置することを 特徴とす
る医学用放射光X線撮像装置。 - 【請求項2】 前記関係式に代えて、 Lsa>(Ws−2θmLma)/(0.6−2θm) なる関係を満たすように配置することを特徴とする請求
項1記載の医学用放射光X線撮像装置。 - 【請求項3】 前記分光結晶が結晶の表面を研磨して積
分反射強度を強化した分光結晶であって、前記撮影用X
線の光発散角が前記方向において0.25mrad以下
であることを特徴とする請求項1または2記載の医学用
放射光X線撮像装置。 - 【請求項4】 前記放射光X線における33keV以上
の成分の光子数が、0.1%バンド幅で1秒あたり3×
1013個以上あることを特徴とする請求項1から3の
いずれかに記載の医学用放射光X線撮像装置。 - 【請求項5】 前記挿入光源が超伝導電磁石で構成され
ることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の
医学用放射光X線撮像装置。 - 【請求項6】 前記被写体と前記撮像装置の間の距離が
ほぼ500mmであることを特徴とする請求項1から5
のいずれかに記載の医学用放射光X線撮像装 置。 - 【請求項7】 前記被写体の位置と前記撮像装置の間に
X線グリッドを挿入して前記被写体と前記撮像装置の間
の距離を短くし、前記半陰影をさらに抑制することを特
徴とする請求項1から5のいずれかに記載の医学用放射
光X線撮像装置。
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---|---|---|---|
JP21828899A JP3280939B2 (ja) | 1999-08-02 | 1999-08-02 | 医学用放射光x線撮像装置 |
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JP21828899A JP3280939B2 (ja) | 1999-08-02 | 1999-08-02 | 医学用放射光x線撮像装置 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP21828899A Expired - Fee Related JP3280939B2 (ja) | 1999-08-02 | 1999-08-02 | 医学用放射光x線撮像装置 |
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