JP3268094B2 - 吸音体およびその施工方法 - Google Patents

吸音体およびその施工方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は樹脂発泡粒子を用いた吸
音体およびその施工方法に関する。詳しくは、土木、建
築、空調機器、及び、産業用機器の騒音防止に有効な樹
脂発泡粒子の成形体を用いた吸音体およびその施工方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】吸音材料としては、音のエネルギーが細
孔状の材料内部で空気を振動させ、細孔内壁面との摩擦
により熱損失することを利用する多孔質体、板や膜の振
動へと変換することを利用する板状体や膜状体、共鳴現
象を利用した穴あき板体等の種々の材料が利用されてい
る。中でも多孔質成形体、即ち、具体的にはグラスウー
ルやロックウール等の繊維集合体や連続気泡構造を有す
る軟質ポリウレタン発泡成形体、或いは、セラミック粉
砕粒子を固めて焼成した多孔質成形体は吸音効果が得ら
れ易い点でその利用は多い。
【0003】しかしながら、これらのうちセラミック多
孔質成形体は軽量性や価格上の点で不利なため高温や環
境条件上の耐久性が求められる特殊な用途に限定されて
いる。また、軟質ポリウレタン発泡成形体は、その製造
条件により気泡膜の破壊状態が変化するため安定した吸
音効果を得られ難い。そのため最も一般的には、安価性
や軽量性に優れるグラスウールやロックウールが汎用さ
れている。
【0004】ところで、こうした多孔質成形体は高音、
即ち高周波数領域の音に対しては優れた吸音効果を持つ
ものであるが、低音、即ち低周波数の音に対しては吸音
効果が薄く、吸音材料の厚みを大きく取ったり、或いは
音波を反射する壁(以下、剛壁と呼ぶ)と吸音材料との
間に背後空気層を大きく設けて対応せざるを得なかっ
た。通常、剛壁から騒音の1/4波長の所に多孔質成形
体を置くと最も大きい吸音率が得られる。例えば、20
0Hz、100Hzの騒音に対しては、それぞれ43
0、860mmの空間厚みが必要となる。そのため多大
な空間容積を必要とするものであり、低音の騒音防止対
策としては実用性に薄れるものであった。
【0005】一方、グラスウール等の繊維集合体では壁
の内外に温度差がある場合には結露現象による吸水や、
雨水の侵入による吸水によって吸音性能が劣化する。さ
らにこれら繊維集合体自体では柔軟なため、所望の形状
に施工する場合にはパンチングメタルや治具等の副資材
を用いて取付施工を行う必要があり、その上、作業時に
皮膚を刺激したり、吸入による人体に有害な悪影響を及
ぼす等の問題を有するものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、騒音
の発生源に対して、吸音性能、施工に必要な空間容積、
及び施工の作業性の面から効率的な騒音防止対策を計る
こと、具体的には低周波数領域の吸音性能を高めること
で背後空気層を含めた吸音施工に必要な空間寸法を縮小
すること、施工時の作業を簡略化し作業性を高めるこ
と、環境条件の影響(特に吸水現象)による吸音性能の
低下問題を排除すること等を可能にする吸音体の施工方
法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は樹脂発泡粒子の
多数個が粒子間に空隙を残して互いに一体化した成形体
を用いることにより、従来の吸音体が持つ上記欠点を改
善するものである。すなわち、本発明の第1は樹脂発泡
粒子の多孔質成形体において、平均粒子径が1.5〜
5.5mmの樹脂発泡粒子の多数個が隣接する粒子表面
の一部で面接合し、全体容積に対して15〜40%の容
積空隙率を有して一体化されており、厚み10〜100
mmで測定したときに、100〜3000Hzの周波数
領域に吸音率30%以上のピーク周波数を有することを
特徴とする樹脂発泡粒子の多孔質成形体からなる吸音体
であり、その第2は第1の多孔質成形体からなる吸音体
を施工するに際し、該吸音体の肉厚みと背後空気層の厚
みとの和d(m)と騒音源の周波数f(Hz)とが、下
記(1)式及び(2)式を満たす条件で該吸音体を設置
することを特徴とする吸音体の施工方法である。
【0008】 1.03・(1/d)1.7≦f≦17.16・(1/d)1.7 (1) 100≦f≦285・(1/d)0.48 (2) まず、本発明の第1について説明する。本発明で用いら
れる吸音体は厚み10〜100mmで測定したときに、
100〜3000Hz領域に吸音率が30%以上のピー
ク周波数を有する樹脂発泡粒子の多孔質成形体であるこ
とが肝要である。ピーク周波数が3000Hzを越える
ものは低音の吸音性が低下し本発明の目的に適さない。
また、ピーク周波数が100Hz未満のものは得ること
が難しい。ここに吸音率とは、剛体壁に吸音体が密着し
た状態で、JIS A 1405に規定された垂直入射
吸音率を言い、背後空気層を有する場合、つまり、音波
を反射する剛体壁と吸音体との間に空気層を設定して測
定された値ではない。本発明の吸音体では背後空気層を
設けることにより吸音率のピーク周波数は低周波数側に
移行し、ピーク吸音率は増加する傾向にある。また、本
発明の吸音体は、これまで吸音体として樹脂発泡粒子の
多孔質成形体を用いたものがなかったのに対し、吸音体
として樹脂発泡粒子の多孔質成形体を用いたことを特徴
とする。
【0009】上記の樹脂発泡粒子の多孔質成形体を用い
ることによる効果について、図を用いて説明すると以下
のとおりである。まず、図1は本発明で用いる多孔質成
形体の断面構造例の一つを示す拡大様式図である。1は
発泡粒子の部分、2は空隙部分を示す。本発明で用いる
樹脂発泡粒子の多孔質成形体は上記第一の要件を満たす
ため、樹脂発泡粒子1の多数個が隣接する粒子表面の一
部で面接合して一体成形されており、その粒子間に空隙
部分2が形成されている。この空隙部分2は成形体厚み
方向には一定形状を有してはおらず、次の断面ではその
面積が広く、狭く、或いはその形状を違えた状態で連な
り、または屈曲して連なり、この空隙部分2が成形体内
部の多方向に道幅の割には急激な凹凸状、或いはジグザ
グ状に入り組んだいわゆるサウンドストリーム形構造の
通路を形成することになる。このため入射した音波は上
記音道を通過する際に多重反射や干渉による減衰効果を
も発現することになる。
【0010】本発明に用いる樹脂発泡粒子の多孔質成形
体も多孔質体の基本的性質を有しており、音波が細孔状
の吸音体内に侵入すると空隙内の空気が振動し、その際
に空気と空隙の内壁面との間で摩擦を生じ、熱損失とな
って音のエネルギーが消費される。加えるに本発明では
空隙を形成する内壁材料が多数の独立気泡構造からなる
樹脂発泡粒子で構成され、内壁表面は非常に薄い膜を形
成しているため音圧エネルギーを受けて膜の振動へと変
換する機能を有し、即ち、低周波数の吸音性に優れた効
果を持つことになる。しかも極めて多数個の樹脂発泡粒
子からなる成形体であるため相乗的に低音域の吸音性が
向上される。
【0011】また、本発明の吸音体で用いられる樹脂発
泡粒子の成形体においては、平均粒子径が1.5〜5.
5mmの樹脂発泡粒子の多数個が隣接する粒子表面の一
部で面接合し、全体容積に対して15〜40%の容積空
隙率を有して一体化していることが好ましい。以下これ
らの要件について説明する。発泡粒子における空隙の形
状を規定する第一の因子は、その空隙を形成する粒子の
大きさであり、樹脂発泡粒子の成形体の平均粒子径は
1.5〜5.5mmの範囲であることが好ましい。これ
により、サウンドストリーム形の通路、即ち音道の幅が
決定される。粒子径が5.5mmを越えると吸音体とし
て受音する単位面積当たりの細孔空隙の個数が低下する
と共に、全容積中の空隙の内壁総面積が低下し、音圧エ
ネルギーを摩擦損失に変換する機能が低下し吸音性能が
損なわれる。粒子径が1.5mm未満であると後述する
製造方法との関係から吸音体の容積空隙率が低下し、吸
音性能が低下すると共に、吸音体の芯部の粒子を熱接着
することが難しく肉厚みの厚い成形体の製造が困難とな
る。こうした点から本発明の樹脂発泡粒子の平均粒子径
は1.5〜5.5mmが好ましい。更に好ましくは2〜
4mmである。
【0012】なお、吸音体を構成する樹脂発泡粒子の粒
子径分布も容積空隙率に影響し、吸音性能に影響してく
る。粒子径の大きな粒子と小さな粒子が混在すると大き
な粒子の間隙に小さな粒子が取り込まれるため上記サウ
ンドストリーム形の通路を塞ぐことがあったり、容積空
隙率が低下することがある。特に、大粒子と小粒子の径
の比が小さな値の場合、加えるにその存在割合が特定の
関係にある場合(大粒子/小粒子=6/4)にはこの現
象が著しく、吸音率の低下が起こる。
【0013】本発明では使用に供する粒子群内で最大粒
子径と最小粒子径との比の値が0.3〜0.9に取るこ
とが好ましい。すべての粒子径が同一であれば型内に充
填された場合に細密充填となり、隣接する粒子同士が面
接合して形成される空隙の割合が低くなり、吸音性能に
とって好ましくない。また、本発明で用いられる吸音体
において、音波の反射や干渉を効果的に発現させるには
道幅が周期的に増減した導波路が三次元的に入り組み連
通した構造となることが好ましく、粒子間の接合が点状
ではなく面状の接合を成し、かつ、粒子間に形成される
空隙を全容積に対して15〜40%の容積空隙率とする
ことが好ましい。
【0014】空隙の形状を規定する第二の因子は、樹脂
発泡粒子が互いに隣接する粒子と面接合することであ
る。これは隣接する粒子間の接着強度を高め成形体とし
ての機械的強度を発現させるために重要なことである
が、吸音性能の面からも好ましいと考えられる。空隙に
侵入した音波は種々な方向に進行し、反射散乱を繰り返
して減衰していくが、空隙を形成する粒子間が点状に接
合している場合には面接合している場合と比べ音波が反
射される確率は低くなる。多重反射の頻度は粒子間が面
状に接合することで増加する。これは、種々の方向から
入射してくる音波を受け、壁表面を形成している樹脂発
泡粒子の表皮膜が振動エネルギーに変換する確率も高ま
り、また、多重反射の頻度が増加することにより減衰効
果も発現される。つまり、互いに連通する空隙ではある
が進行する音波にとって袋小路となる通路を多数形成さ
せるためである。
【0015】本発明では、このような粒子間の面接合の
度合いが容易に調整できることも特徴である。即ち、吸
音体を成形する際に膨張能を有する樹脂発泡粒子を用い
ることにあり、これらを金型に充填し、加熱して接合す
る際に発泡粒子が元の容積の1.08〜1.41倍の容
積となるよう加熱膨張させることにより型内の粒子が互
いに押し合いながら面接合に至り、上記空隙形状を持つ
吸音体が得られる。
【0016】また、吸音性能に大きな影響を与えるもの
として容積空隙率がある。多孔質吸音体の容積空隙率も
吸音性能に影響を及ぼすが、本発明においては樹脂発泡
粒子の多数個が接合してなる吸音体であるため、15〜
40%の容積空隙率にすることが好ましい。容積空隙率
が40%を越えると吸音成形体しての機械的強度が低下
し、実質的に成形体としての使用が難しくなる。容積
隙率が15%未満であると厚みを100mmまで増加し
ても吸音率が30%未満となり、吸音性能が劣化する。
吸音性、及び機械強度の点から20〜35%がより好ま
しい。
【0017】次に、上述してきた本発明で用いる多孔質
成形体の製造方法について説明する。本発明では樹脂発
泡粒子の表面に該粒子の軟化発泡温度よりも低い温度で
熱接着し得る接着用樹脂を添着することが隣接する粒子
間の接着を容易にし、多孔質成形体の容積空隙率を高め
ること、及び特定の空隙構造を有する多孔質成形体を得
るために有利である。樹脂発泡粒子は加熱により発泡、
膨張する性質を有し、金型に充填して加熱された場合、
個々の粒子自体が膨張し互いに隣接する粒子同士が押圧
し合うため、表面の熱接着用樹脂を介して十分に強固な
接着強度を得ることができるため本発明の目的には極め
て好適である。更に、使用する樹脂の量を低減でき軽量
性や断熱性も付加された多孔質成形体を得る点からも好
ましい。
【0018】樹脂発泡粒子の表面に上記熱接着性樹脂を
添着することは、樹脂発泡粒子が熱軟化し高度に膨張す
るに至る前、即ち、元の容積の1.08〜1.41倍の
容積となる温度で熱接着でき、その結果として発泡粒子
の熱膨張が低減され高い容積空隙率を維持させることが
可能となり、前述のような発泡粒子間の面状接合が容易
となりサウンドストリーム形の空隙形状が形成され、吸
音性に優れた多孔質成形体が得られる。また、上記製法
を用いれば、エネルギー消費を低減でき、短時間での成
形が可能となり、生産性にも優れた効果をもたらすもの
となる。
【0019】本発明でいう樹脂発泡粒子とは汎用の熱可
塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリ
スチレン、ABS樹脂、ポリエチレン(高密度、低密
度)、ポリプロピレン、ポリメチルタアクリレート、
ポリ塩化ビニリデン共重合樹脂、ナイロン6、ナイロ
6,6、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂に有
機揮発性発泡剤や熱分解性発泡剤を含有さしめたもので
ある。こうした膨張性を有する粒子として好ましくは、
ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロビレン、ポリメ
チルメタアクリレート、塩化ビニリデン系樹脂、ポリフ
ェニレンエーテルポリスチレンアロイ等を素材樹脂と
する発泡性樹脂粒子や発泡粒子があり、工業的に生産さ
れている。
【0020】もちろん、過度の加熱を行えば樹脂粒子の
膨張が大きくなり粒子間の空隙が消失するため、これら
発泡性粒子の膨張する温度と粒子表面に添着された接着
用樹脂が熱接着する温度との関係を適切にした組み合わ
せを選択することが重要である。従って、発泡性樹脂粒
子としては、スチーム等の熱媒加熱により緩慢な膨張速
度を取るものは目的の容積空隙率を達成するために加熱
条件を厳密に管理する必要としないため発泡性塩化ビ
ニリデン系樹脂粒子は特に好適な素材粒子である。
【0021】発泡性塩化ビニリデン系樹脂粒子とは、塩
化ビニリデン、及び、これと共重合可能なビニルモノマ
ー1種以上とからなり、塩化ビニリデンが30重量%以
上を含み、ガラス転移点が85℃以上の塩化ビニリデン
共重合体に有機揮発性発泡剤を含有せしめた未発泡の樹
脂粒子、及び、それを加熱発泡することにより得られる
独立気泡構造の発泡粒子の両者をい、共に加熱により
膨張し、詳細には特開昭63170433号公報、特
開昭63170434号公報に記載されるもので、発
泡性粒子は含有する発泡剤の量を調整すること、あるい
は予備発泡粒子の熟成条件、即ち、処理温度やその時間
を調整することにより容易に得られる。
【0022】また、発泡断熱材として使用される空隙の
ない成形体を裁断した発泡破砕片を本発明の原料として
供することもできる。次に、本発明の樹脂発泡粒子の表
面に添着される熱溶着可能な接着用樹脂を説明する。該
接着用樹脂としては、軟化温度が70℃以上で、かつ使
用する合成樹脂素材粒子の軟化温度以下のものを選択す
ることが好ましい。軟化温度が70℃未満のものでは粘
着性を帯び易く表面に添着された合成樹脂素材粒子の流
動性が悪く、製造過程での取扱いや金型への充填性が不
良となる。また、成形された製品の使用環境によっては
熱を受ける場合に変形したりして不都合を生じる。一
方、接着用樹脂の軟化温度が合成樹脂素材粒子の軟化温
度を越えると、成形加工時の加熱により素材粒子の熱変
形が大きくなり、容積空隙率の高い多孔質成形体を得る
ことが難しくなる。
【0023】上記接着用樹脂としては、例えば熱可塑性
接着剤として分類されるビニル系の酢酸ビニル系接着
剤、アクリル系接着剤、エチレン酢酸ビニル共重合接
着剤やポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、熱
塑性ポリウレタン系接着剤、及び、極性基を有する熱
可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル
スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタ
ジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレン無水
マレイン酸共重合体、スチレンアクリル酸共重合体、
アクリル系樹脂等がある。
【0024】本発明に好適な粒子素材である発泡性ポリ
塩化ビニリデン系樹脂粒子の場合に好ましい熱接着用樹
脂としては、極性基を有するビニルモノマーが共重合さ
れた樹脂、即ち、ハロゲン基、カルボン酸基、エステル
基、シアノ基、ニトロ基等を置換基として有するビニル
モノマーが少なくとも5重量%以上共重合された樹脂で
あり、ASTM D 1525で測定されるビカット軟
化点が70〜115℃のものが使用できる。これら熱接
着用樹脂は溶剤溶液、エマルジョン、或いはホットメル
トの形で使用に供され、目的に応じて使い分けることが
できる。勿論、接着用樹脂の溶液中に種々な機能を付加
させるための添加剤を加えることも可能であり、付加機
能向上のためにも優れた製法である。例えば、有機、無
機系の各種難燃剤、顔料や染料の着色剤、導電性物質、
帯電防止剤、熱安定剤等のものが使用できる。
【0025】次に、本発明の樹脂発砲粒子の成形体の具
体的な製造方法の一態様を説明する。発泡性樹脂粒子1
00重量部に対して接着用樹脂固形分が5〜15重量部
となるように接着用樹脂2〜10重量%の溶剤溶液、或
いは、20〜60重量%のエマルジョン溶液を混合す
る。混合に際しては一般に粒体の混合として使用される
混合機が使用でき、例えば、リボンブレンダー等を用い
て接着用樹脂溶液を添加、またはスプレーして素材粒子
の表面に被覆添着させる。
【0026】接着用樹脂固形分が5重量部未満では上記
素材粒子が接着用樹脂を介して接合した成形体としての
接着強度が不十分であり、15重量部を越えても強度的
に有効には作用しなくて経済的に不利となる。接着用樹
脂溶液の固形分濃度は目的に応じて適宜選択できるが、
溶剤溶液の場合は2〜10重量%、水性エマルジョンの
場合には20〜60重量%のものが好ましく使用でき
る。
【0027】上記混合を完了したら、必要に応じて乾燥
し、加熱発泡して発泡倍率を調整する予備発泡工程に供
したり、或いは、直接成形工程に供する。特に、形状の
複雑な型物の成形に供する場合は発泡、乾燥処理して軽
量性、流動性を持たした上で金型への充填性を向上させ
ることは好ましい。こうした処理を行った樹脂発泡粒子
は汎用の型内発泡自動成形機に供給され、金型充填後、
接着用樹脂の軟化温度以上で、樹脂発泡粒子の発泡温度
以下で加熱し、冷却の工程を経て成形体を得る。こうし
て高い容積空隙率を維持し、粒子間の空隙構造が制御さ
れた本発明の吸音性に優れる多孔質成形体が得られる。
【0028】次に、本発明の第2について説明する。吸
音施工においては、吸音材料を設置するために必要な空
間寸法をできるだけ縮小して、吸音性能を最大限に発現
させることが最も重要である。このためには本発明の多
孔質吸音体の吸音率が最大ピークとなる周波数と騒音源
の周波数とを一致させることが好ましい。
【0029】本発明の多孔質成形体の吸音特性を用い、
この具体的な内容を図2を用いて説明する。図2は、多
孔質成形体の肉厚みと背後空気層厚みとの和dがその時
の吸音率のピーク周波数に与える影響を解析したもの
である。直線 は多孔質成形体を従来の多孔質体が最も
大きい吸音効果を発現するところである騒音源の1/4
波長のところに設置した場合(d=λ/4=344/4
f、すなわちf=344/4d:ただし、音速は344
m/とする)を示し、直線 はその1/2の空間厚み
となる騒音源の(1/8)波長を示したものである。◎
印は吸音率のピーク周波数において60%以上の吸音率
を有し、且つ、dが(1/8)波長以下となる点であ
り、○印は上記吸音率が30%以上から60%未満を有
、かつ、dが(1/4)波長以下となる点であり、×
印は吸音率が30%未満であるか、またはdが(1/
4)波長を越える点である。
【0030】まず、本発明においては多孔質成形体の肉
厚みと背後空気層の厚みとの和d(m)と騒音源の周波
数f(Hz)とが、下記(1)式及び(2)式を満たす
条件で該成形体を設置することが必要である。 1.03・(1/d)1.7≦f≦17.16・(1/d)1.7 (1) 100≦f≦285・(1/d)0.48 (2) f<1.03・(1/d)1.7では吸音率が逐次低下
し、また多孔質成形体の肉厚みが小さくなりすぎ成形困
難であるため適当でない。一方、f>17.16・(1
/d)1.7を越えても吸音率は徐々に低下し30%未満
の吸音率となり、また、所望の吸音性能を出そうとすれ
ば従来の多孔質体と較べてdが厚くなるため長所が発現
できない。
【0031】f<100では音波の波長が上記dに比べ
て大きくなるため、吸音率は急激に低下し、30%以上
の吸音率を確保することは困難となり、一方、285・
(1/d)0.48<fでは、背後空気層がない場合、即ち
本発明の多孔質成形体の厚みだけで吸音施工する場合に
相当し、吸音率のピ−ク周波数を超えた周波数側の音
波に対しての吸音となるため、吸音性能は徐々に低下す
ることとなる。
【0032】fとdの関係において、従来の吸音体では
(1/d)の一次式で支配されることに対して本発明の
多孔質吸音体では(1/d)のべき剰で支配されること
に最も大きな特徴がある。換言すれば、本発明の多孔質
成形体は背後空気層の厚みが薄くても特に低周波数の騒
音に対して有効な吸音効果を示すことが大きな特徴であ
り、吸音のための必要空間容積を大きく低減させること
ができるものである。さらに、吸音率が60%以上で、
かつ、施工空間厚みが従来の多孔質吸音体より半減でき
る(dが1/8波長以下となる)条件を付加させ、吸音
性能と必要空間容積が低減されたより優れた施工とする
には図2における◎印で囲まれる多角形EFCGHの領
域を満足することが好ましい。ここに、直線EFは吸音
率が60%以上となるに必要な多孔質成形体の下限の肉
厚みでの背後空気層厚みと吸音率のピーク周波数との関
係を表し、直線HGはd=(波長)/8を示す。多角形
EFCGHを座標(d、f)で示せば、点E(0.01
4,2195)、点F(0.087,100)、点C
(0.35,100)、点G(0.32,135)、点
H(0.026,1630)となる。
【0033】ここに本発明で言う吸音率とは垂直入射法
による測定値で定義されるものであるが、実際の騒音で
は音源周波数も幅を持つものであり、種々の角度からの
入射音があるため、施工仕様を一義的に決定できるもの
ではなく実用評価に臨んで決定することが望ましいが、
騒音の周波数領域内で音圧レベルが最大となる周波数を
f(Hz)とし、このfに関して少なくとも上記関係を
満足することが必要である。
【0034】本発明により従来技術では困難であった
空隙率や空隙の大きさのコントロールが容易になり、
使用目的に応じてこれらを制することで吸音性能を変化
させたり、種々の形状に加工でき各種産業機器に装着可
能な吸音成形体として好適なものが得られる。発泡性粒
子を用いることにより、特に静音化が求められるエアコ
ン、換気扇等の空調機器、ダクト等の風路を形成する部
分で断熱性、軽量性の機能と吸音性を併せて持つ新規な
工業部材として展開できる。また、建築分野においても
特異な素材としての展開が期待できる。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。な
お、本発明で用いた評価方法は次の通りである。 (1)平均粒子径 100gの樹脂発泡粒子をJIS 8801で規定
される、呼び寸法が5.6、4.754、3.35、
2.36、1.7、1.4、1mmである標準ふるいを
用い分級をを行う。di目を通過して、かつdi+1で止ま
る粒子の平均粒子径di、重量割合Xiであれば、各分級
品の平均粒子径は di= (di・di+11/2 で与えられる。
【0036】全粒子の平均粒子径dsは次式により求め
る。 ds= ΣXii (2)粒子径分布 前項の測定で分級して得た各群の内、最小粒子径dmin
を最大粒子径dmaxで除した値で定義する。 (3)引張強度 JIS 9511に基づき測定する。 (4)容積空隙率 見かけのかさ容積(V1)の多孔質成形体を一定量の水
を張ったメスシリンダー中に浸漬し、その時の増加容積
(V2)を測定し、次式により求める。{(V 1 −V 2 )/V 1 }×100
【0037】(5)吸音率 JIS 1405に基づき垂直入射吸音率(定在波
法)を測定する。 吸音体材料を特定する際の吸音率
は背後空気層のない状態、つまり、剛壁に密着した状態
で各周波数について測定する。
【0038】 背後空気層を設定した際の吸音率の上
昇値、背後空気層を設けた場合の吸音率値から項の方
法で測定された吸音率値をそれぞれの周波数において差
し引いた値を言う。 吸水処理後の吸音率低下値、
項で測定した吸音率から、吸音体試料にその全体積の5
0%の容積の水を吸水させた後に項と同様にして測定
した値を差し引いた値を各周波数について求める。
【0039】
【実施例1】塩化ビニリデン、Nーフェニルマレイミ
ド、アクリロニトリル、及びスチレンをそれぞれ42,
2.4,44.3,11.3モル%の組成比の混合物1
00重量部に対して0.02重量部のジビニルベンゼン
を加えて懸濁重合法により共重合体樹脂粒子を得た。こ
れにHCFC−142bを70℃にて24時間かけて含
浸処理を行った。得られた発泡性樹脂粒子は10重量%
のHCFC142bを含有していた。
【0040】この発泡性樹脂粒子100重量部をリボン
ブレンダーに投入し、アクリル系エマルジョン(コニ
シ、SP−210)20重量部を撹絆混合しながらスプ
レー添加し15分間混合し、その後35℃の温風を通気
して乾燥して表面にアクリル系熱接着剤が添着された発
泡性樹脂粒子を得た。この発泡性樹脂粒子を0.2kg
/cm2 ・Gのスチームにより発泡した予備発泡粒子を
得た。この予備発泡粒子を標準ふるいを用いて分級し、
表1に示すような粒子径分布、及び、平均粒子径を有す
る5つのグループに配分した。
【0041】それぞれのグループの予備発泡粒子を汎用
の発泡スチロール用自動成形機にて300×300×2
5mmの成形金型に投入し、一方加熱を0.1kg/c
2 ・Gのスチームで10秒間、続いて両面加熱を表1
に示すスチーム圧で10秒間行って、水冷し離型した。
得られた空隙を有する成形体の容積空隙率、剛壁に密着
した状態でのピーク吸音率とその周波数、及び、引張強
度を測定した結果を合わせて表1に示す。
【0042】表1の結果から明らかなように、本発明の
樹脂発泡粒子による多孔質成形体は剛壁密着状態で10
0〜3000Hzの領域に高い吸音率を示し、容積空隙
率の増加に伴い吸音率の値も上昇していることが分か
る。
【0043】
【表1】
【0044】
【実施例2】上記実験No.1、3、4と同一の予備発
泡粒子を用いて、同様の成形条件により、肉厚みがそれ
ぞれ100、50、25、15、10mmの多孔質成形
体を得、容積空隙率を測定するとそれぞれ30、33、
25、28、15%であった。こうして得た多孔質成形
体について、背後空気層の厚みを変化させて吸音率の周
波数依存性を測定し、吸音率が最大となるピーク周波数
を求めた結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】次に、上記の結果を吸音率のピーク周波数
と多孔質成形体の肉厚みと背後空気層厚みとの和dに
ついて両対数プロットして図示すると図2となる。図中
の直線、はそれぞれd=λ/、d=λ/を示
す。ここにλは音波の各周波数における波長を表す。ま
た、◎印は吸音率のピーク周波数における吸音率が60
%以上で、かつ、dがλ/8以下であることを満足する
点、○印は吸音率が30%以上から60%未満であり、
かつ、dがλ/4以下となる点、×印は吸音率が30%
未満であるか、または、dがλ/4を越える点である。
【0047】さらに、ピーク周波数における吸音率が6
0%以上で、かつ、従来の多孔質吸音体に較べ施工空間
厚みが半減できる条件は多角形EFCGHの領域であ
る。
【0048】
【実施例3】多孔質成形体として、実施例1の実験N
o.2の成形体を用いて吸音率の周波数依存性を下記の
条件で評価した。 背後空気層を25mmに設定した
際の吸音率値から、剛壁密着状態の測定値を差し引いた
値が30%以上の上昇を示す場合を○、30%未満の場
合を×とした。 背後空気層の距離を変化させて吸音
率を測定し、各周波数における吸音率が50%を越える
為に必要な空間厚み、即ち、多孔質成形体の肉厚み(2
5mm)と背後空気層の厚みとの和dが100mm以内
の場合を○、100mmを越える場合を×とした。
吸水処理後の吸音率が処理前に比べて10%を越えて低
下する場合を×、10%以内を○とした。
【0049】上記結果と施工性の評価とを合わせて表3
に示した。なお、施工性の評価は空調用ファンの吸音を
想定した場合の吸音体の取付作業の難易度、そのために
必要な治具、副資材の要否で判断した。本発明の多孔質
成形体では金型を作成しておけば所望の形状の成形体が
量産できること、また、そのまま装置に組み込むだけで
良いため施工性に優れる。
【0050】
【表3】
【0051】
【比較例1】密度が24kg/m3であり、肉厚みが2
5mmのガラスウールの吸音体を用いて実施例3と同様
な評価を行った結果を表4に示す。この場合には空気流
によるガラス繊維の飛散を防ぐために綿布で包み縫製す
る必要があり、背後空気層を設けるためにはそれを支持
するための部材や治具を必要とするため施工性に劣る。
【0052】
【表4】
【0053】
【発明の効果】本発明の樹脂発泡粒子を用いた吸音体及
びその施工方法は吸音効果に優れ、特に低周波数の騒音
防止に少ない空間容積で施工できる経済的にも優れた吸
音体および施工方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔質成形体の断面構造を示す模式図
である。
【図2】本発明の多孔質成形体の厚みと背後空気層との
和dと吸音率のピーク周波数との相関を示す解析図であ
る。
【符号の説明】
1 樹脂発泡粒子 2 空隙部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B29L 31:00 B29C 67/22 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/16 B29C 44/00 E04B 1/82 F24F 13/02 B29K 105:04 B29L 31:00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂発泡粒子の多孔質成形体において、
    平均粒子径が1.5〜5.5mmの樹脂発泡粒子の多数
    個が隣接する粒子表面の一部で面接合し、全体容積に対
    して15〜40%の容積空隙率を有して一体化されてお
    り、厚み10〜100mmで測定したときに、100〜
    3000Hzの周波数領域に吸音率30%以上のピーク
    周波数を有することを特徴とする樹脂発泡粒子の多孔質
    成形体からなる吸音体。
  2. 【請求項2】 請求項1の多孔質成形体からなる吸音体
    を施工するに際し、該吸音体の肉厚みと背後空気層の厚
    みとの和d(m)と騒音源の周波数f(Hz)とが、下
    記(1)式及び(2)式を満たす条件で該吸音体を設置
    することを特徴とする吸音体の施工方法。 1.03・(1/d)1.7≦f≦17.16・(1/d)1.7 (1) 100≦f≦285・(1/d)0.48 (2)
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