JP3247834B2 - 金属試料溶解供給装置 - Google Patents

金属試料溶解供給装置

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JP3247834B2 JP05846396A JP5846396A JP3247834B2 JP 3247834 B2 JP3247834 B2 JP 3247834B2 JP 05846396 A JP05846396 A JP 05846396A JP 5846396 A JP5846396 A JP 5846396A JP 3247834 B2 JP3247834 B2 JP 3247834B2
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昭紘 小野
裕之 近藤
健 植村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プラズマ発光分
析法、原子吸光分析法、分光光度法、その他の分析法に
おいて用いる試料溶液を連続的に得るための金属試料溶
解供給装置に関する。
【0002】金属中に含まれる化学成分を分析する手法
には、物理分析方法と化学分析方法とがあるが、物理分
析方法は分析精度がそれほどよくない。これに対して、
プラズマ発光分析法(その代表的なものとして、ICP
分析がある)をはじめとする化学分析方法は、一般に分
析精度がよく、研究実験室内で広く利用されている。
【0003】ところで、前記ICP分析など化学分析方
法においては、金属試料を液体にした試料溶液を用いる
必要があるが、従来においては、図5に示すような装置
を用いて金属試料を電解(電気分解)し、所望の試料溶
液を得るようにしていた。
【0004】すなわち、図5は、例えばICP分析にお
いて用いる試料溶液を連続的に得る金属試料溶解供給装
置の構成を概略的に示すもので、この図において、51
は絶縁性材料よりなる円柱形状の電解セルブロックで、
その中央にグラファイトよりなる対極52が下方から貫
挿されている。この電解セルブロック51の上面に、ブ
ロック状の金属試料53を電気絶縁性のリング状ガスケ
ット54を介して載置することにより、電解セル55が
形成される。56,57は電解セルブロック51に形成
された電解液の導入路、導出路である。58は電解セル
ブロック51の上面の周縁に突設された試料保持用の突
部である。
【0005】前記金属試料溶解供給装置においては、電
解液導入路56を経て、電解液を電解セル55に供給し
ながら、金属試料53が正極に、対極52が負極になる
ように、例えば定電流法によって電圧を印加する。これ
によって、電解セル55においては電気分解が行われて
金属試料53が溶解される。この溶解した金属は電解液
導出路57から試料溶液として排出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
金属試料溶解供給装置においては、電解液としては塩酸
の水溶液やこれと硝酸の水溶液とを適宜混合したものが
用いられるが、電解電位を高く設定すると、水や塩酸の
電気分解が生じ、水素ガスが生じたり、さらに、この水
素ガスと試料中の成分とが反応してガス状の水素化物が
生じるなどして、これらのガスが金属試料55の下部表
面に付着・滞留する。
【0007】前記ガスの滞留が生じると、図6に示すよ
うに、電解時における電圧を所定の一定値に保持するこ
とが困難となり、金属試料53の溶解量が変動し、結果
的に、試料溶液中に含まれる含有イオン濃度が変動する
こととなる。そして、このような含有イオン濃度が変動
している試料溶液がそのままICP分析計に送られてし
まうと、その分析結果にバラツキが生じ、再現性よく分
析が行えず、特に、各元素を逐次測定するシーケンシャ
ル型ICP分析計に供給した場合、元素ごとに異なった
状況が生じてしまうといった不都合がある。
【0008】また、電解セルブロック51の上面には、
その全周にわたって突部58が設けられているため、電
解セルブロック51の直径以上の径を持つ金属試料55
を試料とすることができなかった。
【0009】この発明は、上述の事柄に留意してなされ
たもので、その目的は、安定して電解を行うことがで
き、常に所定濃度の試料溶液を得ることができる金属試
料溶解供給装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明では、電解液導入口および電解液導出口が
形成された電解セルブロックと、この電解セルブロック
を貫通する柱状の対極とを有し、電解セルブロックの試
料保持部に保持されたブロック状の金属試料と対極との
間に電解セルが形成され、電解液導入口を経て電解液を
電解セルに供給しながら、金属試料と対極との間に電圧
を印加して金属試料を溶解し、電解液導出口から試料溶
液を連続的に得る金属試料溶解供給装置において、前記
電解セルブロックを電解液導出口側が高くなるように傾
斜させ、対極の側面に液ガイド部を形成している。
【0011】
【0012】上記構成の金属試料溶解供給装置において
は、電解セルブロック、すなわち、電解セルがその電解
液導出口側が上方になるように傾斜しているので、電解
時にガスが発生することがあっても、これが電解セル内
に滞留することなく試料溶液とともに速やかに排出され
る。したがって、電解時における電圧が常に所定の値に
保持され、金属試料が常に一定の割合で溶解され、試料
溶液中に含まれる含有イオン濃度が変動するといったこ
とがなくなる。
【0013】そして、前記金属試料溶解供給装置におい
て、その電解セルブロックの上面の傾斜下端側に試料の
滑落を防止する突部を形成してあってもよい。
【0014】
【0015】さらに、試料保持部に設けられるガスケッ
トに開設される孔の大きさを、対極の外径と可及的に等
しくなるようにしてあってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好ましい実施例
を、図を参照しながら説明する。
【0017】図1は、この発明の金属試料溶解供給装置
1を組み込んだ金属試料分析装置の一構成例を概略的に
示すものである。まず、金属試料溶解供給装置1の構成
の詳細を図2および図3を参照しながら説明する。
【0018】図2において、2は例えば円柱状の電解セ
ルブロックで、耐熱性、耐薬品性および電気絶縁性に優
れた樹脂(例えばフッ素樹脂)よりなる。3は電解セル
ブロック2に内部を例えば長手方向に貫通するように形
成される流路で、入り側流路3aと出側流路3bとから
なる。4a,4bは流路3の両端部にそれぞれ形成され
る電解液導入口、電解液導出口である。5は流路3と直
角に交叉するように上下方向に貫設された適宜径の孔で
ある。6は電解セルブロック2の電解液導入口4a側の
上面の端部に形成された突部で、図3に示すように、電
解液導入口4a側に約半周だけ円弧状に設けられてい
る。
【0019】7は流路3を直交する貫通孔5内に下方か
ら隙間を生じないようにして挿入され、その上端が電解
セルブロック2よりやや低く位置するように設けられる
例えばグラファイトよりなる円柱状の対極である。そし
て、この対極7の上部の流路3に臨む側面は、図3にも
示すように、その上端から入り側流路3aおよび出側流
路3bの高さ位置にかけて軸方向と平行になるように直
線的にカットされ、液ガイド部7a,7bに形成されて
いる。
【0020】8は金属試料で、電解セルブロック2の上
部の試料保持部9にガスケット10を介して、対極7の
上端とわずかな隙間(例えば1mm程度)を有するよう
に保持される。すなわち、試料保持部9は、電解セルブ
ロック2の上面に貫通孔5を中心にして円形状に凹ませ
た状態で形成されている。また、ガスケット10は、金
属試料8と対極7との間に形成されるわずかな空間、す
なわち、電解セル11のシールを司るもので、耐熱性、
耐薬品性、電気絶縁性およびシール性に優れた素材(例
えばフッ素ゴム)よりなる。このガスケット10の中央
部に設けられる孔12の径は、対極7の上端部の外径と
可及的に等しくなるように設定されている。
【0021】そして、金属試料8は、図1に示すよう
に、試料押圧装置としてのエアーシリンダ13のシリン
ダロッド14の先端に付設された抑えヘッド15によっ
て試料保持部9方向に圧接される。16は抑えヘッド1
5と金属試料8との間に介装される作用極である。
【0022】この発明の最大の特徴は、電解セルブロッ
ク2を、図1に示すように、電解液導出口4b(出側流
路3b)側が高くなるようにやや傾斜して設けるように
したことである。その傾斜度合は、金属試料8に対する
押圧方向17と鉛直方向18とのなす角度θが例えば2
0°となるように設定される。したがって、この実施例
においては、電解セルブロック2内の流路3と水平線と
なす角度も20°となる。
【0023】なお、図1における他の部材は、従来のこ
の種の金属試料溶解供給装置のものと同じである。すな
わち、19は電解セルブロック2の電解液導入口4aに
接続される電解液供給路で、この電解液供給路19に
は、その上流側から電解液(例えばHCl水溶液)20
を収容した電解液タンク21、送液用の定流量ポンプ2
2、電解液20のpHを測定する電極23を収容した電
極容器24などが設けられている。
【0024】そして、25は電解セルブロック2の電解
液導出口4bに接続される試料溶液流路で、この試料溶
液流路25には、その上流側からフィルタ26、気液分
離管27が設けられており、気液分離管27の下流側に
はICP分析装置28が設けられている。なお、29は
気液分離管27のドレイン部に接続される廃液収容タン
クである。
【0025】また、30は電解用電源部で、例えば定電
圧/定電流直流電源よりなり、その正極端子WEは導線
31を介して作用極16に接続され、負極端子CEは導
線32を介して対極7に接続され、参照電極REは導線
33を介して電極23に接続されている。
【0026】上記構成の金属試料溶解供給装置1の動作
について説明する。例えば製鋼工程で採取した溶鋼を適
宜のサイズの円柱状(例えば直径50mm、高さ15m
m)に鋳込んで、一面を研磨して試料8とする。この金
属試料8をその研磨面を下にして、ガスケット10を介
して電解セルブロック2の試料保持部9に載置し、金属
試料8が滑らないように保持しながら、その上面に作用
極16を当て、その状態でシリンダ13を動作させてシ
リンダロッド14の先端に付設された抑えヘッド15に
よって金属試料8を試料保持部9方向に押圧する。作用
極16および対極7を導線31,32を介して定電圧/
定電流直流電源30の所定の端子に接続する。
【0027】そして、定流量ポンプ22により、一定流
量(例えば5mL/min)で電解液タンク21内の電
解液20を電解セルブロック2の電解液導入口4aに送
給する。この電解液は電解液導入口4aから入り側流路
3aを経て対極7の一方の側面に形成されている液ガイ
ド部7aに接しながら電解セル11内に流入し、対極7
の他方の面に形成されている液ガイド部7bを経て出側
流路3bに至り、さらに、電解液導出口4bを経て電解
セルブロック2外に排出される。
【0028】上述のように、電解液20が電解セル11
に供給されている状態で、作用極16を介して金属試料
8、対極7に印加する電圧を制御しながら一定電流(例
えば1A)を流すことにより、金属試料8は連続的に電
解され、それに含まれる化学成分を含む試料溶液が得ら
れる。この試料溶液は電解液とともに電解液導出口4b
を経て電解セルブロック2外に排出される。
【0029】この場合、電解セルブロック2、すなわ
ち、電解セル11がその電解液導出口4b側が上方にな
るように傾斜して配置されているので、電解時にガスが
発生することがあっても、これが電解セル11内に滞留
することなく試料溶液とともに速やかに排出される。し
たがって、電解時における電圧は、図4に示すように、
常に所定の値に安定保持され、金属試料8が常に一定の
割合で溶解される。このため、試料溶液中に含まれる含
有イオン濃度が変動するといったことがなくなる。
【0030】電解セルブロック2外に排出された試料溶
液は、フィルタ26で濾過されて気液分離器27に流入
し、この内部を刻々置換する試料溶液はICP分析装置
28に供給され、所定の成分元素分析が行われる。
【0031】そして、上述の金属試料溶解供給装置1に
おいては、電解セルブロック2を、その流路3が水平な
状態より20°傾くように配置されているが、この傾斜
角(図1における角度θ)が10°以上であれば、電解
時に発生するガスが電解セル11内において滞留するこ
とがないことが確かめられている。
【0032】また、上記金属試料溶解供給装置1におい
ては、電解セルブロック2の電解液導入口4a側の上面
に金属試料8の突部6を半円状に形成しているので、前
記傾斜角θが30°以内であれば、金属試料8の滑落が
防止される。そして、この滑落防止用の突部6は、電解
セルブロック2を傾斜させた状態における下方側にのみ
所定範囲にわたって設けてあればよく、このようにした
場合、金属試料8の種々の形状や大きさに対応すること
ができる。また、この突部6は金属試料8の滑落を防止
できるものであれば、その形状は任意であり、また、必
ずしも連続してなくてもよい。
【0033】さらに、対極7の形状としては、電解セル
11に臨む部分(上端側)が柱状であればよく、円柱状
のほかに角柱状であってもよい。そして、この対極7の
上方側面に形成される液ガイド部7a,7bは、電解液
が対極7に接しながらその表面を流れるものであればよ
く、したがって、溝状などであってもよい。
【0034】そして、試料保持部9に設けられるガスケ
ット10に開設される孔12の大きさは、対極7の外径
と可及的に等しくなるようにしてあるのが好ましい。こ
のようにすることにより、金属試料8が電解される際に
おける部分を確実に限定することができ、所望の電解を
確実に行うことができるからである。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の金属試
料溶解供給装置においては、電解セル内において発生し
たガスにより電解不能となることがなく、金属試料の電
解を常に安定した状態で確実に行うことができる。した
がって、安定した分析を行うことができる。
【0036】また、電解セルブロックの上面に、その傾
斜させた状態における下方側にのみ突部を形成している
ので、電解セルブロックの外径よりも小さい金属試料の
みならず、大きい金属試料についても電解セルブロック
上に載置し、これを溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の金属試料溶解供給装置を組み込んだ
金属試料分析装置の一例を示す構成図である。
【図2】この発明の金属試料溶解供給装置の構成例を示
す縦断面図である。
【図3】前記金属試料溶解供給装置の平面形状を示す図
である。
【図4】前記金属試料溶解供給装置における電解時の電
流と電圧の時間的変化の一例を示す図である。
【図5】従来の金属試料溶解供給装置を示す縦断面図で
ある
【図6】従来の金属試料溶解供給装置における電解時の
電流と電圧の時間的変化の一例を示す図である。
【符号の説明】
2…電解セルブロック、4a…電解液導入口、4b…電
解液導出口、6…突部、7a,7b…液ガイド部、7…
対極、8…金属試料、9…試料保持部、10…ガスケッ
ト、11…電解セル、12…孔、17…押圧方向、18
…鉛直方向。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植村 健 京都府京都市南区吉祥院宮の東町2番地 株式会社堀場製作所内 (72)発明者 南 孝明 京都府京都市南区吉祥院宮の東町2番地 株式会社堀場製作所内 (56)参考文献 特開 平8−122322(JP,A) 植村、南、岡田、松田、小野、近藤, 電気分解−IPC法による鋼の迅速・高 精度分析,材料とプロセス,日本,社団 法人 日本鉄鋼協会,1995年11月 3 日,第8巻第4号,P.982 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 1/28,21/73 G01N 27/26,33/20 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解液導入口および電解液導出口が形成
    された電解セルブロックと、この電解セルブロックを貫
    通する柱状の対極とを有し、電解セルブロックの試料保
    持部に保持されたブロック状の金属試料と対極との間に
    電解セルが形成され、電解液導入口を経て電解液を電解
    セルに供給しながら、金属試料と対極との間に電圧を印
    加して金属試料を溶解し、電解液導出口から試料溶液を
    連続的に得る金属試料溶解供給装置において、前記電解
    セルブロックを電解液導出口側が高くなるように傾斜さ
    、対極の側面に液ガイド部を形成してなることを特徴
    とする金属試料溶解供給装置。
  2. 【請求項2】 電解セルブロックの上面の傾斜下端側に
    のみ金属試料の滑落を防止する突部を形成した請求項1
    に記載の金属試料溶解供給装置。
  3. 【請求項3】 試料保持部に設けられるガスケットに開
    設される孔の大きさを、対極の外径と可及的に等しくな
    るようにした請求項1または2に記載の金属試料溶解供
    給装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
植村、南、岡田、松田、小野、近藤,電気分解−IPC法による鋼の迅速・高精度分析,材料とプロセス,日本,社団法人 日本鉄鋼協会,1995年11月 3日,第8巻第4号,P.982

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