JP3230280U - エッチング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エッチング装置において、ディップ槽における樹脂組成物の沈殿物が原因となって、エッチング液を循環した場合にエッチング液の分散性が不均一となり、樹脂組成物層の残渣が発生する問題を解決することができるエッチング装置を提供する。【解決手段】エッチング装置が、樹脂組成物をエッチング液によって除去するエッチングユニット21を有し、エッチングユニットが、樹脂組成物を有する被処理物が浸漬処理される、エッチング液10が入ったディップ槽11と、ディップ槽からオーバーフローしたエッチング液を回収する貯蔵タンク15と、ディップ槽の底面に溜まった沈殿物を貯蔵タンクへと送るための沈殿物回収管19を有し、ディップ槽及び貯蔵タンクの底面に二次元又は三次元の傾斜が設けられており、沈殿物回収管の排出口が貯蔵タンクに接続されている。【選択図】図5
Description
本考案は、アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング液によってエッチング処理する際に使用するエッチング装置に関する。
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴って、回路基板において、微細配線形成や熱膨張係数の低下が強く求められている。その中で、絶縁材料の低熱膨張係数化の手段として、絶縁材料を高充填化する、すなわち、絶縁材料における無機充填材の含有量を高くする方法が知られている。さらに、絶縁材料として、エポキシ樹脂、フェノールノボラック系硬化剤、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂等を含み、耐湿性に優れたアルカリ不溶性樹脂の使用が提案されている。これらの無機充填材及びアルカリ不溶性樹脂を含む絶縁性の樹脂組成物は、耐熱性、誘電特性、機械強度、耐化学薬品性等に優れた物性を有し、回路基板の外層表面に用いられるソルダーレジストや多層ビルドアップ配線板に用いられる層間絶縁材料として広く使用されている。
図1は、回路基板上において半田付けする接続パッド3以外を、樹脂組成物層4で覆ったソルダーレジストパターンの概略断面構造図である。図1に示す構造はSMD(Solder Masked Defined)構造と言われ、樹脂組成物層4の開口部が接続パッド3よりも小さいことを特徴としている。図2に示す構造は、NSMD(Non Solder Masked Defined)構造と言われ、樹脂組成物層4の開口部が接続パッド3よりも大きいことを特徴としている。
図1又は図2における樹脂組成物層4の開口部は、樹脂組成物層の一部を除去することによって形成される。無機充填材及びアルカリ不溶性樹脂を含む樹脂組成物を含有してなる樹脂組成物層を除去するエッチング方法として、エッチング液として40℃のヒドラジン系薬液を使用した浸漬処理によって行うエッチング方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1における樹脂組成物の全固形分に対して、無機充填材の好ましい含有量が30〜90質量%であり、より好ましい含有量が50〜85質量%であることが記載されている。
浸漬処理によるエッチング方法では、ディップ槽におけるエッチング液中で、エッチングによって除去された、無機充填材及びアルカリ不溶性樹脂を含む樹脂組成物が沈殿分離する。図3は、樹脂組成物を除去するのに使用したエッチング液を分液漏斗に入れ、沈殿分離の状態を確認した際の写真である。図3のエッチング液は、エッチング液層5と、アルカリ不溶性樹脂が多く分散された樹脂組成物分散層6と、無機充填材を多く含んだ無機充填材溶解層7とに分離し、無機充填材溶解層7が一番下に沈殿した沈殿物となる。沈殿物は、比重が大きく、液流動性が低いことから、エッチング液を循環して再利用しようとする場合、エッチング液が不均一となり、エッチングの進行が妨げられるという問題が発生する。エッチングの進行が妨げられると、樹脂組成物層の残渣が発生し、ソルダーレジストパターンを形成する際に、接続パッド部の接触不良の原因となり、生産における歩留まりの低下に繋がるという問題が発生することがあった。
本考案の課題は、アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング液によってエッチング処理する際に使用するエッチング装置において、ディップ槽における樹脂組成物の沈殿物が原因となって、エッチング液を循環した場合にエッチング液の分散性が不均一となり、樹脂組成物層の残渣が発生する問題を解決することができるエッチング装置を提供することである。
本考案者らは、下記考案によって、これらの課題を解決できることを見出した。
(1)アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング液によってエッチング処理する際に使用するエッチング装置において、
エッチング装置が、樹脂組成物をエッチング液によって除去するエッチングユニットを有し、
エッチングユニットが、樹脂組成物を有する被処理物が浸漬処理される、エッチング液が入ったディップ槽と、ディップ槽からオーバーフローしたエッチング液を回収する貯蔵タンクと、ディップ槽の底面に溜まった沈殿物を貯蔵タンクへと送るための沈殿物回収管を有し、
ディップ槽及び貯蔵タンクの底面に二次元又は三次元の傾斜が設けられており、
沈殿物回収管の排出口が貯蔵タンクに接続されていることを特徴とするエッチング装置。
(2)樹脂組成物に対する無機充填材の含有量が50〜85質量%であることを特徴とする上記(1)記載のエッチング装置。
(3)エッチング液が、15〜45質量%のアルカリ金属水酸化物を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のエッチング装置。
エッチング装置が、樹脂組成物をエッチング液によって除去するエッチングユニットを有し、
エッチングユニットが、樹脂組成物を有する被処理物が浸漬処理される、エッチング液が入ったディップ槽と、ディップ槽からオーバーフローしたエッチング液を回収する貯蔵タンクと、ディップ槽の底面に溜まった沈殿物を貯蔵タンクへと送るための沈殿物回収管を有し、
ディップ槽及び貯蔵タンクの底面に二次元又は三次元の傾斜が設けられており、
沈殿物回収管の排出口が貯蔵タンクに接続されていることを特徴とするエッチング装置。
(2)樹脂組成物に対する無機充填材の含有量が50〜85質量%であることを特徴とする上記(1)記載のエッチング装置。
(3)エッチング液が、15〜45質量%のアルカリ金属水酸化物を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のエッチング装置。
アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング液によってエッチング処理する際に使用するエッチング装置において、ディップ槽における樹脂組成物の沈殿物が原因となって、エッチング液を循環した場合にエッチング液の分散性が不均一となり、樹脂組成物層の残渣が発生する問題を解決することができるエッチング装置を提供することができる。
以下、本考案のエッチング装置について詳細に説明する。
本考案のエッチング装置は、アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング液によってエッチング処理する際に使用できる。エッチング処理の一例として、ソルダーレジストパターンの形成方法について、図4を用いて説明する。このソルダーレジストパターンの形成方法では、回路基板上にある半田接続パッド3の一部又は全部が樹脂組成物層4で覆われたソルダーレジストパターンを形成することができる。
工程(I)では、絶縁層2と銅箔3′を有する銅張積層板の表面にある銅箔3′をエッチングによりパターニングすることによって導体パターンを形成し、半田接続パッド3を有する回路基板1を形成する。
工程(II)では、回路基板1の表面において、全面を覆うように銅箔9付きの樹脂組成物層4を形成する。樹脂組成物層4は、アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含んでいる。
工程(III)では、銅用のエッチング液によって、樹脂組成物層4上の銅箔9をエッチング処理によりパターニングし、樹脂組成物層エッチング用の金属マスク8を形成する。
工程(IV)では、金属マスク8を介し、樹脂組成物用のエッチング液によって、半田接続パッド3の一部又は全部が露出するまで、樹脂組成物層4をエッチングする。
工程(V)では、銅用のエッチング液によって、金属マスク8をエッチング処理により除去し、半田接続パッド3の一部又は全部が樹脂組成物層4で覆われたソルダーレジストパターンを形成する。
これによって、図4(V)に示すような、樹脂組成物層4の残渣の無い、SMD構造又はNSMD構造のレジストパターンを形成することができる。
本考案において、樹脂組成物用のエッチング液は、アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング処理するためのエッチング液であり、ヒドラジン系エッチング液、高濃度のアルカリ金属水酸化物を含有するアルカリ水溶液等が使用できるが、高濃度のアルカリ金属水酸化物を含有するアルカリ水溶液(以下、「高濃度のアルカリ金属水酸化物を含有するアルカリ水溶液」を「アルカリ金属水酸化物系エッチング液」と記す場合がある)であることが好ましい。アルカリ不溶性樹脂はアルカリ水溶液に溶解しない性質を有するため、本来アルカリ水溶液によって除去することはできない。しかし、本考案に係わるエッチング液を使用することによって、アルカリ不溶性樹脂を含む樹脂組成物を除去することができる。本考案で好適に使用できる高濃度のアルカリ金属水酸化物を含有するアルカリ水溶液を用いた場合には、高充填化された樹脂組成物中の無機充填材、すなわち、樹脂組成物中に50〜85質量%という高い含有量で充填された無機充填材が、高濃度のアルカリ金属水酸化物を含む水溶液によって溶解除去されるため、アルカリ不溶性樹脂を含む樹脂組成物をエッチング処理することができる。
アルカリ金属水酸化物系エッチング液におけるアルカリ金属水酸化物の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。アルカリ金属水酸化物の含有量が5質量%未満である場合、無機充填材の溶解性が乏しい場合があり、アルカリ金属水酸化物の含有量が50質量%を超えた場合、アルカリ金属水酸化物の析出が起こりやすいことから、液の経時安定性に劣る場合がある。アルカリ金属水酸化物の含有量は、より好ましくは15〜45質量%であり、さらに好ましくは20〜40質量%である。
アルカリ金属水酸化物系エッチング液に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、界面活性剤、消泡剤、有機溶媒等を適宜添加することもできる。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。この中で、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等は、アルカリ不溶性樹脂の膨潤性が大きく好ましい。
本考案に係わる樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対して50〜85質量%であることが好ましい。無機充填材の含有量が50質量%未満である場合、樹脂組成物全体に対して、アルカリ金属水酸化物系エッチング液によって溶解されるサイトとしての無機充填材が少なすぎるため、エッチングが進行しない場合がある。無機充填材の含有量が85質量%を超えると、樹脂組成物の流動性の低下により、可撓性が低下する傾向があり、実用性に劣る。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に用いられる。アルカリ金属水酸化物として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、本考案に係わるアルカリ金属水酸化物系エッチング液は、アルカリ金属水酸化物に加えて、1質量%以上50質量%以下のエタノールアミン化合物を含有することが好ましい。エタノールアミン化合物を含有するアルカリ金属水酸化物系エッチング液を使用した場合、エタノールアミン化合物が樹脂組成物中に浸透することにより、樹脂組成物の膨潤が促進され、無機充填材の溶解除去が加速され、樹脂組成物の除去速度が上がる。
本考案に係わるアルカリ金属水酸化物系エッチング液において、エタノールアミン化合物の含有量が1質量%未満の場合、アルカリ不溶性樹脂の膨潤性が乏しく、エタノールアミン化合物の含有量が0質量%の場合と比較して、樹脂組成物の除去速度が変わらない。エタノールアミン化合物の含有量が50質量%を超えた場合、水に対する相溶性が低くなり、相分離が起こりやすいことから、エッチング液の経時安定性に劣る場合がある。エタノールアミン化合物の含有量は、より好ましくは5〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜35質量%である。
上記エタノールアミン化合物としては、第一級アミンであるエタノールアミン;第一級アミンと第二級アミンの混合物である(すなわち、一分子内に第一級アミノ基と第二級アミノ基とを有する)N−(β−アミノエチル)エタノールアミン;第二級アミンであるN−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン;第三級アミンであるN−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。エタノールアミン化合物として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ヒドラジン系エッチング液として、例えば、ヒドラジン一水和物を使用したエッチング液が挙げられる。また、ヒドラジン一水和物と共にエチレンジアミンを併用することもできる。ヒドラジン一水和物は、強い還元性を有し、本考案に係わる樹脂組成物を分解除去することができる。しかし、毒物及び劇物取締法の劇物に該当し、人体の健康に対して有害で、環境への負荷も大きいため、アルカリ金属水酸化物系エッチング液を使用することが好ましい。
本考案に係わるエッチング液はアルカリ水溶液である。エッチング液に使用される水としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができる。このうち純水を使用することが好ましい。
本考案に係わるエッチング処理において、エッチング液の温度は、60〜90℃の範囲であることが好ましい。樹脂組成物の種類、樹脂組成物層の厚み、樹脂組成物を除去するエッチング処理を施すことによって得られるパターンの形状等によって、最適温度が異なるが、エッチング液の温度は、より好ましくは60〜85℃であり、さらに好ましくは70〜85℃である。
本考案において、無機充填材としては、例えば、シリカ、ガラス、クレー、雲母等のケイ酸塩;アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ等の酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩等が挙げられる。また、無機充填材としては、さらにホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。これらの中で、シリカ、ガラス、クレー及び水酸化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物は、アルカリ金属水酸化物を含有する水溶液に溶解することから、より好ましく用いられる。シリカは低熱膨張性に優れる点でさらに好ましく、球状溶融シリカが特に好ましい。無機充填材として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本考案に係わるアルカリ不溶性樹脂について説明する。アルカリ不溶性樹脂は、アルカリ水溶液に対して溶解又は分散されないという性質以外は、特に限定されない。具体的には、アルカリ水溶液に対して溶解するために必要なカルボキシル基含有樹脂等の含有量が非常に少ない樹脂であり、樹脂中における遊離カルボキシル基の含有量の指標となる酸価(JIS K2501:2003)としては、40mgKOH/g未満である。より具体的には、アルカリ不溶性樹脂は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤とを含む樹脂である。アルカリ水溶液としては、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニウムリン酸塩、アンモニウム炭酸塩等の無機アルカリ性化合物を含有する水溶液、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン)等の有機アルカリ性化合物を含有する水溶液が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、さらにビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されないが、好ましいものとしては、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。熱硬化剤として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上記硬化剤に加え、さらに硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物、イミダゾール化合物、アミンアダクト化合物、3級アミン化合物等が挙げられる。硬化促進剤として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、熱硬化剤としてシアネートエステル樹脂を使用する場合には、硬化時間を短縮する目的で、硬化触媒として用いられている有機金属化合物を添加してもよい。有機金属化合物としては、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等が挙げられる。
上述したように、本考案に係わるエッチング液を使用して、アルカリ不溶性樹脂及び50〜85質量%の無機充填材を含む樹脂組成物をエッチングすると、高充填化された樹脂組成物中の無機充填材が高濃度のアルカリ金属水酸化物を含む水溶液によって溶解除去されることによって、樹脂組成物の除去が進行する。さらに、本考案に係わるエッチング液がエタノールアミン化合物を含む場合には、エタノールアミン化合物が樹脂組成物中に浸透することにより、樹脂組成物の膨潤が促進され、無機充填材の溶解除去が加速される。
本考案のエッチング装置について図面を用いて詳細に説明する。図5は、本考案のエッチング装置の一例を示す概略断面構造図であり、樹脂組成物を有する被処理物が搬送ロール対13によって、ディップ槽11中のエッチング液10に浸漬した状態で搬送され、樹脂組成物のエッチング処理を行うエッチング装置である。
本考案のエッチング装置は、樹脂組成物をエッチング液によって除去するエッチングユニット21を有する。エッチングユニット21は、樹脂組成物を有する被処理物が浸漬処理される、エッチング液10が入ったディップ槽11と、ディップ槽11からオーバーフローしたエッチング液10を回収する貯蔵タンク15と、ディップ槽11の底面に溜まった沈殿物を貯蔵タンク15へと送るための沈殿物回収管19を有する。樹脂組成物を有する被処理物として、樹脂組成物層が形成された基板12を例示した。また、ディップ槽11及び貯蔵タンク15の底面には、二次元又は三次元の傾斜が設けられている。そして、沈殿物回収管19の排出口20が貯蔵タンク15に接続されている。
エッチング液10は、装置下部の貯蔵タンク15のエッチング液吸込口16からエッチング液供給用ポンプ(図示せず)によって、エッチング液供給管17を介してディップ槽11に供給され、オーバーフローさせる。オーバーフローしたエッチング液10は貯蔵タンク15に回収されることで、エッチング液10はディップ槽11と貯蔵タンク15との間を循環する。さらに、図5に示すエッチング装置にはディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に傾斜が設けられている。ディップ槽11中でエッチング処理され溶解除去された樹脂組成物中の無機充填材は、ディップ槽11の底面の傾斜に沿って流下し、無機充填材溶解層7がエッチングの進行を妨げるという問題を防ぐことができる。
さらに、ディップ槽11の底面の傾斜に沿って、より低い位置へと移動した無機充填材の溶解物は、沈殿物排出口20から沈殿物回収管19を介して貯蔵タンク15へと送られる。この時、沈殿物回収管19に開閉バルブ23を設置し、沈殿物である無機充填材の溶解物の排出量を調整できるようにすることが好ましい。貯蔵タンク15では、無機充填材の溶解物が底面の傾斜に沿って流下する。これによって、比重が大きく、液流動が悪い無機充填材の溶解物が貯蔵タンク15中で循環され、エッチング液の液分散性が不均一になるという問題を防ぐことができる。
本考案において、沈殿物排出口20及び沈殿物回収管19の好ましい直径は、ディップ槽11の大きさによって変化するが、通常10〜40mmの範囲である。また、沈殿物排出口20の位置はディップ槽11の底面の傾斜に沿って流下した先の底部であればどこでも可能であり、1箇所から排出してもよいし、複数個所から同時に又は時間差で排出してもよい。また、沈殿物排出口20をディップ槽11側面に設置すると、無機充填材の沈殿物の排出効率が悪くなるため、好ましくない。
本考案において、搬送ロール対13の形状及び材質は、基板12を搬送することができるものであれば規制はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)等が利用できる。また、搬送ロール対13の設置位置及び数は、基板12を搬送することができれば、特に図5に示される設置位置及び数に限定されるものではない。
本考案において、ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に設けられた傾斜について説明する。底面に設けられた傾斜は、二次元又は三次元の構造を有する。図6を用いて二次元構造の例を詳細に説明する。図6(I)は、ディップ槽11における底面の傾斜の一例を示す上面図であり、図6(II)は、同傾斜の一例を示す斜視図である。図6中の点線において、底面の傾斜が谷折りになっており、ディップ槽11の底面が二次元構造になっている。ディップ槽11にエッチング液供給管17を通じてエッチング液供給口22からエッチング液10が供給され、エッチングで溶解除去された樹脂組成物中の無機充填材は、ディップ槽11の底面に沈降し、底面の傾斜に沿って流下する。二次元の傾斜に沿って流下した無機充填材の溶解物は沈殿物排出口20から沈殿物回収管19を介して貯蔵タンク15へ送られる。
次に、三次元構造について、図7〜図9を用いて説明する。図7〜図9の(I)は、いずれも本考案の貯蔵タンク15における底面の傾斜の一例を示す上面図であり、図7〜図9の(II)は、同傾斜の一例を示す斜視図である。図7〜9中の点線において、底面の傾斜が谷折りになっており、貯蔵タンク15の底面が三次元構造になっている。貯蔵タンク15の底面が、図7は2面に、図8は3面に、図9は4面に分割されている。複数に分割された傾斜面の勾配(傾斜角)は同じであっても、違っていてもよく、傾斜に沿って流下した先の底部の位置も自由に決めることができる。傾斜角が大きい方が、流下する加速度は大きくなるが、構造が複雑になり、メンテナンス性が悪くなる場合がある。
以下、実施例によって本考案をさらに詳しく説明するが、本考案はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
無機充填材として、溶融シリカ78質量%、エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂10質量%、熱硬化剤として、フェノールノボラック型シアネート樹脂10質量%、硬化促進剤として、トリフェニルホスフィン1質量%、その他、カップリング剤、レベリング剤を加え、全量を100質量%としたものに、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを媒体として混合し、液状樹脂組成物を得た。
無機充填材として、溶融シリカ78質量%、エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂10質量%、熱硬化剤として、フェノールノボラック型シアネート樹脂10質量%、硬化促進剤として、トリフェニルホスフィン1質量%、その他、カップリング剤、レベリング剤を加え、全量を100質量%としたものに、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを媒体として混合し、液状樹脂組成物を得た。
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)上に液状樹脂組成物を塗布した後、100℃で5分間乾燥して媒体を除去した。これによって、膜厚20μmで、アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物からなる、Aステージの樹脂組成物層を形成した。Aステージとは、エポキシ樹脂と熱硬化剤が硬化反応を開始する前の状態である。
ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、エポキシ樹脂ガラス布基材銅張積層板(面積408mm×510mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.1mm)の両面に熱圧着式ラミネーターを使って、温度100℃、圧力0.4MPaで熱圧着し、銅箔上に転写させた後、100℃で30分間加熱し、Bステージの樹脂組成物層を形成した。Bステージとは、エポキシ樹脂と熱硬化剤の硬化反応が開始され、Cステージと呼ばれる完全硬化状態には至っていない、硬化反応の中間段階の状態である。
次に、エッチング液として、水酸化カリウム30質量%、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン15質量%、エタノールアミン15質量%、水40質量%の水溶液(液温度80℃)を用いて、エッチングユニット21が、エッチング処理するためのディップ槽11とディップ槽11からオーバーフローしたエッチング液10を回収する貯蔵タンク15を有し、ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に二次元の傾斜が設けられており、ディップ槽11の底面に溜まった沈殿物を貯蔵タンク15へと送るための沈殿物回収管19を有し、沈殿物回収管19の沈殿物排出口20が貯蔵タンク15に接続されているエッチング装置にて、貯蔵タンク15からディップ槽11にエッチング液10を循環させながら、樹脂組成物層に対して75秒間浸漬する条件でエッチング処理を行った。エッチング処理後、樹脂組成物層の表面に残存付着したエッチング液10を純水によるスプレー処理によって洗浄した。
エッチング処理1枚目、10枚目、30枚目、60枚目において、ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に沈降し、底面の傾斜に沿って流下した溶融シリカの溶解物の有無を確認したところ、60枚エッチング処理後においてもディップ槽11の底面には溶融シリカの溶解物は見られなかった。一方、貯蔵タンク15の底面においては、30枚処理後には溶融シリカの溶解物の沈殿が確認された。
エッチング処理後における樹脂組成物の残渣の有無を光学顕微鏡で観察したところ、60枚エッチング処理後の基板にも、残渣は見られなかった。
(実施例2)
ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に三次元の傾斜が設けられたエッチング装置を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エッチング処理を行った。
ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に三次元の傾斜が設けられたエッチング装置を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エッチング処理を行った。
エッチング処理1枚目、10枚目、30枚目、60枚目において、ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に沈降し、底面の傾斜に沿って流下した溶融シリカの溶解物の有無を確認したところ、60枚エッチング処理後においてもディップ槽11の底面には溶融シリカの溶解物は見られなかった。一方、貯蔵タンク15の底面においては、30枚処理後には溶融シリカの溶解物の沈殿が確認された。
エッチング処理後における樹脂組成物の残渣の有無を光学顕微鏡で観察したところ、60枚エッチング処理後の基板にも、残渣は見られなかった。
(比較例1)
ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に傾斜の無いフラットな構造を有するエッチング装置を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エッチング処理を行った。
ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に傾斜の無いフラットな構造を有するエッチング装置を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エッチング処理を行った。
エッチング処理1枚目、10枚目、30枚目、60枚目において、ディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に沈降した溶融シリカの溶解物の有無を確認したところ、30枚処理後にはディップ槽11と貯蔵タンク15の底面に溶融シリカの溶解物の沈殿が確認された。
エッチング処理後における樹脂組成物の残渣の有無を光学顕微鏡で観察したところ、30枚目のエッチング処理基板で、エッチング不足による残渣が発生していた。
本考案のエッチング装置は、無機充填材が高い含有量で充填された耐熱性、誘電特性、機械強度、耐化学薬品性等に優れた絶縁樹脂組成物層をエッチング加工する用途に適用できる。例えば、多層ビルドアップ配線板、部品内蔵モジュール基板、フリップチップパッケージ基板、パッケージ基板搭載用マザーボード等における絶縁樹脂の微細加工に適用できる。
1 回路基板
2 絶縁層
3′ 銅箔
3 半田接続パッド、接続パッド
4 樹脂組成物層
5 エッチング液層
6 樹脂組成物分散層
7 無機充填材溶解層
8 金属マスク
9 銅箔
10 エッチング液
11 ディップ槽
12 基板
13 搬送ロール対
14 投入口
15 貯蔵タンク
16 エッチング液吸込口
17 エッチング液供給管
18 エッチング液回収管
19 沈殿物回収管
20 沈殿物排出口
21 エッチングユニット
22 エッチング液供給口
23 開閉バルブ
2 絶縁層
3′ 銅箔
3 半田接続パッド、接続パッド
4 樹脂組成物層
5 エッチング液層
6 樹脂組成物分散層
7 無機充填材溶解層
8 金属マスク
9 銅箔
10 エッチング液
11 ディップ槽
12 基板
13 搬送ロール対
14 投入口
15 貯蔵タンク
16 エッチング液吸込口
17 エッチング液供給管
18 エッチング液回収管
19 沈殿物回収管
20 沈殿物排出口
21 エッチングユニット
22 エッチング液供給口
23 開閉バルブ
Claims (3)
- アルカリ不溶性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物をエッチング液によってエッチング処理する際に使用するエッチング装置において、
エッチング装置が、樹脂組成物をエッチング液によって除去するエッチングユニットを有し、
エッチングユニットが、樹脂組成物を有する被処理物が浸漬処理される、エッチング液が入ったディップ槽と、ディップ槽からオーバーフローしたエッチング液を回収する貯蔵タンクと、ディップ槽の底面に溜まった沈殿物を貯蔵タンクへと送るための沈殿物回収管を有し、
ディップ槽及び貯蔵タンクの底面に二次元又は三次元の傾斜が設けられており、
沈殿物回収管の排出口が貯蔵タンクに接続されていることを特徴とするエッチング装置。 - 樹脂組成物に対する無機充填材の含有量が50〜85質量%であることを特徴とする請求項1記載のエッチング装置。
- エッチング液が、15〜45質量%のアルカリ金属水酸化物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のエッチング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020004622U JP3230280U (ja) | 2020-10-27 | 2020-10-27 | エッチング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020004622U JP3230280U (ja) | 2020-10-27 | 2020-10-27 | エッチング装置 |
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JP2018171412A Continuation JP2020041099A (ja) | 2018-09-13 | 2018-09-13 | エッチング装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP3230280U true JP3230280U (ja) | 2021-01-21 |
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ID=74164280
Family Applications (1)
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JP2020004622U Active JP3230280U (ja) | 2020-10-27 | 2020-10-27 | エッチング装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3230280U (ja) |
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2020
- 2020-10-27 JP JP2020004622U patent/JP3230280U/ja active Active
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