JP3228836B2 - 記録装置 - Google Patents

記録装置

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JP3228836B2
JP3228836B2 JP16851594A JP16851594A JP3228836B2 JP 3228836 B2 JP3228836 B2 JP 3228836B2 JP 16851594 A JP16851594 A JP 16851594A JP 16851594 A JP16851594 A JP 16851594A JP 3228836 B2 JP3228836 B2 JP 3228836B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は記録装置に関し、特に記
録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させて記録を行な
う、いわゆるシリアル型の記録装置であって、磁気式リ
ニアエンコーダによりキャリッジの位置を検出する記録
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気式リニアエンコーダは、長さ方向に
沿って所定ピッチで交互に逆極性に着磁した一直線状の
磁気スケール部と、この磁気スケール部に沿って移動可
能に設けられ、磁気スケール部の磁界を検知する磁気ヘ
ッドからなり、その磁気ヘッドは磁気抵抗効果素子(以
下、MR素子と略称する)から構成される。この磁気式
リニアエンコーダをシリアル型の記録装置においてキャ
リッジの位置検出に用いた構成が提案されている。
【0003】この場合、記録装置内で磁気式リニアエン
コーダの磁気ヘッドにインクや人間の汗などが付着する
ため、磁気ヘッドの長期通電テストをすると電気化学的
腐食を起こし、パーマロイなどの強磁性体の薄膜からな
るMR素子の線ないし帯状パターンが細り、断線を生ず
る。これを防止するためには、MR素子をインク、汗
液、水等から遮断する必要がある。このために、従来の
記録装置の磁気式リニアエンコーダの磁気ヘッドには図
6のような構造が採用されている。
【0004】図6において、符号60は磁気スケール
部、61は磁気ヘッドの要部の磁気ヘッド素子部であ
る。磁気ヘッド素子部61は、ガラス基板62上に薄膜
からなるMR素子63を形成し、その上に接着剤64に
より保護ガラス板65を接着した構造となっている。磁
気ヘッド素子部61は、ギャップgを介し磁気スケール
部60に対向し、磁気スケール部60の長さ方向(図中
左右方向)に対し、MR素子63を形成した面が直交す
るように配置される。
【0005】このような構造によれば、MR素子63は
接着剤64、保護ガラス板65に覆われ、大気中に曝さ
れるのは端面だけであって極めて少なく、MR素子の耐
食性を向上できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6の
ような構造では、磁気スケール部60に対するMR素子
63の成膜面の配置の向きとの関係上、MR素子63の
磁界を検知する強磁性体薄膜の線ないし帯状のパターン
は1本だけになってしまうので、高い出力は得られな
い。特に、例えば高密度のドット方式でカラー記録を行
なうプリンタで磁気式リニアエンコーダを用いる場合、
省スペース、高速応答性、高精度などの要請から、磁気
スケール部として、Fe−Cr−Co合金あるいはCo
−PメッキワイヤやBaフェライト塗布ワイヤ等からな
り径が1mm程度と細いマグネットワイヤで、N極とS
極の着磁のピッチがドット密度に対応して100μm以
下で例えば50μmという非常に小さいピッチで着磁し
たものを用いることが提案されており、その場合、図6
の構造の磁気ヘッドでは出力が極めて低く、必要な高さ
が得られないという問題があった。
【0007】そこで本発明の課題は、磁気式リニアエン
コーダを用いてキャリッジの位置検出を行なうシリアル
型の記録装置において、磁気式リニアエンコーダの磁気
スケール部が上述のマグネットワイヤのように細くて着
磁のピッチが非常に小さい場合でも、同エンコーダの磁
気ヘッドから必要な高さの出力信号を得て確実にキャリ
ッジ位置検出を行なえるようにするとともに、前記磁気
ヘッドの耐食性、耐久性を向上することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明によれば、上述した磁気スケール部と磁気ヘ
ッドからなる磁気式リニアエンコーダを備えた記録装置
において、前記磁気ヘッドは、表面が前記磁気スケール
部に近接して平行に対向するように配置され少なくとも
表面が絶縁体からなる基板と、この基板の表面に、前記
磁気スケール部の長さ方向に沿って磁気スケール部の着
磁のピッチに対応したピッチで複数本並んで形成された
Ni−Fe膜からなる線状の磁気抵抗効果素子パターン
からなる磁気抵抗効果素子と、この磁気抵抗効果素子を
覆うように前記基板の表面上に成膜されたアモルファス
窒素化合物絶縁体からなる保護膜と、前記Ni−Fe膜
と前記保護膜との間に形成され、前記保護膜の成膜時の
前記Ni−Fe膜との反応を防止する窒素を含まない無
機系絶縁体からなる中間絶縁膜と、を有する構成を採用
した。
【0009】
【0010】
【作用】このような構成によれば、磁気抵抗効果素子
は、磁気スケール部の着磁のピッチに対応したピッチで
複数本並んで形成された線状の磁気抵抗効果素子パター
ンからなるので、前記パターンが1本しかなかった従来
例に比べて格段に高い出力が得られる。
【0011】また、アモルファス窒素化合物絶縁体から
なる保護膜は水分やイオン等の透過性が少なく、磁気抵
抗効果素子の耐食性を向上できるとともに、磁気抵抗効
果素子の成膜時の温度より低温で成膜でき、素子の磁気
特性の劣化を防止できる。
【0012】
【0013】さらに、中間絶縁膜により保護膜の成膜時
Ni−Fe膜との反応を防止し、その反応による磁気
抵抗効果素子の抵抗値の上昇を防止できる。
【0014】
【実施例】以下、図を参照して本発明の実施例を説明す
る。
【0015】図1は実施例の記録装置においてキャリッ
ジの位置検出に関わる要部の構成を示している。
【0016】図1において、一点鎖線で示すキャリッジ
1は、インクジェット方式などの記録ヘッド2を搭載
し、ガイドバー3上に摺動可能に設けられており、外周
面に螺旋溝を形成した案内軸4によって往復移動するよ
うに案内される。即ち、キャリッジ1は、案内軸4の螺
旋溝に係合する不図示の係合部を有し、不図示のキャリ
ッジ駆動モータによって案内軸4が回転駆動されると、
前記係合部が案内軸4の螺旋溝に沿って移動し、キャリ
ッジ1が移動する。
【0017】キャリッジ1は、両方向の矢印で示すよう
にプラテン5に沿って往復移動し、この移動中に記録ヘ
ッド2が駆動され、プラテン5の外周面上に巻付けられ
た記録シート6に対してインク滴を噴射し、所定ピッチ
PでドットDを記録する。そして、ドットマトリクスパ
ターンで画像ないし文字が記録される。
【0018】一方、キャリッジ1の位置を検出して同期
信号を発生する磁気式リニアエンコーダを構成する磁気
スケール部7と磁気ヘッド8が設けられている。
【0019】磁気スケール部7は、先述の径が1mm程
度のマグネットワイヤからなり、例えば、図7の(a)
のようにワイヤ全体がFe−Cr−Co合金からなるも
の、あるいは(b)のように非磁性ステンレスのワイヤ
の外周にCo−Pメッキしたもの、あるいは(c)のよ
うに非磁性ステンレスのワイヤの外周に形成された溝に
強磁性酸化物の磁性粉を分散させたバインダを塗布した
ものとして構成される。そして、磁気スケール部7は長
さ方向に沿ってN極とS極がドットDのピッチPに対応
したピッチで交互に逆極性に着磁されている。ドットD
のピッチP、つまり前記着磁のピッチは便宜上、実際よ
り非常に大きく図示してあり、実際のピッチは100μ
m以下である。そして、磁気スケール部7は案内軸4に
平行、つまりキャリッジ1の移動路に平行に張架されて
不図示の記録装置の本体フレームに固定されている。
【0020】また図1において、磁気ヘッド8は、MR
素子によりスケール部7の磁界を検知するMRヘッドで
あり、磁気スケール部7に対し摺動可能でキャリッジ1
内に固定されている。磁気スケール部7の磁界に応じた
磁気ヘッド8の出力信号はフレキシブルプリント板9と
フレキシブルケーブル10を介し記録装置の制御回路基
板11に導かれ、その制御回路において磁気ヘッド8の
出力信号によりキャリッジ1の位置が検出されるように
なっている。
【0021】次に、磁気ヘッド8の構造の詳細を図2〜
図5により説明する。
【0022】図2において、磁気ヘッド8の構成部材と
して、まず符号12はスライダであり、全体として中空
の筒状に形成され、磁気スケール部7を挿通し、両端部
に形成された滑り軸受部12aに磁気スケール部7を摺
動可能に嵌合して磁気スケール部7に対し摺動可能であ
り、キャリッジ1に固定されている。
【0023】スライダ12の内側には絶縁体のガラスか
らなるMR素子基板13が固定されており、その表面が
ギャップgを介して磁気スケール部7に近接して平行に
対向するように配置されている。磁気スケール部7の基
板13と対向する側の部分が着磁部7aとして着磁され
ている。
【0024】基板13の表面にはMR素子が設けられて
いる。その様子を図3に示してある。図3は、図2のA
部の断面を拡大して磁気スケール部7の着磁状態とMR
素子パターンの配置等を模式的に示している。図3に示
すように、基板13の表面にはMR素子を構成するパー
マロイなど強磁性体の薄膜からなる線状のパターンであ
るMR素子パターン14が磁気スケール部7の長さ方向
に沿って磁気スケール部7の着磁のピッチ(N極どう
し、ないしS極どうしのピッチ)に対応したピッチで複
数本(ここでは7本)並んで形成されている。
【0025】さらに基板13上で絶縁体からなる保護膜
15がMR素子パターン14の全体を覆うように形成さ
れている。
【0026】ここでMR素子パターン14の膜厚は50
0オングストローム程度であり、その磁気特性の関係か
らギャップgは20μm±5μm程度に抑えられ、その
ため保護膜15の膜厚も10μm±3μm程度に抑えら
える。
【0027】ところで、図3は、あくまでもMR素子部
の断面を模式的に示したものであって、実際にはMR素
子パターン14の本数はより多く、保護膜15は好まし
くは2層の膜とされる。その実際の磁気ヘッド8のMR
素子部の構造例を図4,図5に示してある。図4は保護
膜を透視して示す磁気ヘッド8のMRヘッド素子部の表
面の平面図、図5は断面図である。
【0028】図4において、7本のMR素子パターン1
4をつづら折りのように接続して1組としたものが4組
設けられ、それぞれの組の両端に電極16a、16bの
薄膜パターンが接続されている。即ち、この場合、28
本のMR素子パターン14からMR素子が構成されてい
る。
【0029】また、保護膜15は、図5に示すように、
MR素子パターン部14と電極16a,16bを形成し
た強磁性体薄膜(パーマロイ膜)17の直上にアモルフ
ァスSiNx膜(x=0.05at%以上)15aを成膜
し、その上にUVエポキシ樹脂からなるエポキシ膜15
bを成膜して2層の保護膜としている。
【0030】ここで、保護膜15をこのようにした理由
を以下に説明する。
【0031】前述のように、保護膜15の膜厚は10μ
m±3μmに抑える必要がある。これに対して一般的に
は簡便な方法として、UVエポキシ樹脂を用い、スクリ
ーン印刷やスピンコート等により、膜厚を制御すること
が可能である。この場合、腐食を極力抑えるために、C
-1イオンが50ppm以下のUVエポキシを用いる。
またパーマロイからなるMR素子パターン14の温度を
150℃以上にあげると、MR特性が劣化するため、保
護膜15を150℃以下で形成するように常温硬化タイ
プのUVエポキシが用いられる。
【0032】このような条件で保護膜を形成してMRヘ
ッドを作製し、促進環境テストを行なった。条件は人工
汗液中に上記MRヘッドを浸漬して正規の電流1.2m
Aで通電テストを行なった。その結果1hrでMR素子
が断線してしまった。これに対し図6の従来例のMRヘ
ッドは100hr通電してもOKであった。
【0033】この原因としてはUVエポキシ樹脂の煮沸
吸水率が1hrで0.4wt%であり、吸水して、汗液
中の水分やイオンがエポキシ分子を通過するためと思わ
れる。UVエポキシ樹脂は有機系樹脂の中ではかなり煮
沸吸水率は少ない方であるが、まだこのレベルではむず
かしいものと思われる。その点、無機系の膜は煮沸吸水
率が約0である。
【0034】またUVエポキシ樹脂の場合、基板のガラ
ス面との接着強度があまり良くなく、界面が微妙に剥離
している可能性がある。今回JISにもとづくクロスカ
ットテストを行なったところ、パーマロイ面上の剥離は
なかったが、ガラス面のエポキシ樹脂の剥離がみられ
た。特にこの現象は、前記の促進環境テスト前に−20
℃と+70℃のヒートショックを20回行なってから、
通電テストをするとMR素子の断線が速くなったことか
らもわかった。界面の接着強度の弱さはガラスとエポキ
シ樹脂の相性、または線膨張係数の違いによると思われ
る。
【0035】これに対し、無機系の保護膜の場合、
(1)材質、(2)成膜方法、(3)成膜手段によりガ
ラスとの接着強度を変えることができ、エポキシ膜より
密着強度を上げることが可能である。
【0036】ガラス基板と密着性の良い無機系絶縁物と
してはSi系無機絶縁物がある。これはガラスの主成分
であるSiO2と相性が良く、Si−Si結合するため
と思われる。しかし、今回ガラス基板と全く同じ成分の
保護膜のスパッタを行なったが、膜質が悪く、ガラス成
分中のPb+やNa+等のアルカリイオンが環境促進テス
トで発生し、MR素子の断線を早め、10hrくらいで
断線してしまった。
【0037】一方、SiNx(x=0.05at%以上)
の膜は反応性スパッタやイオンプレーティングで150
℃以下で密着性の良い膜となる。SiNxの場合、膜は
非晶質であり、N量が0.05at%以上で、電気抵抗
が102Ωcmから1016Ωcm以上の絶縁物へ変化す
る。また硬さもヌープ硬度でN2=0.05at%以上
入れることによりHk2000以上となり、好ましくは
2が10at%以上でHk3000以上となる。Si
膜そのものはHk=1000以下である。
【0038】ところで、前記有機保護膜の形成の場合も
無機保護膜の形成の場合も150℃以下で形成しないと
MR特性が劣化することを述べたが、その理由を説明し
ておく。
【0039】MR素子の磁気抵抗変化率を大きくし、ま
た安定化する目的でMR素子の磁化容易方向を磁気スケ
ール部からの磁場方向と平行となる方向に付けておくこ
とが一般的である。このような磁気異方性をMR素子に
つけさせるためには、MR素子(例えばNi−Fe又は
Ni−Co)の成膜時につける方法と、ホトリソエッチ
ング後の後工程で磁場中焼鈍によりつける方法がある。
本実施例の図4の構造の場合、多チャンネル素子で、各
チャンネルの抵抗変化率の絶対値ができるだけ近い必要
がある。このため、成膜時に磁気異方性を素子の決めら
れた方向に付ける方法のほうが各チャンネル間の抵抗変
化率の差が少なくなる。
【0040】しかし、このような方法をとった場合、M
R素子成膜後の工程がMR素子成膜時の温度より低い温
度でないと、MR素子の磁気異方性が乱れて出力が下が
るという現象が発生する。MR素子の成膜時の温度は、
Ni−Feの場合とNi−Coの場合で異なるが、膜の
密着度と膜の保磁力を考えると、200℃以上が一般的
である。そのため本実施例では保護膜の形成時の温度を
MR素子の成膜温度より十分下げた150℃以下とした
ものである。
【0041】以上のように本実施例のMR素子の保護膜
は(1)水分やイオン等の透過率性の少ないこと(パッ
シュベーション性)、(2)保護膜形成時の温度がMR
素子成膜時の温度より低いこと、の2点が重要である
が、それ以外に下記のような点も重要となる。
【0042】磁気式リニアエンコーダの近くには、イン
ク等が噴霧するため、磁気ヘッド8のスライダ12部は
密閉型構造としており、スライダ12の軸受部12a以
外は完全密閉されており、かつ軸受け部12aと磁気ス
ケール部7の隙間は5〜20μm程度に設定している。
また、このような狭い隙間でも良好な摺動状態が得られ
るように、スライダ12は、ガラスフィラーを10〜5
0%含有しているPPS(ポリフェニレンサルファイ
ド)で形成されている。
【0043】一方、本実施例のような記録装置の場合、
耐久性も重要視され、一般的にはキャリッジ走査の25
0万往復の耐久が要求される。このような耐久テストを
行うと、スライダ12の軸受部12a及び磁気スケール
部7は少量ながら削られ、スライダ12が密閉型のため
特に図3のギャップg部に両者の削れカスの粉が付着
し、その削れ粉により保護膜15や磁気スケール部7が
摩耗する場合も発生する。
【0044】磁気スケール部7の着磁深さは深い程出力
がでるが、着磁用磁気ヘッドで着磁して磁気スケール部
7を作成する場合、着磁深さは最高で着磁ピッチと同等
(50μmピッチの時、着磁深さ50μm)で、通常は
その半分程度の深さにしか入らない(50μmピッチの
時、着磁深さ25μm)。ただし、この着磁深さは、保
護膜15の厚さに比べ十分深いため、磁気スケール部7
が多少削れても出力は若干下がるが致命的にはならな
い。
【0045】ところが、無機保護膜の場合、生産性を考
慮すると膜厚は5μm以下に限定され、一般的には1〜
2μmであるため、もし保護膜が削られてMR素子が断
線した場合は致命的になる。そのため、保護膜は磁気ス
ケール部7及びスライダ12の軸受部12aより硬い必
要がある。
【0046】以上の保護膜の摩耗によるMR素子の断線
は非常に確率が少ないが致命的欠陥のため品質上大きな
問題となる。保護膜の摩耗を発生させる上記削れ粉の硬
さは以下のような物質による。
【0047】まず、スライダ12の軸受部12aの削れ
粉の硬さ、特に硬いフィラー粉の硬さは以下の表1のよ
うになる。
【0048】
【表1】
【0049】また磁気スケール部7の削れ粉の硬さは、
図7の(a),(b),(c)に示した各磁気スケール
部のタイプにより以下の表2のようになる。
【0050】
【表2】
【0051】上記表1,表2中で最も硬い物質を考える
と、Hk2000以上の硬さが保護膜としては必要とな
る。
【0052】以上の理由から、保護膜として、低温で成
膜でき、なおかつ硬く、そして、イオン透過性が少ない
という条件を満足する無機絶縁膜を選ぶ必要がある。
【0053】ここで、下記の表3は、薄膜形成可能な主
要窒化物、酸化物、炭化物のバルクでの硬さを示してい
る。
【0054】
【表3】
【0055】この表3に示されているように、バルクで
は硬さは炭化物>窒化物>酸化物となっているが、Hk
2000以上はSi34とAl23と他の炭化物であ
る。しかし、薄膜形成法でなおかつ200℃以下の成膜
温度の場合、SiNx以外の化合物はHk2000以上
を達成することができず、なおかつイオン透過性の悪い
膜となる。それらの膜は膜成長できず、ボソボソの膜質
となる。
【0056】ただしHk1500〜Hk2000と限定
した場合、SiNx以外にSiON、SiAlN等のS
iとNと他の元素が入っている絶縁物薄膜は成膜するこ
とができる。
【0057】以下、Siの窒化物、酸化物、炭化物の薄
膜についてモデル実験した結果を図8、図9のグラフに
より説明する。なお成膜はスパッタ法によりSi基板上
に膜厚2μmで行なった。
【0058】図8のグラフはSiを中心とした酸化物薄
膜と窒化物薄膜と炭化物薄膜の薄膜形成時の基板温度と
薄膜の硬さの関係を示している。このグラフに示すとお
り、SiNxは基板温度100℃以下で硬さが飽和し、
SiOyは250〜300℃で飽和し、SiCzは300
℃以上でも硬さは飽和しない。これはNが他のO,Cあ
るいはB等に比べ低温薄膜に適しているためと思われ
る。
【0059】また、図9のグラフは、図8のグラフの各
薄膜のイオン透過率をみるために、まず反応しやすい純
Feを基板上に500オングストローム形成し、その上
に上記各薄膜を形成し、塩酸1%で50℃、100hr
浸漬時の飽和磁束密度(Ms)の減少率を示している。
この実験でSiNxに比べSiOy、SiCzはCl-1
オンにより低温成膜では純Feが溶かされることがわか
った。これはFeの溶解された体積を微少でも感知でき
るMsで調べた結果である。MsはVSM(振動試料型
磁束計)にて測定した。
【0060】以上のように保護膜はSiNxが適してい
る。特に反応性スパッタ法を用いることにより、より低
温でなおかつ高レートでSiとNの比が幅広い組成の保
護膜を形成することができる。
【0061】また、SiNx、SiON、SiAlNの
ようにSi系の窒化物の場合Siの反応の手により、ア
モルファス化しやすく、結晶粒界が存在しないため、イ
オン透過率が低くなっている。
【0062】ところで、MR素子の腐食は (1)膜質の悪さによる膜上からの腐食 (2)ゴミによるピンホールからの腐食 (3)膜応力大のためによるMR素子基板と膜との剥離
による腐食 の3つがあげられる。ここで(1)、(3)の腐食は成
膜のスパッタ時のArガス圧力とN2ガス圧力を制御す
ることにより対策可能である。これらは反応性スパッタ
に関して従来より研究されている。しかし(2)の腐食
の原因を取り除くことは大変困難である。これは5mm
×5mmの面積内に1μm以上のゴミを0個にする必要
があるからである。
【0063】SiNxの保護膜にピンホールがあった場
合、図10のように、SiNx膜15aのピンホールの
直下のMR素子パターン14の薄膜部分が腐食される。
顕微鏡下でその反応を観察すると、パーマロイ膜面上で
ピンホール直下の反応は必ず人工汗液への浸漬、通電
後、即発生し、反応ガスが湧き出す。ガラス面上にもピ
ンホールがあると思われるが、反応すべき物質がないた
め反応ガスが湧き出してこない。
【0064】またMR素子パターンのパーマロイ薄膜面
上の反応は丸い状態で周囲に広がるが、保護膜がエポキ
シ樹脂の場合のように、基板のガラス部分を飛び超えて
隣のパターンに反応が進むことはない。これは、ガラス
とSiNxの密着度が高いためと思われ、パターンの縁
の時点でストップする。また、エポキシ樹脂の場合のよ
うに反応が始まるといっせいに全面に広がるのでなく、
浸漬後即ピンホール部から反応し、徐々にパーマロイ膜
で時間をかけて広がり、最終的に断線する。
【0065】このためSiNx膜のみの保護膜の場合、
人工汗液中での浸漬通電で100hr以上超えるもの
は、ピンホールの発生確率で決まってしまう。クラス1
万程度のクリーンルーム中で作製したものは10%程度
しかOKとならない。
【0066】これを改善する方法の1つとしてSiNx
の膜厚を上げる方法がある。一般的には100オングス
トロームよりも200オングストロームと厚いほうが良
いが、ピンホール数が大きく減少する屈曲点は500オ
ングストローム以上である。500オングストローム以
上〜5μmまでは厚くする程徐々に少なくなるが、反面
1μm以上厚くすると全応力がふえ、MR出力は徐々に
低下し、5μm以上ではかなり低下してしまう。また1
μm以上の厚みの場合、成膜時間がかなりかかり、生産
性が極端に下がる。
【0067】以上のことを鑑み、保護膜15を多層膜と
する。この場合、多層膜として2通り考えられ、一方
は、MR素子パターンの強磁性体薄膜の直上の膜を、密
着度良くピンホールの少ない絶縁無機膜とし、その上に
安価で厚く塗れる有機膜を形成するものとする。他方
は、前記の直上の膜を、密着度良くピンホールの少ない
絶縁無機膜とし、その上に成膜スピードの速い無機膜を
コートするものとする。
【0068】上記のMR素子パターンの薄膜の直上の保
護膜は前述のようにSiNx膜が最適であり、その厚さ
は1μm程度が最適である。また、その上に有機膜を成
膜する場合、UVエポキシ樹脂が最も望ましい。それは
Cl-1イオン濃度が低く、密着度が高く、常温硬化でき
るという理由による。
【0069】以上のような理由から、保護膜15の最適
なものとして、先述の図5のように、MR素子パターン
14を形成した強磁性体薄膜17の直上にSiNx膜1
5aを成膜し、その上にUVエポキシ樹脂からなるエポ
キシ膜15bを成膜する。
【0070】ここで成膜方法を説明すると、まず後で多
数のMR素子基板13として切断される大きなガラス板
の上に蒸着によりパーマロイ膜を成膜し、エッチングに
より電極16a、16bとMR素子パターン14の形状
に加工する。この場合、前記1枚の大きなガラス板上に
図4と同形状のパターンを例えば150ケ以上いっしょ
に形成する。
【0071】その後、電極16a、16bの図4中下部
側のみマスキングして、SiNx膜15aを1μmの厚
さでスパッタする。即ち、SiNx膜15aはMR素子
パターン14全部と電極16a、16bを含めてMR素
子基板13上の図4中上半部全面を覆い、MR素子基板
13の外縁となる切断前の前記大きなガラス板の境界ま
で覆う大きさに形成される。
【0072】次に、UVエポキシ樹脂からなるエポキシ
膜15bをスクリーン印刷で成膜する。その厚みは8μ
m±3μmで成膜する。その時、エポキシ膜15bは、
SiNx膜15a上からMR素子パターン14全体と電
極16a、16bの上部は覆うが、MR素子基板13の
外縁となる切断前の前記大きなガラス板の切断の境界ま
では覆わない大きさとする。つまりエポキシ膜15b
は、その全周縁がSiNx膜15aの全周縁の内側に位
置するようにSiNx膜15aの成膜領域の内側にSi
Nx膜15aより小さく形成する。これは前記の各膜の
成膜後に前記の大きなガラス板をMR素子基板13の大
きさに切断する時、エポキシ膜15bが切断される境界
を覆っていて切断されると、切断面から剥離するためで
ある。なおSiNx膜15aは精密切断刃で切断しても
密着性が良いので剥離しない。
【0073】またSiNx膜上でのエポキシ膜はガラス
基板上に比べ密着度も向上してエポキシ膜の端面からの
剥離が減少することからも、エポキシ膜15bは上記の
ようにSiNx膜15aより小さく形成するのが良い。
【0074】このようにエポキシ膜15bを成膜した
後、前記大きなガラス板をMR素子基板13の大きさに
切断して磁気ヘッド8の素子部が完成する。
【0075】このように作製したサンプルについて促
進、環境テストを行なったところ、100ケ中100ケ
全て、100hr以上通電OKとなった。
【0076】また、保護膜15の他の実施例として、S
iNx膜上にエポキシ膜のかわりに金属のCrをスパッ
タで5μmの厚さで成膜したところ、同様に100ケ中
100ケ通電テストがOKとなった。
【0077】なお、図4中露出している電極16a、1
6bの下部は図5に示すようにハンダ18をつけた後、
FPC(フレキシブルプリント板)9を接合し、その上
から不図示のUVエポキシ樹脂で厚く覆うことにより腐
食をさける。この部分は磁気スケール部7との距離が大
きくなるので、エポキシ樹脂を厚くできる。
【0078】以上のような本実施例によれば、磁気ヘッ
ド8のMR素子は、磁気スケール部7の着磁のピッチに
対応したピッチで複数本並んで形成された線状のMR素
子パターン14からなるので、前記パターンが1本しか
なかった従来例に比べて格段に高い出力が得られる。
【0079】またMR素子の直上の保護膜をアモルファ
ス化したSiNx膜15aとし、水分やイオン等の透過
性が少なく、MR素子成膜時の温度より低温で成膜で
き、しかも磁気スケール部7及びスライダ12の軸受部
12aより硬いものとしたので、MR素子の腐食を防止
できるとともに保護膜の成膜時の温度によりMR素子の
特性を劣化させることがなく、さらに、保護膜の摩耗に
よるMR素子の断線を防止でき、磁気ヘッドの耐食性、
電磁変換特性および耐久性を向上できる。
【0080】なお、MR素子の直上の保護膜はアモルフ
ァスSiNx膜が最適ではあるが、SiNx膜に限らず、
条件に応じて、SiON,SiAlN等のSiとNと他
の元素が入っている絶縁物や他の窒素化合物の絶縁物の
アモルファス薄膜とすることも考えられる。
【0081】また、エポキシ膜15bの代わりに例えば
アクリル樹脂などからなる他の有機系保護膜を形成して
も良い。
【0082】また、MR素子基板13は、絶縁体のガラ
スからなるものとしたが、例えば半導体のSiからなり
表面にSiO2などの絶縁層を形成したものでもよく、
要するに少なくとも表面が絶縁体からなるものであれば
良い。
【0083】[他の実施例]ところで、上記実施例のよ
うにMR素子の薄膜をNi−Fe膜(パーマロイ膜)と
し、SiNx膜を保護膜とした場合、次のような問題点
を生じた。それはSiNx膜をスパッタすることによ
り、Ni−Fe膜の全抵抗値が上昇してしまうという現
象が発生することである。この上昇率は最低10%〜最
高50%以上にもなってしまう。この原因は明らかでは
ないが、Ni−Fe膜の表面にSiNx膜が付着する
時、SiNxがSiとNxに分解し、パーマロイに窒化現
象を起こすためと思われる。
【0084】そこで、この問題に対処した実施例を以下
に説明する。その実施例の具体的の構成を説明する前
に、その構成を想到するまでに検討した事項を説明す
る。
【0085】まず、上記問題に関して行なった実験を説
明する。
【0086】基板上にNi−Fe膜を膜厚500オング
ストロームで形成し、パターニングをしてエッチング
し、2000Ω/1本のMR素子パターンを形成した。
その後、SiNxのスパッタ時の逆スパッタと本スパッ
タによる抵抗上昇分を分離するため (A)逆スパッタのみで止めた場合 (B)逆スパッタなしで本スパッタのみ行った場合 の2種類の検討を行った。本スパッタはSi99.99
9%の純度のターゲットでAr+N2の反応性スパッタ
にて行った。SiNx(x=1.0at%)は2μmの厚
みである。
【0087】その結果、下記の表4の結果を得た。
【0088】
【表4】
【0089】逆スパッタでの上昇分は、Ni−Fe膜が
薄くなったためである。すなわち、濃度計で調べると全
厚500オングストロームに対し約5〜10オングスト
ロームの減少が見られ、これによる膜の断面積の減少に
より膜全体の抵抗値が上がったものである。
【0090】一方、本スパッタのみの場合、Ni−Fe
膜の膜厚変化はなく、抵抗値上昇は他の原因による。す
なわち、パーマロイ(Ni−Fe)自体の固有抵抗値が
あがることにより、全体の抵抗が上昇したものである。
【0091】また、逆スパッタ後、本スパッタしたサン
プルの抵抗値は200〜300Ω(20%〜30%)と
大きく変化し、逆スパッタによる膜厚減少以外の要因の
何かの変化分が加算し、変化率がよりアップする。これ
は逆スパッタによりパーマロイ表面の不働体膜(FeO
又はNiO)が除去され、Nの影響がより受けやすくな
ったためと思われる。
【0092】そこで、SiNx膜とNi−Fe膜の中間
にこれらの反応を防止するための中間絶縁膜を付着させ
ることを考えた。この場合、 (1)中間絶縁膜として必要なことはSiNxとNi−
Fe膜の互いの反応を防止すること。
【0093】(2)SiNと中間絶縁膜とNi−Fe膜
が応力的にバランスがとれて膜剥離のないこと。
【0094】(3)中間絶縁膜にピンホール等の欠陥の
少ないこと。
【0095】(4)中間絶縁膜は勿論絶縁性のあるこ
と。
【0096】(5)中間絶縁膜が磁性のないこと。
【0097】等が必要である。
【0098】これらのことから、中間絶縁膜として各種
金属膜は(4)の理由より除外された。そのためセラミ
ックス膜が選択され、またセラミックスの中でも窒化物
は(1)の理由で除外した。また硼化物、炭化物は、反
応性スパッタで少なくとも200℃以下でピンホールの
少ない膜が作成されにくいため除外された。このため酸
化物のみに絞って検討した。
【0099】Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、C
u、Zr、Nb、Mo、Ta、W等の酸化物の薄膜を反
応性スパッタで成膜して検討したところ、200℃以下
で成膜でき、上記条件を満足するものは、Si系、Ti
系、Cr系のみであった。
【0100】これらの膜は、200℃以下でもピンホー
ルの少ない膜が得られ、膜密着強度も良かった。特にS
iOやTiO、CrO等の酸化物の酸化度が完全でない
中間酸化物が優れていた。SiO2、TiO2、Cr23
とも完全な酸化物を形成するためには、高温中300℃
以上のスパッタ反応が必要なため、200℃以下ではA
r中の酸素分圧をふやしても作成することができなかっ
た。
【0101】また、単一元素の中では、Si(純度が5
ナイン以上のとき)は2.3×10+5Ωcm、Tiは4
2×10-6Ωcm、Crは2×10Ωcmというよう
に、Siのみ抵抗値が高く、105Ωcm以上のものを
絶縁物とすると、Siのみ絶縁膜になり得る。
【0102】次に、パーマロイ膜上にSiN膜を成膜し
た場合と、パーマロイ膜上にSiの中間絶縁膜を成膜し
た上にSiN膜を成膜した場合のそれぞれについて、表
面からの深さ方向におけるSi,N,Fe,Niの各元
素の量をマイクロオージェ(μ−AES)にて分析した
結果を図11,図12のグラフにより説明する。
【0103】図11のグラフは、膜厚500オングスト
ロームのパーマロイ膜の直上にSiN膜を反応性スパッ
タにて700オングストロームの膜厚に形成した試料を
表面よりスパッタエッチングして、Si,N,O,F
e,Niの各元素量を表面から深さ方向に分析したもの
である。縦軸は各元素量に対応するオージエ電子カウン
ト数を示し、横軸はエッチング時間を示している。
【0104】図12のグラフは、膜厚500オングスト
ロームのパーマロイ膜の直上にSi膜を70オングスト
ロームの膜厚で形成し、その上にSiN膜を630オン
グストロームの膜厚で形成した試料を表面よりスパッタ
エッチングして各元素量を分析したものである。
【0105】図11と図12のグラフを比較してわかる
ことは、SiとNとOはFe、Ni元素と拡散する領域
が両方あるが、特にSiが中間絶縁膜としてある場合、
N、Oの拡散よりSiの拡散が深い。また、Siが中間
絶縁膜としてない場合、Oに比べNは深く拡散する。O
はSiが中間絶縁膜としてある場合、ない時より多く存
在する。この原因は不明である。なお、ここでいう拡散
とは、各元素が重なり合っている領域をさす。
【0106】これらのことから、Siが中間絶縁膜とし
て存在する場合、パーマロイの窒化(Nの拡散)が少な
いことが判明した。これは、SiとNi−Fe(パーマ
ロイ)の両者の元素との特別な関係(お互いに拡散しや
すい)のため、Nの拡散が防止されるからと思われる。
【0107】以上の検討事項から中間絶縁膜として、S
i膜,SiO膜,TiO膜あるいはCrO膜を成膜する
構成を想到した。その実施例の具体的な構成を以下に説
明する。
【0108】図13は、上記中間絶縁膜を形成した本実
施例の磁気ヘッドのMRヘッド素子部の断面を示してお
り、先の実施例の図5の断面図に対応しており、図5中
と共通ないし対応する部分には同一の符号が付してあ
る。
【0109】図13に示した構造において、SiO2系
のガラスからなるMR素子基板13上にNi−Fe(8
0%Ni)のパーマロイ膜17を500オングストロー
ムの膜厚に蒸着し、フォトリソエッチングして図4のよ
うにMR素子パターン14と電極16a,16bを形成
し、MR素子の全抵抗値を2000Ωとなるようにし
た。その上に順次、中間絶縁膜20、SiNx膜(x=
1.0at%)15a、アクリル膜15bを形成した。
【0110】中間絶縁膜20とSiNx膜15aの形成
は反応性スパッタで行い、その際、パーマロイ膜17の
逆スパッタでは50Ω以下の抵抗上昇率となるように抑
えた。中間絶縁膜20の膜厚は70オングストロームと
し、SiNx膜15aの膜厚は2μmとした。アクリル
膜15bの膜厚は20μmとした。また図5の実施例と
同様に電極16a,16bにハンダ18でFPC9を接
続した。
【0111】そして、この構造で中間絶縁膜20をSi
で形成したもの、SiOで形成したもの、TiOで形成
したもの、及びCrOで形成したものをそれぞれ作製
し、MR素子の全抵抗値の変化(上昇)を測定したとこ
ろ、初期抵抗値が2000〜2100Ωであって、変化
はいずれも+50〜70Ωであり、MR素子の抵抗値の
変化を問題のない程度に小さくできることがわかった。
【0112】なお、このように中間絶縁膜20としてS
i,SiO,TiO,CrOのいずれの膜でもよいが、
Si膜またはSiO膜とした場合は中間絶縁膜20とS
iNx膜15aの形成を一つのターゲットでバルブ操作
のみで連続して行なえるため効率がよいという利点があ
る。
【0113】なお、中間絶縁膜20の厚みについて検討
を行った結果を説明しておく。検討品は中間絶縁膜をS
i(99.999%)膜として行ったが、極微少な膜厚
10オングストロームでも十分効果があった。この場
合、膜そのものは島状となり、均一膜でないと思われる
が、SiNxでない他の膜質の異なる物質を微少でも配
置するだけで、SiNx膜とパーマロイ膜の反応を防ぐ
ことができる。また、膜厚を1000オングストローム
以上とした場合、いずれもSiNxに比べピンホールが
多く、耐環境特性が劣った。一般的に塩水噴霧中で10
00hrの連続通電で断線しないことが必要であるが、
1000オングストローム以上のものは、10個中2〜
3個が500hrで断線してしまった。10〜1000
オングストロームのものはOKであり、特に50〜20
0オングストロームのものは10個中10個全て100
0hr通電でOKとなった。従って中間絶縁膜20の膜
厚は50〜200オングストロームとするのが良い。
【0114】以上のように、本実施例によれば、中間絶
縁膜20により、MR素子を形成したパーマロイ膜17
とSiNx膜15aの反応を防止してその反応によるM
R素子の抵抗値の上昇を防止することができ、磁気ヘッ
ドの特性を向上することができる。
【0115】なお中間絶縁膜20は上述したSi,Si
O,TiO,CrOに限らず、窒素を含まない他の無機
系絶縁物の膜としても良い。
【0116】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、キャリッジ位置の検出手段として磁気スケー
ル部と磁気ヘッドからなる磁気式リニアエンコーダを備
えた記録装置において、前記磁気ヘッドのMR素子は、
磁気スケール部の長さ方向に沿って磁気スケール部の着
磁のピッチに対応したピッチで複数本並んで形成された
Ni−Fe膜からなる線状のMR素子パターンからなる
ので、細くて着磁のピッチが非常に小さな磁気スケール
部を用いても磁気ヘッドから充分に高い検出出力を得て
キャリッジの位置検出を確実に行なうことができ、キャ
リッジ位置検出を非常に高精度に、かつ高速に行なうこ
とができるとともに、記録装置の省スペースを図ること
ができる。
【0117】また、MR素子を覆う保護膜がアモルファ
ス窒素化合物絶縁体からなるので、水分やイオン等の透
過性が少なく、MR素子の耐食性を向上できるととも
に、MR素子の成膜時の温度より低温で成膜でき、MR
素子の磁気特性の劣化を防止できる。
【0118】
【0119】さらに、MR素子を構成するNi−Fe
と保護膜との間に、保護膜の成膜時のNi−Fe膜との
反応を防止する窒素を含まない無機系絶縁体からなる
間絶縁膜を有することにより、前記反応を防止して前記
反応によるMR素子の抵抗値の上昇を防止できる等の優
れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の記録装置のキャリッジ位置検出
に関わる要部の構成を示す斜視図である。
【図2】同装置の磁気式リニアエンコーダを構成する磁
気スケール部と磁気ヘッドの上面図である。
【図3】図2のA部の断面を拡大して磁気スケール部の
着磁状態とMR素子パターンの配置等を模式的に示した
説明図である。
【図4】磁気ヘッドのMRヘッド素子部の表面の保護膜
を透視して示す平面図である。
【図5】同MRヘッド素子部の模式的な断面図である。
【図6】従来の記録装置の磁気式リニアエンコーダの磁
気ヘッド要部の構造を示す断面図である。
【図7】磁気スケール部の異なる構成例を示す斜視図で
ある。
【図8】Si化合物薄膜形成時の基板温度と薄膜の硬さ
の関係を示すグラフ図である。
【図9】Si化合物薄膜形成時の基板温度と、薄膜の封
止特性を示す飽和磁束密度Ms残存率との関係を示すグ
ラフ図である。
【図10】保護膜のピンホールによりMR素子パターン
の薄膜の腐食が発生する様子を示した断面図である。
【図11】パーマロイ膜の直上にSiN膜を形成した試
料を表面よりスパッタエッチングして、表面からの深さ
方向における各元素量をマイクロオージエにて分析した
結果を示すグラフ図である。
【図12】パーマロイ膜の直上にSi膜を形成し、その
上にSiN膜を形成した試料の各元素量を分析した結果
を示すグラフ図である。
【図13】他の実施例によるMRヘッド素子部の模式的
な断面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ 2 記録ヘッド 3 ガイドバー 4 案内軸 5 プラテン 6 記録シート 7 磁気スケール部 8 磁気ヘッド 9 フレキシブルプリント板 12 スライダ 13 MR素子基板 14 MR素子パターン 15 保護膜 15a SiNx膜 15b エポキシ膜(又はアクリル膜) 16a、16b 電極 17 強磁性体薄膜(パーマロイ膜) 18 ハンダ 20 中間絶縁膜
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−1339(JP,A) 特開 平4−360021(JP,A) 特開 昭61−257475(JP,A) 特開 平5−90659(JP,A) 特開 平6−221868(JP,A) 特開 昭63−196874(JP,A) 実開 昭61−15158(JP,U) 実開 昭61−135206(JP,U)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動
    させて記録を行なう記録装置であって、前記キャリッジ
    の位置を検出する手段として、前記キャリッジの移動路
    に平行に固定され、長さ方向に沿って所定ピッチで交互
    に逆極性に着磁した一直線状の磁気スケール部と、前記
    キャリッジに固定され、前記磁気スケール部の磁界を検
    知する磁気ヘッドとからなる磁気式リニアエンコーダを
    備えた記録装置において、 前記磁気ヘッドは、 表面が前記磁気スケール部に近接して平行に対向するよ
    うに配置され少なくとも表面が絶縁体からなる基板と、 この基板の表面に、前記磁気スケール部の長さ方向に沿
    って磁気スケール部の着磁のピッチに対応したピッチで
    複数本並んで形成されたNi−Fe膜からなる線状の磁
    気抵抗効果素子パターンからなる磁気抵抗効果素子と、 この磁気抵抗効果素子を覆うように前記基板の表面上に
    成膜されたアモルファス窒素化合物絶縁体からなる保護
    膜と、 前記Ni−Fe膜と前記保護膜との間に形成され、前記
    保護膜の成膜時の前記Ni−Fe膜との反応を防止する
    窒素を含まない無機系絶縁体からなる中間絶縁膜と、 を有することを特徴とする記録装置。
  2. 【請求項2】 前記保護膜が少なくともSiと窒素を含
    むアモルファス窒素化合物薄膜であることを特徴とする
    請求項に記載の記録装置。
  3. 【請求項3】 前記保護膜がSiNx(x=0.05at
    %以上)からなることを特徴とする請求項1または2
    記載の記録装置。
  4. 【請求項4】 前記磁気スケール部は金属系磁性材また
    は酸化物磁性材からなることを特徴とする請求項1から
    までのいずれか1項に記載の記録装置。
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