JP3218374B2 - InP半導体表面および界面の評価方法 - Google Patents

InP半導体表面および界面の評価方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、InP半導体基板上に
形成された種々のエピタキシャル層の特性に多くの影響
を与えるInP半導体基板の表面状態、およびそのエピ
タキシャル層とInP半導体基板との界面の特性を評価
する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体表面の一般的な評価とし
て、表面の原子の結合状態を調べるXPS(X線光電子
分光法)や、表面の結晶性を調べるRHEED(反射型
高エネルギ−電子線回折法)、LEED(低エネルギ−
電子線回折法)、表面の不純物を調べるAES(オ−ジ
ェ電子分光法)などの手法が用いられていた。通常、半
導体デバイスとしてInP基板を利用する場合、そのI
nP基板上に動作層となるエピタキシャル層を成長す
る。このような半導体デバイスの特性は、エピタキシャ
ル成長した後のInP基板とエピタキシャル層の界面の
不純物や欠陥に大きく影響される。特に、HEMT(高
電子移動度トランジスタ)などの半導体デバイスでは、
この界面を流れる電流がリ−ク電流となりピンチオフ特
性を劣化させることが知られている。このため、基板と
エピタキシャル層の界面を評価することが必要となる。
このようなエピタキシャル成長した後の基板とエピタキ
シャル層の界面の評価としては、SIMS(二次イオン
質量分析)法や、DLTS(ディ−プレベルトランジェ
ントスペクトロスコピ−)法、C−V法などが用いられ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】優れた特性の半導体デ
バイスの製造およびそれに用いるエピタキシャル層の製
造には、基板とエピタキシャル層の界面およびInP半
導体の表面状態の評価が不可欠となる。しかしながら、
従来用いられているこれらの評価方法は、煩雑な測定手
順が必要であったり、測定結果の解析が難しいことから
頻繁に利用されるものではなく、製造工程における定期
的なエピタキシャル層の成長条件のチェック手段として
の利用は困難であった。
【0004】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたもので、その目的は、InP半導体基板の表面仕
上げ状態や、前処理状態、清浄化状態などのInP半導
体表面の状態およびInP半導体とエピタキシャル層と
の界面特性を簡便に評価する方法を提供するものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段および作用】本発明による
InP半導体表面および界面の評価方法は、実質的に絶
縁体であるInP半導体の表面に、実質的に不純物を含
有せず、InPに格子整合するInGaAsエピタキシ
ャル層を、該エピタキシャル層の表面準位により形成さ
れる空乏層の厚さ以下の厚さに成長し、前記InP半導
体との界面を含んだ該エピタキシャル層におけるキャリ
アの移動度および単位面積あたりのキャリア濃度の少な
くとも一方を測定するものである。
【0006】通常、前記InP半導体は、Feド−プな
どの高抵抗の半絶縁性InP基板であり、前記InGa
Asエピタキシャル層はMBE(分子線エピタキシャル
成長)法、MOCVD(有機金属気相成長)法などで成
長したアンド−プのIn0.53Ga0.47Asの単層からな
り、n型伝導を示し、残留不純物(キャリア)濃度は1
×1015/cm3以下となる。エピタキシャル成長時の
InP基板温度は、MBE法では480〜520℃、M
OCVD法では600〜650℃が通常用いられる。
【0007】前記InGaAsエピタキシャル層の厚さ
は、仮にInGaAsエピタキシャル層を充分に厚く
(たとえば、10μm以上)成長した場合にエピタキシ
ャル層表面の表面準位(表面のビルトインポテンシャ
ル)により形成される空乏層の厚さよりも薄い厚さとす
る。エピタキシャル層を薄くすることで、理想的にはエ
ピタキシャル層内は全て空乏層となる。しかし、InP
半導体とエピタキシャル層との界面での不純物や欠陥に
よりキャリアが発生するため、InP半導体との界面を
含んだエピタキシャル層の電気特性であるキャリアの移
動度および単位面積あたりのキャリア濃度は、このIn
P半導体とエピタキシャル層との界面での特性を反映し
たものとなる。
【0008】このような空乏層の厚さ(Wd)は、 Wd2=2εε0bi/qNd (ただし、εはエピタキシャル層の比誘電率、ε0は真
空の誘電率、Vbiは表面のビルトインポテンシャル、q
は電荷素量、Ndは充分厚いエピタキシャル層における
キャリア濃度である。)と表すことができる。InGa
Asエピタキシャル層の表面のビルトインポテンシャル
biを0.35eVと仮定し、キャリア濃度Ndが1×
1014〜1×1015/cm3の範囲で空乏層の厚さを計
算すると、0.6μm〜2.0μmとなる。したがっ
て、残留不純物(キャリア)濃度Ndが1×1015/c
3以下のエピタキシャル成長が可能であれば、本評価
に用いるエピタキシャル層の厚さは1μm以下で良い。
【0009】実際の測定結果として、InP基板上にI
0.53Ga0.47Asエピタキシャル層を成長した構造で
の深さ方向のキャリア濃度プロファイルを図1に示す。
キャリアは表面空乏化により、表面から約0.3μmま
ではほとんどキャリアが存在せず、そこからエピタキシ
ャル層と基板との界面近傍にキャリアが存在している。
このキャリアは、基板とエピタキシャル層の界面の不純
物や欠陥により生じたものであり、このキャリアを電気
的特性として評価することにより、InP半導体の表面
状態や、前処理、清浄化処理条件などの評価が可能とな
る。
【0010】なお、キャリアの電気的特性の評価を、Va
n der Pauw法によるホ−ル測定により行う場合には、I
nGaAs層の膜厚を0.3μm未満にすると高抵抗の
ため測定が困難となるので、膜厚を0.3μm以上とす
ることが望ましい。また、InP半導体に格子整合する
組成として移動度の比較的大きいInGaAs系エピタ
キシャル層を用いることで高い精度の評価が可能となっ
ている。
【0011】
【実施例】以下、半絶縁性Feド−プInP半導体基板
の前処理条件を評価する方法を実施例として説明する。
本発明の評価方法により、半絶縁性Feド−プInP基
板上にMBE法を用いてにIn0.53Ga0.47As層の成
長を行い、その電気的特性の評価を行った。InP基板
の前処理条件の違いによる基板とエピタキシャル層の界
面の不純物量の変化を本発明による評価とSIMS分析
による評価との比較を行った。
【0012】InP基板の前処理方法として、硫酸系の
エッチャントを用いた場合とリン酸系のエッチャントを
用いた場合について評価を行った。前処理を行った基板
をMBE装置内に導入し、前処理室において基板温度約
100℃で約1時間の脱ガス処理を行った後に成長室へ
基板を搬送した。
【0013】InとGaの蒸発源セルは、Inの組成が
0.53、Gaの組成が0.47となる様に温度を調整
した。また、Asの蒸発源セルは分子線強度がフラック
スモニタの値で、2.0mPa(0.002Pa)となるように
温度を調整した。成長室に移動したInP基板にAs4
分子線を照射しながら500℃まで昇温した。この後、
基板清浄化温度まで昇温し、5分間の基板清浄化処理を
行った。基板前処理の異なる基板に対して、基板清浄化
温度を550℃および500℃とした。基板清浄化を行
ったInP基板を成長温度の500℃とし、温度が安定
してからInとGaの蒸発源セルのシャッタ−を開けて
InGaAs層の成長を行った。InGaAs層の膜厚
は0.6μmとし、組成はIn0.53Ga0.47Asであ
る。
【0014】成長したエピタキシャル基板(In0.53
0.47Asエピタキシャル層/InP基板)から5mm
角の試料を切り出し、Inドットを電極として、400
℃、4分間のオ−ミックアニ−ルを行なった。その試料
をVan der Pauw法によりホ−ル測定を行ない、単位面積
当たりのキャリア濃度であるシ−トキャリア濃度と移動
度を求めた。また、比較のため各々のサンプルについて
SIMS分析を行った。
【0015】異なる基板前処理条件での基板清浄化温度
と試料のシートキャリア濃度および移動度の関係を図2
および図3に示す。この結果から、リン酸系のエッチャ
ントを用いた方がシ−トキャリア濃度が低く、かつ移動
度が大きいことがわかる。ここで、基板清浄化温度が同
一で、基板前処理条件の異なる試料のSIMS分析結果
を図4に示す。図4において、(a)はリン酸系のエッ
チャントを用いた場合、(b)は硫酸系のエッチャント
を用いた場合を示しており、リン酸系のエッチャントを
用いた試料の方が界面の酸素量は小さくなっており、良
い特性の界面が得られていることがわかる。
【0016】このように、本発明による評価方法を用い
ることにより、SIMS等の煩雑な分析手段を用いるこ
となく、基板とエピタキシャル層の界面の特性および異
なった基板前処理方法によるInP基板表面の評価を簡
便に行うことができた。
【0017】また、同様に測定した、種々の条件で処理
したInP基板とエピタキシャル層の界面の不純物濃度
とシートキャリア濃度との関係を図5に示す。本実施例
では、基板とエピタキシャル層の界面の主な残留不純物
は酸素であるので、界面の酸素量とシートキャリア濃度
の関係を示した。この図から明らかなように、界面の酸
素量とシートキャリア濃度はよい対応関係を示してお
り、本発明による評価方法を用いることにより、基板と
エピタキシャル層の界面の特性およびInP基板表面の
評価を簡便に行えることがわかる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるIn
P半導体表面および界面の評価方法は、実質的に絶縁体
であるInP半導体の表面に、実質的に不純物を含有せ
ず、InPに格子整合するInGaAsエピタキシャル
層を、該エピタキシャル層の表面準位により形成される
空乏層の厚さ以下の厚さに成長し、前記InP半導体と
の界面を含んだ該エピタキシャル層におけるキャリアの
移動度および単位面積あたりのキャリア濃度の少なくと
も一方を測定するものである。
【0019】測定されるキャリアの移動度および単位面
積あたりのキャリア濃度は、エピタキシャル層成長前の
InP半導体表面およびInP半導体とエピタキシャル
層との界面での特性を反映したものである。したがっ
て、SIMS分析等の煩雑な分析手段を用いることな
く、InP半導体表面およびInP半導体とエピタキシ
ャル層との界面での特性を簡便に評価することができ
る。
【0020】特に、本発明はInP半導体基板の基板清
浄化条件などの最適化の実験において有効である。In
P半導体とエピタキシャル層の界面の不純物については
単位表面積あたりのキャリア濃度から、InP半導体と
エピタキシャル層の界面の格子欠陥などについては、そ
の移動度から評価をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】InP基板上にIn0.53Ga0.47Asエピタキ
シャル層を成長した構造での深さ方向のキャリア濃度プ
ロファイルを示す図である。
【図2】本発明の実施例による、異なった基板前処理条
件での基板清浄化温度と試料のシ−トキャリア濃度との
関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例による、異なった基板前処理条
件での基板清浄化温度と試料の移動度との関係を示す図
である。
【図4】異なる基板前処理方法による試料のSIMSに
よる深さ方向の不純物分析結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例による試料のシ−トキャリア濃
度とSIMS分析による酸素イオン濃度との関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−143264(JP,A) 特開 平5−166908(JP,A) 特開 昭64−41272(JP,A) 特開 平4−82246(JP,A) 特開 平4−102336(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/66 C30B 29/40

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に絶縁体であるInP半導体の表
    面に、実質的に不純物を含有せず、InPに格子整合す
    るInGaAsエピタキシャル層を、該エピタキシャル
    層の表面準位により形成される空乏層の厚さ以下の厚さ
    に成長し、前記InP半導体との界面を含んだ該エピタ
    キシャル層におけるキャリアの移動度および単位面積あ
    たりのキャリア濃度の少なくとも一方を測定することを
    特徴としたInP半導体表面および界面の評価方法。
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JP4765157B2 (ja) * 1999-11-17 2011-09-07 株式会社デンソー 半導体基板の製造方法
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