JP3215352B2 - 一重項酸素消去剤評価方法および装置 - Google Patents

一重項酸素消去剤評価方法および装置

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茂俊 岡崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録材料や色素
の光劣化の防止および化粧品による光皮膚障害の防止な
どに使用される一重項酸素消去剤の性能を評価する方法
および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酸素分子の場合、スピン量子数が1であ
る状態すなわち三重項状態が基底状態であり、スピン量
子数が0である状態すなわち一重項状態が励起状態であ
る。この一重項状態にある酸素(一重項酸素)は活性酸
素の一種である。一方、一般的な物質を構成している分
子の基底状態は一重項状態である。したがって、その物
質と三重項状態にある酸素分子との反応は禁制であるた
め穏やかであるが、その物質と一重項酸素との反応は許
容であるため起こり易い。
【0003】一重項酸素は、主に光増感により発生し、
或いは、生体内において酵素的にも発生する。その発生
した一重項酸素は、上述した性質を有することから、そ
の周囲にある物質を酸化し、それ故、光記録材料や色素
を光劣化させたり、生体における光障害を起こさせたり
する要因となる。そこで、このような問題を解消するた
めに、一重項酸素を効率よく消去する一重項酸素消去剤
の開発が行われている。
【0004】一重項酸素消去剤の開発に際しては、その
一重項酸素消去剤が一重項酸素を消去する性能を正確に
評価する必要がある。従来より、評価方法として、(1)
化学的または酵素的に一重項酸素を発生させ、そこに一
重項酸素消去剤を加え、一重項酸素の量を捕捉剤で捕捉
し、一重項酸素を捕捉した捕捉剤の量に基づいて評価す
る方法、(2) 光増感剤を用いて一重項酸素を発生させ、
そこに一重項酸素消去剤を加え、一重項酸素の量を捕捉
剤で捕捉し、一重項酸素を捕捉した捕捉剤の量に基づい
て評価する方法、(3) 化学的または酵素的に一重項酸素
を発生させ、そこに一重項酸素消去剤を加え、一重項酸
素から発生する波長1270nmの発光の光量に基づい
て評価する方法、および、(4) 光増感剤を用いて一重項
酸素を発生させ、そこに一重項酸素消去剤を加え、一重
項酸素から発生する波長1270nmの発光の光量に基
づいて評価する方法、が知られている。一般には、捕捉
剤を用いた評価方法が用いられている。また、例えば特
開平7−159325号公報には、一重項酸素から発生
する波長1270nmの発光の光量に基づいて評価する
方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来例それぞれでは、以下のような問題点がある。すなわ
ち、化学的な方法(例えば次亜塩素酸ナトリウムと過酸
化水素とを混合)または酵素的な方法(例えばペルオキ
シダーゼと過酸化水素とを混合)により一重項酸素を発
生させた場合、一重項酸素が発生するだけでなく、他の
活性酸素であるスーパーオキシド等も発生し、また、一
重項酸素消去剤が一重項酸素生成反応を阻害する可能性
がある。これらの事項は、一重項酸素消去剤の性能を評
価する上で障害となる。
【0006】また、光増感剤(例えば、ローズベンガ
ル、エオシンY、ポルフィリン誘導体など)を用いて一
重項酸素を発生させた場合、光増感剤の励起三重項状態
から酸素分子の基底状態である三重項状態へのエネルギ
移動により一重項酸素が発生するため、この際に他の活
性酸素が殆ど発生しない点では好都合である。しかし、
一重項酸素消去剤の種類に依っては、励起一重項状態ま
たは励起三重項状態にある光増感剤と一重項酸素消去剤
とが直接反応して、光増感剤が失活する場合があり、こ
の場合には、一重項酸素の生成量が減少するので、一重
項酸素消去剤の性能を正確に評価することができない。
【0007】また、一重項酸素を捕捉した捕捉剤(例え
ば、フラン誘導体、コレステロール、アントラセン誘導
体など)の量に基づいて評価する方法では、捕捉剤の一
重項酸素の選択性が不完全であるため、一重項酸素消去
剤の消去能の定量性に問題がある。
【0008】さらに、一重項酸素から発生する波長12
70nmの発光の光量に基づいて評価する方法では、一
重項酸素の生成系における生成量が一重項酸素消去剤の
影響を受ける場合には、一重項酸素消去剤の性能を正確
に評価することができない。
【0009】本発明は、上記問題点を解消する為になさ
れたものであり、一重項酸素消去剤による一重項酸素の
消去能を正確に評価することができる一重項酸素消去剤
評価方法および装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る一重項酸素
消去剤評価方法は、一重項酸素消去剤が一重項酸素を消
去する性能を評価する一重項酸素消去剤評価方法であっ
て、(1) 評価対象である一重項酸素消去剤と光増感剤と
酸素とが容れられた試料セルに励起光を照射するととも
に、励起光が照射された光増感剤から発生する燐光の強
度を検出し、酸素が一重項状態から三重項状態へ遷移す
る際に発生する所定波長の発光の強度を検出する第1の
ステップと、(2) 第1のステップで得られた発光の強度
と燐光の強度との比を求める第2のステップと、(3) 第
2のステップで得られた比に基づいて一重項酸素消去剤
の性能を評価する第3のステップと、を備えることを特
徴とする。
【0011】この一重項酸素消去剤評価方法によれば、
第1のステップにおいて、評価対象である一重項酸素消
去剤と光増感剤と酸素とが容れられた試料セルに励起光
が照射されるとともに、励起光が照射された光増感剤か
ら発生する燐光の強度が検出され、また、酸素が一重項
状態から三重項状態へ遷移する際に発生する所定波長の
発光の強度が検出される。そして、第2のステップで、
発光の強度と燐光の強度が求められ、第3のステップ
で、この比に基づいて一重項酸素消去剤の性能が評価さ
れる。したがって、この場合には、複数種類の一重項酸
素消去剤の間における相対的な評価が可能となる。
【0012】また、さらに、(4) 一重項酸素消去剤が容
れられておらず光増感剤と酸素とが容れられた試料セル
に励起光を照射するとともに、励起光が照射された光増
感剤から発生する燐光の強度を検出し、酸素が一重項状
態から三重項状態へ遷移する際に発生する所定波長の発
光の強度を検出する第4のステップと、(5) 第4のステ
ップで得られた発光の強度と燐光の強度との比を求める
第5のステップと、を更に備え、上記第3のステップ
は、第2および第5のステップそれぞれにおいて得られ
た比の双方に基づいて一重項酸素消去剤の性能を評価す
る、ことを特徴とする。この場合には、評価対象である
一重項酸素消去剤が存在する場合と存在しない場合との
対比において一重項酸素消去剤の性能が評価されるの
で、一重項酸素消去剤の絶対的な評価が可能となる。
【0013】また、さらに、第1および第4のステップ
それぞれにおいて、励起光をパルス光として照射すると
ともに、燐光の強度および発光の強度それぞれをパルス
光の照射後の一定時間経過後に検出することを特徴とす
る。この場合には、励起光の散乱光や蛍光が存在しない
時刻において燐光および発光それぞれが検出されるの
で、さらに正確な評価ができる。
【0014】本発明に係る一重項酸素消去剤評価装置
は、一重項酸素消去剤が一重項酸素を消去する性能を評
価する一重項酸素消去剤評価装置であって、(1) 少なく
とも光増感剤および酸素が容れられた試料セルに励起光
を照射する励起光照射手段と、(2) 励起光が照射された
光増感剤から発生する燐光の強度を検出する燐光検出手
段と、(3) 酸素が一重項状態から三重項状態へ遷移する
際に発生する所定波長の発光の強度を検出する発光検出
手段と、(4) 評価対象である一重項酸素消去剤が試料セ
ルに容れられているときにおける発光の強度と燐光の強
度との比を求め、この比に基づいて一重項酸素消去剤の
性能を評価する演算手段と、を備えることを特徴とす
る。
【0015】この一重項酸素消去剤評価装置によれば、
評価対象である一重項酸素消去剤と光増感剤と酸素とが
容れられた試料セルに励起光が励起光照射手段により照
射されるとともに、励起光が照射された光増感剤から発
生する燐光の強度が燐光検出手段により検出され、ま
た、酸素が一重項状態から三重項状態へ遷移する際に発
生する所定波長の発光の強度が発光検出手段により検出
される。そして、演算手段により、発光の強度と燐光の
強度が求められ、この比に基づいて一重項酸素消去剤の
性能が評価される。したがって、この場合には、複数種
類の一重項酸素消去剤の間における相対的な評価が可能
となる。
【0016】また、さらに、演算手段は、一重項酸素消
去剤が試料セルに容れられていないときにおける発光の
強度と燐光の強度との比を更に求め、この比にも基づい
て一重項酸素消去剤の性能を評価することを特徴とす
る。この場合には、評価対象である一重項酸素消去剤が
存在する場合と存在しない場合との対比において一重項
酸素消去剤の性能が評価されるので、一重項酸素消去剤
の絶対的な評価が可能となる。
【0017】また、さらに、励起光照射手段は励起光と
してパルス光を照射するとともに、燐光検出手段が燐光
の強度を検出するタイミングおよび発光検出手段が発光
の強度を検出するタイミングそれぞれを制御する制御手
段を更に備える、ことを特徴とする。この場合には、燐
光検出手段および発光検出手段それぞれは制御手段によ
りタイミング制御され、これにより、励起光の散乱光や
蛍光が存在しない時刻において燐光および発光それぞれ
が検出されるので、さらに正確な評価ができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の実施の形態を詳細に説明する。尚、図面の説明におい
て同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省
略する。
【0019】先ず、本実施形態に係る一重項酸素消去剤
評価装置の構成について説明する。図1は、本実施形態
に係る一重項酸素消去剤評価装置の構成図である。
【0020】評価対象である一重項酸素消去剤は、光増
感剤(例えば、ローズベンガル、エオシンY、ポルフィ
リン誘導体など)および酸素分子とともに試料セル10
中に混合され容れられる。なお、循環用ポンプ(図示せ
ず)を設けて、試料セル10内の一重項酸素消去剤およ
び光増感剤を循環させてもよい。また、酸素分子は、一
重項酸素消去剤および光増感剤を含む液中に泡状態で存
在してもよく、また、試料セル10内が加圧されて当該
液中に溶け込んでいてもよい。
【0021】励起光源20は、この試料セル10内の光
増感剤に照射する励起光Aを出力するものであって、制
御部50により制御されて一定周期のパルスの励起光A
を出力する。例えば、Nd:YAGレーザ光源が励起光
源20として好適に用いられ、これから出力される第2
高調波である波長532nmのレーザ光が励起光Aとし
て用いられる。励起光源20から出力された励起光A
は、励起光照射光学系21を経て試料セル10に照射さ
れる。
【0022】一重項酸素消去剤等が容れられた試料セル
10に励起光Aが照射されると、試料セル10内の光増
感剤は、励起光Aのエネルギを吸収して基底状態から励
起一重項状態へ励起され、更に項間交差を経て励起三重
項状態になる。励起三重項状態にある光増感剤は、燐光
Bを発して基底状態に遷移するか、または、三重項状態
にある酸素分子へのエネルギ移動に伴い基底状態に遷移
する。三重項状態にあった酸素分子は、このエネルギ移
動により一重項状態に励起され、一重項酸素となる。そ
して、一重項酸素が三重項状態へ遷移する際に発光Cを
生じる。なお、これら光増感剤による励起光吸収と燐光
発生、エネルギ状態遷移、エネルギ移動、および、一重
項酸素からの発光等については後に詳述する。
【0023】試料セル10内から発した光を入力する燐
光検出光学系30は、その光を集光して燐光波長選択器
31に入射させ、燐光波長選択器31は、入射した光の
うち燐光Bのみを選択して出力する。光検出器32は、
燐光波長選択部器から出力された燐光Bの強度を検出
し、その強度に応じた電流信号を出力する。増幅器33
は、光検出器32から出力された電流信号を電圧信号に
変換するとともに、その電圧信号を増幅して出力する。
そして、信号処理部34は、制御部50により制御され
て、励起光Aのパルス発生後の一定時間経過後に増幅器
33から出力された電圧信号を取り込み、その電圧信号
値を保持し出力する。すなわち、燐光検出光学系30、
燐光波長選択器31、光検出器32、増幅器33および
信号処理部34からなる燐光検出手段により、パルス状
の励起光Aの照射に伴って試料セル10内から発した光
のうち、そのパルス発生から一定時間経過後の燐光Bの
強度が得られる。
【0024】同様に試料セル10内から発した光を入力
する発光検出光学系40は、その光を集光して発光波長
選択器41に入射させ、発光波長選択器41は、入射し
た光のうち発光Cのみを選択して出力する。光検出器4
2は、発光波長選択部器から出力された発光Cの強度を
検出し、その強度に応じた電流信号を出力する。増幅器
43は、光検出器42から出力された電流信号を電圧信
号に変換するとともに、その電圧信号を増幅して出力す
る。そして、信号処理部44は、制御部50により制御
されて、励起光Aのパルス発生後の一定時間経過後に増
幅器43から出力された電圧信号を取り込み、その電圧
信号値を保持し出力する。すなわち、発光検出光学系4
0、発光波長選択器41、光検出器42、増幅器43お
よび信号処理部44からなる発光検出手段により、パル
ス状の励起光Aの照射に伴って試料セル10内から発し
た光のうち、そのパルス発生から一定時間経過後の発光
Cの強度が得られる。
【0025】ここで、燐光検出光学系30および発光検
出光学系40それぞれの光軸は、励起光照射光学系21
の光軸と一致しないようにしておけば、励起光Aの透過
光や反射光が燐光検出光学系30および発光検出光学系
40それぞれに入射しないので好適である。また、燐光
波長選択器31および発光波長選択器41それぞれとし
て、燐光Bおよび発光Cそれぞれを透過させるが他の波
長の光(励起光Aの散乱光や蛍光)を透過させないフィ
ルタが用いられ、また、モノクロメータも好適に用いら
れる。また、光検出器32および42それぞれとして、
光電子増倍管が好適に用いられる。
【0026】励起光源20ならびに信号処理部34およ
び44の動作を制御する制御部50は、励起光源20か
らの励起光Aのパルス出力のタイミングを制御するとと
もに、そのパルス出力時刻から一定時間経過後に信号処
理部34および44それぞれが増幅器33および43そ
れぞれからの出力電圧信号を取り込む動作を制御する。
すなわち、信号処理部34および44それぞれは、制御
部50による制御により、励起光Aの散乱成分や試料セ
ル10内の試料等から発生する蛍光の影響を除去して、
比較的寿命が長い燐光Bおよび発光Cそれぞれの強度に
応じた電圧信号のみを入力する。
【0027】信号処理部34および44それぞれから出
力された電圧信号それぞれを入力する演算部60は、両
電圧信号の比を演算して求め、その比の値を出力部61
に出力させる。ここで求められた比は、発光Cおよび燐
光Bそれぞれの強度の比を表すものであり、一重項酸素
消去剤の性能を示すものである。
【0028】次に、本実施形態に係る一重項酸素消去剤
評価装置の作用を説明するとともに、本実施形態に係る
一重項酸素消去剤評価方法について説明する。図2は、
本実施形態に係る一重項酸素消去剤評価方法の説明図で
ある。
【0029】制御部50により制御された励起光源20
から一定周期のパルス光として出力された励起光Aは、
励起光照射光学系21を経て試料セル10に照射され
る。そして、この励起光Aの照射に伴い、図2に示すよ
うなエネルギ状態遷移、エネルギ移動、燐光Bの発生お
よび発光Cの発生それぞれが生じる。
【0030】すなわち、励起光Aのエネルギを吸収した
光増感剤は、基底状態から励起一重項状態に励起され
る。この光増感剤の励起一重項状態は不安定であるの
で、すぐに項間交差を経て励起三重項状態に遷移する
か、或いは、蛍光を発して基底状態に遷移する。一方、
光増感剤の励起三重項状態は比較的安定であるので、ゆ
っくりと基底状態に遷移するとともに、その遷移の際に
エネルギ差に応じた波長の燐光Bを発生する。
【0031】このような光増感剤の近傍に酸素分子が存
在すると、励起三重項状態にある光増感剤から三重項状
態(基底状態)にある酸素分子へエネルギ移動が生じ
る。このエネルギ移動が生じると、励起三重項状態にあ
った光増感剤は、燐光Bを発することなく基底状態に遷
移し、一方、三重項状態にあった酸素分子は、一重項状
態に励起されて、一重項酸素となる。
【0032】もし、光増感剤および酸素分子それぞれの
濃度が一定であれば、燐光Bを発しながらの光増感剤の
励起三重項状態から基底状態への遷移と、励起三重項状
態にある光増感剤から三重項状態にある酸素分子へのエ
ネルギ移動とは、互いに一定の確率で生起する。したが
って、燐光Bの強度は、エネルギ移動による一重項酸素
の生成量に比例するので、燐光Bの強度を検出すること
により、一重項酸素の生成量を知ることができる。
【0033】この一重項酸素は、基底状態である三重項
状態にやがて遷移するが、その際にエネルギ差に応じた
波長1270nmの発光Cを発生する。したがって、発
光Cの強度は、一重項酸素の存在量に比例するので、発
光Cの強度を検出することにより、一重項酸素の存在量
を知ることができる。
【0034】ここで、試料セル10内に一重項酸素消去
剤が混入されていれば、その一重項酸素消去剤は一重項
酸素を消去するため、一重項酸素の存在量は減少し、一
重項酸素消去剤が存在する場合の発光Cの強度IC1は、
一重項酸素消去剤が存在しない場合の発光Cの強度IC0
と比較して小さくなる。また、一重項酸素消去剤により
光増感剤が失活することがない場合には、一重項酸素の
生成量は増減することはなく、一重項酸素消去剤が存在
する場合の燐光Bの強度IB1は、一重項酸素消去剤が存
在しない場合の燐光Bの強度IB0と相等しい。
【0035】したがって、このような光増感剤の場合に
は、発光強度IC1と発光強度IC0との比R0 すなわち R1 =IC1/IC0 …(1) なる式で表される比R1 に基づいて、一重項酸素消去剤
の性能を評価することができる。なお、一重項酸素消去
剤が存在しない場合における発光強度IC0は、一重項酸
素消去剤の種類に依らず、励起光Aの照射強度、光増感
剤の種類と量および酸素分子の量に依存する値であるの
で、これらの条件を一定にしておくか、あるいは、これ
らの条件の各値に対する発光強度IC0の依存性を予め求
めておけば、一重項酸素消去剤が存在する場合における
発光強度IC1のみに基づいて一重項酸素消去剤の性能を
評価することもできる。
【0036】しかし、一重項酸素消去剤の種類によって
は、一重項酸素消去剤により光増感剤が失活する場合が
ある。この場合には、一重項酸素を消去する性能が同一
であっても、一重項酸素の生成量が減少し、これに伴っ
て一重項酸素の存在量も減少するので、この場合の発光
Cの強度は、光増感剤が失活しないとした場合の発光C
の強度と比較して小さくなる。したがって、比R1((1)
式)または発光強度IC1に基づく評価では、一重項酸素
消去剤の実際の性能よりも高い性能が得られることにな
り、正確な評価をすることができない。
【0037】そこで、このような光増感剤の場合には、
一重項酸素消去剤により光増感剤が失活したことに伴う
発光Cの強度IC1(一重項酸素の存在量)の低下を、燐
光Bの強度IB1(一重項酸素の生成量)により補償す
る。すなわち、比R1((1)式)に替えて、 R2 =(IC1/IB1)/(IC0/IB0) …(2) なる式で表される比R2 に基づいて、一重項酸素消去剤
の性能を評価する。なお、ここでも、一重項酸素消去剤
が存在しない場合における燐光強度IB0および発光強度
C0それそれは、一重項酸素消去剤の種類に依らない値
であるので、 R3 =IC1/IB1 …(3) なる式で表される比R3 に基づいて、一重項酸素消去剤
の性能を評価してもよい。また、一重項酸素消去剤が光
増感剤を失活させる場合に限らず、失活させない場合に
も、これら比R2 または比R3 に基づいて一重項酸素消
去剤の性能を評価することができる。
【0038】ここで、燐光Bの波長は、光増感剤がロー
ズベンガルである場合には725nmであり、エオシン
Yの場合には675nmである。したがって、燐光Bと
発光Cとの分離は十分に可能である。
【0039】なお、 (3)式に従って求めた比R3 に基づ
いて一重項酸素消去剤の性能を評価すれば、評価対象で
ある一重項酸素消去剤が存在する場合と存在しない場合
との対比において一重項酸素消去剤の性能が評価される
ので、一重項酸素消去剤それぞれについて絶対的な評価
が可能である。一方、 (2)式に従って求めた比R2 に基
づいて一重項酸素消去剤の性能を評価すれば、評価対象
である一重項酸素消去剤が複数種類ある場合に、これら
の間における相対的な評価が可能である。
【0040】以上のような比R2 またはR3 は、以下の
ようにして求められる。すなわち、試料セル10内に一
重項酸素消去剤を容れない場合および容れた場合それぞ
れについて、励起光源20から出力されたパルス状の励
起光Aを励起光照射光学系21を経て試料セル10に照
射する。そして、パルス状の励起光Aの照射に伴って試
料セル10内から発した光のうち、そのパルス発生から
一定時間経過後の燐光Bの強度IB0およびIB1それぞれ
を、燐光検出光学系30、燐光波長選択器31、光検出
器32、増幅器33および信号処理部34からなる燐光
検出手段により得る。一方、パルス状の励起光Aの照射
に伴って試料セル10内から発した光のうち、そのパル
ス発生から一定時間経過後の発光Cの強度IC0およびI
C1それぞれを、発光検出光学系40、発光波長選択器4
1、光検出器42、増幅器43および信号処理部44か
らなる発光検出手段により得る。
【0041】そして、演算部60により、信号処理部3
4から出力された燐光強度IB0およびIB1、ならびに、
信号処理部44から出力された発光強度IC0およびIC1
に基づいて、比R2((2)式)または比R3((3)式)を求
め、出力部61に出力する。
【0042】本発明は、上記実施形態に限定されるもの
ではなく種々の変形が可能である。例えば、励起光源2
0から出力される励起光Aは、パルス光に限られるもの
ではなく、定常光であってもよい。この場合、信号処理
部34および44ならびに制御部50は不要であり、演
算部60は、増幅器33および43それぞれから任意の
時刻に出力される電圧信号に基づいて、発光Cの強度と
燐光Bの強度との比を求めればよい。ただし、燐光波長
選択器31は、光検出器32が燐光B以外の光を受光し
ないよう波長選択性の優れたものである必要がある。同
様に、発光波長選択器41は、光検出器42が発光C以
外の光を受光しないよう波長選択性の優れたものである
必要がある。
【0043】
【発明の効果】以上、詳細に説明したとおり、本発明に
よれば、評価対象である一重項酸素消去剤と光増感剤と
酸素とが容れられた試料セルに励起光が照射されるとと
もに、励起光が照射された光増感剤から発生する燐光の
強度が検出され、また、酸素が一重項状態から三重項状
態へ遷移する際に発生する所定波長の発光の強度が検出
される。そして、発光の強度と燐光の強度が求められ、
この比に基づいて一重項酸素消去剤の性能が評価され
る。
【0044】このようにすることにより、評価対象であ
る一重項酸素消去剤により光増感剤が失活する場合であ
っても、その一重項酸素消去剤の性能を正確に評価する
ことができる。なお、この場合には、複数種類の一重項
酸素消去剤の間における相対的な評価が可能となる。
【0045】また、評価対象である一重項酸素消去剤が
存在する場合と存在しない場合との対比において一重項
酸素消去剤の性能を評価すれば、一重項酸素消去剤の絶
対的な評価が可能となる。また、励起光をパルス光とし
て照射するとともに、燐光の強度および発光の強度それ
ぞれをパルス光の照射後の一定時間経過後に検出する場
合には、励起光の散乱光や蛍光が存在しない時刻におい
て燐光および発光それぞれが検出されるので、さらに正
確な評価ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る一重項酸素消去剤評価装置の
構成図である。
【図2】本実施形態に係る一重項酸素消去剤評価方法の
説明図である。
【符号の説明】
10…試料セル、20…励起光源、21…励起光照射光
学系、30…燐光検出光学系、31…燐光波長選択器、
32…光検出器、33…増幅器、34…信号処理部、4
0…発光検出光学系、41…発光波長選択器、42…光
検出器、43…増幅器、44…信号処理部、50…制御
部、60…演算部、61…出力部、A…励起光、B…燐
光、C…発光。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一重項酸素消去剤が一重項酸素を消去す
    る性能を評価する一重項酸素消去剤評価方法であって、 評価対象である一重項酸素消去剤と光増感剤と酸素とが
    容れられた試料セルに励起光を照射するとともに、前記
    励起光が照射された前記光増感剤から発生する燐光の強
    度を検出し、前記酸素が一重項状態から三重項状態へ遷
    移する際に発生する所定波長の発光の強度を検出する第
    1のステップと、 前記第1のステップで得られた前記発光の強度と前記燐
    光の強度との比を求める第2のステップと、 前記第2のステップで得られた比に基づいて前記一重項
    酸素消去剤の性能を評価する第3のステップと、 を備えることを特徴とする一重項酸素消去剤評価方法。
  2. 【請求項2】 前記一重項酸素消去剤が容れられておら
    ず前記光増感剤と酸素とが容れられた試料セルに励起光
    を照射するとともに、前記励起光が照射された前記光増
    感剤から発生する燐光の強度を検出し、前記酸素が一重
    項状態から三重項状態へ遷移する際に発生する所定波長
    の発光の強度を検出する第4のステップと、 前記第4のステップで得られた前記発光の強度と前記燐
    光の強度との比を求める第5のステップと、 を更に備え、 前記第3のステップは、前記第2および前記第5のステ
    ップそれぞれにおいて得られた比の双方に基づいて前記
    一重項酸素消去剤の性能を評価する、 ことを特徴とする請求項1記載の一重項酸素消去剤評価
    方法。
  3. 【請求項3】 前記第1および前記第4のステップそれ
    ぞれにおいて、前記励起光をパルス光として照射すると
    ともに、前記燐光の強度および前記発光の強度それぞれ
    を前記パルス光の照射後の一定時間経過後に検出する、
    ことを特徴とする請求項1記載の一重項酸素消去剤評価
    方法。
  4. 【請求項4】 一重項酸素消去剤が一重項酸素を消去す
    る性能を評価する一重項酸素消去剤評価装置であって、 少なくとも光増感剤および酸素が容れられた試料セルに
    励起光を照射する励起光照射手段と、 前記励起光が照射された前記光増感剤から発生する燐光
    の強度を検出する燐光検出手段と、 前記酸素が一重項状態から三重項状態へ遷移する際に発
    生する所定波長の発光の強度を検出する発光検出手段
    と、 評価対象である一重項酸素消去剤が前記試料セルに容れ
    られているときにおける前記発光の強度と前記燐光の強
    度との比を求め、この比に基づいて前記一重項酸素消去
    剤の性能を評価する演算手段と、 を備えることを特徴とする一重項酸素消去剤評価装置。
  5. 【請求項5】 前記演算手段は、前記一重項酸素消去剤
    が前記試料セルに容れられていないときにおける前記発
    光の強度と前記燐光の強度との比を更に求め、この比に
    も基づいて前記一重項酸素消去剤の性能を評価する、こ
    とを特徴とする請求項4記載の一重項酸素消去剤評価装
    置。
  6. 【請求項6】 前記励起光照射手段は、前記励起光とし
    てパルス光を照射するとともに、 前記燐光検出手段が前記燐光の強度を検出するタイミン
    グおよび前記発光検出手段が前記発光の強度を検出する
    タイミングそれぞれを制御する制御手段を更に備える、 ことを特徴とする請求項4記載の一重項酸素消去剤評価
    装置。
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