JP3211401U - 吸収体及びこれを備えた吸収性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な強度及び吸収性を兼ね備える新規な吸収体を提供する。【解決手段】セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有する吸収体4aであって、吸収体4aに含有されるセルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維との質量比(セルロース系吸水性繊維の含有量:熱可塑性樹脂繊維の含有量)を90:10〜50:50とし、吸収体4aの密度を0.06〜0.14g/cm3とする。【選択図】図1

Description

本考案は、吸収体及びこれを備えた吸収性物品に関する。
吸収性物品の吸収体として、親水性繊維(例えば、パルプ)と、コイル状に捲縮した合成樹脂繊維(例えば、潜在捲縮性の偏芯芯鞘型複合繊維が加熱によってコイル状に捲縮して収縮したもの)とを含み、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子をさらに含む吸収体(特許文献1)や、高吸収性ポリマー粒子及びフラッフパルプからなる吸液性混合物と、熱可塑性樹脂の長繊維(例えば、ポリエチレン及びエチレン共重合体から選ばれた熱可塑性樹脂を鞘とし、鞘を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂を芯とする芯鞘型複合繊維)で構成された不織布とを含む吸収体(特許文献2)が知られている。
一方、エアレイド不織布用の熱接着性複合繊維として、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物を含むビニルモノマーでグラフト重合された変性ポリオレフィンを鞘成分とし、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維が知られている(特許文献3,4)。
特開2004−159786号公報 特開2008−142424号公報 特許第4221849号公報 特開2004−270041号公報
特許文献1,2に記載の吸収体は、型崩れ防止、クッション性向上等を目的とするものであり、十分な吸収性を有するとともに、吸収後も十分な強度を保持する新規な吸収体が求められていた。
一方、特許文献3,4に記載の芯鞘型複合繊維について、セルロース系繊維との接着性が良好であることは知られているものの、吸収体の構成成分としての使用可能性は知られていなかった。
そこで、本考案は、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有する吸収体であって、十分な吸収性を有するとともに、吸収後も十分な強度を保持する新規な吸収体、並びにこれを備えた吸収性物品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本考案は、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有する吸収体であって、吸収体に含有される吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の質量比が90:10〜50:50であり、吸収体の密度が0.06〜0.14g/cm3である、吸収体を提供するとともに、液透過性層と、液不透過性層と、液透過性層及び液不透過性層の間に設けられた本考案の吸収体とを備えた吸収性物品を提供する。
本考案によれば、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有する吸収体であって、十分な吸収性を有するとともに、吸収後も十分な強度を保持する新規な吸収体、並びにこれを備えた吸収性物品が提供される。
図1は、本考案の第1実施形態に係る生理用ナプキンの部分破断平面図である。 図2は、図1のA−A線断面図である。 図3(a)は、本考案の第2実施形態に係る生理用ナプキンで使用される吸収体の上面図(トップシート側から見た平面図)であり、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図である。 図4(a)は、本考案の第2実施形態に係る生理用ナプキンで使用される吸収体の下面図(バックシート側から見た平面図)であり、図4(b)は、図4(a)のB−B線断面図である。 図5は、本考案の第2実施形態に係る生理用ナプキンで使用される吸収体の畝溝構造を示す斜視図である。 図6は、吸収体の畝溝構造の変形例を示す斜視図である。 図7は、吸収体及び吸収性物品の製造工程を示す図である。 図8(a)及び(b)は、実施例で使用されるSJベルトプレス機を示す図である。 図9は、トップシートがトリC2L油脂肪酸グリセリドを含む生理用ナプキンにおける、トップシートの肌当接面の電子顕微鏡写真である。 図10は、血液改質剤を含むまたは含まない経血の顕微鏡写真である。 図11は、表面張力の測定方法を説明するための図である。
以下、本考案の吸収体及び吸収性物品について説明する。
本考案の吸収体は、セルロース系吸水性繊維(以下「吸水性繊維」と略する場合がある)と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維(以下「熱可塑性樹脂繊維」と略する場合がある)とを含有する。
本考案の吸収体に含有される吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の質量比は、90:10〜50:50であり、吸収体の密度は0.06〜0.14g/cm3である。これらの条件は、本考案の吸収体が、十分な吸収性を有するとともに、吸収後も十分な強度を保持するために必要な条件である。
本考案の吸収体の密度は、次式に基づいて算出する。
D(g/cm3)=B(g/m2)/T(mm)×10-3
[式中、D、B及びTは、それぞれ、本考案の吸収体の密度、坪量及び厚みを表す。]
本考案の吸収体の坪量(g/m2)の測定は、以下の通り、実施する。
吸収体から100mm×100mmの試験片を3枚切り出し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における各試験片の質量を直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF−300)で測定し、3つの測定値の平均値から算出した吸収体の単位面積当たりの質量(g/m2)を、吸収体の坪量とする。
なお、吸収体の坪量の測定に関し、上記で特に規定しない測定条件については、ISO 9073−1又はJIS L 1913 6.2に記載の測定条件を採用する。
本考案の吸収体の厚み(mm)の測定は、以下の通り、実施する。
厚み計(例えば、株式会社大栄科学精器製作所製 FS−60DS,測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2)により、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における吸収体の異なる5つの部位(厚み計FS−60DSを使用する場合、各部位の直径は44mm)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚みを測定し、5つの測定値の平均値を、吸収体の厚みとする。
本考案の吸収体の密度は、例えば、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料の高密度化により、所望の範囲に調節することができる。吸収体の密度を一定範囲に維持するためには、繊維の弾性回復を抑制し、吸収体の嵩を一定範囲に維持する必要がある。この点、本考案の吸収体では、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が、吸収体の嵩の維持に寄与する。なお、水素結合は、吸収体に吸収された液体により切断されるので、吸収体に含有される吸収性材料(必須成分である吸水性繊維、任意成分である高吸水性材料)の膨潤を阻害しない。
本考案の吸収体において、前記吸収体に含有される繊維同士が接着していることが好ましい(態様1A)。態様1Aでは、吸収体に含有される繊維同士の接着により、吸収体の強度(特に液体吸収後の湿潤時強度)が向上している。接着の態様としては、例えば、熱可塑性樹脂繊維の熱融着による熱可塑性樹脂繊維間又は熱可塑性樹脂繊維−吸水性繊維間の接着、水素結合による熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維間又は熱可塑性樹脂繊維−吸水性繊維間の接着等が挙げられる。なお、吸収体が、その他の繊維を含む場合、熱可塑性樹脂繊維及び/又は吸水性繊維は、その他の繊維と接着していてもよい。
本考案の吸収体は、セルロース系吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料に高圧水蒸気を噴射して高密度化することにより得られたものであることが好ましい(態様2A)。態様2Aでは、高圧水蒸気の噴射を利用した高密度化により、吸収体の密度が所望の範囲に調節されている。混合材料に高圧水蒸気が噴射されると、混合材料の内部に水蒸気が浸透し、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が切断され、混合材料が軟化する。したがって、高密度化に要する圧力が減少し、軟化した混合材料は容易に密度調整が可能である。密度調整された混合材料が乾燥して水素結合が再形成されると、繊維の弾性回復(嵩の増加)が抑制され、吸収体の密度が一定範囲に維持される。
態様2Aは、熱可塑性樹脂繊維に不飽和カルボン酸無水物(例えば、無水マレイン酸又はその誘導体)がモノマー成分として含まれる場合に、特に好適である。熱可塑性樹脂繊維に含まれる不飽和カルボン酸無水物基が水蒸気と反応して不飽和カルボン酸基となると、水素結合を形成可能な酸素原子の数が増加するので、高密度化された繊維の弾性回復(嵩の増加)が効果的に抑制される。
態様2Aにおいて、高圧水蒸気の温度が熱可塑性樹脂繊維の融点未満であることが好ましい(態様3A)。態様3Aでは、吸収体の密度の調節が容易となる。
態様2A又は3Aにおいて、坪量が40〜900g/m2であることが好ましい(態様4A)。坪量が40g/m2未満であると、繊維量が少な過ぎるため、高圧水蒸気の噴射による密度調整が困難となる一方、900g/m2を越えると、繊維量が多過ぎるため、水蒸気の内部浸透が困難となる。
本考案の吸収体において、熱可塑性樹脂繊維は、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーでグラフト重合された変性ポリオレフィンあるいは該変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維であり(態様5A)、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物は、例えば、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、あるいはそれらの混合物である(態様6A)。
本考案の吸収体において、乾燥時の最大引張り強度と湿潤時の最大引張り強度との差が1〜5N/25mmであることが好ましい(態様7A)。
本考案の吸収体は、高吸水性材料を含有することが好ましい(態様8A)。態様8Aでは、吸収体の液体吸収性が向上している。なお、水素結合は、吸収体に吸収された液体により切断されるため、吸収体に含有される高吸水性材料の膨潤を阻害しない。
本考案の吸収体は、着色されていてもよい(態様9A)。態様9Aでは、吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維とが均一に分散されているか否かの視認が容易である。また、吸収された液体の色をマスキングすることができる。例えば、吸収される液体が尿である場合には青色系に、経血である場合には緑色系に着色しておくことにより、使用者に清潔感を感じさせることができる。
本考案の吸収体において、態様1A〜9Aのうち2以上を組み合わせてもよい。
本考案の吸収性物品は、液透過性層と、液不透過性層と、液透過性層及び液不透過性層の間に設けられた本考案の吸収体とを備える。
本考案の吸収性物品において、吸収体の液透過性層側の面及び/又は液不透過性層側の面に畝溝構造が形成されていることが好ましい(態様1B)。態様1Bでは、吸収性物品に力が加えられて畝部が潰れても、溝部の空間が維持されるので、吸収体の液体吸収性・保持性が維持される。また、吸収体と液透過性層との接触面積が少ないので、吸収性物品に力が加えられても、吸収体に吸収された液体が逆戻りしにくく、液透過性層からの液体の溢れ出しが防止される。
本考案の吸収性物品において、例えば、液透過性層側の面に形成された畝溝構造は吸収性物品の長手方向に延びており、液不透過性層側の面に形成された畝溝構造は吸収性物品の短手方向に延びている(態様2B)。
本考案の吸収性物品において、吸収体の繊維密度は、液透過性層側の面から液不透過性層側の面に向けて高くなっていることが好ましい(態様3B)。態様3Bでは、吸収体の液透過性層側でスポット性が高く、吸収体の液不透過性層側で拡散性が高いので、吸収体の液体透過性・保持性が向上しており、液体の溢れ出しが防止される。
本考案の吸収性物品において、液透過性層が、0.00〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.00〜0.05gの水溶解度とを有する血液改質剤を含むことが好ましい(態様4B)。態様4Bでは、吸収性物品の吸収対象が経血である場合、液透過性層に到達した経血が血液改質剤と接触して改質されるので、液透過性層に粘度の高い経血が残存しにくく、液透過性層のべたつき感が減少し、サラサラ感が向上するとともに、着用者が視覚的に不快感を覚えにくい。
態様4Bにおいて、血液改質剤は、例えば、下記(i)〜(iii):
(i)炭化水素;
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;及び
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない(態様5B)。
態様4B又は5Bにおいて、血液改質剤は、例えば、下記(i’)〜(iii’):
(i’)炭化水素;
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物;及び
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない(態様6B)。
態様4B〜6Bにおいて、血液改質剤は、例えば、下記(A)〜(F):
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル;
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル;
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル;
(D)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物;
(E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル;及び
(F)鎖状炭化水素;
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される(態様7B)。
態様4B〜7Bにおいて、血液改質剤は、例えば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される(態様8B)。
本考案の吸収性物品において、態様1B〜8Bのうち2以上を組み合わせてもよい。
本考案の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されない。吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、使い捨てオムツ、パンティーライナー、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されず、例えば、使用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。
以下、生理用ナプキンを例として、本考案の吸収性物品の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示すように、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、トップシート2及びバックシート3の間に設けられた吸収体4aと、一対のサイドシート5a,5bとを備える。なお、図1において、X軸方向は生理用ナプキン1の幅方向に、Y軸方向は生理用ナプキン1の長手方向に、X軸Y軸方向に広がる平面の方向は生理用ナプキン1の平面方向に相当する。他の図においても同様である。
図1及び図2に示すように、トップシート2とバックシート3とは、長手方向の端部同士がシール部11a,11bによって接合され、本体部6を形成している。本体部6の形状は、女性の身体、下着等に適合する限り特に限定されず、例えば、略長方形、略楕円型、略瓢箪型等であってよい。本体部6の外形における長手方向の延べ寸法は、好ましくは100〜500mm、さらに好ましくは150〜350mmである。また、本体部6の外形における幅方向の延べ寸法は、好ましくは30〜200mm、さらに好ましくは40〜180mmである。
図1及び図2に示すように、一対のサイドシート5a,5bは、トップシート2の幅方向の両側に設けられており、バックシート3とサイドシート5a,5bとは、短手方向の端部同士がシール部12a,12bによって接合され、本体部6から幅方向に延出する略矩形状のウイング部7a,7bを形成している。サイドシート5a,5bは、液状排泄物が生理用ナプキン1の幅方向外側へ漏れることを防止し得るように、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート5a,5bを構成する材料としては、例えば、スパンボンド不織布、SMS不織布等、エアスルー不織布等が挙げられる。
図2に示すように、ウイング部7a,7bを形成するバックシート3の着衣側には、粘着部13a,13bが設けられており、本体部6を形成するバックシート3の着衣側には、粘着部14が設けられている。粘着部14が下着のクロッチ部に貼付されるとともに、ウイング部7a,7bが下着の外面側に折り曲げられ、粘着部13a,13bが下着のクロッチ部に貼付されることにより、生理用ナプキン1は下着に安定して固定される。
粘着部13a,13b,14に含有される粘着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤;リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤;ビニル重合体、ポリエステル等のポリマー可塑剤等が挙げられる。
シール部11a,11b,12a,12bは生理用ナプキン1の周縁部に設けられており、各シール部による接合様式としては、例えば、エンボス加工、超音波、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。接合強度を高めるために、2種以上の接合様式を組み合わせてもよい(例えば、ホットメルト型接着剤による接合後に、エンボス加工を施す等)。
エンボス加工としては、例えば、パターニングされたエンボスロールとフラットロールとの間に、トップシート2とバックシート3とを合わせて、又はトップシート2とバックシート3とサイドシート5a,5bとを合わせて通過させることにより、吸収体4aの周縁部分をエンボス加工する方法(いわゆるラウンドシールと呼ばれる方法)等が挙げられる。この方法では、エンボスロール及び/又はフラットロールを加熱することで、各シートが軟化するため、シール部が明瞭になりやすい。エンボスパターンとしては、例えば、格子状パターン、千鳥状パターン、波状パターン等が挙げられる。シール部の境界で生理用ナプキン1が折り曲がりにくくなるように、エンボスパターンは間欠で細長状であることが好ましい。
ホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。接着剤の塗布方法の具体例としては、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等が挙げられる。
生理用ナプキン1は、使用者の液状排泄物(例えば、経血、尿、下り物等)を吸収する目的で、使用者に着用される。この際、トップシート2が使用者の肌側に、バックシート3が使用者の着衣(下着)側に位置するように、使用者に着用される。使用者の液状排泄物は、トップシート2を通じて吸収体4aに浸透し、吸収体4aで吸収される。吸収体4aに吸収された液状排泄物の漏れは、バックシート3によって防止される。
トップシート2は、使用者の液状排泄物が透過し得るシートであり、使用者が生理用ナプキン1を着用したときの肌触りを向上させる目的で、使用者の肌と接触する面に設けられている。
トップシート2は、使用者の液状排泄物が透過し得る限り特に限定されない。トップシート2としては、例えば、不織布、織布、液体透過孔が形成された合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられるが、これらのうち不織布が好ましい。
不織布を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(羊毛,コットン等)、再生繊維(レーヨン,アセテート等)、無機繊維(ガラス繊維,炭素繊維等)、合成樹脂繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド)等が挙げられる。不織布には、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y型、C型等の異型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等が混合されていてもよい。
不織布の製造方法としては、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させる方法が挙げられ、ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)、湿式法等が挙げられ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等が挙げられる。このようにして製造された不織布の他、水流交絡法によりシート状に形成したスパンレースをトップシート2として使用してもよい。また、肌側の面に凹凸をつけた不織布(例えば、熱収縮繊維等を含有する下層側を収縮させることで上層側に凹凸を形成した不織布、ウェブ形成時にエアーを当てることで凹凸を形成した不織布等)をトップシート2として使用してもよい。このように肌側の面に凹凸を形成することにより、トップシート2と肌との間の接触面積を低減させることができる。
トップシート2の厚み、目付、密度等は、使用者の液状排泄物が透過し得る範囲で適宜調整することができる。トップシート2として不織布を使用する場合、液状排泄物の透過性、肌触り等の観点から、不織布を構成する繊維の繊度、繊維長、密度、不織布の坪量、厚み等を適宜調整することができる。
トップシート2の隠ぺい性を高める観点から、トップシート2として使用する不織布に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを含有させてもよい。不織布の繊維が芯鞘タイプの複合繊維である場合、芯のみに無機フィラーを含有させてもよいし、鞘のみに含有させてもよい。
バックシート3は、使用者の液状排泄物が透過し得ないシートであり、吸収体4aに吸収された液状排泄物の漏れを防止する目的で、使用者の着衣(下着)と接触する面に設けられている。バックシート3は、着用時のムレを低減させるために、液不透過性に加えて、透湿性を有することが好ましい。
バックシート3は、使用者の液状排泄物を透過し得ない限り特に限定されない。バックシート3としては、例えば、防水処理を施した不織布、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート(例えば、スパンボンド、スパンレース等の不織布に通気性の合成樹脂フィルムが接合された複合フィルム)、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布等が挙げられる。
吸収体4aは、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有しており、吸水性繊維は、主として吸収体4aの液体吸収性・保持性に関与し、熱可塑性樹脂繊維は、主として吸収体4aの強度(特に液体吸収後の湿潤時強度)に関与する。
吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維は混合状態で吸収体4aに含有されている。繊維同士の交点(例えば、熱可塑性樹脂繊維同士の交点、熱可塑性樹脂繊維と吸水性繊維との交点)は、熱可塑性樹脂繊維の熱融着により接着している。これにより、吸収体4aの強度(特に液体吸収後の湿潤時強度)は向上している。また、繊維同士は機械的に交絡され、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維間又は熱可塑性樹脂繊維−吸水性繊維間に形成された水素結合により接着している。なお、吸収体4aが、その他の繊維を含む場合、熱可塑性樹脂繊維及び/又は吸水性繊維は、その他の繊維と接着していてもよい。
熱融着は、例えば、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料を熱可塑性樹脂繊維の融点以上の温度で加熱することにより実施される。加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維の種類に応じて適宜調節することができる。熱可塑性樹脂繊維の融点以上の温度は、熱可塑性樹脂繊維の一部が融解する温度以上であればよく、例えば、熱可塑性樹脂繊維が芯鞘型複合繊維である場合、鞘成分が融解する温度以上であればよい。
吸収体4aに含有される吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の質量比(吸水性繊維の含有量:熱可塑性樹脂繊維の含有量)は90:10〜50:50であり、この範囲で適宜変更可能であるが、好ましくは80:20〜60:40である。吸水性繊維に対する熱可塑性樹脂繊維の質量比が10/90未満であると、吸収体4aに対して十分な強度(特に液体吸収後の湿潤時強度)を付与することができない。一方、吸水性繊維に対する熱可塑性樹脂繊維の質量比が50/50を超えると、吸収体4aに対して十分な液体吸収性を付与することができない。
吸収体4aの密度は0.06〜0.14g/cm3であり、この範囲で適宜変更可能であるが、好ましくは0.07〜0.12g/cm3、さらに好ましくは0.08〜0.1g/cm3である。吸収体4aに含有される吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の質量比が90:10〜50:50であるとき、吸収体4aの密度が0.06〜0.14g/cm3であると、吸収体4aに対して十分な液体吸収性を付与することができる。
吸収体4aの密度は、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料の高密度化により、所望の範囲に調節されている。吸収体4aの密度を一定範囲に維持するためには、繊維の弾性回復を抑制し、吸収体4aの嵩を一定範囲に維持する必要がある。この点、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が、吸収体4aの嵩の維持に寄与する。水素結合は、例えば、熱可塑性樹脂繊維の酸素原子(例えば、カルボキシル基、アシル基、エーテル結合等の酸素原子)と、セルロースの水素原子(例えば、水酸基の水素原子)との間で形成される。なお、水素結合は、吸収体4aに吸収された液体により切断されるので、吸収体4aに含有される吸収性材料(必須成分である吸水性繊維、任意成分である高吸水性材料)の膨潤を阻害しない。
吸収体4aの乾燥時の最大引張り強度(坪量200g/m2における最大引張り強度)は、好ましくは3〜36N/25mm、さらに好ましくは8〜20N/25mmであり、吸収体4aの湿潤時の最大引張り強度(坪量200g/m2における最大引張り強度)は、好ましくは2〜32N/25mm、さらに好ましくは5〜15N/25mmである。なお、「N/25mm」は、吸収体4aの平面方向における幅25mmあたりの最大引張り強度(N)を意味し、吸収体4aの平面方向としては、例えば、吸収体4aの製造時の搬送方向(MD方向)、MD方向と直交する方向(CD方向)等が挙げられるが、好ましくはMD方向である。
吸収体4aの乾燥時の最大引張り強度は、標準時(温度20℃,湿度60%)のサンプル片(長さ150mm×幅25mm)を、引張試験機(島津製作所製,AG−1kNI)につかみ間隔100mmで取り付け、100mm/分の引張速度でサンプル片が切断されるまで荷重(最大点荷重)を加えて測定される。この場合、「N/25mm」は、サンプル片の長さ方向における幅25mmあたりの最大引張り強度(N)を意味する。
吸収体4aの湿潤時の最大引張り強度は、サンプル片(長さ150mm×幅25mm)をイオン交換水中にそれが自重で沈下するまで浸漬した後、又はサンプル片を1時間以上水中に沈めた後、乾燥時の最大引張り強度と同様にして測定される(ISO 9073−3,JIS L 1913 6.3)。この場合、「N/25mm」は、サンプル片の長さ方向における幅25mmあたりの最大引張り強度(N)を意味する。
乾燥時の最大引張り強度と湿潤時の最大引張り強度との差(乾燥時の最大引張り強度−湿潤時の最大引張り強度)は、好ましくは1〜5N/25mm、さらに好ましくは2〜4N/25mmである。なお、乾燥時に形成されている水素結合は、湿潤時に切断されるので、乾燥時の最大引張り強度と湿潤時の最大引張り強度との差は、水素結合量の指標となる。
セルロース系吸水性繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、砕木パルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ;半化学パルプ等);木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ;バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生繊維等が挙げられる。
不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維は、強度、水素結合性、熱融着性等の点から、適宜選択することができ、特に限定されるものではない。
熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーでグラフト重合された変性ポリオレフィンあるいは該変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、該変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維等が挙げられる。
不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、フマル酸又はその誘導体、マロン酸の不飽和誘導体、コハク酸の不飽和誘導体等のビニルモノマーが挙げられ、それ以外のビニルモノマーとしては、ラジカル重合性を有する汎用モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。マレイン酸の誘導体又は無水マレイン酸の誘導体としては、例えば、シトラコン酸、無水シトラコン酸、無水ピロシンコン酸等が挙げられ、フマル酸の誘導体又はマロン酸の不飽和誘導体としては、例えば、3−ブテン−1、1−ジカルボン酸、ベンジリデンマロン酸、イソプロピリデンマロン酸等が挙げられ、コハク酸の不飽和誘導体としては、例えば、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
変性ポリオレフィンの幹ポリマーとしては、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリブチレン、これらを主体とした共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂等)が挙げられる。
幹ポリマーに対するビニルモノマーのグラフト重合は、例えば、ラジカル開始剤を用いて、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物とビニルモノマーとを混合し、ランダム共重合体からなる側鎖を導入する方法、異種モノマーを順次重合し、ブロック共重合体からなる側鎖を導入する方法等の常法に従って実施することができる。
鞘成分は、変性ポリオレフィン単独であってもよいし、変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーであってもよい。他の樹脂としてはポリオレフィンが好ましく、変性ポリオレフィンの幹ポリマーと同種のポリオレフィンがさらに好ましい。例えば、幹ポリマーがポリエチレンである場合、他の樹脂もポリエチレンであることが好ましい。
芯成分として使用される樹脂は、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂である限り特に限定されず、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸をはじめとする直鎖状又は分岐鎖状の炭素数20までのポリヒドロキシアルカン酸等のポリエステル及びこれらを主体とした共重合体、あるいはアルキレンテレフタレートを主成分として他の成分を少量共重合してなる共重合ポリエステル等が挙げられる。弾性反発性を有するのでクッション性が高いという観点、工業的に安価に得られるという経済的な観点等から、PETが好ましい。
鞘成分と芯成分の複合比は10/90〜90/10の範囲なら紡糸可能であるが、30/70〜70/30が好ましい。鞘成分比が減少し過ぎると熱融着性が低下し、増加し過ぎると紡糸性が低下する。
熱可塑性樹脂繊維には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。熱可塑性樹脂繊維は、界面活性剤、親水剤等により親水化処理されていることが好ましい。
熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、特に限定されないが、エアレイド方式でパルプと混合する場合、好ましくは3〜70mm、さらに好ましくは5〜20mmである。この範囲を下回ると、吸水性繊維との接合点の数が減少するため、吸収体4aに対して十分な強度を付与することができない。一方、この範囲を上回ると、解繊性が著しく低下して未解繊状態のものが多数発生するため、地合ムラが発生し、吸収体4aの均一性が低下する。また、熱可塑性樹脂繊維の繊度は、好ましくは0.5〜10dtex、さらに好ましくは1.5〜5dtexである。繊度が0.5dtex未満であると解繊性が低下し、10dtexを超えると繊維本数が少なくなり強度が低下する。
熱可塑性樹脂繊維には、3次元捲縮形状を付与してもよい。これにより、繊維配向が平面方向に向いた場合でも、繊維の挫屈強度が厚み方向に働くので、外圧が加えられても潰れにくくなる。3次元捲縮形状としては、例えば、ジクザク状、Ω状、スパイラル状等が挙げられ、3次元捲縮形状の付与方法としては、例えば、機械捲縮、熱収縮による形状付与等が挙げられる。機械捲縮は、紡糸後の連続で直鎖状の繊維に対し、ライン速度の周速差、熱、加圧等によって制御可能であり、単位長さ辺りの捲縮個数が多いほど外圧下に対する挫屈強度が高められる。捲縮個数は、通常5〜35個/インチ、好ましくは15〜30個/インチである。熱収縮による形状付与では、例えば、融点の異なる2種以上の樹脂からなる繊維に熱を加えることにより、融点差に起因して生じる熱収縮の差を利用して、3次元捲縮が可能である。繊維断面の形状としては、例えば、芯鞘型複合繊維の偏芯タイプ、サイドバイサイドタイプが挙げられる。このような繊維の熱収縮率は、好ましくは5〜90%、さらに好ましくは10〜80%である。
吸収体4aは、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維に加えて、高吸水性材料(例えば、高吸水性樹脂、高吸水性繊維等)を含有することが好ましい。高吸水性材料の含有量は、吸収体4aの通常5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。高吸水性材料としては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性材料が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性材料としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高吸水性材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高吸水性樹脂が好ましい。高吸水性材料の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、鱗片状等が挙げられ、粒子状である場合、粒径は、好ましくは50〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜600μmである。
吸収体4aには、所望の機能を付与するために、銀、銅、亜鉛、シリカ、活性炭、アルミノケイ酸塩化合物、ゼオライト等を含有させてもよい。これにより、消臭性、抗菌性、吸熱効果等の機能を付与することができる。
吸収体4aは、色素等により着色されていてもよい。これにより、吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維とが均一に分散されているか否かの視認が容易である。また、吸収された液体の色をマスキングすることができる。例えば、吸収される液体が尿である場合には青色系に、経血である場合には緑色系に着色しておくことにより、使用者に清潔感を感じさせることができる。
吸収体4aの厚み、目付等は、生理用ナプキン1が備えるべき特性(例えば吸収性、強度、軽量性等)に応じて適宜調整することができる。吸収体4aの厚みは、通常0.1〜15mm、好ましくは1〜10mm、さらに好ましくは2〜5mmであり、目付は、通常20〜1000g/m2、好ましくは50〜800g/m2、さらに好ましくは100〜500g/m2である。なお、吸収体4aの厚さ、目付等は、吸収体4a全体にわたって一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。
吸収体4aの繊維密度は、トップシート2側の面からバックシート3側の面に向けて高くなっていることが好ましい。このような繊維密度勾配により、吸収体4aのトップシート2側ではスポット性が高く、吸収体4aのバックシート3側では拡散性が高いので、吸収体4aは優れた液体透過性・保持性を有し、トップシート2からの液状排泄物の溢れ出しを防止することができる。
吸収体4aは、トップシート2と一体化されていてもよい。吸収体4aがトップシート2と一体化されている場合、生理用ナプキン1に力(例えば、使用者の歩行、立ち座り等の動作による力)が加えられても、トップシート2と吸収体4aとの離間が防止されるため、トップシート2から吸収体4aへの液体移行性が維持される。これにより、トップシート2の表面ドライ性が向上し、使用者にベタツキ感やヌレ感を与えにくい。一体化方法としては、例えば、エンボス加工、加熱流体による融着、超音波、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。
トップシート2と吸収体4aとの間に、セカンドシートを設けてもよい。セカンドシートは、トップシート2と同様、使用者の液状排泄物が透過し得る限り特に限定されない。セカンドシートとしては、トップシート2と同様の具体例が挙げられる。
吸収体4aは、中高部を有していてもよい。中高部は、トップシート2の排泄口当接部分(使用者が生理用ナプキン1を着用したときに、使用者の排泄口(例えば、小陰唇及び/又は大陰唇)に当接する部分)に向けて吸収体4aの厚さ方向に突出する部分である。吸収体4aが中高部を有する場合、中高部がトップシート2を介して使用者の排泄口(例えば、小陰唇及び/又は大陰唇)とフィットするので、生理用ナプキン1外部への液状排泄物の漏れ出しが防止される。中高部がトップシート2を介して使用者の排泄口(例えば、小陰唇及び/又は大陰唇)とフィットし得るように、トップシート2は、吸収体4aの中高部に沿った形状をとることが好ましい。吸収体4aの坪量及び/又は密度は、中高部とその周辺部とで異なっていてもよい。例えば、中高部の坪量及び/又は密度を、その周辺部の坪量及び/又は密度よりも高くしてもよいし、低くしてもよい。例えば、サンクションドラムを利用して吸収体材料を積層することにより坪量及び/又は密度を変化させて、様々な積層パターンを実現することができる。
吸収体4aは被覆材で被覆されていてもよい。被覆材は液透過性及び吸収体保持性を有する限り特に限定されないが、低コスト性及び吸収体保持性の観点から、粉砕パルプを主材料とし湿式法で成形されるティッシュが好ましい。
<第2実施形態>
第2実施形態では、トップシート2とバックシート3との間に、吸収体4aに代えて、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料に高圧水蒸気を噴射して高密度化することにより得られた吸収体4a’(図示せず)が設けられている。なお、吸収体4a’の構成は、高圧水蒸気の噴射を利用して密度調整されている点を除き、吸収体4aの構成と同一であり、必要がある場合を除き、説明を省略する。
吸収体4a’の密度は、高圧水蒸気の噴射を利用した高密度化により所望の範囲に調節されている。混合材料に高圧水蒸気が噴射されると、混合材料の内部に水蒸気が浸透し、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が切断され、混合材料が軟化する。したがって、高密度化に要する圧力が減少し、軟化した混合材料は容易に密度調整可能である。密度調整された混合材料が乾燥して水素結合が再形成されると、繊維の弾性回復(嵩の増加)が抑制され、吸収体4a’の密度が一定範囲に維持される。
高圧水蒸気の噴射による高密度化は、熱可塑性樹脂繊維に不飽和カルボン酸無水物(例えば、無水マレイン酸又はその誘導体)がモノマー成分として含まれる場合に、特に好適である。熱可塑性樹脂繊維に含まれる不飽和カルボン酸無水物基が水蒸気と反応して不飽和カルボン酸基となると、水素結合を形成可能な酸素原子の数が増加するので、密度調整された繊維の弾性回復(嵩の増加)が効果的に抑制される。
高圧水蒸気の噴射による高密度化は、例えば、熱可塑性樹脂繊維を吸水性繊維と接着させた後に実施される。高圧水蒸気の温度、蒸気圧等は、求められる密度範囲等に応じて適宜調節される。高圧水蒸気の温度は、熱可塑性樹脂繊維の融点(例えば、熱可塑性樹脂繊維が芯鞘型複合繊維である場合、鞘成分の融点)未満であることが好ましい。高圧水蒸気は、単位表面積あたり0.03kg/m〜1.23kg/mで噴射することが好ましい。高圧水蒸気の蒸気圧力は、通常0.1〜2Mpa、好ましくは0.3〜0.8Mpaである。
吸収体4a’の坪量は、好ましくは40〜900g/m2、さらに好ましくは100〜400g/m2である。坪量が40g/m2未満であると、繊維量が少な過ぎるため、高圧水蒸気の噴射による高密度化が困難となる一方、900g/m2を越えると、繊維量が多過ぎるため、水蒸気の内部浸透が困難となる。
吸収体4a’の表面には、高圧水蒸気の噴射によって形成された畝部及び溝部が存在していてもよい。畝部及び溝部の数、間隔等は、高圧水蒸気を噴射するノズルの数、ピッチ等に応じて変化する。なお、高圧水蒸気が噴射される部分が溝部となる。
高圧水蒸気は、混合材料の全体に噴射してもよいし、一部に噴射してもよい。また、噴射する高圧水蒸気の温度、蒸気圧等を混合材料の部分ごとに変化させてもよい。高圧水蒸気を混合材料に部分的に噴射することにより、又は噴射する高圧水蒸気の温度、蒸気圧等を混合材料の部分ごとに変化させることにより、吸収体4a’の密度分布を変化させることができる。
高圧水蒸気は、混合材料をプレスしながら噴射してもよいし、プレスせずに噴射してもよい。混合材料の一部分はプレスしながら高圧水蒸気を噴射し、他の部分はプレスせずに高圧水蒸気を噴射することにより、吸収体4a’の密度分布を変化させることができる。例えば、一部が開口するメッシュコンベアベルト間を通過させながら混合材料に高圧水蒸気を噴射すると、メッシュコンベアベルトの開口部分ではプレスされることなく高圧水蒸気が直接当てられ、メッシュコンベアベルトの非開口部分ではプレスされながら高圧水蒸気が当てられるので、密度分布を変化させることができる。
なお、高圧水蒸気の噴射により高密度化する場合、他の方法と比較して、次の点で有利である。プレスロール成形によって混合材料を高密度化する場合、繊維の反発力に勝る繊維間結合力を付与するために高圧縮が必要である。また、高圧縮により一旦は圧縮されても、繊維が弾性回復し、嵩が元に戻ってしまう。一方、プレスロールと水スプレーを組み合わせて混合材料を高密度化する場合、坪量が100g/m2以下であれば、混合材料の内部に水分を浸透させることができるが、坪量が100g/m2を超えると、混合材料の内部に水分を浸透させることが困難となり、混合材料の内部に水素結合を形成させることができない。また、過剰な水分を与えれば、混合材料の内部に水分を浸透させることが可能となるが、この場合、水分を蒸発させるために過剰な熱量と時間を要するため、生産性が低下する。これに対して、高圧水蒸気の噴射により高密度化する場合、混合材料の内部に水蒸気が浸透し、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が切断され、混合材料が軟化する。したがって、高密度化に要する圧力が減少し、軟化した混合材料は容易に密度調整可能となる。また、水蒸気は容易に蒸発し、乾燥に要する時間が短いので、生産性が向上する。
<第3実施形態>
第3実施形態では、トップシート2とバックシート3との間に、吸収体4aに代えて、図3及び図4に示す吸収体4bが設けられている。
図3及び図4に示すように、吸収体4bは、トップシート2側の面に複数の畝部41及び溝部42が形成されており、バックシート3側の面に複数の畝部43及び溝部44が形成されている点で、吸収体4aと異なるが、それ以外の点は吸収体4aと同一である。本実施形態では、吸収体4bのトップシート2側及びバックシート3側の両面に畝溝構造が形成されているが、トップシート2側の面のみに畝溝構造が形成されていてもよい。なお、図3及び図4では、便宜上、畝部41,43と溝部42,44との境界が、実線で示されており、2本の実線で囲まれた幅の広い領域が畝部41,43に相当し、2本の実線で囲まれた幅の狭い領域が溝部42,44に相当する。
図3に示すように、畝部41及び溝部42は、生理用ナプキン1の長手方向(Y軸方向)に延びており、生理用ナプキン1の幅方向(X軸方向)に交互に配置されている。畝部41及び溝部42は、生理用ナプキン1の長手方向(Y軸方向)に向けて連続して延びているが、その一部を欠いた状態で断続的に延びていてもよい。例えば、畝部41及び溝部42を欠く部分が平面視矩形状、平面視千鳥状等の形状となるように、畝部41及び溝部42が断続的に延びていてもよい。
図4に示すように、畝部43及び溝部44は、生理用ナプキン1の幅方向(X軸方向)に延びており、生理用ナプキン1の長手方向(Y軸方向)に交互に配置されている。畝部43及び溝部44は、生理用ナプキン1の幅方向(X軸方向)に向けて連続して延びているが、その一部を欠いた状態で断続的に延びていてもよい。例えば、畝部43又は溝部44を欠く部分が平面視矩形状、平面視千鳥状等の形状となるように、畝部43又は溝部44が断続的に延びていてもよい。吸収体4bでは、バックシート3側の面に複数の畝部43及び溝部44が形成されているので、吸収体4bの幅方向に力が加わっても、吸収体4bがヨレにくく、使用者の体の形に沿って吸収体4bが曲面状に変形しやすい。したがって、使用者に違和感を与えにくい。
図3及び図4に示すように、畝部41,43の頂部及び側面は曲面であり、畝部41,43の断面形状は、トップシート2又はバックシート3に向かって略逆U字型形状である。畝部41,43の断面形状は適宜変更可能であり、例えば、ドーム状、台形状、三角状、Ω状四角状等であってもよい。吸収体4bに力が加えられて畝部41,43が潰されても、溝部42,44の空間が維持されるように、畝部41,43の幅は底部から頂部に向けて狭くなっている。
畝部41,43の幅(図5におけるW1)は、トップシート2からの液体移行性の観点から、好ましくは0.5〜10mmであり、さらに好ましくは2〜5mmである。同様の観点から、溝部42,44の幅(図5におけるW2)は、好ましくは0.1〜10mmであり、さらに好ましくは1〜5mmである。
吸収体4bにおいて、各畝部41の幅、各畝部43の幅、各溝部42の幅、各溝部44の幅は、それぞれ略同一であるが、異なっていてもよい。例えば、吸収体4bの変更例である吸収体4b’では、図6に示すように、畝部41aの幅W1aは別の畝部41bの幅W1bと異なるが、さらに別の畝部41cの幅W1cと略同一である。畝部43,溝部42,44についても同様の変更が可能である。
第1実施形態〜第3実施形態に係る生理用ナプキンの製造工程の具体例を図7に基づいて説明する。
[第1工程]
機械方向MDへ回転するサクションドラム151の周面151aには、吸収体材料を詰める型として凹部153が周方向に所要のピッチで形成されている。サクションドラム151が回転して凹部153が材料供給部152へ進入すると、サクション部156が凹部に作用し、材料供給部152から供給された吸収体材料は凹部153に真空吸引される。
フード付きの材料供給部152は、サクションドラム151を覆うように形成されており、材料供給部152は、セルロース系吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合材料21を空気搬送により凹部153に対して供給する。また、材料供給部152は、高吸水性ポリマー粒子22を供給する粒子供給部158を備えており、凹部153に対して高吸水性ポリマー粒子22を供給する。セルロース系吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維と高吸水性ポリマー粒子とは、混合状態で凹部153に供給され、凹部153には層状材料224が形成される。凹部153に形成された層状材料224は、機械方向MDに向かって進むキャリアシート150上に転写される。
[第2工程]
キャリアシート150上に転写された層状材料224は、サクションドラム151の周面151aから離れて機械方向MDへ走行する。キャリアシート150には、未圧縮の状態にある層状材料224が機械方向MDにおいて間欠的に並んでいる。加熱部103は、層状材料224の上面に対して、加熱部104は、層状材料224の下面に対して、135℃に加熱された空気を風速5m/秒で吹き付ける。これにより、層状材料224中に含まれる熱可塑性樹脂繊維が溶融し、熱可塑性樹脂繊維同士、熱可塑性樹脂繊維−パルプ、熱可塑性樹脂繊維−高吸水性ポリマー粒子が結合(熱融着)した層状材料225が形成される。層状材料224に対して吹き付けられる加熱空気の条件(温度、風速、加熱時間)は、生産速度等に応じて適宜に制御される。
[第3工程]
一対を成すように上下に配置されている通気性のメッシュコンベアベルト171,172は、キャリアシート150上の層状材料225を圧縮しつつ機械方向MDへ走行させる。平行走行部175における上下方向dの寸法(メッシュコンベアベルト171,172間の距離)は、機械方向MDへ回転する上流側上ロール176と上流側下ロール177との間隙、及び下流側上ロール178と下流側下ロール179との間隙を調整することによって所要の値に設定されており、層状材料225はメッシュコンベアベアベルト171,172によって所要の厚さにまで圧縮される。図7において水平に延びる平行走行部175には、メッシュコンベアベルト171,172を挟んで対向するように蒸気噴射部173と蒸気サクション部174とが配置されている。蒸気噴射部173には、例えば0.1〜2mmの口径のノズル(図示せず)が0.5〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mmのピッチで層状材料225を横断するように、機械方向MDと上下方向TDとに直交する交差方向CD(図示せず)に配置されており、各ノズルには、蒸気ボイラー180で発生した水の沸点以上の温度の水蒸気が、圧力制御弁181で例えば0.1〜2.0MPaの蒸気圧に調整された高圧水蒸気となって配管182を介して供給される。各ノズルからは、メッシュコンベアベルト171,172によって圧縮された状態にある層状材料225に対して、メッシュコンベアベルト171を介して高圧水蒸気が噴射される。層状材料225に対して噴射される高圧水蒸気量は、メッシュコンベアベルト171,172の走行速度に応じて調整され、メッシュコンベアベルト171,172が5〜500m/分で走行しているとき、メッシュコンベアベルト171と向かい合っている層状材料225の表面積に対して1.23kg/m2〜0.03kg/m2の範囲で噴射されることが好ましい。水蒸気は、層状材料225の厚さ方向において、メッシュコンベアベルト171と、層状材料225と、メッシュコンベアベルト172とを順に通過して蒸気サクション部174による真空圧のサクション作用で回収される。高圧水蒸気を噴射された層状材料225は、機械方向MDへ進んでメッシュコンベアベルト171,172から分離され、第4工程に向かう。高圧水蒸気を噴射された層状材料225の表面には、畝部及び溝部が形成される。蒸気噴射部173のノズルの数、ピッチ等を調節することにより、畝部及び溝部の数、間隔等を調節することができる。なお、高圧水蒸気を噴射された部分は溝部となる。
第3工程では、メッシュコンベアベルト171,172によって層状材料225が局部的に圧縮されないようにするために、メッシュコンベアベルト171,172の少なくとも一方に対しては、上下方向TDへ容易に変形し得る程度の可撓性を有するものが使用される。メッシュコンベアベルト171,172には、ステンレス合金や青銅等で形成された金属製線材のメッシュベルト、ポリエステル繊維、アラミド繊維等で形成されたプラスチック製のメッシュベルトを使用することができ、開孔金属プレートで形成された金属製のベルトをメッシュベルトに代えて使用してもよい。層状材料225が金属粉の混入を極度に嫌う場合には、プラスチック製のメッシュベルトを使用することが好ましい。また、プラスチック製のメッシュベルトであって高い耐熱性が求められる場合には、ポリフェニレンサルファイド樹脂製のメッシュベルトを使用することが好ましい。ポリフェニレンサルファイド樹脂を使用した10〜75メッシュの平織りメッシュベルトは、可撓性を有し、メッシュコンベアベルト171にもメッシュコンベアベルト172にも使用できる特に好ましいメッシュベルトの一例である。蒸気噴射部173や配管182には、適宜の保温対策を施したり、ドレン排出機構を設けたりすることが好ましい。そのようにすることによって、蒸気噴射部173等に生じたドレンがノズルから噴出されて層状材料225に水分を過剰に含ませることを防ぐことができる。層状材料225に向かって噴射される水蒸気には、水分である液分を含まない乾き蒸気である場合と、飽和蒸気である場合と、液分を含む湿り蒸気である場合とがある。水蒸気が湿り蒸気または飽和蒸気である場合には、パルプを容易に湿潤状態にして変形させることができる。乾き蒸気は、パルプに含まれる水分を気化させることができ、気化させた水分でパルプの変形を容易にすることが可能である。また、パルプが熱可塑性合成繊維であれば、乾き蒸気が持つ熱によってその熱可塑性合成繊維の変形を容易にすることができる。蒸気噴射部173は、それに加熱機構を設けておいて水蒸気を過熱水蒸気に変えて噴射することもできる。蒸気サクション部174は、吸引した高圧水蒸気が気水分離装置を通過した後に排気ブロワ(図示せず)へ向かうような配管を有するものであることが好ましい。なお、蒸気噴射部173と蒸気サクション部174との位置を入れ替えて、すなわち、蒸気噴射部173が下側となり、蒸気サクション部174が上側となる態様で実施することもできる。また、高圧水蒸気の回収が必要ではないときには、蒸気サクション174を配置することなく実施することもできる。
[第4工程]
第4工程は、一般的な生理用ナプキンを製造する工程の例である。一対のロール300,301は第3工程で得られた吸収体226を所定の形状に切り抜く。ロール302からトップシートが供給され、高圧搾部低圧搾部を有する加熱エンボス303,304でシールされ、トップシートと吸収体226が一体化される。その後、バックシート305が供給され、吸収体226がトップシートとバックシートに挟まれた状態で製品周縁部を加熱エンボスによりシールする工程306,307を通過し、最後に工程308,309により製品形状に切り取られる。
<第4実施形態>
第4実施形態では、トップシート2の表面に血液改質剤が塗布されている。
血液改質剤によって、経血の粘度及び表面張力が下がり、トップシート2に排出された経血は、トップシート2から吸収体へ速やかに移行し、吸収体に吸収される。吸収体の経血吸収速度が向上することにより、トップシートに粘度の高い経血が残存しにくくなり、トップシート2のべたつき感が低減し、トップシート2の表面ドライ性が向上する。さらに、トップシート2上に粘度の高い経血の塊が残存しにくくなり、着用者が視覚的に不快感を覚えにくくなる。さらに、トップシート2に排出された経血が、生理用ナプキン1の幅方向側から漏れ出すのを抑制することができる。
血液改質剤が塗布される領域は、トップシート2表面の全体であってもよいし一部であってもよいが、少なくとも使用者の排泄口(膣口)に当接する領域を含むことが好ましい。
トップシート2への血液改質剤の塗工目付は、好ましくは1〜30g/m2であり、さらに好ましくは3〜10g/m2である。血液改質剤の塗工目付が1g/m2よりも小さいと、血液改質剤をトップシート2に安定的に塗布することが難しい場合があり、血液改質剤の塗工目付が30g/m2よりも大きいと、トップシート2がヌルヌルする場合がある。
血液改質剤の塗布方法としては、例えば、所望の温度に加熱した後、スロットコーター等の接触式コーター、スプレーコーター、カーテンコーター、スパイラルコーター等の非接触式コーターを使用して塗布する方法が挙げられる。トップシート2に液滴状の血液改質剤を均一に分散できる点、トップシート2にダメージを与えない点等の観点から、非接触式コーターを使用して塗布する方法が好ましい。
トップシート2に血液改質剤を塗布する時点は特に限定されないが、設備投資の抑制等の観点から、生理用ナプキン1の製造工程で血液改質剤をトップシート2に塗布することが好ましい。生理用ナプキン1の製造工程で血液改質剤をトップシート2に塗布する場合、血液改質剤の減少抑制等の観点から、最終工程に近い工程で血液改質剤をトップシート2に塗布することが好ましい。例えば、生理用ナプキン1の包装工程の直前に、血液改質剤をトップシート2に塗布してもよい。
トップシート2に疎水性合成繊維を使用する場合、液状排泄物の透過性、リウェットバック等を考慮して、親水剤、撥水剤等を疎水性合成繊維に練りこんだり、親水剤、撥水剤等で疎水性合成繊維をコーティングしたりしてもよい。また、コロナ処理、プラズマ処理等によって疎水性合成繊維に親水性を付与してもよい。これにより、血液改質剤が親油性の場合、血液改質剤塗布領域に親水性の箇所と親油性の箇所とがまばらに共存することになり、経血の親水性成分(主に血しょう)および親油性成分(主に血球)の両方がトップシート2から吸収体へ速やかに移行する。
以下、血液改質剤について詳細に説明する。
<血液改質剤>
本考案の血液改質剤は、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度とを有する血液改質剤である。
IOB(Inorganic Organic Balance)は、親水性及び親油性のバランスを示す指標であり、本明細書では、小田らによる次式:
IOB=無機性値/有機性値
により算出される値を意味する。なお、無機性値及び有機性値は、藤田穆「有機化合物の予測と有機概念図」化学の領域Vol.11,No.10(1957)p.719−725)に記載される有機概念図に基づく。
藤田氏による、主要な基の有機性値及び無機性値を、下記表1にまとめる。
例えば、炭素数14のテトラデカン酸と、炭素数12のドデシルアルコールとのエステルの場合には、有機性値が520(CH2,20×26個)、無機性値が60(−COOR,60×1個)となるため、IOB=0.12となる。
本考案の血液改質剤において、IOBは、約0.00〜約0.60であるが、約0.00〜約0.50であることが好ましく、約0.00〜約0.40であることがさらに好ましく、約0〜約0.30であることがさらに一層好ましい。IOBが低いほど、有機性が高く、血球との親和性が高くなると考えられる。
本明細書において、「融点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で測定した場合の、固形状から液状に変化する際の吸熱ピークのピークトップ温度を意味する。融点は、例えば、島津製作所社製のDSC−60型DSC測定装置を用いて測定することができる。
本考案の血液改質剤は、約45℃以下の融点を有すれば、室温で液体であっても、又は固体であってもよい、すなわち、融点が約25℃以上でも、又は約25℃未満でもよく、そして例えば、約−5℃、約−20℃等の融点を有することができる。本考案の血液改質剤の融点が約45℃以下である根拠は、後述する。
本考案の血液改質剤は、その融点に下限は存在しないが、その蒸気圧が低いことが好ましい。本考案の血液改質剤の蒸気圧は、25℃(1気圧)で約0〜約200Paであることが好ましく、約0〜約100Paであることがさらに好ましく、約0〜約10Paであることがさらに一層好ましく、約0〜約1Paであることがさらに一層好ましく、約0.0〜約0.1Paであることがさらに一層好ましい。吸収性物品が人体に接して用いられることを考慮すると、蒸気圧は、40℃(1気圧)で約0〜約700Paであることが好ましく、約0〜約100Paであることがさらに好ましく、約0〜約10Paであることがさらに一層好ましく、約0〜約1Paであることがさらに一層好ましく、約0.0〜約0.1Paであることがさらに一層好ましい。蒸気圧が高いと、保存中に気化し、血液改質剤の量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合がある。
本考案の血液改質剤の融点を、気候、着用時間の長さ等に応じて、使い分けることができる。例えば、平均気温が約10℃以下の地域では、約10℃以下の融点を有する血液改質剤を採用することにより、経血が排泄された後、周囲温度によって冷却された場合であっても、血液改質剤が、安定して血液を改質することができると考えられる。
吸収性物品が長時間にわたって使用される場合には、本考案の血液改質剤の融点は、45℃以下の範囲で高い方が好ましい。汗、着用時の摩擦等の影響を受けにくく、長時間着用した場合であっても、血液改質剤が移動しにくいからである。
0.00〜0.05gの水溶解度は、25℃において、100gの脱イオン水に、0.05gの試料を添加し、24時間静置し、24時間後に、必要に応じて軽く攪拌し、次いで、試料が溶解したか否か目視で評価することにより測定することができる。
なお、本明細書では、水溶解度に関して、「溶解」には、試料が脱イオン水に完全に溶解し、均一混合物を形成した場合と、試料が完全にエマルション化した場合とが含まれる。なお、「完全」とは、脱イオン水に、試料の塊が存在しないことを意味する。
当技術分野では、血液の表面張力等を変化させ、血液を迅速に吸収することを目的として、トップシートの表面を、界面活性剤でコーティングすることが行われている。しかし、界面活性剤は、一般に水溶解度が高いため、界面活性剤がコーティングされたトップシートは、血液中の親水性成分(血漿等)となじみがよく、むしろ血液をトップシートに残存させるようにはたらく傾向がある。本考案の血液改質剤は、水溶解度が低いため、従来公知の界面活性剤と異なり、血液をトップシートに残存させず、迅速に吸収体に移行させることができると考えられる。
本明細書において、25℃における、100gの水に対する溶解度を、単に、「水溶解度」と称する場合がある。
本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(例えば、逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(例えば、1種の脂肪酸と、1種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、又はi=1,2・・・)からなる系において、次の式:
w=ΣNii 2/ΣNii
により求められるMwを意味する。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。
GPCの測定条件としては、例えば、以下が挙げられる。
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF−801、KF−803及びKF−804
溶離液:THF
流量 :1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
なお、本明細書の実施例に記載される重量平均分子量は、上記条件により測定したものである。
本考案の血液改質剤は、好ましくは、次の(i)〜(iii)、
(i)炭化水素、
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
本明細書において、「炭化水素」は、炭素と水素とから成る化合物を意味し、鎖状炭化水素、例えば、パラフィン系炭化水素(二重結合及び三重結合を含まない、アルカンとも称される)、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含む、アルケンとも称される)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含む、アルキンとも称される)、及び二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素、並びに環状炭化水素、例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が挙げられる。
上記炭化水素としては、鎖状炭化水素及び脂環式炭化水素であることが好ましく、鎖状炭化水素であることがより好ましく、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、及び二重結合を2つ以上含む炭化水素(三重結合を含まない)であることがさらに好ましく、そしてパラフィン系炭化水素であることがさらに好ましい。
上記鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。
上記(ii)及び(iii)の化合物において、オキシ基(−O−)が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基(−O−)は隣接していない。従って、上記(ii)及び(iii)の化合物には、オキシ基が連続する化合物(いわゆる、過酸化物)は含まれない。
また、上記(iii)の化合物では、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物の方が好ましい。表1に示すように、カルボキシル基は、経血中の金属等と結合し、無機性値が150から、400以上へと大幅に上昇するため、カルボキシル基を有する血液改質剤は、使用時にIOBの値が約0.60を上回り、血球との親和性が低下する可能性があるからである。
本考案の血液改質剤は、より好ましくは、次の(i’)〜(iii’)、
(i’)炭化水素、
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)上記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)上記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
上記(ii’)及び(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合、すなわち、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)及びエーテル結合(−O−)から選択される2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接しておらず、各結合の間には、少なくとも、炭素原子が1つ介在する。
本考案の血液改質剤は、さらに好ましくは、炭化水素部分中に、炭素原子10個当たり、カルボニル結合(−CO−)を約1.8個以下、エステル結合(−COO−)を2個以下、カーボネート結合(−OCOO−)を約1.5個以下、エーテル結合(−O−)を約6個以下、カルボキシル基(−COOH)を約0.8個以下、そして/又はヒドロキシル基(−OH)を約1.2個以下有する化合物であることができる。
本考案の血液改質剤は、さらに好ましくは、次の(A)〜(F)、
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、
(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、
(E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル、及び
(F)鎖状炭化水素、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
以下、(A)〜(F)に従う血液改質剤について詳細に説明する。
[(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル]
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(A)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する限り、全てのヒドロキシル基がエステル化されていなくともよい。
(A1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、鎖状炭化水素テトラオール、例えば、アルカンテトラオール、例えば、ペンタエリトリトール、鎖状炭化水素トリオール、例えば、アルカントリオール、例えば、グリセリン、及び鎖状炭化水素ジオール、例えば、アルカンジオール、例えば、グリコールが挙げられる。
(A2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A2)」と称する場合がある)としては、例えば、炭化水素上の1つの水素原子が、1つのカルボキシル基(−COOH)で置換された化合物、例えば、脂肪酸が挙げられる。
化合物(A)としては、例えば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、及び(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(1):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステル、次の式(2):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステル、次の式(3):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステル、次の式(4):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
(式中、R1〜R4は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R1COOH、R2COOH,R3COOH,及びR4COOH)としては、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、飽和脂肪酸、例えば、C2〜C30の飽和脂肪酸、例えば、酢酸(C2)(C2は、炭素数を示し、R1C、R2C,R3C又はR4Cの炭素数に相当する、以下同じ)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)及びその異性体、例えば、2−メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)及びその異性体、例えば、2−メチルブタン酸(C5)、2,2−ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、並びにこれらの異性体(上述のものを除く)が挙げられる。
上記脂肪酸はまた、不飽和脂肪酸であることができる。上記不飽和脂肪酸としては、例えば、C3〜C20の不飽和脂肪酸、例えば、モノ不飽和脂肪酸、例えば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、例えば、α-リノレン酸(C18)及びγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、例えば、α-エレオステアリン酸(C18)及びβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、例えば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、例えば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、並びにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル、すなわち、ペンタエリトリトールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルであることが好ましく、トリエステル又はテトラエステルであることがより好ましく、そしてテトラエステルであることがさらに好ましい。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(1)において、R1C、R2C、R3C及びR4C部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、上記炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、例えば、ペンタエリトリトールと、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)及び/又はドデカン酸(C12)とのテトラエステルが挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(2)において、R1C、R2C及びR3C部分の炭素数の合計が19の場合にIOBが0.58となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約19以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(3)において、R1C及びR2C部分の炭素数の合計が22の場合にIOBが0.59となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約22以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、上記式(4)において、R1C部分の炭素数が25の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約25以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
なお、上記計算に当たっては、二重結合、三重結合、iso分岐、及びtert分岐の影響は、考慮していない。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、ユニスター H−408BRS、H−2408BRS−22(混合品)等(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(5):
のグリセリンと脂肪酸とのトリエステル、次の式(6):
のグリセリンと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(7):
(式中、R5〜R7は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のグリセリンと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R5COOH、R6COOH及びR7COOH)としては、グリセリンと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙される脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、グリセリンと脂肪酸とのエステル、すなわち、グリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル又はトリエステルであることが好ましく、そしてトリエステルであることがより好ましい。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、トリグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとオクタン酸(C8)とのトリエステル、グリセリンとデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのトリエステル、及びグリセリンと、2種又は3種の脂肪酸とのトリエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのトリエステルとしては、例えば、グリセリンと、オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)及びドデカン酸(C12)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)及びオクタデカン酸(C18)とのトリエステル等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルとしては、融点を約45℃以下とするために、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が、約40以下であることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が12の場合にIOBが0.60となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約12以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いわゆる、脂肪であり、人体を構成しうる成分であるため、安全性の観点から好ましい。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルの市販品としては、トリヤシ油脂肪酸グリセリド、NA36、パナセート800、パナセート800B及びパナセート810S、並びにトリC2L油脂肪酸グリセリド及びトリCL油脂肪酸グリセリド(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルは、ジグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとデカン酸(C10)とのジエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのジエステル、グリセリンとヘキサデカン酸(C16)とのジエステル、及びグリセリンと、2種の脂肪酸とのジエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(6)において、R5C及びR6C部分の炭素数の合計が16の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約16以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルは、モノグリセリドとも称され、例えば、グリセリンのイコサン酸(C20)モノエステル、グリセリンのドコサン酸(C22)モノエステル等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、式(7)において、R5C部分の炭素数が19の場合にIOBが0.59となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約19以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、C2〜C6の鎖状炭化水素ジオール、例えば、C2〜C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールと、脂肪酸とのモノエステル又はジエステルが挙げられる。
具体的には、上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(8):
8COOCk2kOCOR9 (8)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8及びR9は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(9):
8COOCk2kOH (9)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸(式(8)及び式(9)において、R8COOH及びR9COOHに相当する)としては、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、R8C及びR9C部分の炭素数の合計が6の場合に、IOBが、0.60となる。従って、式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、上記炭素数の合計が約6以上の場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。また、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、R8C部分の炭素数が12の場合に、IOBが0.57となる。従って、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約12以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステル、すわなち、C2〜C6グリコールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、炭素数の大きいグリコールに由来する、グリコールと脂肪酸とのエステル、例えば、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールに由来するグリコールと脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
さらに、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステルであることが好ましい。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、コムポールBL、コムポールBS(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
[(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル]
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル(以下、「化合物(B)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する限り、全てのヒドロキシル基がエーテル化されていなくともよい。
(B1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(A)」において化合物(A1)として列挙されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
(B2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(B2)」と称する場合がある)としては、例えば、炭化水素の1個の水素原子が、1個のヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、例えば、脂肪族1価アルコール、例えば、飽和脂肪族1価アルコール及び不飽和脂肪族1価アルコールが挙げられる。
上記飽和脂肪族1価アルコールとしては、例えば、C1〜C20の飽和脂肪族1価アルコール、例えば、メチルアルコール(C1)(C1は、炭素数を示す、以下同じ)、エチルアルコール(C2)、プロピルアルコール(C3)及びその異性体、例えば、イソプロピルアルコール(C3)、ブチルアルコール(C4)及びその異性体、例えば、sec−ブチルアルコール(C4)及びtert−ブチルアルコール(C4)、ペンチルアルコール(C5)、ヘキシルアルコール(C6)、ヘプチルアルコール(C7)、オクチルアルコール(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキシルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ドデシルアルコール(C12)、テトラデシルアルコール(C14)、ヘキサデシルアルコール(C16)、へプラデシルアルコール(C17)、オクタデシルアルコール(C18)、及びエイコシルアルコール(C20)、並びにこれらの列挙されていない異性体が挙げられる。
上記不飽和脂肪族1価アルコールとしては、上記飽和脂肪族1価アルコールのC−C単結合の1つを、C=C二重結合で置換したもの、例えば、オレイルアルコールが挙げられ、例えば、新日本理化株式会社から、リカコールシリーズ及びアンジェコオールシリーズの名称で市販されている。
化合物(B)としては、例えば、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、好ましくはジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、より好ましくはトリエーテル及びテトラエーテル、そしてさらに好ましくはテトラエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル及びトリエーテル、好ましくはジエーテル及びトリエーテル、そしてより好ましくはトリエーテル、並びに(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル及びジエーテル、そして好ましくはジエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(10)〜(13):
(式中、R10〜R13は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテル、トリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(14)〜(16):
(式中、R14〜R16は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
上記鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(17):
17OCn2nOR18 (17)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17及びR18は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのジエーテル、及び次の式(18):
17OCn2nOH (18)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルが挙げられる。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(10)において、R10、R11、R12及びR13部分の炭素数の合計が4の場合にIOBが0.44となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約4以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(11)において、R10、R11及びR12部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.57となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(12)において、R10及びR11部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、上記式(13)において、R10部分の炭素数が22の場合にIOBが0.59となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約22以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
また、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(14)において、R14、R15及びR16部分の炭素数の合計が3の場合にIOBが0.50となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約3以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(15)において、R14及びR15部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、式(16)において、R14部分の炭素数が16の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約16以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、R17及びR18部分の炭素数の合計が2の場合に、IOBが、0.33となる。従って、式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が2以上の場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。また、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、R17部分の炭素数が8の場合に、IOBが0.60となる。従って、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約8以上である場合に、IOBが約0.00〜約0.60の要件を満たす。
化合物(B)としては、化合物(B1)と、化合物(B2)とを、酸触媒の存在下で、脱水縮合することにより生成することができる。
[(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル]
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(C)」と称する場合がある)は、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する限り、全てのカルボキシル基がエステル化されていなくともよい。
(C1)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸(以下、「化合物(C1)」と称する場合がある)としては、例えば、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素カルボン酸、例えば、鎖状炭化水素ジカルボン酸、例えば、アルカンジカルボン酸、例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸及びデカン二酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、例えば、アルカントリカルボン酸、例えば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸及びデカン三酸、並びに鎖状炭化水素テトラカルボン酸、例えば、アルカンテトラカルボン酸、例えば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸及びデカン四酸が挙げられる。
また、化合物(C1)には、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ヒドロキシ酸、例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素アルコキシ酸、例えば、O−アセチルクエン酸、及び2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素オキソ酸が含まれる。
(C2)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(B)」の項で列挙されるもの、例えば、脂肪族1価アルコールが挙げられる。
化合物(C)としては、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル、好ましくはジエステル、トリエステル及びテトラエステル、より好ましくはトリエステル及びテトラエステル、そしてさらに好ましくはテトラエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル及びトリエステル、好ましくはジエステル及びトリエステル、そしてより好ましくはトリエステル、並びに(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル及びジエステル、好ましくはジエステルが挙げられる。
化合物(C)の例としては、アジピン酸ジオクチル、O−アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられ、そして市販されている。
[(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物]
(D)鎖状炭化水素部分と、上記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物(以下、「化合物(D)」と称する場合がある)としては、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、及び(d4)ジアルキルカーボネートが挙げられる。
[(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(19):
19OR20 (19)
(式中、R19及びR20は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エーテルを構成する脂肪族1価アルコール(式(19)において、R19OH及びR20OHに相当する)としては、上記エーテルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルでは、当該エーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(19)において、R19及びR20部分の炭素数の合計が2の場合にIOBが0.50となるため、当該炭素数の合計が約2以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が6程度では、水溶解度が約2gと高く、蒸気圧の観点からも問題がある。水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。
[(d2)ジアルキルケトン]
上記ジアルキルケトンとしては、次の式(20):
21COR22 (20)
(式中、R21及びR22は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルケトンでは、R21及びR22の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.54となるため、当該炭素数の合計が約5以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が5程度では、水溶解度が約2gと高い。従って、水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。また、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数は、約10以上であることが好ましく、そして約12以上であることが好ましい。
なお、上記炭素数の合計が約8の場合、例えば、5−ノナノンでは、融点は約−50℃であり、蒸気圧は20℃で約230Paである。
上記ジアルキルケトンは、市販されている他、公知の方法、例えば、第二級アルコールを、クロム酸等で酸化することにより得ることができる。
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、次の式(21):
23COOR24 (21)
(式中、R23及びR24は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エステルを構成する脂肪酸(式(21)において、R23COOHに相当する)としては、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。上記エステルを構成する脂肪族1価アルコール(式(21)において、R24OHに相当する)としては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
なお、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルでは、脂肪酸及び脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(21)において、R23C及びR24部分の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.60となるため、R23C及びR24部分の炭素数の合計が約5以上である場合に、上記IOBの要件を満たす。しかし、例えば、上記炭素数の合計が6の酢酸ブチルでは、蒸気圧が2,000Pa超と高い。従って、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数の合計が約12以上であることが好ましい。なお、上記炭素数の合計が約11以上であれば、水溶解度が約0.00〜約0.05gの要件を満たすことができる。
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの例としては、例えば、ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル、テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル等が挙げられ、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの市販品としては、例えば、エレクトールWE20、及びエレクトールWE40(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(d4)ジアルキルカーボネート]
上記ジアルキルカーボネートとしては、次の式(22):
25OC(=O)OR26 (22)
(式中、R25及びR26は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルカーボネートでは、R25及びR26の炭素数の合計が6の場合にIOBが0.57となるため、R25及びR26の炭素数の合計が、約6以上であれば、IOBの要件を満たす。
水溶解度を考慮すると、R25及びR26の炭素数の合計が約7以上であることが好ましく、そして約9以上であることがより好ましい。
上記ジアルキルカーボネートは、市販されている他、ホスゲンとアルコールとの反応、塩化ギ酸エステルとアルコール又はアルコラートとの反応、及び炭酸銀とヨウ化アルキルとの反応により合成することができる。
[(E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル(以下、化合物(E)と称する場合がある)としては、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、及び(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルが挙げられる。以下、説明する。
[(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールは、i)オキシC2~6アルキレン骨格、すなわち、オキシエチレン骨格、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、及びオキシヘキシレン骨格から成る群から選択されるいずれか1種の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するホモポリマー、ii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するブロックコポリマー、又はiii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するランダムコポリマーを意味する。
上記オキシC2~6アルキレン骨格は、ポリオキシC2~6アルキレングリコールのIOBを低くする観点から、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、又はオキシヘキシレン骨格であることが好ましく、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、又はオキシヘキシレン骨格であることがより好ましい。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールは、次の式(23):
HO−(Cm2mO)n−H (23)
(式中、mは2〜6の整数である)
により表わされうる。
なお、本考案者が確認したところ、ポリエチレングリコール(式(23)において、m=2のホモポリマーに相当する)は、n≧45(重量平均分子量約2,000超)の場合に、約0.00〜約0.60のIOBの要件を満たすものの、重量平均分子量が約4,000を超えた場合であっても、水溶解度の要件を満たさなかった。従って、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコールには、エチレングリコールのホモポリマーは含まれないと考えられ、エチレングリコールは、他のグリコールとのブロックコポリマー又はランダムコポリマーとして、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコールに含まれるべきである。
従って、式(23)のホモポリマーには、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールのホモポリマーが含まれうる。
以上より、式(23)において、mは、約3〜約6であり、そして約4〜約6であることがより好ましく、そしてnは2以上である。
上記式(23)において、nの値は、ポリC2~6アルキレングリコールが、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度とを有するような値である。
例えば、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3のホモポリマー)である場合には、n=12の場合に、IOBが0.58となる。従って、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3のホモポリマー)である場合には、m≧約12の場合に、上記IOBの要件を満たす。
また、式(21)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n=7の場合に、IOBが0.57となる。従って、式(23)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n≧約7の場合に、上記IOBの要件を満たす。
IOB、融点及び水溶解度の観点から、ポリオキシC4~6アルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約200〜約10,000、より好ましくは約250〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約250〜約5,000の範囲にある。
また、IOB、融点及び水溶解度の観点から、ポリオキシC3アルキレングリコール、すなわち、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約1,000〜約10,000、より好ましくは約3,000〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約4,000〜約5,000の範囲にある。上記重量平均分子量が約1,000未満では、水溶解度が要件を満たさず、そして重量平均分子量が大きいほど、特に、吸収体移行速度及びトップシートの白さが向上する傾向があるからである。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールの市販品としては、例えば、ユニオール(商標)D−1000,D−1200,D−2000,D−3000,D−4000,PB−500,PB−700,PB−1000及びPB−2000(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪酸によりエステル化されているもの、すなわち、モノエステル及びジエステルが挙げられる。
ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸としては、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、ウィルブライトcp9(日油株式会社製)が挙げられる。
[(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪族1価アルコールによりエーテル化されているもの、すなわち、モノエーテル及びジエーテルが挙げられる。
ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルにおいて、エーテル化すべき脂肪族1価アルコールとしては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙されている脂肪族1価アルコールが挙げられる。
[(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルにおいて、エステル化すべきポリオキシC2~6アルキレングリコールとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールが挙げられる。また、エステル化すべき鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、及び鎖状炭化水素ジカルボン酸としては、「化合物(C)」の項で説明されるものが挙げられる。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルは、市販されているほか、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸に、オキシC2~6アルキレングリコールを、公知の条件で重縮合させることにより製造することができる。
[(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルにおいて、エーテル化すべきポリオキシC2~6アルキレングリコールとしては、「(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC2~6アルキレングリコールが挙げられる。また、エーテル化すべき鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、及び鎖状炭化水素ジオールとしては、「化合物(A)」の項で説明されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルの市販品としては、例えば、ユニルーブ(商標)5TP−300KB,並びにユニオール(商標)TG−3000及びTG−4000(日油株式会社製)が挙げられる。
ユニルーブ(商標)5TP−300KBは、ペンタエリトリトール1モルに、プロピレングリコール65モルと、エチレングリコール5モルとを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.39であり、融点は45℃未満であり、そして水溶解度は0.05g未満であった。
ユニオール(商標)TG−3000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール50モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.42であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約3,000であった。
ユニオール(商標)TG−4000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール70モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.40であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約4,000であった。
上記ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルはまた、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールに、C2~6アルキレンオキシドを、公知の条件で付加させることにより製造することができる。
[(F)鎖状炭化水素]
上記鎖状炭化水素は、上記無機性値が0であることから、IOBが0.00であり、そして水溶解度がほぼ0gであるので、融点が約45℃以下のものであれば、上記血液改質剤に含まれうる。上記鎖状炭化水素としては、例えば、(f1)鎖状アルカン、例えば、直鎖アルカン及び分岐鎖アルカンが挙げられ、例えば、直鎖アルカンの場合には、融点が約45℃以下であることを考慮すると、おおむね、炭素数が22以下のものが含まれる。また、蒸気圧を考慮すると、おおむね、炭素数が13以上のものが含まれる。分岐鎖アルカンの場合には、直鎖アルカンよりも、同一炭素数において、融点が低くなる場合があるため、炭素数が22以上のものも含まれうる。
上記炭化水素の市販品としては、例えば、パールリーム6(日油株式会社)が挙げられる。
本考案の血液改質剤は、実施例と共に詳細に考察するが、血液の粘度及び表面張力を下げる作用を少なくとも有することが見いだされた。吸収性物品が吸収すべき経血は、通常の血液と比較して、子宮内膜壁等のタンパク質を含むため、それらが血球同士を繋ぐように作用して、血球が連銭した状態をとりやすい。そのため、吸収性物品が吸収すべき経血は、高粘度となりやすく、トップシートが不織布又は織布である場合には、経血が繊維の間に目詰まりしやすく、着用者はベタつき感を覚えやすく、そしてトップシートの表面で経血が拡散し、漏れやすくなる。これに対して、本考案の血液改質剤をトップシートに塗布することにより、トップシートの繊維の間で経血が目詰まりしにくく、経血をトップシートから吸収体に迅速に移行させることが可能となる。
IOBが約0.00〜約0.60である本考案の血液改質剤は、有機性が高く、血球の間に入り込みやすいので、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることができると考えられる。本考案の血液改質剤が、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることにより、吸収体が経血を吸収しやすくなると考えられる。例えば、アクリル系高吸収ポリマー、いわゆる、SAPを含む吸収性物品では、経血を吸収すると、連銭した血球がSAP表面を覆い、SAPが吸収性能を発揮しにくくなることが知られているが、血球を安定化することにより、SAPが吸収性能を発揮しやすくなると考えられる。また、赤血球と親和性の高い血液改質剤が、赤血球膜を保護するため、赤血球が破壊されにくくなると考えられる。
本考案の血液改質剤は、約2,000以下の重量平均分子量を有することが好ましく、そして1,000以下の重量平均分子量を有することがより好ましい。重量平均分子量が大きくなると、血液改質剤の粘度を、塗工に適した粘度に下げることが難しくなり、溶媒で希釈すべき場合が生ずるからである。また、重量平均分子量が大きくなると、血液改質剤にタック性が生じ、着用者に不快感を与える場合があるからである。
以下の実施例によって、血液改質剤が、血液の粘度および表面張力を下げるメカニズムを有することを確認した。
以下、実施例に基づいて、本考案をさらに詳細に説明するが、本考案の範囲は実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)吸収体材料A(A1〜A7)の調製
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と熱融着性複合繊維A(以下「複合繊維A」という)とを、9:1(A1)、8:2(A2)、6.5:3.5(A3)、5:5(A4)、3.5:6.5(A5)、2:8(A6)、0:10(A7)の質量比で混綿し、吸収体材料A1〜A7(坪量200g/m2)を調製した。
複合繊維Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分とし、無水マレイン酸を含むビニルポリマーでグラフト重合された高密度ポリエチレン(HDPE)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維である。複合繊維Aの芯鞘比は50:50(質量比)、芯成分中の酸化チタン量は0.7重量%、繊度は2.2dtex、繊維長は6mmである。
(2)吸収体材料B(B1〜B9)の調製
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と熱融着性複合繊維B(以下「複合繊維B」という)とを、9:1(B1)、8.5:1.5(B2)、8:2(B3)、6.5:3.5(B4)、5:5(B5)、3.5:6.5(B6)、2:8(B7)、0:10(B8)、10:0(B9)の質量比で混綿し、吸収体材料B1〜B9(坪量200g/m2)を調製した。
複合繊維Bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分とし、一般的な高密度ポリエチレン(HDPE)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維である。複合繊維Bの芯鞘比は50:50(質量比)、芯成分中の酸化チタン量は0.7重量%、繊度は2.2dtex、繊維長は6mmである。
(3)吸収体サンプルA(A1〜A7),B(B1〜B9)の製造
吸収体材料A1〜A7,B1〜B9を、一般的なスルーエアー法によってボンディングし、複合繊維A,Bを加熱融着し、吸収体サンプルA1〜A7,B1〜B9を調製した。この際、加熱温度は135℃、風量は5m/秒、加熱時間は20秒に設定した。
(4)最大引張り強度の測定
[乾燥時の最大引張り強度(N/25mm)]
標準時(温度20℃,湿度60%)のサンプル片(長さ150mm×幅25mm,5個)を、引張試験機(島津製作所,AG−1kNI)につかみ間隔100mmで取り付け、100mm/分の引張速度でサンプル片が切断されるまで荷重(最大点荷重)を加え、サンプル片の長さ方向(MD方向)における幅25mmあたりの最大引張り強度を測定した。
[湿潤時の最大引張り強度(N/25mm)]
サンプル片(長さ150mm×幅25mm)をイオン交換水中にそれが自重で沈下するまで浸漬した後、又はサンプル片を1時間以上水中に沈めた後、上記と同様に、サンプル片の長さ方向(MD方向)における幅25mmあたりの最大引張り強度を測定した(ISO 9073−3,JIS L 1913 6.3)。
なお、他の実施例における乾燥時及び湿潤時の最大引張り強度の測定も、上記と同様にして実施した。
(5)吸収体サンプルの坪量、厚み及び密度の測定
吸収体サンプルの密度は、次式に基づいて算出した。
D(g/cm3)=B(g/m2)/T(mm)×10-3
[式中、D、B及びTは、それぞれ、吸収体サンプルの密度、坪量及び厚みを表す。]
吸収体サンプルの坪量(g/m2)の測定は、以下の通り、実施した。
吸収体サンプルから100mm×100mmの試験片を3枚切り出し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における各試験片の質量を直示天秤(研精工業株式会社製 電子天秤HF−300)で測定し、3つの測定値の平均値から算出した吸収体サンプルの単位面積当たりの質量(g/m2)を、吸収体サンプルの坪量とした。
なお、吸収体サンプルの坪量の測定に関し、上記で特に規定しない測定条件については、ISO 9073−1又はJIS L 1913 6.2に記載の測定条件を採用した。
吸収体サンプルの厚み(mm)の測定は、以下の通り、実施した。
厚み計(株式会社大栄科学精器製作所製 FS−60DS,測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2)により、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における吸収体サンプルの異なる5つの部位(各部位の直径は44mm)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚みを測定し、5つの測定値の平均値を、吸収体サンプルの厚みとした。
なお、他の実施例における吸収体サンプルの坪量、厚み及び密度の測定も、上記と同様にして実施した。
(6)結果及び考察
測定結果を表2に示す。
表2に基づく考察は次の通りである。
吸収体サンプルAにおいて、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9未満であると、湿潤時の最大引張り強度が2N/25mm未満となると予想され、湿潤時の強度を担保できないと考えられる。したがって、吸収体サンプルAでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9以上であることが必要であると考えられる。
吸収体サンプルBにおいて、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5以下であると、湿潤時の最大引張り強度が2N/25mm未満となり、湿潤時の強度を担保できない。したがって、吸収体サンプルBでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5を上回ることが必要である。
パルプと複合繊維A,Bの混合比(質量比)が同一である吸収体サンプル同士(例えば、吸収体サンプルA1と吸収体サンプルB1)を比較すると、最大引張り強度(乾燥時及び湿潤時)は、いずれの混合比(質量比)においても、吸収体サンプルAの方が吸収体サンプルBよりも大きい。また、パルプと複合繊維A,Bとの混合比(質量比)が9:1〜3.5:6.5の範囲にあると(吸収体サンプルA1〜A5,B1〜B6)、乾燥時の最大引張り強度と湿潤時の最大引張り強度との差(乾燥時の最大引張り強度−湿潤時の最大引張り強度)は、吸収体サンプルAの方が吸収体サンプルBよりも大きい。
このような強度の差は、吸収体サンプルAでは、無水マレイン酸が有するアシル基及びエーテル結合の酸素原子と、セルロースのOH基との間に水素結合が生じているが、吸収体サンプルBでは、このような水素結合は生じていない点に起因すると考えられる。
このことは、ウェブ状態のサンプルの最大引張り強度からも裏付けられる。すなわち、ウェブ状態のサンプルの最大引張り強度を測定したところ、いずれのサンプルでも0.4N/25mm未満であり(表2参照)、強度の差が、絡合の程度の差に起因するものではなく、水素結合の形成の有無に起因することを示唆している。なお、ウェブ状態のサンプルは、吸収体材料を基材に積層させた後、何の処理もしていないサンプルであり、ニードルパンチ等の絡合処理、熱風、エンボス、エネルギー波等による加熱処理、接着剤による処理等のいずれの処理も施されていない。
また、下記表3に示すように、複合繊維Aは複合繊維Bよりも融解熱熱量が大きいことから、複合繊維Aは複合繊維Bよりも結晶化度が高く、強度の差は、複合繊維A,B間の結晶化度(繊維自体の接合強度)の差にも起因すると考えられる。
なお、特開2004−270041号公報には、無水マレイン酸がグラフト重合された変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸の無水カルボン酸基が開裂してセルロース繊維表面の水酸基と共有結合するため、セルロース繊維との接着性が良好であることが記載されているが、本結果では、共有結合の形成に起因する強度増加は観察されなかった。
〔実施例2〕
(1)吸収体サンプルC(C1〜C7),D(D1〜D9)の製造
キャリアシート(UCKN社製,ティッシュ坪量:14g/m2)に吸収体材料A1〜A7(実施例1参照)を載置し、一般的なスルーエアー法によってボンディングし、複合繊維Aを加熱融着(加熱温度:135℃,風量:5m/秒,加熱時間:20秒)した後、スチームジェット(SJ)ベルトプレス機にて密度を約0.08g/cm3(0.0793〜0.0817g/cm3)に調整し、吸収体サンプルC1〜C7(120mm×120mm,各3枚)を製造した。
吸収体材料B1〜B9(実施例1参照)を使用して同様に吸収体サンプルD1〜D9(120mm×120mm,各3枚)を製造した。
使用したSJベルトプレス機の構成を図8に示す。
図8(a)に示すように、SJベルトプレス機9は、メッシュコンベアベルト91a,91bと、蒸気ノズル92と、サクションボックス93とを備えており、互いに対向する蒸気ノズル92及びサクションボックス93の間に、一対のメッシュコンベアベルト91a,91bで挟持された吸収体を搬送し、蒸気ノズル92より吸収体に向かって高圧水蒸気を噴出し、吸収体を圧縮する。吸収体を通過した水蒸気はサクションボックス93で吸引されて排気される。吸収体の厚みの調整は、一対のメッシュコンベアベルト91a,91bの間隔の調整により可能である。
メッシュコンベアベルト91a,91bは、ポリフェニレンサルファイド製平織りメッシュコンベア(日本フィルコン社製)であり、縦横方向線径は0.37mm、縦線は34本/インチ、横線は32本/インチである。メッシュコンベアベルト91a,91b間の距離は、1mm又は0.2mmに調整されており、ライン速度は200m/秒である。
蒸気ノズル92には、図8(b)に示すように、口径0.5mmの開孔部が開孔ピッチ2mm,5mmで形成されており、そこから噴出する水蒸気の蒸気圧は0.7MPaであり、水蒸気処理量は単位面積あたり1.27kg/m2である。
(2)吸収性(浸透時間,液ハケ時間)の測定
各吸収体サンプル片に、表面シート(商品名ソフィ はだおもいの表面シートを使用)を載せ、その上に穴あきアクリル板(中央に40mm×10mmの穴、200mm(長さ)×100mm(幅))を重ねた。オートビュレット(柴田化学器械工業(株),マルチドジマットE725−1型)を使用して、アクリル板の穴に向けて、人工経血(イオン交換水1Lに対して、グリセリン80g,カルボキシメチルセルロースナトリウム8g,塩化ナトリウム10g,炭酸水素ナトリウム4g,赤色102号8g、赤色2号2g,黄色5号2gを加えて十分に攪拌したものを使用)を90ml/分で3mlを注入した。注入開始後、アクリル板の穴に滞留する人工経血が無くなるまでの時間を浸透時間(秒)、注入開始後、表面シート内から人工経血が無くなるまでの時間をハケ時間(秒)とした。
(3)乾燥時及び湿潤時の最大引張り強度の測定
各吸収体サンプル片の乾燥時及び湿潤時の最大引張り強度を実施例1と同様に測定した。
(4)結果及び考察
測定結果を表4に示す。
表4に示すように、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜5:5の範囲にあると(吸収体サンプルC1〜C4)、吸収体サンプルの吸収性は十分なものであったが、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が3.5:6.5〜0:10の範囲にあると(吸収体サンプルC5〜C7)、吸収体サンプルの吸収性は著しく低下した。
表4に示すように、吸収体サンプルCにおいて、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9未満であると、湿潤時の最大引張り強度が2N/25mm未満となると予想され、湿潤時の強度を担保できないと考えられる。したがって、吸収体サンプルCでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9以上であることが必要であると考えられる。
表4に示すように、吸収体サンプルDにおいて、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5以下であると、湿潤時の最大引張り強度が2N/25mm未満となり、湿潤時の強度を担保できない。したがって、吸収体サンプルDでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5を上回ることが必要である。
表4に示す結果から、吸収体の密度が約0.08g/cm3(0.0793〜0.0817g/cm3)である場合、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜5:5の範囲であれば、吸収体が十分な強度及び吸収性を兼ね備えることが明らかとなった。これは、複合繊維Aが、複合繊維Bよりも少量で(したがって、吸収性を阻害することなく)、吸収体の強度を担保できるからである。
〔実施例3〕
実施例2において、密度を約0.08g/cm3(0.0793〜0.0817g/cm3)に固定した系において、強度及び吸収性の観点から、パルプと複合繊維Aの混合比(質量比)の最適範囲を検討した。
本実施例では、吸収性の観点から、密度の最適範囲を検討した。
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と複合繊維Aとを表5に示す混合比(質量比)で混綿したもの(坪量200g/m2)を使用して、実施例2と同様にして、様々な密度(0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.12,0.13,0.14g/cm3)の吸収体サンプルE1〜E9を製造し、吸収性(液ハケ時間)測定した。
測定結果を表5に示す。
表5に示す測定結果から、次のことが明らかとなった。
パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜5:5の範囲であるとき、十分な液ハケ性能(具体的には、人工経血3cc滴下後の液ハケ時間が90秒以内)が発揮される密度範囲は0.06〜0.14g/cm3である。
密度が0.06g/cm3を下回る場合、いずれの混合比においても、液ハケ時間が90秒を超えてしまう。密度が0.06g/cm3を下回ると、繊維間距離が大きく毛管力が作用しないと考えられる。
密度が0.12g/cm3を超える場合、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜6.5:3.5の範囲であると、液ハケ時間が60秒以内となるが、それ以外の範囲であると、60秒を超える。密度が0.12g/cm3を超えると、毛管作用は働くものの、液体の移動空隙が小さくなり、液体の移動抵抗が増加するため、液ハケ性能が低下すると考えられる。
実施例1〜3の結果から、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)の最適範囲は9:1〜5:5であり、最適密度は0.06〜0.14g/cm3であることが明らかとなった。
〔実施例4〕
本実施例は、血液改質剤が、経血の粘度および表面張力を下げ、トップシートから吸収体へ速やかに経血を移行させることができることを確認する実施例である。
[例1]
[血液改質剤のデータ]
市販の生理用ナプキンを準備した。当該生理用ナプキンは、親水剤で処理されたエアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートと、エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:30g/m2)から形成されたセカンドシートと、パルプ(坪量:150〜450g/m2、中央部ほど多い)、アクリル系高吸収ポリマー(坪量:15g/m2)及びコアラップとしてのティッシュを含む吸収体と、撥水剤処理されたサイドシートと、ポリエチレンフィルムから成るバックシートとから形成されていた。
以下に、実験に用いられた血液改質剤を列挙する。
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ユニスター H−408BRS,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール,重量平均分子量:約640
・ユニスター H−2408BRS−22,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトールと、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールとの混合物(58:42,重量比),重量平均分子量:約520
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・Cetiol SB45DEO,コグニスジャパン株式会社製
脂肪酸が、オレイン酸又はステアリル酸である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・SOY42,日油株式会社製
14の脂肪酸:C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ0.2:11:88:0.8の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:880
・トリC2L油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ37:7:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・トリCL油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
8の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ44:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約570
・パナセート810s,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約480
・パナセート800,日油株式会社製
脂肪酸が全てオクタン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・パナセート800B,日油株式会社製
脂肪酸が全て2−エチルヘキサン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約470
・NA36,日油株式会社製
16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ5:92:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・トリヤシ油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸:C14の脂肪酸:C16の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ4:8:60:25:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:670
・カプリル酸ジグリセリド,日油株式会社製
脂肪酸がオクタン酸である、グリセリンと脂肪酸とのジエステル,重量平均分子量:340
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・コムポールBL,日油株式会社製
ブチレングリコールのドデカン酸(C12)モノエステル,重量平均分子量:約270
・コムポールBS,日油株式会社製
ブチレングリコールのオクタデカン酸(C18)モノエステル,重量平均分子量:約350
・ユニスター H−208BRS,日油株式会社製
ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール,重量平均分子量:約360
[(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・O−アセチルクエン酸トリブチル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約400
[(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
・アジピン酸ジオクチル,和光純薬工業製
重量平均分子量:約380
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
・エレクトールWE20,日油株式会社製
ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約360
・エレクトールWE40,日油株式会社製
テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル,重量平均分子量:約390
[(e1)ポリオキシC2〜6アルキレングリコール]
・ユニオールD−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,000
・ユニオールD−1200,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約1,200
・ユニオールD−3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約3,000
・ユニオールD−4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約4,000
・ユニオールPB500,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約500
・ユニオールPB700,日油株式会社製
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール,重量平均分子量:約700
・ユニオールPB1000R,日油株式会社製
ポリブチレングリコール,重量平均分子量:約1000
[(e2)ポリオキシC2〜6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
・ウィルブライトcp9,日油株式会社製
ポリブチレングリコールの両末端のOH基が、ヘキサデカン酸(C16)によりエステル化された化合物,重量平均分子量:約1,150
[(e3)ポリオキシC2〜6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエーテル]
・ユニルーブMS−70K,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのステアリルエーテル,約15の繰返し単位,重量平均分子量:約1,140
[(e5)ポリオキシC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
・ユニルーブ5TP−300KB
ペンタエリトリトール1モルに、エチレンオキシド5モルと、プロピレンオキシド65モルとを付加させることにより生成した、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテル,重量平均分子量:4,130
・ユニオール TG−3000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約3,000
・ユニオール TG−4000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約4,000
[(f1)鎖状アルカン]
・パールリーム6,日油株式会社製
流動イソパラフィン、イソブテン及びn-ブテンを共重合し、次いで水素を付加することにより生成された分岐鎖炭化水素、重合度:約5〜約10,重量平均分子量:約330
[その他の材料]
・NA50,日油株式会社製
NA36に水素を付加し、原料である不飽和脂肪酸に由来する二重結合の比率を下げたグリセリンと脂肪酸とのトリエステル,重量平均分子量:約880
・(カプリル酸/カプリン酸)モノグリセリド,日油株式会社製
オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのモノエステル,重量平均分子量:約220
・Monomuls 90−L2ラウリン酸モノグリセリド,コグニスジャパン株式会社製
・クエン酸イソプロピル,東京化成工業株式会社製
重量平均分子量:約230
・リンゴ酸ジイソステアリル
重量平均分子量:約640
・ユニオールD−400,日油株式会社製
ポリプロピレングリコール,重量平均分子量:約400
・PEG1500,日油株式会社製
ポリエチレングリコール,重量平均分子量:約1,500〜約1,600
・ノニオンS−6,日油株式会社製
ポリオキシエチレンモノステアレート、約7の繰返し単位、重量平均分子量:約880
・ウィルブライトs753,日油株式会社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリセリン,重量平均分子量:約960
・ユニオール TG−330,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約6の繰返し単位,重量平均分子量:約330
・ユニオール TG−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約1,000
・ユニルーブ DGP−700,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのジグリセリルエーテル,約9の繰返し単位,重量平均分子量:約700
・ユニオックスHC60,日油株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,重量平均分子量:約3,570
・ワセリン,コグニスジャパン株式会社製
石油に由来する炭化水素、半固形
上記試料の、IOB,融点及び水溶解度を、下記表6に示す。
なお、水溶解度は、上述の方法に従って測定したが、100gの脱塩水に、20.0gを添加し、24時間後に溶解した試料は、「20g<」と評価し、そして100gの脱塩水に、0.05gは溶解したが、1.00gは溶解しなかった試料は、0.05〜1.00gと評価した。
また、融点に関し、「<45」は、融点が45℃未満であることを意味する。
上記生理用ナプキンのトップシートの肌当接面を、上述の血液改質剤で塗工した。各血液改質剤を、血液改質剤が室温で液体である場合にはそのまま、そして血液改質剤が室温で固体である場合には、融点+20℃まで加熱し、次いで、コントロールシームHMAガンを用いて、各血液改質剤を微粒化し、トップシートの肌当接面の全体に、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布した。
図9は、トップシートがトリC2L油脂肪酸グリセリドを含む生理用ナプキン(No.2−5)における、トップシートの肌当接面の電子顕微鏡写真である。図9から明らかなように、トリC2L油脂肪酸グリセリドは、微粒子状で、繊維の表面に付着している。
上述の手順に従って、リウェット率と、吸収体移行速度とを測定した。結果を、下記表6に示す。
[試験方法]
各血液改質剤を含むトップシートの上に、穴の開いたアクリル板(200mm×100mm,125g,中央に、40mm×10mmの穴が開いている)を置き、上記穴から、37±1℃のウマEDTA血(ウマの血液に、凝結防止のため、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」と称する)が添加されたもの)3gを、ピペットを用いて滴下(1回目)し、1分後、37±1℃のウマEDTA血3gを、アクリル板の穴から、ピペットで再度滴下した(2回目)。
2回目の血液の滴下後、直ちに上記アクリル板を外し、血液を滴下した場所に、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社 定性濾紙 No.2,50mm×35mm)10枚を置き、その上から、圧力が30g/cm2となるようにおもりを置いた。1分後、上記ろ紙を取出し、以下の式に従って、「リウェット率」を算出した。
リウェット率(%)=100×(試験後のろ紙質量−当初のろ紙質量)/6
また、リウェット率の評価とは別に、2回目の血液の滴下後、血液がトップシートから吸収体に移行する時間である「吸収体移行速度」を測定した。上記吸収体移行速度は、トップシートに血液を投入してから、トップシートの表面及び内部に、血液の赤さが見られなくなるまでの時間を意味する。
リウェット率と、吸収体移行速度の結果を、以下の表6に示す。
次いで、吸収体移行速度の試験後のトップシートの肌当接面の白さを、以下の基準に従って、目視で評価した。
◎:血液の赤さがほとんど残っておらず、血液が存在した場所と、存在していない場所の区別がつかない
○:血液の赤さが若干残っているが、血液の存在した場所と、存在していない場所の区別がつきにくい
△:血液の赤さが若干残っており、血液が存在した場所が分かる
×:血液の赤さがそのまま残っている
結果を、併せて下記表6に示す。
血液改質剤を有しない場合には、リウェット率は22.7%であり、そして吸収体移行速度は60秒超であったが、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いずれも、リウェット率が7.0%以下であり、そして吸収体移行速度が8秒以下であることから、吸収性能が大幅に改善されていることが分かる。しかし、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルのうち、融点が45℃を超えるNA50では、吸収性能に大きな改善はみられなかった。
同様に、約0.00〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度を有する血液改質剤では、吸収性能が大きく改善されることが分かった。
[例2]
動物の各種血液に関して、上述の手順に従って、リウェット率を評価した。実験に用いられた血液は、以下の通りである。
[動物種]
(1)ヒト
(2)ウマ
(3)ヒツジ
[血液種]
・脱繊維血:血液を採取後、ガラスビーズと共に、三角フラスコ内で約5分間撹拌したもの
・EDTA血:静脈血65mLに、12%EDTA・2K生理食塩液0.5mLを添加したもの
[分画]
血清又は血漿:それぞれ、脱繊維血又はEDTA血を、室温下で、約1900Gで10分間遠心分離した後の上清
血球:血液から血清を除去し、残差をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、次いで除去した血清分のリン酸緩衝生理食塩液を加えたもの
トリC2L油脂肪酸グリセリドが、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布されている以外は、例1と同様にして吸収性物品を製造し、上述の各種血液に関して、リウェット率を評価した。各血液に関して測定を3回行い、その平均値を採用した。
結果を、下記表7に示す。
例2で得られた、ウマEDTA血と同様の傾向が、ヒト及びヒツジの血液でも得られた。また、脱繊維血及びEDTA血においても、同様の傾向が観察された。
[例3]
[血液保持性の評価]
血液改質剤を含むトップシートと、血液改質剤を含まないトップシートとにおける血液保持性を評価した。
[試験方法]
(1)エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートの肌当接面に、トリC2L油脂肪酸グリセリドを、コントロールシームHMAガンを用いて微粒化し、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布する。また、比較のため、トリC2L油脂肪酸グリセリドを塗布していないものも準備する。次いで、トリC2L油脂肪酸グリセリドが塗布されているトップシートと、塗布されていないトップシートとの両方を、0.2gの大きさにカットし、セルストレイナー+トップシートの質量(a)を正確に測定する。
(2)ウマEDTA血約2mLを、肌当接面側から添加し、1分間静置する。
(3)セルストレイナーを、遠心管にセットし、スピンダウンして、余剰のウマEDTA血を取り除く。
(4)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(b)を測定する。
(5)下式に従って、トップシート1g当たりの当初吸収量(g)を算出する。
当初吸収量=[重量(b)−重量(a)]/0.2
(6)セルストレイナーを、遠心管に再セットし、室温下、約1200Gで1分間遠心分離する。
(7)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(c)を測定する。
(8)下式に従って、トップシート1g当たりの試験後吸収量(g)を算出する。
試験後吸収量=[重量(c)−重量(a)]/0.2
(9)下式に従って血液保持率(%)を算出した。
血液保持率(%)=100×試験後吸収量/当初吸収量
なお、測定は3回行い、その平均値を採用した。
結果を、下記表8に示す。
血液改質剤を含むトップシートは、血液保持性が低く、血液を吸収後、迅速に吸収体に移行させることができることが示唆される。
[例4]
[血液改質剤を含む血液の粘性]
血液改質剤を含む血液の粘性を、Rheometric Expansion System ARES(Rheometric Scientific,Inc)を用いて測定した。ウマ脱繊維血に、パナセート810sを2質量%添加し、軽く撹拌して試料を形成し、直径50mmのパラレルプレートに試料を載せ、ギャップを100μmとし、37±0.5℃で粘度を測定した。パラレルプレートゆえ、試料に均一なせん断速度はかかっていないが、機器に表示された平均せん断速度は、10s-1であった。
パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血の粘度は、5.9mPa・sであり、一方、血液改質剤を含まないウマ脱繊維血の粘度は、50.4mPa・sであった。従って、パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血は、血液改質剤を含まない場合と比較して、約90%粘度を下げることが分かる。
血液は、血球等の成分を含み、チキソトロピーの性質を有することが知られているが、本開示の血液改質剤は、低粘度域で、血液の粘度を下げることができると考えられる。血液の粘度を下げることにより、吸収した経血を、トップシートから吸収体に速やかに移行させることができると考えられる。
[例5]
[血液改質剤を含む血液の顕微鏡写真]
健常ボランティアの経血をサランラップ(登録商標)上に採取し、その一部に、10倍の質量のリン酸緩衝生理食塩水中に分散されたパナセート810sを、パナセート810sの濃度が1質量%となるように添加した。経血を、スライドグラスに適下し、カバーグラスをかけ、光学顕微鏡にて、赤血球の状態を観察した。血液改質剤を含まない経血の顕微鏡写真を図10(a)に、そしてパナセート810sを含む経血の顕微鏡写真を図10(b)に示す。
図10から、血液改質剤を含まない経血では、赤血球が連銭等の集合塊を形成しているが、パナセート810sを含む経血では、赤血球が、それぞれ、安定に分散していることが分かる。従って、血液改質剤は、血液の中で、赤血球を安定化させる働きをしていることが示唆される。
[例6]
[血液改質剤を含む血液の表面張力]
血液改質剤を含む血液の表面張力を、協和界面科学社製接触角計 Drop Master500を用い、ペンダントドロップ法にて測定した。表面張力は、ヒツジ脱繊維血に、所定の量の血液改質剤を添加し、十分振とうした後に測定した。
測定は、機器が自動で行うが、密度γは、以下の式により求められる(図11を参照)。
γ=g×ρ×(de)2×1/H
g:重力定数
1/H:ds/deから求められる補正項
ρ:密度
de:最大直径
ds:滴下端よりdeだけ上がった位置での径
密度ρは、JIS K 2249−1995の「密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」の5.振動式密度試験方法に準拠し、下記表9に示される温度で測定した。
測定には、京都電子工業株式会社のDA−505を用いた。
結果を、表9に示す。
表9から、血液改質剤は、25℃の水100gに対する、約0.00〜約0.05gの水溶解度を有することからも明らかなように、水への溶解性が非常に低いが、血液の表面張力を下げることができることが分かる。
血液の表面張力を下げることにより、吸収した血液をトップシートの繊維間に保持せず、速やかに吸収体に移行させることができると考えられる。
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 トップシート(液透過性シート)
3 バックシート(液不透過性シート)
4a 吸収体
4b 吸収体

Claims (17)

  1. セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有する混合材料に高圧水蒸気を噴射して高密度化することにより得られた吸収体であって、前記吸収体に含有される前記吸水性繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維の質量比が80:20〜50:50であり、前記吸収体の密度が0.06〜0.14g/cm3であり、坪量が100〜400g/m2である、前記吸収体。
  2. 前記吸収体に含有される繊維同士が接着している、請求項1記載の吸収体。
  3. 前記高圧水蒸気の温度が前記熱可塑性樹脂繊維の融点未満である、請求項1又は2記載の吸収体。
  4. 前記熱可塑性樹脂繊維が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーでグラフト重合された変性ポリオレフィンあるいは該変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、前記変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体。
  5. 前記不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物が、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、あるいはそれらの混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収体。
  6. 乾燥時の最大引張り強度と湿潤時の最大引張り強度との差が1〜5N/25mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収体。
  7. 高吸水性材料を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収体。
  8. 着色されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収体。
  9. 液透過性層と、液不透過性層と、前記液透過性層及び前記液不透過性層の間に設けられた請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収体とを備えた吸収性物品。
  10. 前記吸収体の前記液透過性層側の面及び/又は前記液不透過性層側の面に畝溝構造が形成されている、請求項9記載の吸収性物品。
  11. 前記液透過性層側の面に形成された畝溝構造が前記吸収性物品の長手方向に延びており、前記液不透過性層側の面に形成された畝溝構造が前記吸収性物品の短手方向に延びている、請求項10記載の吸収性物品。
  12. 前記吸収体の繊維密度が、前記液透過性層側の面及び/又は前記液不透過性層側の面に向けて高くなっている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  13. 前記液透過性層が、0.00〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.00〜0.05gの水溶解度とを有する血液改質剤を含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  14. 前記血液改質剤が、下記(i)〜(iii):
    (i)炭化水素;
    (ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;及び
    (iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;
    並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
    ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない、
    請求項13に記載の吸収性物品。
  15. 前記血液改質剤が、下記(i’)〜(iii’):
    (i’)炭化水素;
    (ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物;及び
    (iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物;
    並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
    ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、
    請求項13又は14に記載の吸収性物品。
  16. 前記血液改質剤が、下記(A)〜(F):
    (A) (A1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル;
    (B) (B1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル;
    (C) (C1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル;
    (D)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物;
    (E)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル;及び
    (F)鎖状炭化水素;
    並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  17. 前記血液改質剤が、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC2~6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(e4)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、(e5)ポリオキシC2~6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項13〜16のいずれか1項に記載の吸収性物品。
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