JP3200503U - 平面上において歯の矯正をシミュレートするための器具 - Google Patents

平面上において歯の矯正をシミュレートするための器具 Download PDF

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Abstract

【課題】矯正歯科の学習者や臨床医にとって視覚的に容易に理解可能な歯の矯正をシミュレートするための器具を提供する。【解決手段】歯の矯正をシミュレートするための器具は、少なくとも二つの歯を表す第一のチップ13,14と、第一のチップ13,14と同数の互いに平行な線分状の溝11,12を有するプレート10を備えており、第一のチップ13,14はそれぞれ溝11,12に半固定されており、溝11,12に沿って移動可能であってかつプレート10上において回転可能であり、第一のチップ13,14にはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケット13b,14bが取り付けられている。【選択図】図1

Description

本考案は、歯科医療及び歯科教育に関し、特に、矯正歯科及びその教育に関する。
現在、矯正歯科における矯正を治療前にシミュレートするために、セットアップ模型と言われる石膏模型を作成することが広く行われている。この石膏模型は、患者の口の噛み合わせ部分から型を取って作成するものであり、模型に含まれる患者の矯正対象の歯に対応する部分を一旦切断してワックスで半固定することにより、石膏模型中の歯に可動性を持たせ、ワイヤーを掛けたときの歯の動きをシミュレートすることが出来る。なお、本明細書において「半固定する」とは、当該部材を制限された可動性を有する状態にすることを意味する。
しかしながら、石膏模型の作成には手間が掛かる上に、ワックスで半固定された歯の動きは人体との材質の違いから必ずしも実際の歯の動きに則していない。また、石膏模型において歯を動かすためにはワックスを溶融させるために温水を使うなど煩雑な作業を行う必要もある。
本考案が解決しようとする課題は、矯正歯科の学習者や臨床医にとって視覚的に容易に理解可能な歯の矯正をシミュレートするための器具を提供することである。
本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具は、少なくとも二つの歯を表す第一のチップと、前記第一のチップと同数の互いに平行な線分状の溝を有するプレート
を備えており、前記第一のチップはそれぞれ前記溝に半固定されており、前記溝に沿って移動可能であってかつ前記プレート上において回転可能であり、前記第一のチップにはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケットが取り付けられていることにより、上記課題を解決する。
本考案による別の歯の矯正をシミュレートするための器具は、前歯を表す複数の第二のチップと、奥歯を表す少なくとも二つの第三のチップと、歯並びを表す曲線が描かれたプレートを備えており、前記第二のチップは前記プレート上に完全に固定されており、前記第三のチップは前記プレート上を移動及び回転することができるように半固定されており、前記第二のチップ及び前記第三のチップにはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケットが取り付けられていることにより、上記課題を解決する。
本考案によるさらに別の歯の矯正をシミュレートするための器具は、少なくとも二つの歯の垂直方向の位置を表す第一のチップと、平面上の前歯の位置を表す複数の第二のチップと、平面上の前歯の位置を表す少なくとも二つの第三のチップと、前記第一のチップと同数の互いに平行な線分状の溝を有し、平面上の歯並びを表す曲線が描かれたプレート
を備えており、前記第一のチップはそれぞれ前記溝に半固定されており、前記溝に沿って移動可能であってかつ前記プレート上において回転可能であり、前記第二のチップは前記プレート上に完全に固定されており、前記第三のチップは前記プレート上を移動及び回転することができるように半固定されており、前記第一のチップ、前記第二のチップ及び前記第三のチップにはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケットが取り付けられていることにより、上記課題を解決する。
前記第一のチップと同数のボルトとナットをさらに備えており、前記第一のチップはそれぞれ前記ボルトと前記ナットにより前記溝に半固定されていてもよい。
前記プレートが金属製であって前記第三のチップには磁石がさらに取り付けられていることにより、前記プレートへの前記第三のチップの半固定が実現されてもよい。
本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具は、ワイヤー矯正による歯の動きを平面上において視覚的に示すことができるため、使用者は矯正により予想される歯の動きを容易に知ることができる。そのため、本考案の器具は矯正歯科の学習者や臨床医による使用に適している。
また、本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具によれば、患者の歯型を取って石膏模型を作る必要がなく、駆動に電気等の特別な動力も必要としない。そのため、臨床医等の使用者は、温水を用いたワックスの溶融のような手間が掛かる作業を行うことなしに、器具上のブラケットにワイヤーを固定するだけで手動により種々の矯正シミュレーションを行うことができる。
さらに、本考案の歯の矯正をシミュレートするための器具は、垂直方向と水平面の二つの平面上における歯の動きを示すことができるため、立体の石膏模型によるシミュレーションと比較して歯の移動方向の認識が容易であり、使用者は予定される矯正後の歯の位置や方向を容易にイメージすることができる。
以下、図面を参照しながら本考案の実施の形態について説明する。
図1は、本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具の概略平面図を示す。本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具は、略長方形のプレート10上に構成部品を取り付けたものであり、前記構成部品はそれぞれ一つの歯を表す第一のチップ13,14と、それぞれ一つの前歯(切歯)を表す第二のチップ21〜24と、それぞれ一つの奥歯(大臼歯)を表す第三のチップ16,18を含む。好適には、プレート10は鉄、鉄鋼等の磁石が吸着可能な金属板であり、第一乃至第三のチップ13,14,16,18,21〜24は白色の合成樹脂の小片である。製造の容易性から、第一乃至第三のチップ13,14,16,18,21〜24の形状は略長方形であることが望ましいが、シミュレーションの精度を高めるためにこれらの形状を歯の平面形状等に合わせてもよい。以下の説明においては、本考案の器具を人間の歯の矯正のシミュレーションに使用する場合を想定するが、後述するように、本考案の器具を人間以外の動物の歯の矯正に応用することも可能である。
プレート10の右半分は歯の垂直方向の矯正を表し、プレート10の左半分は歯の水平面上の矯正を表す。プレート10の右半分と左半分は互いに独立した矯正を表していて干渉することがないため、プレート10の右半分のみ又はプレート10の左半分のみを独立した器具として構成しても、本考案の目的を達成することが可能である。プレート10の右半分には略長方形の溝11,12が設けられており、この溝11,12に沿って移動可能になるように第一のチップ13,14が半固定されている。
図2は、図1上の一点鎖線AA´に沿った本考案による器具の断面図である。図2は、プレート10上の第一のチップ12と第三のチップ18が存在する側(図1では下方)から見た図である。図2の右半分に示される通り、チップ13は、溝11を通るボルト13aと二つのワッシャ13c,13dによりプレート10に半固定されている。その結果、チップ13は、溝11に沿ってプレート10上を摺動することが可能となる。なお、図2においてはボルト13aのネジ切りについて図示を省略している。断面図を示していないが、チップ14についてもチップ13と同様に溝12を通るボルト14aと二つのワッシャ(不図示)によりプレート10に半固定されている。
次に、プレート10の左半分について説明する。再び図1を参照すると、プレート10の左半分には人間の歯並びを表す曲線15が描かれている。曲線15に代えて、犬歯や小臼歯等の人間の歯全てに対応するチップがプレート10上に設置されていてもよい。前歯を表す第二のチップ21〜24は、接着剤等によりプレート10に完全に固定されている。一方、奥歯を表す第三のチップ16,18は、裏面に取り付けられた磁石によりプレート10に吸着しているのみであり、プレート10上を自由に摺動することができる。第三のチップ16の裏面に磁石16eが設けられている状態は図2に示す通りであるが、第三のチップ18についても同様に磁石が取り付けられている。
第一乃至第三のチップ13,14,16,18,21〜24には、それぞれ接着剤等によりブラケット13b,14b,16b,18b,21b,22b,23b,24bが取り付けられている。これらのブラケット13b,14b,16b,18b,21b,22b,23b,24bは、金属製のワイヤーを通して固定することが可能なものであり、好適には矯正歯科医療において実際の歯列矯正に使用されるものと同じ部材である。ブラケットの材質は、一般にはステンレス鋼等の金属、セラミック又は強化プラスチック(エポキシ樹脂に炭素繊維を添加したものなど)等である。
図3は、本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具においてチップ上のブラケットにワイヤーを通した状態を示す。ここでは、ワイヤー31がブラケット13b,14bに通されており、ワイヤー32がブラケット16b,18bに通されている。ワイヤー31,32は、好適には矯正歯科医療において実際の歯の矯正に使用されるものと同じ部材であり、ステンレス鋼、ニッケルチタン等の弾性を有する人体に無害な各種合金により作られている。
次に、本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具を使用した具体的な矯正シミュレーションの例について説明する。図4は、本考案の器具による垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図4は、図1の右半分に対応しており、説明の簡略化のためプレート10、溝11,12等については図示を省略している。図4において、第一のチップ13は矯正対象の患者の右奥歯、第二のチップ14は左奥歯にそれぞれ対応し、上下方向は矯正対象の患者の口内における方向と同一である。
センターベンドと呼ばれる点線31−4に示される形状に一点で折り曲げられたワイヤー31の両端をブラケット13b,14bにそれぞれ固定し、ワイヤー31の変曲点を位置31a−4において使用者の手で押さえると、ワイヤー31は図示されるような曲線を呈する。このとき、ワイヤー31は弾性により点線31−4の位置及び形状に戻ろうとするため、ブラケット13b,14bを介して第一のチップ13,14にはそれぞれ回転する力が掛かる。このときの回転方向は、図4において第一のチップ13,14の下部にそれぞれ記載されている通り、第一のチップ13について反時計回り、第一のチップ14について時計回りである。その結果、第一のチップ13,14はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、左右の歯の先端をいずれも内側に向けて矯正したい場合に、センターベンドと呼ばれる点線31−4の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
図5は、本考案の器具による別の垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図4と同様に、図5も図1の右半分に対応しており、第一のチップ13,14と矯正対象の患者の歯の対応も図4と同様である。
カンチレバーと呼ばれる点線31−5に示される形状に一点で折り曲げられたワイヤー31の両端をブラケット13b,14bにそれぞれ固定し、ワイヤー31の変曲点を位置31a−5において使用者の手で押さえると、ワイヤー31は図示されるような曲線を呈する。このとき、ワイヤー31は弾性により点線31−5の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット13bを介して第一のチップ13には上方向への力と反時計回りの回転力が掛かり、ブラケット14bを介して第一のチップ14には下方向への力が掛かる。その結果、第一のチップ13,14はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、矯正対象の患者の右の歯をその先端を内側に向けつつ上方向に、患者の左の歯を下方向にそれぞれ矯正したい場合に、カンチレバーと呼ばれる点線31−5の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
図6は、本考案の器具による別の垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図4及び図5と同様に、図6も図1の右半分に対応しており、第一のチップ13,14と矯正対象の患者の歯の対応も図4及び図5と同様である。
オフセンターベンドと呼ばれる点線31−6に示される形状に一点で折り曲げられたワイヤー31の両端をブラケット13b,14bにそれぞれ固定し、ワイヤー31の変曲点を位置31a−6において使用者の手で押さえると、ワイヤー31は図示されるような曲線を呈する。このとき、ワイヤー31は弾性により点線31−6の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット13bを介して第一のチップ13には上方向への力と反時計回りの回転力が掛かり、ブラケット14bを介して第一のチップ14には下方向への力と反時計回りの回転力が掛かる。このとき、第一のチップ13に掛かる力は、第一のチップ14に掛かる力より大きい。その結果、第一のチップ13,14はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動し、第一のチップ13の移動の大きさは第一のチップ14の移動の大きさより大きい。
このことから、本考案による器具の使用者は、主に矯正対象の患者の右の歯に対して、患者の右の歯をその先端を内側に向けつつ上方向に、患者の左の歯をその先端を外側に向けつつ下方向にそれぞれ矯正したい場合に、オフセンターベンドと呼ばれる点線31−6の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
図7は、本考案の器具による別の垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図4〜6と同様に、図6も図1の右半分に対応しており、第一のチップ13,14と矯正対象の患者の歯の対応も図4〜6と同様である。
ステップベンド(パラレルベンド)と呼ばれる点線31−7に示される形状に一点で折り曲げられたワイヤー31の両端をブラケット13b,14bにそれぞれ固定し、ワイヤー31の二つの変曲点を位置31a−7,31b−7において使用者の手で押さえると、ワイヤー31は図示されるような曲線を呈する。このとき、ワイヤー31は弾性により点線31−7の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット13bを介して第一のチップ13には上方向への力と反時計回りの回転力が掛かり、ブラケット14bを介して第一のチップ14には下方向への力と反時計回りの回転力が掛かる。なお、このときに第一のチップ14に掛かる力の大きさは第一のチップ13に掛かる力の大きさとほぼ等しく、図6に示される場合に第一のチップ14に掛かる力より大きい。結果として、第一のチップ13,14はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、左右の歯に対してほぼ同じ力の大きさにより、矯正対象の患者の右の歯をその先端を内側に向けつつ上方向に、患者の左の歯をその先端を外側に向けつつ下方向にそれぞれ矯正したい場合に、ステップベンド(パラレルベンド)と呼ばれる点線31−7の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
なお、図4〜7に示された矯正シミュレーションの例の説明は、東京臨床出版株式会社発行の「カラーガイド 最新バイオメカニクス」(トーマス・F・ムリガン著、久保田隆朗監訳、2009年2月10日初版第1刷発行)第106頁において図示されている各矯正例に基づいている。
次に、水平面上における矯正シミュレーションの例について説明する。人間の上下の歯並びはそれぞれほぼ水平な一つの平面上に存在していると言え、本考案による器具によって、歯並びに含まれる歯の略水平面上の位置についての矯正シミュレーションを行うことができる。説明の簡略化のため、以下の説明においては歯並びが存在する略水平面を単に「平面」と呼ぶ。
図8は、本考案の器具による平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図8は、図1の左半分に対応するプレート10の表面を表している。図8において、第二のチップ21〜24は矯正対象の患者の前歯、第三のチップ16は左奥歯、第三のチップ18は右奥歯にそれぞれ対応し、水平面における位置は矯正対象の患者の口内における平面上の位置と同一である。プレート10上に描かれた曲線15は、第二のチップ21〜24及び第三のチップ16,18によって表し切れない歯の歯並びに対応している。
図示されるように、トーインベンドと呼ばれる点線32−8に示される形状に二点で折り曲げられたワイヤー32を第二のチップ21〜24上のブラケット21b,22b,23b,24bに通し、ワイヤー32の両端をブラケット16b,18bにそれぞれ固定したと仮定する。このとき、ワイヤー32は弾性により点線32−8の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット16bを介して第三のチップ16には左方向への力と反時計回りの回転力が掛かり、ブラケット18bを介して第三のチップ18には右方向への力と時計回りの回転力が掛かる。その結果、第三のチップ16,18はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、矯正対象の患者の両奥歯の外側を前歯から離れる方向に向けつつ奥歯全体を外側に移動するように矯正したい場合に、トーインベンドと呼ばれる点線32−8の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
図9は、本考案の器具による別の平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図8と同様に、図9も図1の左半分に対応しており、曲線15、第二のチップ21〜24及び第三のチップ16,18と矯正対象の患者の歯及び歯並びの対応も図8と同様である。
図示されるように、トーアウトベンドと呼ばれる点線32−9に示される形状に二点で折り曲げられたワイヤー32を第二のチップ21〜24上のブラケット21b,22b,23b,24bに通し、ワイヤー32の両端をブラケット16b,18bにそれぞれ固定したと仮定する。このとき、ワイヤー32は弾性により点線32−9の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット16bを介して第三のチップ16には右方向への力と時計回りの回転力が掛かり、ブラケット18bを介して第三のチップ18には左方向への力と反時計回りの回転力が掛かる。その結果、第三のチップ16,18はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、矯正対象の患者の奥歯の外側を前歯に近づける方向に向けつつ奥歯全体を内側に移動するように矯正したい場合に、トーアウトベンドと呼ばれる点線32−9の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
図10は、本考案の器具による別の平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図8及び図9と同様に、図10も図1の左半分に対応しており、曲線15、第二のチップ21〜24及び第三のチップ16,18と矯正対象の患者の歯及び歯並びの対応も図8及び図9と同様である。
図示されるように、インベンドと呼ばれる点線32−10に示される形状に二点で折り曲げられたワイヤー32を第二のチップ21〜24上のブラケット21b,22b,23b,24bに通し、ワイヤー32の両端をブラケット16b,18bにそれぞれ固定したと仮定する。このとき、ワイヤー32は弾性により点線32−10の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット16bを介して第三のチップ16には右方向への力が掛かり、ブラケット18bを介して第三のチップ18には左方向への力が掛かる。その結果、第三のチップ16,18はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、矯正対象の患者の両奥歯全体を内側に移動するように矯正したい場合に、インベンドと呼ばれる点線32−10の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
図11は、本考案の器具による別の平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。図8〜10と同様に、図11も図1の左半分に対応しており、曲線15、第二のチップ21〜24及び第三のチップ16,18と矯正対象の患者の歯及び歯並びの対応も図8〜10と同様である。
図示されるように、アウトベンドと呼ばれる点線32−11に示される形状に二点で折り曲げられたワイヤー32を第二のチップ21〜24上のブラケット21b,22b,23b,24bに通し、ワイヤー32の両端をブラケット16b,18bにそれぞれ固定したと仮定する。このとき、ワイヤー32は弾性により点線32−11の位置及び形状に戻ろうとするため、図示されるように、ブラケット16bを介して第三のチップ16には左方向への力が掛かり、ブラケット18bを介して第三のチップ18には右方向への力が掛かる。その結果、第三のチップ16,18はプレート10上においてそれぞれ力が掛かった方向に摺動する。
このことから、本考案による器具の使用者は、矯正対象の患者の両奥歯全体を外側に移動するように矯正したい場合に、アウトベンドと呼ばれる点線32−11の形状にワイヤーを折り曲げれば良いと理解することができる。
なお、図8〜11に示された矯正シミュレーションの例の説明は、前述の「カラーガイド 最新バイオメカニクス」第137〜141頁において図示されている各矯正例に基づいている。
また、本考案による器具における歯を表す各チップの動きが、実際の矯正対象の患者の歯の動きとほぼ一致することは、各チップの動く方向がプレート表面上に限定されているといった制約があるものの、各チップに取り付けられた各ブラケットとこれらに固定されるワイヤーが実際の矯正歯科医療において使用されるものと同一であることから当然に推定され、歯科医師である考案者はこのことを臨床的に確認している。
本考案の器具による矯正シミュレーションは、上顎の歯並びと下顎の歯並びのいずれにも適用することが可能であり、また奥歯(大臼歯)のみならず切歯、犬歯、小臼歯等の任意の位置の歯にも適用することができる。さらに、歯を表すチップの大きさや配置を適宜変更することにより、人間以外の動物の歯の矯正シミュレーションにも応用することが可能である。これらのことは、当業者に容易に理解される。
矯正歯科の臨床現場における矯正前のシミュレーションの他、歯科大学等の矯正歯科の教育現場における学生への説明及び実習に利用することができる。また、人間の歯の矯正のみならず、家畜や愛玩動物等の動物の歯の矯正のシミュレーションに適用することも可能であり、獣医師や大学の獣医学科の学生及び教員による使用も考えられる。
本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具の概略平面図を示す。 図1上の一点鎖線AA´に沿った本考案による器具の断面図である。 本考案による歯の矯正をシミュレートするための器具においてチップ上のブラケットにワイヤーを通した状態を示す。 本考案の器具による垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による別の垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による別の垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による別の垂直方向の矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による別の平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による別の平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。 本考案の器具による別の平面上における矯正シミュレーションの例を示す説明図である。
10 プレート
11,12 溝
13,14 第一のチップ
13a,14a ボルト
13b,14b,16b,18b,21b,22b,23b,24b ブラケット
13c,13d ワッシャ
15 曲線
16,18 第三のチップ
21〜24 第二のチップ
31,32 ワイヤー
31−4,31−5,31−6,31−7,32−8,32−9,32−10,32−11 点線
31−4a,31−5a,31−6a,31−7a 位置

Claims (5)

  1. 少なくとも二つの歯を表す第一のチップと、
    前記第一のチップと同数の互いに平行な線分状の溝を有するプレート
    を備えており、
    前記第一のチップはそれぞれ前記溝に半固定されており、前記溝に沿って移動可能であってかつ前記プレート上において回転可能であり、
    前記第一のチップにはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケットが取り付けられている、歯の矯正をシミュレートするための器具。
  2. 前歯を表す複数の第二のチップと、
    奥歯を表す少なくとも二つの第三のチップと、
    歯並びを表す曲線が描かれたプレート
    を備えており、
    前記第二のチップは前記プレート上に完全に固定されており、
    前記第三のチップは前記プレート上を移動及び回転することができるように半固定されており、
    前記第二のチップ及び前記第三のチップにはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケットが取り付けられている、歯の矯正をシミュレートするための器具。
  3. 少なくとも二つの歯の垂直方向の位置を表す第一のチップと、
    平面上の前歯の位置を表す複数の第二のチップと、
    平面上の前歯の位置を表す少なくとも二つの第三のチップと、
    前記第一のチップと同数の互いに平行な線分状の溝を有し、平面上の歯並びを表す曲線が描かれたプレート
    を備えており、
    前記第一のチップはそれぞれ前記溝に半固定されており、前記溝に沿って移動可能であってかつ前記プレート上において回転可能であり、
    前記第二のチップは前記プレート上に完全に固定されており、
    前記第三のチップは前記プレート上を移動及び回転することができるように半固定されており、
    前記第一のチップ、前記第二のチップ及び前記第三のチップにはそれぞれ金属製のワイヤーを接続することが可能なブラケットが取り付けられている、歯の矯正をシミュレートするための器具。
  4. 前記第一のチップと同数のボルトとナットをさらに備えており、
    前記第一のチップがそれぞれ前記ボルトと前記ナットにより前記溝に半固定されている、請求項1又は3に記載の歯の矯正をシミュレートするための器具。
  5. 前記プレートが金属製であって前記第三のチップには磁石がさらに取り付けられていることにより、前記プレートへの前記第三のチップの半固定を実現する、請求項2乃至4のいずれかに記載の歯の矯正をシミュレートするための器具。
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