JP3196369B2 - 電気浸透式脱水機の運転方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、下水処理場などで発生
する汚泥を脱水処理する電気浸透式脱水機の運転方法に
関する。

【０００２】

【従来の技術】頭記の電気浸透式脱水機として、回転ド
ラム型電気浸透式脱水機が特開昭６０−２５５７９号公
報などで公知である。この回転ドラム型電気浸透式脱水
機は、周面に陽極電極板を備えた回転ドラムと汚泥通路
を隔てて回転ドラムの周面に対向する陰極側電極を兼ね
たプレスベルトとの間に直流電圧を印加し、前記汚泥通
路に供給した汚泥の含有水を電気浸透作用によりプレス
ベルト側に集めて脱水するようにしたものである。

【０００３】ここで、陽極側の電極としては、例えばチ
タンを基材に電極表面に白金，酸化ルテニウムなどの貴
金属を薄くコーティング（コーティング層厚１０μｍ程
度）したものが採用され、ステンレス鋼で作られた回転
ドラムの周面に固定して使用される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前記の回転
ドラム型電気浸透式脱水機は、脱水運転中に汚泥と接す
る陽極側電極材料の金属成分が電気化学的作用により溶
出し、時間の経過ととにも損耗して陽極側電極の耐用寿
命が短くなるほか、電極材料が重金属成分を含んでいる
ものでは、溶出した金属成分が汚泥に混入して環境汚染
公害の原因にもなるなどの問題がある。

【０００５】この場合に、陽極側電極の損耗発生要因と
して次記のことが挙げられる。 （１）電気浸透力による脱水効果は汚泥を通じて電極間
に流れる電流に比例することから、従来では可能な範囲
で電極間に印加する電圧を高く設定するようにしてい
る。しかして、陽極側電極は電極間の印加電圧が高くな
るほど損耗の進行が速まる傾向を示し、先記した電極で
は時間の経過とともに電極基材のチタンが活性溶解して
貴金属のコーティング層が剥離したりして損傷するよう
になる。

【０００６】（２）汚泥に含まれている酸性物質は、電
場の下ではマイナスに荷電（ζ電位が−）するので陽極
側電極の表面に引き寄せられて付着し、次第に濃縮して
電極の貴金属層を腐蝕させる。また、電極表面に有機物
や二酸化珪素などの絶縁物質が付着すると、電極の表面
電位が上昇して電極基材の活性溶解が進行する。 （３）脱水運転の停止中に電極への印加電圧をゼロにし
たままの状態で放置しておくと、回転ドラムの構造金属
材料，陽極側電極板の基材，コーティング層の貴金属材
料の組合わせによっては、異種金属の接触により形成さ
れる電池などが要因となって陽極側電極がマイナス電位
を帯びることがあり、このような状態になると陽極側電
極（元来プラス電位を印加した際に電極としての十分な
機能を発揮するように材料が選ばれている）が長時間の
間に損傷を来す。

【０００７】本発明は上記の点を基礎に、陽極側電極の
損耗進行を抑えて耐用寿命の延命化が図れるようにした
電気浸透式脱水機の運転方法を提供するを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明によ
り次記のような運転方法を実施することにより達成され
る。 （１）（参考手段）汚泥に導電活性剤を添加，混入して
電気浸透脱水を行う。 （２）陽極側の電極面を弱アルカリ水溶液により随時洗
浄する。

【０００９】（３）脱水機の停止期間中に陽極側電極に
プラスの弱電位を印加しておく。

【００１０】

【作用】前項（１）の（参考手段）において、汚泥に導
電活性剤を添加することにより、汚泥の導電性が高まる
（電気抵抗が低下する）ので、その分だけ電気浸透脱水
に必要な電流を流す電極間の印加電圧値を低めることが
でき、この結果として陽極側電極の早期損耗が抑えられ
る。

【００１１】また、前項（２）おいて、陽極側の電極面
に弱アルカリ水溶液を随時撒布するなどして洗浄するこ
とにより、電極表面に付着した酸性物質が弱アルカリ水
溶液と中和して洗い流される。これにより陽極側電極の
損耗，活性溶解の進行が抑えられる。さらに、前項
（３）により、脱水運転の停止期間中に陽極側電極に低
いプラス電位を印加しておくことにより、陽極側電極が
脱水停止の期間中でも常にプラス電位をもった状態に保
持されので、外部要因によりマイナス電位を帯びて損耗
することがなくなり、それだけ電極の耐用寿命が長くな
る。

【００１２】

【実施例】以下本発明の実施例を図１に基づいて説明す
る。図において、１は周面に陽極電極板２を装着した回
転ドラム、３は回転ドラム１との間に汚泥通路を隔てて
対向するよう張架した陰極ベルト、４は陰極ベルト３の
周面に重ね合わせて敷設した濾布ベルト、５は陽極電極
板２と陰極ベルト３との間に電圧を印加する直流電源、
６は電気浸透式脱水機の前段に配備した重力式のプレ脱
水部、７はプレ脱水部６と電気浸透式脱水機との間の汚
泥搬送通路に敷設して汚泥を圧搾する搬送ベルト、８は
汚泥供給ホッパである。なお、回転ドラム１は図示され
てないモータにより矢印方向へ回転駆動される。

【００１３】また、本発明により、前記のプレ脱水部６
には、汚泥，凝集剤に添加した導電活性剤（例えばＮａ
Ｃｌの水溶液）を混合するミキサ９が追加装備されてい
る。また、回転ドラム１に対しては、陽極電極板２の周
面上に弱アルカリ水溶液を撒布するドラム洗浄装置１０
を備えている。さらに、直流電源５には、電気浸透式脱
水機の脱水運転停止期間中に陽極電極板２が外部要因で
マイナス電位を帯びるのを防ぐための手段として、陽極
電極板２に対し脱水運転時の印加電圧（４０〜１２０
Ｖ）に比べて十分に低いプラス電位（数Ｖ）を印加させ
る制御部１１を備えている。

【００１４】かかる構成で、汚泥の脱水処理時には、汚
泥供給ホッパ８に汚泥と一緒に適量の導電活性剤を添加
し、ミキサ９で汚泥と導電活性剤を混合して汚泥の導電
性を高めておく。そしてプレ脱水部６で汚泥を重力式脱
水により濃縮した後、汚泥を電気浸透式脱水機の汚泥供
給通路に供給して電気浸透脱水を行う。この場合に陽極
と陰極との間に印加する電圧は、汚泥の導電性が高まっ
た（電気抵抗が減少する）分だけ電圧を低めて汚泥の脱
水に必要な所定の電流を流すようにする。

【００１５】また、脱水運転中には、洗浄装置１０を通
じて弱アルカリ水溶液を回転ドラム１に向け随時撒布し
て陽極電極板２の表面を洗浄し、電極板２の表面に付着
している酸性物質などを中和して洗い流す。さらに、脱
水運転の停止期間中には制御部１１の指令で直流電源５
より陽極電極板２に脱水運転時と比べて低い電圧を印加
して電極をプラス電位に保持しておく。

【００１６】

【発明の効果】以上述べたように、本発明の請求項１な
いし２の運転方法を単独，あるいは併用することによ
り、陽極側電極の損耗，活性溶解の進行を抑えて電極の
耐用寿命を延ばすことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例による電気浸透式脱水機の構成
図

【符号の説明】

１ 回転ドラム ２ 陽極電極板 ３ 陰極ベルト ４ 濾布ベルト ５ 直流電源 ９ ミキサ １０ 洗浄装置 １１ 制御部

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−99107（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−30614（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−136500（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C02F 11/12 C02F 11/14 B01D 35/06

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】汚泥通路を隔てて対向し合う陽極と陰極と
   の間に直流電圧を印加し、前記汚泥通路に供給した汚泥
   の含有水を電気浸透作用により陰極側に集めて脱水させ
   る電気浸透式脱水機において、陽極側の電極面を弱アル
   カリ水溶液により随時洗浄することを特徴とする電気浸
   透式脱水機の運転方法。
2. 【請求項２】汚泥通路を隔てて対向し合う陽極と陰極と
   の電極間に直流電圧を印加し、前記汚泥通路に供給した
   汚泥の含有水を電気浸透作用により陰極側に集めて脱水
   させる電気浸透式脱水機において、脱水機の停止期間中
   に陽極側の電極にプラスの弱電位を印加しておくことを
   特徴とする電気浸透式脱水機の運転方法。