以下に本考案に係るインクカートリッジを実施する形態について、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
本考案に係るインクカートリッジを説明する前に、図1を用いて本考案に係るインクカートリッジが適用されるインクジェット印刷装置について簡略に説明する。
図1は本考案に係るインクカートリッジが適用されるインクジェット印刷装置の概略構成を示している。
図1に示す如く、インクジェット印刷装置(以下、単に印刷装置と記す)10では、この印刷装置10内に設けたカートリッジ取付機構部20のホルダー21に支持されたジョイント部30に、本考案に係るインクカートリッジ40内に設けたソケット部50が着脱自在に接続されている。
この際、カートリッジ取付機構部20のホルダー21は、前板21aの下方に連接してカートリッジ載置台21bが一体的に形成されており、このカートリッジ載置台21b上にインクカートリッジ40が印刷装置10に向かってインクIKが流れるように約2°程度傾斜して搭載されている。
そして、後述するように、カートリッジ取付機構部20にインクカートリッジ40が連結された後に、ホルダー21の前板21aに支持されたジョイント部30が印刷装置10内に設けたカム駆動機構部11によってインクカートリッジ40内のソケット部50に対して前後方向に駆動されるようになっている。
一方、本考案に係るインクカートリッジ40は、直方形状の外箱41内にソケット部50がこの外箱41の前面41a側に向かって配設されていると共に、ソケット部50の後端に油性を有するインクIKを収納したインク収納容器60が取り付けられている。
また、外箱41にはICタグ42が取り付けられ、且つ、このICタグ42と対向してICタグ受信機12が印刷装置10内に設置されており、ICタグ受信機12によってICタグ42内に格納されたインクIKの色情報などを無線で受信できるようになっている。
この印刷装置10では、例えば、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)など多色のインクIKを各色ごとに収納した複数のインクカートリッジ40が装着されているが、ここでは一つのインクカートリッジ40に対して図示して以下説明する。
上記したインクカートリッジ40からのインクIKは、ソケット部50から印刷装置10のジョイント部30を経由してインク補給経路13を通して電磁開閉弁14の開閉操作によりインクタンク15に充填されている。
また、インクタンク15には、充填されたインクIKの量を測定する液面センサSが設けられており、この液面センサSの検出結果に応じて電磁開閉弁14の開閉が不図示の制御部を介して制御されている。
尚、インクカートリッジ40からインクタンク15へのインクIKの供給は、高所に配置されたインクカートリッジ40と、その低所に設置されたインクタンク15との圧力差により行われている。
この後、インクタンク15に充填されたインクIKは、インク供給路16を通じてインク分配器17に送られて、このインク分配器17で複数のインクジェットヘッド18に分配される。そして、複数のインクジェットヘッド18からインクIKを用紙Pに向けて吐出させることで用紙P上に画像や文字を印刷できるように構成されている。
ここで、本考案に係るインクカートリッジ40の構成について、図2及び図3を用いて説明する。
図2は本考案に係るインクカートリッジの外観形状を斜視的に示している。また、図3(a),(b)は印刷装置内のカートリッジ取付機構部に本考案に係るインクカートリッジを連結させる状態を示している。
まず、図2に示す如く、本考案に係るインクカートリッジ40は、紙材などを用いて外箱41が垂直方向の縦寸法と水平方向の横寸法との比を1:2程度に設定して箱状に形成されている。
また、外箱41の前面41a側には、連結部材43が樹脂材又は金属材などの剛性を有する板材を用いて外箱41に一体的に取り付けられている。
上記した連結部材43は、インクカートリッジ40を印刷装置10(図1)と連結させる機能と、インクカートリッジ40内でソケット部50を連結する機能とを備えている。
そして、連結部材43の外側中央上下部位には、印刷装置10(図1)のカートリッジ取付機構部20に連結されるロック用凹部43a,43bが形成されている。
更に、連結部材43の外側上部でロック用凹部43aの両側には、一対の凸部43c,43cが突出形成されており、これら一対の凸部43c,43cはホルダー21の前板21aの上方部位に取り付けられたカートリッジ取付センサ24{図3(a)}に検知されるようになっている。
また、連結部材43は、中央部位に丸孔43dが貫通して形成され、この丸孔43d内にソケット部50を臨ませており、且つ、後述するソケット部50のソケット本体51に形成したインク供給口兼用インク保持孔51eを印刷装置10(図1)側に向けて露出させている。
上記したインク供給口兼用インク保持孔51eは、本考案の要部となるものであり、このインク供給口兼用インク保持孔51eについては後で詳述する。
そして、本考案に係るインクカートリッジ40は、ソケット部50が印刷装置10(図1)内のジョイント部30(図1)と対向して配設されていると共に、ソケット部50のソケット本体51の後方部位にフィルム材を用いて袋状に形成したインク収納容器60{図3(b)}が熱溶着により取り付けられている。従って、ソケット部50はインク収納容器60の一端となる前端に設けられている。
次に、図3(a),(b)に示す如く、本考案に係るインクカートリッジ40を印刷装置10(図1)内のカートリッジ取付機構部20に接続するときに、カートリッジ取付機構部20は、樹脂材を用いて基台となるホルダー21が、略垂直な前板21aと、前板21aの下方に連接して横設したカートリッジ載置台21bと、前板21aの左右に連接して垂設した左右一対の側板(21c…図示せず),21dとで剛性を有する枠体に一体的に形成されている。
上記したホルダー21の前板21aの中心部位には、ガイド溝付き貫通孔21e1を有する円環部21eがインクカートリッジ40側とは反対側となる後方側に向かって突出形成されている。
そして、ホルダー21の円環部21eのガイド溝付き貫通孔21e1内には、ジョイント部30のジョイント本体31に形成した第1,第2外周側円筒部31a,31bが前後方向にスライド可能に嵌合して支持されている。
この際、ホルダー21の円環部21eの後端には、ジョイント部30が円環部21eのガイド溝付き貫通孔21e1内から抜け出るのを規制するストッパ21fが一体的に設けられている。このストッパ21fには、後述するジョイント本体31に形成した外周側凸部31cが接離するようになっている。
また、ホルダー21のカートリッジ載置台21bは、底面21b1が水平に形成されており、この底面21b1の上方に傾斜面21b2が前板21a側に向かって高さが低くなるように約2°程度傾斜して形成されている。
そして、カートリッジ載置台21bの傾斜面21b2上にインクカートリッジ40を搭載したときに、インクカートリッジ40内のインクIKがジョイント部30側に向かって流れるようになっている。
更に、ホルダー21の上下には、板バネ材の一端にローラ22a,23aをそれぞれ取り付けて弾性変位するロック部材22,23が設けられている。そして、これらのロック部材22,23と対向して、インクカートリッジ40の外箱41の前面41a側に設けた連結部材43の上下にロック用凹部43a,43bが形成されている。
そして、インクカートリッジ40を手動によりカートリッジ取付機構部20のホルダー21側に押し込んで接続している。このときに、ホルダー21の上下に設けたロック部材22,23のローラ22a,23aが、インクカートリッジ40に設けた連結部材43のロック用凹部43a,43b内に嵌め込まれるので、ホルダー21にインクカートリッジ40が連結されて、このホルダー21の上方部位に取り付けたカートリッジ取付センサ24と連結部材43の凸部43c(図2)とでインクカートリッジ40の連結状態を検知している。
一方、インクカートリッジ40を手動によりホルダー21側から引き抜くと、ホルダー21側への連結が解除されるようになっている。
また、後述の動作で説明するように、インクカートリッジ40をカートリッジ取付機構部20のホルダー21側に押し込んでインクカートリッジ40がホルダー21側に連結されたときに、ジョイント部30とソケット部50は僅かな間隔を隔てて対向している。そして、連結後に印刷装置10(図1)内に設けたカム駆動機構部11によってジョイント部30がインクカートリッジ40内のソケット部50に対して前後方向に移動可能になっている。
これにより、インクカートリッジ40がホルダー21に先に連結されている場合においてのみ、ジョイント部30とソケット部50とが嵌合される。
この理由は、先に図1を用いて説明したように、インクカートリッジ40の外箱41に取り付けたICタグ42から出力されるインクIKの色情報をICタグ受信機12で受信してインクカートリッジ40のインクIKの色が正しいことを確認した後に、ジョイント部30をソケット部50に嵌合させる必要があるためである。
この際、プラグ状に構成したジョイント部30を雄型プラグ部と呼称し、一方、ソケット状に構成したソケット部50を雌型ソケット部と呼称した場合に、雄型プラグ部(30)と雌型ソケット部(50)とが雄雌嵌合されることになる。
更に、実施形態の要部を構成する印刷装置10内のジョイント部30と、インクカートリッジ40内のソケット部50とについて、図4(a)〜(c)を用いて説明する。
図4(a)〜(c)は印刷装置内のジョイント部と、このジョイント部に嵌合される本考案に係るインクカートリッジ内のソケット部とを拡大して示している。
(ジョイント部30)
図4(a),(b)に示す如く、印刷装置10内に設けたジョイント部30は、ジョイント本体31の先端外周に取り付けたキャップ36側が後述するインクカートリッジ40内に設けたソケット部50への嵌合側として構成されている。
そして、ジョイント部30の基体となるジョイント本体31は、樹脂材を用いて一体的に形成されている。
上記したジョイント本体31は、インクカートリッジ40内のソケット部50と対向する先端部位に第1外周側円筒部31aがキャップ36を取り付けできる径及び長さに形成されている。また、第1外周側円筒部31aの後方に連接して第2外周側円筒部31bが第1外周側円筒部31aよりも大径で且つキャップ36の外径と略同径で長尺に形成されている。
また、ジョイント本体31は、長尺な第2外周側円筒部31bの中間部位に外周側凸部31cが短尺に突出形成されていると共に、第2外周側円筒部31bの後端にフランジ部31dが図3(a)に示すように上下左右に対して長方形状に形成されている。
この際、ジョイント本体31の第1,第2外周側円筒部31a,31bは、先の図3(b)で示したように、カム駆動機構部11の駆動力によりホルダー21の円環部21eのガイド溝付き貫通孔21e1内を前後方向に移動するときに、第2外周側円筒部31bの中間部位に形成した外周側凸部31cによって回り止めとストッパとが図られている。
図4(a),(b)に戻り、ジョイント本体31の先端側の内周部位には、先端側円形凹部31eが円形凹状に凹ませて形成されており、且つ、この先端側円形凹部31e内の中心部位に挿入軸31fが軸線方向に伸びる形状でキャップ36よりも前方に向かって突出形成されている。
上記したジョイント本体31の先端側に突出形成した挿入軸31fは、後述するソケット本体51の先端側に形成したインク供給口兼用インク保持孔51eと対向しており、このインク供給口兼用インク保持孔51eの孔径φDよりも細径な軸径φdに形成されている。
また、ジョイント本体31の挿入軸31fの先端には、先端尖鋭部31f1が円錐状に形成されており、この先端尖鋭部31f1はソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eから進入した後に後述するソケット本体51内に収納された中栓53の円筒部53aの先端に形成した円錐孔53a1に対して接離自在で押圧し易い形状になっている。
また、ジョイント本体31の挿入軸31fの後方下方には、ソケット本体51から供給されたインクIKを流入させるインク流入経路31gがフランジ部31dまで連通して形成されている。
上記から、ジョイント本体31の先端側円形凹部31eの内周面と、細径の挿入軸31fの外周面との間には、円環状(リング状)の空間が形成されている。
更に、ジョイント本体31の先端側円形凹部31e内で環状(リング状)の空間内には、この後方側から先端側に向かって圧縮バネ32と、挿入軸31fに沿って往復移動可能に設けられたインク流出防止部材33と、Oリング押さえ部材34と、Oリング35とが挿入軸31fを通り抜けて収納されている。
これらの各部材32〜35は、インクカートリッジ40から供給されるインクIKをジョイント本体31のインク流入経路31gに向けて流入させることができるように形成されている。
具体的には、挿入軸31fに沿って移動可能なインク流出防止部材33は、ジョイント本体31の先端側円形凹部31eの内径と略同径に円板部33aが形成され、且つ、この円板部33aの外周部位に複数のインク流入孔33bが貫通して形成されていると共に、円板部33aの前側に3箇所の突起33cが円周方向に120°間隔でソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e側に向かって突出形成されている。
また、ジョイント部30とソケット部50とが嵌合した際に、上記したインク流出防止部材33は、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eを形成する外面と対向しており、且つ、3箇所の突起33cがインク供給口兼用インク保持孔51eを形成する外面と接触する一方、3箇所の突起33c以外の部分は接触しないようになっている。
そして、ジョイント部30とソケット部50の嵌合時に、3箇所の突起33c以外の部分と、インク供給口兼用インク保持孔51eを形成する外面との間に形成された隙間にインク供給口兼用インク保持孔51eからのインクIKが流入し、このインクIKがインク流出防止部材33の円板部33aに形成した複数のインク流入孔33bを通り抜けて、最終的にインク流入経路31gへと流れることになる。
従って、インク流出防止部材33は、複数のインク流入孔33bを通ってこのインク流出防止部材33の後側に浸入したインクIがソケット本体51側に流出するのを防止する機能を備えていることになる。
更に、ジョイント本体31の第1外周側円筒部31aに、大径丸孔36aを中心部に形成したキャップ36を取り付けることで、先端側円形凹部31e内に収納した各部材32〜35がキャップ36によって閉じられているが、後述するように先端側円形凹部31e内及びキャップ36の大径丸孔36a内には、ソケット部50のソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e側が進退可能になっている。
(ソケット部50)
図4(c)に示す如く、インクカートリッジ40内に設けたソケット部50は、ソケット本体51の先端側に形成した内周側円筒部51f及び先端側円環状凹部51af側が印刷装置10内に設けたジョイント部30への被嵌合側として構成されている。
そして、ソケット部50の基体となるソケット本体51も、ジョイント本体31と同様に、樹脂材を用いて一体的に形成されている。
上記したソケット本体51は、ジョイント部30のジョイント本体31と対向する先端部位に外周側大径円筒部51aがジョイント本体31の第1,第2外周側円筒部31a,31bよりも大径でこの第1,第2外周側円筒部31a,31bの先端部位を収納できる長さに形成されている。
また、ソケット本体51は、外周側大径円筒部51aの後方に連接して外周側円形凸部51bが外周側大径円筒部51aよりも大径で短尺に形成され、且つ、外周側円形凸部51bの後方に連接して外周側テーパ状円筒部51cが後端側に向かって徐々に外径が細くなるように短尺に形成されている。
更に、ソケット本体51は、外周側テーパ状円筒部51cの後方に連接して外周側小径円筒部51dがインク収納容器60の前面60aの近傍まで形成されている。
また、ソケット本体51の内周側円筒部51fには、先端から奥方に向かってジョイント部30の挿入軸31fが挿脱されるインク供給口(51e)を兼用してインク保持孔(51e)が所定の深さFを有する長孔として設けられており、このインク供給口(51e)及びインク保持孔(51e)をインク供給口兼用インク保持孔51eと呼称して以下説明する。
また、ソケット本体51は、インインク供給口兼用インク保持孔51eを形成した内周側円筒部51fがキャップ36の大径丸孔36a内及びジョイント本体31の先端側円形凹部31e内に進退できるように形成されている。
上記したインク供給口兼用インク保持孔51eは、この実施形態の要部となるものであり、ソケット本体51の内周側円筒部51fの先端部位から奥方に向かって所定の深さFとして例えば10mm程度に設定されて、貫通した長孔に形成されている。尚、インク供給口兼用インク保持孔51の所定の深さFは、上記した10mmの数値に限定されるものではない。
また、インク供給口兼用インク保持孔51eの孔径φDは、例えばφ3mm程度に形成されており、このインク供給口兼用インク保持孔51e内に軸径φdを例えばφ2〜2.5mm程度に細く形成されたジョイント本体31の挿入軸31fが挿脱自在になっている。
そして、後述の動作で説明するように、ジョイント本体31の挿入軸31fをカム駆動機構部11を介してソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内に挿入したときに、インク供給口兼用インク保持孔51eの孔径φDと挿入軸31fの軸径φdとの差による隙間からインクIKがジョイント本体31内に供給されるようになっている。
一方、ジョイント本体31の挿入軸31fをカム駆動機構部11を介して3ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内から引き抜いた際に、インク供給口兼用インク保持孔51eの近傍に存在するインクIKをインク供給口兼用インク保持孔51e内に吸い込んで保持することで、インク垂れを抑制できるようになっている。
また、ソケット本体51の外周側大径円筒部51aの内周面と内周側円筒部51fの外周面との間には円環状(リング状)の空間を有する先端側円環状凹部51afが先端側に凹状に形成されている。
更に、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eの後方からソケット本体51の後端に向かってインク供給口兼用インク保持孔51e内にインクIKを導入するテーパ状インク導入用凹部51gと、後述するOリング54を当接させてインクIKを封止するテーパ状凹部51hと、インクIKを収納する円形凹部51iとがこの順で内径が大きくなるように階段状に形成されている。
また、ソケット本体51のテーパ状インク導入用凹部51g,テーパ状凹部51h,円形凹部51i内に収納される中栓53は、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eと対向して先端にテーパを形成した円筒部53aと、この円筒部53aの後方に連接して円筒部53aよりも大径な円形凸部53bと、この円形凸部53bの後方に連接して小径で長尺な細径軸部53cとが一体形成されている。
また、中栓53の円筒部53aの先端面中心部位に、円錐孔53a1が有底孔として形成されており、この円錐孔53a1にソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eから挿入された挿入軸31fの先端尖鋭部31f1が接離自在に当接している。そして、挿入軸31fの先端尖鋭部31f1で中栓53を後方に向かって押圧するようになっている。
また、中栓53の円筒部53a側からOリング54を嵌め込んでこのOリング54を円形凸部53bに当接させている。
更に、中栓53の細径軸部53cに圧縮バネ55を挿入した後に、この細径軸部53cを軸受け部材56の軸孔56aに嵌合させて、この軸受け部材56をソケット本体51の円形凹部51i内とインク収納容器60の前面60aとの間で固定支持している。
そして、インクカートリッジ40の未使用時に、中栓53が圧縮バネ55の付勢力によりソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e側に移動している。このときに、中栓53の円筒部53aに嵌め込んだOリング54が中栓53の円形凸部53bとソケット本体51のテーパ状凹部51hとに当接しているので、円形凹部51i内に形成されているインク流出経路51jが閉じられるために、インク収納容器60内のインクIKがインク供給口兼用インク保持孔51eに流れ出るのを防止されている。
また、ソケット本体51の後端外周部位は、インク収納容器60の前面60aに取り付けた容器支持筒体61がOリング62を介して嵌め込まれているので、ソケット本体51とインク収納容器60との間でもインク漏れを防止している。
次に、上記のように構成した本考案に係るインクカートリッジ40の動作について、図1〜図6を併用して動作順に説明する。
図5(a)〜(c)は印刷装置内のジョイント部をインクカートリッジのソケット部に嵌合させる動作を順に示している。また、図6(a)〜(d)はインクカートリッジのソケット部から印刷装置内のジョイント部を引き抜く動作を順に示している。
(ジョイント部30にソケット部50を嵌合させる動作)
まず、図5(a)は、インクカートリッジ40がカートリッジ取付機構部20に固定配置されたホルダー21に連結された直後で、このホルダー21に前後移動可能に支持されたジョイント部30がソケット部50に嵌合する前の状態を示している。
この際、ジョイント部30がソケット部50に嵌合する状態とは、ジョイント部30のキャップ36側がソケット部50のソケット本体51の先端側円環状凹部51af内に進入し、且つ、ジョイント本体31内に設けたOリング35がソケット本体51の内周先端側に形成した内周側円筒部51fに摺接した状態であるので、図5(a)の場合はOリング35が内周側円筒部51fから離間しているので嵌合前の状態である。
そして、インクカートリッジ40がホルダー21に連結されたときに、印刷装置10内に設けたICタグ受信機12でインクカートリッジ40の外箱41に取り付けたICタグ42からのインクIKの色情報を受信して、不図示の制御部でインクIKの色情報が対応する色のインクカートリッジ40を取り付けるホルダー21と一致しているか否かを判断しているので、インク色の色違いを先に検出できる。
また、印刷装置10のジョイント部30と、インクカートリッジ40のソケット部50とが僅かな間隔を隔てて対向しており、且つ、ジョイント部30をソケット部50側に移動させるカム駆動機構部11は停止して待機状態に至っている。
即ち、ジョイント部30側では、ジョイント本体31の先端側円形凹部31e内の中心部位に形成した挿入軸31fの先端尖鋭部31f1が、ソケット部50のソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eを臨んでいる。
一方、ソケット部50側では、ソケット本体51のテーパ状インク導入用凹部51g,テーパ状凹部51h,円形凹部51i内において、Oリング54を嵌め込んだ中栓53が圧縮バネ55の付勢力により前方のインク供給口兼用インク保持孔51e側に移動してインク供給口兼用インク保持孔51eを塞いでいる。
そして、中栓53の円筒部53aの先端に形成した円錐孔53a1は挿入軸31fの先端尖鋭部31f1から離間して挿入軸31fによる押圧を待機している。
次に、図5(b)は、ジョイント本体31の挿入軸31fでソケット本体51内の中栓53を後方に押し込む直前の状態を示している。
ここでは、カム駆動機構部11を始動してジョイント部30をソケット部50に向かって前方に移動させる。そして、ジョイント本体31の第1外周側円筒部31aに取り付けたキャップ36側が、ソケット本体51の先端側に形成した先端側円環状凹部51af内に進入する。
これに伴って、ソケット本体51の内周側円筒部51f側がジョイント本体31内のキャップ36,Oリング35及びOリング押さえ部材34に順に入り込むので、ジョイント本体31内の圧縮バネ32の付勢力によりインク流出防止部材33に形成した3箇所の突起33c(図4)がソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eを形成する外面と接触する。
これと同時に、ジョイント本体31の挿入軸31fがソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内に挿入されて、この挿入軸31fの先端尖鋭部31f1がソケット本体51のテーパ状インク導入用凹部51g内の前方に移動している中栓53の円筒部53aの先端に形成した円錐孔53a1に当接するが、中栓53はまだ後方に移動していないので、中栓53によってソケット本体51内のインクIKはシールドされている。
次に、図5(c)は、ジョイント本体31の挿入軸31fでソケット本体51内の中栓53を後方に押し込んだ状態を示している。
ここでは、カム駆動機構部11を図5(b)の状態から継続して動作させ、ジョイント部30をソケット部50側に向かって更に移動させると、ジョイント本体31の第1外周側円筒部31aに取り付けたキャップ36側が、ソケット本体51の先端側に形成した先端側円環状凹部51af内の奥方まで進入する。
これに伴って、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eを形成する外面でジョイント本体31内のインク流出防止部材33に形成した3箇所の突起33c(図4)を後方に押すので、ジョイント本体31内の圧縮バネ32が縮む。
そして、ジョイント本体31の挿入軸31fの先端尖鋭部31f1がソケット本体51内に収納された中栓53の円筒部53aの先端に形成した円錐孔53a1を圧縮バネ55に抗してインク供給口兼用インク保持孔51eとは反対側に押し込むので、ソケット本体51のテーパ状インク導入用凹部51g,テーパ状凹部51h,円形凹部51i内にインク流出経路51jが形成される。
更に、ソケット本体51の内周側円筒部51fは、ジョイント本体31内に収納されたOリング35の内周面に当接するので、ジョイント本体31内でのインク漏れを防止できる。
これにより、ソケット本体51内のインクIKは、ソケット本体51内に形成されたインク流出経路51jを通ってインク供給口兼用インク保持孔51eからジョイント本体31内に入り込み、このジョイント本体31内に形成したインク流入経路31gを通って印刷装置10側に供給される。
(ソケット部50からジョイント部30を引き抜く動作)
インクカートリッジ40内のソケット部50から印刷装置10内のジョイント部30を引き抜く場合には、先に説明した図5(a)〜(c)の動作とは逆に図5(c)〜(a)の順に動作を行えば良いものであるので、ここでは図6(a)〜(d)を用いて説明する。
まず、図6(a)に示した状態は、先に説明した図5(c)に示した状態と同じであり、ジョイント部30のキャップ36側がソケット本体51の先端側円環状凹部51af内の奥方まで進入して、ジョイント部30がソケット部50に嵌合している。
このとき、ジョイント本体31の挿入軸31fの先端尖鋭部31f1は、ソケット本体51内で後方に移動した中栓53の円筒部53aの先端に形成した円錐孔53a1に当接している。また、中栓53の後方移動により、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eが開けられているので、ソケット本体51内のインクIKがインク供給口兼用インク保持孔51eからジョイント本体31内に供給されている。
次に、図6(b)に示した状態は、ジョイント本体31の挿入軸31fをソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eから引き抜く方向(矢印方向)にカム駆動機構部11を動作させて、挿入軸31fによる中栓53への押圧を解除しているが、ジョイント部30はソケット部50に嵌合したままソケット本体51の先端側円環状凹部51af内の前方に後退している。
そして、ジョイント本体31の挿入軸31fの引き抜きに追従して、Oリング54を嵌め込んだ中栓53は圧縮バネ55の付勢力によりソケット本体51内の前方に移動してインク供給口兼用インク保持孔51eを塞ぐのでインク流出経路51jは封止される。
このとき、ジョイント本体31の挿入軸31fの先端尖鋭部31f1は、圧縮バネ55の付勢力により中栓53の先端に形成した円錐孔53a1に当接したままである。
次に、図6(c)に示した状態は、カム駆動機構部11を図6(b)の状態から継続して動作させると、ジョイント本体31の挿入軸31fがソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eから更に引き抜く方向(矢印方向)に移動して、ジョイント部30とソケット部50との嵌合を解除した状態になる。
ここでは、中栓53がソケット本体51内の前方に既に移動済みであるので停止している。
一方、ジョイント部30の矢印方向への移動により、ジョイント部30のキャップ36側がソケット本体51の先端側円環状凹部51af内から抜け出すと共に、ジョイント本体31内に設けたOリング35がソケット本体51の内周先端側に形成した内周側円筒部51fから離間するので、ジョイント部30とソケット部50との嵌合が解除される。
このとき、ジョイント本体31の挿入軸31fの先端尖鋭部31f1は、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eの前方まで後退するが、インク供給口兼用インク保持孔51e内から完全に抜け出ていない。
次に、図6(d)に示した状態は、カム駆動機構部11を図6(c)に示した状態から更に継続して動作させることで、ジョイント本体31の挿入軸31fがソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内から完全に抜け出る。
ここで、図6(c)で説明したようにソケット本体51内のインク流出経路51jが封止され、且つ、ジョイント本体31の挿入軸31fがソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内に挿入されている状態からこの挿入軸31fを引き抜くと、インク供給口兼用インク保持孔51eに対して負圧が発生し、及び/又は、インク供給口兼用インク保持孔51eとインクIKとの間で表面張力が生じるので、ジョイント部30とソケット部50との嵌合を解除した際に生じるインクIKの飛び散りを打ち消す力を発生させることができる。
この際、前述したように、ジョイント本体31の挿入軸31fの軸径φd(図4)は、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eの孔径φD(図4)よりも小さく設定されているが、挿入軸31fとインク供給口兼用インク保持孔51eとの間の隙間が小さければ負圧による影響が大きくなり、一方、両者31f,51e間の隙間が大きければ表面張力による影響が大きくなる。
これにより、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eの近傍のインクIKがインク供給口兼用インク保持孔51e内に吸い込まれて保持されるので、ジョイント部30とソケット部50との間で脱着を繰り返してもソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51eからインクIKが垂れることを抑止できる。
また、インクカートリッジ40を印刷装置10から取り外しても、ソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内に保持されたインクIKは表面張力によりインク供給口兼用インク保持孔51eから垂れることを抑止できるので、安心してインクカートリッジ40の持ち運ぶことが可能になる。
上記から、図6(a)〜(d)で説明したように、ソケット部50をジョイント部30から引き抜く際、挿入軸31fによる中栓53への押圧を解除してインク流出経路51jを封止した後に、ジョイント部30とソケット部50との嵌合状態が解除され、その後、挿入軸31fがソケット本体51のインク供給口兼用インク保持孔51e内から引き抜かれることになる。
従って、本実施形態において、ソケット部50には、ジョイント本体31の挿入軸31fが挿脱されるインク供給口(51e)を兼用してインク保持孔(51e)が所定の深さFを有して設けられ、インク供給口兼用インク保持孔51e内に挿入された挿入軸31fが引き抜かれることで、インク供給口兼用インク保持孔51eの近傍に存在するインクIKをインク供給口兼用インク保持孔51e内に保持しているので、インク供給口兼用インク保持孔51eからのインク垂れに対して改善を図ることができる。
以上詳述した本考案に係るインクカートリッジ40において、ソケット部50を印刷装置10内のジョイント部30に嵌合したり、引き抜くときに、ジョイント部30をカム駆動機構部11でソケット部50に対して前後方向に移動させた例について説明したが、これに限ることなく、ジョイント部30を印刷装置10内に固定設置し、この固定設置したジョイント部30に対してインクカートリッジ40のソケット部50を手動にて挿脱させるように構成しても良い。この場合でも、本実施形態を採用すれば、手動操作によりソケット部50をジョイント部30から引き抜く際、挿入軸31fによる中栓53への押圧を解除してインク供給口兼用インク保持孔51eへのインク流出経路51jを封止した後に、ジョイント部30とソケット部50との嵌合状態が解除され、その後、挿入軸31fをインク供給口兼用インク保持孔51e内から引き抜くことができる。