JP3183645B2 - パラレル配向液晶表示素子 - Google Patents

パラレル配向液晶表示素子

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JP3183645B2
JP3183645B2 JP9773299A JP9773299A JP3183645B2 JP 3183645 B2 JP3183645 B2 JP 3183645B2 JP 9773299 A JP9773299 A JP 9773299A JP 9773299 A JP9773299 A JP 9773299A JP 3183645 B2 JP3183645 B2 JP 3183645B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,高速応答で広視野
の表示性能を持つ液晶表示素子に関し、詳しくは、光学
補償ベンド(OCB)モードの液晶表示素子に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示素子は薄型で軽量、かつ低消費
電力のディスプレイ素子であり、テレビやビデオなどの
画像表示装置や、モニター、ワープロ、パーソナルコン
ピュータなどのOA機器に広く用いられている。
【0003】従来、液晶表示素子として例えば、ネマテ
ィック液晶を用いたツイステッドネマティック(TN)
モ−ドの液晶表示素子が実用化されているが、応答が遅
い、視野角が狭いなどの欠点を有している。
【0004】また、応答が速く、視野角が広い強誘電性
液晶(FLC)、あるいは反強誘電性液晶(AFLC)
などの表示モ−ドもあるが耐ショック性、温度特性など
大きな欠点があり、広く実用化されるまでには至ってい
ない。また、光散乱を利用する高分子分散型液晶表示モ
−ドは偏光板を必要とせず、高輝度表示が可能である
が、本質的に位相板による視角制御が出来ないうえ、応
答特性課題を有しており、TNモードに対する優位性は
少ない。
【0005】一方、最近応答が速く視野角が広い表示モ
ードとして光学補償ベンド(OCB)モ−ドが提案され
ている(特開平7−84254号公報)。このモ−ドの
液晶表示素子は、図9に示すように、透明電極2が形成
されているガラス基板1と、透明電極7が形成されてい
るガラス基板8と、基板1,8間に配置される液晶層4
とを有する。電極2,7上には、配向膜3,6が形成さ
れ、この配向膜3,6には、液晶分子を平行且つ同一方
向に配向させるべく、配向処理がなされている。また、
基板1,8の外側には、偏向板10,12がクロスニコ
ルに配設されており、この偏向板10,12と基板1,
8間には、透過光に負の位相差を与える位相補償板1
1,12が介在している。このような構造の液晶セル
は、電圧印加により、セル中央部にベンド配向あるいは
ねじれ配向を含んだベンド配向を誘起させることと、低
電圧駆動と視野角拡大のために位相補償板11,12を
配設することを特徴としたものであり、性能的には中間
調表示域においても高速応答が可能であると同時に広い
視野角特性を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記OCBモードで
は、図9に示すように、スプレイ配向状態5aから、3
0V程度の電圧印加によりベンド配向状態5bにする初
期化処理を行い、その後、数V程度の電圧駆動により、
液晶表示を行っている。従って、OCBモードでは、初
期化処理が必要不可欠である。しかしながら、現状のO
CBモードの液晶表示素子では、数V程度の電圧印加に
より、初期化を行う場合に分単位の時間が必要であり、
OCBモードの課題の一つになっている。そのため、数
V程度の電圧印加により容易にベンド配向が形成され
る、転移速度の速い液晶材料が望まれている。
【0007】そこで、かかる要望を満たすべく、転移速
度の速い液晶材料を含むベンド配向モードの液晶表示素
子が、特開平8−87013号公報に開示されている。
この従来例は、液晶材料の曲げ弾性定数K33と広がり
弾性定数K11との比K33/K11が、0.1以上
で、且つ0.9以下(K11/K33で示すと、10≧
K11/K33≧10/9となる。)の液晶材料を用い
たものである。これは、K33を小さくして、ベンド配
向の転移をし易くし、転移速度の向上を図ったものと考
えられる。
【0008】しかしながら、実際に本発明者が実験した
ところによると、K11/K33を上記のように大きい
値とすると、却って転移速度が遅くなることがわかっ
た。これは、液晶材料としては、K11とK33とが個
別に定まるのではなく、K11が選定されれば、材料系
としてはK33が連動して定まる。よって、K33とK
11を個別に考えて、K33を小さくし、且つK11を
大きくするような液晶材料の選定は適切でないという理
由によるものと考えられる。
【0009】一方、スプレイ配向からベンド配向に転移
する際に、スプレイ配向から徐々にベンド配向に転移す
るのではなく、電圧無印加時のスプレイ配向から電圧印
加により、スプレイの程度が大きくなって、最大のスプ
レイ配向状態となり、この最大のスプレイ配向状態から
ベンド配向に転移していく。従って、スプレイ配向から
ベンド配向への転移に関して、先ず、上記の最大のスプ
レイ配向状態を達成させることが前提として必要とな
る。よって、本発明者は、K11に着目して、K11を
小さくし、最大のスプレイ配向状態が、短時間に容易に
起こることが必要であるとの考えに至った。即ち、液晶
材料の選定に際し、K11を優先的に選定すればよいと
の考えに至り、K11の適切な範囲、或いはK11と他
の変数の組み合わせ(例えば、K33との比K11/K
33、誘電率異方性Δεとの比K11/Δε等)の適切
な範囲等について、研究開発した結果、本発明に至った
ものである。
【0010】本発明は、スプレイ配向からベンド配向へ
の転移を、低電圧でしかも高速に達成することができる
ようにしたパラレル配向液晶表示素子を提供することを
目的とする。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明のうち請求項1記載の発明は、一対の基板間
に挟持された液晶材料に電圧を印加し、スプレイ配向か
らベンド配向に転移させた後、このベンド配向状態で液
晶表示駆動を行うパラレル配向液晶表示素子において、
前記液晶材料の広がり弾性定数K11と曲げ弾性定数K
33との比K11/K33が、0.539以下であること
を特徴とする。
【0015】上記構成の如く、液晶材料の広がり弾性定
数K11と曲げ弾性定数K33との比K11/K33
を、0.539以下とするのは、以下の理由による。即
ち、従来の技術の項で述べたように、液晶材料系として
は、K11とK33とは、独立して設計することはでき
ず、K11とK33とは連動している。よって、K11
/K33を0.539よりも大きい値とすると、K11
も大きくなっしまう。その結果、最大スプレイ配向状態
への変形が充分なされないため、却って、スプレイ配向
からベンド配向への転移速度が遅くなってしまうからで
ある。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】本発明のうち請求項2記載の発明は、一対
の基板間に挟持された液晶材料に電圧を印加し、スプレ
イ配向からベンド配向に転移させた後、このベンド配向
状態で液晶表示駆動を行うパラレル配向液晶表示素子に
おいて、前記液晶材料は、印加電圧を上昇および下降さ
せながら前記容量を測定したときに観測される容量−電
圧ヒステリシスの大きさSを以下の第1式で定義したと
きに、Sが1.0×104V/m以下となる、そのような液晶材料
であることを特徴とする。
【数2】
【0025】尚、aはヒステリシスの認められる下限電
圧値[V]を、bはヒステリシスの認められる上限電圧
値[V]を表し、CBSはベンドからスプレイへの変化時
のセル容量[pF]を、CSBはスプレイからベンドへの
変化時のセル容量[pF]を表している。また、Cma
xはセルの最大容量[pF]を、Cminはセルの最小
容量[pF]を表し、Lは液晶層厚[m]を表してい
る。
【0026】上記構成の如く、容量−電圧ヒステリシス
の大きさSが1.0×104 V/m以下とするのは、以
下の理由による。即ち、容量−電圧ヒステリシスの大き
さSは、スプレイ配向のエネルギーとベンド配向のエネ
ルギーとの差に対応しており、スプレイ配向からベンド
配向への転移の容易性に対応している。よって、ヒステ
リシスの大きさSが小さいと、転移が容易に起こるから
である。
【0027】本発明のうち請求項3記載の発明は、請求
項1または2のいずれかに記載のパラレル配向液晶表示
素子において、前記液晶材料の少なくとも一方の基板表
面におけるプレチルト角が2度以上であることを特徴と
する。
【0028】上記構成の如く、プレチルト角が2度以上
とするのは、プレチルト角が2度未満であれば、液晶分
子が立ち上がるのに時間を要することになり、転移速度
が遅くなるからである。
【0029】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態につい
て図面にもとづいて説明する。本発明はスプレイ−ベン
ド(スプレイ配向からベンド配向への転移を意味す
る。)転移時間の短い液晶表示素子を提案するものであ
り、下記の実施の形態においては位相補償板を用いなか
ったが、これは実験の便宜を図るためであり、これによ
り、本発明を限定するものではない。
【0030】(実施の形態1)実施の形態1に係る液晶
表示素子は、K11に着目して、このK11が10pN
以下である液晶材料を含むことを特徴とするものであ
る。以下に、K11≦10とする理由を、本発明者の実
験結果に基づき詳細に説明する。尚、実施の形態1に係
る液晶表示素子は、図9の構成を有するOCBモードの
液晶表示素子であり、後述する実施の形態2〜7に係る
液晶表示素子も同様の構成を有するOCBモードの液晶
表示素子である。
【0031】図1は実施の形態1に係る液晶表示素子の
検討に用いたテスト用液晶セルの構成図である。この液
晶セルは、電圧無印加時にはスプレイ配向を示すホモジ
ニアスセルであり、電圧印加によりベンド配向に配向転
移がなされるベンド配向モードの液晶セルである。上記
液晶セルを、以下の方法で作製した。
【0032】先ず、透明電極2、7を有する2枚のガラ
ス基板1、8上に日産化学工業製配向膜塗料SE−74
92をスピンコート法にて塗布し、恒温槽中180℃、
1時間硬化させ配向膜3、6を形成する。その後、レー
ヨン製ラビング布を用いて、配向膜3、6の表面に、図
2に示す方向にラビング処理を施す。尚、図2におい
て、15は基板1側のラビング方向、16は基板8側の
ラビング方向を示す。
【0033】次いで、、積水ファインケミカル(株)製
スペーサ5、およびストラクトボンド352A(三井東
圧化学(株)製シール樹脂の商品名)を用いて基板間隔
が5.3μmとなるように貼り合わせ、空セル9を5ケ
作成した。
【0034】次に、液晶層4を構成すべく、表1に示す
液晶材料LC1〜LC5を真空注入法にて各空セル9に
それぞれ注入して、テストセルA1〜A5を作製した。
【表1】
【0035】次に、各テストセルA1〜A5にお互いの
偏光軸方向が直交するよう偏光板を貼合し、7V矩形波
の電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配向への
転移を目視観察し、全電極領域がスプレイ配向からベン
ド配向に転移するに要する時間を求めたので、その結果
を上記表1に示す。尚、表1には、K11、K33等の
値も併記している。
【0036】表1より、広がり弾性定数K11が10p
N以下の液晶材料を含む液晶セルが高速なスプレイ−ベ
ンド転移を起こすことが分かる。これは、電圧印加によ
る液晶表示素子中の液晶ダイレクタ分布がK11が小さ
いほうが、より短時間で液晶層中央の液晶ダイレクタが
垂直配向となるためと思われる。この点に関し、更に考
察する。スプレイ配向からベンド配向への転移は、スプ
レイ配向から徐々にベンド配向に転移するのではなく、
電圧無印加時のスプレイ配向(図3(a))から電圧印
加により、スプレイの程度が大きくなって、図3(b)
に示すように、スプレイ変形が最大となる最大スプレイ
配向状態となり、この最大スプレイ配向状態から、図3
(c)に示すように、ベンド配向に飛び越して転移して
いくことが知られている。従って、スプレイ配向からベ
ンド配向への転移に関して、先ず、上記の最大スプレイ
配向状態を達成させることが前提として必要となる。よ
って、本発明者は、K11に着目して、K11を小さく
し、最大のスプレイ配向状態が、短時間に容易に起こる
ことが必要であるとの考えに至ったものである。尚、後
述する実施の形態におけるK11/K33、K11・K
33、K11/Δε等についても、ベンド配向への転移
速度を速めるためには、本質的には、スプレイ配向から
ベンド配向への転移の前提として、K11を小さくする
必要があるという考えに基づくものである。
【0037】図4は広がり、捻れ、曲げに対する弾性定
数がそれぞれK11=4.0pN、K22=7.0p
N、K33=15.8pNである液晶材料とK11=1
6.0pN、K22=7.0pN、K33=15.8p
Nである液晶材料について、3Vの電圧を印加した時の
液晶ダイレクタの傾きを計算したものである。尚、図4
の縦軸は液晶ダイレクタの傾き角を示し、横軸は実際の
セルギャップの値を1としてセルの厚みを規格化した値
を示す。この図4において、例えば、液晶ダイレクタの
傾きが−50%以上の領域は、K11=16.0の場
合、50%程度であるが、K11=4.0の場合、70
%程度となっていることが認められる。このことは、K
11の小さい方が、液晶分子がより大きく立っているこ
とに起因する。従って、この図4より導かれる結論は、
前記推論を良く裏付けている。尚、計算において、液晶
材料の分子長軸方向の誘電率ε//を14.1、分子短軸
方向の誘電率εを3.8、液晶層厚を6μmとした。ま
た、基板表面での液晶プレチルト角を5度とした。
【0038】以上より明らかなように、本実施の形態1
によれば、スプレイ−ベンド転移時間の短い液晶表示素
子を提供することができ、その実用的価値は極めて大き
い。尚、本実施の形態では、印加電圧として7V、1k
Hz矩形波を印加したが、他の電圧値、波形の電圧を印
加しても良いことは言うまでもない。
【0039】(実施の形態2)実施の形態2に係る液晶
表示素子は、K11/K33に着目して、このK11/
K33が1.0以下である液晶材料を含むことを特徴と
するものである。以下に、K11/K33≦1.0とす
る理由を、本発明者の実験結果に基づき詳細に説明す
る。
【0040】基板間隔が5.7μmであること以外は実
施の形態1と同様の構成の空セル9を5ケ作成し、表2
に示す液晶材料LC6〜LC10,LC0を真空注入法
にて各空セル9にそれぞれ注入して、テストセルB1〜
B5,B0を作製した。
【表2】
【0041】次に、各テストセルB1〜B5,B0にお
互いの偏光軸方向が直交するよう偏光板を貼合し、7V
矩形波の電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配
向への転移を目視観察し、全電極領域がスプレイ配向か
らベンド領域へと転移するに要する時間を求めたので、
その結果を上記表2に示す。尚、表2には、K11、K
33等の値も併記している。
【0042】表2より、広がり弾性定数K11と曲げ弾
性定数K33との比K11/K33が1.0以下の液晶
材料を含む液晶表示素子が高速なスプレイ−ベンド転移
を起こすことが分かる。これは、以下の理由によるもの
と考えられる。
【0043】即ち、スプレイ配向よりもベンド配向での
変位が容易という意味では、K11/K33は大きいほ
うが良いはずである。なぜなら、K33が小さい方がベ
ンド配向への転移が容易だからである。しかしながら、
実際に本発明者が実験したところによると、K11/K
33を上記のように大きい値とすると、却って転移速度
が遅くなることがわかった。
【0044】これは、液晶材料としては、K11とK3
3とが個別に定まるのではなく、K11が選定されれ
ば、材料系としてはK33が連動して定まる。よって、
K33とK11を個別に考えて、K33を小さくし、且
つK11を大きくするような液晶材料の選定は適切でな
いという理由によるものと考えられる。
【0045】現実の液晶材料の選定の場合は、K11/
K33を大きくすると、K11も大きくなってしまい、
スプレイ変形が充分なされないため、却ってスプレイ−
ベンド転移速度が遅くなってしまう。従って、K11を
小さく抑えながら、K11/K33を大きくすることに
は限界があり、K11/K33には適正な範囲が存在す
ると考えられる。このような理由に基づき、本発明者が
実験した結果、表2を得たものである。
【0046】この表2より、K11/K33が1.0以
下の液晶材料を含む液晶表示素子が高速なスプレイ−ベ
ンド転移を起こすことが認められる。
【0047】(実施の形態3)実施の形態3に係る液晶
表示素子は、広がり弾性定数K11と曲げ弾性定数K3
3との積K11・K33に着目して、このK11・K3
3が比較的小さい値である液晶材料を含むことを特徴と
するものである。以下に、その理由を、本発明者の実験
結果に基づき詳細に説明する。基板間隔が5.5μmで
あること以外は実施の形態1と同様の構成の空セル9を
5ケ作成し、表3に示す液晶材料LC11〜LC15を
真空注入法にて各空セル9にそれぞれ注入して、テスト
セルC1〜C5を作製した。
【表3】
【0048】次に、各テストセルC1〜C5にお互いの
偏光軸方向が直交するよう偏光板を貼合し、7V矩形波
の電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配向への
転移を目視観察し、全電極領域がスプレイ配向からベン
ド領域へと転移するに要する時間を求めたので、その結
果を上記表3に示す。尚、表3には、K11/K33等
の値も併記している。
【0049】表3及び上記表1,表2より、K11・K
33が小さい値の液晶材料を含む液晶表示素子が高速な
スプレイ−ベンド転移を起こすことが分かる。これは、
上記したようにスプレイ変形の観点からK11を小さく
する方がベンド配向への転移が容易であり、また、K3
3を小さくする方がベンド変形が容易である。よって、
各々の積K11・K33も小さい方がベンド配向への転
移が容易だからである。
【0050】(実施の形態4)実施の形態4では、広が
り弾性定数K11と誘電率異方性Δεの比K11/Δε
に着目して、このK11/Δεが1.0pN以下である
液晶材料を含む液晶表示素子を選定することを特徴とす
るものである。以下に、K11/Δε≦1.0とする理
由を、本発明者の実験結果に基づき詳細に説明する。
【0051】基板間隔が6.0μmであること以外は実
施の形態1と同様の構成の空セル9を5ケ作成し、表4
に示す液晶材料LC16〜LC20を真空注入法にて各
空セル9にそれぞれ注入して、テストセルD1〜D5を
作製した。
【0052】次に、各テストセルD1〜D5にお互いの
偏光軸方向が直交するよう偏光板を貼合し、7V矩形波
の電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配向への
転移を目視観察し、全電極領域がスプレイ配向からベン
ド領域へと転移するに要する時間を求めたので、その結
果を上記表4に示す。
【表4】
【0053】表4より、K11/Δεが1.0pN以下
の液晶材料が高速なスプレイ−ベンド転移を起こすこと
が分かる。これは、誘電率異方性Δεを大きくすると、
液晶分子が大きく変位すること、及び上記の如くK11
を小さくすることがスプレイ−ベンド転移を容易にさせ
ることから、K11/Δεを小さくするのが好ましいか
らである。
【0054】尚、本発明者は、以下の実験も行った。基
板間隔が6.5μmであること以外は実施例1と同様の
構成の液晶セルを5ケ作成し、表5に示す液晶LC21
〜LC25を真空注入法にて注入し、テストセルE1〜
E5とした。
【表5】
【0055】その後、セルに20V矩形波を2分印加し
完全にベンド配向とした後、20mVに電圧を降下さ
せ、電極部全面がスプレイ配向となるのに要する時間を
測定したところ、表5に示すように、それぞれ127
秒、84秒、45秒、33秒及び25秒であった。一
方、セルE1〜E5に7Vを印加し、スプレイ配向から
ベンド配向に要する時間を目視観察により別途測定した
結果では、それぞれ1秒、2秒、5秒、18秒、33秒
であった。スプレイ配向からベンド配向への転移が容易
(高速)な系では、両者のエネルギー差が小さいため、
逆にベンド配向からスプレイ配向への転移は遅くなる。
本実施例より明らかなように、ベンド配向からスプレイ
配向に転移するのに要する時間が45秒以上の液晶材料
が高速なスプレイ−ベンド転移を示す。
【0056】(実施の形態5)実施の形態5に係る液晶
表示素子は、容量−電圧(C−V)特性のヒステリシス
の大きさSに着目して、このヒステリシスの大きさSが
1.0×104 V/m以下である液晶材料を含むことを
特徴とするものである。尚、従来は、一般的にはベンド
配向モードの液晶表示素子では、ヒステリシスが存在し
ていないと考えられていた。しかし、本発明者が、ベン
ド配向モードの液晶表示素子の開発実験中において、ヒ
ステリシスが存在していることを見いだした。そこで、
かかるヒステリシスの大きさSに着目して鋭意研究した
結果、ベンド配向への転移の速い液晶表示素子を得るに
至ったものである。以下に、S≦1.0×104 とする
理由を、本発明者の実験結果に基づき詳細に説明する。
【0057】基板間隔が9.5μmであること以外は実
施の形態1と同様の構成の空セル9を5ケ作成し、表6
に示す液晶材料LC26〜LC30を真空注入法にて各
空セル9にそれぞれ注入して、テストセルF1〜F5を
作製した。
【表6】
【0058】次に、各テストセルF1〜F5に対して、
図5に示すように階段状に印加電圧を上昇させ、各設定
電圧に対するセル容量の時間変化を測定した。尚、セル
容量の測定は、精密LCRメータ(ヒューレット・パッ
カード社製HP−4284A)を用いて行い、印加電圧
波形は正弦波1kHzであった。また、電圧を降下させ
て、セル容量の時間変化を測定した。尚、電圧を降下さ
せる場合には、一旦30V(確実にベンド配向に転移す
る電圧値)を印加し、ベンド配向を目視で確認してか
ら、図5の割合で電圧を階段状に降下させた。尚、電圧
を降下させる場合には、一旦30Vを印加しベンド配向
を目視で確認してから図5の割合で電圧を階段状に降下
させた。各設定電圧に対するセルF5の容量の時間変化
は、図6及び図7に示す。
【0059】次に、各設定電圧値での容量を、電圧印加
後595秒〜600秒間の平均容量でもって定義し、容
量−電圧(C−V)特性を求めた。このような容量−電
圧(C−V)特性をグラフ化したものが図8に示されて
いる。ここで、595秒〜600秒としたのは、特定設
定電圧値(図6中の2.6V、2.7V)を除いて、電
圧印加後に完全に容量変化が完了しており、容量が安定
した時間として、例えば595秒〜600を選んだもの
である。尚、特定設定電圧値の場合に、容量が増加して
いるのは、最大スプレイ配向からベンド配向への飛び越
し、いわゆる配向の緩和が生じているためである。図7
に示すように、電圧降下時においても、595秒〜60
0秒の平均容量値としたのは、上記電圧上昇時における
理由と同様である。但し、図7において、容量が減少す
る特定設定電圧値(図7中の1.8V、1.6V)の場
合に、容量が減少しているのは、ベンド配向から最大ス
プレイ配向への飛び越し、いわゆる配向の緩和が生じて
いるためである。尚、特定設定電圧値は、電圧上昇時に
おいては図8のヒステリシスの上限付近の電圧値に相当
し、電圧降下時においては図8のヒステリシスの下限付
近の電圧値に相当する。このことは、スプレイ配向とベ
ンド配向との間には、エネルギー差があることを意味す
る。
【0060】ここで、図8におけるC−Vヒステリシス
曲線で囲まれる領域の広さはスプレイ配向のエネルギー
とベンド配向のエネルギーとの差に対応しており、スプ
レイ−ベンド転移の容易性に対応している。これは、ベ
ンド配向からスプレイ配向への転移の場合、本来的には
電圧を0Vにすれば自動的に転移する。このことは、配
向エネルギーの観点からすると、ベンド配向からスプレ
イ配向への転移は、電圧を0Vとすると、急激に転移が
生じるものと考えられ、図8において、ラインL2は急
激に低下していることが分かる。よって、スプレイ配向
とベンド配向間における転移は、ラインL2が理想であ
る。従って、スプレイ配向からベンド配向への転移を示
すラインL1は、本来的にはラインL2と同様となるべ
きである。しかしながら、スプレイ配向からベンド配向
への転移に要するエネルギーと、ベンド配向からスプレ
イ配向への転移に要するエネルギーとに差があるため、
ラインL1は緩やかに立ち上がる。よって、ラインL1
がラインL2に近づく方が、スプレイ配向からベンド配
向への転移が容易であると考えられる。
【0061】いま、この領域の広さSを、以下の第1式
で定義し、広さSを算出した。
【数3】
【0062】尚、aはヒステリシスの認められる電圧下
限[V]を、bはヒステリシスの認められる電圧上限
[V]を表し、CBSはベンドからスプレイへの変化時の
セル容量[pF]、CSBはスプレイからベンドへの変化
時のセル容量[pF]を表している。また、Cmax、
Cminはそれぞれセルの最大容量[pF]、最小容量
[pF]を表し、Lは液晶層厚[m]を表している。他
のテストセルについても、測定したC−V特性よりS値
を求めた。上記算出結果を上記表6に示す。
【0063】一方、これらのセルについて、7V矩形波
を印加した時のスプレイ配向からベンド配向への転移に
要する時間を目視観察した結果を上記表6に併せて記
す。表6から明らかなように、S≦1.0×104 V/
mの液晶材料が高速なスプレイ−ベンド転移を示す。本
実施の形態5におけるS値は、(配向膜のアンカリング
エネルギーA/弾性定数K)の関数であり、液晶材料の
プレチルト角によっても変化する。特にプレチルト角を
大きくするとS値は小さくなり、スプレイ−ベンド転移
が容易になる。
【0064】(実施の形態6)実施の形態6では、液晶
材料がピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、およびビ
フェニル系からなる群から選ばれる少なくとも一種の液
晶系を含有していることを特徴とするものである。以下
に、材料を特定した理由を、本発明者の実験結果に基づ
き詳細に説明する。
【0065】基板間隔が5.5μmであること以外は実
施の形態1と同様の構成の空セル9を3ケ作成し、表7
に示す液晶材料LC31〜LC33を真空注入法にて各
空セル9にそれぞれ注入して、テストセルG1〜G3を
作製した。また、表7に示す液晶材料LC40を真空注
入法にて空セル9に注入して、テストセルJを作製し
た。
【表7】
【0066】本実施の形態6で用いた各液晶組成物は、
液晶構造によるスプレイ−ベンド転移の容易性を評価す
るため、それぞれを液晶骨格が同一である同族列液晶で
構成したものである。
【0067】次に、各テストセルG1〜G3,Jにお互
いの偏光軸方向が直交するよう偏光板を貼合し、7V矩
形波の電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配向
への転移を目視観察し、全電極領域がスプレイ配向から
ベンド領域へと転移するに要する時間を求めたので、そ
の結果を上記表7に示す。
【0068】表7より明らかなように、ジオキサン系液
晶やビフェニル系液晶およびピリミジン系液晶は高速な
転移を示すことが分かる。これは、これら液晶の広がり
の弾性定数K11がフェニルシクロヘキサン系液晶に比
べて、相対的に小さいことによるものと思われる。この
ことは、その他エタン系液晶などにも当てはまる。通常
の液晶組成物は液晶温度範囲、屈折率異方性、および誘
電率異方性などの調整のため、数種〜20種の液晶化合
物の混合物で構成されるが、本実施の形態の結果よりピ
リミジン系液晶やジオキサン系液晶あるいはビフェニル
系液晶を含む液晶組成物が高速なスプレイ−ベンド転移
を示すことは明らかである。一般に、異種骨格の液晶分
子の混合により液晶組成物の弾性定数は、各液晶分子の
弾性定数の、加成性で計算される値よりも小さな値にな
るため、ピリミジン系液晶、ビフェニル系液晶あるいは
ジオキサン系液晶の添加は極めて有効である。
【0069】(実施の形態7)実施の形態7に係る液晶
表示素子は、プレチルト角に着目して、少なくとも一方
の基板表面におけるプレチルト角が2度以上であること
を特徴とするものである。以下に、プレチルト角が2度
以上とする理由を、本発明者の実験結果に基づき詳細に
説明する。
【0070】図1に示すテストセルを、以下の方法で作
製した。透明電極2、7を有する2枚のガラス基板1、
8上にJSR製配向膜塗料JALS−246をスピンコ
ート法にて塗布し、恒温槽中150℃、1時間硬化させ
配向膜3、6を形成する。その後、レーヨン製ラビング
布を用いて図2に示す方向にラビング処理を施し、積水
ファインケミカル(株)製スペーサ5、およびストラク
トボンド352A(三井東圧化学(株)製シール樹脂の
商品名)を用いて基板間隔が5.8μmとなるように貼
り合わせ、空セル9を5ヶ作成した。この時、ラビング
強度を変化させて、それぞれの液晶プレチルト角が異な
るようにした。
【0071】次いで、表8に示す液晶材料LC34を真
空注入法にて各空セル9にそれぞれ注入して、テストセ
ルH1〜H5とした。
【表8】
【0072】次に、各テストセルH1〜H5にお互いの
偏光軸方向が直交するよう偏光板を貼合し、7V矩形波
の電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配向への
転移を目視観察し、全電極領域がスプレイ配向からベン
ド領域へと転移するに要する時間を求めたので、この結
果を表9に示す。尚、別途測定した液晶プレチルト角
も、併せて表9に記す。
【表9】
【0073】表9より、高速なスプレイ−ベンド転移を
起こさせるためには、プレチルト角として2度以上が好
ましいことが分かる。これは、プレチルト角が大きい
と、電圧印加によるスプレイ配向の変位が大きく、その
ため、スプレイ−ベンド転移が容易に起こるからであ
る。尚、プレチルト角を大きくすることにより、駆動電
圧を低減でき、更に初期化電圧を低減できるという効果
も奏する。
【0074】尚、参考までに述べると、高すぎるプレチ
ルト角は、プレチルト角の安定性や電圧−透過率特性の
安定性に懸念が生ずるため、適切なプレチルト角を設定
する必要がある。従って、プレチルト角の安定性等を考
慮すれば、プレチルト角は、2度以上、6度以下とする
のが、望ましい。
【0075】(その他の事項)本発明に係る液晶表示素
子においては、負の位相補償板であっても、正の補償位
相板であってもよい。但し、表示特性の点からすれば、
負の位相補償板の方が望ましい。また、位相補償板は、
一対の基板の外側にそれぞれ配設されていてもよく、ま
た、一方の基板の外側にのみ配設されていてもよい。
【0076】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、電圧印加
によるスプレイ配向からベンド配向への転移が極めて速
い光学補償ベンド(OCB)モードの液晶表示素子を実
現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明液晶表示素子のスプレイ−ベンド転移時
間評価に用いたテストセルの構成図である。
【図2】本発明液晶表示素子のスプレイ−ベンド転移時
間評価に用いたテストセル基板のラビング方向を示す図
である。
【図3】スプレイ配向からベンド配向への配向転移する
過程を説明するための図である。
【図4】広がりの弾性定数K11の違いによる、電圧印
加持の液晶ダイレクタ分布の違いを説明するための図で
ある。
【図5】本発明の実施の形態5テストセルに印加した電
圧の時間変化を表すタイミングチャート図である。
【図6】本発明の実施の形態5で用いたテストセルF5
に、図5のタイミングで電圧を印加した時の、各電圧値
切換後の容量の時間変化を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態5で用いたテストセルF5
に、図5と同様のタイミングで電圧を降下させた時の、
各電圧値切換後の容量の時間変化を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態5で用いたテストセルF5
の容量−電圧(C−V)ヒステリシス特性を示す図であ
る。
【図9】光学補償ベンド(OCB)モードセルのパネル
構成、および液晶ダイレクタの配列を説明するための図
である。
【符号の説明】
1、8…ガラス基板 2、7…透明電極 3、6…配向膜 4…液晶層 5…スペーサ 5a…………電圧無印加時の液晶配向(スプレイ配向) 5b…………電圧印加時の液晶配向(ベンド配向) 9……………テストセル 10、12…偏光板 11、13…位相補償板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/139

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一対の基板間に挟持された液晶材料に電圧
    を印加し、スプレイ配向からベンド配向に転移させた
    後、このベンド配向状態で液晶表示駆動を行うパラレル
    配向液晶表示素子において、前記液晶材料の広がり弾性
    定数K11と曲げ弾性定数K33との比K11/K33
    が、0.539以下であることを特徴とするパラレル配
    向液晶表示素子。
  2. 【請求項2】一対の基板間に挟持された液晶材料に電圧
    を印加し、スプレイ配向からベンド配向に転移させた
    後、このベンド配向状態で液晶表示駆動を行うパラレル
    配向液晶表示素子において、前記液晶材料は、印加電圧
    を上昇および下降させながら前記容量を測定したときに
    観測される容量−電圧ヒステリシスの大きさSを以下の
    第1式で定義したときに、Sが1.0×104V/m以下となる、
    そのような液晶材料であることを特徴とするパラレル配
    向液晶表示素子。 【数1】 尚、aはヒステリシスの認められる下限電圧値[V]を、b
    はヒステリシスの認められる上限電圧値[V]を表し、CBS
    はベンドからスプレイへの変化時のセル容量[pF]を、CS
    Bはスプレイからベンドへの変化時のセル容量[pF]を表
    している。また、Cmaxはセルの最大容量[pF]を、Cminは
    セルの最小容量[pF]を表し、Lは液晶層厚[m]を表してい
    る。
  3. 【請求項3】前記液晶材料の少なくとも一方の基板表面
    におけるプレチルト角が2度以上であることを特徴とす
    る請求項1または2のいずれかに記載のパラレル配向液
    晶表示素子。
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