JP3182185B2 - 動揺角検出器 - Google Patents

動揺角検出器

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JP3182185B2 JP31502091A JP31502091A JP3182185B2 JP 3182185 B2 JP3182185 B2 JP 3182185B2 JP 31502091 A JP31502091 A JP 31502091A JP 31502091 A JP31502091 A JP 31502091A JP 3182185 B2 JP3182185 B2 JP 3182185B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レートセンサ及び傾斜
センサの出力を相補的に合成し、動揺角を検知出力する
動揺角検出器の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】船舶等の移動体に搭載され移動体の動揺
角(ロール、ピッチ等)を検出する動揺角検出器として
は、レートセンサと傾斜センサを用い、これらの出力を
相補的合成フィルタにより合成して、所望周波数領域で
平坦な周波数特性を実現する構成がある。
【0003】図12には、一従来例に係る動揺角検出器
の構成が示されている。この図に示される動揺角検出器
は、角速度センサ10、傾斜センサ12、相補的合成フ
ィルタ14から構成されている。
【0004】角速度センサ10はピエゾ型レートセンサ
等として構成されるものであり、図13に示されるよう
に伝達関数 G10(s)=K1 ・s(K1 :定数) を有している。すなわち、加わる動揺角θi (s)の微
分(角速度)を出力するセンサである。図13において
11(s)及びd0 (s)で示されるのは、それぞれL
PF特性を有する寄生要素並びにオフセットとそのドリ
フトであり、以下のように表される。
【0005】
【数1】 ただし、ω1 、ζ1 は角速度センサ10の2次遅れ係数
でありそれぞれ遮断周波数及びダンピング係数を表して
おり、G11(s)の式は寄生要素を2次LPFとしてモ
デル化している。d0 は、角速度センサ10のオフセッ
ト電圧である。また、傾斜センサ12はインクリノメー
タとよばれるものであり、図13に示されるように伝達
関数 G20(s)=K2 (K2 :定数) を有している。図13においてG21(s)及びG
22(s)で示されるのは、それぞれLPF特性を有する
寄生要素並びに加速度の影響であって、以下のように表
される。
【0006】
【数2】 ただし、ω2 、ζ2 は傾斜センサ12の2次遅れ係数で
ありそれぞれ遮断周波数及びダンピング係数を表してお
り、G21(s)の式は寄生要素を2次LPFとしてモデ
ル化している。Lは移動体の動揺中心から傾斜センサ1
2までの距離を表しており、gは重力加速度である。
【0007】これらの式に基づき、オフセットや加速度
の影響を含めた角速度センサ10及び傾斜センサ12の
伝達関数を表現すると、それぞれ次のように表される。
【0008】G10(s)G11(s)+d0 (s) G20(s)G21(s)+G22(s) 相補的合成フィルタ14は、角速度センサ10及び傾斜
センサ12の出力を相補的に、すなわち必要な周波数領
域で出力θo (s)に周波数特性が現れないように、合
成するフィルタである。
【0009】今、オフセットや寄生要素を考えないこと
とすると、角速度センサ10の伝達関数はG10(s)=
1 ・sで表される。また、加速度の影響や寄生要素を
考えないこととすると、傾斜センサ12の伝達関数はG
20(s)=K2 で表される。両者の出力を相補的に合成
するためには、原理的には、 Grate (0) (s)+Gincl (0) (s)=1 という関係を成立させれば良い。ここに、G
rate (0) (s)は角速度センサ10及び相補フィルタ1
6を含む伝達関数であり、Gincl (0) (s)は傾斜セン
サ12及び相補フィルタ18を含む伝達関数である。
【0010】相補フィルタ16及び18は、それぞれ角
速度センサ10又は傾斜センサ12に縦続接続されてお
り、加算器20は相補フィルタ16及び18の出力を加
算して検出結果θo (s)として出力する。相補フィル
タ16の伝達関数Frate (0)(s)及び相補フィルタ1
8の伝達関数Fincl (0) (s)は、具体的には Frate (0) (s)=Ka /(s+ωa ) Fincl (0) (s)=Kb /(s+ωa ) と設定される。ここに、Ka =1/K1 であり、Kb
ωa /K2 とした場合、 Ka /(s+ωa )・K1 ・s+Kb /(s+ωa )・K2 =1 となり、相補的合成が実現されることがわかる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、通常の傾斜セ
ンサは、重力方向の基準を得るための振り子(pendulu
m)を有している。このため、加速度の影響による誤差
(上の従来例ではG22(s)に起因する誤差)が大きく
なる。また、角速度センサ(レートセンサ)はオフセッ
トを有しており、またその温度ドリフトが大きい(上の
従来例ではd0 (s))。レートセンサのオフセットに
より生じる動揺角出力の誤差(オフセット誤差)は、最
終値定理より、s・d0 (s)・G10(s)のs→0の
極限値としてDRO (0) =d0 /(K1 ・ωa )とな
る。現在市販されている安価な振動ジャイロ型の角速度
センサは、K1 =1.26[V/rad/sec]、d
0 =−0.2〜0.2[V](温度による)程度の特性
であるから、恒温槽内で使用する等の場合を除き、実用
上DRO (0) が問題となる。
【0012】本発明は、このような問題点を解決するこ
とを課題としてなされたものであり、レートセンサ及び
傾斜センサを用いて安価かつより高精度の動揺角検出器
を実現し、インマルサット船舶地球局のアンテナ制御等
に好適に採用可能とすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明は、レートセンサの出力を瀘波する第
1の相補フィルタが帰還係数Kb の帰還ループを含み、
動揺の周波数を検出する手段及び検出結果に応じて補正
係数α(α≦1)を決定して第2の相補フィルタの伝達
関数の分子に含まれる微分項をこの補正係数αにより補
正する制御手段を含むパラメータ適応制御手段を備え、
動揺の周波数に応じ補正係数αの適応制御を行うことを
特徴とする。
【0014】また、請求項2は、さらに、パラメータ適
応制御手段が動揺の振幅を検出する手段を備え、制御手
段が検出される動揺の振幅に応じて帰還係数Kb を決定
して第1及び第2の相補フィルタに供給し、動揺の振幅
に応じて帰還係数Kb の適応制御を行うことを特徴とす
る。
【0015】
【作用】本発明においては、レートセンサの出力を瀘波
する第1の相補フィルタに帰還係数Kb の帰還ループが
設けられる。このような帰還ループが設けられると、第
1の相補フィルタの伝達関数の分母に帰還係数Kb が現
れ、これに伴い、レートセンサのオフセット誤差を表す
式の分母にも帰還係数Kb が現れる。従って、帰還係数
b を大きく設定することにより、オフセット誤差を低
減することが可能になる。
【0016】また、本発明においては、動揺の周波数が
検出され、検出結果に応じて補正係数αが適応制御され
る。この補正係数αは、第2の相補フィルタの伝達関数
の分子に現れる微分項を補正する係数である。第2の相
補フィルタの伝達関数の分子に微分項が現れるのは、第
1及び第2の相補フィルタが相補性を満たすように設定
されていること、及び第1の相補フィルタに帰還ループ
が設けられていることによるものであるが、この微分項
は、動揺誤差、すなわち傾斜センサに対する加速度の影
響による誤差を増大させるものである。本発明では、こ
の微分項の影響が補正係数αにより抑制され、動揺誤差
が低減される。
【0017】また、請求項2においては、パラメータ適
応制御手段により動揺の振幅が検出され、これに応じて
帰還係数Kb が適応制御される。先に述べたように、帰
還係数Kb を大きく設定することによりオフセット誤差
を低減することが可能であるが、一般に動揺誤差も大き
くなる。そこで、請求項2においては、補正係数αと共
に帰還係数Kb が適応制御され、動揺誤差の低減がより
顕著になる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例について図面に
基づき説明する。なお、図12及び13に示される従来
例と同様の構成には同一の符号を付し説明を省略する。
【0019】(1)第1実施例 図1には、本発明の第1実施例に係る動揺角検出器の構
成が示されている。また、図2にはその特徴的構成であ
るパラメータ適応制御手段22の構成が、図3には本実
施例の伝達関数によるブロック図が、それぞれ示されて
いる。
【0020】図1に示されるように、本実施例は角速度
センサ10、傾斜センサ12、パラメータ適応型相補的
合成フィルタ24及びパラメータ適応制御手段22から
構成されている。
【0021】(1.1)帰還ループによるオフセット誤
差の低減 この実施例では、パラメータ適応型相補的合成フィルタ
24は、帰還ループ付相補フィルタ26、相補フィルタ
28及び加算器20から構成されている。相補フィルタ
26及び28はそれぞれ角速度センサ10又は傾斜セン
サ12の後段に接続されており、加算器20は両フィル
タ26及び28の出力を加算する。
【0022】相補的合成フィルタ24の構成が従来例の
それと異なる点は、第1に、相補フィルタ26が帰還ル
ープを含んでおり(図3参照)、オフセット誤差DR0
(1)を低減可能な構成となっていることである。
【0023】図3に示されるように、帰還ループの伝達
関数を Hb (s)=Kb ωb /(s+ωb ) とすると、相補フィルタ26の伝達関数F
rate (1) (s)は、従来のフィルタ16に相当する伝達
関数 G2 (s)=Ka /(s+ωa ) とこの帰還ループの伝達関数Hb (s)の伝達関数の合
成値
【数3】 となる。なお、ωb は帰還ループの遮断周波数、Kb
帰還ループの帰還係数である。後述するように、Kb
パラメータ適応制御手段22により動揺の状況に応じた
制御を受ける。
【0024】この伝達関数Frate (1) (s)は、相補フ
ィルタ26が2次のバンドパスフィルタとして機能する
ことを表している。ただし、本発明では、相補フィルタ
26を2次以上に設定することもできる。
【0025】角速度センサ10のオフセットに起因する
出力θo (s)の誤差、すなわちオフセット誤差DR0
(1) は、最終値定理より、s・d0 (s)・Frate (1)
(s)のs→0の極限値として求められ、次の式で表さ
れる値となる。
【0026】DRO (1) =d0 /(K1 ωa +Kb ) この式から、帰還ループの帰還係数Kb を大きくする
と、オフセット誤差DRO (1) が小さくなることがわか
る。すなわち、本実施例によれば、相補フィルタ26に
帰還ループを設けたことにより、帰還係数Kb の設定で
オフセット誤差DRO (1) を低減できる。
【0027】(1.2)補正係数αによる動揺誤差の低
減 さらに、本実施例における相補フィルタ28の伝達関数
は、従来例における相補フィルタ18のそれと異なって
いる。
【0028】まず、所定周波数領域で相補性を満足させ
るためには、従来例と同様、次の関係を満たす必要があ
る。
【0029】 K1 ・s・Frate (1) (s)+K2 ・Fincl (1) (s)=1 Fincl (1) (s):相補フィルタ28の伝達関数 ただし、ここでは、角速度センサ10及び傾斜センサ1
2における寄生要素や角速度センサ10のドリフト、傾
斜センサ12における加速度の影響を無視している。
【0030】一方、相補フィルタ26の伝達関数Frate
(1) (s)が先に記したような式で表されることから、
上式の変形で相補フィルタ28の伝達関数F
incl (1) (s)が次のように求まる。
【0031】
【数4】 この式の分子には、ラプラス演算子sが現れており、微
分として作用する。この項により、いわゆる動揺誤差が
発生する。
【0032】動揺誤差とは傾斜センサ12への加速度の
影響により出力θo (s)に現れる誤差である。動揺が
短周期でかつ設置高さLが大きい場合、微分項ωa ・s
により角速度の影響G22(s)が強調され、誤差が大き
くなると考えられる。
【0033】そこで、本実施例では、微分項の寄与分を
小さくするため相補フィルタ28の伝達関数Fincl (1)
(s)に次のように補正係数αを導入し、微分項ωa
sに補正係数α<1を乗じることにより動揺誤差を低減
している。
【0034】
【数5】 (1.3)補正係数α及び帰還係数Kb の適応制御 以上のように、帰還係数Kb を大きくすることによりオ
フセット誤差を低減し、補正係数αの導入により動揺誤
差を低減できる。しかし、動揺誤差は、帰還係数Kb
大きくすると補正係数αにかかわらず大きくなる。従っ
て、オフセット誤差及び動揺誤差を共に低減するために
は、補正係数α及び帰還係数Kb の適応制御を行う必要
がある。
【0035】この適応制御のため、本実施例は、パラメ
ータ適応制御手段22を備えている。パラメータ適応制
御手段22は、パラメータ適応型相補的合成フィルタ2
4の出力θo (s)から動揺の周波数及び振幅を検出
し、検出結果に基づきパラメータ制御信号(α,Kb
をパラメータ適応型相補的合成フィルタ24に出力す
る。パラメータ適応型相補的合成フィルタ24において
は、このパラメータ制御信号(α,Kb )に応じ、パラ
メータ(α,Kb )が切り換わる。
【0036】図2に示されるように、本実施例における
パラメータ適応制御手段22は、動揺周波数検出手段3
0、動揺振幅検出手段32及びパラメータ(α,Kb
制御手段34から構成されている。動揺周波数検出手段
30及び動揺振幅検出手段32は、出力θo (s)から
それぞれ動揺の周波数及び振幅を検出し、検出結果をパ
ラメータ(α,Kb )制御手段34に出力する。周波数
及び振幅の検出は、例えばFFT又はDFTの手法を用
いて行う。なお、入力される信号の周波数及び振幅をF
FT又はDFTによって求める手法は公知のアルゴリズ
ムであり、例えば文献“The Fast Fourier Transfor
m”、Brigham 、Prentice Hall(1974) に示されてい
る。
【0037】パラメータ(α,Kb )制御手段34は、
動揺周波数検出手段30及び動揺振幅検出手段32によ
り検出される動揺の周波数及び振幅に応じ、パラメータ
(α,Kb )が対応する値となるよう制御する。
【0038】この制御によって、オフセット誤差及び動
揺誤差を共に低減することができる。なお、補正係数α
の適応制御により補正係数αが1に比べ小さくなった場
合低周波における相補性が一部崩れる。また、これに伴
い、低周波での誤差が増大する可能性があるが、これ
は、補正係数αによる誤差低減に比べ無視できる程度に
抑圧できる。
【0039】また、実際の場合は、高域(船舶に搭載し
その動揺角を検出する場合1[Hz]前後又はそれ以
上)における角速度センサ10の位相遅れ等により相補
性は乱れる。したがって、用途に応じて角速度センサ1
0の特性を吟味しなければならない。本実施例では高域
においては相補性がその用途に必要な範囲でほぼ満たさ
れていると仮定し、以下の説明でも引き続き相補フィル
タ等の用語を用い、本実施例のモデルを相補性モデル
(reciprocal model)とよぶこととする。なお、α=1
の場合を完全相補性モデル(complete reciprocal mode
l )とよび、α≠1の場合を不完全相補性モデル(inco
mplete reciprocal model )と呼ぶこととする。
【0040】(1.4)適応制御の具体的内容 補正係数α及び帰還係数Kb の適応制御を行う上で、こ
れら補正係数α、帰還係数Kb の変化により誤差がどの
様に変化するかを知る必要がある。すなわち、誤差が最
小となるよう、シミュレーション等を行って補正係数α
及び帰還係数Kb の適応制御の内容(何段階で切り換え
るか、値は、等)を決定する。
【0041】図4〜6には、動揺誤差のシミュレーショ
ン結果が示されている。これらの図は、動揺振幅20
[deg]、動揺周期1〜33[sec]の正弦波につ
いて、動揺誤差を求めたものである。帰還係数Kb は、
5.0(図4)、10.0(図5)、15.0(図6)
の3通りを考えており、傾斜センサ12の設置高さLは
20[m]、f1 =ω1 /2π=7.0[Hz]、ζ1
=1.0、f1 =ω2 /2π=1.0[Hz]、ζ2
1.0とし、補正係数αとして−0.5、0、0.5、
1の4段階を設定している。
【0042】これらの図からわかるように、動揺周期が
短い場合には補正係数αが1に比べより小さい方が動揺
誤差が少なく、1により近い方が動揺誤差が大きい。ま
た、帰還係数Kb が大きいと動揺誤差が大きい。
【0043】さらに、図7には、伝達関数F
rate (1) (s)のランプ応答(角速度センサ10のオフ
セットのドリフトによる誤差、すなわちドリフト誤差)
が示されている。用いたランプ入力は、0[V]からス
タートし10[min]で50[mV](約2[deg
/sec]の角速度に相当)に達するランプ入力であ
り、帰還係数Kb が5.0の場合、10.0の場合、1
5.0の場合の3通りについてランプ応答を求めてい
る。この図から、帰還係数Kb を小さくすると、ドリフ
ト誤差を小さくできることがわかる。
【0044】このようなシミュレーション結果から、補
正係数α及び帰還係数Kb の適応制御の内容を決定する
と、例えば次のようになる。
【0045】図8には、適応制御の一例が示されてい
る。この図の例では、パラメータ(α,Kb )制御手段
34は、動揺周波数検出手段30により検出される動揺
の周波数(=1/動揺の周期)に応じ、補正係数αを次
の2段階で切り換え制御する。
【0046】 動揺の周期≧12[sec] α=0.5 動揺の周期<12[sec] α=0 また、パラメータ(α,Kb )制御手段34は、動揺振
幅検出手段32により検出される動揺の振幅(rms
値)に応じ、帰還係数Kb を次の3段階で切り換え制御
する。
【0047】 動揺の振幅<5[deg] Kb =15.0 5[deg]≦動揺の振幅<15[deg] Kb =10.0 動揺の振幅≧15[deg] Kb =5.0 (1.5)詳細な伝達関数 帰還係数Kb 、遮断周波数ωa 、ωb 等の決定は、以上
の説明における簡略化された伝達関数式では足りず、よ
り詳細な式により時系列解析を行い決定することが必要
である。
【0048】まず、角速度センサ10及び相補フィルタ
26をあわせた系統(以下、レートセンサ系という)の
伝達関数Grate (1) (s)は、寄生要素の伝達関数G11
(s)を考慮した場合、 Grate (1) (s)=G10(s)G11(s)Frate (1) (s) から、次の式で表される。
【0049】
【数6】 また、寄生要素の伝達関数G21(s)や加速度G
22(s)を考慮すると、傾斜センサ12及び相補フィル
タ28をあわせた系統(以下、傾斜センサ系という)の
伝達関数 Gincl (1) (s)={G20(s)G21(s)+G22(s)}Fincl (1) (s) は、次の式で表される。
【0050】
【数7】 従って、図1の回路の総合の伝達関数G
total (1) (s)は、次の式で表される。
【0051】
【数8】 ただし、r1 =2ζ1 ω1 、r2 =ω1 2 、p1 =2ζ
2 ω2 、p2 =ω2 2 、b1 =ωa +ωb 、b2 =ωb
(ωa +Ka b )、a0 =αKLg2 ωa 、a1 =K
Lg2 2 、a2 =αp2 ωa 、a3 =p2 2 、KLg
=−L/g である。
【0052】(1.6)実施例の効果 このような構成を有する本実施例によれば、オフセット
誤差、ドリフト誤差、動揺誤差を低減できる。
【0053】まず、オフセット誤差を従来例と比較した
場合、 従来例におけるオフセット誤差DR0 (0)=0.126
[rad]=7.24[deg] 本実施例におけるオフセット誤差DR0 (1)=0.01
0[rad]=0.57[deg] となり、著しくオフセット誤差が低減される。このデー
タは、 K1 =1.26[V/rad/sec] d0 =0.1[V] ωa (0) =2π×0.1[rad],ωa (1) =2π×
0.002[rad] Kb =10.0 とした場合のデータである。
【0054】従って、本実施例では、帰還ループにより
オフセット誤差を低減でき、オフセット誤差の大きいレ
ートセンサを角速度センサ10に用いることができる。
【0055】また、ドリフト誤差、動揺誤差に関して
は、図4〜7のシミュレーション結果から明らかなよう
に、補正係数α及び帰還係数Kb の適応制御によってト
ータルで低減できる。
【0056】(2)第2実施例 図9には、本発明の第2実施例に係る動揺角検出器の構
成が示されている。この実施例では、パラメータ適応制
御手段36が出力θo から動揺の周波数及び振幅を検出
するのではなく、傾斜センサ12の出力から検出してい
る。パラメータ適応制御手段36の動作は第1実施例と
ほぼ同じである。この実施例でも、第1実施例と同様の
効果を得ることができる。
【0057】(3)第3実施例 図10には、本発明の第3実施例に係る動揺角検出器の
構成が示されている。この実施例では、パラメータ適応
制御手段38が受信機から受信レベル信号を入力し、帰
還係数Kb 及び補正係数αを適応制御している。
【0058】ここにいう受信機は、船舶に設置されたイ
ンマルサット船舶地球局等の受信機であり、この受信機
から出力される受信レベル信号は通信衛星から受信され
る信号のレベルを表している。パラメータ適応制御手段
38は、受信レベル信号に基づきステップトラックを実
行する。
【0059】すなわち、パラメータ適応制御手段38は
微小値のステップトラック信号を発生させ、受信レベル
がより大きくなる方向にこの信号の符号(+/−)を設
定し、(α,Kb )制御信号として出力する。この信号
により、補正係数α及び帰還係数Kb の値が漸増・漸減
し、結果として誤差の小さい出力θo が得られる。
【0060】(4)第4実施例 図11には、本発明の第4実施例に係る動揺角検出器の
構成が示されている。この実施例では、相補フィルタ2
6及び28がディジタルフィルタとして実現されてお
り、これに伴い角速度センサ10及び傾斜センサ12の
出力側にADコンバータ40及び42がそれぞれ設けら
れている。また、角速度センサ10の出力のオフセット
を補正するレジスタを設け、受信レベル信号によりステ
ップトラックを行っている。なお、パラメータ適応制御
手段48は第1実施例とほぼ同様の構成である。
【0061】(4.1)ディジタルフィルタによる実現
(implementation) この実施例のように相補フィルタ26及び28をディジ
タルフィルタとして構成する場合、パラメータ制御がや
りやすい(補正係数α及び帰還係数Kb の制御が比較的
容易である)。ディジタルフィルタに関しては、例えば
“Digital Signal Processing ”,A.V.Oppenheim,R.N.S
chafer,Prentice Hall(1975)等に示されている。本実施
例では、ディジタルフィルタによる実現を下記のように
双一次変換(Bilinear Transformation )により行って
いる。
【0062】まず、レートセンサ系の相補フィルタ26
の実現に関して説明する。単位時間T(1ビット)の遅
延を表す演算子u=z-1を用い、s=h(1−u)/
(1+u)、h=2/Tによりラプラス演算子sを用い
た伝達関数Frate (1) (s)を双一次変換すると、次の
式で表現される。
【0063】Frate (1) (u)=(H0 ・u2 +H1
u+H2 )/(N0 ・u2 +N1 ・u+N2 ) =Z(u)/R(u) R(u):相補フィルタ26への入力系列 Z(u):相補フィルタ26からの出力系列 H0 =Ka (−h+ωa ) H1 =2Ka ωb2 =Ka (h+ωb ) N0 =h2 −b1 h+b21 =−2h2 +2b22 =h2 +b1 h+b2 この式において、R(u)・ui =R-i、Z(u)・u
i =Z-iと表すと、出力系列Z(u)は次の差分方程式
で表すことができる。
【0064】 Z(u)=H00-2+H10-1+H20R(u)−(N00
-2+N10-1+N20R(u)) H00=H0 /N210=H1 /N220=H2 /N200=N0 /N210=N1 /N220=N2 /N2 この差分方程式は、論理回路により又はマイクロプロセ
ッサのプログラムで容易に実現できる。
【0065】同様に、傾斜センサ系の相補フィルタ28
の伝達関数Fincl (1) (s)を双一次変換すると、次の
式が得られる。
【0066】Fincl (1) (u)=(M0 ・u2 +M1
u+M2 )/(N0 ・u2 +N1 ・u+N2 ) =Y(u)/X(u) X(u):相補フィルタ28への入力系列 Y(u):相補フィルタ28からの出力系列 M0 =(−αωa h+b2 )/K21 =2b2 /K22 =(αωa h+b2 )/K2 この式において、X(u)・ui =X-i、Y(u)・u
i =Y-iと表すと、出力系列Y(u)は次の差分方程式
で表すことができる。
【0067】Y(u)=M00-2+M10-1+M20
(u)−(N00-2+N10-1+N20R(u)) M00=M0 /N210=M1 /N220=M2 /N2 この差分方程式も、論理回路により又はマイクロプロセ
ッサのプログラムで容易に実現できる。
【0068】(4.2)オフセット補正レジスタ さらに、この実施例では、ADコンバータ40の出力か
らオフセット補正レジスタ46の内容が加算器44によ
り減じられた値が相補フィルタ26に入力されている。
オフセット補正レジスタ46は角速度センサ10のオフ
セットを記憶するレジスタであり、ADコンバータ40
の出力から補正レジスタ46の内容が減ぜられると、オ
フセット補正された値が相補フィルタ26に入力され、
より誤差を小さくすることができる。
【0069】また、このオフセット補正レジスタ46に
は、受信機から受信レベル信号が入力されている。オフ
セット補正レジスタ46はステップトラック機能を備え
ており、受信レベル信号の値変化に応じてオフセット値
を漸増・漸減させる。オフセット補正レジスタ46に設
定する初期値としては、常温の値を用いるのが好まし
い。
【0070】このようにオフセット補正レジスタ46を
用いる場合、帰還係数Kb を比較的小さい値に設定す
る。例えば、Kb ≦5に設定する。ただし、オフセット
補正レジスタ46の値が初期値から最適値に収束するま
では、帰還係数Kb を大きく(例えば、Kb >5に)設
定する。
【0071】従って、この実施例によれば、相補フィル
タ26及び28をディジタルフィルタとして実現したた
め、帰還係数Kb 及び補正係数αを比較的容易に制御で
き、また、オフセット補正レジスタ46におけるステッ
プトラックによりオフセット誤差を小さくできるばかり
でなく、帰還係数Kb を比較的小さく設定できるため、
動揺誤差も小さくできる。
【0072】(5)その他 以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明の
構成は以上の実施例のみに限定されるものではない。
【0073】例えば、図8の制御例では補正係数α及び
帰還係数Kb を2又は3段階に切り換えていた。この制
御例に示されるように、本発明における適応制御は、必
ずしも学習同定法等による適応型アルゴリズムのみを意
味するものではなく、(α,Kb )を2〜3段階で切り
換える程度でも実用になる。
【0074】また、以上の説明では、補正係数α及び帰
還係数Kb を適応制御するα−Kb適応モデル(α−K
b adaptation model )について説明したが、補正係数
αのみを適応的に切り換え又は制御するα適応モデル
(α adaptation model )でも、動揺誤差の低減を実現
できる。
【0075】さらに、動揺の周波数及び振幅の検出・パ
ラメータ制御の手法について、DFT等の手法やステッ
プトラックの手法を示したが、他の方法、例えば2乗平
均値法、絶対値平均値法やゼロクロス法としても良い。
2乗平均値法は、入力信号(出力θo 等)の2乗平均値
を求め、求めた2乗平均値に基づき帰還係数Kb を決定
する方法であり、絶対値平均値法は、入力信号の絶対値
の平均値を求め、この平均値に基づき帰還係数Kb を決
定する方法である。ゼロクロス法は、入力信号のゼロク
ロスからその周波数を求め、補正係数αを決定する方法
である。2乗平均、絶対値平均の演算手順や、ゼロクロ
ス検出の方法等は従来周知であるので、ここでは説明を
省略する。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
帰還係数Kb の設定によりオフセット誤差を低減でき、
補正係数αの導入及びその適応制御により動揺誤差を低
減できる。
【0077】また、請求項2によれば、補正係数αの適
応制御に加えて、帰還係数Kb を大きくすることにより
ドリフト誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る動揺角検出器の構成
を示すブロック図である。
【図2】この実施例におけるパラメータ適応制御手段の
構成を示すブロック図である。
【図3】伝達関数により第1実施例の構成を示すブロッ
ク図である。
【図4】傾斜センサにおける加速度の影響による誤差
を、補正係数αをパラメータとして示す図であり、特に
帰還係数Kb =5.0の場合の図である。
【図5】傾斜センサにおける加速度の影響による誤差
を、補正係数αをパラメータとして示す図であり、特に
帰還係数Kb =10.0の場合の図である。
【図6】傾斜センサにおける加速度の影響による誤差
を、補正係数αをパラメータとして示す図であり、特に
帰還係数Kb =15.0の場合の図である。
【図7】角速度センサのドリフトによる誤差を、帰還係
数Kb をパラメータとして示す図である。
【図8】パラメータ(α,Kb )の制御例を示す図であ
る。
【図9】本発明の第2実施例に係る動揺角検出器の構成
を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る動揺角検出器の構
成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施例に係る動揺角検出器の構
成を示すブロック図である。
【図12】一従来例に係る動揺角検出器の構成を示すブ
ロック図である。
【図13】伝達関数により従来例の構成を示すブロック
図である。
【符号の説明】
10 角速度センサ 12 傾斜センサ 20 加算器 22 パラメータ適応制御手段 24 パラメータ適応型相補的合成フィルタ 26 帰還ループ付相補フィルタ 28 相補フィルタ 30 動揺周波数検出手段 32 動揺振幅検出手段 34 パラメータ(α,Kb )制御手段 θi (s) 動揺角検出器の入力(ロール又はピッチ) θo (s) 動揺角検出器の出力 G10(s) 角速度センサの理想的伝達関数 G11(s) 角速度センサの寄生要素 d0 角速度センサのオフセット電圧 d0 (s) 角速度センサのドリフト Hb (s) 相補フィルタ26のドリフト補正用ループ
の伝達関数 ωa ,ωb 相補フィルタ26の遮断周波数 Kb 相補フィルタ26のドリフト補正用ループの帰還
係数 G20(s) 傾斜センサの理想的伝達関数 G21(s) 傾斜センサの寄生要素 G22(s) 傾斜センサにおける加速度の影響 Fincl (1) (s) 相補フィルタ28の伝達関数 α 相補フィルタ28の微分項の補正係数 (α,Kb ) パラメータ制御信号

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微分特性を有するレートセンサと、 比例特性を有する傾斜センサと、 レートセンサの出力を瀘波する第1の相補フィルタ、傾
    斜センサの出力を瀘波する第2の相補フィルタ及び第1
    の相補フィルタの出力と第2の相補フィルタの出力を加
    算する加算器を含み、レートセンサの出力と傾斜センサ
    の出力とを相補的に合成し所定周波数領域で平坦な周波
    数特性としつつ搭載される移動体の動揺角を出力する相
    補的合成フィルタと、 を備え、 第1の相補フィルタが、帰還係数Kb の帰還ループを含
    み、 動揺の周波数を検出する手段及び検出結果に応じて補正
    係数α(α≦1)を決定して第2の相補フィルタの伝達
    関数の分子に含まれる微分項をこの補正係数αにより補
    正する制御手段を含むパラメータ適応制御手段を備え、 動揺の周波数に応じ補正係数αの適応制御を行うことを
    特徴とする動揺角検出器。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の動揺角検出器において、 パラメータ適応制御手段が動揺の振幅を検出する手段を
    備え、 制御手段が検出される動揺の振幅に応じて帰還係数Kb
    を決定して第1及び第2の相補フィルタに供給し、 動揺の振幅に応じて帰還係数Kb の適応制御を行うこと
    を特徴とする動揺角検出器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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