JP3156530B2 - レーザショック処理方法および装置 - Google Patents

レーザショック処理方法および装置

Info

Publication number
JP3156530B2
JP3156530B2 JP29340994A JP29340994A JP3156530B2 JP 3156530 B2 JP3156530 B2 JP 3156530B2 JP 29340994 A JP29340994 A JP 29340994A JP 29340994 A JP29340994 A JP 29340994A JP 3156530 B2 JP3156530 B2 JP 3156530B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
laser
absorbing material
material layer
thickness
light
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP29340994A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08112681A (ja
Inventor
登 高柳
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP29340994A priority Critical patent/JP3156530B2/ja
Publication of JPH08112681A publication Critical patent/JPH08112681A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3156530B2 publication Critical patent/JP3156530B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23KSOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
    • B23K26/00Working by laser beam, e.g. welding, cutting or boring
    • B23K26/352Working by laser beam, e.g. welding, cutting or boring for surface treatment
    • B23K26/356Working by laser beam, e.g. welding, cutting or boring for surface treatment by shock processing

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属性のワークの表面
にレーザ光を吸収する吸収材料層を設け、その上を光透
過性部材層でカバーした後、レーザ光パルスを照射し
て、吸収材料の蒸発に基づいてワークにショックを与え
るレーザショック処理に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、金属材料の機械的強度などの
物性を改良するため、金属材料に衝撃を加え圧縮残留応
力を増加させることが行われている。このような方法の
1つにレーザショック処理方法があり、これによって局
部的に大きな衝撃を与えることができるため、各種用途
で利用されつつある。
【0003】例えば、特開昭58−120716号公報
には、レーザショック処理方法の従来例が示されてお
り、図23はこの従来例の説明図である。図23におい
て、金属性ターゲット41の図における上面41a及び
下面41bには、レーザ光パルスを吸収する吸収コート
材(塗料(図示せず))が塗布されている。ターゲット
41の上面41aには第1オーバーレイ(光透過性部
材)42が配置され、ターゲット41の下面41bには
第2オーバーレイ(光透過性部材)43が配置されてい
る。
【0004】レーザ装置44から照射される高エネルギ
ー短パルス状のレーザ光パルス51は、分光器(ハーフ
ミラー)45により、レーザ光パルス52及びレーザ光
パルス53に分けられる。レーザ光パルス52は、第1
ミラー46及び第2ミラー47により順次反射され、第
1凸レンズ48により収束されて、第1オーバーレイ4
2を透過してターゲット41の上面41aの前記塗料に
照射される。一方、レーザ光パルス53は、第3ミラー
49により反射され、第2凸レンズ50により収束され
て、第2オーバーレイ43を透過してターゲット41の
下面41bの塗料に照射される。
【0005】照射されたレーザ光パルス52、53によ
り、前記塗料の表面から瞬時にガスが蒸発し膨張する
が、第1及び第2オーバーレイ42、43が配置されて
いるので、ここの圧力が瞬時に上昇し、ターゲット41
の上面41a及び下面41bに圧力の衝撃波が印加され
ることになる。この衝撃波により、ターゲット41表面
に圧縮の残留応力が生ずる。そして、この圧縮の残留応
力により、ターゲット41の疲労強度が向上する。
【0006】このように、この従来例によって、金属性
のターゲット41の所望の部位に圧縮の残留応力を付与
することができる。従って、局部的に力がかかるクラン
クシャフトの曲り部分の疲労強度上昇等に好適である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このレ
ーザショック処理は、比較的新しい技術であり、実際に
処理を行ったデータ等の蓄積が少ない。そして、この従
来例の手法で、実際に各種の実験を行ったところ、十分
疲労強度が上昇されていない場合も多く生じた。そこ
で、このレーザショック処理について、鋭意研究の結
果、ターゲット41の上面41a及び下面41bに塗布
する塗料の厚さが不均一であると圧縮の残留応力の不均
一が生じ、ターゲット41の一部分において前記圧縮の
残留応力が不足すると、その部分で疲労強度が不足する
ことが分かった。
【0008】特に、ターゲット41の表面からより深く
まで効果を及ぼすために同一箇所に多数回レーザ光パル
スを照射する場合や、部分重複照射により大面積を連続
処理する場合には、各レーザ光パルスを照射する前にタ
ーゲット41の照射面に塗料を再塗布する。この場合、
1回のレーザ照射によってターゲット41上の塗料がす
べて蒸発するわけではないため、各レーザ光パルスを照
射する前に塗膜厚さを一定に制御することが困難であ
り、塗料の厚さに不均一が生じやすいことが分かった。
【0009】ターゲットの種類によっては、部位に応じ
て要求される残留応力が異なる場合があるが、従来例で
はこれに対処することができなかった。
【0010】また、従来例では、吸収コート材とオーバ
ーレイ42または43を塗布した後の両者をあわせた膜
厚を一定に保持することはできず、このためレーザ光パ
ルスの照射毎に焦点距離にずれが生じ、ターゲット41
への均一な残留応力付与を行うことができなかった。
【0011】さらに、塗料を塗布すると、これを乾燥す
る工程が必要であり、これを省略したいという要望があ
った。特に、処理を繰り返し行う場合には、乾燥工程を
省ければ処理がやりやすくなるため、この要望が大きか
った。
【0012】本発明は、上記問題点を解消することを課
題としてなされたものであり、ターゲット41の疲労強
度の向上が十分で処理面内での疲労強度のばらつきがほ
とんどないレーザショック処理装置及び方法を提供する
ことである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、レーザの照射
により光吸収材料を蒸発させ、この蒸発に基づく圧力上
昇を利用して、金属製ワークにショックを与えるレーザ
ショック処理方法において、金属製ワークの表面に、レ
ーザ光を吸収する吸収材料層を形成する工程であって、
上記吸収材料層をその厚さを計測しながら形成し、吸収
材料層が15〜150μmの厚さになるように制御する
工程と、形成された吸収材料層上を光透過部材層でカバ
ーする工程と、レーザ光パルスを上記光透過部材層を通
して、吸収材料層に照射する工程と、を含むことを特徴
とする。
【0014】また、本発明は、請求項1に記載のレーザ
ショック処理方法において、上記吸収材層の厚さを金属
製ワークの部位に応じて変更することを特徴とする。
【0015】また、本発明は、レーザの照射により光吸
収材料を蒸発させ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用し
て、金属製ワークにショックを与えるレーザショック処
理方法において、金属製ワークの表面に、レーザ光を吸
収する厚さ15〜150μmの吸収材料層を形成する工
程と、形成された吸収材料層上を光透過部材層でカバー
する工程と、レーザ光パルスを上記光透過部材層を通し
て、吸収材料層に照射する工程であって、照射するレー
ザ光の焦点距離を調整しながら所定の強度のレーザ光パ
ルスを照射する工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】また、本発明は、レーザの照射により光吸
収材料を蒸発させ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用し
て、金属製ワークにショックを与えるレーザショック処
理方法において、金属製ワークの表面に、レーザ光を吸
収する厚さ15〜150μmの吸収材料層を形成する工
程と、形成された吸収材料層上を光透過部材層でカバー
する工程と、レーザ光パルスを上記光透過部材層を通し
て、吸収材料層に照射する工程であって、上記レーザ光
パルスの照射位置を未照射部分が発生しないピッチで順
次移動させながら照射を行う工程と、を含むことを特徴
とする。
【0017】また、本発明は、レーザの照射により光吸
収材料を蒸発させ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用し
て、金属製ワークにショックを与えるレーザショック処
理方法において、金属製ワークの表面に、レーザ光を吸
収する光吸収材料からなり15〜150μmの厚さに
成された吸収フィルムを載置する工程と、載置された吸
収フィルム上に光透過部材で載置する工程と、レーザ光
パルスを上記光透過部材を通して、吸収フィルムに照射
する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】また、本発明は、レーザの照射により光吸
収材料を蒸発させ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用し
て、金属製ワークにショックを与えるレーザショック処
理方法において、金属製ワークの表面を化学研磨する工
程と、化学研磨された表面上に厚さ15〜150μmの
光吸収材料の層を形成する工程と、光吸収材料層上に光
透過部材を配置する工程と、光透過部材を通して、光吸
収材料にレーザ光パルスを照射する工程と、を含むこと
を特徴とする。
【0019】また、本発明は、レーザの照射により吸収
材料を蒸発させ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用し
て、金属製ワークにショックを与えるレーザショック処
理方法において、金属製ワークの表面に溶射皮膜を形成
する工程と、形成された溶射皮膜の上に吸収材料層を形
成する工程と、形成された吸収材料層上に厚さ15〜1
50μmの光透過部材層を形成する工程と、レーザ光パ
ルスを上記光透過部材層を通して、吸収材料層に照射す
る工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】また、本発明にかかる装置は、金属製ワー
クの表面にレーザ光を吸収する吸収材料層を15〜15
0μmの厚さに形成し、その上を光透過部材層でカバー
した後、レーザ光パルスを照射して吸収材料の蒸発に基
づいて金属製ワークにショックを与えるレーザショック
処理装置において、吸収材料層の厚さを検知する手段
と、検知した厚さに基づいて、吸収材料層を所望厚さに
形成する吸収材料層形成手段と、を備えることを特徴と
する。
【0021】
【作用】本発明によれば、吸収材料層の膜厚を検知しな
がら、膜厚を所望の厚さに形成する。そして、所望厚さ
の吸収材料層の表面がレーザ光パルスの衝撃により蒸発
し、この蒸発ガスが膨張する。ここで、光透過部材が光
透過部材の位置する方向への蒸発ガスの膨張を抑制す
る。このため、前記蒸発ガスの膨張による圧力の衝撃波
が金属製のワークの表面に印加されるが、この衝撃波は
膜厚に応じた大きさになり、金属性のワークに所望の大
きさの圧縮残留応力が生ずる。この結果、この金属性の
ワークの疲労強度を均一に向上させることができる。
【0022】また、部位に応じて塗膜の厚さを変更する
ことによって、金属性ワークにおける強度(例えば、耐
摩耗性)が必要な部位にこれに対応した残留応力を付与
することができる。
【0023】また、本発明によれば、吸収材料層と光透
過部材の両方をあわせた膜厚の変化によらず、レーザ照
射パルス毎にその焦点距離を調整するため、常に最適な
レーザパワー密度で処理ができる。
【0024】また、本発明によれば、金属性のワークの
表層部全体に、強度向上に最適な圧縮の残留応力分布を
付与することができるため、大面積のものでも疲労強度
を均一に向上させることができる。
【0025】また、本発明によれば、溶射皮膜を形成し
た後、この溶射皮膜に対し、レーザショック処理を行
う。従って、溶射皮膜の表面を荒らすことなく溶射皮膜
に圧縮の残留応力を付与することができる。従って、エ
ンジンのシリンダの内壁等の耐摩耗性を効果的に向上す
ることができる。
【0026】また、本発明の装置によれば、金属製のワ
ークに対し、第1の発明のレーザショック処理を行うこ
とができる。
【0027】
【実施例】 「第1実施例」次に、本発明の第1の実施例を図1〜図
5を参照して説明する。図1はこの実施例の装置構成の
概略を示し、図2は塗膜厚さと最表面の残留応力の関係
を示し、図3は照射ショット数と塗膜厚さの関係を示
す。また、図4は耐摩耗性と残留応力の関係を示し、図
5は耐摩耗性と塗膜厚さの関係を示す。
【0028】図1は、第1発明の装置の概略を示すもの
であり、レーザ発振器11(Qスイッチ付きYAGレー
ザ)より発せられたレーザを複数のミラー12、13、
14により順次反射させ、集光レンズ15(焦点距離f
=150mm)により収束させて、金属性ターゲット1
6表面に照射する。ターゲット16表面には、レーザ照
射前に、レーザの吸収率を促進し、レーザ吸収により蒸
発膨張する吸収コート材(黒色の塗膜(図示せず))
と、レーザ吸収によって蒸発膨張した塗膜ガスを閉じ込
め、ターゲット16表層部に衝撃波を生じさせるオーバ
ーレイ(図示せず)をこの順に塗布しておく。
【0029】ここで、塗膜厚さは、レーザ照射前の吸収
コート材の膜厚をセンサ17aを有する膜厚計17bで
計測する。そして、この計測結果をコンピュータ19に
供給する。このコンピュータ19は、塗料吹き付け制御
装置18を制御して、吸収コート材形成ノズル20から
の塗料吹き付け量をフィードバック制御して、その膜厚
を所定のものに制御する。
【0030】また、この例では、膜厚計17bとしてフ
ィッシャースコープ(商品名)を利用した。このフィッ
シャースコープは、電磁式の非破壊膜厚測定器で、磁性
金属上の非磁性被膜、絶縁被膜を測定するものである。
磁力線を発する測定用のプローブをターゲットに向ける
ことによってターゲットより発する磁力線の増減を検出
することで、プローブと磁性体との距離を検出し、塗膜
の厚さを測定することができる。他の形式の膜厚計を用
いても良い。
【0031】なお、乾燥機22は、乾燥空気を吹き付け
るものであって、吸収コート材およびオーバーレイを乾
燥させるためのものである。この乾燥機22からの乾燥
空気を吹き付けながら、吸収コート材およびオーバーレ
イを形成することによって、吸収コート材、オーバーレ
イの乾燥を促進し、所定の膜厚の塗膜形成を迅速に行う
ことができる。
【0032】ターゲット16には、アルミ合金A505
2,構造用炭素鋼S45C,調質処理(焼入れ焼戻し処
理)したクロム鋼(Scr430)を2種類の合計4つ
の材料を用いた。また吸収コート材は、樹脂(アルキッ
ド樹脂とニトロセルロースとの混合物)80wt%、添
加材(パラフィンワックス)11wt%及び顔料(カー
ボンと硫酸バリウムとの混合物)9wt%を使用し、吸
収コート材形成ノズル20より4kgf/cm2 の吹き
つけ空気圧で塗布した。オーバーレイは、ニトロセルロ
ースラッカー系のクリヤラッカーを使用し、オーバーレ
イ形成ノズル21より4kgf/cm2 の吹きつけ空気
圧で塗布した。表1に処理条件の詳細を示す。
【0033】
【表1】 図2は、塗膜厚さと最表面の残留応力の関係を示すもの
である。これより、A5052およびS45Cでは、塗
膜厚さ30〜60μm付近で残留応力が大きくなり、S
cr430では50〜100μm付近で圧縮の残留応力
が大きくなる。このように、圧縮の残留応力を最大にす
る最適の塗膜厚さが存在し、最適塗膜厚さはターゲット
16の材料の硬さが高くなるにつれて厚膜側へシフトし
ていることが認められた。なお、この時のレーザの照射
パワー密度は、2.0GW/cm2 である。
【0034】一方、図3に照射ショット数と塗膜厚さの
関係を示す。これより、本発明では、照射ショット数に
対する塗膜厚さの変動が±5%以内に収まっているのに
対し、従来例では、±40%も変動しているのが認めら
れた。言い換えれば、40%の塗膜厚さの変動は、図2
より約20kgf/mm2 の残留応力値の変動に相当す
ることがわかり、塗膜厚さの変動は疲労強度の低下に対
して大きく影響していることが推察できる。
【0035】したがって、塗膜厚さの最適制御によって
大きいかつ均一な圧縮の残留応力の付与が可能になるこ
とがわかる。
【0036】一方、ターゲットの種類によっては、場所
に応じて、残留応力を変更したい場合もある。例えば、
ある部品においては、使用状態において応力が集中する
部位があり、ここにおける残留応力を大きくしたいとい
う要求がある。また、部品によっては、他の部品と摺動
する部位に高い耐摩耗性を付与したいという要求があ
る。
【0037】本実施例によれば、上述のように、塗膜の
厚さを制御することで所望の残留応力が得られる。そこ
で、処理するターゲットの部位による要求レベル、例え
ば耐摩耗性の要求レベルに応じて塗膜厚さを制御するこ
とにより、残留応力の最適制御が行える。
【0038】図4は、ターゲットの部位による耐摩耗性
の要求レベルと、この耐摩耗性の要求レベルを得るのに
必要なターゲットの表面の残留応力の最適分布の一例を
示す図である。このように、耐摩耗性の要求レベルが大
きいAの領域では残留応力として−95kgf/m
2 、耐摩耗性の要求レベルが小さいB領域では残留応
力として−65kgf/mm2 、耐摩耗性の要求レベル
が中程度のC領域では−82kgf/mm2 が要求され
る。ターゲット表面における残留応力を図2の関係に基
づいて、塗膜の厚さに置き換えると、図5に示すよう
に、耐摩耗性のレベルと塗膜厚さの関係が得られる。す
なわち、耐摩耗性の要求レベルが大きいAの領域では塗
膜厚さ50μm、耐摩耗性の要求レベルが小さいB領域
では塗膜厚さ15μm、耐摩耗性要求レベルが中程度の
C領域では塗膜厚さ30μmが要求される。そこで、本
実施例により、要求される塗膜厚さを制御して、要求さ
れる最適塗膜厚さの塗膜を形成し、レーザショック処理
を行うことで、要求される残留応力分布を得ることがで
きる。
【0039】このように、本実施例により、塗膜厚を制
御することができるため、耐摩耗性の最適設計などのた
めの塗膜厚さの最適制御が可能になる。
【0040】「第2実施例」次に、本発明の第2の実施
例を図6〜図8を参照して説明する。図6は、この実施
例の構成例の概略を示し、図7はレーザパワー密度と最
表面の残留応力の関係を示し、図8は照射ショット数と
レーザパワー密度の関係を示す。
【0041】図6は、第2発明の装置の概略を示すもの
であり、レーザ発振器81、複数のミラー82,83,
84、金属性ターゲット86、吸収コート材形成ノズル
91、オーバーレイ形成ノズル92、センサ87a、膜
厚計87b、塗料吹き付け制御装置88、コンピュータ
89は、それぞれ図1の対応する部材と同一の構成を有
しており、同一に作用する。
【0042】そして、本実施例では、集光レンズ85が
モータ90bを有する焦点距離自動調整装置90aによ
って調整可能となっている。すなわち、本実施例では、
膜厚計87bで求められた塗膜およびオーバーレイの合
計の厚さがコンピュータ89に供給され、コンピュータ
89がこれらデータに基づいて、レーザ光が塗膜内で集
光される位置を演算算出する。そして、この演算結果に
基づいて、焦点距離自動調整装置90aがモータ90b
の回転を制御し、集光レンズ85のターゲット86に対
する位置を調整し、焦点距離を制御する。従って、常に
最適なレーザの照射パワーを塗膜に付与でき、これに基
づいて所定の衝撃をターゲットに印加することができ
る。なお、プローブの絶対位置と計測された塗膜厚さか
らレーザを集光する絶対的位置も検出することができ
る。
【0043】また、本実施例では上述と同様に膜厚を一
定に制御しているため、焦点距離の制御と合わせて効果
的なレーザショック処理が行える。
【0044】図7は、レーザパワー密度と最表面の残留
応力の関係を示すものであり、レーザパワー密度が2〜
15GW/cm2 の範囲では、レーザパワー密度を大き
くするほど大きな圧縮の残留応力を付与することができ
るが、レーザパワー密度が15GW/cm2 を越える
と、レーザパワー密度を大きくすると逆に圧縮の残留応
力が小さくなることがわかる。レーザパワー密度を大き
くすると逆に圧縮の残留応力が小さくなる現象をオーバ
ーピーニングといい、圧縮の残留応力のピーク値がター
ゲットの最表面からやや内側に移り、最表面では逆に圧
縮の残留応力が低下する現象のことである。
【0045】図8は、照射ショット数とレーザパワー密
度の関係を示すものであり、従来例では、レーザパワー
密度の狙い値(4.0GW/cm2 )に対して約18%
のレーザパワー密度の低下が認められた。これに対し、
本発明では、レーザパワー密度の低下を2%以下にする
ことができた。言い換えれば、18%のレーザパワー密
度の低下は図7より約4kgf/mm2 の残留応力の低
下に相当することがわかり、レーザパワー密度の低下は
疲労強度の低下に対して大きく影響していることが推察
される。したがって、レーザパワー密度の変動を抑制す
る制御によって、所望の残留応力を均一に付与できるこ
とがわかる。
【0046】図9は、自動車用エンジンの構成部品であ
るコネクティングロッドに適用した場合のレーザ照射ピ
ッチ幅と疲労強度の関係を示す特性図である。
【0047】図9中に示すように、照射ピッチ幅Pが
0.87d(dはレーザスポット径)を越える場合に
は、例えばP=1.0dの場合には、斜線で示すように
レーザ未照射部分が残存することにより処理後の疲労強
度はレーザ照射を行わない場合のそれと比較してほとん
ど差異は認められない。一方、照射ピッチ幅Pが0.8
7d以下の場合には、例えば、P=0.2dの場合に
は、レーザ未照射部分は残存せず、重複照射部の連続に
よりターゲットの表面からより深くまで効果を及ぼすこ
ととなり、大幅で処理面内均一な疲労強度向上が達成で
きた。
【0048】従って、照射ピッチ幅をレーザスポット径
の約0.87倍以下にすることにより、処理面内の変動
が少なく均一な疲労強度向上が可能になることがわか
る。
【0049】「第3実施例」図10は第3実施例の構成
の概略を示し、図11は第3実施例の塗料の膜厚を示
し、図12は第3実施例による残留応力を示す。
【0050】図10〜図12において、金属性ワーク1
11の平坦な図示上面111aに黒色ポリフィルム(厚
さ40μm)112が配置されている。なお、フィルム
112は後述する膜状レーザ光吸収材の一種である。
【0051】ワーク111は焼き入れ焼き戻し処理した
SCr430鋼である。またフィルム112の成分は、
樹脂(アルキッド樹脂とニトロセルロースとの混合物)
80wt%、添加材(パラフィンワックス)11wt%
及び顔料(カーボンと硫酸バリウムとの混合物)9wt
%であり、フィルム112の幅は約25mmである。フ
ィルム112は、第1リール115に巻かれていて、第
2リール116に順次巻き取られるように配置されてい
る。なお、115aは第1リール115の回転方向、1
16aは第2リール116の回転方向、117はフィル
ム112の移動方向を示す。
【0052】更に、光透過性部材としての透明なアクリ
ル板113がフィルム112の図示上面112a(ワー
ク111に対応する部分)に載置されている。アクリル
板113の図示水平方向の大きさは約40mm×25m
mである。118はこのアクリル板113に印加された
力(1〜3kgf/cm2 )の方向を示す。
【0053】レーザ光パルス114は、ネオジウムN
d;YAGレーザ光であり、波長が1.06μm、パル
スエネルギーが1.4J、パルス幅が10nsec、周
期が0.1秒、スポット径が3mm、パワー密度が2G
W/cm2 (圧力の衝撃波が発生するのに必要な最低の
パワー密度)である。このレーザ光パルス114は、ア
クリル板13を透過してフィルム112の上面112a
に照射される。
【0054】以上の構成によって、レーザ光パルス11
4をアクリル板113を介してフィルム112の上面1
12a(ワーク111に対応する部分)に照射すると、
フィルム112でレーザ光パルス114が吸収される。
この結果、フィルム112の上面112aが蒸発し、こ
の蒸発ガスが膨脹する。更に、アクリル板113の存在
により、図示上方への前記蒸発ガスの膨脹が抑制され
る。このため、圧力の急激な変動に伴い発生した衝撃波
がワーク111の上面111aに印加される。
【0055】この衝撃波により、ワーク111の上面1
11aに圧縮の残留応力が生ずる。また、この場合上述
の従来例のようなレーザ光吸収用塗料の塗布及び乾燥が
不要になる。更に、フィルム112が移動可能なので、
レーザ光パルス114のワーク111の同一箇所に対す
る多数回照射及びワーク111の大面積部分に対する連
続的な照射を効率よく行うことができる。すなわち、ア
クリル113を上方に退避した状態でフィルム112を
移動して、新しいフィルムによる処理を繰り返すことが
できる。
【0056】この場合、図11の折線aに示すように、
フィルム112の厚さ(塗膜厚さに相当する)が均一な
ので、図12の折線aに示すように、均一な残留応力が
発生する。このため、ワーク111の疲労強度が均一に
向上する。なお、残留応力の局部的な測定を行うため
に、径が0.15mmφのコリメータを用い、X線によ
り測定している(クロム管球使用)。また、図11の折
線b及び図12の折線bは上述の従来例の特性を示す。
このように、従来例ではワークの場所により塗料厚さが
異なり均一ではないので、ワークに付与される残留応力
が均一ではない。 「第4実施例」 図13は、本願の第4実施例を示す。図13にて、金属
性ワーク(テストピース)121は、化学研磨されたも
のである。化学研磨の条件は、研磨液がフッ化水素
(HF)モル/リットルと過酸化水素水(H
2モル/リットルとの混合液であり、研磨液温度は4
0℃であり、研磨時間は3分である。
【0057】ワーク121は水槽122内の蒸留水12
3中に配置され、ワーク121の上面121aには膜状
レーザ光吸収材としてレーザ光パルスを吸収する塗料
(前記フィルム112と同じ成分で、ワーク121の上
面121aに直接重ね塗りされて厚さが40μmであ
る。図示せず)が塗布されている。なお、水槽122
は、台124上に載置されている。
【0058】YAGレーザ125はレーザ光パルス12
5aを発生する。レーザ光パルス125aは、波長が
1.06μm、パルスエネルギーが1.4J、パルス幅
が10nsec、レーザパワー密度が5GW/cm2
ある。このレーザ光パルス125aは、第1ミラー12
6、第2ミラー127及び第3ミラー128により順次
反射され、凸レンズ(フォーカスレンズ)129により
収束されて、蒸留水123を介してワーク121の上面
121aの前記塗料に照射される。
【0059】以上の構成によって、まず、化学研磨によ
りワーク121の表面(上面121aを含む)の面粗度
が向上する。従って、この上に形成された塗料を均一な
厚さにすることができ、レーザ光パルス125aによっ
て生じる衝撃を均一なものにできる。
【0060】次に、ワーク121の上面121aに塗布
された前記塗料の表面がレーザ光パルス125aの衝撃
により蒸発し、この蒸発ガスが膨脹する。更に、蒸留水
123が、上述の第3実施例におけるアクリル板113
と同様な働きをする。この結果上述の第3実施例と同様
にワーク121に圧縮の残留応力を発生させることがで
きる。このため、ワーク121の疲労強度を著しく向上
させることができる。
【0061】「第5実施例」図14は本願の第5実施例
を示す。図14の上図は自動車のエンジンの構成部品で
あるコネクティングロッド131の平面を示し、図14
の下図はこのコネクティングロッド131の図示横方向
の各部分に対応した位置におけるエンジン作動時の応力
分布を示す。
【0062】図において、コネクティングロッド131
は、大端部132、コラム部133及び小端部134か
らなる。更に、大端部132には、キャップ136がボ
ルト137とナット138により固定されている。な
お、135は大端部132に形成された油穴である。
【0063】コネクティングロッド131は、所定形状
に機械加工後、大端部132の内面132a及び小端部
134の内面134aがマスキングされ、マスキングさ
れていない部分が化学研磨される。その後、応力が集中
しやすい大端部132とコラム部133との境の側面部
分、大端部132の油穴135近傍及び小端部134と
コラム部133の境の側面部分が以下の条件によりレー
ザショック処理される。なお、レーザ光パルスは、前記
第4実施例のものと同じであり、前記応力集中部位に照
射される。
【0064】膜状レーザ光吸収材としてのコート材であ
る塗料(厚さ40μm)の成分は前記第4実施例の塗料
の成分と同じである。この塗料はコネクティングロッド
131の上述のレーザショック処理部位に塗布される。
また、上述の第4実施例と同様に、蒸溜水が断熱固定の
ためのオーバーレイに使用されている。
【0065】図14の下図において、横軸はコネクティ
ングロッド131の図示横方向の各部の位置に対応して
いる。また、縦軸はエンジン作動時にコネクティングロ
ッド131に作用する応力分布を示す。
【0066】図15は、図14のコネクティングロッド
131を従来技術の方法で処理した場合と、第5実施例
の方法による場合との比較を示す。図において、比較例
1〜3は従来技術である。比較例1は機械加工のみの場
合であり、比較例2は機械加工後に化学研磨した場合で
あり、比較例3は機械加工した後にショットピーニング
した場合である。実施例は機械加工したのちに化学研磨
し、更にレーザショック処理した場合であり、面粗度が
良く、残留応力が大きい。また、疲労強度の測定は、機
械共振式の疲労試験機(30Hzで荷重の方向を107
回往復される疲労試験)によるものである。
【0067】表2は、これらの場合の面粗度と残留応力
(最表面での値)を示す。
【0068】
【表2】 表2の比較例1と比較例2の対比によって、コネクティ
ングロッド131の面粗度(十点平均粗さ)は、化学研
磨によって3.5μmRzまで向上する。更に、比較例
2と実施例との対比によって、この面粗度は、後工程で
実施されるレーザショック処理でも維持される。
【0069】比較例3と実施例との対比によって、レー
ザショック処理はショットピーニング処理と同等の残留
応力(最表面で−36kgf/mm2 )を付与できるこ
とがわかる。更に、比較例1と比較例3との対比によ
り、ショットピーニング処理では面粗度が劣化するが、
比較例2と実施例とを対比すると、レーザショック処理
では面粗度が劣化しないことがわかる。
【0070】なお、表2に示していないが、比較例2を
ショットピーニング処理した場合の面粗度及び残留応力
は、比較例1をショットピーニング処理した場合のもの
と同じである。
【0071】図15の疲労強度は、比較例1が1.5ト
ン、比較例2が2.4トン、比較例3が2.5トンに対
し、実施例が3.3トンと非常に優れている。
【0072】疲労試験において、比較例1〜3の破断位
置が、応力の集中する小端部134とコラム部133と
の境または油穴135であるのに対し、実施例の破断位
置は小端部134の内面134aである。このことは、
実施例において狙った部位が十分に強化されていること
を裏付けている。
【0073】実施例による疲労強度向上が比較例1に対
して1.8トン(120%増大)である。これは、比較
例2に示す面粗度向上に伴う疲労強度向上分0.9トン
(2.4トン−1.5トン)と比較例3に示す残留応力
の付与に伴う疲労強度向上分1.0トン(2.5トン−
1.5トン)の和にほとんど等しい。このことは、実施
例が面粗度の向上と圧縮の残留応力の付与という両方の
効果をともに引き出すことができたことを示唆するもの
である。
【0074】なお、上述の各実施例に限定されず、化学
研磨を行った後、上述の第1〜第4実施例における方法
を使用してレーザショック処理をすることもできる。
【0075】「第6実施例」次に、第6実施例につい
て、説明する。この第6実施例は、母材上に形成された
溶射皮膜の耐摩耗性を向上させるためにレーザショック
処理を利用するものである。
【0076】従来より、金属材料の表面の改質するため
に、表面に溶射(flame spraying)皮膜
の形成が行われている。そして、特開平5−27190
0号公報(JP−A−5271900)には、溶射皮膜
に対し、ショットピーニング処理を施すことによって、
溶射皮膜に圧縮の残留応力を付与し、溶射皮膜の母材に
対する密着力を高め、また気孔を減少させることが示さ
れている。しかし、ショットピーニング処理は、硬質粒
子(セラミック粒子)を溶射皮膜に衝突させて加圧する
ものであり、溶射皮膜の表面が荒れてしまうという問題
があった。
【0077】そこで、本実施例では、ショットピーニン
グに代えて、レーザショック処理を採用する。以下、本
実施例について、図面を参照して説明する。
【0078】本実施例では、車両の内燃機関に用いるア
ルミ合金製シリンダーブロックに溶射皮膜を形成し、こ
れをレーザショック処理する。なお、アルミ合金として
は、AC2C,A390等が採用される。
【0079】シリンダーブロックの溶射処理装置の説明
図を図16に、レーザショック処理装置の説明図を図1
7に、加工工程全体のフローチャートを図18に示す。
【0080】溶射処理は、図16に示すように、シリン
ダーブロック201のボア内表面202に対し、溶射ノ
ズル213から粉末を溶射することによって行う。溶射
ノズル213は、図16Aに示すように、内部が先細り
形状に形成された金属製のケーシング215の中心にニ
ードル状のタングステン電極216を配設置した構成を
有している。そして、ケーシング215の基端側にはガ
ス流入口215a、先端側には粉末流入口215bが設
けられ、先端にはノズル穴215cが設けられている。
【0081】このような溶射ノズル213により、ガス
をガス流入口215aから導入し、ケーシング215内
を高速で流通させ、粉末流入口215bから粉末212
を供給すると、ケーシング215の内部が、先細り形状
になっているため、高速のガス流に粉末212が吸い込
まれる。一方、タングステン電極216とケーシング2
15との間には、所定の高周波電圧が印加されており、
ノズル先端部分において、プラズマが発生し、粉末を含
有したガス流がプラズマジェット214として、噴射さ
れる。
【0082】そして、溶射ノズル213の先端を所望の
方向に向けることによって、所望の部位に溶射すること
ができる。この例では、溶射ノズル213を回転すると
ともに、上下方向に移動することによって、シリンダブ
ロック201の内周面に全体に溶射を行っている。
【0083】また、レーザショック処理装置は、図17
に示すように、レーザ光源221と、このレーザ光源か
らのレーザ光を反射するミラー222aと、集光レンズ
223とミラー222bを有している。そして、レーザ
光源221からのレーザ光をミラー222a、集光レン
ズ223、ミラー222bを介し、シリンダブロック2
01の内表面202の所定の部分203に照射する。
【0084】一方、シリンダブロック201の内表面2
02の部位203には、吸収コートとして黒色塗料が塗
布され、その上に光透過性のオーバーレイが設けられて
おり、レーザの照射によって、黒色塗料が蒸発して、レ
ーザショック処理が行われる。
【0085】次に、加工処理について、図18に基づい
て説明する。まず、シリンダブロックの大まかな形状を
有する粗形材に対し、粗い穴明け処理(ボア荒加工)を
行い、続いて明けられた穴に対し中程度仕上げ加工を行
う。そして、洗浄した後、溶射膜の密着力向上のためシ
ョットブラスト処理をする。
【0086】このようにして、ショットブラスト処理を
実施したボア内面にプラズマ溶射を行う。粉末として
は、例えば、Al−15%含有Si粉末(粒子径150
0メッシュ以下)とFeー0.8%含有C粉末(粒子径
1500メッシュ以下)を1:1の比率で混合した混合
粉末を用いる。また、溶射層の厚みは、例えば0.5m
mとする。
【0087】さらに、シリンダーブロック201の精度
維持のために、処理温度は150℃以下に設定する。ま
た、溶射材の粉末の粒子径を10μm以下にして、溶射
ノズル213からのプラズマジェット214中の溶融粉
末粒子の流速を上昇させる。これによって、得られる溶
射層のシリンダーブロック201に対する密着性と耐剥
離性を確保する。
【0088】そして、ボア内表面について仕上げ加工を
行った後、溶射皮膜に対しレーザショック処理を施し、
溶射皮膜に残留応力を付与し、耐摩耗性を向上する。
【0089】このレーザショック処理は、ボア内周面2
02で耐摩耗性が要求される部位203について、吸収
コート材およびオーバーレイを塗布した後、レーザパル
スを照射して行う。
【0090】ここで、このレーザショック処理は、例え
ば次のような条件で行う。レーザ光として、波長1.0
6μm、パルスエネルギー1.4J、パルス幅10ns
ecのNd:YAGレーザを用いる。レーザのスポット
径は、レーザパワー密度が2GW/cm2 となるように
ミラー222a,222b、集光レンズ223によっ
て、3mmになるように調整する。黒色塗料は樹脂(ア
ルキッド樹脂、ニトロセルロース)80wt%、添加剤
(パラフィンワックス)11wt%、顔料(カーボン、
硫酸バリウム)9wt%の成分とし、4kgf/cm2
程度の吹き付け空気圧で塗布した。塗布量は厚さ50μ
mとした。また、オーバーレイは、ニトロセルロースラ
ッカー系のクリアラッカーを使用し、4kgf/cm2
の空気圧で塗布した。
【0091】ここで、黒色塗料の厚さは、上述の実施例
に示した装置によって、フィードバック制御し、正確に
制御することが好適である。さらに、上述の第1〜第5
のいずれの実施例の方法でレーザショック処理を行って
もよい。
【0092】このようにして、ボアの内表面のレーザシ
ョック処理が終了した場合には、塗料などを除去した後
砥石によってホーニングをして、内表面の仕上げを行
う。
【0093】図19に、溶射後のシリンダーブロックの
ボア変形量を示す。ここで、ボア円周面内におけるボア
直径の最大値と最小値の差をボア変形量とした。このよ
うに、本発明によれば、変形量を0.05mmとするこ
とができる。なお、図19に示した比較例は、溶射を行
った後に、処理温度を200℃にまで上昇して、溶射皮
膜の密着性の改善を行った例である。このように、処理
温度を200℃にすると変形量が大きくなる。従って、
本実施例のように、処理温度を150℃以下に設定する
ことによって、変形量を小さくできることが分かる。
【0094】図20に溶射皮膜のせん断密着強度、図2
1に溶射皮膜の気孔率を示す。本発明では、溶射粒子の
径を10μm以下にしたため、投鋲硬化が増大し、緻密
化と共に、溶射皮膜が緻密化し、せん断密着強度を8k
gf/mm2 と大きなものにすることができ、また気孔
率を約2%と低くできる。比較例は、比較的大きな粒子
径の粉末を使用した例であり、この場合にはせん断密着
強度が3kgf/mm2 程度と小さく、また気孔率は約
5%と大きくなっている。
【0095】さらに、溶射皮膜の形成に当たって、初期
は粒子径10μmのものを用い、その後粒子径3〜5μ
mのものを使用することによって、粒子径の大きなもの
と、小さなものが組み合わされ、母材の表面への密着力
をより向上することができる。
【0096】図22は、溶射皮膜の残留応力を示したも
のであり、本実施例のレーザショック処理によって、−
17kgf/mm2 という大きな圧縮の残留応力を溶射
皮膜に付与することができることが分かる。残留応力が
大きい程耐摩耗性に優れるため、本実施例によって、大
きな耐摩耗性が得られる。さらに、レーザショック処理
では、塗膜の蒸発によって、衝撃波を得るため、ボア内
表面の面粗度に対する悪影響はほとんどない。そこで、
精度の高い面粗度を維持したまま、耐摩耗性を大きく改
善することができる。
【0097】
【発明の効果】本発明によれば、吸収材料層の膜厚を検
知しながら、均一に形成する。そして、均一な厚さの吸
収材料層の表面がレーザ光パルスの衝撃により蒸発し、
この蒸発ガスが膨張する。ここで、光透過部材が光透過
部材の位置する方向への蒸発ガスの膨張を抑制する。こ
のため、前記蒸発ガスの膨張による圧力の衝撃波が金属
製のワークの表面に印加されるが、この衝撃波が均一な
大きさになり、金属性のワークに均一な圧縮の残留応力
が生ずる。この結果、この金属性のワークの疲労強度を
均一に向上させることができる。
【0098】また、部位に応じて塗膜の厚さを変更する
ことによって、金属性ワークにおける強度(例えば、耐
摩耗性)が必要な部位にこれに対応した残留応力を付与
することができる。
【0099】また、本発明によれば、吸収材料層と光透
過部材の両方をあわせた膜厚の変化によらず、レーザ照
射パルス毎にその焦点距離を調整するため、常に最適な
レーザパワー密度で処理ができる。
【0100】また、本発明によれば、金属性のワークの
表層部全体に、強度向上に最適な圧縮の残留応力分布を
付与することができるため、大面積のものでも疲労強度
を均一に向上させることができる。
【0101】また、本発明によれば、溶射皮膜を形成し
た後、この溶射皮膜に対し、レーザショック処理を行
う。従って、溶射皮膜の表面を荒らすことなく溶射皮膜
に圧縮の残留応力を付与することができる。従って、エ
ンジンのシリンダの内壁等の耐摩耗性を効果的に向上す
ることができる。
【0102】また、本発明の装置によれば、金属製のワ
ークに対し、第1の発明のレーザショック処理を行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例の構成の概略を示す図である。
【図2】塗膜厚さと残留応力の関係を示す図である。
【図3】照射ショット数と塗膜厚さの関係を示す図であ
る。
【図4】耐摩耗性と残留応力の関係を示す図である。
【図5】耐摩耗性と塗膜厚さの関係を示す図である。
【図6】第2の実施例の構成の概略を示す図である。
【図7】レーザパワー密度と最表面の残留応力との関係
を示す図である。
【図8】照射ショット数とレーザパワー密度の関係を示
す図である。
【図9】照射ピッチ幅と疲労強度の関係を示す図であ
る。
【図10】第3実施例の構成を示す図である。
【図11】第3実施例の実施条件を示す図である。
【図12】第3実施例の特性を示す図である。
【図13】第4実施例の構成を示す図である。
【図14】第4実施例のワークの位置と応力の関係を示
す図である。
【図15】第4実施例の特性を示す図である。
【図16】溶射処理の模式図であり、図16Aは、溶射
ノズルの先端部の拡大図である。
【図17】レーザショック処理の模式図である。
【図18】シリンダーブロックの加工工程を示すフロー
チャートである。
【図19】シリンダブロックのボア変形量を示す図であ
る。
【図20】溶射皮膜のせん断密着強度を示す図である。
【図21】溶射皮膜気孔率を示す図である。
【図22】溶射皮膜の残留応力を示す図である。
【図23】従来の構成を示す図である。
【符号の説明】
11 レーザ発振器 12,13,14 ミラー 15 集光レンズ 16 ターゲット 17a センサ 17b 膜厚計 18 塗料吹き付け制御装置 19 コンピュータ 20 吸収コート材形成ノズル 21 オーバーレイ形成ノズル 22 乾燥機
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−120716(JP,A) 特開 平6−151126(JP,A) 特開 平5−231825(JP,A) 特開 平5−96387(JP,A) 特開 昭63−72497(JP,A) 特開 平6−220503(JP,A) 特開 平3−107414(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/00 B23K 26/18

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザの照射により光吸収材料を蒸発さ
    せ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用して、金属製ワー
    クにショックを与えるレーザショック処理方法におい
    て、 金属製ワークの表面に、レーザ光を吸収する吸収材料層
    を形成する工程であって、上記吸収材料層をその厚さを
    計測しながら形成し、吸収材料層が15〜150μmの
    厚さになるように制御する工程と、 形成された吸収材料層上を光透過部材層でカバーする工
    程と、 レーザ光パルスを上記光透過部材層を通して、吸収材料
    層に照射する工程と、 を含むことを特徴とするレーザショック処理方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のレーザショック処理方
    法において、 上記吸収材層の厚さを金属製ワークの部位に応じて変更
    することを特徴とするレーザショック処理方法。
  3. 【請求項3】 レーザの照射により光吸収材料を蒸発さ
    せ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用して、金属製ワー
    クにショックを与えるレーザショック処理方法におい
    て、 金属製ワークの表面に、レーザ光を吸収する厚さ15〜
    150μmの吸収材料層を形成する工程と、 形成された吸収材料層上を光透過部材層でカバーする工
    程と、 レーザ光パルスを上記光透過部材層を通して、吸収材料
    層に照射する工程であって、照射するレーザ光の焦点距
    離を調整しながら所定の強度のレーザ光パルスを照射す
    る工程と、 を含むことを特徴とするレーザショック処理方法。
  4. 【請求項4】 レーザの照射により光吸収材料を蒸発さ
    せ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用して、金属製ワー
    クにショックを与えるレーザショック処理方法におい
    て、 金属製ワークの表面に、レーザ光を吸収する厚さ15〜
    150μmの吸収材料層を形成する工程と、 形成された吸収材料層上を光透過部材層でカバーする工
    程と、 レーザ光パルスを上記光透過部材層を通して、吸収材料
    層に照射する工程であって、上記レーザ光パルスの照射
    位置を未照射部分が発生しないピッチで順次移動させな
    がら照射を行う工程と、 を含むことを特徴とするレーザショック処理方法。
  5. 【請求項5】 レーザの照射により光吸収材料を蒸発さ
    せ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用して、金属製ワー
    クにショックを与えるレーザショック処理方法におい
    て、 金属製ワークの表面に、レーザ光を吸収する光吸収材料
    からなり5〜150μmの厚さに形成された吸収フィル
    ムを載置する工程と、 載置された吸収フィルム上に光透過部材で載置する工程
    と、 レーザ光パルスを上記光透過部材を通して、吸収フィル
    ムに照射する工程と、 を含むレーザショック処理方法。
  6. 【請求項6】 レーザの照射により光吸収材料を蒸発さ
    せ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用して、金属製ワー
    クにショックを与えるレーザショック処理方法におい
    て、 金属製ワークの表面を化学研磨する工程と、 化学研磨された表面上に厚さ15〜150μmの光吸収
    材料の層を形成する工程と、 光吸収材料層上に光透過部材を配置する工程と、 光透過部材を通して、光吸収材料にレーザ光パルスを照
    射する工程と、 を含むことを特徴とするレーザショック処理方法。
  7. 【請求項7】 レーザの照射により吸収材料を蒸発さ
    せ、この蒸発に基づく圧力上昇を利用して、金属製ワー
    クにショックを与えるレーザショック処理方法におい
    て、 金属製ワークの表面に溶射皮膜を形成する工程と、 形成された溶射皮膜の上に厚さ15〜150μmの吸収
    材料層を形成する工程と、 形成された吸収材料層上に光透過部材層を形成する工程
    と、 レーザ光パルスを上記光透過部材層を通して、吸収材料
    層に照射する工程と、 を含むことを特徴とするレーザショック処理方法。
  8. 【請求項8】 金属製ワークの表面にレーザ光を吸収す
    る吸収材料層を形成し、その上を光透過部材層でカバー
    した後、レーザ光パルスを照射して吸収材料の蒸発に基
    づいて金属製ワークにショックを与えるレーザショック
    処理装置において、 吸収材料層の厚さを検知する検知手段と、 検知した厚さに基づいて、吸収材料層を15〜150μ
    mの厚さに形成する吸収材料層形成手段と、 を備えることを特徴とするレーザショック処理装置。
JP29340994A 1993-12-07 1994-11-28 レーザショック処理方法および装置 Expired - Fee Related JP3156530B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29340994A JP3156530B2 (ja) 1993-12-07 1994-11-28 レーザショック処理方法および装置

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30666493 1993-12-07
JP5-306664 1994-08-24
JP6-199278 1994-08-24
JP19927894 1994-08-24
JP29340994A JP3156530B2 (ja) 1993-12-07 1994-11-28 レーザショック処理方法および装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08112681A JPH08112681A (ja) 1996-05-07
JP3156530B2 true JP3156530B2 (ja) 2001-04-16

Family

ID=27327623

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29340994A Expired - Fee Related JP3156530B2 (ja) 1993-12-07 1994-11-28 レーザショック処理方法および装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3156530B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08267267A (ja) * 1995-03-29 1996-10-15 Mazda Motor Corp レーザ熱処理装置および熱処理方法
DE10037053C2 (de) * 2000-07-29 2002-06-13 Mtu Aero Engines Gmbh Verfahren und Vorrichtung zum Plasmaimpulsverfestigen eines metallischen Bauteils
US8330070B2 (en) 2006-05-11 2012-12-11 Kabushiki Kaisha Toshiba Laser shock hardening method and apparatus
US20080241546A1 (en) * 2007-03-30 2008-10-02 General Electric Company Machining features in laser shock peened regions
JP4977234B2 (ja) * 2010-06-02 2012-07-18 株式会社東芝 レーザ衝撃硬化処理方法および装置
CN104357648B (zh) * 2014-10-13 2017-04-05 中国航空工业集团公司北京航空制造工程研究所 一种激光冲击强化方法及装置
CN108032222B (zh) * 2017-12-29 2019-04-12 华中科技大学 一种砂轮双激光修整装置及修整方法
CN108588399B (zh) * 2018-04-28 2020-02-21 江苏大学 一种小孔构件激光冲击强化选取工艺参数的特征参量控制方法
JP2022053168A (ja) 2020-09-24 2022-04-05 浜松ホトニクス株式会社 レーザ加工方法及びレーザ加工装置
JP2022053166A (ja) 2020-09-24 2022-04-05 浜松ホトニクス株式会社 レーザ加工方法及びレーザ加工装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08112681A (ja) 1996-05-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR0165905B1 (ko) 레이져 쇽크 처리 방법
JP3156530B2 (ja) レーザショック処理方法および装置
US7868268B1 (en) Laser peening process and apparatus using a liquid erosion-resistant opaque overlay coating
CN100469900C (zh) 一种基于激光冲击波技术孔壁的强化方法和装置
US5767479A (en) Laser beam machining apparatus and corresponding method which employs a laser beam to pretreat and machine a workpiece
Bandyopadhyay et al. A statistical approach to determine process parameter impact in Nd: YAG laser drilling of IN718 and Ti-6Al-4V sheets
RU2445378C2 (ru) Способ получения износостойкой поверхности металлов и их сплавов (варианты)
CN107267976B (zh) 一种获得耐磨耐蚀钛合金工件的激光组合加工工艺
Low et al. Spatter-free laser percussion drilling of closely spaced array holes
JPH0651913B2 (ja) 圧延用ロールの表面加工方法及びその装置並びに該方法により製造されるプレス加工用金属薄板とその製造方法
US6548782B2 (en) Overlay control for laser peening
Qutaba et al. A review on peening processes and its effect on surfaces
CN105755215B (zh) 一种发动机曲轴的制造方法及其激光冲击强化装置
Tan et al. Effects of different mechanical surface treatments on surface integrity of TC17 alloys
Hassanin et al. Fluidised bed machining of metal additive manufactured parts
CN107557564A (zh) 一种提高湿式气缸套抗穴蚀能力的装置与方法
CN105862028A (zh) 一种汽车发动机曲轴的激光修复再制造方法
CN111575477B (zh) 一种激光冲击强化能量密度动态调控装置及方法
Wang et al. Experimental study on laser shock processing of brass
Radek et al. Laser forming of steel tubes
Ahmed Obeidi Laser processing of metallic surfaces for controlled micro-texturing and metallic bonding
Christoulis et al. Laser-Assisted Cold Spray
CN114990323B (zh) 磁水双约束脉冲激光冲击强化方法及系统
WO2023245850A1 (zh) 一种超声辅助铝合金板材激光冲击成形方法及系统
JPS62158588A (ja) 冷間圧延ロ−ルのレ−ザダル加工方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080209

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090209

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100209

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees