図1を参照すると、本考案に係る複合バランは、複数個のバランBL1〜BL3と、少なくとも1つのキャパシタC11〜C13と、直流電圧供給端子T20とを含む。バランBL1〜BL3は、図示では3個であるが、2個以上あればよい。キャパシタC11〜C13は、基本的には、バランBL1〜BL3の個数に対応する。
バランBL1〜BL3及びキャパシタC11〜C13は、1つのチップ1内に内蔵されている。このようなチップ1は、通常は、6面体状のセラミック誘電体で構成され、その内部に必要な導体パターンを層状に埋設し、層間に配置された貫通電極によって、導体パターンを導通させることによって得られる。
バランBL1〜BL3のそれぞれは、第1乃至第4結合線路(L11〜L14)〜(L31〜L34)と、第1平衡端子(T2、T5、T8)と、第2平衡端子(T1、T6、T9)と、不平衡端子(T15、T18、T12)とを含んでいる。
バランBL1〜BL3は、基本的な構成が互いに一致している。もっとも、共振周波数は互いに異なるので、結合線路のパターン及び長さなどは異なる。バランBL1〜BL3について、個別的に説明すると次のとおりである。まず、バランBL1において、第1結合線路L11は、一端が不平衡端子T18に接続されており、第2結合線路L12は、一端が第1結合線路L11の他端に接続されている。第3結合線路L13は、第1結合線路L11に電磁結合し、一端が第1平衡端子T2に接続され、他端が直流電圧供給端子T20に接続されており、第4結合線路L14は、第2結合線路L12に電磁結合し、一端が第2平衡端子T1に接続され、他端が直流電圧供給端子T20に接続されている。第1乃至第4結合線路L11〜L14は、対象とする周波数信号の波長λに対して、λ/4の線路長を有するストリップラインとして構成される。第1結合線路L11と第3結合線路L13は、セラミック誘電体層を間に挟んで互いに対向し、それによって、電磁結合を生じさせる。第2結合線路L12と第4結合線路L14も同様であって、セラミック誘電体層を間に挟んで互いに対向し、それによって、電磁結合を生じさせる。
キャパシタC11は、一端が、直流電圧供給端子T20に接続され、他端が接地端子に導かれている。キャパシタC11は、チップを構成するセラミック誘電体層を挟んで互いに対向する少なくとも一対の電極を含んでおり、セラミック誘電体層の誘電率、厚み、及び電極面積によって定まる。
次に、バランBL2において、第1結合線路L21は、一端が不平衡端子T15に接続されており、第2結合線路L22は、一端が第1結合線路L21の他端に接続されている。第3結合線路L23は、第1結合線路L21に電磁結合し、一端が第1平衡端子T5に接続され、他端が直流電圧供給端子T20に接続されている。第4結合線路L24は、第2結合線路L22に電磁結合し、一端が第2平衡端子T6に接続され、他端が直流電圧供給端子T20に接続されている。第1乃至第4結合線路L21〜L24も、対象とする周波数信号の波長λに対して、λ/4の線路長を有するストリップラインとして構成される。第1結合線路L21と第3結合線路L23は、誘電体層を間に挟んで互いに対向し、それによって、電磁結合を生じさせる。第2結合線路L22と第4結合線路L24も同様であって、誘電体層を間に挟んで互いに対向し、それによって、電磁結合を生じさせる。
キャパシタC12は、一端が、直流電圧供給端子T20に接続され、他端が接地端子に導かれている。キャパシタC12は、チップを構成するセラミック誘電体層を挟んで互いに対向する少なくとも一対の電極を含んでおり、セラミック誘電体層の誘電率、厚み、及び電極面積によって定まる。
更に、バランBL3において、第1結合線路L31は、一端が不平衡端子T12に接続されており、第2結合線路L32は、一端が第1結合線路L31の他端に接続されている。第3結合線路L33は、第1結合線路L31に電磁結合し、一端が第1平衡端子T8に接続され、他端が直流電圧供給端子T20に接続されており、第4結合線路L34は、第2結合線路L32に電磁結合し、一端が第2平衡端子T9に接続され、他端が直流電圧供給端子T20に接続されている。第1乃至第4結合線路L31〜L34は、対象とする周波数信号の波長λに対して、λ/4の線路長を有するストリップラインとして構成される。第1結合線路L31と第3結合線路L33は、セラミック誘電体層を間に挟んで互いに対向し、それによって、電磁結合を生じさせる。第2結合線路L32と第4結合線路L34も同様であって、セラミック誘電体層を間に挟んで互いに対向し、それによって、電磁結合を生じさせる。
キャパシタC13は、一端が、直流電圧供給端子T20に接続され、他端が接地端子に導かれている。キャパシタC13は、チップを構成するセラミック誘電体層を挟んで互いに対向する少なくとも一対の電極を含んでおり、セラミック誘電体層の誘電率、厚み、及び電極面積によって定まる。
上述したように、本考案に係る複合バランは、その主要部である複数個のバランBL1〜BL3は、1つのチップ1内に内蔵されているから、複数のバランBL1〜BL3を携帯電話などの移動体通信機、無線LANなどに組み込む場合には、1個分の実装面積をプリント基板上に確保すればよく、小型化の要請に応えることができる。
複数のバランBL1〜BL3のそれぞれにおいて、第1結合線路(L11、L21、L31)は、一端が不平衡端子(T18、T15、T12)に接続されており、第2結合線路(L12、L22、L32)は、一端が第1結合線路(L11、L21、L31)の他端に接続されており、第3結合線路(L13、L23、L33)は、第1結合線路(L11、L21、L31)に電磁結合され、一端が第1平衡端子(T2、T5、T8)に接続され、第4結合線路(L14、L24、L34)は、第2結合線路(L12、L22、L32)に電磁結合され、一端が第2平衡端子(T1、T6、T9)に接続されているから、第3及び第4結合線路(L13、L23、L33)、(L14、L24、L34)を平衡伝送線路とし、第1及び第2結合線路(L11、L21、L31)、(L12、L22、L32)を不平衡伝送線路とする複合バランが得られる。
第3結合線路(L13、L23、L33)は、他端が直流電圧供給端子T20に接続されており、第4結合線路(L14、L24、L34)は、他端が直流電圧供給端子T20に接続されているから、電力増幅器や、無線周波数集積回路に直流電圧を供給する必要がある場合に、複合バランを通して直流電圧を供給しえる使い勝手のよい複合バランが得られる。
更に、一端が直流電圧供給端子T20に接続され、他端が接地端子に導かれているキャパシタC11〜C13を含んでいるから、電源供給回路を経由して侵入するノイズをキャパシタC11〜C13によって吸収し得る。しかも、このキャパシタC11〜C13は、複数個のバランBL1〜BL3と共に、1つのチップ1内に内蔵されているから、複合バランにキャパシタC11〜C13を外付けする場合と対比して、ユーザ側の実装作業が容易になるとともに、回路基板上で見た実装面積が縮小される。
次に、図2を参照して、本考案に係る複合バランの他の実施の形態を説明する。図2において、図1に現れた構成部分と同一性のある構成部分については、同一の参照符号を付し、重複説明は、これを省略する。この実施の形態の特徴は、キャパシタC1が、複数のバランBL1〜BL3において、共用されていることである。即ち、バランBL1〜BL3は複数であるが、キャパシタC1は、回路上、一個だけである。複数個のキャパシタを並列接続、または、直列接続する場合でも、電気回路上、等価的に一個のキャパシタとして表現される場合は、ここにいう一個のキャパシタである。
上記構成であれば、複数個のバランBL1〜BL3を備えながら、キャパシタC1は一個で済むので、小型化をより進展させることができる。また、実際に製品化する場合の積層構造を単純化し、小型化及びコストダウンに資することができる。
次に、図3を参照して、図2に示した複合バランの使用した一例を説明する。図1に示した複合バランも同様の状態で用いることができる。バランBL1〜BL3の不平衡端子(T18、T15、T12)のそれぞれには、電力増幅器PA1〜PA3が接続されており、対の平衡端子(T2、T1)、(T5、T6)及び(T8、T9)のそれぞれには、無線周波数集積回路RFIC1〜RFIC4が接続されている。バランBL1〜BL3のそれぞれは、平衡信号を扱う無線周波数集積回路RFIC1〜RFIC4と、不平衡信号を扱う電力増幅器PA1〜PA3との間に介在し、平衡−不平衡変換器として動作する。
この場合、既に述べたように、本考案に係る複合バランでは、第3結合線路(L13、L23、L33)は、他端が直流電圧供給端子T20に接続されており、第4結合線路(L14、L24、L34)は、他端が直流電圧供給端子T20に接続されているから、直流電圧を供給する必要のある電力増幅器PA1〜PA3及び無線周波数集積回路RFIC1〜RFIC4に対し、複合バランを通して直流電圧Vccを供給しえる。
更に、一端が直流電圧供給端子T20に接続され、他端が接地端子GROUNDに導かれているキャパシタC1を含んでいるから、電源供給回路を経由して侵入するノイズをキャパシタC1によって吸収し得る。しかも、このキャパシタC1は、複数個のバランBL1〜BL3と共に、1つのチップ1内に内蔵されているから、複合バランにキャパシタC1を外付けする場合と対比して、ユーザ側の実装作業が容易になるとともに、回路基板上で見た実装面積が縮小される。
次に、図2に図示した複合バランについて、図4〜図7を参照し、その具体的な積層構造を説明する。まず、図4を参照すると、誘電体層LY1〜LY18を順次に積層した構造が記載されている。誘電体層LY1〜LY18は、何れも、セラミック誘電体シートを積層した後焼成して一体化されたもので、実際には図示の分解された状態にはない。図4は、単に構造を説明するために各層に分解して示したものである。
まず、最下層の誘電体層LY1は、図4にも拡大して示すように、下面の周辺部に端子T1〜T20が所定の間隔を隔てて配置されている。端子T1〜T20は、誘電体層LY1の下面に限って形成してあるので、複合バランを基板に実装する場合、接続用半田のフィレットが形成されることがない。このため、実装面積が縮小される。
端子T1〜T20のうち、端子T1はバランBL1の第2平衡端子、端子T2は同じく第1平衡端子、端子T5、T6はバランBL2の第1及び第2平衡端子、端子T8、T9はバランBL3の第1及び第2平衡端子を、それぞれ構成する。また、端子T18はバランBL1の不平衡端子、端子15はバランBL2の不平衡端子、端子12はバランBL3の不平衡端子である。残りの端子T3、T4、T7、T10、T11、T13、T14、T16、T17及びT19は、接地端子として用いられる。端子T20は直流電圧供給端子である。
次に、誘電体層LY1の上に順次に重なる誘電体層LY2、LY3及びLY4は、図2に示したキャパシタC1を構成する。キャパシタC1は、図6にも拡大して示すように、中間部の誘電体層LY3の表面に形成された電極E1と、その下に位置する誘電体層LY2の表面に形成された接地電極G1との間に生じるキャパシタC01、及び、誘電体層LY3の電極E1とその上に位置する誘電体層LY4の表面に形成された接地電極G2との間に生じるキャパシタC02を並列接続した構造となる。従って、キャパシタC1のキャパシタンスC1は、C1=C01+C02となる。
誘電体層LY4の上に位置する誘電体層LY5は、貫通電極Hの群を設けたスペーサ層であり、その上に、配線パターン群P1を有する誘電体層LY6及び配線パターン群P2を有する誘電体層LY7が順次に重なる。
誘電体層LY7の上に順次に重なる誘電体層LY8〜LY15は、バランBL1〜BL3の第1結合線路〜第4結合線路を構成するために用いられる。その詳細は、図7に図示されている。図7を参照するに、まず、誘電体層LY8の一面上には、バランBL1の第4結合線路L14を構成するストリップ状導体及び同じく第3結合線路L13を構成するストリップ状導体が、間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。第3結合線路L13の横方向には、間隔をへだてて、バランBL2の第3結合線路L23を構成するストリップ状導体及び同じく第4結合線路L24を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。更に、バランBL2の第4結合線路L24の横方向には、間隔をへだてて、バランBL3の第3結合線路L33を構成するストリップ状導体及び同じく第4結合線路L34を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
次に、誘電体層LY8の上に重なる誘電体層LY9の一面上には、バランBL1の第2結合線路L12を構成するストリップ状導体及び同じく第1結合線路L11を構成するストリップ状導体が、間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。第1結合線路L11の横方向には、間隔をへだてて、バランBL2の第1結合線路L21を構成するストリップ状導体及び同じく第2結合線路L22を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。更に、バランBL2の第2結合線路L22の横方向には、間隔をへだてて、バランBL3の第1結合線路L31を構成するストリップ状導体及び同じく第2結合線路L32を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY8と誘電体層LY9との間では、バランBL1に関して、第1結合線路L11と第3結合線路L13、及び、第2結合線路L12と第4結合線路L14が、誘電体層LY9を介して、電磁結合することになる。バランBL2に関しては、第1結合線路L21と第3結合線路L23、及び、第2結合線路L22と第4結合線路L24が、誘電体層LY9を介して、電磁結合する。更に、バランBL3に関しては、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY9を介して、電磁結合する。
次に、誘電体層LY9の上に重なる誘電体層LY10の一面上には、バランBL1の第4結合線路L14を構成するストリップ状導体、及び、同じく第3結合線路L13を構成するストリップ状導体が、間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。第3結合線路L13の横方向には、間隔をへだてて、バランBL2の第3結合線路L23を構成するストリップ状導体、及び、同じく第4結合線路L24を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。更に、バランBL2の第4結合線路L24の横方向には、間隔をへだてて、バランBL3の第3結合線路L33を構成するストリップ状導体、及び、同じく第4結合線路L34を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY9と誘電体層LY10との間では、バランBL1に関しては、第1結合線路L11と第3結合線路L13、及び、第2結合線路L12と第4結合線路L14が、誘電体層LY10を介して、電磁結合することになる。バランBL2に関しては、第1結合線路L21と第3結合線路L23、及び、第2結合線路L22と第4結合線路L24が、誘電体層LY10を介して、電磁結合する。更に、バランBL3に関しては、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY10を介して、電磁結合する。
次に、誘電体層LY10の上に重なる誘電体層LY11の一面上には、バランBL1の第2結合線路L12を構成するストリップ状導体、及び、同じく第1結合線路L11を構成するストリップ状導体が、間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。第1結合線路L11の横方向には、間隔をへだてて、バランBL2の第1結合線路L21を構成するストリップ状導体、及び、同じく第2結合線路L22を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。更に、バランBL2の第2結合線路L22の横方向には、間隔をへだてて、バランBL3の第1結合線路L31を構成するストリップ状導体及び同じく第2結合線路L32を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY10と誘電体層LY11との間では、バランBL1に関しては、第1結合線路L11と第3結合線路L13、及び、第2結合線路L12と第4結合線路L14が、誘電体層LY11を介して、電磁結合することになる。バランBL2に関しては、第1結合線路L21と第3結合線路L23、及び、第2結合線路L22と第4結合線路L24が、誘電体層LY11を介して、電磁結合する。更に、バランBL3に関しては、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY11を介して、電磁結合する。
更に、誘電体層LY11の上に重なる誘電体層LY12の一面上には、バランBL1の第4結合線路L14を構成するストリップ状導体、及び、同じく第3結合線路L13を構成するストリップ状導体が、間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。第3結合線路L13の横方向には、間隔をへだてて、バランBL2の第3結合線路L23を構成するストリップ状導体、及び、同じく第4結合線路L24を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。更に、バランBL2の第4結合線路L24の横方向には、間隔をへだてて、バランBL3の第3結合線路L33を構成するストリップ状導体、及び、同じく第4結合線路L34を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY11と誘電体層LY12との間では、バランBL1に関しては、第1結合線路L11と第3結合線路L13、及び、第2結合線路L12と第4結合線路L14が、誘電体層LY12を介して、電磁結合することになる。バランBL2に関しては、第1結合線路L21と第3結合線路L23、及び、第2結合線路L22と第4結合線路L24が、誘電体層LY12を介して、電磁結合する。更に、バランBL3に関しては、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY12を介して、電磁結合する。
誘電体層LY12の上に重なる誘電体層LY13の一面上には、バランBL1の第2結合線路L12を構成するストリップ状導体、及び、同じく第1結合線路L11を構成するストリップ状導体が、間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。第1結合線路L11の横方向には、間隔をへだてて、バランBL2の第1結合線路L21を構成するストリップ状導体、及び、同じく第2結合線路L22を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。更に、バランBL2の第2結合線路L22の横方向には、間隔をへだてて、バランBL3の第1結合線路L31を構成するストリップ状導体及び同じく第2結合線路L32を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY12と誘電体層LY13との間では、バランBL1に関しては、第1結合線路L11と第3結合線路L13、及び、第2結合線路L12と第4結合線路L14が、誘電体層LY13を介して、電磁結合することになる。バランBL2に関しては、第1結合線路L21と第3結合線路L23、及び、第2結合線路L22と第4結合線路L24が、誘電体層LY13を介して、電磁結合する。更に、バランBL3に関しては、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY13を介して、電磁結合する。
誘電体層LY13の上に重なる誘電体層LY14の一面上には、バランBL3の第3結合線路L33を構成するストリップ状導体、及び、同じく第4結合線路L34を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY13と誘電体層LY14との間では、バランBL3に関して、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY14を介して、電磁結合する。
誘電体層LY14の上に重なる誘電体層LY15の一面上には、バランBL3の第1結合線路L31を構成するストリップ状導体及び同じく第2結合線路L32を構成するストリップ状導体が、互いに間隔を隔てて一方向に横並びに配置されている。
従って、誘電体層LY14と誘電体層LY15との間では、バランBL3に関して、第1結合線路L31と第3結合線路L33、及び、第2結合線路L32と第4結合線路L34が、誘電体層LY15を介して、電磁結合する。
上述したように、第1結合線路(L11、L21、L31)と第3結合線路(L13、L23、L33)との電磁結合、及び、第2結合線路(L12、L22、L32)と第4結合線路(L14、L24、L34)の電磁結合が重層的になっているため、高度で安定な結合度が得られる。しかも、誘電体層1層当たりの結合線路長を短縮し、その平面積を縮小し、小型化を図りながら、必要な線路長を確保することができる。
誘電体層LY8〜LY15に形成されている同一の結合線路は、貫通電極Hにより、図2等で説明された回路構成となるように結線される。例えば、誘電体層LY8に形成された第4結合線路L14、誘電体層LY10に形成された第4結合線路L14、及び、誘電体層LY12に形成された第4結合線路L14は、貫通電極Hによって、基本的には直列接続となるように接続される。第1結合線路(L11、L21、L31)、第2結合線路(L12、L22、L32)及び第3結合線路(L13、L23、L33)、更には、第4結合線路(L24、L34)も、同様の貫通電極Hによる接続処理に付される。
図4を参照して、更に説明すると、バランBL1〜BL3を構成する誘電体層LY8〜LY15の下側(図において)には、キャパシタC1の接地電極G1、G2の層があり、しかも、上側には接地電極G3を有する誘電体層LY17がある。即ち、バランBL1〜BL3を、接地電極G1、G2及びG3によってサンドイッチしたシールド構造が得られる。このため、安定したシールド作用が得られる。
貫通電極Hは、主として、第1結合線路(L11、L21、L31)、第2結合線路(L12、L22、L32)及び第3結合線路(L13、L23、L33)、更には、第4結合線路(L14、L24、L34)を、所定の回路構成となるように接続すること、及び、上下の接地電極G1、G2及びG3を電気的に接続することであるが、バランBL1とバランBL2との間、及び、バランBL2とバランBL3との間に、比較的短い間隔で、接地電極G1、G2またはG3に連なる貫通電極Hの群を形成することにより、バラン間の相互干渉を遮断することができる。
更に、図5を参照すると明らかなように、端子T1〜T20のうち、バランBL1の第2平衡端子T1、同じく第1平衡端子T2、バランBL2の第1及び第2平衡端子T5、T6及びバランBL3の第1及び第2平衡端子T8、T9は、六面体状であるチップの底面において、その一辺に沿って配置されている。即ち、第1平衡端子(T2、T5、T8)及び第2平衡端子(T1、T6、T9)は、一直線上に配置されている。
このような端子配置によれば、当該複合バランを実装すべき回路基板において、第1平衡端子(T2、T5、T8)及び第2平衡端子(T1、T6、T9)を受ける導体パターン(接続ランド)を、一列に配置すればよく、回路基板側における接続用導体パターンの引き回しを簡素化、単純化しえる。
図示の実施の形態では、バランBL1の不平衡端子T18、バランBL2の不平衡端子15、及び、バランBL3の不平衡端子T12は、底面において、第1平衡端子(T2、T5、T8)及び第2平衡端子(T1、T6、T9)を配置した一辺と向き合う他辺に沿って配置されている。即ち、不平衡端子(T18、T15、T12)は、第1平衡端子(T2、T5、T8)及び第2平衡端子(T1、T6、T9)と相対する位置に、一直線上に配置されている。従って、不平衡端子(T18、T15、T12)についても、回路基板側における接続用導体パターンの引き回しを簡素化、単純化しえる。
残りの端子T3、T4、T7、T10、T11、T13、T14、T16、T17及びT19は、接地端子として用いられる。これらの接地端子のうち、接地端子T3、T4は、バランBL1の第1及び第2平衡端子(T2、T1)と、バランBL2の第1及び第2平衡端子(T5、T6)との間に配置され、接地端子T7は、バランBL2の第1及び第2平衡端子(T5、T6)とバランBL3の第1及び第2平衡端子(T8、T9)との間に配置されている。
また、接地端子T17及びT18は、バランBL1の不平衡端子T18とバランBL2の不平衡端子T15との間に配置され、接地端子T17及びT18は、バランBL2の不平衡端子T15とバランBL3の不平衡端子T12との間に配置されている。
更に、直流電圧供給端子T20は、第1平衡端子(T2、T5、T8)及び第2平衡端子(T1、T6、T9)の配置された一辺と、不平衡端子(T18、T15、T12)の配置された他辺との間の辺に配置されている。
以上、好ましい実施例を参照して本考案の内容を具体的に説明したが、本考案の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。