JP3123309U - 放電管 - Google Patents

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Abstract

【課題】di/dt特性に優れ、イグナイタ回路の2次側高電圧パルスの出力値を高めることのできる放電管を実現する。
【解決手段】ケース部材12の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材14,14で気密に封止することによって気密外囲器16を形成すると共に、該気密外囲器16内に、純アルゴンガスで構成された放電ガスを封入し、また、上記蓋部材14,14の放電電極部18,18間に、間隙長が0.3mm〜6.0mmの範囲に設定された放電間隙22を形成すると共に、ケース部材12の内壁面24に、その両端が、蓋部材14,14と微小放電間隙26を隔てて配置された複数のトリガ放電膜28を形成し、さらに、上記放電電極部18の表面に穴部31を多数形成する共に、放電電極部18の表面及び穴部31内面に、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物が含有された被膜30を形成した。
【選択図】図1

Description

この考案は放電管に係り、特に、自動車のHIDランプ(High Intensity Discharge Lamps)に点灯用の定電圧を供給するための点灯回路であるイグナイタ回路におけるスイッチングスパークギャップとして好適に使用できる放電管に関する。
この種の放電管として、本出願人は、先に特開2003−7420号を提案した。この放電管60は、図4に示すように、両端が開口した絶縁材よりなる円筒状のケース部材62の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材64,64で気密に封止することによって気密外囲器66を形成し、該気密外囲器66内に、所定の放電ガスを封入してなる。
上記蓋部材64は、気密外囲器66の中心に向けて大きく突き出た平面状の放電電極部68と、ケース部材62の端面に接する接合部70を備えており、両蓋部材64,64の放電電極部68,68間には、所定の放電間隙72が形成されている。
また、上記ケース部材62の内壁面74の円周方向に、微小放電間隙76を隔てて対向配置された一対のトリガ放電膜78,78が、複数組形成されている。一対のトリガ放電膜78,78の内、一方のトリガ放電膜78は、一方の放電電極部68と電気的に接続され、他方のトリガ放電膜78は、他方の放電電極部68と電気的に接続されている。
上記放電電極部68の表面には、放電開始電圧の安定に効果的なアルカリヨウ化物が含有された絶縁性の被膜80が形成されている。このアルカリヨウ化物としては、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化ルビジウム(RbI)等のアルカリヨウ化物の単体又は混合物が該当する。
上記気密外囲器66内に封入する放電ガスとしては、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、キセノン等の希ガスあるいは窒素ガス等の不活性ガスの単体又は混合ガスが該当する。尚、上記放電ガス中に、ハロゲン、SF 、CO 、O 、Hg等の負極性ガスやH等の消イオン時間の早いガスを混合することにより、放電後に持続放電に至る続流現象を防止することができる。
上記構成を備えた放電管60の放電電極部68,68間に、当該放電管60の放電開始電圧以上の電圧が印加されると、トリガ放電膜78,78間の微小放電間隙76に電界が集中し、これにより微小放電間隙76に電子が放出されてトリガ放電としての沿面コロナ放電が発生する。次いで、この沿面コロナ放電は、電子のプライミング効果によってグロー放電へと移行する。そして、このグロー放電が放電電極部68,68間の放電間隙72へと転移し、主放電としてのアーク放電に移行するのである。
特開2003−7420号
上記放電管60が、自動車のHIDランプ点灯用のスイッチングスパークギャップとして用いられる場合には、図5に示すイグナイタ回路80に組み込んで使用される。このイグナイタ回路80は、電源E、抵抗R、コンデンサC、放電管(スイッチングスパークギャップ)60、パルストランス82、HIDランプ84で構成されている。そして、上記コンデンサCで蓄積された電荷が、上記放電管60を介して電圧パルスとしてパルストランス82の1次側に印加されると、パルストランス82の2次側から高電圧パルスが発生し、この高電圧パルスがHIDランプ84に供給されることにより、HIDランプ84が点灯するようになっている。
上記イグナイタ回路80においては、例えば、放電管60が800Vで動作し、パルストランス82の昇圧比が5であるとすると、計算上は4kVの2次側高電圧パルスが発生することになるが、実際には、放電管60のdi/dt特性に起因するエネルギーロスが生じるため、2次側高電圧パルスの値は上記計算値より低くなってしまう。例えば、実際の2次側高電圧パルスの電圧値が3.4kvであった場合、変換効率(%)を下記の式を用いて計算すると、その変換効率は85%であり、放電管60のdi/dt特性に起因して15%のエネルギーロスが生じていることになる。

変換効率(%)= 2次側高電圧パルス電圧値/放電管の動作電圧値 ×100
パルストランス82の昇圧比
この考案は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、di/dt特性に優れ、イグナイタ回路の2次側高電圧パルスの出力値を高めることのできる放電管を実現することにある。
本考案者らは、放電管を構成する放電電極の表面形状、被膜の構成材料、放電ガスの種類に着目して種々検討を試みた結果、di/dt特性に優れ、イグナイタ回路の2次側高電圧パルスの出力値を高めることのできる放電電極の表面形状、被膜の構成材料、及び放電ガスの種類を見出し、本考案を完成するに至ったものである。
すなわち、本考案に係る放電管は、複数の放電電極を放電間隙を隔てて配置すると共に、これを放電ガスと共に気密外囲器内に封入してなる放電管であって、上記放電電極の表面に穴部を多数形成すると共に、放電電極の表面及び穴部内面に、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物が含有された被膜を形成し、また、上記放電間隙の間隙長を0.3mm〜6.0mmの範囲に設定すると共に、上記放電ガスを純アルゴンガスで構成したことを特徴とする。
上記臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合割合は、臭化セシウムが10〜70重量%、チタンが10〜70重量%、モリブデン酸カリウムが10〜70重量%と成すのが好ましい。
本考案に係る放電管にあっては、放電電極の表面に穴部を多数形成すると共に、放電電極の表面及び穴部内面に、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物が含有された被膜を形成し、また、上記放電間隙の間隙長を0.3mm〜6.0mmの範囲に設定すると共に、上記放電ガスを純アルゴンガスで構成したことにより、di/dt特性に優れ、イグナイタ回路の2次側高電圧パルスの出力値を高めることのできる放電管を実現することができる。
放電電極の表面に穴部を多数形成し、放電電極の表面及び穴部内面に被膜を形成することにより、被膜と放電電極との密着力が向上し、放電時の衝撃による被膜のスパッタが抑制される。その結果、スパッタに起因する被膜の仕事関数の変化が防止され、初期放電遅れを抑制できる。
本考案に係る放電管10は、図1及び図2に示すように、両端が開口した絶縁材としてのセラミックよりなる円筒状のケース部材12の両端開口部を、放電電極を兼ねた一対の蓋部材14,14で気密に封止することによって気密外囲器16を形成してなる。
上記蓋部材14は、気密外囲器16の中心に向けて大きく突き出た平面状の放電電極部18と、ケース部材12の端面に接する接合部20を備えており、両蓋部材14,14の放電電極部18,18間には放電間隙22が形成されている。
上記放電間隙22の間隙長は、0.3mm〜6.0mmの範囲に設定されている。
尚、公称直流放電開始電圧(放電電圧)が800V程度迄の放電管10の場合には、放電間隙22の間隙長は0.3mm〜1.0mmの範囲で良い。一方、公称直流放電開始電圧(放電電圧)が8000V程度の放電管10の場合には、放電間隙22の間隙長は6mm程度必要である。
放電電極部18と接合部20を備えた上記蓋部材14は、無酸素銅や、無酸素銅にジルコニウム(Zr)を含有させたジルコニウム銅で構成されている。尚、ケース部材12の端面と蓋部材14の接合部20とは、銀ろう等のシール材(図示せず)を介して気密封止されている。
また、上記ケース部材12の内壁面24には、その両端が、放電電極を兼ねた上記蓋部材14,14と微小放電間隙26を隔てて配置された線状のトリガ放電膜28が複数形成されている。図1及び図2においては、トリガ放電膜28を、ケース部材12の内壁面24の円周方向に、45度間隔で8本形成した場合が例示されている。
上記トリガ放電膜28は、カーボン系材料等の導電性材料で構成されている。このトリガ放電膜28は、例えば、カーボン系材料より成る芯材を擦り付けることにより形成することができる。
図3に拡大して示すように、上記放電電極部18の表面には、有底の穴部31が多数形成されており、放電電極部18の表面及び穴部31内面に、臭化セシウム(CsBr)、チタン(Ti)及びモリブデン酸カリウム(KMoO)の混合物が含有された被膜30が形成されている。
この被膜30は、臭化セシウムの粉末とチタンの粉末とモリブデン酸カリウムの粉末の混合物を、珪酸ナトリウム溶液と純水よりなるバインダーに添加したものを、放電電極部18表面に塗布することによって形成することができる。
この場合、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合割合は、臭化セシウムが10〜70重量%、チタンが10〜70重量%、モリブデン酸カリウムが10〜70重量%と成すのが好ましい。
また、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物と、バインダーとの配合割合は、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物が0.01〜40重量%、バインダーが99.99〜60重量%と成される。
尚、バインダー中の珪酸ナトリウム溶液と純水との配合割合は、珪酸ナトリウム溶液が0.01〜70重量%、純水が99.99〜30重量%の配合割合で混合される。
上記気密外囲器16内には、純アルゴンガスで構成された放電ガスが封入されている。
本考案の上記放電管10にあっては、放電電極を兼ねた上記一対の蓋部材14,14間に、当該放電管10の放電開始電圧以上の電圧が印加されると、トリガ放電膜28の両端と蓋部材14,14間の微小放電間隙26に電界が集中し、これにより微小放電間隙26に電子が放出されてトリガ放電としての沿面コロナ放電が発生する。次いで、この沿面コロナ放電は、電子のプライミング効果によってグロー放電へと移行する。そして、このグロー放電が放電電極部18,18間の放電間隙22へと転移し、主放電としてのアーク放電に移行するのである。
而して、本考案の放電管10にあっては、放電電極部18の表面に穴部31を多数形成すると共に、放電電極部18の表面及び穴部31内面に、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物が含有された被膜30を形成し、また、放電電極部18,18間の放電間隙22の間隙長を0.3mm〜6.0mmの範囲に設定すると共に、上記放電ガスを純アルゴンガスで構成したことにより、放電管10のdi/dt特性が向上し、イグナイタ回路80に使用した場合の2次側高電圧パルスの出力値を高めることができる。
尚、di/dtとは、放電管10の放電時の電流上昇率のことである。
上記の通り、放電電極部18の表面に多数の穴部31を形成し、放電電極部18の表面及び穴部31内面に被膜30を形成したことにより、被膜30と放電電極部18との密着力が向上し、放電時の衝撃による被膜30のスパッタが抑制される。その結果、スパッタに起因する被膜30の仕事関数の変化が防止され、初期放電遅れを抑制することができる。
本考案者らは、公称直流放電開始電圧が800Vの本考案に係る放電管10と比較例の放電管を、図5のイグナイタ回路80に組み込んで使用し、2次側高電圧パルスの変換効率を測定する実験を行った。尚、パルストランス82の昇圧比は6である。
本考案の放電管10として、放電電極部18,18間の放電間隙22の間隙長が0.6mmであり、また、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合割合が、臭化セシウムが40重量%、チタンが40重量%、モリブデン酸カリウムが20重量%と成されているものを用いた。
一方、比較例の放電管として、放電電極部の表面に、アルカリヨウ化物が含有された被膜を形成し、また、放電電極部間の放電間隙の間隙長が1.2mmであり、放電ガスが、ネオンにアルゴンを20体積%混入して成るものを用いた。
実験結果を表1に示す。
Figure 0003123309
表1において、Vbは放電管の動作電圧値、Vpは2次側高電圧パルスの電圧値である。
表1の結果に示す通り、本考案の放電管10は、比較例の放電管に比べて2次側高電圧パルスの出力値を高くすることができ、その変換効率も平均で90.8%となっており、変換効率が86.3%の比較例の放電管に比べて優れた効果を発揮していることがわかる。
本考案に係る放電管を示す概略断面図である。 図1のA−A概略断面図である。 本考案に係る放電管の要部拡大断面図である。 従来の放電管を示す断面図である。 イグナイタ回路を示す回路図である。
符号の説明
10 放電管
12 ケース部材
14 蓋部材
16 気密外囲器
18 放電電極部
22 放電間隙
26 微小放電間隙
28 トリガ放電膜
30 被膜
31 穴部

Claims (2)

  1. 複数の放電電極を放電間隙を隔てて配置すると共に、これを放電ガスと共に気密外囲器内に封入してなる放電管であって、上記放電電極の表面に穴部を多数形成すると共に、放電電極の表面及び穴部内面に、臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合物が含有された被膜を形成し、また、上記放電間隙の間隙長を0.3mm〜6.0mmの範囲に設定すると共に、上記放電ガスを純アルゴンガスで構成したことを特徴とする放電管。
  2. 上記臭化セシウム、チタン及びモリブデン酸カリウムの混合割合は、臭化セシウムが10〜70重量%、チタンが10〜70重量%、モリブデン酸カリウムが10〜70重量%と成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電管。




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