JP3096663B2 - 分析フィルタバンク、合成フィルタバンク及びフィルタバンク回路 - Google Patents

分析フィルタバンク、合成フィルタバンク及びフィルタバンク回路

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JP3096663B2 JP09217354A JP21735497A JP3096663B2 JP 3096663 B2 JP3096663 B2 JP 3096663B2 JP 09217354 A JP09217354 A JP 09217354A JP 21735497 A JP21735497 A JP 21735497A JP 3096663 B2 JP3096663 B2 JP 3096663B2
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アブデセラム・クルーシェ・ジェディ
高志 関口
好男 唐沢
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株式会社エイ・ティ・アール環境適応通信研究所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、通信信号
処理のために用いられる、分析フィルタバンクと、合成
フィルタバンクとを備えた直交ミラーフィルタ(Quadra
ture Mirror Filter;以下、QMFという。)のフィル
タバンク回路に関する。
【0002】
【従来の技術】通信信号処理においては、信号を多数の
周波数帯域からなる信号に分解し、これらの帯域信号か
ら元の信号を復元することが必要となる。このような一
連の処理は、フィルタバンクにより実現されている。フ
ィルタバンクは、例えば、音声信号や映像信号の帯域分
割による高能率符号化、トランスマルチプレクサのFD
M−TDM変換などに利用されている。
【0003】従来技術のフィルタバンクは、分析フィル
タバンクと、合成フィルタバンクとからなり、フィルタ
バンクの機能としては、分析フィルタバンクにおいて、
入力信号x(n)を複数の周波数帯域に分割して複数の
チャンネル信号を生成する。また、合成フィルタバンク
において、チャンネル信号から再生信号xh(n)を再
生して出力する。フィルタバンクの処理においては、サ
ンプリングレート変換処理を伴うことが多い。この場
合、分析フィルタバンク出力信号である複数のチャンネ
ル信号をダウンサンプリングして、そのあと、例えば符
号化処理を行う。符号化処理して何らかの伝送路を通過
した複数のチャンネル信号を復号化した後、合成フィル
タバンクにより、再生信号xh(n)を得る。合成フィ
ルタバンクにおいては、アップサンプリング処理と帯域
通過フィルタを用いる。ダウンサンプリング処理は信号
を一定間隔に間引く処理であり、また、アップサンプリ
ング処理は、信号サンプル間に所定の数の0値を挿入す
る処理である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来技術文
献1「P.P.Vaidyanathanet al.,“Design of Dubly Com
plementary IIR Digital Filters Using a Single Comp
lex Allpass Filter,with Multirate Applications",IE
EE Transactions on Circuits and System,Vol.CAS-34,
No.4,pp.378-389,April 1987」において、複素全域通過
フィルタを用いて、無限インパルス応答(IIR)ディ
ジタルフィルタを構成することが開示されている。この
従来例のディジタルフィルタは、1次全域通過ブロック
の縦続形成構成に基づいて実現され、信号処理演算量が
比較的少なく、また、有限語長効果に優れ、すなわち、
係数量子化に対する感度が比較的低く、リミットサイク
ルが生じず、量子化雑音電力が比較的小さいという利点
を有しているが、回路が比較的複雑であって、LSI化
又はVLSI化することが難しいという問題点があっ
た。
【0005】本発明の目的は以上の問題点を解決し、従
来例に比較して回路が簡単であって、LSI化又はVL
SI化することが容易である分析フィルタバンク、合成
フィルタバンク、及びQMFフィルタバンク回路を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1記
載の分析フィルタバンクは、入力される入力信号x
(n)を2分配して、分配された一方の入力信号x
(n)を遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有理関数で表
現された伝達関数H0(z)を有するIIR型低域通過
ディジタルフィルタにより低域ろ波した後、1/2倍の
レートのダウンサンプリング処理を実行して第1のチャ
ンネル信号x0(n)を出力する一方、分配された他方
の入力信号x(n)をzの奇数次有理関数で表現された
伝達関数H1(z)を有するIIR型高域通過ディジタ
ルフィルタにより高域ろ波した後、1/2倍のレートの
ダウンサンプリング処理を実行して第2のチャンネル信
号x1(n)を出力し、上記2つの伝達関数H0(z)と
1(z)はともに次数mで同一の極を持つ有界実伝達
関数である分析フィルタバンクにおいて、入力される入
力信号x(n)と、第1の行列乗算手段から出力された
m個の出力信号からなる出力信号ベクトルV1を単位時
間だけ遅延する第1の遅延素子を介して入力される複数
m個の信号からなる信号ベクトルV1’とを含む入力信
号ベクトルに対して所定の行列Sを乗算して、中間信号
ga(n)を出力するとともに、乗算結果の信号とし
て、第1の出力信号y0(n)と、上記出力信号ベクト
ルV1とを出力する第1の行列乗算手段と、上記第1の
行列乗算手段から出力される第1の出力信号y0(n)
に対して1/2倍のレートのダウンサンプリング処理を
実行して処理後の第1のチャンネル信号x0(n)を出
力する第1のダウンサンプラと、上記第1の行列乗算手
段から出力される中間信号ga(n)に対して所定の乗
算係数A35を乗算して、乗算結果の第2の出力信号y1
(n)を出力する第1の乗算器と、上記第1の乗算器か
ら出力される第2の出力信号y1(n)に対して1/2
倍のレートのダウンサンプリング処理を実行して処理後
の第2のチャンネル信号x1(n)を出力する第2のダ
ウンサンプラとを備え、上記行列Sは、STS≦Im+1
満足する上記伝達関数H0(z)の状態空間実現行列
E,f,g,hから
【数15】 のように構成され、上記状態空間実現行列E,f,g,
hは上記伝達関数H0(z)と、
【数16】H0(z)=g(zIm−E)-1f+h の関係を持ち、次式のように因数分解されて表され、
【数17】 ここで、Im+1は(m+1)×(m+1)の単位行列、
mはm×mの単位行列であり、上記乗算定数A35は√
(1−s0 2)に実質的に等しいことを特徴とする。
【0007】また、請求項2記載の分析フィルタバンク
は、請求項1記載の分析フィルタバンクにおいて、上記
第1の行列乗算手段は、上記入力信号ベクトルに対して
行列R1を乗算して、乗算結果の信号として、上記中間
信号ga(n)を第1の乗算器に出力するとともに、m
個の中間信号からなる中間信号ベクトルGaとを出力す
る第2の行列乗算手段と、上記第2の行列乗算手段から
出力される中間信号ga(n)に対して所定の乗算定数
34=s0を乗算して、乗算結果の信号を出力する第2
の乗算器と、上記第2の乗算器から出力される乗算結果
の信号と、上記第2の行列乗算手段から出力される中間
信号ベクトルGaとを含む信号ベクトルに対して行列R
2を乗算して、乗算結果の信号として、第1の出力信号
0(n)と、上記出力信号ベクトルV1とを出力する第
3の行列乗算手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】本発明に係る請求項3記載の合成フィルタ
バンクは、入力される第1のチャンネル信号x0
(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有理関
数で表現された伝達関数F0(z)を有するIIR型低
域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一方、入
力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2
倍のレートのアップサンプリング処理を実行した後、z
の奇数次有理関数で表現された伝達関数F1(z)を有
するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高域ろ
波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ波された信
号とを合成して再生信号xh(n)として出力し、上記
2つの伝達関数F0(z)とF1(z)はともに次数mで
同一の極を持つ有界実伝達関数である合成フィルタバン
クにおいて、入力される第1のチャンネル信号x0
(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
を実行して処理後の第1の処理信号yh0(n)を出力
する第1のアップサンプラと、入力される第2のチャン
ネル信号x1’(n)に対して2倍のレートのアップサ
ンプリング処理を実行して処理後の第2の処理信号yh
1(n)を出力する第2のアップサンプラと、上記第2
のアップサンプラから出力される第2の処理信号yh1
(n)に対して所定の乗算係数−A46を乗算して、乗算
結果の中間信号gb(n)を出力する第3の乗算器と、
上記第1のアップサンプラから出力される第1の処理信
号yh0(n)と、第4の行列乗算手段から出力された
m個の再生信号からなる再生信号ベクトルV2を単位時
間だけ遅延する第2の遅延素子を介して入力される複数
m個の信号からなる信号ベクトルV2’とを含む入力信
号ベクトル、及び上記第2のアップサンプラから出力さ
れた中間信号gb(n)に対して所定の転置行列ST
乗算して、乗算結果の信号として、再生信号xh(n)
と、上記再生信号ベクトルV2とを出力する第4の行列
乗算手段とを備え、上記転置行列STは、SST≦Im+1
を満足する上記伝達関数F0(z)の状態空間実現行列
T,gT,fT,hから、
【数18】 のように構成され、上記状態空間実現行列ET,gT,f
T,hは上記伝達関数F0(z)と、
【数19】F0(z)=fT(zIm−ET-1T+h の関係を持ち、次式のように因数分解されて表され、
【数20】 ここで、Im+1は(m+1)×(m+1)の単位行列、
Iはm×mの単位行列であり、上記乗算定数−A46は−
√(1−s0 2)に実質的に等しいことを特徴とする。
【0009】また、請求項4記載の合成フィルタバンク
は、請求項3記載の合成フィルタバンクにおいて、上記
第4の行列乗算手段は、上記第1のアップサンプラから
出力される第1の処理信号yh0(n)と、上記信号ベ
クトルV2’とを含む入力信号ベクトルに対して所定の
転置行列R2 Tを乗算して、乗算結果の信号として、中間
信号gc(n)と、中間信号ベクトルGbとを出力する
第5の行列乗算手段と、上記第5の行列乗算手段から出
力される中間信号gc(n)に対して所定の乗算定数A
44=s0を乗算して、乗算結果の信号を出力する第4の
乗算器と、上記第4の乗算器から出力される乗算結果の
信号と、上記第5の行列乗算手段から出力されるm個の
中間信号からなる中間信号ベクトルGbとを含む信号ベ
クトルに対して転置行列R1 Tを乗算して、乗算結果の信
号として、再生信号xh(n)と、上記再生信号ベクト
ルV2とを出力する第6の行列乗算手段とを備えたこと
を特徴とする。
【0010】さらに、本発明に係る請求項5記載のフィ
ルタバンク回路は、請求項1又は2記載の分析フィルタ
バンクと、請求項3又は4記載の合成フィルタバンクと
を備え、F0(z)=H0(z)、F1(z)=−H
1(z)、及びH1(z)=H0(−z)が成立し、かつ
0(z)H1(z)+F0(z)F1(z)が全域通過関
数であるという完全再構成条件が成立することを特徴と
する。
【0011】本発明に係る請求項6記載の分析フィルタ
バンクは、入力される入力信号x(n)を2分配して、
分配された一方の入力信号x(n)を遅延演算子z-1
逆数zの奇数次有理関数で表現された伝達関数H
0(z)を有するIIR型低域通過ディジタルフィルタ
により低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサン
プリング処理を実行して第1のチャンネル信号x
0(n)を出力する一方、分配された他方の入力信号x
(n)をzの奇数次有理関数で表現された伝達関数H1
(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタに
より高域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサンプ
リング処理を実行して第2のチャンネル信号x1(n)
を出力し、上記2つの伝達関数H0(z)とH1(z)が
ともに次数Nの有界実伝達関数であり、H0(z)とH1
(z)の間にはH1(z)=H0(−z)かつすべての正
規化角周波数ωに対して|H0(exp(jω))|2
|H1(exp(jω))|2=1の関係を有する分析フ
ィルタバンクにおいて、入力される入力信号x(n)
と、0である零入力信号と、第7の行列乗算手段から出
力されたN個の出力信号からなる出力信号ベクトルV3
を単位時間だけ遅延する第3の遅延素子を介して入力さ
れる複数N個の信号からなる信号ベクトルV3’とを含
む入力信号ベクトルに対して所定の行列Qを乗算して、
乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトルV3と、
第1の出力信号y0(n)と、第2の出力信号y1(n)
とを出力する第7の行列乗算手段と、上記第7の行列乗
算手段から出力される第1の出力信号y0(n)に対し
て1/2倍のレートのダウンサンプリング処理を実行し
て処理後の第1のチャンネル信号x0(n)を出力する
第1のダウンサンプラと、上記第7の行列乗算手段から
出力される第2の出力信号y1(n)に対して1/2倍
のレートのダウンサンプリング処理を実行して処理後の
第2のチャンネル信号x1(n)を出力する第2のダウ
ンサンプラとを備え、上記行列Qは、入力信号x(n)
を入力とする1入力2出力の伝達行列[H0(z) H1
(z)]Tを、
【数21】[H0(z) H1(z)]T=C(zIN
A)-1B+D と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
列である。)可制御正準形状態空間実現行列A,B,
C,Dから構成される(N+2)×(N+1)の行列
【数22】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列Sに、上記行列Sの各列
が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+2)
列目に加えることにより得られた(N+2)×(N+
2)の行列であって、上記行列Qは、Q=PRのように
行列Pと行列Rとに因数分解されて表されたことを特徴
とする。
【0012】また、請求項7記載の分析フィルタバンク
は、請求項6記載の分析フィルタバンクにおいて、上記
第7の行列乗算手段は、上記入力信号ベクトルに対して
上記行列Rを乗算して、乗算結果の信号として、N個の
中間信号からなる中間信号ベクトルGcと、2個の別の
信号とを出力する第8の行列乗算手段と、上記第8の行
列乗算手段から出力される中間信号ベクトルGcと2個
の別の信号とに対して上記行列Pを乗算して、乗算結果
の信号として、上記出力信号ベクトルV3と、上記第1
の出力信号y0(n)と、上記第2の出力信号y1(n)
とを出力する第9の行列乗算手段とを備えたことを特徴
とする。
【0013】本発明に係る請求項8記載の合成フィルタ
バンクは、入力される第1のチャンネル信号x0
(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有理関
数で表現された伝達関数F0(z)を有するIIR型低
域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一方、入
力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2
倍のレートのアップサンプリング処理を実行した後、z
の奇数次有理関数で表現された伝達関数F1(z)を有
するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高域ろ
波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ波された信
号とを合成して再生信号xh(n)として出力し、上記
2つの伝達関数F0(z)とF1(z)がともに次数がN
の有界実伝達関数であり、F0(z)とF1(z)の間に
1(z)=−F0(−z)かつすべての正規化角周波数
ωに対して│F0(exp(jω))│2+│F1(ex
p(jω))│2=1の関係を有する合成フィルタバン
クにおいて、入力される第1のチャンネル信号x0
(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
を実行して処理後の第1の処理信号yh0(n)を出力
する第1のアップサンプラと、入力される第2のチャン
ネル信号x1’(n)に対して2倍のレートのアップサ
ンプリング処理を実行して処理後の第2の処理信号yh
1(n)を出力する第2のアップサンプラと、上記第2
のアップサンプラから出力される第2の処理信号yh1
(n)に対して所定の乗算係数A84=−1を乗算するこ
とにより反転して、乗算結果の反転された第2の処理信
号yh1(n)を出力する第5の乗算器と、上記第1の
アップサンプラから出力される第1の処理信号yh
0(n)と、上記第5の乗算器から出力される反転され
た第2の処理信号yh1(n)と、第10の行列乗算手
段から出力されたN個の再生信号からなる再生信号ベク
トルV4を単位時間だけ遅延する第4の遅延素子を介し
て入力される複数N個の信号からなる信号ベクトル
4’とを含む入力信号ベクトルとに対して所定の転置
行列QTを乗算して、乗算結果の信号として、再生信号
xh(n)と、0である零再生信号と、上記再生信号ベ
クトルV4とを出力する第10の行列乗算手段とを備
え、上記転置行列QTは、再生信号xh(n)を出力と
する2入力1出力の伝達行列[F0(z) F1(z)]
を、
【数23】[F0(z) F1(z)]=C’(zIN
A’)-1B’+D’ と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
列である。)可制御正準形状態空間実現行列A’,
B’,C’,D’から構成される(N+2)×(N+
1)の行列
【数24】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列S’に、上記行列S’の
各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+
2)列目に加えることにより得られた(N+2)×(N
+2)の行列であって、上記転置行列QTは、QT=RT
Tのように転置行列RTと転置行列PTとに因数分解さ
れて表されたことを特徴とする。
【0014】また、請求項9記載の合成フィルタバンク
は、請求項8記載の合成フィルタバンクにおいて、上記
第10の行列乗算手段は、上記第1のアップサンプラか
ら出力される第1の処理信号yh0(n)と、上記第5
の乗算器から出力される反転された第2の処理信号yh
1(n)と、上記信号ベクトルV4’とを含む入力信号ベ
クトルとに対して上記転置行列PTを乗算して、乗算結
果の信号として、中間信号ベクトルGdと、2個の別の
信号とを出力する第11の行列乗算手段と、上記第11
の行列乗算手段から出力される中間信号ベクトルGdと
2個の別の信号とを含む信号ベクトルに対して上記転置
行列RTを乗算して、乗算結果の信号として、再生信号
xh(n)と、0である零再生信号と、上記再生信号ベ
クトルV4とを出力する第12の行列乗算手段とを備え
たことを特徴とする。
【0015】さらに、請求項10記載のフィルタバンク
回路は、請求項6又は7記載の分析フィルタバンクと、
請求項8又は9記載の合成フィルタバンクとを備え、F
0(z)=H0(z)、F1(z)=−H1(z)、及びH
1(z)=H0(−z)が成立し、かつH0(z)H
1(z)+F0(z)F1(z)が全域通過関数であると
いう完全再構成条件が成立することを特徴とする。
【0016】本発明に係る請求項11記載の分析フィル
タバンクは、入力される入力信号x(n)を2分配し
て、分配された一方の入力信号x(n)を遅延演算子z
-1の逆数zの偶数次有理関数で表現された伝達関数
0’(z)を有するIIR型低域通過ディジタルフィ
ルタにより低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウン
サンプリング処理を実行して第1のチャンネル信号x0
(n)を出力する一方、分配された他方の入力信号x
(n)をzの偶数次有理関数で表現された伝達関数
1’(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィ
ルタにより高域ろ波した後、1/2倍のレートのダウン
サンプリング処理を実行して第2のチャンネル信号x1
(n)を出力し、上記2つの伝達関数H0’(z)と
1’(z)がともに次数Nの有界実伝達関数であり、
0’(z)とH1’(z)の間にH1’(z)=H0
(−z)かつすべての正規化角周波数ωに対して│
0’(exp(jω))│2+H1’(exp(j
ω))│2=1の関係を有する分析フィルタバンクにお
いて、入力される入力信号x(n)と、0である零入力
信号と、第7の行列乗算手段から出力されたN個の出力
信号からなる出力信号ベクトルV3を単位時間だけ遅延
する第3の遅延素子を介して入力される複数N個の信号
からなる信号ベクトルV3’とを含む入力信号ベクトル
に対して所定の行列Q’を乗算して、乗算結果の信号と
して、上記出力信号ベクトルV3と、第1の出力信号y0
(n)と、第2の出力信号y1(n+1)とを出力する
第7の行列乗算手段と、上記第7の行列乗算手段から出
力される第2の出力信号y1(n+1)を上記単位時間
だけ遅延して遅延された第2の出力信号y1(n)を出
力する第5の遅延素子と、上記第7の行列乗算手段から
出力される第1の出力信号y0(n)に対して1/2倍
のレートのダウンサンプリング処理を実行して処理後の
第1のチャンネル信号x0(n)を出力する第1のダウ
ンサンプラと、上記第5の遅延素子から出力される遅延
された第2の出力信号y1(n)に対して1/2倍のレ
ートのダウンサンプリング処理を実行して処理後の第2
のチャンネル信号x1(n)を出力する第2のダウンサ
ンプラとを備え、上記行列Q’は、入力信号x(n)を
入力とする1入力2出力の伝達行列[H0’(z)
1’(z)]Tを、
【数25】[H0’(z) H1’(z)]T=C(zIN
−A)-1B+D と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
列である。)可制御正準形状態空間実現行列A,B,
C,Dから構成される(N+2)×(N+1)の行列
【数26】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列Saに、上記行列Saの
各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+
2)列目に加えることにより得られた(N+2)×(N
+2)の行列であって、上記行列Q’は、Q’=P’
R’のように行列P’と行列R’とに因数分解されて表
されたことを特徴とする。
【0017】また、請求項12記載の分析フィルタバン
クは、請求項11記載の分析フィルタバンクにおいて、
上記第7の行列乗算手段は、上記入力信号ベクトルに対
して上記行列R’を乗算して、乗算結果の信号として、
N個の中間信号からなる中間信号ベクトルGcと、2個
の別の信号とを出力する第8の行列乗算手段と、上記第
8の行列乗算手段から出力される中間信号ベクトルGc
と2個の別の信号とに対して上記行列P’を乗算して、
乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトルV3と、
上記第1の出力信号y0(n)と、上記第2の出力信号
1(n+1)とを出力する第9の行列乗算手段とを備
えたことを特徴とする。
【0018】本発明に係る請求項13記載の合成フィル
タバンクは、入力される第1のチャンネル信号x0
(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの偶数次有理関
数で表現された伝達関数F0’(z)を有するIIR型
低域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一方、
入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して
2倍のレートのアップサンプリング処理を実行した後、
zの偶数次有理関数で表現された伝達関数F1’(z)
を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高
域ろ波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ波され
た信号とを合成して再生信号xh(n)として出力し、
上記2つの伝達関数F0’(z)とF1’(z)がともに
次数がNの有界実伝達関数であり、F0’(z)とF1
(z)の間にF0’(z)=F1’(−z)かつすべての
正規化角周波数ωに対して|F0’(exp(jω))
2+|F1’(exp(jω))|2=1の関係を有す
る合成フィルタバンクにおいて、入力される第1のチャ
ンネル信号x0’(n)に対して2倍のレートのアップ
サンプリング処理を実行して処理後の第1の処理信号y
0(n)を出力する第1のアップサンプラと、入力さ
れる第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2倍の
レートのアップサンプリング処理を実行して処理後の第
2の処理信号yh1(n)を出力する第2のアップサン
プラと、上記第1のアップサンプラから出力される第1
の処理信号yh0(n)を上記単位時間だけ遅延して遅
延された第1の処理信号yh0(n−1)を出力する第
6の遅延素子と、上記第6の遅延素子から出力される遅
延された第1の処理信号yh0(n−1)と、上記第2
のサップサンプラから出力された第2の処理信号yh1
(n)と、第10の行列乗算手段から出力されたN個の
再生信号からなる再生信号ベクトルV4を単位時間だけ
遅延する第4の遅延素子を介して入力される複数N個の
信号からなる信号ベクトルV4’とを含む入力信号ベク
トルとに対して所定の転置行列Q’Tを乗算して、乗算
結果の信号として、再生信号xh(n)と、0である零
再生信号と、上記再生信号ベクトルV4とを出力する第
10の行列乗算手段とを備え、上記転置行列Q’Tは、
再生信号xh(n)を出力とする2入力1出力の伝達行
列[F0’(z) F1’(z)]を、
【数27】[F0’(z) F1’(z)]=C’(zI
N−A’)-1B’+D’ と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
列である。)可制御正準形状態空間実現行列A’,
B’,C’,D’から構成される(N+2)×(N+
1)の行列
【数28】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列Sa’に、上記行列S
a’の各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを
(N+2)列目に加えることにより得られた(N+2)
×(N+2)の行列であって、上記転置行列Q’Tは、
Q’T=R’TP’Tのように転置行列R’Tと転置行列
P’Tとに因数分解されて表されたことを特徴とする。
【0019】また、請求項14記載の合成フィルタバン
クは、請求項13記載の合成フィルタバンクにおいて、
上記第10の行列乗算手段は、上記第6の遅延素子から
出力される遅延された第1の処理信号yh0(n−1)
と、上記第2のアップサンプラから出力される第2の処
理信号yh1(n)と、上記信号ベクトルV4’とを含む
入力信号ベクトルとに対して上記転置行列P’Tを乗算
して、乗算結果の信号として、中間信号ベクトルGd
と、2個の別の信号とを出力する第11の行列乗算手段
と、上記第11の行列乗算手段から出力される中間信号
ベクトルGdと2個の別の信号とを含む信号ベクトルに
対して上記転置行列R’Tを乗算して、乗算結果の信号
として、再生信号xh(n)と、0である零再生信号
と、上記再生信号ベクトルV4とを出力する第12の行
列乗算手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】さらに、本発明に係る請求項15記載のフ
ィルタバンク回路は、請求項11又は12記載の分析フ
ィルタバンクと、請求項13又は14記載の合成フィル
タバンクとを備え、F0’(z)=H0’(z)、F1
(z)=H1’(z)、及びH1’(z)=H0’(−
z)が成立し、かつH02(z)+H12(z)が全域
通過関数であるという完全再構成条件が成立することを
特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係
る実施形態について説明する。本発明に係る実施形態に
おいては、第1の実施形態において、遅延演算子z-1
逆数zの奇数次有理関数で表現された伝達関数を有する
IIR(無限インパルス応答)型ディジタルフィルタを
用いたQMFフィルタバンク回路について説明する一
方、第2の実施形態において、zの偶数次有理関数で表
現された伝達関数を有するIIR型ディジタルフィルタ
を用いたQMFフィルタバンク回路について説明する。
QMFフィルタバンク回路については、第1と第2の実
現法があるが、第1の実施形態では両方の実現法を用い
た実施形態について説明する一方、第2の実施形態では
第2の実現法を用いたとき実施形態について説明する。
後者において、第2の実現法のみについて説明するの
は、第1の実現法による回路が複雑であって、実用に供
することが難しいためである。
【0022】<第1の実施形態>図1は、本発明に係る
第1の実施形態である分析フィルタバンク10と合成フ
ィルタバンク20とを備えたQMFフィルタバンク回路
の構成を示すブロック図であ理、図2は、図1の分析フ
ィルタバンク10の構成を示すブロック図であり、図3
は、図1の合成フィルタバンク20の構成を示すブロッ
ク図である。
【0023】本実施形態のQMFフィルタバンクは、図
1に示すように、2本の伝送路L1,L2を介して互い
に接続された、分析フィルタバンク10と、合成フィル
タバンク20とからなる。分析フィルタバンク20に入
力された入力信号x(n)は分配器11に入力されて2
分配され、一方の信号は伝達関数H0(z)を有する分
析フィルタ12を介してダウンサンプラ14に出力され
る。ダウンサンプラ14は、1/2倍のレートでダウン
サンプリング処理を実行して処理後の信号を第1のチャ
ンネル信号x0(n)として伝送路L1に出力されて合
成フィルタバンク20に伝送される。ここで、1/2倍
のレートでダウンサンプリング処理とは、デシメーショ
ン比が2のダウンサンプリング処理、つまり、信号を1
サンプルおきに間引く処理であり、以下同様である。分
配された他方の信号は伝達関数H1(z)を有する分析
フィルタ13を介してダウンサンプラ15に出力され
る。ここで、上記2つの伝達関数H0(z)とH1(z)
はともに次数mで同一の極を持つ有界実伝達関数であ
る。ダウンサンプラ15は、1/2倍のレートでダウン
サンプリング処理を実行して処理後の信号を第2のチャ
ンネル信号x1(n)として伝送路L2に出力されて合
成フィルタバンク20に伝送される。ここで、分析フィ
ルタ12は、奇数次伝達関数H0(z)を有するIIR
型低域通過ディジタルフィルタであり、入力される信号
を低域ろ波して出力する。また、分析フィルタ13は、
奇数次多項式で表現された伝達関数H1(z)を有する
IIR型高域通過ディジタルフィルタで構成され、入力
される信号を高域ろ波して出力する。
【0024】合成フィルタバンク20においては、伝送
路L1を介して伝送されて入力された第1のチャンネル
信号x0’(n)はアップサンプラ21に入力され、ア
ップサンプラ21は、入力された第1のチャンネル信号
0’(n)に対して2倍のレートでアップサンプリン
グ処理を実行して処理後の信号yh0(n)を伝達関数
0(z)を有する合成フィルタ23を介して加算器2
5に出力する。ここで、2倍のレートでアップサンプリ
ング処理とは、入力信号に対して、サンプルとサンプル
との間に1つの0値のサンプルを挿入するアップサンプ
リング処理であり、以下同様である。一方、伝送路L2
を介して伝送されて入力された第2のチャンネル信号x
1’(n)はアップサンプラ22に入力され、アップサ
ンプラ22は、入力された第2のチャンネル信号x1
(n)に対して2倍のレートでアップサンプリング処理
を実行して処理後の信号yh1(n)を伝達関数F
1(z)を有する合成フィルタ24を介して加算器25
に出力する。ここで、上記2つの伝達関数F0(z)と
1(z)はともに次数mで同一の極を持つ有界実伝達
関数である。加算器25は、入力される2つの信号yh
0(n),yh1(n)を加算して、加算結果の信号を再
生信号xh(n)として再生して出力する。ここで、合
成フィルタ23は、奇数次伝達関数F0(z)を有する
IIR型低域通過ディジタルフィルタであり、入力され
る信号を低域ろ波して出力する。また、合成フィルタ2
4は、奇数次多項式で表現された伝達関数F1(z)を
有するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより構成
され、入力される信号を高域ろ波して出力する。
【0025】図1のQMFフィルタバンク回路におい
て、伝送路L1,L2において雑音が信号に挿入しない
という条件のもとで、合成フィルタバンク20側の再生
信号xh(n)として、分析フィルタバンク10への入
力信号x(n)と同一の信号を得るための、いわゆる完
全再構成条件は、「F0(z)=H0(z)、F1(z)
=−H1(z)、及びH1(z)=H0(−z)が成立
し、かつH0(z)H1(z)+F0(z)F1(z)が全
域通過関数である」ことである。従って、本実施形態に
おいて、当該完全再構成条件が成立することが好まし
い。
【0026】本発明に係る本実施形態のQMFフィルタ
バンク回路は、分析フィルタバンク10を図2に示すよ
うに構成する一方、合成フィルタバンク20を図3に示
すように構成したことを特徴とする。
【0027】ここで、本実施形態の分析フィルタバンク
10は、(a)入力される入力信号x(n)と、行列乗
算器30から出力されたm個の出力信号からなる出力信
号ベクトルV1を単位時間だけ遅延する遅延素子33を
介して入力される複数m個の信号からなる信号ベクトル
1’とを含む入力信号ベクトルに対して所定の行列S
を乗算して、中間信号ga(n)を出力するとともに、
乗算結果の信号として、出力信号y0(n)と、出力信
号ベクトルV1とを出力する行列乗算器30と、(b)
行列乗算器30から出力される出力信号y0(n)に対
して1/2倍のレートのダウンサンプリング処理を実行
して処理後の第1のチャンネル信号x0(n)を出力す
るダウンサンプラ14と、(c)行列乗算器30から出
力される中間信号ga(n)に対して所定の乗算係数A
35を乗算して、乗算結果の出力信号y1(n)を出力す
る乗算器35と、(d)乗算器35から出力される出力
信号y1(n)に対して1/2倍のレートのダウンサン
プリング処理を実行して処理後の第2のチャンネル信号
1(n)を出力するダウンサンプラ15とを備えたこ
とを特徴とする。
【0028】ここで、行列Sは、STS≦Im+1を満足す
る上記伝達関数H0(z)の状態空間実現行列E,f,
g,hから数15のように構成され、上記状態空間実現
行列E,f,g,hは上記伝達関数H0(z)と、数1
6の関係を持ち、次式のように因数分解されて表され、
【数29】 ここで、Imはm×mの単位行列であり、以下同様に明
らかな場合を除いてIの添字で単位行列のサイズを表わ
すものとする。また、乗算定数A35は√(1−s0 2)に
実質的に等しい。また、行列乗算器30は、(e)入力
信号ベクトルに対して行列R1を乗算して、乗算結果の
信号として、中間信号ga(n)を乗算器35に出力す
るとともに、m個の中間信号からなる中間信号ベクトル
Gaとを出力する行列乗算器31と、(f)行列乗算器
31から出力される中間信号ga(n)に対して所定の
乗算定数A34=s0を乗算して、乗算結果の信号を出力
する乗算器34と、(g)乗算器34から出力される乗
算結果の信号と、行列乗算器31から出力される中間信
号ベクトルGaとを含む信号ベクトルに対して行列R2
を乗算して、乗算結果の信号として、出力信号y
0(n)と、出力信号ベクトルV1とを出力する行列乗算
器32とを備える。
【0029】なお、行列乗算器31から出力される中間
信号ga(n)は分配器36により2分配され、分配さ
れた一方の中間信号は乗算器34を介して行列乗算器3
2に出力される一方、他方の中間信号は乗算器35を介
してダウンサンプラ15に出力される。
【0030】また、本実施形態の合成フィルタバンク2
0は、(a)入力される第1のチャンネル信号x0
(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
を実行して処理後の処理信号yh0(n)を出力するア
ップサンプラ21と、(b)入力される第2のチャンネ
ル信号x1’(n)に対して2倍のレートのアップサン
プリング処理を実行して処理後の処理信号yh1(n)
を出力するアップサンプラ22と、(c)アップサンプ
ラ22から出力される処理信号yh1(n)に対して所
定の乗算係数−A46=A45・A46を乗算して、乗算結果
の中間信号gb(n)を出力する乗算器45,46と、
(d)アップサンプラ21から出力される処理信号yh
0(n)と、行列乗算器40から出力されたm個の出力
信号からなる再生信号ベクトルV2を単位時間だけ遅延
する遅延素子43を介して入力される複数m個の信号か
らなる信号ベクトルV2’とを含む入力信号ベクトル、
及びアップサンプラ22から出力された中間信号gb
(n)に対して所定の転置行列STを乗算して、乗算結
果の信号として、再生信号xh(n)と、再生信号ベク
トルV2とを出力する行列乗算器40とを備えたことを
特徴とする。
【0031】ここで、行列Sの転置行列である行列ST
は、SST≦Im+1を満足する上記伝達関数F0(z)の
状態空間実現行列ET,gT,fT,hから、数18のよ
うに構成され、上記状態空間実現行列ET,gT,fT
hは上記伝達関数F0(z)と、数19の関係を持ち、
次式のように因数分解されて表され、
【数30】 ここで、乗算定数−A46は−√(1−s0 2)に実質的に
等しい。また、行列乗算器40は、(e)アップサンプ
ラ21から出力される処理信号yh0(n)と、行列乗
算器40から出力された再生信号ベクトルV2を単位時
間だけ遅延する遅延素子43を介して入力される信号ベ
クトルV2’とを含む入力信号ベクトルに対して、行列
2の転置行列である行列R2 Tを乗算して、乗算結果の
信号として、中間信号gc(n)と、中間信号ベクトル
Gbとを出力する行列乗算器41と、(f)行列乗算器
41から出力される中間信号gc(n)に対して所定の
乗算定数A44=s0を乗算して、乗算結果の信号を出力
する乗算器44と、(g)乗算器44から出力される乗
算結果の信号と、行列乗算器41から出力されるm個の
中間信号からなる中間信号ベクトルGbとを含む信号ベ
クトルに対して、行列R1の転置行列である行列R1 T
乗算して、乗算結果の信号として、再生信号xh(n)
と、再生信号ベクトルV2とを出力する行列乗算器42
とを備える。
【0032】なお、行列乗算器41から出力される中間
信号gc(n)は乗算器44を介して加算器47に入力
される一方、アップサンプラ22から出力される第2の
処理信号yh1(n)は乗算器45及び46を介して加
算器47に入力される。加算器47は、入力された2つ
の信号を加算して加算結果の信号を行列乗算器42に出
力する。
【0033】本発明は、QMFの2チャンネル型フィル
タバンク用として有効な2つのディジタルフィルタ構造
について発明したものである。このディジタルフィルタ
はIIRタイプであり、エイリアシングと振幅の両方の
歪みが排除されている。従って、このディジタルフィル
タは結果的に全域通過フィルタであり、位相歪みだけを
有している。また、当該ディジタルフィルタは、2つの
高度に並列化されモジュール化されて実現されている。
基本的な構成ブロックは、平面回転型セクション又は1
個の乗算器を用いた1乗算器セクションのいずれかであ
る。
【0034】本発明の実施形態を説明する前に、準備と
して、まずIIRフィルタを用いた2チャンネル型QM
Fフィルタバンク回路について説明する。ここでは、実
係数を有するディジタルフィルタについてのみ考察す
る。図1のQMFフィルタバンクの入出力信号の関係
は、z変換領域で次式で表わすことができる。
【数31】Xh(z)=(1/2)[H0(z)F0(z)+H1
(z)F1(z)]X(z)+(1/2)[H0(−z)F0(z)+H1
(−z)F1(z)]X(−z)
【0035】X(−z)を含む項におけるエイリアシン
グ及びイメージ効果をキャンセルするために、分析フィ
ルタと合成フィルタが次式を満足するように選択する
(従来技術文献2「貴家仁志著、”マルチレート信号処
理”6章(昭晃堂、1995)」、従来技術文献3「P.
P.Vaidyanathan,“QMF Banks,M-Band Extension and pe
rfect Reconstruction Techniques",IEEE ASSP Mag.,p
p.4-20,July 1987」参照。)。
【数32】F0(z)=H1(−z)
【数33】F1(z)=−H0(−z)
【0036】この場合、QMFフィルタバンク回路は次
式のような伝達関数を有する線形時不変システムとな
る。
【数34】T(z)=(1/2)[H0(z)H1(−z)−H
1(z)H0(−z)]
【0037】分析フィルタ12,13の伝達関数H
(z)及びH1(z)の選択が、QMF応答を特徴づ
ける。ここでは、
【数35】H1(z)=H0(−z) のように関係付けられているとする。
【0038】2つの分析フィルタ12,13が1対の低
域通過ハーフバンドフィルタ(以下、低域通過フィルタ
をLPFという。)と、高域通過ハーフバンドフィルタ
(以下、高域通過フィルタをHPFという。)(例え
ば、従来技術文献2及び3参照。)である場合について
述べる。この場合、
【数36】 T(z) =Xh(z)/X(z) =(1/2)(H0 2(z)−H1 2(z)) であり、次式を導出できる。
【数37】T(z)T(z-1)=(1/4)[(H0(z)H0(z
-1)+H1(z)H1(z-1))2−(H0(z)H1(z-1)+H
1(z)H0(z-1))2]
【0039】2つの分析フィルタ12,13は同一の極
を有し、
【数38】D0(z)=±D1(z)=D(z), (ここで、Di(z)(i=0,1)は、Hi(z)の分
母多項式を表する。)であると仮定する。
【0040】<注1>数35のハーフバンド制約条件に
より、D(z)は、Hi(z)(i=0,1)の次数が
奇数の場合、のzの奇数のべき乗の多項式である一方、
(z)の次数が偶数の場合、zの偶数のべき乗の多
項式である。すなわち、
【数39】D(z)=zd(z2),l=1 であり、ここで、l=1(又は0)である。
【0041】Hi(z)の分子をNi(z)(i=0,
1)で表すと、数37の右辺の第2項は次式のように書
き換えることができる。
【数40】{N0(z)N0(−z-1)+N0(−z)N0(z-1)}
/d(z2)d(z-2)
【0042】ここで、H0(z)が零点を単位円上で有
していないとすると、N0(z)は鏡像又は非鏡像多項
式(例えば、従来技術文献1参照。)のいずれかとな
る。すなわち、
【数41】N0(z-1)=±z-N0(z) であり、ここで、Nはディジタルフィルタの次数であ
る。また、数40の分子は、
【数42】±N0(z)N0(−z)z-N((−1)N
1) となる。従って、Nが奇数であればこの項はゼロであ
り、結果的に、数37は、
【数43】T(z)T(z-1)=(1/4)(H0(z)H
0(z-1)+H1(z)H1(z-1))2 となる。また、特に単位円上では、次式のようになる。
【数44】|T(exp(jω))|=(1/2)(|H
0(exp(jω))|2+|H1(exp(jω))|2
【0043】この1対の分析フィルタ12,13が
【数45】|T(exp(jω))|=1/2 となるような、電力相補型有界実(Bounded Real)ディ
ジタルフィルタ(例えば、従来技術文献4「P.P.Vaidya
nathan et al.,“Low Passband Sensitivity Digital F
ilters:A Generalized Viewpoint and Synthesis Proce
dures",Proceedings of IEEE,Vol.72,No.4,pp.404-424,
April 1984」参照。)であるなら、T(z)は全域通過
型(振幅歪みが無い。)となる。有界実関数(以下、B
R関数という。)の場合、電力相補型ディジタルフィル
タの構成方法は多くの文献において開示されている(例
えば、従来技術文献1及び従来技術文献5「A.Klouche-
Djedid,“On the Synthesis of the Generalized Casca
ded LBR Digital Filter Structures",IEICE Transacti
ons on Fundamentals,Vol.E77-A,No.2,February 1994」
参照。)。
【0044】<注2>また、数35のハーフバンドの制
約条件により、
【数46】N1(z)=±N0(−z) は必ず、単位円上にすべての零点を有する鏡像多項式又
は反鏡像多項式のいずれかである。数44によれば、伝
達関数H1(z)の零点が伝達関数H0(z)の振幅応答
の最大値を与える周波数に対応するので、伝達関数H0
(z)の振幅値が最大値1となる周波数点の数は伝達関
数H0(z)の次数に等しい。ここで、バターワース、
チェビシェフ、楕円ディジタルフィルタはこのような条
件を満足している。
【0045】以下に、図1の2チャンネルQMFが全域
通過型周波数応答を得るための必要条件について要約す
る。 (1)ディジタルフィルタの次数Nが奇数であること。 (2)単位円上で複数の零点又は複数の値が1となる点
を有する低域通過ハーフバンドフィルタH0(z)であ
ること。 (3)伝達関数H1(z)が数44を満足するような電
力相補型ディジタルフィルタであること。以上で本発明
の第1の実施形態を説明するための準備を終わる。
【0046】次に、本発明によるディジタルフィルタの
実現として可能な2つの場合について示す。まず、公知
の無損失有界実(Loss-less Bounded Real;以下、LB
Rという。)関数構造(例えば、従来技術文献4参
照。)を有する因数分解された状態空間方程式に基づく
新たな構成方法、次に、分析フィルタ12,13の可制
御正準形有界実(Bounded Real、以下BRという)状態
空間記述(state-space-description;以下、SSDと
いう。)行列の因数分解を用いたハーフバンド直交フィ
ルタ構成である。
【0047】まず、第1の実現法として、因数分解され
た状態空間LBR実現について述べる。前述の必要条件
を満たすBR最小伝達関数の場合、次式に示す(N+
1)×(N+1)のBRSSD行列
【数47】 (例えば、従来技術文献3及び従来技術文献4「P.P.Va
idyanathan,“The Discrete-time LBR Lemma in Digita
l Filtering",IEEE Transactions on Circuits and Sys
tem,Vol.CAS-32,No.9,September 1985」参照。)が存在
していることが知られている。ここで、BR行列Sと
は、安定なシステム、すなわち単位円内部に行列Aの固
有値が存在するSSD行列を意味し、また、
【数48】STS≦IN+1 という条件、すなわち行列(STS−IN+1)は半負値で
あることを意味している。ここではIN+1は(N+1)
×(N+1)の単位行列である。先の従来技術文献6に
おいて明確にされていないこうしたBRSSD行列を導
く方法を本明細書の付録Aに示す。状態空間行列因数分
解法を用いると、伝達関数H0(z)の振幅値が最大と
なる周波数に応じて、以下に示す行列Sの3通りの因数
分解の仕方が存在する。付録Bにその証明を示す。
【0048】(a)ケース1:H0(1)=1の場合、
【数49】 (b)ケース2:H0(exp(jωi))=exp(j
ωi)の場合、
【数50】 (c)ケース3:H0(exp(jωi))=exp(j
α)の場合、
【数51】
【0049】ここで、行列Rijは以下のように定義する
平面回転行列である。θを回転角とするとき、(N+
1)×(N+1)の単位行列の(i,i),(i,
j),(j,i),(j,j)要素をそれぞれcos
θ,sinθ,−sinθ,cosθに置き換えたもの
である。すなわち、(N+1)次の単位行列を取り、平
面回転によって要素(i,i),(i,j),(j,
i),(j,j)を交換する。行列S0もまた、上記3
ケースのうちの1つを満足するBR伝達関数を表すBR
SSD行列であり、さらに行列S0が行列Sよりも1だ
け(ケース1の場合)、又は2だけ(ケース2又は3の
場合)次元が小さいので、スカラーs(<1)を得る
まで因数分解処理を反復可能である(例えば、従来技術
文献7「P.P.Vaidyanathan,“A general Theorem for D
egree-reduction of a Digital BR function",IEEE Tra
nsactions on Circuit and System,Vol.CAS-32,No.4,Ap
ril 1985」参照。)。結果として得られた実現は、次の
ようなSSD行列の直交因数分解に対応する。
【0050】
【数52】
【0051】ここで、R1及びR2はいくつかの平面回転
行列の積である。その結果、図2の信号フローグラフが
得られる。y0(n)に対する応答がH0(z)であり、
1(n)に対応する応答がH1(z)である。なぜな
ら、対応する1入力2出力のSSD行列が直交している
ので、電力相補フィルタ対に対応しているためである
(従来技術文献6参照。)。N=2N1+2N2+N3
仮定すると(ここで、2N1、2N2、N3はそれぞれ上
記ケース3、2、1を満たす周波数点の数である。)、
平面回転操作回数は4N1+3N2+2N3である。CO
RDICアルゴリズムを使用して、各平面回転行列を実
現することができる(例えば、従来技術文献8「J.S.Wa
lter,“A Unified Algorithm for Elementary Function
s",Proceedings of Spring Joint Computation Confere
nce(SJCC) AFIPS Proceedings,Vol.38,pp.379-385,197
1」参照。)。CORDICアルゴリズムの代わりに平
面回転操作に1個の乗算器を用いた2入力2出力セクシ
ョン(以下、1乗算器セクションという。図4に図示さ
れる。)を使用することができる。このことは、平面回
転とそれに対応する1乗算器セクションとの次の関係に
よって可能である。
【0052】
【数53】
【0053】ここで、
【数54】c=cos(θ) s=sin(θ) である。
【0054】この関係をSSD行列形式に適用すると、
乗数s(1+c)-1及びs-1(1+c)がそれぞれ1乗
算器セクションの前後にくる形で実現される。しかしな
がら、ケース3の場合は1乗算器セクションを用いた構
造的無損失QMF実現は不可能であり、SSD行列の因
数分解で示される対称性によってこれが可能であるケー
ス1及び2とは異なって、幾つかの特別なスケーリング
係数を必要とする。バターワースフィルタは、すべての
平面回転行列の抽出段階でケース1を満足し、非常に単
純な構造となる。これらすべての実現回路は、係数量子
化のもとで良好に作用することが知られており(例え
ば、従来技術文献9「P.P.Vaidyanathan,“Multirate S
ystems and Filter Banks,"Prentice-Hall,pp.217-21
8,pp.418-423,1993」参照。)、従って、係数の絶対値
が1未満に保持されている限りは不安定になることはな
く、寄生振動も生じない。
【0055】次いで、第2の実現法として、ハーフバン
ド直交フィルタ構成について述べる。以下、対象とする
ディジタルフィルタがハーフバンド特性であることを利
用して乗算器数の少ない構造について説明する。伝達関
数H0(z)の係数の対称性により、SSD行列Sは
「擬似的にスパース、すなわち擬似的に疎」(多くのゼ
ロの要素を有する)行列である。わかりやすくするため
に、ディジタルフィルタの次数を3として説明する。伝
達行列[H0(z) H1(z)]Tを有する1入力2出
力の分析フィルタの可制御正準形SSD行列Sdをと
り、付録Aの直交化手順を適用すると、行列Sdは次式
に示す形に変形できる。
【数55】
【0056】この行列Sdの各列は直交しており、5行
列目に新たに行列を追加することによって各行を直交化
することができる。このことは、次のような形式の直交
QRファクタ(又は因数)を生じる行列SdのQR分解
によって実行可能である。
【数56】 行列Qは、ガウス消去法を使用して次のような方法で因
数分解することができる。
【数57】 ここで、Rijは先に定義した平面回転行列である。この
場合の行列Qは拡張された2入力2出力のLBR伝達行
列の直交SSD行列を表わしている。そして、cosや
sinの位置を変えることにより、次式に示すように同
様の実現として行列Q’を得ることができる。
【数58】
【0057】この変換は、信号フローグラフをできる限
り並列にさせるために行う。ここで、置換行列(数58
の右辺の左端の行列)の存在のために出力における入れ
替えは必要である。QMFディジタルフィルタの場合
も、同じ実現が可能だが、所望の1入力2出力のQMF
分析フィルタ12、13を得るために、第2の入力信号
を0にする必要がある。この場合の回転操作数は4であ
る。一般的な奇数の次数Nでは、同様な因数分解が可能
であり、回転操作数はN+1である。よって、回転操作
数は第1の実現法の約半分となる。3次のディジタルフ
ィルタの場合は図5のような構造が得られる。ここで
も、各平面回転(及び幾つかのスケーリング係数)の代
わりに1乗算器セクションが使用可能である。第1の実
現法も第2の実現法も、合成フィルタ23,24の伝達
関数は、
【数59】F0(z)=H0(z) F1(z)=−H1(z) として数32、数33及び数35から簡単に導くことが
できる。
【0058】従って、図3に示すように、先の信号フロ
ーグラフを転置し、高域チャンネルに対応する第2の入
力信号を反転することによって、分析フィルタ12,1
3の構成に使用したものと同一のディジタルフィルタ構
造を、合成フィルタ23,24にも使用することができ
る。
【0059】さらに、ディジタルフィルタの実現におけ
る基本的な構成ブロックは、次のうちのいずれかであ
る。 (a)
【数60】 によって表される2×2の回転行列を用いて、2個の要
素からなる1個のベクトルを2個の要素からなる別のベ
クトルへと回転させる平面回転行列。 (b)図4に示すような、3つの加算器51,52,5
3と1つの乗算器54によって実現することが可能な演
【数61】 を用いて2個の要素からなるベクトルを別のベクトルに
変換する1乗算器セクション。
【0060】さらに、以上で述べた第2の実現法による
分析フィルタバンク10及び合成フィルタバンク20の
構成をより簡潔な形式で記述したブロック図を図11及
び図12に示す。第2の実現法の分析フィルタバンク1
0においては、2つの伝達関数H0(z)とH1(z)が
ともに次数Nの有界実伝達関数であり、H0(z)とH1
(z)の間にはH1(z)=H0(−z)かつすべての正
規化角周波数ωに対して│H0(exp(jω))│2
│H1(exp(jω))│2=1の関係を有する。ま
た、第2の実現法の合成フィルタバンク20において
は、2つの伝達関数F0(z)とF1(z)がともに次数
がNの有界実伝達関数であり、F0(z)とF1(z)の
間にF1(z)=−F0(−z)かつすべての正規化角周
波数ωに対して│F0(exp(jω))│2+│F
1(exp(jω))│2=1の関係を有する。
【0061】図11の分析フィルタバンク10は、
(a)入力される入力信号x(n)と、0である零入力
信号と、行列乗算器70から出力されたN個の出力信号
からなる出力信号ベクトルV3を単位時間だけ遅延する
遅延素子73を介して入力される複数N個の信号からな
る信号ベクトルV3’とを含む入力信号ベクトルに対し
て所定の行列Qを乗算して、乗算結果の信号として、上
記出力信号ベクトルV3と、第1の出力信号y0(n)
と、第2の出力信号y1(n)とを出力する行列乗算器
70と、(b)行列乗算器70から出力される第1の出
力信号y0(n)に対して1/2倍のレートのダウンサ
ンプリング処理を実行して処理後の第1のチャンネル信
号x0(n)を出力するダウンサンプラ14と、(c)
行列乗算器70から出力される第2の出力信号y
1(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリン
グ処理を実行して処理後の第2のチャンネル信号x
1(n)を出力するダウンサンプラ15とを備える。
【0062】ここで、上記行列Qは、入力信号x(n)
を入力とする1入力2出力の伝達行列[H0(z) H1
(z)]Tを、
【数62】 [H0(z) H1(z)]T=C(zIN−A)-1B+D と表わすことができる可制御正準形状態空間実現行列
A,B,C,Dから構成される(N+2)×(N+1)
の行列
【数63】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列Sに、上記行列Sの各列
が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+2)
列目に加えることにより得られた(N+2)×(N+
2)の行列であって、上記行列Qは、次式のように行列
Pと行列Rとに因数分解されて表される。
【数64】Q=PR
【0063】さらに、行列乗算器70は、(a)上記入
力信号ベクトルに対して上記行列Rを乗算して、乗算結
果の信号として、N個の中間信号からなる中間信号ベク
トルGcと、2個の別の信号とを出力する行列乗算器7
1と、(b)行列乗算器71から出力される中間信号ベ
クトルGcと2個の別の信号とに対して上記行列Pを乗
算して、乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトル
3と、上記第1の出力信号y0(n)と、上記第2の出
力信号y1(n)とを出力する行列乗算器72とを備え
る。
【0064】図12の合成フィルタバンク20は、
(a)入力される第1のチャンネル信号x0’(n)に
対して2倍のレートのアップサンプリング処理を実行し
て処理後の第1の処理信号yh0(n)を出力するアッ
プサンプラ21と、(b)入力される第2のチャンネル
信号x1’(n)に対して2倍のレートのアップサンプ
リング処理を実行して処理後の第2の処理信号yh
1(n)を出力するアップサンプラ22と、(c)アッ
プサンプラ22から出力される第2の処理信号yh
1(n)に対して所定の乗算係数A84=−1を乗算する
ことにより反転して、乗算結果の反転された第2の処理
信号yh1(n)を出力する乗算器(符号反転器又はイ
ンバータ)84と、(d)アップサンプラ21から出力
される第1の処理信号yh0(n)と、乗算器84から
出力される反転された第2の処理信号yh1(n)と、
行列乗算器80から出力されたN個の再生信号からなる
再生信号ベクトルV4を単位時間だけ遅延する遅延素子
83を介して入力される複数N個の信号からなる信号ベ
クトルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して所定
の転置行列QTを乗算して、乗算結果の信号として、再
生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上記再生
信号ベクトルV4とを出力する行列乗算器80とを備え
る。
【0065】ここで、上記転置行列QTは、再生信号x
h(n)を出力とする2入力1出力の伝達行列[F
0(z) F1(z)]を、
【数65】[F0(z) F1(z)]=C’(zIN
A’)-1B’+D’ と表わすことができる可制御正準形状態空間実現行列
A’,B’,C’,D’から構成される(N+2)×
(N+1)の行列
【数66】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列S’に、上記行列S’の
各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+
2)列目に加えることにより得られた(N+2)×(N
+2)の行列であって、上記転置行列QTは、次式のよ
うに転置行列PTと転置行列RTとに因数分解されて表さ
れる。
【数67】QT=RTT
【0066】ここで、行列乗算器80は、(a)アップ
サンプラ21から出力される第1の処理信号yh
0(n)と、乗算器84から出力される反転された第2
の処理信号yh1(n)と、上記信号ベクトルV4’とを
含む入力信号ベクトルとに対して上記転置行列PTを乗
算して、乗算結果の信号として、中間信号ベクトルGd
と、2個の別の信号とを出力する行列乗算器81と、
(b)行列乗算器81から出力される中間信号ベクトル
Gdと2個の別の信号とを含む信号ベクトルに対して上
記転置行列RTを乗算して、乗算結果の信号として、再
生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上記再生
信号ベクトルV4とを出力する行列乗算器82とを備え
る。
【0067】なお、第2の実現法によるQMFフィルタ
バンク回路においても、合成フィルタバンク20におい
て元の入力信号x(n)と同じ再生信号h(n)を得る
ためには、「F0(z)=H0(z)、F1(z)=−H1
(z)、及びH1(z)=H0(−z)が成立し、かつH
0(z)H1(z)+F0(z)F1(z)が全域通過関数
である」という完全再構成条件が成立することが必要で
ある。
【0068】以上説明したように構成することにより、
第1の実施形態の第2の実現法によるQMFフィルタバ
ンク回路は、第1の実現法と同様の効果を有するととも
に、第1の実現法による回路に比較して回路構成が簡単
であるという特有の効果を有する。
【0069】<<第1の実施形態の実施例>>次いで、
実施例とコンピュータによるシミュレーション結果につ
いて述べる。まず、第1の実現法である。因数分解され
た状態空間LBR実現について述べる。
【0070】まず最初に、以下の極・零点を持つ28d
Bの阻止域減衰量を有する5次のハーフバンド楕円ディ
ジタルフィルタの対について考察する。ここで、伝達関
数H1(z)の極はH0(z)の極と同じであり、また、
1(z)の零点はH0(z)の零点の符号を反対にした
ものなので、H0(z)の極・零点のみを示す。 (a)極は、±j0.8929、±j0.5695、0
に存在する。 (b)零点は、−1、exp(±j1.7715)、e
xp(±j2.1289)において存在する。 本明細書の最後に記載の付録A、Bの結果を用いて、次
式のような直交LBRSSD因数分解行列を得る。
【数68】 回転角等として、次の表1に示す値を得る。ここで、回
転角θijに対応する回転行列はRijである。ただし、角
度はラジアン表示である。
【0071】
【表1】 ─────────── s=−0.1622 θ45=2.7382 θ46=0.5954 θ23=2.2857 θ12=0.6415 θ24=2.6297 θ34=0.7741 θ56=1.6479 ───────────
【0072】図6は、第1の実施形態の第1の実現法に
おいて、回転操作にCORDICアルゴリズムを用い
て、角度の量子化を6ビットとして、上記楕円ディジタ
ルフィルタによる直交LBR2チャンネルフィルタバン
クを実現したときの係数量子化のないHPF、角度量子
化LPF、角度量子化HPF及び係数量子化のないLP
Fの相対利得の周波数特性を示すグラフである。
【0073】次に、バターワースディジタルフィルタに
対して、第1の実現法である因数分解されたLBR状態
空間実現行列について試した。5次のハーフバンドバタ
ーワース高域通過フィルタは、±j0.7265,±j
0.3249,0において極を有し、零点は全て+1に
存在する。この場合、平面回転行列の抽出処理はケース
1のみを包含するだけであるため、得られるBRSSD
行列は簡単なものとなる。さらに、図4の構成ブロック
を使用して乗算器の数を節約することも可能である。
【数69】
【0074】ここで、I5は5×5の単位行列、M
ijは、6×6の単位行列のうちの(i,i),(i,
j),(j,i),(j,j)要素をそれぞれci,1
+ci,ci−1,ciに置き換えた行列である。これは
図4に示す1乗算器セクションに対応する。ci等の値
は次式の通りである。
【数70】s0=0.0528,
【数71】c1=0.7457, c2=−0.8935, c3=0.9040, c4=−0.8506, c5=0.6180 である。
【0075】図7は、第1の実施形態の第1の実現法に
おいて、このバターワースディジタルフィルタを6ビッ
トで係数量子化した直交LBR2チャンネルフィルタバ
ンクを実現したときの係数量子化のないHPF、角度量
子化LPF、角度量子化HPF及び係数量子化のないL
PFの振幅周波数特性を示すグラフである。図7から明
らかなように、−1(正規化周波数0.5に対応)にお
ける零点近傍で良好な特性が認められる。
【0076】次に、発明した第2の実現法を用いて先の
楕円フィルタ及びバターワースフィルタを実現した。楕
円フィルタの場合、可制御正準形SSD行列及び付録A
を用いて数55の形式を有するBR SSD行列を次式
のように得る。
【数72】 これより数72の直交Q行列の次式のような因数分解を
得る。
【数73】Q=PR122613243547 ここで各回転行列Rijは次の表2に示す角度パラメータ
を有する。
【0077】
【表2】 ──────────── θ12=2.3562 θ13=0.9531 θ35=2.7583 θ26=0.2314 θ24=2.5309 θ47=0.4235 ────────────
【0078】
【数74】 は置換行列である。
【0079】図8は、第1の実施形態の第2の実現法に
おいて、回転操作にCORDICアルゴリズムを用いて
6ビットで角度量子化したときのハーフバンド直交2チ
ャンネルフィルタバンクを実現したときの係数量子化の
ないHPF、角度量子化LPF、角度量子化HPF及び
係数量子化のないLPFの振幅周波数特性を示すグラフ
である。図8から明らかなように、回転操作の数は第1
の実現法より少ないが、周波数応答は角度量子化のもと
でも劣化が小さい。ここで、置換行列が存在するため、
構造は第1の実現法ほど並列化されていない。バターワ
ースディジタルフィルタも同様の方法を用いて実現し
た。その結果、この場合のQ行列は次式の通りである。
【数75】 行列Qは回転行列Rijに、表3に示す角度パラメータを
有して、次式のように因数分解される。
【数76】Q=PR122613243547
【0080】
【表3】 ─────────── θ12=0.7854 θ13=1.1872 θ35=2.8160 θ26=0.0747 θ24=0.7101 θ47=3.0265 ───────────
【0081】ここで、行列Pは数74と同じ置換行列で
ある。
【0082】図9は、第1の実施形態の第2の実現法に
おいて、回転操作にCORDICアルゴリズムを用いて
6ビットで角度量子化したときの、ハーフバンド直交2
チャンネルフィルタバンクを実現したときの係数量子化
のないHPF、角度量子化LPF、角度量子化HPF及
び係数量子化のないLPFの振幅周波数特性を示すグラ
フである。
【0083】最後に、発明した第1の実現法でも第2の
実現法でもQMFの総合周波数応答は、係数量子化のも
とであっても依然として全域通過型のままであることを
強調しておく。これは直接形実現の場合にはあり得ない
ことである。図10は、楕円フィルタを6ビットで係数
量子化したときの直接形及び直交形2チャンネルQMF
の振幅周波数特性を示すグラフである。図10から明ら
かなように、係数量子化によりQMF総合振幅特性に歪
みを生じているのに対して、本発明による実現法ではそ
れがない。
【0084】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、IIR形2チャンネルQMFバンクを振幅歪みが無
いように構成できる。2つの直交型の因数分解された状
態空間実現回路を発明し、高度に並列化されたモジュー
ル方式の信号フローグラフを得た。両構造共に、基本的
な構成単位は、CORDICアルゴリズムにより効果的
に実現可能な平面回転行列である。また、奇数次の低域
通過バターワースハーフバンドディジタルフィルタの場
合、1乗算器セクションを用いる場合においては、LB
R実現が特に簡単である。ハーフバンドディジタルフィ
ルタの実現は、分析フィルタに関するBRSSD行列の
スパース性を利用して誘導した。さらに、発明したフィ
ルタバンク回路は、係数量子化のもとでも良好な特性を
維持できる。
【0085】従って、本実施形態によれば、従来例に比
較して回路が簡単であって、行列乗算器31,32,4
1,42や乗算器34,35,44,45,46など一
定の構造の小さい構成要素を組み合わせて構成するため
に、従来例に比較して回路が簡単であって、モジュール
化、並列化(又はパラレル化)、パイプライン化するこ
とができ、LSI化又はVLSI化することが容易であ
る分析フィルタバンク、合成フィルタバンク、及びQM
Fフィルタバンク回路を提供することができる。また、
ディジタルフィルタの係数量子化や乗算後の丸め処理な
どの有限語長に起因する劣化に対する耐性が強いという
特有の効果がある。
【0086】<第2の実施形態>図13は、本発明に係
る第2の実施形態のQMFフィルタバンク回路の構成を
示すブロック図であり、図13において図1と同一のも
のは同一の符号を付しており、当該QMFフィルタバン
ク回路は、分析フィルタバンク10aと、合成フィルタ
バンク20aとからなる。第2の実施形態においては、
各フィルタ12,13,23,24の伝達関数は、偶数
次有理関数で表現され、第1の実施形態のそれらと区別
するために、ダッシュ(’)を付加している。また、第
2の実施形態では、回路構成の簡単化のために、第1の
実施形態における第2の実現法による構成方法のみを採
用する。すなわち、第2の実施形態は、第1の実施形態
における第2の実現法を、偶数次有理関数で表現された
伝達関数を有するIIR型ディジタルフィルタに適用し
たものである。
【0087】図13において、分析フィルタバンク10
aは、図1の分析フィルタバンク10と比較して、分析
フィルタ13とダウンサンプラ15との間に、入力され
る信号を所定の単位時間だけ遅延して出力する遅延素子
16を挿入したことを特徴とし、合成フィルタバンク2
0aは、図1の合成フィルタバンク20と比較して、ア
ップサンプラ21と合成フィルタ23との間に、入力さ
れる信号を所定の単位時間だけ遅延して出力する遅延素
子26を挿入したことを特徴とする。第2の実施形態の
第2の実現法の分析フィルタバンク10aにおいては、
2つの伝達関数H0’(z)とH1’(z)がともに次数
Nの有界実伝達関数であり、H0’(z)とH1’(z)
の間にはH1’(z)=H0’(−z)かつすべての正規
化角周波数ωに対して│H0’(exp(jω))│2
│H1’(exp(jω))│2=1の関係を有する。ま
た、第2の実施形態の第2の実現法の合成フィルタバン
ク20aにおいては、2つの伝達関数F0’(z)と
1’(z)がともに次数がNの有界実伝達関数であ
り、F0’(z)とF1’(z)の間にF1’(z)=
0’(−z)かつすべての正規化角周波数ωに対して
│F0’(exp(jω))│2+│F1’(exp(j
ω))│2=1の関係を有する。
【0088】図14は、図13の分析フィルタバンク1
0aの構成を示すブロック図であり、図14において図
11と同一のものについては同一の符号を付している。
図14において、分析フィルタバンク10aは、(a)
入力される入力信号x(n)と、0である零入力信号
と、行列乗算器70から出力されたN個の出力信号から
なる出力信号ベクトルV3を単位時間だけ遅延する遅延
素子73を介して入力される複数N個の信号からなる信
号ベクトルV3’とを含む入力信号ベクトルに対して所
定の行列Q’を乗算して、乗算結果の信号として、上記
出力信号ベクトルV3と、第1の出力信号y0(n)と、
第2の出力信号y1(n+1)とを出力する行列乗算器
70と、(b)行列乗算器70から出力される第2の出
力信号y1(n+1)を上記単位時間だけ遅延して遅延
された第2の出力信号y1(n)を出力する遅延素子1
6と、(c)行列乗算器70から出力される第1の出力
信号y0(n)に対して1/2倍のレートのダウンサン
プリング処理を実行して処理後の第1のチャンネル信号
0(n)を出力するダウンサンプラ14と、(d)遅
延素子16から出力される遅延された第2の出力信号y
1(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリン
グ処理を実行して処理後の第2のチャンネル信号x
1(n)を出力するダウンサンプラ15とを備える。
【0089】ここで、上記行列Q’は、入力信号x
(n)を入力とする1入力2出力の伝達行列[H0
(z) H1’(z)]Tを、
【数77】[H0’(z) H1’(z)]T=C(zIN
−A)-1B+D と表わすことができる可制御正準形状態空間実現行列
A,B,C,Dから構成される(N+2)×(N+1)
の行列
【数78】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列Saに、上記行列Saの
各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+
2)列目に加えることにより得られた(N+2)×(N
+2)の行列であって、上記行列Q’は、次式のように
行列P’と行列R’とに因数分解されて表される。
【数79】Q’=P’R’
【0090】ここで、図14の行列乗算器70は、
(a)入力信号ベクトルに対して上記行列R’を乗算し
て、乗算結果の信号として、N個の中間信号からなる中
間信号ベクトルGcと、2個の別の信号とを出力する行
列乗算器71と、(b)行列乗算器71から出力される
中間信号ベクトルGcと2個の別の信号とに対して上記
行列P’を乗算して、乗算結果の信号として、上記出力
信号ベクトルV3と、上記第1の出力信号y0(n)と、
上記第2の出力信号y1(n+1)とを出力する行列乗
算器72とを備える。
【0091】図15は、図13の合成フィルタバンク2
0aの構成を示すブロック図であり、図15において図
12と同一のものについては同一の符号を付している。
図15において、合成フィルタバンク20aは、(a)
入力される第1のチャンネル信号x0’(n)に対して
2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
後の第1の処理信号yh0(n)を出力するアップサン
プラ21と、(b)入力される第2のチャンネル信号x
1’(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング
処理を実行して処理後の第2の処理信号yh1(n)を
出力するアップサンプラ22と、(c)アップサンプラ
21から出力される第1の処理信号yh0(n)を上記
単位時間だけ遅延して遅延された第1の処理信号yh0
(n−1)を出力する遅延素子26と、(d)遅延素子
26から出力される遅延された第1の処理信号yh
0(n−1)と、アップサンプラ22から出力される第
2の処理信号yh1(n)と、行列乗算器80から出力
されたN個の再生信号からなる再生信号ベクトルV4
単位時間だけ遅延する遅延素子83を介して入力される
複数N個の信号からなる信号ベクトルV4’とを含む入
力信号ベクトルとに対して所定の転置行列Q’Tを乗算
して、乗算結果の信号として、再生信号xh(n)と、
0である零再生信号と、上記再生信号ベクトルV4とを
出力する行列乗算器80とを備える。
【0092】ここで、上記転置行列Q’Tは、再生信号
xh(n)を出力とする2入力1出力の伝達行列
[F0’(z) F1’(z)]を、
【数80】[F0’(z) F1’(z)]=C’(zI
N−A’)-1B’+D’ と表わすことができる可制御正準形状態空間実現行列
A’,B’,C’,D’から構成される
【数81】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
(N+2)×(N+1)の行列Sa’に、上記行列S
a’の各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを
(N+2)列目に加えることにより得られた(N+2)
×(N+2)の行列であって、上記転置行列Q’Tは、
次式のように転置行列R’Tと転置行列P’Tとに因数分
解されて表される。
【数82】Q’T=R’TP’T
【0093】ここで、図15の行列乗算器80は、
(a)遅延素子26から出力される遅延された第1の処
理信号yh0(n−1)と、アップサンプラ22から出
力される第2の処理信号yh1(n)と、上記信号ベク
トルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して上記転
置行列P’Tを乗算して、乗算結果の信号として、中間
信号ベクトルGdと、2個の別の信号とを出力する行列
乗算器81と、(b)行列乗算器81から出力される中
間信号ベクトルGdと2個の別の信号とを含む信号ベク
トルに対して上記転置行列R’Tを乗算して、乗算結果
の信号として、再生信号xh(n)と、0である零再生
信号と、上記再生信号ベクトルV 4とを出力する行列乗
算器82とを備える。
【0094】第2の実施形態においても、第1の実施形
態と同様に、合成フィルタバンク20aの再生信号xh
(n)として、分析フィルタバンク10aへの入力信号
x(n)と同一の信号を得るためには、「F0’(z)
=H0’(z)、F1’(z)=H1’(z)、及びH1
(z)=H0’(−z)が成立し、かつH02(z)+
12(z)が全域通過関数である」という完全再構成
条件が成立することが必要である。
【0095】以下、第2の実施形態の場合を例にとり、
QMFフィルタバンク回路の構成方法について詳述す
る。次数Nの電力相補型フィルタの場合(H(z)及
びH(z)の場合)、列直交性の(N+2)×(N+
1)SSD行列Sが存在する(従来技術文献6参
照。)。数39から、SSD行列Sはスパース行列(ゼ
ロ要素を多く有している。)であると考えられる。解り
やすく説明するため、フィルタの次数が4である特定例
を挙げて新たな実現法の説明を展開する。伝達行列[H
0(z) H1(z)]を有する1入力2出力の分析フ
ィルタのコントローラ基準形式のSSD行列Scは、次
式で表される。
【数83】
【0096】ここで、雑音行列を
【数84】 とおき、ここで、Ac及びCcはそれぞれ状態行列、出力
行列であって、一例では、
【数85】
【数86】 である。
【0097】雑音行列Wcのコレスキー(Choles
ky)ファクタTcを相似変換行列としてScに適用する
と、列直交実現行列Sが得られる(従来技術文献6参
照。)。ファクタTとその逆数が次式のような構造で
あることは容易に証明できる。
【数87】 ここで、xの値はゼロではない。そして、最終的に得ら
れる列直交SSD行列Sは、次のような形式のものであ
る。
【数88】
【0098】ここで、6列目に対して所定の列ベクトル
を加えることにより、行を直交化することができる。こ
れは、S行列のQR分解によって実現可能であり、最終
的に直交因子Qは次のような形式となる。
【数89】 上記数89の最後の式は、ガウスの消去法を使用して求
めることができる。ここで、Rijは平面i及びjのみに
作用する平面回転又は反転である。すなわち、これは平
面回転又は反転がそれぞれ、
【数90】 又は
【数91】 で置換される要素(i,i),(i,j),(j,
i),(j,j)を除いて基本的に単位行列である。行
列Qは、2入力2出力の無損失有界実(LBR)伝達行
列に直交するSSD行列と見ることができるため、2番
目の入力信号(Qの最終列に結合している。)を0に設
定すれば所望の実現が得られる。
【0099】ここで、隣接するノードでできるだけ多く
の回転を起こさせ、次式の恒等式
【数92】Rij=Pi(j-1)(j-1)ji(j-1) を使って、すべての置換行列を結合してSSD行列の出
力で1つにまとめることにより信号フローグラフを可能
な限り並列にすることが可能である。数92で、P
i(j-1)は平面iと平面j−1のみに作用する置換行列で
ある。図14は、結果として得られるフローグラフであ
る。ここで、R’行列は平面回転数の積で構成されてい
る。この場合、回転数は5であり、一般の次数Nの分解
構造は保存され、回転数はN+1となる。合成フィルタ
バンクは、図15に示すように図14の信号フローグラ
フの転置によって導き出すことができる。
【0100】<<第2の実施形態の実施例>>次いで、
一例を示す。次のような極及び零点(H1(z)の極は
0(z)と同一でありその零点はH0(z)の場合の反
対符号であるため、ここではH0(z)の場合しか提示
していない。)を有する50dBの阻止域減衰量をもつ
6次楕円ハーフバンドフィルタについて考える。 極:±j0.8536、±j0.5556、±j0.1
973。 零点:exp(±j2.2424)、exp(±j2.
7838)、exp(±j1.9969)。
【0101】数89の形のLBR SSD行列は、伝達
行列の可制御正準形実現、付録Aの直交化過程、及び次
のような対応する直交化Q行列の因数分解を用いて見つ
けることができる。
【数93】Q=PR16671256234528 ここで、
【数94】 であり、また、行列Rijは、反転行列R16及びR23を除
いて、角度θ16=45゜、θ67=5.3694゜、θ12
=−68.2413゜、θ56=46.0200゜、θ23
=−118.4136゜、θ45=162.0001゜、
θ28=−12.2241゜の平面回転行列である。
【0102】図16は、第2の実施形態の第2の実現法
において、6ビット角度量子化を使用したディジタルフ
ィルタを備えたQMFフィルタバンク回路の振幅周波数
特性を示す。図16から明らかなように、同一の量子化
ビット数の下では、従来技術文献1において開示された
従来例の全域通過ブロックを用いた回路の周波数応答よ
り感度特性が良好であるという利点がある。
【0103】第2の実施形態は、IIR型ディジタルフ
ィルタを備えた2チャネルQMFフィルタバンクを、振
幅ひずみのないように構成されたものである。フィルタ
の実現は、直交スパース疎状態空間行列の単純な平面回
転又は反転への因数分解を基礎としている。この回転や
反転は、公知のCORDICアルゴリズムによって効果
的に実現可能である。従って、第2の実施形態によれ
ば、第1の実施形態と同様の効果を有する。すなわち、
第2の実施形態によれば、偶数次伝達関数であっても、
従来例に比較して回路が簡単であって、モジュール化、
並列化(又はパラレル化)、パイプライン化することが
でき、LSI化又はVLSI化することが容易である分
析フィルタバンク、合成フィルタバンク、及びQMFフ
ィルタバンク回路を提供することができる。また、ディ
ジタルフィルタの係数量子化や乗算後の丸め処理などの
有限語長に起因する劣化に対する耐性が強いという特有
の効果がある。
【0104】<応用例>上述の第1と第2の実施形態の
QMFフィルタバンク回路を、図17及び図18のシス
テムに適用してもよい。図17は、8個のバンドの伝送
路を用いて伝送する公知の対称な8分割システムであ
り、分析フィルタバンク回路100と合成フィルタバン
ク回路200とからなる。図18は、4個のバンドの伝
送路を用いて伝送する公知のオクターブ分割システムで
あり、分析フィルタバンク回路100と合成フィルタバ
ンク回路200とからなる。図17と図18では、図1
のフィルタバンク回路を用いているが、図13のフィル
タバンク回路を使うこともできる。これらは混用しても
よいが、対となる分析フィルタバンク回路と合成フィル
タバンク回路の伝達関数の次数は一致する必要がある。
【0105】<付録A>伝達関数H0(z)を実かつ最
小のBR伝達関数とすると、LBR補助定理(従来技術
文献6参照。)により、
【数95】STS≦I であるようなBRSSD行列Sが存在する。ここでは、
こうした行列を得る方法を明らかにする。伝達関数H0
(z)とH1(z)は同一の極を有した電力相補型ディ
ジタルフィルタ対とする。1入力2出力システムのSS
D行列Sddを求める。行列Sddは次式のような形式を有
する。
【数96】
【0106】ここで、行列Cddと行列Dddは次式で表さ
れる。
【数97】
【数98】
【0107】また、行列A、B、C、Dは行列Sの場合
と同一である。また、行列Chは数34から幾つかの要
素の符号を反転することを除いて、行列Cに等しい、状
態空間ベクトルから第2出力への結合行列である。Dh
=±Dは、入力から第2の出力への結合係数である。可
制御正準形SSDにおいては、行列A及びBが「擬似的
にスパース性」、つまり、多くの0の要素を有する。こ
のことを、本実施形態において示された第2の実現法の
導出に用いる。そして、従来技術文献6から、
【数99】 のように、対称正定値行列Pが存在し、事実、それは、
リャプノフ方程式
【数100】ATWA+CddTCdd=W を満足する単位雑音利得行列に対応する。この行列は次
式の無限総和の恒等式
【数101】 の近似を用いて計算することができる。
【0108】次に、対称正定値行列Wは、
【数102】W=TTT のようにコレスキーファクタTを用いて分解できる。そ
の結果、新たなSSD行列を次式のように得る。
【数103】
【0109】ここで、Iは2×2単位行列である。数1
03は、同一の伝達行列を表し、さらに互いに直交であ
り、すなわち
【数104】SdTSd=I である。いま、行列Sの最後の列(第2の入力への結合
ベクトル)を消去すれば、
【数105】STS≦I を満足する、伝達関数H0(z)のBRSSD行列が得
られることが簡単に立証される。
【0110】<付録B>N次のBR伝達関数H0(z)
及び付録Aにおいて導出されたH0(z)の(N+1)
次BRSSD行列Sが与えられており、
【数106】H0(exp(jωi))=exp(j
αi) であるようなN個の周波数ω及び位相αが存在する
と仮定して(バターワース、チェビチェフ、楕円の各フ
ィルタにあてはまる。)、第1の実現法におけるケース
1〜3の分解が可能であることを以下に示す。まず、証
明過程で使用する幾つかの準備的な事柄を与える。
【0111】系1
【数107】H0(z0)=z0 であるための必要十分条件は、z0が伝達関数H0(z)
のSSD行列
【数108】 の固有値であり、すなわち、
【数109】 であり、さらに
【数110】v=(z0I−A)-1B 及び
【数111】CTv+D=z0 であることである。証明 :従来技術文献10「R.A.Roberts and C. T. Mull
is,"Digital Signal Processing",Addison-Wesley,198
7」参照。
【0112】系2
【数112】STS≦I⇔SST≦I証明 :これは行列Sの固有値分解を行い、行列STSの
固有値の絶対値が必ず1以下でなければならないことか
らわかる。
【0113】系3
【数113】STS≦I及びSeN+1=eN+1 (ここで、eN+1は(N+1)×(N+1)単位行列の
最終列である。)であれば、Sの最終行もまた(N+
1)×(N+1)単位行列の最終行である。すなわち
【数114】
【0114】証明
【数115】 とおく。ここで、上記系2より、
【数116】 eN+1 TSSTN+1=xTx+1≦eN+1 TN+1=1 であり、従って、
【数117】xTx=0⇔x=0 が成立する。
【0115】系4:もし
【数118】STS≦I でかつ S[eNN+1]=[eNN+1]R12 (ここで、行列要素eN及びeN+1は(N+1)×(N+
1)単位行列のそれぞれの終わりの2列であり、R12
任意の2×2平面回転行列である。)とすると、先の系
3における結果と同様に行列Sは次の形式を有する。
【数119】 証明:先の系3の場合と同様である。
【0116】系5:L×Lの次元を有する直交行列R1L
は次式のように表される。
【数120】R1L=R1(L-1)(L-1)L1(L-1) ここで、各Rijは同一次元の直交回転行列である。証明 :上記系5はガウスの消去法から明らかである。
【0117】系6:行列SをBRSSD行列とし、行列
S’を次式で表されるようなもう1つのSSD行列
【数121】 とし、行列Rが任意の直交行列であるとすると、行列
S’は同一伝達関数の等価BRSSD行列である。証明 :S’TS'及びSTS(Tが上付(転置を表す))
が同一の固有値を有している点を注意すれば証明可能で
ある。
【0118】系7:行列Sを次式のような
【数122】Sp=exp(jω0)p,(ω0≠0,
π) のようなBRSSD行列Sとする(ここで、pは複素ベ
クトルである)。pの実数部と虚数部とは互いに直交
し、同一の長さを有する。従って、適当なスケーリング
によりそれらは正規直交である。証明 :付録Aの結果から、1入力2出力のSSD行列S
【数123】 は直交し、
【数124】 である。転置共役
【数125】 p†・SdTSdp=p†・p=p†・p+p†・xxTp を利用すると、
【数126】xp=0 であり、次式を得る。
【数127】
【0119】ここで、数127の転置を取ると、
【数128】 pTSdTSdp=pTp=exp(j2ω0)pTp であり、また
【数129】ω≠0,π であるため、
【数130】pTp=pr Tr−pi Ti+2jpr Ti
0 ここで、pr及びpiはそれぞれ、pの実数部及び虚数部
である。
【0120】系8:行列Sを次式のように、
【数131】 BRSSD行列とし、ここで、piは次式で示されるよ
うに、
【数132】 i×2の次元を有する任意の実行列であり、行列Ri
2×2の任意直交行列とすると、
【数133】pTp=qTq である。この関係は右側のp及びqに対して逆行列が存
在する行列を乗算したとしても、成立する。
【0121】証明:pの2列がそれぞれ、複素ベクトル
cの実数部及び虚数部を表すとする。行列Sが実であ
るため、qに対する複素数表現は次式で表される。
【数134】 ここで、pciはpiの複素数表現であり、ωiは行列Ri
の回転角である。
【数135】pc†・pc=qc†・qc ということは容易に証明できる。次式の付録Aの拡張さ
れた1入力2出力のシステムの直交SSD行列
【数136】 と、前述の関係(共役転置を取ること)を用いることに
より、
【数137】xpc=0 を簡単に示すことができる。
【0122】次いで、転置をとることにより、
【数138】pc†pc=qc†qc とともに
【数139】pc Tc=qc Tc が示される。これは実数領域では、
【数140】pTp=qTq と等価である(証明終)。
【0123】次いで、以上の準備のもと、第1の実現法
におけるケース1の分解(数49)の証明を開始する。
伝達関数H0(1)=1であることから、系1により、
また、与えられたBRSSD行列S’に対して、
【数141】S’p=p となるような行列S’の実の固有ベクトルpが存在する
(z=1は伝達関数H0(z)においてH0(1)=1と
なる点である。)。pをスケーリングした後、直交行列
Rの最後の列がpであるような直交行列Rを求めること
ができる。従って、
【数142】S'ReN+1=ReN+1 である。
【0124】次に、行列Rを因数分解し、系5に従え
ば、
【数143】S’R1NN(N+1)R’1NN+1=R1N
N(N+1)R’1NN+1 を得る。行列R1N TS'R1Nは、伝達関数H0(z)及び
BR性の両方を不変とする相似変換である(系6によ
る)。また、
【数144】R'1NN+1=eN+1 であることに留意し、系3を適用すると、次式の所望の
結果を得る。
【数145】 ただし、行列Sは次式で表わされる。
【数146】S=R1N TS’R1N
【0125】次に、第1の実現法におけるケース2の分
解(数50)を取り扱う。
【数147】H0(exp(jωi))=exp(j
ωi) を仮定すれば、BRSSD行列S”は複素固有ベクトル
pである固有値exp(jωi)を有する。系7を適用
すれば、
【数148】 S'R[eNN+1]=R[eNN+1]RN(N+1) が得られる。ここで、行列Rの最後の2列はそれぞれp
の実数部及び虚数部に対応する。この場合、pの虚数部
の最終要素は0に等しく(系1の結果を参照。)、また
系5から行列Rの特別な因数分解、すなわち
【数149】R=R1N(N-1)(N+1)1(N-1) が導かれる。この場合、
【数150】R1(N-1)[eNN+1]=[eNN+1
であり、また、上述の通り、
【数151】S=R1N TS'R1N がBR性を保存する相似変換であることに留意すれば、
系4を適用後に最終結果である次式を得ることができ
る。
【数152】
【0126】最後に、第1の実現法のケース3
【数153】 H0(exp(jωi))=exp(jα),α≠0,π における分解(数61)について証明する。ここで、ω
及びαの両方は0、πでないものとする。伝達関数H
0(z)に対してあるBRSSD行列S’を与えると、
次式を得る。
【数154】 ここで、
【数155】 p=[exp(jω1)I−A]-1B=pr+jpi である。ここで、pr及びpiはそれぞれ、pの実数部及
び虚数部である。そして、数154と等価な式を得る。
【数156】
【0127】ここで、
【数157】 は(N+1)×2の実行列である。また、Riは系8の
定義通りであり、Rαは回転角αの回転行列である。数
157の行列の最初のN列を三角化して(例えば、QR
分解手法による)、次式を得る。
【数158】 ここで、R1NはN×Nの直交行列、0は(N−2)×2
の零行列、T1は2×2の下三角行列
【数159】 である。数158を数156に代入し、
【数160】 がBR属性を保存する有効な相似変換であることに留意
して以下の式を得る。
【数161】
【0128】次いで、次式に関してQR分解を行う。
【数162】 ここで、行列R1(N+1)は直交(N+1)×(N+1)因
数であり、rは行列R1(N+1)の最後の2列からなる直交
行列、行列T2は2×2の下三角行列
【数163】 である。行列T2の逆行列が存在するであると仮定し、
数161の両辺に対して行列T2 -1を乗算すると、次式
が得られる。
【0129】
【数164】 ここで、
【数165】 は行列T1又はT2と同形式の2×2の三角行列であり、
(数165が三角行列の積である理由による)、
【数166】M2=T1i2 -1, x1=[1 0]T2 -1=[t21 -1 0] x2=[1 0]Rα −1 であり、xとx2は、1×2のベクトルである。数1
62から、2列で構成された行列
【数167】 は直交しているが、2列目が非零要素が1つしかない
(m3)ため、対応する要素m2は必ずゼロであり、また
行列M1は対角行列でなければならないことがわかる。
【0130】さらに、系8から数164の第2項もまた
直交する。すなわち、
【数168】M1 T1+x1 T1=M2 T2+x2 T2 である。さらに、1×2のベクトルであるx1及びx
2は、
【数169】x11 T=x22 T を満足し、従って、
【数170】x2x T=x1 である平面回転行列Rx Tが存在する。同様に
【数171】Ry2x T=M1 であるような平面回転Ryの存在も導くことができる
(先の3つの関係を使用する。)。
【0131】最後に今までの結果を要約すると、
【数172】 のような、
【数173】H0(exp(jωi))=exp(jα) のときの伝達関数H0(z)のBRSSD行列S”が存
在し、ここで、上記数172は、次式で書き換えられ
る。
【数174】
【0132】ここで、行列R(N-1)Nは平面N−1と平面
Nにのみ作用する平面回転行列であって、行列Ryと同
一回転角を有する。上記数174は、BRSSD行列R
(N-1) NS”が系1によって単位円上に固定点H0(ex
p(jβ))=exp(jβ)となる点βを有し、回転
行列Rxにより決定された角度を有する異なるBR関数
を表していることを意味する。従って、ケース2の結果
は使用可能であり、直交的に因数分解されたSSD行列
【数175】 が得られる。
【0133】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る請求項
1記載の分析フィルタバンクにおいては、入力される入
力信号x(n)を2分配して、分配された一方の入力信
号x(n)を遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有理関数
で表現された伝達関数H0(z)を有するIIR型低域
通過ディジタルフィルタにより低域ろ波した後、1/2
倍のレートのダウンサンプリング処理を実行して第1の
チャンネル信号x0(n)を出力する一方、分配された
他方の入力信号x(n)をzの奇数次有理関数で表現さ
れた伝達関数H1(z)を有するIIR型高域通過ディ
ジタルフィルタにより高域ろ波した後、1/2倍のレー
トのダウンサンプリング処理を実行して第2のチャンネ
ル信号x1(n)を出力し、上記2つの伝達関数H
0(z)とH1(z)はともに次数mで同一の極を持つ有
界実伝達関数である分析フィルタバンクにおいて、入力
される入力信号x(n)と、第1の行列乗算手段から出
力されたm個の出力信号からなる出力信号ベクトルV1
を単位時間だけ遅延する第1の遅延素子を介して入力さ
れる複数m個の信号からなる信号ベクトルV1’とを含
む入力信号ベクトルに対して所定の行列Sを乗算して、
中間信号ga(n)を出力するとともに、乗算結果の信
号として、第1の出力信号y0(n)と、上記出力信号
ベクトルV1とを出力する第1の行列乗算手段と、上記
第1の行列乗算手段から出力される第1の出力信号y0
(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリング
処理を実行して処理後の第1のチャンネル信号x
0(n)を出力する第1のダウンサンプラと、上記第1
の行列乗算手段から出力される中間信号ga(n)に対
して所定の乗算係数A35を乗算して、乗算結果の第2の
出力信号y1(n)を出力する第1の乗算器と、上記第
1の乗算器から出力される第2の出力信号y1(n)に
対して1/2倍のレートのダウンサンプリング処理を実
行して処理後の第2のチャンネル信号x1(n)を出力
する第2のダウンサンプラとを備え、上記行列Sは、S
TS≦Im+1を満足する上記伝達関数H0(z)の状態空
間実現行列E,f,g,hから数15のように構成さ
れ、上記状態空間実現行列E,f,g,hは上記伝達関
数H0(z)と、数16の関係を持ち、数17のように
因数分解されて表され、ここで、Im+1は(m+1)×
(m+1)の単位行列、Imはm×mの単位行列であ
り、上記乗算定数A35は√(1−s0 2)に実質的に等し
い。従って、従来例に比較して回路が簡単であって、行
列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さい構成要素を
組み合わせて構成するために、従来例に比較して回路が
簡単であって、モジュール化、並列化(又はパラレル
化)、パイプライン化することができ、LSI化又はV
LSI化することが容易である分析フィルタバンクを提
供することができる。また、ディジタルフィルタの係数
量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に起因する劣
化に対する耐性が強いという特有の効果がある。
【0134】また、請求項2記載の分析フィルタバンク
においては、請求項1記載の分析フィルタバンクにおい
て、上記第1の行列乗算手段は、上記入力信号ベクトル
に対して行列R1を乗算して、乗算結果の信号として、
上記中間信号ga(n)を第1の乗算器に出力するとと
もに、m個の中間信号からなる中間信号ベクトルGaと
を出力する第2の行列乗算手段と、上記第2の行列乗算
手段から出力される中間信号ga(n)に対して所定の
乗算定数A34=s0を乗算して、乗算結果の信号を出力
する第2の乗算器と、上記第2の乗算器から出力される
乗算結果の信号と、上記第2の行列乗算手段から出力さ
れる中間信号ベクトルGaとを含む信号ベクトルに対し
て行列R2を乗算して、乗算結果の信号として、第1の
出力信号y0(n)と、上記出力信号ベクトルV1とを出
力する第3の行列乗算手段とを備える。従って、従来例
に比較して回路が簡単であって、行列乗算手段や乗算器
など一定の構造の小さい構成要素を組み合わせて構成す
るために、従来例に比較して回路が簡単であって、モジ
ュール化、並列化(又はパラレル化)、パイプライン化
することができ、LSI化又はVLSI化することが容
易である分析フィルタバンクを提供することができる。
また、ディジタルフィルタの係数量子化や乗算後の丸め
処理などの有限語長に起因する劣化に対する耐性が強い
という特有の効果がある。
【0135】本発明に係る請求項3記載の合成フィルタ
バンクにおいては、入力される第1のチャンネル信号x
0’(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング
処理を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有
理関数で表現された伝達関数F0(z)を有するIIR
型低域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一
方、入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対
して2倍のレートのアップサンプリング処理を実行した
後、zの奇数次有理関数で表現された伝達関数F
1(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタ
により高域ろ波し、上記低域ろ波された信号と上記高域
ろ波された信号とを合成して再生信号xh(n)として
出力し、上記2つの伝達関数F0(z)とF1(z)はと
もに次数mで同一の極を持つ有界実伝達関数である合成
フィルタバンクにおいて、入力される第1のチャンネル
信号x0’(n)に対して2倍のレートのアップサンプ
リング処理を実行して処理後の第1の処理信号yh
0(n)を出力する第1のアップサンプラと、入力され
る第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2倍のレ
ートのアップサンプリング処理を実行して処理後の第2
の処理信号yh1(n)を出力する第2のアップサンプ
ラと、上記第2のアップサンプラから出力される第2の
処理信号yh1(n)に対して所定の乗算係数−A46
乗算して、乗算結果の中間信号gb(n)を出力する第
3の乗算器と、上記第1のアップサンプラから出力され
る第1の処理信号yh0(n)と、第4の行列乗算手段
から出力されたm個の再生信号からなる再生信号ベクト
ルV2を単位時間だけ遅延する第2の遅延素子を介して
入力される複数m個の信号からなる信号ベクトルV2
とを含む入力信号ベクトル、及び上記第2のアップサン
プラから出力された中間信号gb(n)に対して所定の
転置行列STを乗算して、乗算結果の信号として、再生
信号xh(n)と、上記再生信号ベクトルV2とを出力
する第4の行列乗算手段とを備え、上記転置行列S
Tは、SST≦Im+1を満足する上記伝達関数F0(z)の
状態空間実現行列ET,gT,fT,hから、数18のよ
うに構成され、上記状態空間実現行列ET,gT,fT
hは上記伝達関数F0(z)と、数19の関係を持ち、
数20のように因数分解されて表され、ここで、Im+1
は(m+1)×(m+1)の単位行列、Iはm×mの単
位行列であり、上記乗算定数−A46は−√(1−s0 2
に実質的に等しい。従って、従来例に比較して回路が簡
単であって、行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小
さい構成要素を組み合わせて構成するために、従来例に
比較して回路が簡単であって、モジュール化、並列化
(又はパラレル化)、パイプライン化することができ、
LSI化又はVLSI化することが容易である分析フィ
ルタバンクを提供することができる。また、ディジタル
フィルタの係数量子化や乗算後の丸め処理などの有限語
長に起因する劣化に対する耐性が強いという特有の効果
がある。
【0136】また、請求項4記載の合成フィルタバンク
においては、請求項3記載の合成フィルタバンクにおい
て、上記第4の行列乗算手段は、上記第1のアップサン
プラから出力される第1の処理信号yh0(n)と、上
記信号ベクトルV2’とを含む入力信号ベクトルに対し
て所定の転置行列R2 Tを乗算して、乗算結果の信号とし
て、中間信号gc(n)と、中間信号ベクトルGbとを
出力する第5の行列乗算手段と、上記第5の行列乗算手
段から出力される中間信号gc(n)に対して所定の乗
算定数A44=s0を乗算して、乗算結果の信号を出力す
る第4の乗算器と、上記第4の乗算器から出力される乗
算結果の信号と、上記第5の行列乗算手段から出力され
るm個の中間信号からなる中間信号ベクトルGbとを含
む信号ベクトルに対して転置行列R1 Tを乗算して、乗算
結果の信号として、再生信号xh(n)と、上記再生信
号ベクトルV2とを出力する第6の行列乗算手段とを備
える。従って、従来例に比較して回路が簡単であって、
行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さい構成要素
を組み合わせて構成するために、従来例に比較して回路
が簡単であって、モジュール化、並列化(又はパラレル
化)、パイプライン化することができ、LSI化又はV
LSI化することが容易である分析フィルタバンクを提
供することができる。また、ディジタルフィルタの係数
量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に起因する劣
化に対する耐性が強いという特有の効果がある。
【0137】さらに、本発明に係る請求項5記載のフィ
ルタバンク回路においては、請求項1又は2記載の分析
フィルタバンクと、請求項3又は4記載の合成フィルタ
バンクとを備え、F0(z)=H0(z)、F1(z)=
−H1(z)、及びH1(z)=H0(−z)が成立し、
かつH0(z)H1(z)+F0(z)F1(z)が全域通
過関数であるという完全再構成条件が成立する。従っ
て、従来例に比較して回路が簡単であって、行列乗算手
段や乗算器など一定の構造の小さい構成要素を組み合わ
せて構成するために、従来例に比較して回路が簡単であ
って、モジュール化、並列化(又はパラレル化)、パイ
プライン化することができ、LSI化又はVLSI化す
ることが容易である分析フィルタバンクを提供すること
ができる。また、ディジタルフィルタの係数量子化や乗
算後の丸め処理などの有限語長に起因する劣化に対する
耐性が強いという特有の効果がある。さらに、上記分析
フィルタバンクと、上記合成フィルタバンクとの間の伝
送路において雑音がないときに、上記合成フィルタバン
クから出力される再生信号を、上記分析フィルタバンク
への入力信号に一致させることができ、受信側において
入力信号を取り出すことができる。
【0138】本発明に係る請求項6記載の分析フィルタ
バンクにおいては、入力される入力信号x(n)を2分
配して、分配された一方の入力信号x(n)を遅延演算
子z-1の逆数zの奇数次有理関数で表現された伝達関数
0(z)を有するIIR型低域通過ディジタルフィル
タにより低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサ
ンプリング処理を実行して第1のチャンネル信号x
0(n)を出力する一方、分配された他方の入力信号x
(n)をzの奇数次有理関数で表現された伝達関数H1
(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタに
より高域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサンプ
リング処理を実行して第2のチャンネル信号x1(n)
を出力し、上記2つの伝達関数H0(z)とH1(z)が
ともに次数Nの有界実伝達関数であり、H0(z)とH1
(z)の間にはH1(z)=H0(−z)かつすべての正
規化角周波数ωに対して|H0(exp(jω))|2
|H1(exp(jω))|2=1の関係を有する分析フ
ィルタバンクにおいて、入力される入力信号x(n)
と、0である零入力信号と、第7の行列乗算手段から出
力されたN個の出力信号からなる出力信号ベクトルV3
を単位時間だけ遅延する第3の遅延素子を介して入力さ
れる複数N個の信号からなる信号ベクトルV3’とを含
む入力信号ベクトルに対して所定の行列Qを乗算して、
乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトルV3と、
第1の出力信号y0(n)と、第2の出力信号y1(n)
とを出力する第7の行列乗算手段と、上記第7の行列乗
算手段から出力される第1の出力信号y0(n)に対し
て1/2倍のレートのダウンサンプリング処理を実行し
て処理後の第1のチャンネル信号x0(n)を出力する
第1のダウンサンプラと、上記第7の行列乗算手段から
出力される第2の出力信号y1(n)に対して1/2倍
のレートのダウンサンプリング処理を実行して処理後の
第2のチャンネル信号x1(n)を出力する第2のダウ
ンサンプラとを備え、上記行列Qは、入力信号x(n)
を入力とする1入力2出力の伝達行列[H0(z) H1
(z)]Tを、数21と表わすことができる(ここで、
NはN×Nの単位行列である。)可制御正準形状態空
間実現行列A,B,C,Dから構成される(N+2)×
(N+1)の行列(数22)に対して、所定の相似変換
の演算を実行して得られる(N+2)×(N+1)の行
列Sに、上記行列Sの各列が互いに直交するように所定
の列ベクトルを(N+2)列目に加えることにより得ら
れた(N+2)×(N+2)の行列であって、上記行列
Qは、Q=PRのように行列Pと行列Rとに因数分解さ
れて表される。従って、従来例に比較して回路が簡単で
あって、行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さい
構成要素を組み合わせて構成するために、従来例に比較
して回路が簡単であって、モジュール化、並列化(又は
パラレル化)、パイプライン化することができ、LSI
化又はVLSI化することが容易である分析フィルタバ
ンクを提供することができる。また、ディジタルフィル
タの係数量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に起
因する劣化に対する耐性が強いという特有の効果があ
る。
【0139】また、請求項7記載の分析フィルタバンク
においては、請求項6記載の分析フィルタバンクにおい
て、上記第7の行列乗算手段は、上記入力信号ベクトル
に対して上記行列Rを乗算して、乗算結果の信号とし
て、N個の中間信号からなる中間信号ベクトルGcと、
2個の別の信号とを出力する第8の行列乗算手段と、上
記第8の行列乗算手段から出力される中間信号ベクトル
Gcと2個の別の信号とに対して上記行列Pを乗算し
て、乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトルV3
と、上記第1の出力信号y0(n)と、上記第2の出力
信号y1(n)とを出力する第9の行列乗算手段とを備
える。従って、従来例に比較して回路が簡単であって、
行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さい構成要素
を組み合わせて構成するために、従来例に比較して回路
が簡単であって、モジュール化、並列化(又はパラレル
化)、パイプライン化することができ、LSI化又はV
LSI化することが容易である分析フィルタバンクを提
供することができる。また、ディジタルフィルタの係数
量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に起因する劣
化に対する耐性が強いという特有の効果がある。
【0140】本発明に係る請求項8記載の合成フィルタ
バンクにおいては、入力される第1のチャンネル信号x
0’(n)に対して2倍のレートのアップサンプリング
処理を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有
理関数で表現された伝達関数F0(z)を有するIIR
型低域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一
方、入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対
して2倍のレートのアップサンプリング処理を実行した
後、zの奇数次有理関数で表現された伝達関数F
1(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタ
により高域ろ波し、上記低域ろ波された信号と上記高域
ろ波された信号とを合成して再生信号xh(n)として
出力し、上記2つの伝達関数F0(z)とF1(z)がと
もに次数がNの有界実伝達関数であり、F0(z)とF1
(z)の間にF1(z)=−F0(−z)かつすべての正
規化角周波数ωに対して│F0(exp(jω))│2
│F1(exp(jω))│2=1の関係を有する合成フ
ィルタバンクにおいて、入力される第1のチャンネル信
号x0’(n)に対して2倍のレートのアップサンプリ
ング処理を実行して処理後の第1の処理信号yh
0(n)を出力する第1のアップサンプラと、入力され
る第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2倍のレ
ートのアップサンプリング処理を実行して処理後の第2
の処理信号yh1(n)を出力する第2のアップサンプ
ラと、上記第2のアップサンプラから出力される第2の
処理信号yh1(n)に対して所定の乗算係数A84=−
1を乗算することにより反転して、乗算結果の反転され
た第2の処理信号yh1(n)を出力する第5の乗算器
と、上記第1のアップサンプラから出力される第1の処
理信号yh0(n)と、上記第5の乗算器から出力され
る反転された第2の処理信号yh1(n)と、第10の
行列乗算手段から出力されたN個の再生信号からなる再
生信号ベクトルV4を単位時間だけ遅延する第4の遅延
素子を介して入力される複数N個の信号からなる信号ベ
クトルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して所定
の転置行列QTを乗算して、乗算結果の信号として、再
生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上記再生
信号ベクトルV4とを出力する第10の行列乗算手段と
を備え、上記転置行列QTは、再生信号xh(n)を出
力とする2入力1出力の伝達行列[F0(z) F
1(z)]を、数23と表わすことができる(ここで、
NはN×Nの単位行列である。)可制御正準形状態空
間実現行列A’,B’,C’,D’から構成される(N
+2)×(N+1)の行列(数24)に対して、所定の
相似変換の演算を実行して得られる(N+2)×(N+
1)の行列S’に、上記行列S’の各列が互いに直交す
るように所定の列ベクトルを(N+2)列目に加えるこ
とにより得られた(N+2)×(N+2)の行列であっ
て、上記転置行列QTは、QT=RTTのように転置行列
Tと転置行列PTとに因数分解されて表される。従っ
て、従来例に比較して回路が簡単であって、行列乗算手
段や乗算器など一定の構造の小さい構成要素を組み合わ
せて構成するために、従来例に比較して回路が簡単であ
って、モジュール化、並列化(又はパラレル化)、パイ
プライン化することができ、LSI化又はVLSI化す
ることが容易である分析フィルタバンクを提供すること
ができる。また、ディジタルフィルタの係数量子化や乗
算後の丸め処理などの有限語長に起因する劣化に対する
耐性が強いという特有の効果がある。
【0141】また、請求項9記載の合成フィルタバンク
においては、請求項8記載の合成フィルタバンクにおい
て、上記第10の行列乗算手段は、上記第1のアップサ
ンプラから出力される第1の処理信号yh0(n)と、
上記第5の乗算器から出力される反転された第2の処理
信号yh1(n)と、上記信号ベクトルV4’とを含む入
力信号ベクトルとに対して上記転置行列PTを乗算し
て、乗算結果の信号として、中間信号ベクトルGdと、
2個の別の信号とを出力する第11の行列乗算手段と、
上記第11の行列乗算手段から出力される中間信号ベク
トルGdと2個の別の信号とを含む信号ベクトルに対し
て上記転置行列RTを乗算して、乗算結果の信号とし
て、再生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上
記再生信号ベクトルV4とを出力する第12の行列乗算
手段とを備える。従って、従来例に比較して回路が簡単
であって、行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さ
い構成要素を組み合わせて構成するために、従来例に比
較して回路が簡単であって、モジュール化、並列化(又
はパラレル化)、パイプライン化することができ、LS
I化又はVLSI化することが容易である分析フィルタ
バンクを提供することができる。また、ディジタルフィ
ルタの係数量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に
起因する劣化に対する耐性が強いという特有の効果があ
る。
【0142】さらに、請求項10記載のフィルタバンク
回路においては、請求項6又は7記載の分析フィルタバ
ンクと、請求項8又は9記載の合成フィルタバンクとを
備え、F0(z)=H0(z)、F1(z)=−H
1(z)、及びH1(z)=H0(−z)が成立し、かつ
0(z)H1(z)+F0(z)F1(z)が全域通過関
数であるという完全再構成条件が成立する。従って、従
来例に比較して回路が簡単であって、行列乗算手段や乗
算器など一定の構造の小さい構成要素を組み合わせて構
成するために、従来例に比較して回路が簡単であって、
モジュール化、並列化(又はパラレル化)、パイプライ
ン化することができ、LSI化又はVLSI化すること
が容易である分析フィルタバンクを提供することができ
る。また、ディジタルフィルタの係数量子化や乗算後の
丸め処理などの有限語長に起因する劣化に対する耐性が
強いという特有の効果がある。さらに、上記分析フィル
タバンクと、上記合成フィルタバンクとの間の伝送路に
おいて雑音がないときに、上記合成フィルタバンクから
出力される再生信号を、上記分析フィルタバンクへの入
力信号に一致させることができ、受信側において入力信
号を取り出すことができる。
【0143】本発明に係る請求項11記載の分析フィル
タバンクにおいては、入力される入力信号x(n)を2
分配して、分配された一方の入力信号x(n)を遅延演
算子z-1の逆数zの偶数次有理関数で表現された伝達関
数H0’(z)を有するIIR型低域通過ディジタルフ
ィルタにより低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウ
ンサンプリング処理を実行して第1のチャンネル信号x
0(n)を出力する一方、分配された他方の入力信号x
(n)をzの偶数次有理関数で表現された伝達関数
1’(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィ
ルタにより高域ろ波した後、1/2倍のレートのダウン
サンプリング処理を実行して第2のチャンネル信号x1
(n)を出力し、上記2つの伝達関数H0’(z)と
1’(z)がともに次数Nの有界実伝達関数であり、
0’(z)とH1’(z)の間にH1’(z)=H0
(−z)かつすべての正規化角周波数ωに対して│
0’(exp(jω))│2+H1’(exp(j
ω))│2=1の関係を有する分析フィルタバンクにお
いて、入力される入力信号x(n)と、0である零入力
信号と、第7の行列乗算手段から出力されたN個の出力
信号からなる出力信号ベクトルV3を単位時間だけ遅延
する第3の遅延素子を介して入力される複数N個の信号
からなる信号ベクトルV3’とを含む入力信号ベクトル
に対して所定の行列Q’を乗算して、乗算結果の信号と
して、上記出力信号ベクトルV3と、第1の出力信号y0
(n)と、第2の出力信号y1(n+1)とを出力する
第7の行列乗算手段と、上記第7の行列乗算手段から出
力される第2の出力信号y1(n+1)を上記単位時間
だけ遅延して遅延された第2の出力信号y1(n)を出
力する第5の遅延素子と、上記第7の行列乗算手段から
出力される第1の出力信号y0(n)に対して1/2倍
のレートのダウンサンプリング処理を実行して処理後の
第1のチャンネル信号x0(n)を出力する第1のダウ
ンサンプラと、上記第5の遅延素子から出力される遅延
された第2の出力信号y1(n)に対して1/2倍のレ
ートのダウンサンプリング処理を実行して処理後の第2
のチャンネル信号x1(n)を出力する第2のダウンサ
ンプラとを備え、上記行列Q’は、入力信号x(n)を
入力とする1入力2出力の伝達行列[H0’(z)
1’(z)]Tを、数25と表わすことができる(ここ
で、INはN×Nの単位行列である。)可制御正準形状
態空間実現行列A,B,C,Dから構成される(N+
2)×(N+1)の行列(数26)に対して、所定の相
似変換の演算を実行して得られる(N+2)×(N+
1)の行列Saに、上記行列Saの各列が互いに直交す
るように所定の列ベクトルを(N+2)列目に加えるこ
とにより得られた(N+2)×(N+2)の行列であっ
て、上記行列Q’は、Q’=P’R’のように行列P’
と行列R’とに因数分解されて表される。従って、従来
例に比較して回路が簡単であって、行列乗算手段や乗算
器など一定の構造の小さい構成要素を組み合わせて構成
するために、従来例に比較して回路が簡単であって、モ
ジュール化、並列化(又はパラレル化)、パイプライン
化することができ、LSI化又はVLSI化することが
容易である分析フィルタバンクを提供することができ
る。また、ディジタルフィルタの係数量子化や乗算後の
丸め処理などの有限語長に起因する劣化に対する耐性が
強いという特有の効果がある。
【0144】また、請求項12記載の分析フィルタバン
クにおいては、請求項11記載の分析フィルタバンクに
おいて、上記第7の行列乗算手段は、上記入力信号ベク
トルに対して上記行列R’を乗算して、乗算結果の信号
として、N個の中間信号からなる中間信号ベクトルGc
と、2個の別の信号とを出力する第8の行列乗算手段
と、上記第8の行列乗算手段から出力される中間信号ベ
クトルGcと2個の別の信号とに対して上記行列P’を
乗算して、乗算結果の信号として、上記出力信号ベクト
ルV3と、上記第1の出力信号y0(n)と、上記第2の
出力信号y1(n+1)とを出力する第9の行列乗算手
段とを備える。従って、従来例に比較して回路が簡単で
あって、行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さい
構成要素を組み合わせて構成するために、従来例に比較
して回路が簡単であって、モジュール化、並列化(又は
パラレル化)、パイプライン化することができ、LSI
化又はVLSI化することが容易である分析フィルタバ
ンクを提供することができる。また、ディジタルフィル
タの係数量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に起
因する劣化に対する耐性が強いという特有の効果があ
る。
【0145】本発明に係る請求項13記載の合成フィル
タバンクにおいては、入力される第1のチャンネル信号
0’(n)に対して2倍のレートのアップサンプリン
グ処理を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの偶数次
有理関数で表現された伝達関数F0’(z)を有するI
IR型低域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する
一方、入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に
対して2倍のレートのアップサンプリング処理を実行し
た後、zの偶数次有理関数で表現された伝達関数F1
(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタに
より高域ろ波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ
波された信号とを合成して再生信号xh(n)として出
力し、上記2つの伝達関数F0’(z)とF1’(z)が
ともに次数がNの有界実伝達関数であり、F0’(z)
とF1’(z)の間にF0’(z)=F1’(−z)かつ
すべての正規化角周波数ωに対して|F0’(exp
(jω))|2+|F1’(exp(jω))|2=1の
関係を有する合成フィルタバンクにおいて、入力される
第1のチャンネル信号x0’(n)に対して2倍のレー
トのアップサンプリング処理を実行して処理後の第1の
処理信号yh0(n)を出力する第1のアップサンプラ
と、入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対
して2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して
処理後の第2の処理信号yh1(n)を出力する第2の
アップサンプラと、上記第1のアップサンプラから出力
される第1の処理信号yh0(n)を上記単位時間だけ
遅延して遅延された第1の処理信号yh0(n−1)を
出力する第6の遅延素子と、上記第6の遅延素子から出
力される遅延された第1の処理信号yh0(n−1)
と、上記第2のサップサンプラから出力された第2の処
理信号yh1(n)と、第10の行列乗算手段から出力
されたN個の再生信号からなる再生信号ベクトルV4
単位時間だけ遅延する第4の遅延素子を介して入力され
る複数N個の信号からなる信号ベクトルV4’とを含む
入力信号ベクトルとに対して所定の転置行列Q’Tを乗
算して、乗算結果の信号として、再生信号xh(n)
と、0である零再生信号と、上記再生信号ベクトルV4
とを出力する第10の行列乗算手段とを備え、上記転置
行列Q’Tは、再生信号xh(n)を出力とする2入力
1出力の伝達行列[F0’(z) F1’(z)]を、数
27と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単
位行列である。)可制御正準形状態空間実現行列A’,
B’,C’,D’から構成される(N+2)×(N+
1)の行列(数28)に対して、所定の相似変換の演算
を実行して得られる(N+2)×(N+1)の行列S
a’に、上記行列Sa’の各列が互いに直交するように
所定の列ベクトルを(N+2)列目に加えることにより
得られた(N+2)×(N+2)の行列であって、上記
転置行列Q’Tは、Q’T=R’TP’Tのように転置行列
R’Tと転置行列P’Tとに因数分解されて表される。従
って、従来例に比較して回路が簡単であって、行列乗算
手段や乗算器など一定の構造の小さい構成要素を組み合
わせて構成するために、従来例に比較して回路が簡単で
あって、モジュール化、並列化(又はパラレル化)、パ
イプライン化することができ、LSI化又はVLSI化
することが容易である分析フィルタバンクを提供するこ
とができる。また、ディジタルフィルタの係数量子化や
乗算後の丸め処理などの有限語長に起因する劣化に対す
る耐性が強いという特有の効果がある。
【0146】また、請求項14記載の合成フィルタバン
クにおいては、請求項13記載の合成フィルタバンクに
おいて、上記第10の行列乗算手段は、上記第6の遅延
素子から出力される遅延された第1の処理信号yh
0(n−1)と、上記第2のアップサンプラから出力さ
れる第2の処理信号yh1(n)と、上記信号ベクトル
4’とを含む入力信号ベクトルとに対して上記転置行
列P’Tを乗算して、乗算結果の信号として、中間信号
ベクトルGdと、2個の別の信号とを出力する第11の
行列乗算手段と、上記第11の行列乗算手段から出力さ
れる中間信号ベクトルGdと2個の別の信号とを含む信
号ベクトルに対して上記転置行列R’Tを乗算して、乗
算結果の信号として、再生信号xh(n)と、0である
零再生信号と、上記再生信号ベクトルV4とを出力する
第12の行列乗算手段とを備える。従って、従来例に比
較して回路が簡単であって、行列乗算手段や乗算器など
一定の構造の小さい構成要素を組み合わせて構成するた
めに、従来例に比較して回路が簡単であって、モジュー
ル化、並列化(又はパラレル化)、パイプライン化する
ことができ、LSI化又はVLSI化することが容易で
ある分析フィルタバンクを提供することができる。ま
た、ディジタルフィルタの係数量子化や乗算後の丸め処
理などの有限語長に起因する劣化に対する耐性が強いと
いう特有の効果がある。
【0147】さらに、本発明に係る請求項15記載のフ
ィルタバンク回路においては、請求項11又は12記載
の分析フィルタバンクと、請求項13又は14記載の合
成フィルタバンクとを備え、F0’(z)=H0
(z)、F1’(z)=H1’(z)、及びH1’(z)
=H0’(−z)が成立し、かつH02(z)+H12
(z)が全域通過関数であるという完全再構成条件が成
立する。従って、従来例に比較して回路が簡単であっ
て、行列乗算手段や乗算器など一定の構造の小さい構成
要素を組み合わせて構成するために、従来例に比較して
回路が簡単であって、モジュール化、並列化(又はパラ
レル化)、パイプライン化することができ、LSI化又
はVLSI化することが容易である分析フィルタバンク
を提供することができる。また、ディジタルフィルタの
係数量子化や乗算後の丸め処理などの有限語長に起因す
る劣化に対する耐性が強いという特有の効果がある。さ
らに、上記分析フィルタバンクと、上記合成フィルタバ
ンクとの間の伝送路において雑音がないときに、上記合
成フィルタバンクから出力される再生信号を、上記分析
フィルタバンクへの入力信号に一致させることができ、
受信側において入力信号を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1の実施形態である分析フィ
ルタバンク10と合成フィルタバンク20とを備えたQ
MFフィルタバンク回路の構成を示すブロック図であ
る。
【図2】 第1の実施形態の第1の実現法による図1の
分析フィルタバンク10の構成を示すブロック図であ
る。
【図3】 第1の実施形態の第1の実現法による図1の
合成フィルタバンク20の構成を示すブロック図であ
る。
【図4】 図2及び図3における1個の乗算器を用いた
基本構成ブロックを示すブロック図である。
【図5】 第1の実施形態の第2の実現法を用いた3次
の分析フィルタバンク10の構成を示すブロック図であ
る。
【図6】 第1の実施形態の第1の実現法を用いて、楕
円フィルタに対して、CORDICアルゴリズムを用い
て6ビットで角度量子化して直交LBR2チャンネルフ
ィルタバンクを実現したときの係数量子化のないHP
F、角度量子化LPF、角度量子化HPF及び係数量子
化のないLPFの振幅周波数特性を示すグラフである。
【図7】 第1の実施形態の第1の実現法を用いて、バ
ターワースフィルタに対して、6ビットで図4の係数を
量子化して直交LBR2チャンネルフィルタバンクを実
現したときの係数量子化のないHPF、係数量子化LP
F、係数量子化HPF及び係数量子化のないLPFの振
幅周波数特性を示すグラフである。
【図8】 第1の実施形態の第2の実現法を用いて、6
ビットの角度量子化(楕円フィルタ)を用いてハーフバ
ンド直交2チャンネルフィルタバンクを実現したときの
係数量子化のないHPF、角度量子化LPF、角度量子
化HPF及び係数量子化のないLPFの振幅周波数特性
を示すグラフである。
【図9】 第1の実施形態の第2の実現法を用いて、バ
ターワースフィルタに対して、CORDICアルゴリズ
ムを用いて6ビットで角度量子化してハーフバンド直交
2チャンネルフィルタバンクを実現したときの係数量子
化のないHPF、角度量子化LPF、角度量子化HPF
及び係数量子化のないLPFの振幅周波数特性を示すグ
ラフである。
【図10】 第1の実施形態において、楕円フィルタに
対して、CORDICアルゴリズムを用いて6ビットで
角度量子化したときの直接型及び直交型2チャンネルQ
MFの総合振幅周波数特性を示すグラフである。
【図11】 第1の実施形態の第2の実現法による図1
の分析フィルタバンク10の構成を示すブロック図であ
る。
【図12】 第1の実施形態の第2の実現法による図1
の合成フィルタバンク20の構成を示すブロック図であ
る。
【図13】 本発明に係る第2の実施形態である分析フ
ィルタバンク10aと合成フィルタバンク20aとを備
えたQMFフィルタバンク回路の構成を示すブロック図
である。
【図14】 第2の実施形態の第2の実現法による図1
の分析フィルタバンク10aの構成を示すブロック図で
ある。
【図15】 第2の実施形態の第2の実現法による図1
の合成フィルタバンク20aの構成を示すブロック図で
ある。
【図16】 第2の実施形態の第2の実現法を用いて、
6ビットの角度量子化を用いてハーフバンド直交2チャ
ンネルフィルタバンクを実現したときの量子化のないH
PF、量子化のないLPF、実施形態の量子化HPF、
実施形態の量子化LPF、量子化複素全域通過ブロック
使用LPF、及び量子化複素全域通過ブロック使用HP
Fの振幅周波数特性を示すグラフである。
【図17】 第1及び第2の実施形態の分析フィルタバ
ンク及び合成フィルタバンクを用いたときの8バンド伝
送システムのための第1の変形例の対称な8分割システ
ムの構成をブロック図である。
【図18】 第1及び第2の実施形態の分析フィルタバ
ンク及び合成フィルタバンクを用いたときの8バンド伝
送システムのための第2の変形例のオクターブ分割シス
テムの構成をブロック図である。
【符号の説明】
10…分析フィルタバンク、 11…分配器、 12,13…分析フィルタ、 14,15…ダウンサンプラ、 16…遅延素子、 20…合成フィルタバンク、 21,22…アップサンプラ、 23,24…合成フィルタ、 25…加算器、 26…遅延素子、 30,31,32…行列乗算器、 33…遅延素子、 34,35…乗算器、 36…分配器 40,41,42…行列乗算器、 43…遅延素子、 44,45,46…乗算器、 47…加算器、 70,71,72…行列乗算器、 73…遅延素子、 80,81,82…行列乗算器、 83…遅延素子。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 唐沢 好男 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷 5番地 株式会社エイ・ティ・アール環 境適応通信研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−177015(JP,A) 特開 平3−82233(JP,A) 特開 平8−274586(JP,A) 特開 平7−135448(JP,A) IEEE Transactions on Circuits and S ystem,CAS−34〔4〕(1987− 4)p.378−389 IEEE Internationa l Symposium on Cir cuits ans System, 1997〔Vol.4〕(1997−6−9〜 12)p.2397−2400 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03H 17/02 613 H03H 17/02 633 H03H 17/02 671 H03H 17/00 621 JICSTファイル(JOIS) 特許ファイル(PATOLIS)

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力される入力信号x(n)を2分配し
    て、分配された一方の入力信号x(n)を遅延演算子z
    -1の逆数zの奇数次有理関数で表現された伝達関数H0
    (z)を有するIIR型低域通過ディジタルフィルタに
    より低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサンプ
    リング処理を実行して第1のチャンネル信号x0(n)
    を出力する一方、分配された他方の入力信号x(n)を
    zの奇数次有理関数で表現された伝達関数H1(z)を
    有するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高域
    ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサンプリング処
    理を実行して第2のチャンネル信号x1(n)を出力
    し、上記2つの伝達関数H0(z)とH1(z)はともに
    次数mで同一の極を持つ有界実伝達関数である分析フィ
    ルタバンクにおいて、 入力される入力信号x(n)と、第1の行列乗算手段か
    ら出力されたm個の出力信号からなる出力信号ベクトル
    1を単位時間だけ遅延する第1の遅延素子を介して入
    力される複数m個の信号からなる信号ベクトルV1’と
    を含む入力信号ベクトルに対して所定の行列Sを乗算し
    て、中間信号ga(n)を出力するとともに、乗算結果
    の信号として、第1の出力信号y0(n)と、上記出力
    信号ベクトルV1とを出力する第1の行列乗算手段と、 上記第1の行列乗算手段から出力される第1の出力信号
    0(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリ
    ング処理を実行して処理後の第1のチャンネル信号x0
    (n)を出力する第1のダウンサンプラと、 上記第1の行列乗算手段から出力される中間信号ga
    (n)に対して所定の乗算係数A35を乗算して、乗算結
    果の第2の出力信号y1(n)を出力する第1の乗算器
    と、 上記第1の乗算器から出力される第2の出力信号y
    1(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリン
    グ処理を実行して処理後の第2のチャンネル信号x
    1(n)を出力する第2のダウンサンプラとを備え、 上記行列Sは、STS≦Im+1を満足する上記伝達関数H
    0(z)の状態空間実現行列E,f,g,hから 【数1】 のように構成され、上記状態空間実現行列E,f,g,
    hは上記伝達関数H0(z)と、 【数2】H0(z)=g(zIm−E)-1f+h の関係を持ち、次式のように因数分解されて表され、 【数3】 ここで、Im+1は(m+1)×(m+1)の単位行列、
    mはm×mの単位行列であり、上記乗算定数A35は√
    (1−s0 2)に実質的に等しいことを特徴とする分析フ
    ィルタバンク。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の分析フィルタバンクにお
    いて、上記第1の行列乗算手段は、 上記入力信号ベクトルに対して行列R1を乗算して、乗
    算結果の信号として、上記中間信号ga(n)を第1の
    乗算器に出力するとともに、m個の中間信号からなる中
    間信号ベクトルGaとを出力する第2の行列乗算手段
    と、 上記第2の行列乗算手段から出力される中間信号ga
    (n)に対して所定の乗算定数A34=s0を乗算して、
    乗算結果の信号を出力する第2の乗算器と、 上記第2の乗算器から出力される乗算結果の信号と、上
    記第2の行列乗算手段から出力される中間信号ベクトル
    Gaとを含む信号ベクトルに対して行列R2を乗算し
    て、乗算結果の信号として、第1の出力信号y0(n)
    と、上記出力信号ベクトルV1とを出力する第3の行列
    乗算手段とを備えたことを特徴とする分析フィルタバン
    ク。
  3. 【請求項3】 入力される第1のチャンネル信号x0
    (n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
    を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有理関
    数で表現された伝達関数F0(z)を有するIIR型低
    域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一方、入
    力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2
    倍のレートのアップサンプリング処理を実行した後、z
    の奇数次有理関数で表現された伝達関数F1(z)を有
    するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高域ろ
    波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ波された信
    号とを合成して再生信号xh(n)として出力し、上記
    2つの伝達関数F0(z)とF1(z)はともに次数mで
    同一の極を持つ有界実伝達関数である合成フィルタバン
    クにおいて、 入力される第1のチャンネル信号x0’(n)に対して
    2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
    後の第1の処理信号yh0(n)を出力する第1のアッ
    プサンプラと、 入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して
    2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
    後の第2の処理信号yh1(n)を出力する第2のアッ
    プサンプラと、 上記第2のアップサンプラから出力される第2の処理信
    号yh1(n)に対して所定の乗算係数−A46を乗算し
    て、乗算結果の中間信号gb(n)を出力する第3の乗
    算器と、 上記第1のアップサンプラから出力される第1の処理信
    号yh0(n)と、第4の行列乗算手段から出力された
    m個の再生信号からなる再生信号ベクトルV2を単位時
    間だけ遅延する第2の遅延素子を介して入力される複数
    m個の信号からなる信号ベクトルV2’とを含む入力信
    号ベクトル、及び上記第2のアップサンプラから出力さ
    れた中間信号gb(n)に対して所定の転置行列ST
    乗算して、乗算結果の信号として、再生信号xh(n)
    と、上記再生信号ベクトルV2とを出力する第4の行列
    乗算手段とを備え、 上記転置行列STは、SST≦Im+1を満足する上記伝達
    関数F0(z)の状態空間実現行列ET,gT,fT,hか
    ら、 【数4】 のように構成され、上記状態空間実現行列ET,gT,f
    T,hは上記伝達関数F0(z)と、 【数5】F0(z)=fT(zIm−ET-1T+h の関係を持ち、次式のように因数分解されて表され、 【数6】 ここで、Im+1は(m+1)×(m+1)の単位行列、
    Iはm×mの単位行列であり、 上記乗算定数−A46は−√(1−s0 2)に実質的に等し
    いことを特徴とする合成フィルタバンク。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の合成フィルタバンクにお
    いて、上記第4の行列乗算手段は、 上記第1のアップサンプラから出力される第1の処理信
    号yh0(n)と、上記信号ベクトルV2’とを含む入力
    信号ベクトルに対して所定の転置行列R2 Tを乗算して、
    乗算結果の信号として、中間信号gc(n)と、中間信
    号ベクトルGbとを出力する第5の行列乗算手段と、 上記第5の行列乗算手段から出力される中間信号gc
    (n)に対して所定の乗算定数A44=s0を乗算して、
    乗算結果の信号を出力する第4の乗算器と、 上記第4の乗算器から出力される乗算結果の信号と、上
    記第5の行列乗算手段から出力されるm個の中間信号か
    らなる中間信号ベクトルGbとを含む信号ベクトルに対
    して転置行列R1 Tを乗算して、乗算結果の信号として、
    再生信号xh(n)と、上記再生信号ベクトルV2とを
    出力する第6の行列乗算手段とを備えたことを特徴とす
    る合成フィルタバンク。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載の分析フィルタバン
    クと、 請求項3又は4記載の合成フィルタバンクとを備え、 F0(z)=H0(z)、F1(z)=−H1(z)、及び
    1(z)=H0(−z)が成立し、かつH0(z)H
    1(z)+F0(z)F1(z)が全域通過関数であると
    いう完全再構成条件が成立することを特徴とするフィル
    タバンク回路。
  6. 【請求項6】 入力される入力信号x(n)を2分配し
    て、分配された一方の入力信号x(n)を遅延演算子z
    -1の逆数zの奇数次有理関数で表現された伝達関数H0
    (z)を有するIIR型低域通過ディジタルフィルタに
    より低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサンプ
    リング処理を実行して第1のチャンネル信号x0(n)
    を出力する一方、分配された他方の入力信号x(n)を
    zの奇数次有理関数で表現された伝達関数H1(z)を
    有するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高域
    ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサンプリング処
    理を実行して第2のチャンネル信号x1(n)を出力
    し、上記2つの伝達関数H0(z)とH1(z)がともに
    次数Nの有界実伝達関数であり、H0(z)とH1(z)
    の間にはH1(z)=H0(−z)かつすべての正規化角
    周波数ωに対して|H0(exp(jω))|2+|H1
    (exp(jω))|2=1の関係を有する分析フィル
    タバンクにおいて、 入力される入力信号x(n)と、0である零入力信号
    と、第7の行列乗算手段から出力されたN個の出力信号
    からなる出力信号ベクトルV3を単位時間だけ遅延する
    第3の遅延素子を介して入力される複数N個の信号から
    なる信号ベクトルV3’とを含む入力信号ベクトルに対
    して所定の行列Qを乗算して、乗算結果の信号として、
    上記出力信号ベクトルV3と、第1の出力信号y0(n)
    と、第2の出力信号y1(n)とを出力する第7の行列
    乗算手段と、 上記第7の行列乗算手段から出力される第1の出力信号
    0(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリ
    ング処理を実行して処理後の第1のチャンネル信号x0
    (n)を出力する第1のダウンサンプラと、 上記第7の行列乗算手段から出力される第2の出力信号
    1(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリ
    ング処理を実行して処理後の第2のチャンネル信号x1
    (n)を出力する第2のダウンサンプラとを備え、 上記行列Qは、入力信号x(n)を入力とする1入力2
    出力の伝達行列[H0(z) H1(z)]Tを、 【数7】[H0(z) H1(z)]T=C(zIN−A)
    -1B+D と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
    列である。)可制御正準形状態空間実現行列A,B,
    C,Dから構成される(N+2)×(N+1)の行列 【数8】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
    (N+2)×(N+1)の行列Sに、上記行列Sの各列
    が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+2)
    列目に加えることにより得られた(N+2)×(N+
    2)の行列であって、 上記行列Qは、Q=PRのように行列Pと行列Rとに因
    数分解されて表されたことを特徴とする分析フィルタバ
    ンク。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の分析フィルタバンクにお
    いて、上記第7の行列乗算手段は、 上記入力信号ベクトルに対して上記行列Rを乗算して、
    乗算結果の信号として、N個の中間信号からなる中間信
    号ベクトルGcと、2個の別の信号とを出力する第8の
    行列乗算手段と、 上記第8の行列乗算手段から出力される中間信号ベクト
    ルGcと2個の別の信号とに対して上記行列Pを乗算し
    て、乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトルV3
    と、上記第1の出力信号y0(n)と、上記第2の出力
    信号y1(n)とを出力する第9の行列乗算手段とを備
    えたことを特徴とする分析フィルタバンク。
  8. 【請求項8】 入力される第1のチャンネル信号x0
    (n)に対して2倍のレートのアップサンプリング処理
    を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの奇数次有理関
    数で表現された伝達関数F0(z)を有するIIR型低
    域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する一方、入
    力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して2
    倍のレートのアップサンプリング処理を実行した後、z
    の奇数次有理関数で表現された伝達関数F1(z)を有
    するIIR型高域通過ディジタルフィルタにより高域ろ
    波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ波された信
    号とを合成して再生信号xh(n)として出力し、上記
    2つの伝達関数F0(z)とF1(z)がともに次数がN
    の有界実伝達関数であり、F0(z)とF1(z)の間に
    1(z)=−F0(−z)かつすべての正規化角周波数
    ωに対して│F0(exp(jω))│2+│F1(ex
    p(jω))│2=1の関係を有する合成フィルタバン
    クにおいて、 入力される第1のチャンネル信号x0’(n)に対して
    2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
    後の第1の処理信号yh0(n)を出力する第1のアッ
    プサンプラと、 入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して
    2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
    後の第2の処理信号yh1(n)を出力する第2のアッ
    プサンプラと、 上記第2のアップサンプラから出力される第2の処理信
    号yh1(n)に対して所定の乗算係数A84=−1を乗
    算することにより反転して、乗算結果の反転された第2
    の処理信号yh1(n)を出力する第5の乗算器と、 上記第1のアップサンプラから出力される第1の処理信
    号yh0(n)と、上記第5の乗算器から出力される反
    転された第2の処理信号yh1(n)と、第10の行列
    乗算手段から出力されたN個の再生信号からなる再生信
    号ベクトルV4を単位時間だけ遅延する第4の遅延素子
    を介して入力される複数N個の信号からなる信号ベクト
    ルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して所定の転
    置行列QTを乗算して、乗算結果の信号として、再生信
    号xh(n)と、0である零再生信号と、上記再生信号
    ベクトルV4とを出力する第10の行列乗算手段とを備
    え、 上記転置行列QTは、再生信号xh(n)を出力とする
    2入力1出力の伝達行列[F0(z) F1(z)]を、 【数9】[F0(z) F1(z)]=C’(zIN
    A’)-1B’+D’ と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
    列である。)可制御正準形状態空間実現行列A’,
    B’,C’,D’から構成される(N+2)×(N+
    1)の行列 【数10】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
    (N+2)×(N+1)の行列S’に、上記行列S’の
    各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+
    2)列目に加えることにより得られた(N+2)×(N
    +2)の行列であって、 上記転置行列QTは、QT=RTTのように転置行列RT
    と転置行列PTとに因数分解されて表されたことを特徴
    とする合成フィルタバンク。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の合成フィルタバンクにお
    いて、上記第10の行列乗算手段は、 上記第1のアップサンプラから出力される第1の処理信
    号yh0(n)と、上記第5の乗算器から出力される反
    転された第2の処理信号yh1(n)と、上記信号ベク
    トルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して上記転
    置行列PTを乗算して、乗算結果の信号として、中間信
    号ベクトルGdと、2個の別の信号とを出力する第11
    の行列乗算手段と、 上記第11の行列乗算手段から出力される中間信号ベク
    トルGdと2個の別の信号とを含む信号ベクトルに対し
    て上記転置行列RTを乗算して、乗算結果の信号とし
    て、再生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上
    記再生信号ベクトルV4とを出力する第12の行列乗算
    手段とを備えたことを特徴とする合成フィルタバンク。
  10. 【請求項10】 請求項6又は7記載の分析フィルタバ
    ンクと、 請求項8又は9記載の合成フィルタバンクとを備え、 F0(z)=H0(z)、F1(z)=−H1(z)、及び
    1(z)=H0(−z)が成立し、かつH0(z)H
    1(z)+F0(z)F1(z)が全域通過関数であると
    いう完全再構成条件が成立することを特徴とするフィル
    タバンク回路。
  11. 【請求項11】 入力される入力信号x(n)を2分配
    して、分配された一方の入力信号x(n)を遅延演算子
    -1の逆数zの偶数次有理関数で表現された伝達関数H
    0’(z)を有するIIR型低域通過ディジタルフィル
    タにより低域ろ波した後、1/2倍のレートのダウンサ
    ンプリング処理を実行して第1のチャンネル信号x
    0(n)を出力する一方、分配された他方の入力信号x
    (n)をzの偶数次有理関数で表現された伝達関数
    1’(z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィ
    ルタにより高域ろ波した後、1/2倍のレートのダウン
    サンプリング処理を実行して第2のチャンネル信号x1
    (n)を出力し、上記2つの伝達関数H0’(z)と
    1’(z)がともに次数Nの有界実伝達関数であり、
    0’(z)とH1’(z)の間にH1’(z)=H0
    (−z)かつすべての正規化角周波数ωに対して│
    0’(exp(jω))│2+H1’(exp(j
    ω))│2=1の関係を有する分析フィルタバンクにお
    いて、 入力される入力信号x(n)と、0である零入力信号
    と、第7の行列乗算手段から出力されたN個の出力信号
    からなる出力信号ベクトルV3を単位時間だけ遅延する
    第3の遅延素子を介して入力される複数N個の信号から
    なる信号ベクトルV3’とを含む入力信号ベクトルに対
    して所定の行列Q’を乗算して、乗算結果の信号とし
    て、上記出力信号ベクトルV3と、第1の出力信号y
    0(n)と、第2の出力信号y1(n+1)とを出力する
    第7の行列乗算手段と、 上記第7の行列乗算手段から出力される第2の出力信号
    1(n+1)を上記単位時間だけ遅延して遅延された
    第2の出力信号y1(n)を出力する第5の遅延素子
    と、 上記第7の行列乗算手段から出力される第1の出力信号
    0(n)に対して1/2倍のレートのダウンサンプリ
    ング処理を実行して処理後の第1のチャンネル信号x0
    (n)を出力する第1のダウンサンプラと、 上記第5の遅延素子から出力される遅延された第2の出
    力信号y1(n)に対して1/2倍のレートのダウンサ
    ンプリング処理を実行して処理後の第2のチャンネル信
    号x1(n)を出力する第2のダウンサンプラとを備
    え、 上記行列Q’は、入力信号x(n)を入力とする1入力
    2出力の伝達行列[H0’(z) H1’(z)]Tを、 【数11】[H0’(z) H1’(z)]T=C(zIN
    −A)-1B+D と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
    列である。)可制御正準形状態空間実現行列A,B,
    C,Dから構成される(N+2)×(N+1)の行列 【数12】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
    (N+2)×(N+1)の行列Saに、上記行列Saの
    各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを(N+
    2)列目に加えることにより得られた(N+2)×(N
    +2)の行列であって、 上記行列Q’は、Q’=P’R’のように行列P’と行
    列R’とに因数分解されて表されたことを特徴とする分
    析フィルタバンク。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の分析フィルタバンク
    において、上記第7の行列乗算手段は、 上記入力信号ベクトルに対して上記行列R’を乗算し
    て、乗算結果の信号として、N個の中間信号からなる中
    間信号ベクトルGcと、2個の別の信号とを出力する第
    8の行列乗算手段と、 上記第8の行列乗算手段から出力される中間信号ベクト
    ルGcと2個の別の信号とに対して上記行列P’を乗算
    して、乗算結果の信号として、上記出力信号ベクトルV
    3と、上記第1の出力信号y0(n)と、上記第2の出力
    信号y1(n+1)とを出力する第9の行列乗算手段と
    を備えたことを特徴とする分析フィルタバンク。
  13. 【請求項13】 入力される第1のチャンネル信号
    0’(n)に対して2倍のレートのアップサンプリン
    グ処理を実行した後、遅延演算子z-1の逆数zの偶数次
    有理関数で表現された伝達関数F0’(z)を有するI
    IR型低域通過ディジタルフィルタにより低域ろ波する
    一方、入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に
    対して2倍のレートのアップサンプリング処理を実行し
    た後、zの偶数次有理関数で表現された伝達関数F1
    (z)を有するIIR型高域通過ディジタルフィルタに
    より高域ろ波し、上記低域ろ波された信号と上記高域ろ
    波された信号とを合成して再生信号xh(n)として出
    力し、上記2つの伝達関数F0’(z)とF1’(z)が
    ともに次数がNの有界実伝達関数であり、F0’(z)
    とF1’(z)の間にF0’(z)=F1’(−z)かつ
    すべての正規化角周波数ωに対して|F0’(exp
    (jω))|2+|F1’(exp(jω))|2=1の
    関係を有する合成フィルタバンクにおいて、 入力される第1のチャンネル信号x0’(n)に対して
    2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
    後の第1の処理信号yh0(n)を出力する第1のアッ
    プサンプラと、 入力される第2のチャンネル信号x1’(n)に対して
    2倍のレートのアップサンプリング処理を実行して処理
    後の第2の処理信号yh1(n)を出力する第2のアッ
    プサンプラと、 上記第1のアップサンプラから出力される第1の処理信
    号yh0(n)を上記単位時間だけ遅延して遅延された
    第1の処理信号yh0(n−1)を出力する第6の遅延
    素子と、 上記第6の遅延素子から出力される遅延された第1の処
    理信号yh0(n−1)と、上記第2のサップサンプラ
    から出力された第2の処理信号yh1(n)と、第10
    の行列乗算手段から出力されたN個の再生信号からなる
    再生信号ベクトルV4を単位時間だけ遅延する第4の遅
    延素子を介して入力される複数N個の信号からなる信号
    ベクトルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して所
    定の転置行列Q’Tを乗算して、乗算結果の信号とし
    て、再生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上
    記再生信号ベクトルV4とを出力する第10の行列乗算
    手段とを備え、 上記転置行列Q’Tは、再生信号xh(n)を出力とす
    る2入力1出力の伝達行列[F0’(z) F1
    (z)]を、 【数13】[F0’(z) F1’(z)]=C’(zI
    N−A’)-1B’+D’ と表わすことができる(ここで、INはN×Nの単位行
    列である。)可制御正準形状態空間実現行列A’,
    B’,C’,D’から構成される(N+2)×(N+
    1)の行列 【数14】 に対して、所定の相似変換の演算を実行して得られる
    (N+2)×(N+1)の行列Sa’に、上記行列S
    a’の各列が互いに直交するように所定の列ベクトルを
    (N+2)列目に加えることにより得られた(N+2)
    ×(N+2)の行列であって、 上記転置行列Q’Tは、Q’T=R’TP’Tのように転置
    行列R’Tと転置行列P’Tとに因数分解されて表された
    ことを特徴とする合成フィルタバンク。
  14. 【請求項14】 請求項13記載の合成フィルタバンク
    において、上記第10の行列乗算手段は、 上記第6の遅延素子から出力される遅延された第1の処
    理信号yh0(n−1)と、上記第2のアップサンプラ
    から出力される第2の処理信号yh1(n)と、上記信
    号ベクトルV4’とを含む入力信号ベクトルとに対して
    上記転置行列P’Tを乗算して、乗算結果の信号とし
    て、中間信号ベクトルGdと、2個の別の信号とを出力
    する第11の行列乗算手段と、 上記第11の行列乗算手段から出力される中間信号ベク
    トルGdと2個の別の信号とを含む信号ベクトルに対し
    て上記転置行列R’Tを乗算して、乗算結果の信号とし
    て、再生信号xh(n)と、0である零再生信号と、上
    記再生信号ベクトルV4とを出力する第12の行列乗算
    手段とを備えたことを特徴とする合成フィルタバンク。
  15. 【請求項15】 請求項11又は12記載の分析フィル
    タバンクと、 請求項13又は14記載の合成フィルタバンクとを備
    え、 F0’(z)=H0’(z)、F1’(z)=H1
    (z)、及びH1’(z)=H0’(−z)が成立し、か
    つH02(z)+H12(z)が全域通過関数であると
    いう完全再構成条件が成立することを特徴とするフィル
    タバンク回路。
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IEEE International Symposium on Circuits ans System,1997〔Vol.4〕(1997−6−9〜12)p.2397−2400
IEEE Transactions on Circuits and System,CAS−34〔4〕(1987−4)p.378−389

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