JP3087372U - ガス封入複層ガラス - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】溝幅が９ミリ程度で水抜き孔のない枠体に施工
される複層ガラスにおいて、実用上十分な断熱性能を有
し、かつ長期の耐久性能を保持する。 【解決手段】中空層６ａの厚みを２．５ミリメートル以
下として、中空層内にクリプトンガスを充填し、さらに
複層ガラスを構成する板ガラス２の少なくとも１枚には
垂直放射率が０．３以下の低放射率の膜７を被覆したも
のを使用し、複層ガラス周辺部の封止材層を２層以上と
して、中空層側の層には金属製隔壁４ａを埋め込まれた
ゴム質のブチル系重合体である封止材３ａを配し、また
外気に接する層には分子中にケイ素を含む重合体である
封止材５ａを配する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案が属する技術分野】

本考案は、中空層にクリプトンガスを充填し、かつ充填されたガスの漏出防止 及び周辺部のシールの耐久性能向上のために二種類の封止材料を組み合わせて用 いた複層ガラスに関する。

【０００２】

【従来の技術】

複層ガラスの中空層に空気に替えて他のガスを封入して使用する場合、通常は 板ガラスの間隔を支えるため周辺部に配するスペーサー部材と板ガラスの間を高 粘度の材料で封止し、さらにこの外側の外気に接する部分にポリサルファイドゴ ム及び炭酸カルシュウムを主成分とする封止材等を配して補強する。

【０００３】 通常の複層ガラスのスペーサー部材と板ガラスとの間の高粘度の封止材及びそ の外側の外気と接する部分に配した封止材はそれぞれ単独では中空層に充填され たガスの漏出防止には十分な性能は無く、両方の封止材を併せて二重に使用する ことによってガス漏出防止が達成されている。

【０００４】 特にスペーサー部材と板ガラスとの間の封止材としてポリイソブチレン系の材 料が使われることがあるが、これは高粘度ではあるが流動性を持っている。この 様な材質では複層ガラスの外部からの水分の浸透は防止できるものの、中空層に 充填されたクリプトンガスの漏出防止には不十分なものである。

【０００５】 この様な構成の複層ガラスの欠点は、各封止材のうち外側の封止材は一般に水 に長期間接触すると劣化を生じ、ガラスとの接着強度の低下あるいは剥離などの 問題を生じ易く、複層ガラスの構造を長期にわたって維持出来なくなる可能性が ある。窓ガラスをはめる枠体のうち、ガラスを収める溝幅が９ミリメートル程度 のものは大部分が水抜き用の排水孔が無いため、この様な枠体に収められた複層 ガラスは周辺部の封止材が常時水に接することになり耐久性に問題を生じる。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

窓ガラスをはめる枠体のなかにはガラスを挿入する溝に排水孔を設けていない ものがあり、特に溝幅が９ミリメートル程度のものは排水孔の無い枠体が大部分 である。この様な枠体を使用して複層ガラスを施工する必要が生じることがある が、複層ガラスを９ミリメートル程度の溝幅の枠体に収めるためには複層ガラス の厚みを８．５ミリメートル以下にすることによって施工は可能であるものの、 水抜き用の排水孔が無い枠体の中には雨水などが溜まりやすく、この枠体に収め られた複層ガラスの周辺部の封止材は施工後、水に接触する機会が非常に多くな る。

【０００７】 水抜き用の排水孔の無い枠体に収められ、中空層に空気以外のガスを充填され た複層ガラスは水に接触する部分の封止材の耐水性を確保し、かつ中空層のガス が漏出することのない封止材によって周辺部を封止しなければならず、さらに次 の各条件を満たす必要がある。

【０００８】 窓ガラス用の枠体に収められた複層ガラスは、使用期間中に外部から圧縮ある いは衝撃などの力を受けることが多く、これらの力に耐える接着強度を長期間保 持しなければならない。

【０００９】 複層ガラスを９ミリメートル程度の溝幅の枠体に施工するためには、複層ガラ スの厚みを８．５ミリメートル以下にする必要があり、一方中空層の厚みが小さ くなるにつれ伝導伝熱が増加するが、複層ガラスの使用目的である断熱性能を確 保しなければならない。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

本考案は、複層ガラスを施工する対象となる枠体の溝幅が９ミリメートル程度 であっても複層ガラスを直接挿入可能とするため、中空層の厚みを２．５ミリメ ートル以下とし、複層ガラス全体の厚みを最大でも８．５ミリメートル以下とす る。

【００１１】 中空層の厚みが小さい複層ガラスに実用上十分な断熱性能を持たせるため、中 空層に空気よりも断熱性能の高いクリプトンガスを充填することによって伝導伝 熱を抑制する。ただし、伝導伝熱の十分な抑制のためにはガス層の厚みを１ミリ メートル以上とすることが望ましい。

【００１２】 さらに断熱性能を高めるため、補助的に複層ガラスを構成する板ガラスの少な くとも１枚は垂直放射率の値が０．３以下の低放射率の膜を表面に被覆した板ガ ラスを配して放射伝熱を抑制する。

【００１３】 また、複層ガラスの内部に充填されたガスが長期の使用期間中に漏出するのを 防止するため、複層ガラス周辺部の封止材は２層以上の多層とし、中空層側の封 止材にはガスの移動を防止する金属製隔壁を埋め込んだゴム質のブチル系重合体 を配して、外部の水分が中空層への侵入防止とともに、中空層のガスの外部への 漏出防止機能をこの封止材層のみで確保する。

【００１４】 複層ガラスの周辺部が水に接触しても封止材の劣化を生じさせないために、封 止材料として外側の層に分子中にケイ素を含んだ重合体を配して耐水性及びガラ スとの接着強度を確保し、水抜き用の排水孔の無い枠体に収められた複層ガラス の封止材の接着機能が長期使用期間中に低下するのを防止する。

【００１５】 すなわち、複層ガラスの厚みが限られた条件下で、実用上十分な断熱性能を有 し、かつ長期間水に接触する使用環境下においても十分使用に耐え得るという作 用効果を奏するものである。

【００１６】

【考案の実施の形態】

以下本考案を添付の図面に基づき説明する。 図１は本考案の実施の形態を示した正面図で、図２は図１のＸ−Ｘにおける断 面図である。図３は本考案の複層ガラスを枠体に収めた例の断面図である。図４ は本考案のものではない従来の複層ガラスの断面図で、参考例として示したもの である。

【００１７】 図１において１は複層ガラス、３ａはゴム質のブチル系重合体である封止材層 であり、４ａは３ａの層の中に埋め込まれた金属製隔壁である。５ａは分子中に ケイ素を含んだ重合体である封止材層である。

【００１８】 図２の２は複層ガラスを構成する板ガラスであり、各板ガラスは厚みが２ミリ メートル以上で、５ミリメートル以下の各種類のものから、板ガラスの厚みの合 計が複層ガラス全体の厚みより１ミリメートル以上小さくなるように選択する。

【００１９】 封止材３ａの層は、その内部に埋め込まれた金属製隔壁４ａの効果により複層 ガラスの外部からの水分の侵入を防止するだけでなく、中空層に充填されたガス の漏出防止をも十分に防止する。

【００２０】 分子中にケイ素を含む重合体である封止材層５ａは複層ガラスの周辺部が水に 長期間接触する環境においても接着強度を低下させることなく複層ガラスとして の構造を保持する。

【００２１】 ６ａはクリプトンガスが充填された中空層で、クリプトンガスの純度は容積比 で少なくとも８０％以上を保持する。

【００２２】 ７は垂直放射率が０．３以下の低放射率の膜であり、放射伝熱を抑制する。こ の膜は低放射率の面をもったフイルムを板ガラス表面に貼り付けても、あるいは 表面に低放射率の膜を形成した板ガラスの使用のいずれによってもよい。

【００２３】 図３の８は複層ガラスを収める枠体であり、複層ガラスの下辺は部材９によっ て支持される。

【００２４】 なお、本考案の用語である封止、中空層は日本工業規格Ｒ３２０９，また垂直 放射率は同規格Ｒ３１０６で使用されているものと同意義である。

【００２５】

【考案の効果】

本考案によれば、窓の枠体の溝幅が９ミリメートル程度の条件の下で、補助枠 を使用することなく枠体の溝に収めることのでき、かつ実用上十分な断熱性能を 有するとともに、長期間の使用に耐える複層ガラスを供し得る効果を持つもので ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本考案の一実施例を示す正面図である。

【図２】図２は図１のＸ−Ｘにおける断面図である。

【図３】図３は本考案の複層ガラスを枠体に収めた例の
断面図である。

【図４】図４は本考案のものではなく、複層ガラスの中
空層に空気を充填し、周辺の封止は金属製のスペーサー
とガラスの間を高粘度の封止材で密閉し、その外側の外
気に接する部分にポリサルファイドゴム及び炭酸カルシ
ュウムを主成分とする封止材を配した従来の複層ガラス
の断面図である。

【符号の説明】

１ 複層ガラス ２ 板ガラス ３ａ ゴム質のブチル系重合体である封止材 ３ｂ 高粘度の封止材 ４ａ 金属製隔壁 ４ｂ スペーサー ５ａ 分子中にケイ素を含んだ重合体である封止材 ５ｂ ポリサルファイドゴム及び炭酸カルシュウムを主
成分とする封止材 ６ａ クリプトンガスを充填した中空層 ６ｂ 空気を充填した中空層 ７ 垂直放射率０．３以下の低放射率の膜 ８ 枠体 ９ 枠体の内部で、複層ガラスを支える部材

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】複層ガラス内部の中空層の厚みを２．５ミ
   リメートル以下とし、中空層にはクリプトンガスが容積
   比で少なくとも８０％以上が充填され、構成する板ガラ
   スの少なくとも１枚は垂直放射率が０．３以下の低放射
   率の膜を板ガラス表面に被覆し、構成する各板ガラスの
   厚みの合計に中空層の厚みの合計を加えた全体の厚みが
   ８．５ミリメートル以下であり、中空層と外部とを隔離
   する周辺部の封止材料を少なくとも２層以上として、中
   空層側にはガスの移動を防止するための金属製隔壁が埋
   め込まれたゴム質のブチル系重合体を封止材として配
   し、外気に接する側の封止材料としては分子中にケイ素
   を含む重合体を配することを特徴とする複層ガラス。