JP3085716B2 - レーザ同位体分離方法 - Google Patents
レーザ同位体分離方法Info
- Publication number
- JP3085716B2 JP3085716B2 JP03008532A JP853291A JP3085716B2 JP 3085716 B2 JP3085716 B2 JP 3085716B2 JP 03008532 A JP03008532 A JP 03008532A JP 853291 A JP853291 A JP 853291A JP 3085716 B2 JP3085716 B2 JP 3085716B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- level
- excitation
- laser beam
- metastable
- laser
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Lasers (AREA)
Description
【0001】〔発明の目的〕
【0002】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザを用いた同位体
の分離をコヒーレントトラッピングと励起漏れを起こさ
せずに効率的に行うことができるレーザ同位体分離方法
に関する。
の分離をコヒーレントトラッピングと励起漏れを起こさ
せずに効率的に行うことができるレーザ同位体分離方法
に関する。
【0003】
【従来の技術】レーザを用いた同位体分離技術、すなわ
ちレーザ同位体分離方法は、同位体電子のエネルギー準
位のわずかな差を利用するものであるが、この技術は主
としてウラン-235を分離する原子法レーザウラン濃縮に
おいて実用化されている。
ちレーザ同位体分離方法は、同位体電子のエネルギー準
位のわずかな差を利用するものであるが、この技術は主
としてウラン-235を分離する原子法レーザウラン濃縮に
おいて実用化されている。
【0004】原子法レーザウラン濃縮は、原子炉の燃料
となるU235 (天然には約0.7%しか存在しない)
を、U238 という圧倒的に多量に存在する同位体から分
離・濃縮する技術であり、そのためにはU235 とU238
を含む金属ウランを蒸発させた状態で、このウラン原子
にU235 だけを選択的に励起・電離させるレーザ光を照
射し、イオン化したU235 をクーロン力により補集す
る。
となるU235 (天然には約0.7%しか存在しない)
を、U238 という圧倒的に多量に存在する同位体から分
離・濃縮する技術であり、そのためにはU235 とU238
を含む金属ウランを蒸発させた状態で、このウラン原子
にU235 だけを選択的に励起・電離させるレーザ光を照
射し、イオン化したU235 をクーロン力により補集す
る。
【0005】図2は、この原子法レーザウラン濃縮によ
る同位体分離装置1の断面図である。この同位体分離装
置1においては、真空容器2に納めた蒸発用るつぼ3の
中に固体状の金属ウランを載置し、電子銃4から発射し
た電子ビームBを、ヘルムホルツコイル5による磁場で
偏向させて進路を調整しながらこの金属ウランに照射す
る。そうすると金属ウランは電子ビームの熱エネルギー
を受けて溶融金属ウラン6となり、さらに電子ビームB
の照射を続けると、蒸発を始める。
る同位体分離装置1の断面図である。この同位体分離装
置1においては、真空容器2に納めた蒸発用るつぼ3の
中に固体状の金属ウランを載置し、電子銃4から発射し
た電子ビームBを、ヘルムホルツコイル5による磁場で
偏向させて進路を調整しながらこの金属ウランに照射す
る。そうすると金属ウランは電子ビームの熱エネルギー
を受けて溶融金属ウラン6となり、さらに電子ビームB
の照射を続けると、蒸発を始める。
【0006】蒸発した金属ウラン原子Sは真空容器2内
を上昇して真空容器2の頂部に設けられた回収板7に向
かうが、この際途中でU235原子だけを光共鳴反応に
より選択的に励起・電離させる波長のレーザ光Lが照射
される。その結果、U235原子は正のイオンとなり、
陰電極8にクーロン力によって吸引・補集される。
を上昇して真空容器2の頂部に設けられた回収板7に向
かうが、この際途中でU235原子だけを光共鳴反応に
より選択的に励起・電離させる波長のレーザ光Lが照射
される。その結果、U235原子は正のイオンとなり、
陰電極8にクーロン力によって吸引・補集される。
【0007】一方、U238 はレーザ光Lによってはイオ
ン化されないため、陰電極8による電界によっては進路
を曲げられず、回収板7に吸着してU235 とは別に回収
される。
ン化されないため、陰電極8による電界によっては進路
を曲げられず、回収板7に吸着してU235 とは別に回収
される。
【0008】こうしてU235 同位体のU238 同位体から
の分離・濃縮がなされるわけであるが、この方法は、気
体拡散法、遠心分離法など他のウラン濃縮法と比べ、所
定の濃縮レベルを達成するのに同じ分離操作を何度もカ
スケード方式で繰返す必要がなく、経済的で分離効率が
高いという利点がある。
の分離・濃縮がなされるわけであるが、この方法は、気
体拡散法、遠心分離法など他のウラン濃縮法と比べ、所
定の濃縮レベルを達成するのに同じ分離操作を何度もカ
スケード方式で繰返す必要がなく、経済的で分離効率が
高いという利点がある。
【0009】この場合、電子ビームBはウラン濃縮プラ
ントにおいては通常幅員が数メートルのものを使用する
ため、蒸発するウラン原子もこれに対応する幅員の蒸気
流となる。そうすると、ヘルムホルツコイルによる外部
磁場の影響を広い幅員のウラン原子蒸気流のすべてに渡
って完全に遮断することはできなくなり、質量数が奇数
のU235 原子核は、ゼーマン効果によって励起準位の縮
退が解けて遷移に係るエネルギー準位(遷移ライン)が
複数本生じ(ゼーマン分裂)、しかも各遷移ラインによ
る吸収スペクトルは、U235 原子の蒸気流の方向とレー
ザ光Lの進行方向とのなす角度によってドップラ効果に
よる拡がりをもつようになる。
ントにおいては通常幅員が数メートルのものを使用する
ため、蒸発するウラン原子もこれに対応する幅員の蒸気
流となる。そうすると、ヘルムホルツコイルによる外部
磁場の影響を広い幅員のウラン原子蒸気流のすべてに渡
って完全に遮断することはできなくなり、質量数が奇数
のU235 原子核は、ゼーマン効果によって励起準位の縮
退が解けて遷移に係るエネルギー準位(遷移ライン)が
複数本生じ(ゼーマン分裂)、しかも各遷移ラインによ
る吸収スペクトルは、U235 原子の蒸気流の方向とレー
ザ光Lの進行方向とのなす角度によってドップラ効果に
よる拡がりをもつようになる。
【0010】そこで、このような原子法レーザウラン濃
縮においては、レーザ光Lがシングルモードの場合には
スペクトルが数100MHz幅、またマルチモードの場
合には各離散スペクトルが数GHz幅のガウス分布をも
つようなレーザ光源を使用し、広がりをもつ吸収スペク
トルに対応するエネルギーのレーザ光を照射することに
よって、U238 の吸収スペクトルと重複しない範囲で励
起されないU235 の量を減らし、分離効率を高めてい
る。
縮においては、レーザ光Lがシングルモードの場合には
スペクトルが数100MHz幅、またマルチモードの場
合には各離散スペクトルが数GHz幅のガウス分布をも
つようなレーザ光源を使用し、広がりをもつ吸収スペク
トルに対応するエネルギーのレーザ光を照射することに
よって、U238 の吸収スペクトルと重複しない範囲で励
起されないU235 の量を減らし、分離効率を高めてい
る。
【0011】ところで、U235 の励起・電離に係るエネ
ルギー準位(エネルギーレベル)の一例を図3でみる
と、基底レベル(基底準位)にある最外殻電子11が、
2つある励起準位(励起レベル)のうち第1励起準位
(エネルギーの低い励起準位)としての選択レベルと第
2励起準位(エネルギーの高い励起準位)としての中間
レベルを順に経て、電離レベルまで遷移していく。
ルギー準位(エネルギーレベル)の一例を図3でみる
と、基底レベル(基底準位)にある最外殻電子11が、
2つある励起準位(励起レベル)のうち第1励起準位
(エネルギーの低い励起準位)としての選択レベルと第
2励起準位(エネルギーの高い励起準位)としての中間
レベルを順に経て、電離レベルまで遷移していく。
【0012】一方で、U235 は、蒸発用るつぼ3におい
て電子ビームを照射されると、熱エネルギーを受け、一
部の最外殻電子12は基底レベルよりややエネルギーの
高い準安定レベルに移行する。そこで、通常はウランの
分離効率を上げるため、この準安定レベルのU235 も選
択レベルに励起するレーザ光を照射する。
て電子ビームを照射されると、熱エネルギーを受け、一
部の最外殻電子12は基底レベルよりややエネルギーの
高い準安定レベルに移行する。そこで、通常はウランの
分離効率を上げるため、この準安定レベルのU235 も選
択レベルに励起するレーザ光を照射する。
【0013】U235 の場合は、基底レベルおよび準安定
レベルからそれぞれ一気に(ただ一種のレーザ光で)電
離レベルまで励起しようとすると、大きなエネルギー準
位差に対応する波長の短いレーザ光が必要となるが、こ
の種のレーザ光には高出力のものがなく、分離効率が悪
い。そこで「基底レベルおよび準安定レベル」→「選択
レベル」→「中間レベル」→「電離レベル」のように段
階を踏んで励起すると、それぞれの段階への励起に係る
エネルギー準位差は縮小し、各段階への励起に係るレー
ザ光として、波長が可視領域にあって高出力のレーザ光
(例えば色素レーザなど)を用いることができる。なお
色素レーザはスペクトル幅が広く、上述の吸収スペクト
ルの広がりにも対応することができる。
レベルからそれぞれ一気に(ただ一種のレーザ光で)電
離レベルまで励起しようとすると、大きなエネルギー準
位差に対応する波長の短いレーザ光が必要となるが、こ
の種のレーザ光には高出力のものがなく、分離効率が悪
い。そこで「基底レベルおよび準安定レベル」→「選択
レベル」→「中間レベル」→「電離レベル」のように段
階を踏んで励起すると、それぞれの段階への励起に係る
エネルギー準位差は縮小し、各段階への励起に係るレー
ザ光として、波長が可視領域にあって高出力のレーザ光
(例えば色素レーザなど)を用いることができる。なお
色素レーザはスペクトル幅が広く、上述の吸収スペクト
ルの広がりにも対応することができる。
【0014】そして、上述の励起方式は、基底レベルか
ら選択レベルへの励起、準安定レベルから選択レベルへ
の励起、選択レベルから中間レベルへの励起および中間
レベルから電離レベルへの励起のため計4波長のレーザ
光を用い、かつ励起に係る段階が選択レベル、中間レベ
ルおよび電離レベルの3段階存在することから4波長3
段階励起方式と呼ばれる。
ら選択レベルへの励起、準安定レベルから選択レベルへ
の励起、選択レベルから中間レベルへの励起および中間
レベルから電離レベルへの励起のため計4波長のレーザ
光を用い、かつ励起に係る段階が選択レベル、中間レベ
ルおよび電離レベルの3段階存在することから4波長3
段階励起方式と呼ばれる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところが、本発明者ら
による研究によれば、上述の4種のレーザ光を同時に発
振する原子法レーザウラン濃縮では、ウラン分離効率の
低下が避けられないことが分った。
による研究によれば、上述の4種のレーザ光を同時に発
振する原子法レーザウラン濃縮では、ウラン分離効率の
低下が避けられないことが分った。
【0016】すなわち、4波長3段階励起方式のよう
に、基底レベルと準安定レベルという2種以上のエネル
ギーレベルから同時に選択レベルという共通の中間的な
励起エネルギーレベルに励起した後電離する方式では、
図3に示すように、一方で基底レベルから選択レベルに
励起された最外殻電子11が、他方で準安定レベルから
選択レベルへ励起させるレーザ光にも晒され、また準安
定レベルから選択レベルに励起された最外殻電子12も
同様に基底レベルから選択レベルへ励起させるレーザ光
にも晒される。
に、基底レベルと準安定レベルという2種以上のエネル
ギーレベルから同時に選択レベルという共通の中間的な
励起エネルギーレベルに励起した後電離する方式では、
図3に示すように、一方で基底レベルから選択レベルに
励起された最外殻電子11が、他方で準安定レベルから
選択レベルへ励起させるレーザ光にも晒され、また準安
定レベルから選択レベルに励起された最外殻電子12も
同様に基底レベルから選択レベルへ励起させるレーザ光
にも晒される。
【0017】このため、2つのレーザ光の相互作用によ
り、基底レベルと準安定レベルからそれぞれ選択レベル
に遷移した最外殻電子が、互いに他の選択レベルより低
いエネルギーレベルへ(基底レベルから選択レベルに遷
移してきたものは準安定レベルへ、また準安定レベルか
ら選択レベルに遷移してきたものは基底レベルへ)遷移
してしまう。この現象を「コヒーレントトラッピング」
と呼ぶが、この結果、ウランの分離効率は、コヒーレン
トトラッピングがない場合の半分に落ち込んでしまう。
り、基底レベルと準安定レベルからそれぞれ選択レベル
に遷移した最外殻電子が、互いに他の選択レベルより低
いエネルギーレベルへ(基底レベルから選択レベルに遷
移してきたものは準安定レベルへ、また準安定レベルか
ら選択レベルに遷移してきたものは基底レベルへ)遷移
してしまう。この現象を「コヒーレントトラッピング」
と呼ぶが、この結果、ウランの分離効率は、コヒーレン
トトラッピングがない場合の半分に落ち込んでしまう。
【0018】また、吸収スペクトル線の周波数と励起レ
ーザ光の周波数を完全に一致させるのは、スペクトル線
が1本の場合でも極めて困難であるが、前述のU235 よ
うに吸収スペクトルがゼーマン分裂(スプリット)と拡
がりを起こす場合には、たとえ数100MHz幅のシン
グルモードあるいはそれぞれ数GHzのスペクトル幅を
もつマルチモードのレーザ光であっても、複数の吸収ス
ペクトル帯のすべてを励起レーザ光で網羅し、正確な共
鳴を達成するのはまったく不可能である。このため、特
にエネルギーレベルについて超微細構造を有するU235
をレーザ光で励起する場合には励起漏れによる励起効率
の低下が避けられなかった。
ーザ光の周波数を完全に一致させるのは、スペクトル線
が1本の場合でも極めて困難であるが、前述のU235 よ
うに吸収スペクトルがゼーマン分裂(スプリット)と拡
がりを起こす場合には、たとえ数100MHz幅のシン
グルモードあるいはそれぞれ数GHzのスペクトル幅を
もつマルチモードのレーザ光であっても、複数の吸収ス
ペクトル帯のすべてを励起レーザ光で網羅し、正確な共
鳴を達成するのはまったく不可能である。このため、特
にエネルギーレベルについて超微細構造を有するU235
をレーザ光で励起する場合には励起漏れによる励起効率
の低下が避けられなかった。
【0019】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので
あり、レーザ同位体分離をコヒーレントトラッピングと
励起漏れなしに行うことができるレーザ同位体分離方法
を提供することを目的とする。 〔発明の構成〕
あり、レーザ同位体分離をコヒーレントトラッピングと
励起漏れなしに行うことができるレーザ同位体分離方法
を提供することを目的とする。 〔発明の構成〕
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、基底準位および準安定準位の原子にそれぞ
れ対応する波長のレーザ光を照射して共通の励起準位ま
で遷移させた後この原子を電離させて同位体を分離する
レーザ同位体分離方法において、原子を基底準位から励
起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光と準安定準位
から励起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光とを時
間的にずらして照射し、かつこれら励起用パルスレーザ
光のうち少なくとも時間的に先行して照射される励起用
パルスレーザ光については基底準位または準安定準位の
共鳴周波数領域で最小の周波数から最大の周波数に亘っ
て周波数掃引を行うことを特徴とするレーザ同位体分離
方法を提供する。
するために、基底準位および準安定準位の原子にそれぞ
れ対応する波長のレーザ光を照射して共通の励起準位ま
で遷移させた後この原子を電離させて同位体を分離する
レーザ同位体分離方法において、原子を基底準位から励
起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光と準安定準位
から励起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光とを時
間的にずらして照射し、かつこれら励起用パルスレーザ
光のうち少なくとも時間的に先行して照射される励起用
パルスレーザ光については基底準位または準安定準位の
共鳴周波数領域で最小の周波数から最大の周波数に亘っ
て周波数掃引を行うことを特徴とするレーザ同位体分離
方法を提供する。
【0021】
【作用】本発明のレーザ同位体分離方法は、原子を基底
準位から励起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光と
準安定準位から励起準位に遷移させる励起用パルスレー
ザ光とを時間的にずらして照射するため、上記2つの励
起用パルスレーザ光を同時に照射した場合に両励起用パ
ルスレーザ光の相互作用によって生じるコヒーレントト
ラッピングを回避することができる。また、少なくとも
時間的に先行して照射される励起用パルスレーザ光につ
いては、基底準位または準安定準位と励起準位の間で断
熱的な逆転分布が生ずるようにすなわち(断熱反転条件
下で)、基底準位または準安定準位の共鳴周波数を挟ん
で周波数掃引(チャーピング(chir-ping))を行うた
め、励起漏れをなくすことができる。
準位から励起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光と
準安定準位から励起準位に遷移させる励起用パルスレー
ザ光とを時間的にずらして照射するため、上記2つの励
起用パルスレーザ光を同時に照射した場合に両励起用パ
ルスレーザ光の相互作用によって生じるコヒーレントト
ラッピングを回避することができる。また、少なくとも
時間的に先行して照射される励起用パルスレーザ光につ
いては、基底準位または準安定準位と励起準位の間で断
熱的な逆転分布が生ずるようにすなわち(断熱反転条件
下で)、基底準位または準安定準位の共鳴周波数を挟ん
で周波数掃引(チャーピング(chir-ping))を行うた
め、励起漏れをなくすことができる。
【0022】
【実施例】以下図1(A)〜(C)を参照して本発明の
実施例を説明する。
実施例を説明する。
【0023】本実施例に係るレーザ同位体分離方法にお
いては、前述の4波長3段階方式をとることとし、また
最外殻電子を基底レベルから選択レベルに励起する励起
用パルスレーザ光(以下「基底ー選択レベル励起レーザ
光」という。波長はλ1)と準安定レベルから選択レベ
ルに励起する励起用パルスレーザ光(以下「準安定ー選
択レベル励起レーザ光」という。波長はλM)のうち、
図1(A)に示すように、基底ー選択レベル励起レーザ
光20を、ごく短い時間Δtだけ準安定ー選択レベル励
起レーザ光21に先行して入射させる。なお、図1
(B)の波長λ2のレーザ光22と図1(C)の波長λ
3のレーザ光23は、それぞれ最外殻電子を選択レベル
から中間レベルへ、および中間レベルから電離レベルへ
励起するレーザ光(それぞれ「中間励起レーザ光」およ
び「電離レーザ光」と呼ぶ)で、準安定ー選択レベル励
起レーザ光21とほぼ同時に入射される。
いては、前述の4波長3段階方式をとることとし、また
最外殻電子を基底レベルから選択レベルに励起する励起
用パルスレーザ光(以下「基底ー選択レベル励起レーザ
光」という。波長はλ1)と準安定レベルから選択レベ
ルに励起する励起用パルスレーザ光(以下「準安定ー選
択レベル励起レーザ光」という。波長はλM)のうち、
図1(A)に示すように、基底ー選択レベル励起レーザ
光20を、ごく短い時間Δtだけ準安定ー選択レベル励
起レーザ光21に先行して入射させる。なお、図1
(B)の波長λ2のレーザ光22と図1(C)の波長λ
3のレーザ光23は、それぞれ最外殻電子を選択レベル
から中間レベルへ、および中間レベルから電離レベルへ
励起するレーザ光(それぞれ「中間励起レーザ光」およ
び「電離レーザ光」と呼ぶ)で、準安定ー選択レベル励
起レーザ光21とほぼ同時に入射される。
【0024】本実施例においては、先の図2で説明した
ような同位体分離装置で同位体分離されるガトリニウ
ム、ジルコニウム、ウラン、プルトニウム等の同位体の
蒸気に、まず波長λ1の基底ー選択レベル励起レーザ光
を入射し、基底レベルにある最外殻電子を適当なエネル
ギー準位の選択レベルに遷移させる。
ような同位体分離装置で同位体分離されるガトリニウ
ム、ジルコニウム、ウラン、プルトニウム等の同位体の
蒸気に、まず波長λ1の基底ー選択レベル励起レーザ光
を入射し、基底レベルにある最外殻電子を適当なエネル
ギー準位の選択レベルに遷移させる。
【0025】このとき、基底ー選択レベル励起レーザ光
20については、基底レベルが上述のようにゼーマン分
裂またはドップラ効果によって複数のあるいは幅のある
周波数領域を示しても、各レーザパルスにおいて、分裂
または拡がりを示す前の本来の共鳴周波数を中心とし
て、この複数のあるいは幅のある周波数領域を十分包含
する範囲、具体的には共鳴周波数±ラビ周波数(または
この数倍)の範囲で、かつ基底レベルと選択レベルの間
で最低1回はラビ振動が起きて最外殻電子の基底レベル
から選択レベルへの遷移が可能な十分ゆっくりとした時
間をかけて(すなわち断熱条件で)周波数掃引をする。
20については、基底レベルが上述のようにゼーマン分
裂またはドップラ効果によって複数のあるいは幅のある
周波数領域を示しても、各レーザパルスにおいて、分裂
または拡がりを示す前の本来の共鳴周波数を中心とし
て、この複数のあるいは幅のある周波数領域を十分包含
する範囲、具体的には共鳴周波数±ラビ周波数(または
この数倍)の範囲で、かつ基底レベルと選択レベルの間
で最低1回はラビ振動が起きて最外殻電子の基底レベル
から選択レベルへの遷移が可能な十分ゆっくりとした時
間をかけて(すなわち断熱条件で)周波数掃引をする。
【0026】ここでラビ周波数Ω(1/sec)は、Ω=μ
・E/(h/2π)(μは電気双極子モーメント(光共
鳴吸収断面積に関係する)、Eはレーザ光の電場強度、
hはプランク定数)で表され、遷移強度(遷移する最外
殻電子の数)を定める。したがって、共鳴周波数を中心
として±ラビ周波数(またはこの数倍)の範囲で周波数
掃引すれば、励起に与からない共鳴周波数領域はほとん
ど存在しなくなる。
・E/(h/2π)(μは電気双極子モーメント(光共
鳴吸収断面積に関係する)、Eはレーザ光の電場強度、
hはプランク定数)で表され、遷移強度(遷移する最外
殻電子の数)を定める。したがって、共鳴周波数を中心
として±ラビ周波数(またはこの数倍)の範囲で周波数
掃引すれば、励起に与からない共鳴周波数領域はほとん
ど存在しなくなる。
【0027】そして、最小の周波数から最大の周波数へ
の周波数掃引の時間は、上述のように十分ゆっくりと行
うため、いわゆる断熱反転条件が達成され、基底レベル
と選択レベルの間で断熱的な逆転分布が生ずる。すなわ
ち、エネルギー準位の高い選択レベルにある最外殻電子
数がエネルギー準位の低い基底レベルにある最外殻電子
数より多くなり、励起漏れがなくなる。
の周波数掃引の時間は、上述のように十分ゆっくりと行
うため、いわゆる断熱反転条件が達成され、基底レベル
と選択レベルの間で断熱的な逆転分布が生ずる。すなわ
ち、エネルギー準位の高い選択レベルにある最外殻電子
数がエネルギー準位の低い基底レベルにある最外殻電子
数より多くなり、励起漏れがなくなる。
【0028】さて、この後は反転分布達成によって最外
殻電子が選択レベルに滞留する短い時間(≧Δt)の間
に、波長λMの準安定ー選択レベル励起レーザ光21を
入射し、準安定レベルにある最外殻電子を選択レベルに
遷移させる。本実施例においては、基底ー選択レベル励
起レーザ光20と準安定ー選択レベル励起レーザ光21
の照射時間が重複しないため、両レーザ光の相互作用に
よるコヒーレントトラッピングは起こらず、せっかく選
択レベルに励起した最外殻電子が低いエネルギーレベル
に逆遷移することはない。
殻電子が選択レベルに滞留する短い時間(≧Δt)の間
に、波長λMの準安定ー選択レベル励起レーザ光21を
入射し、準安定レベルにある最外殻電子を選択レベルに
遷移させる。本実施例においては、基底ー選択レベル励
起レーザ光20と準安定ー選択レベル励起レーザ光21
の照射時間が重複しないため、両レーザ光の相互作用に
よるコヒーレントトラッピングは起こらず、せっかく選
択レベルに励起した最外殻電子が低いエネルギーレベル
に逆遷移することはない。
【0029】そして、本実施例においては、中間励起レ
ーザ光22と電離レーザ光23も、準安定ー選択レベル
励起レーザ光21とほぼ同時、また基底ー選択レベル励
起レーザ光20からはごく短い時間Δtの後に照射され
るため、基底レベルおよび準安定レベルから選択レベル
に励起されて反転分布を達成した最外殻電子は、自然放
出の間もなく確実に中間レベルおよび電離レベルに励起
され、この同位体については間違いなくイオン化が行わ
れる。
ーザ光22と電離レーザ光23も、準安定ー選択レベル
励起レーザ光21とほぼ同時、また基底ー選択レベル励
起レーザ光20からはごく短い時間Δtの後に照射され
るため、基底レベルおよび準安定レベルから選択レベル
に励起されて反転分布を達成した最外殻電子は、自然放
出の間もなく確実に中間レベルおよび電離レベルに励起
され、この同位体については間違いなくイオン化が行わ
れる。
【0030】本実施例によれば、このようなコヒーレン
トトラッピングと励起漏れを防いだイオン化が、レーザ
光の照射を受けた他の同位体についても同様に行われる
ため、同位体分離効率を格段に高めることができる。
トトラッピングと励起漏れを防いだイオン化が、レーザ
光の照射を受けた他の同位体についても同様に行われる
ため、同位体分離効率を格段に高めることができる。
【0031】なお、上述の周波数掃引は、時間的に遅れ
て入射する準安定ー選択レベル励起レーザ光21につい
ても行えば、励起効率をさらに向上させることができ
る。
て入射する準安定ー選択レベル励起レーザ光21につい
ても行えば、励起効率をさらに向上させることができ
る。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法にお
いては、特に基底レベルと準安定レベルから共通の励起
レベルを経て同位体を分離させるレーザ同位体分離方法
に量子力学的考察を加えて同位体分離効率が十分でない
ことを解明し、コヒーレントトラッピングと励起漏れを
回避したため、励起効率が高められ、レーザ同位体分離
に係るコストと時間を節約することができる。
いては、特に基底レベルと準安定レベルから共通の励起
レベルを経て同位体を分離させるレーザ同位体分離方法
に量子力学的考察を加えて同位体分離効率が十分でない
ことを解明し、コヒーレントトラッピングと励起漏れを
回避したため、励起効率が高められ、レーザ同位体分離
に係るコストと時間を節約することができる。
【図1】(A),(B),(C)はそれぞれ本発明の一
実施例においてパルス発振される基底ー選択レベル励起
レーザ光と準安定ー選択レベル励起レーザ光、中間励起
レーザ光、および電離レーザ光の出力パルス図。
実施例においてパルス発振される基底ー選択レベル励起
レーザ光と準安定ー選択レベル励起レーザ光、中間励起
レーザ光、および電離レーザ光の出力パルス図。
【図2】原子法レーザウラン分離装置の断面図。
【図3】U235 最外殻電子の励起に係るエネルギー準位
図。
図。
20 基底ー選択レベル励起レーザ光 21 準安定ー選択レベル励起レーザ光 22 中間励起レーザ光 23 電離レーザ光
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 59/34
Claims (1)
- 【請求項1】 基底準位および準安定準位の原子にそれ
ぞれ対応する波長のレーザ光を照射して共通の励起準位
まで遷移させた後この原子を電離させて同位体を分離す
るレーザ同位体分離方法において、原子を基底準位から
励起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光と準安定準
位から励起準位に遷移させる励起用パルスレーザ光とを
時間的にずらして照射し、かつこれら励起用パルスレー
ザ光のうち少なくとも時間的に先行して照射される励起
用パルスレーザ光については基底準位または準安定準位
の共鳴周波数領域で最小の周波数から最大の周波数に亘
って周波数掃引を行うことを特徴とするレーザ同位体分
離方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03008532A JP3085716B2 (ja) | 1991-01-28 | 1991-01-28 | レーザ同位体分離方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03008532A JP3085716B2 (ja) | 1991-01-28 | 1991-01-28 | レーザ同位体分離方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04244219A JPH04244219A (ja) | 1992-09-01 |
JP3085716B2 true JP3085716B2 (ja) | 2000-09-11 |
Family
ID=11695761
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP03008532A Expired - Fee Related JP3085716B2 (ja) | 1991-01-28 | 1991-01-28 | レーザ同位体分離方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3085716B2 (ja) |
-
1991
- 1991-01-28 JP JP03008532A patent/JP3085716B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH04244219A (ja) | 1992-09-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Fedoseyev et al. | The ISOLDE laser ion source for exotic nuclei | |
CA1061476A (en) | Selective excitation of atoms or molecules to high-lying states | |
US4038549A (en) | Isotopically selective excitation from plural excited states | |
Babichev et al. | Development of the laser isotope separation method (AVLIS) for obtaining weight amounts of highly enriched 150Nd isotope | |
US3959649A (en) | Collection of ions in a plasma by magnetic field acceleration with selective polarization | |
US4023038A (en) | Increased ionization rate in laser enrichment | |
US5110562A (en) | Laser isotope separation apparatus | |
JP3085716B2 (ja) | レーザ同位体分離方法 | |
US4584072A (en) | Process for separating an isotope from a mixture of different isotopes by using a single laser beam | |
Luther-Davies et al. | Interaction of ultra-short powerful laser pulses with matter | |
Haynam et al. | Gadolinium enrichment technology at lawrence livermore national laboratory | |
RU2390375C2 (ru) | Способ выделения изотопа иттербия | |
US4217494A (en) | Isotope separation with improved selective ionization | |
RU2292940C2 (ru) | Метод изотопного разделения таллия | |
EP0444336B1 (en) | Laserisotope separation apparatus | |
JP3376050B2 (ja) | レーザ同位体分離におけるレーザ光の周波数変調方法 | |
JP3264568B2 (ja) | ガドリニウム同位体分離方法およびその装置 | |
JPH08323153A (ja) | ガドリニウムまたはジルコニウム同位体の分離方法とその装置 | |
JPS62125829A (ja) | レ−ザ同位体分離方法 | |
Arisawa et al. | The influence of the laser linewidth on the selectivity in laser isotope separation | |
JPH04239785A (ja) | 金属原子の多段階励起方法 | |
JP3340211B2 (ja) | 同位体分離方法およびその装置 | |
Rivlin | Gamma-ray laser operating with the assistance of the recoil of free nuclei | |
Klinkmüller | On doubly excited states in negative ions | |
Richardson | Two photon and two colour ionization of atoms in intense extreme-UV and optical laser fields |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |