JP3066554B2 - 低エネルギ−イオンビ−ム発生装置 - Google Patents
低エネルギ−イオンビ−ム発生装置Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、低エネルギ−イオン
ビ−ム発生装置に関する。イオンビ−ムは様々な用途に
用いられる。用途によりイオンの種類、イオンのエネル
ギ−、イオンビ−ムの密度等が異なる。半導体、誘電体
の内部にまでイオンを打ち込む場合は、数十keVのエ
ネルギ−のイオンが必要である。軽い原子のイオン(例
えば水素、ヘリウム)のイオンを物性の測定に用いる場
合は、数百keVに加速する場合もある。
ビ−ム発生装置に関する。イオンビ−ムは様々な用途に
用いられる。用途によりイオンの種類、イオンのエネル
ギ−、イオンビ−ムの密度等が異なる。半導体、誘電体
の内部にまでイオンを打ち込む場合は、数十keVのエ
ネルギ−のイオンが必要である。軽い原子のイオン(例
えば水素、ヘリウム)のイオンを物性の測定に用いる場
合は、数百keVに加速する場合もある。
【0002】一方、低エネルギ−イオンビ−ムに対する
需要もある。ここで低エネルギ−というのは数eV〜数
百eVのエネルギ−のことである。そして本発明はエネ
ルギ−ばらつきΔEの小さい、低エネルギ−のイオンビ
−ムを発生させる装置を与える。
需要もある。ここで低エネルギ−というのは数eV〜数
百eVのエネルギ−のことである。そして本発明はエネ
ルギ−ばらつきΔEの小さい、低エネルギ−のイオンビ
−ムを発生させる装置を与える。
【0003】
【従来の技術】イオン源は、蒸気または気体の状態の原
料を放電によりプラズマとし、これをビ−ムとして引き
出すものである。真空に引くことのできるチャンバと、
チャンバの前に設けられる電極系と、電極に電圧を印加
する電源等を含む。原料の気体を放電によって励起する
のであるが、これは直流ア−ク放電、高周波(rf)放
電、マイクロ波放電など多様な放電の形式がある。これ
に応じてチャンバ内の系電極は変わってくる。プラズマ
をチャンバ内に閉じ込めるためにチャンバの内部にミラ
−磁場を発生させたり、永久磁石を磁極が反対方向を向
くように多数並べカスプ磁場を発生させることもある。
料を放電によりプラズマとし、これをビ−ムとして引き
出すものである。真空に引くことのできるチャンバと、
チャンバの前に設けられる電極系と、電極に電圧を印加
する電源等を含む。原料の気体を放電によって励起する
のであるが、これは直流ア−ク放電、高周波(rf)放
電、マイクロ波放電など多様な放電の形式がある。これ
に応じてチャンバ内の系電極は変わってくる。プラズマ
をチャンバ内に閉じ込めるためにチャンバの内部にミラ
−磁場を発生させたり、永久磁石を磁極が反対方向を向
くように多数並べカスプ磁場を発生させることもある。
【0004】これをイオンとして引き出すための電極
は、2枚電極、3枚電極及びそれ以上の場合がある。い
ずれもイオンを通すための穴を一個あるいは複数個穿孔
してある。これらの穴は軸線方向にはほぼ合致するよう
になっている。3枚電極の場合は、正電極(又はプラズ
マ電極)、負電極、接地電極等と呼ばれる3枚の電極が
順に並んでいる。正電極はイオン源チャンバと同一の高
い正電圧が印加される。
は、2枚電極、3枚電極及びそれ以上の場合がある。い
ずれもイオンを通すための穴を一個あるいは複数個穿孔
してある。これらの穴は軸線方向にはほぼ合致するよう
になっている。3枚電極の場合は、正電極(又はプラズ
マ電極)、負電極、接地電極等と呼ばれる3枚の電極が
順に並んでいる。正電極はイオン源チャンバと同一の高
い正電圧が印加される。
【0005】負電極は絶対値の小さい負電圧が印加され
る。正電極と負電極の間で正イオンビ−ムが加速され
る。これは、正イオンビ−ムが対象物や輸送部構成物さ
らに残留ガスなどに衝突した時に二次電子が発生する
が、二次電子がイオン源の方に入ってこないように途中
で斥力を与えるものである。接地電極は大地電位であ
り、ここを通過したイオンビ−ムは一定速度で走行し、
対象物に衝突するのである。衝突の際の運動エネルギ−
は、当然イオン源チャンバの電位にほぼ均しい。
る。正電極と負電極の間で正イオンビ−ムが加速され
る。これは、正イオンビ−ムが対象物や輸送部構成物さ
らに残留ガスなどに衝突した時に二次電子が発生する
が、二次電子がイオン源の方に入ってこないように途中
で斥力を与えるものである。接地電極は大地電位であ
り、ここを通過したイオンビ−ムは一定速度で走行し、
対象物に衝突するのである。衝突の際の運動エネルギ−
は、当然イオン源チャンバの電位にほぼ均しい。
【0006】高エネルギ−イオンビ−ムの場合は、強く
加速するので、イオンビ−ムのエネルギ−の広がり幅Δ
Eは、エネルギ−Eそのものに対して小さい。ΔE/E
が小さいので幅ΔEの大きさはあまり問題にならないこ
ともある。
加速するので、イオンビ−ムのエネルギ−の広がり幅Δ
Eは、エネルギ−Eそのものに対して小さい。ΔE/E
が小さいので幅ΔEの大きさはあまり問題にならないこ
ともある。
【0007】チャンバ中には空間的時間的に変化する電
場や磁場が存在し、これらは空間的時間的に異なる作用
をプラズマに及ぼす。電界変動のためにプラズマの電位
は時間的空間的に大きく揺らいでいる。プラズマ中で正
イオンは熱運動し、中性原子、分子、正イオンや電子と
衝突を繰り返している。プラズマの電位が時間的空間的
に変動し、プラズマ中でもイオン個々のエネルギ−は電
子との相互作用のためにばらついており、引き出された
ビ−ムを構成するイオンの運動エネルギ−分散が大き
い。従来引き出されたイオンビ−ムのエネルギ−分散を
小さくするような改良はなされていなかった。
場や磁場が存在し、これらは空間的時間的に異なる作用
をプラズマに及ぼす。電界変動のためにプラズマの電位
は時間的空間的に大きく揺らいでいる。プラズマ中で正
イオンは熱運動し、中性原子、分子、正イオンや電子と
衝突を繰り返している。プラズマの電位が時間的空間的
に変動し、プラズマ中でもイオン個々のエネルギ−は電
子との相互作用のためにばらついており、引き出された
ビ−ムを構成するイオンの運動エネルギ−分散が大き
い。従来引き出されたイオンビ−ムのエネルギ−分散を
小さくするような改良はなされていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】低エネルギ−のイオン
ビ−ムの場合は、このような引き出されたイオンのエネ
ルギ−のばらつきが重大な問題となる。イオンエネルギ
−をE、エネルギ−ばらつきをΔEとする。低エネルギ
−の場合、これらの比ΔE/Eが大きくなる。例えばエ
ネルギ−幅ΔEが100eVとして、E=100keV
の高いエネルギ−の場合、相対比ΔE/Eは、10-3で
ある。しかし、E=100eVの低エネルギ−の場合相
対比は1になってしまう。
ビ−ムの場合は、このような引き出されたイオンのエネ
ルギ−のばらつきが重大な問題となる。イオンエネルギ
−をE、エネルギ−ばらつきをΔEとする。低エネルギ
−の場合、これらの比ΔE/Eが大きくなる。例えばエ
ネルギ−幅ΔEが100eVとして、E=100keV
の高いエネルギ−の場合、相対比ΔE/Eは、10-3で
ある。しかし、E=100eVの低エネルギ−の場合相
対比は1になってしまう。
【0009】従来のイオン源では、チャンバ内の電場、
磁場のゆらぎがあるので、引き出されたイオンにはかな
りのエネルギ−ばらつきがある。イオンのエネルギ−の
分散の原因はなお明確でないが、次のようなものが考え
られる。まず第一にプラズマ電位φs が電界の作用で時
間的空間的に変動しているということである。イオン源
チャンバでは、カソード電位、アノ−ド電位、プラズマ
電位など異なるレベルの電位が存在する。一番高いのが
プラズマ電位であるが、これはアノ−ド電位に、電界を
積分した値を加えた値であるから電界変動により変化す
る。また磁場が時間的に変化するとこれが変動する。プ
ラズマ電位が変動するとこれから引き出されたイオンの
エネルギ−がゆらぐ。
磁場のゆらぎがあるので、引き出されたイオンにはかな
りのエネルギ−ばらつきがある。イオンのエネルギ−の
分散の原因はなお明確でないが、次のようなものが考え
られる。まず第一にプラズマ電位φs が電界の作用で時
間的空間的に変動しているということである。イオン源
チャンバでは、カソード電位、アノ−ド電位、プラズマ
電位など異なるレベルの電位が存在する。一番高いのが
プラズマ電位であるが、これはアノ−ド電位に、電界を
積分した値を加えた値であるから電界変動により変化す
る。また磁場が時間的に変化するとこれが変動する。プ
ラズマ電位が変動するとこれから引き出されたイオンの
エネルギ−がゆらぐ。
【0010】次にシ−ス部での問題である。イオン源チ
ャンバの内部で引出し電極2に極近い部分をシ−ス部と
いうのであるが、シ−ス端部でのイオンの平均エネルギ
−はTe (電子温度、eV単位)>>Ti (イオン温
度、eV単位)の場合、ボ−ムの条件によりTe /2程
度となる。さらにシ−ス部での電圧降下が揺らぐという
問題がある。これは引出し電極2がフロ−テイング電位
の場合に起こる。引出し電極2がフロ−テイング電位で
あると、プラズマ電極での電圧をφf として、プラズマ
電位φs との差がイオン種により異なるがTe の約数倍
という関係がある。これが成り立つので、電子温度Te
が変動すると、シ−ス部でのイオンの得るエネルギ−は
変動してしまう。
ャンバの内部で引出し電極2に極近い部分をシ−ス部と
いうのであるが、シ−ス端部でのイオンの平均エネルギ
−はTe (電子温度、eV単位)>>Ti (イオン温
度、eV単位)の場合、ボ−ムの条件によりTe /2程
度となる。さらにシ−ス部での電圧降下が揺らぐという
問題がある。これは引出し電極2がフロ−テイング電位
の場合に起こる。引出し電極2がフロ−テイング電位で
あると、プラズマ電極での電圧をφf として、プラズマ
電位φs との差がイオン種により異なるがTe の約数倍
という関係がある。これが成り立つので、電子温度Te
が変動すると、シ−ス部でのイオンの得るエネルギ−は
変動してしまう。
【0011】次に局所的な問題である。中性原子が励起
されてイオンになるが、電位分布があるからイオンにな
った地点の電位の相違によりエネルギ−が原初的に異な
る。最後にイオンエネルギ−のばらつきである。イオン
のエネルギ−はイオン温度Ti によって表現することが
できるが、例えばマックスウエル分布をしている場合
は、エネルギ−分散は温度に比例する。温度が高ければ
分散も大きいがイオン温度は数eV以下の程度で一般に
は小さい。
されてイオンになるが、電位分布があるからイオンにな
った地点の電位の相違によりエネルギ−が原初的に異な
る。最後にイオンエネルギ−のばらつきである。イオン
のエネルギ−はイオン温度Ti によって表現することが
できるが、例えばマックスウエル分布をしている場合
は、エネルギ−分散は温度に比例する。温度が高ければ
分散も大きいがイオン温度は数eV以下の程度で一般に
は小さい。
【0012】ここに5つのイオンエネルギ−の揺らぐ原
因を上げたが、この内もっとも大きいのは電界変動(プ
ラズマ中の不安定波動も含む)によるプラズマ電位やイ
オンの加速エネルギ−の変化である。本発明は、低エネ
ルギ−であってしかもエネルギ−分散ΔEの小さいビ−
ムを発生する装置を提供する事を目的とする。
因を上げたが、この内もっとも大きいのは電界変動(プ
ラズマ中の不安定波動も含む)によるプラズマ電位やイ
オンの加速エネルギ−の変化である。本発明は、低エネ
ルギ−であってしかもエネルギ−分散ΔEの小さいビ−
ムを発生する装置を提供する事を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明では、イオン源チ
ャンバ内における放電を間欠的に行い、放電をしていな
い一定期間にのみビ−ムを外部に取り出すこととし、イ
オン源内プラズマ中の電界や磁界の揺らぎに因る対象物
に照射されるイオンのエネルギ−の揺らぎを抑制する。
ビ−ムを一定期間だけ外部に取り出すための機構として
は、引出電極に印加する電圧を操作するか、イオンビ−
ム経路中にシャッタを設けるか、あるいはリタ−デイン
グ電極を設けることによってなされる。
ャンバ内における放電を間欠的に行い、放電をしていな
い一定期間にのみビ−ムを外部に取り出すこととし、イ
オン源内プラズマ中の電界や磁界の揺らぎに因る対象物
に照射されるイオンのエネルギ−の揺らぎを抑制する。
ビ−ムを一定期間だけ外部に取り出すための機構として
は、引出電極に印加する電圧を操作するか、イオンビ−
ム経路中にシャッタを設けるか、あるいはリタ−デイン
グ電極を設けることによってなされる。
【0014】
【作用】図1は本発明の作用を説明するための時系列図
である。上の図はア−ク電圧である。下の図は、同じ時
間の経過に対応するプラズマイオン密度ni とプラズマ
電子温度Te の変化を示す時系列図である。これはア−
ク放電で原料ガスを励起する場合である。ア−ク電圧を
間欠的に印加する。ア−ク電圧が印加される場合のみ原
料ガスが励起される。これを励起期間t1 と呼ぶ。
である。上の図はア−ク電圧である。下の図は、同じ時
間の経過に対応するプラズマイオン密度ni とプラズマ
電子温度Te の変化を示す時系列図である。これはア−
ク放電で原料ガスを励起する場合である。ア−ク電圧を
間欠的に印加する。ア−ク電圧が印加される場合のみ原
料ガスが励起される。これを励起期間t1 と呼ぶ。
【0015】ア−ク電圧が印加されない時は、原料ガス
が新たに励起されない。ためにチャンバ内の電子温度T
e が低下してゆく。また正イオン密度も低下して行く。
放電の起こらない時間を休止期間t2 と呼ぶ。
が新たに励起されない。ためにチャンバ内の電子温度T
e が低下してゆく。また正イオン密度も低下して行く。
放電の起こらない時間を休止期間t2 と呼ぶ。
【0016】これはア−ク放電による励起を例にしてい
るが、他の励起手段を用いる場合も同様である。RF放
電でも、マイクロ波放電でも同様に放電を断続すること
ができる。目的や対象物にもよるが、励起期間t1 はμ
sec 〜sec である。休止期間t2 はμsec 〜数sec であ
る。また繰り返しパルスとは限らず、一つのパルスで十
分なこともある。
るが、他の励起手段を用いる場合も同様である。RF放
電でも、マイクロ波放電でも同様に放電を断続すること
ができる。目的や対象物にもよるが、励起期間t1 はμ
sec 〜sec である。休止期間t2 はμsec 〜数sec であ
る。また繰り返しパルスとは限らず、一つのパルスで十
分なこともある。
【0017】励起期間t1 ではイオンビ−ムを外部に取
り出さない。また休止期間t2 においても全期間に渡っ
てビ−ムを取り出すのではなく、休止期間t2 が始まっ
てから待機時間t3 を経てからビ−ムを取り出す。これ
も短い時間t4 の間だけである。図1では引出し時間と
書いている。この時のみビ−ムを外部に引き出して有効
に利用する。さらにこの後休息時間t5 の後再び励起期
間t1 になる。このように、励起期間t1 と休止期間t
2 が交替するようになっている。これはア−ク放電の存
在非存在による期間の区別である。
り出さない。また休止期間t2 においても全期間に渡っ
てビ−ムを取り出すのではなく、休止期間t2 が始まっ
てから待機時間t3 を経てからビ−ムを取り出す。これ
も短い時間t4 の間だけである。図1では引出し時間と
書いている。この時のみビ−ムを外部に引き出して有効
に利用する。さらにこの後休息時間t5 の後再び励起期
間t1 になる。このように、励起期間t1 と休止期間t
2 が交替するようになっている。これはア−ク放電の存
在非存在による期間の区別である。
【0018】休止期間t2 の中においても、待機時間t
3 、引出し時間t4 、休息時間t5の区別がある。引出
し時間t4 のみにおいてイオンビ−ムを引き出す。どう
して間欠的にア−ク放電を行い、間欠的にイオンビ−ム
を引き出すかというと、つぎのような理由による。
3 、引出し時間t4 、休息時間t5の区別がある。引出
し時間t4 のみにおいてイオンビ−ムを引き出す。どう
して間欠的にア−ク放電を行い、間欠的にイオンビ−ム
を引き出すかというと、つぎのような理由による。
【0019】ア−ク放電を行うと、放電によって中性の
分子が励起されるので、プラズマイオン密度ni が増加
し、電子温度Te も上昇する。しかしこの時は内部の電
極間に強い電界が発生している。電界の不均一が大きい
ので、この時にイオンビ−ムを引き出すとエネルギ−分
散ΔEが大きくなる。低エネルギ−の場合はエネルギ−
分散ΔEを小さくする必要性が高い。そこで電界の揺ら
ぎの大きい励起期間t1 にはビ−ムを引き出さず、プラ
ズマ密度を高めイオン源チャンバ内にプラズマを閉じ込
めるだけにする。
分子が励起されるので、プラズマイオン密度ni が増加
し、電子温度Te も上昇する。しかしこの時は内部の電
極間に強い電界が発生している。電界の不均一が大きい
ので、この時にイオンビ−ムを引き出すとエネルギ−分
散ΔEが大きくなる。低エネルギ−の場合はエネルギ−
分散ΔEを小さくする必要性が高い。そこで電界の揺ら
ぎの大きい励起期間t1 にはビ−ムを引き出さず、プラ
ズマ密度を高めイオン源チャンバ内にプラズマを閉じ込
めるだけにする。
【0020】ア−ク放電を停止し、休止期間t2 に入る
と、電極電圧による電界が全くなくなる。この時チャン
バ内に存在するプラズマを再結合過程プラズマという。
プラズマ密度の揺らぎや電子のマックスウエル分布から
のずれによる内部電界は存在するがこれは小さいしプラ
ズマの衝突過程により急速にエネルギ−の緩和が生じ内
部電界の消滅が起こる。つまり休止期間t2 に電界は殆
ど存在しない。休止期間t2 にビ−ムを引き出す利点の
一つはここにある。本発明は電界のほとんど存在しない
期間にビ−ムを外部に取り出しているので、イオンのエ
ネルギ−の分散が極めて小さくなる。であるから休止期
間に入った瞬間にビ−ムを外部に引き出すようにしても
良い。
と、電極電圧による電界が全くなくなる。この時チャン
バ内に存在するプラズマを再結合過程プラズマという。
プラズマ密度の揺らぎや電子のマックスウエル分布から
のずれによる内部電界は存在するがこれは小さいしプラ
ズマの衝突過程により急速にエネルギ−の緩和が生じ内
部電界の消滅が起こる。つまり休止期間t2 に電界は殆
ど存在しない。休止期間t2 にビ−ムを引き出す利点の
一つはここにある。本発明は電界のほとんど存在しない
期間にビ−ムを外部に取り出しているので、イオンのエ
ネルギ−の分散が極めて小さくなる。であるから休止期
間に入った瞬間にビ−ムを外部に引き出すようにしても
良い。
【0021】また電子温度Te も急速に低下する。電子
は速度がイオンに比べて大きいので熱運動による速度が
大きく、中性原子や正イオンに高頻度で衝突し熱緩和し
てしまう。ために温度の降下が速いのである。電子温度
Te の他にイオン温度も勿論定義できる。正イオンは電
子に比較して停止しているのと同様であるから、イオン
温度の低下上昇は遅いし、また電子温度Te に比べても
ともと低いのであまり問題にならない。電子温度Te が
低くなると、イオン温度も低くなる。しかし特に重要な
のは、電子温度Te の低下である。
は速度がイオンに比べて大きいので熱運動による速度が
大きく、中性原子や正イオンに高頻度で衝突し熱緩和し
てしまう。ために温度の降下が速いのである。電子温度
Te の他にイオン温度も勿論定義できる。正イオンは電
子に比較して停止しているのと同様であるから、イオン
温度の低下上昇は遅いし、また電子温度Te に比べても
ともと低いのであまり問題にならない。電子温度Te が
低くなると、イオン温度も低くなる。しかし特に重要な
のは、電子温度Te の低下である。
【0022】イオンビ−ムとして引き出した正イオンの
エネルギ−の分散が問題なのであるから、プラズマ中の
イオン温度が重要なパラメ−タのように思えるがそうで
はない。イオンエネルギ−の分散はどうしてできるかと
いうと、イオン引き出し部でのプラズマシ−ス端部での
イオンの加速エネルギ−のばらつきである。シ−ス部に
至るまでの加速エネルギ−はTe /2である。シ−ス部
を通過するときにTeの数倍のエネルギ−を得る。この
ために電子温度Te が時間的、空間的にゆらいでいる
と、引き出されたイオンのエネルギ−が分散を持つこと
になる。ためにイオンエネルギ−の分散は、電子温度T
e に依存する。
エネルギ−の分散が問題なのであるから、プラズマ中の
イオン温度が重要なパラメ−タのように思えるがそうで
はない。イオンエネルギ−の分散はどうしてできるかと
いうと、イオン引き出し部でのプラズマシ−ス端部での
イオンの加速エネルギ−のばらつきである。シ−ス部に
至るまでの加速エネルギ−はTe /2である。シ−ス部
を通過するときにTeの数倍のエネルギ−を得る。この
ために電子温度Te が時間的、空間的にゆらいでいる
と、引き出されたイオンのエネルギ−が分散を持つこと
になる。ためにイオンエネルギ−の分散は、電子温度T
e に依存する。
【0023】電子がイオンとともに外部に引き出される
のではないにも拘らず、引き出された正イオンのエネル
ギ−の分散はチャンバ内に存在した電子の温度に依存す
る。引き出されたイオンのエネルギ−の揺らぎを支配す
るのはイオンそのものではなく電子のエネルギ−である
ことに由来する。このような理由で電子温度Te が低い
と、正イオンのエネルギ−分散ΔEが小さくなる。
のではないにも拘らず、引き出された正イオンのエネル
ギ−の分散はチャンバ内に存在した電子の温度に依存す
る。引き出されたイオンのエネルギ−の揺らぎを支配す
るのはイオンそのものではなく電子のエネルギ−である
ことに由来する。このような理由で電子温度Te が低い
と、正イオンのエネルギ−分散ΔEが小さくなる。
【0024】休止期間t2 に入って直ぐにイオンビ−ム
を引きだしても良い。電界非存在によるエネルギ−の均
一性が高いからである。しかし休止期間に入ってからし
ばらく経ってからのほうがなお良い。休止期間t2 に入
って内部電界が消滅してもなお電子温度Te が高い。適
当な待機時間t3 を経た後であれば、電子温度Te が十
分に低下しているので、この時に正イオンを引き出しビ
−ムとする。こうするとなお一層エネルギ−の均一性が
高揚する。
を引きだしても良い。電界非存在によるエネルギ−の均
一性が高いからである。しかし休止期間に入ってからし
ばらく経ってからのほうがなお良い。休止期間t2 に入
って内部電界が消滅してもなお電子温度Te が高い。適
当な待機時間t3 を経た後であれば、電子温度Te が十
分に低下しているので、この時に正イオンを引き出しビ
−ムとする。こうするとなお一層エネルギ−の均一性が
高揚する。
【0025】単にエネルギ−分散ΔEを小さくすれば良
いのであれば、待機時間t3 を長くすれば良い筈であ
る。しかしその反面、休止期間が長いと、プラズマイオ
ン密度ni も低下する。これが低いと引き出せるイオン
の量が少ないので、イオンビ−ムが弱く、使いものにな
らない。それで適当な待機時間t3 でビ−ムを引き出す
ことにする。最後の休息時間t5 は0であっても良い。
この例では、プラズマイオン密度ni の変化があまり大
きくないようにしたいので引出し時間t4 が短くなって
いる。プラズマイオン密度ni が変化しても構わなけれ
ば、休息時間を0として、比較的長い時間ビ−ムを引き
出すようにしても良い。
いのであれば、待機時間t3 を長くすれば良い筈であ
る。しかしその反面、休止期間が長いと、プラズマイオ
ン密度ni も低下する。これが低いと引き出せるイオン
の量が少ないので、イオンビ−ムが弱く、使いものにな
らない。それで適当な待機時間t3 でビ−ムを引き出す
ことにする。最後の休息時間t5 は0であっても良い。
この例では、プラズマイオン密度ni の変化があまり大
きくないようにしたいので引出し時間t4 が短くなって
いる。プラズマイオン密度ni が変化しても構わなけれ
ば、休息時間を0として、比較的長い時間ビ−ムを引き
出すようにしても良い。
【0026】
【実施例】図2に本発明のイオンビ−ム発生装置の概略
を示す。イオン源1は真空に引くことができ原料ガスを
導入しこれを放電によりプラズマにする容器である。内
部には電極や、ヒ−タ、輻射シ−ルドなどを設けること
がある。放電は、直流ア−ク放電、高周波(RF)放
電、マイクロ波放電など任意である。ア−ク放電の場合
はイオン源チャンバの内部にカソ−ドフィラメントがあ
り、これを陰極とし、チャンバを陽極として放電が行わ
れる。電圧は数十ボルトである。
を示す。イオン源1は真空に引くことができ原料ガスを
導入しこれを放電によりプラズマにする容器である。内
部には電極や、ヒ−タ、輻射シ−ルドなどを設けること
がある。放電は、直流ア−ク放電、高周波(RF)放
電、マイクロ波放電など任意である。ア−ク放電の場合
はイオン源チャンバの内部にカソ−ドフィラメントがあ
り、これを陰極とし、チャンバを陽極として放電が行わ
れる。電圧は数十ボルトである。
【0027】高周波(rf)放電の場合は、対向電極を
設けてこの間に高周波電圧を印加する。また内部電極と
チャンバ間に電圧を印加することもある。マイクロ波放
電の場合は外部のマイクロ波発振器から導波管を通じて
マイクロ波を導入する。この場合は電子サイクロトロン
共鳴させるために外部にコイルを設けて縦磁場を発生さ
せることがある。またチャンバの外部壁面には永久磁石
を多数設けてカスプ磁場を作りプラズマを閉じ込める場
合もある。これらのイオン源の構造は公知であるから図
示を略した。
設けてこの間に高周波電圧を印加する。また内部電極と
チャンバ間に電圧を印加することもある。マイクロ波放
電の場合は外部のマイクロ波発振器から導波管を通じて
マイクロ波を導入する。この場合は電子サイクロトロン
共鳴させるために外部にコイルを設けて縦磁場を発生さ
せることがある。またチャンバの外部壁面には永久磁石
を多数設けてカスプ磁場を作りプラズマを閉じ込める場
合もある。これらのイオン源の構造は公知であるから図
示を略した。
【0028】引出し電極2は一つまたは複数のイオンビ
−ムを通すための穴を有する電極板の集合である。これ
は2枚、3枚及びそれ以上のものがある。3枚のもの
は、正電極(又はプラズマ電極)、負電極、接地電極の
3枚からなる。ここでは3枚の引出し電極2を示す。正
電極にはイオン源1のチャンバとほぼ同一の高い正電圧
が印加される。負電極は対象物にイオンが当たり二次電
子が発生するのでこれがイオン源に入らないように追い
返すためのもので、低い正電圧を加えている。接地電極
はもちろん接地電位であるべきであるが、ここでは、一
旦加速して次に減速するようにしているから、引出し電
極2全体の電位が負電圧側にシフトしている。
−ムを通すための穴を有する電極板の集合である。これ
は2枚、3枚及びそれ以上のものがある。3枚のもの
は、正電極(又はプラズマ電極)、負電極、接地電極の
3枚からなる。ここでは3枚の引出し電極2を示す。正
電極にはイオン源1のチャンバとほぼ同一の高い正電圧
が印加される。負電極は対象物にイオンが当たり二次電
子が発生するのでこれがイオン源に入らないように追い
返すためのもので、低い正電圧を加えている。接地電極
はもちろん接地電位であるべきであるが、ここでは、一
旦加速して次に減速するようにしているから、引出し電
極2全体の電位が負電圧側にシフトしている。
【0029】イオンビ−ムは、引出し電極2によって加
速されて、高速のイオンビ−ムとなる。イオンビ−ムの
経路には、シャッタ−3、リタ−デイング電極4、タ−
ゲット5等が設けられる。イオンビ−ムは図中左から右
へ走行する。タ−ゲット5はイオンを当てて何らかの処
理を行う対象物である。これら全ては真空中にあるが、
これらを囲む真空容器の図示を略している。
速されて、高速のイオンビ−ムとなる。イオンビ−ムの
経路には、シャッタ−3、リタ−デイング電極4、タ−
ゲット5等が設けられる。イオンビ−ムは図中左から右
へ走行する。タ−ゲット5はイオンを当てて何らかの処
理を行う対象物である。これら全ては真空中にあるが、
これらを囲む真空容器の図示を略している。
【0030】シャッタ−3とリタ−デイング電極4はイ
オンビ−ムを開閉するための装置であり、いずれか一方
が在れば良いのである。またこれらがなくても良い。こ
れについては後に説明する。
オンビ−ムを開閉するための装置であり、いずれか一方
が在れば良いのである。またこれらがなくても良い。こ
れについては後に説明する。
【0031】シャッタ−3は、平板がビ−ム経路で上下
運動しビ−ム経路を開閉する。リタ−デイング電極4は
電圧を印加することによりポテンシャルの山を作りイオ
ンビ−ムを止める。つまり、機械的あるいは電気的にビ
−ムの経路を開閉し、図1における引出し時間t4 のみ
イオンビ−ムを通すようにする。引出し時間t4 の間イ
オンビ−ムがタ−ゲット5に照射される。これ以外の時
間はシャッタ−3またはリタ−デイング電極4の作用で
イオンビ−ムが遮断される。タ−ゲット5に至らない。
運動しビ−ム経路を開閉する。リタ−デイング電極4は
電圧を印加することによりポテンシャルの山を作りイオ
ンビ−ムを止める。つまり、機械的あるいは電気的にビ
−ムの経路を開閉し、図1における引出し時間t4 のみ
イオンビ−ムを通すようにする。引出し時間t4 の間イ
オンビ−ムがタ−ゲット5に照射される。これ以外の時
間はシャッタ−3またはリタ−デイング電極4の作用で
イオンビ−ムが遮断される。タ−ゲット5に至らない。
【0032】図2の下方に電位分布を示す。これは一旦
加速してそれから減速し低エネルギ−イオンビ−ムを得
るような電位分布になっている。高い正電圧であるイロ
はイオン源チャンバ1の内部と、引出し電極2の正電極
までの間にだいたい対応している。ロから電圧が急に下
降し大地電位ハを経て負の最大電圧ニ変化する。これは
負電極の位置になる。ロニ間でイオンビ−ムが加速され
る。引出し電極2の接地電極はホの電位に対応してい
る。ニホ間でイオンが少し減速される。
加速してそれから減速し低エネルギ−イオンビ−ムを得
るような電位分布になっている。高い正電圧であるイロ
はイオン源チャンバ1の内部と、引出し電極2の正電極
までの間にだいたい対応している。ロから電圧が急に下
降し大地電位ハを経て負の最大電圧ニ変化する。これは
負電極の位置になる。ロニ間でイオンビ−ムが加速され
る。引出し電極2の接地電極はホの電位に対応してい
る。ニホ間でイオンが少し減速される。
【0033】イオンビ−ムの通過遮断のためにシャッタ
−を用いるときは、ホとチの間は平坦である。ホチ間で
は一定速度で走行する。チからリで電位が上昇し、ここ
でイオンが減速される。結局ロとリヌの電位差に対応す
る小さいエネルギ−でイオンビ−ムがタ−ゲットに入射
することになる。ロニ間は数keVとして強くイオンを
加速し、ニとリヌ間も数keVとし、差を100eVと
か20eVというふうに所望の低エネルギ−になるよう
に設定する。このような電位の分布は変わらず、シャッ
タ−3を上下することによりイオンビ−ムの流れを開閉
する。
−を用いるときは、ホとチの間は平坦である。ホチ間で
は一定速度で走行する。チからリで電位が上昇し、ここ
でイオンが減速される。結局ロとリヌの電位差に対応す
る小さいエネルギ−でイオンビ−ムがタ−ゲットに入射
することになる。ロニ間は数keVとして強くイオンを
加速し、ニとリヌ間も数keVとし、差を100eVと
か20eVというふうに所望の低エネルギ−になるよう
に設定する。このような電位の分布は変わらず、シャッ
タ−3を上下することによりイオンビ−ムの流れを開閉
する。
【0034】イオンビ−ムの通過段のためにリタ−デイ
ング電極4を用いるときは、これに電圧を印加するかし
ないかによりビ−ムを通したり止めたりする。ヘトチと
いうふうに電極に高正電圧を印加すると、イオンビ−ム
がこのポテンシャルの山を通過できず止まってしまう。
この状態を、励起期間t1 、待機時間t3 、休息時間t
5 の間保持する。引出し時間t4 の間は、リタ−デイン
グ電極4の電圧印加を止める。ヘチ間が平坦になり、イ
オンビ−ムがここを自由に通過できるようになる。
ング電極4を用いるときは、これに電圧を印加するかし
ないかによりビ−ムを通したり止めたりする。ヘトチと
いうふうに電極に高正電圧を印加すると、イオンビ−ム
がこのポテンシャルの山を通過できず止まってしまう。
この状態を、励起期間t1 、待機時間t3 、休息時間t
5 の間保持する。引出し時間t4 の間は、リタ−デイン
グ電極4の電圧印加を止める。ヘチ間が平坦になり、イ
オンビ−ムがここを自由に通過できるようになる。
【0035】イオンビ−ムを開閉する手段として、シャ
ッタ−3と、リタ−デイング電極4を説明した。ビ−ム
を間欠的に出す方法としてはもう一つの手段がある。こ
れは引出し電極2の電圧の印加を止めることである。ロ
ハの急激なポテンシャル降下によってビ−ムを引き出し
ているが、ロハのような電圧降下を与えなければビ−ム
が引出し電極2から引き出されない。つまりここではイ
オンビ−ムの制御のために3つの手段が示されている。
ッタ−3と、リタ−デイング電極4を説明した。ビ−ム
を間欠的に出す方法としてはもう一つの手段がある。こ
れは引出し電極2の電圧の印加を止めることである。ロ
ハの急激なポテンシャル降下によってビ−ムを引き出し
ているが、ロハのような電圧降下を与えなければビ−ム
が引出し電極2から引き出されない。つまりここではイ
オンビ−ムの制御のために3つの手段が示されている。
【0036】シャッタ−3の開閉によるもの これはイオンビ−ムが安定でビ−ムの制御性も良い。し
かし引出し電極2の引き出し電圧は定常的に印加されて
いるから、イオンビ−ムの損失が大きいという欠点があ
る。また機械的な可動機構を真空中に持ち込むので内外
の連絡部の構造が複雑であるという難点もある。
かし引出し電極2の引き出し電圧は定常的に印加されて
いるから、イオンビ−ムの損失が大きいという欠点があ
る。また機械的な可動機構を真空中に持ち込むので内外
の連絡部の構造が複雑であるという難点もある。
【0037】 リタ−デイング電極4の電圧の制御によるもの これは可動物を真空中に持ち込むものではないから、内
外連絡部の真空シ−ルなどが容易になる。これもイオン
ビ−ムは定定的に引き出されているので、イオンビ−ム
の損失が大きい。
外連絡部の真空シ−ルなどが容易になる。これもイオン
ビ−ムは定定的に引き出されているので、イオンビ−ム
の損失が大きい。
【0038】 引出し電極2の引き出し電圧の制御によるもの これは引出し時間t4 の間のみ、引出し電極2に電圧を
パルス的に与えるものである。その他の時間はプラズマ
からイオンは引き出されないから、引き出し電源の電力
消費は少ない。しかし、引出し電圧を直接に変化させる
からイオンビ−ムの安定性が良くないという難点があ
る。
パルス的に与えるものである。その他の時間はプラズマ
からイオンは引き出されないから、引き出し電源の電力
消費は少ない。しかし、引出し電圧を直接に変化させる
からイオンビ−ムの安定性が良くないという難点があ
る。
【0039】さて本発明では、励起期間t1 ではイオン
ビ−ムを遮断しタ−ゲットに当てない。励起期間t1 で
はチャンバ内部に強い電界があり、これがイオンのエネ
ルギ−にばらつきを与える。休止期間t2 の引出し時間
t4 にのみ消滅過程プラズマからイオンを引き出しイオ
ンビ−ムをタ−ゲットに当てる。引出し時間t4 では、
プラズマイオン密度ni はあまり下がっておらず、電子
温度Te が低くなっているから、イオン引き出しシ−ス
部でのエネルギ−の揺らぎが少ない。また内部電界もな
い。従って低エネルギ−であってしかもエネルギ−分散
ΔEの小さい高品質のイオンビ−ムを得ることができ
る。
ビ−ムを遮断しタ−ゲットに当てない。励起期間t1 で
はチャンバ内部に強い電界があり、これがイオンのエネ
ルギ−にばらつきを与える。休止期間t2 の引出し時間
t4 にのみ消滅過程プラズマからイオンを引き出しイオ
ンビ−ムをタ−ゲットに当てる。引出し時間t4 では、
プラズマイオン密度ni はあまり下がっておらず、電子
温度Te が低くなっているから、イオン引き出しシ−ス
部でのエネルギ−の揺らぎが少ない。また内部電界もな
い。従って低エネルギ−であってしかもエネルギ−分散
ΔEの小さい高品質のイオンビ−ムを得ることができ
る。
【0040】
【発明の効果】本発明は、イオン源における放電を間欠
的にし、放電を行っていない休止期間t2 の一部におい
てイオンビ−ムを引き出すようにしている。この時内部
電界によるイオンのエネルギ−揺らぎはない。また電子
温度Te が低下しているので、イオン引き出しシ−ス部
でのエネルギ−分散ΔEも小さい。したがってイオン源
チャンバを出るときの正イオンのエネルギ−のばらつき
が少ない。
的にし、放電を行っていない休止期間t2 の一部におい
てイオンビ−ムを引き出すようにしている。この時内部
電界によるイオンのエネルギ−揺らぎはない。また電子
温度Te が低下しているので、イオン引き出しシ−ス部
でのエネルギ−分散ΔEも小さい。したがってイオン源
チャンバを出るときの正イオンのエネルギ−のばらつき
が少ない。
【0041】初めから低い引き出し電圧で引き出して、
低エネルギ−ビ−ムにする場合、チャンバ内部でのエネ
ルギ−分散ΔEが小さいと当然に引き出されたビ−ムの
エネルギ−分散ΔEが小さい。一度加速してから減速し
低エネルギ−のイオンビ−ムを作り出す場合でも、始め
からエネルギ−分散ΔEが小さいと減速した後のエネル
ギ−分散ΔEも小さい。そうすると、エネルギ−分散の
小さい高品質の低エネルギ−イオンビ−ムを得ることが
できる。
低エネルギ−ビ−ムにする場合、チャンバ内部でのエネ
ルギ−分散ΔEが小さいと当然に引き出されたビ−ムの
エネルギ−分散ΔEが小さい。一度加速してから減速し
低エネルギ−のイオンビ−ムを作り出す場合でも、始め
からエネルギ−分散ΔEが小さいと減速した後のエネル
ギ−分散ΔEも小さい。そうすると、エネルギ−分散の
小さい高品質の低エネルギ−イオンビ−ムを得ることが
できる。
【0042】図3に示すように、エネルギ−が10eV
のイオンビ−ムといっても、分散が大きいもの(ワ)
と、分散が小さく分布が鋭いもの(カ)では、対象物に
照射された時の作用が異なってくる。エネルギ−が20
eVのものでも同様で分布の広いもの(タ)と分布の狭
いもの(ヨ)はビ−ムの品質という点で差がある。
のイオンビ−ムといっても、分散が大きいもの(ワ)
と、分散が小さく分布が鋭いもの(カ)では、対象物に
照射された時の作用が異なってくる。エネルギ−が20
eVのものでも同様で分布の広いもの(タ)と分布の狭
いもの(ヨ)はビ−ムの品質という点で差がある。
【0043】もしも拡がった10eVのビ−ム(ワ)
と、拡がった20eVのビ−ム(タ)を同時に照射する
とこれは15eVに中心を持つ一つのビ−ム(レ)と区
別できない。エネルギ−揺らぎは、低エネルギ−の場合
程重要な問題を投げかける。50keVのエネルギ−で
分散が100eVであっても差し支えない(ネ)が、1
00eVのエネルギ−で分散が100eVもある(ツ)
とこれは極めて低品質のビ−ムと言わざるをえない。
と、拡がった20eVのビ−ム(タ)を同時に照射する
とこれは15eVに中心を持つ一つのビ−ム(レ)と区
別できない。エネルギ−揺らぎは、低エネルギ−の場合
程重要な問題を投げかける。50keVのエネルギ−で
分散が100eVであっても差し支えない(ネ)が、1
00eVのエネルギ−で分散が100eVもある(ツ)
とこれは極めて低品質のビ−ムと言わざるをえない。
【0044】低エネルギ−のイオンビ−ムは薄膜を形成
するために用いられることが多いがこの場合、薄膜形成
に寄与できるイオンのエネルギ−の範囲は極めて狭いと
いうことがある。成膜のメカニズムは明らかではない
が、形成中の薄膜の表面には電子が電離することなくよ
り低いエネルギ−で2次元運動をしており、また原子が
これらの電子とともに共鳴準位などの励起準位を構成し
ている。するとこれらの励起準位に遷移するエネルギ−
を持つイオンしか膜形成に寄与しないということにな
る。
するために用いられることが多いがこの場合、薄膜形成
に寄与できるイオンのエネルギ−の範囲は極めて狭いと
いうことがある。成膜のメカニズムは明らかではない
が、形成中の薄膜の表面には電子が電離することなくよ
り低いエネルギ−で2次元運動をしており、また原子が
これらの電子とともに共鳴準位などの励起準位を構成し
ている。するとこれらの励起準位に遷移するエネルギ−
を持つイオンしか膜形成に寄与しないということにな
る。
【0045】エピタキシャル成長などを従来の方法(分
子線エピタキシ−、有機金属CVD)ではなく低エネル
ギ−イオン照射により行うこともできようが、この場合
エネルギ−、照射角度などが重要なパラメ−タになる。
もしもエネルギ−分散ΔEの大きいイオンビ−ムを照射
して膜成長を行うと、どのエネルギ−を持つイオンが膜
中に取り入れらているのか分からない。
子線エピタキシ−、有機金属CVD)ではなく低エネル
ギ−イオン照射により行うこともできようが、この場合
エネルギ−、照射角度などが重要なパラメ−タになる。
もしもエネルギ−分散ΔEの大きいイオンビ−ムを照射
して膜成長を行うと、どのエネルギ−を持つイオンが膜
中に取り入れらているのか分からない。
【0046】20eVのエネルギ−を持つビ−ムで20
eVの分散があると、個々のイオンの持つエネルギ−が
幾らであるか全く分からず、実験を重ねたところでパラ
メ−タを十分に押さえることができず再現性が不十分で
ある。同様の条件で行っても結果が異なるということに
なってしまう。
eVの分散があると、個々のイオンの持つエネルギ−が
幾らであるか全く分からず、実験を重ねたところでパラ
メ−タを十分に押さえることができず再現性が不十分で
ある。同様の条件で行っても結果が異なるということに
なってしまう。
【0047】本発明では、エネルギ−分散ΔEの小さい
低エネルギ−イオンビ−ムを生成できる。例えば20e
Vのエネルギ−の場合、分散が2eV、10eVのエネ
ルギ−の場合分散が1eVといった極めてエネルギ−分
散の小さい高品質ビ−ムを作りうる。このビ−ムを用い
ると、成膜を行う時にも幾らのエネルギ−のビ−ムが有
効なのかはっきりする。精度の高い成膜を行う時に極め
て有効である。またビ−ムで対象物の物性を測定する場
合でもエネルギ−が一定しているビ−ムを用いると測定
精度が向上し精密測定が可能となる。
低エネルギ−イオンビ−ムを生成できる。例えば20e
Vのエネルギ−の場合、分散が2eV、10eVのエネ
ルギ−の場合分散が1eVといった極めてエネルギ−分
散の小さい高品質ビ−ムを作りうる。このビ−ムを用い
ると、成膜を行う時にも幾らのエネルギ−のビ−ムが有
効なのかはっきりする。精度の高い成膜を行う時に極め
て有効である。またビ−ムで対象物の物性を測定する場
合でもエネルギ−が一定しているビ−ムを用いると測定
精度が向上し精密測定が可能となる。
【図1】本発明の原理的な操作を説明するための、放電
電圧と、プラズマイオン密度ni、電子温度Te の時系
列図。
電圧と、プラズマイオン密度ni、電子温度Te の時系
列図。
【図2】本発明の実施例に係る低エネルギ−イオンビ−
ム発生装置の概略構成図。
ム発生装置の概略構成図。
【図3】イオンビ−ムのエネルギ−と分散を説明するた
めのグラフ。
めのグラフ。
1 イオン源 2 引出し電極 3 シャッタ− 4 リタ−デイング電極 5 タ−ゲット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 27/00 - 27/26 H01J 37/08
Claims (4)
- 【請求項1】 原料ガスまたは原料蒸気を放電によって
励起しプラズマとするイオン源1と、イオン源1の前に
設けられイオンを通す穴を有し電圧を印加することによ
りイオン源からイオンをビ−ムとして引き出す引出し電
極2と、ビ−ム流路にあってイオンビ−ムを遮断通過さ
せる手段とを含み、引出し電極2でイオンを高い電圧で
引き出し加速してから減速し低エネルギ−のイオンビ−
ムを得るか、あるいは初めから低い電圧で引き出し低エ
ネルギ−のイオンビ−ムを得て、対象物に照射すること
としたイオンビ−ム発生装置であって、原料をプラズマ
に励起する放電を間欠的に行い、放電を行っている励起
期間t1 はイオンビ−ムを対象物に照射せず、放電を停
止している休止期間t2 の一部の引出し時間t4にのみ
イオンビ−ムをビ−ム流路に通して対象物に照射するよ
うにしたことを特徴とする低エネルギ−イオンビ−ム発
生装置。 - 【請求項2】 原料ガスまたは原料蒸気を放電によって
励起しプラズマとするイオン源1と、イオン源1の前に
設けられイオンを通す穴を有し電圧を印加することによ
りイオン源からイオンをビ−ムとして引き出す引出し電
極2と、ビ−ム流路にあってイオンビ−ムを遮断通過さ
せるためのシャッタ−3とを含み、引出し電極2でイオ
ンを高い電圧で引き出し加速してから減速し低エネルギ
−のイオンビ−ムを得るか、あるいは初めから低い電圧
で引き出し低エネルギ−のイオンビ−ムを得て、対象物
に照射することとしたイオンビ−ム発生装置であって、
原料をプラズマに励起する放電を間欠的に行い、放電を
行っている励起期間t1はシャッタ−を閉じてイオンビ
−ムを対象物に照射せず、放電を停止している休止期間
t2 の一部の引出し時間t4 にのみシャッタ−を開いて
イオンビ−ムをビ−ム流路に通して対象物に照射するよ
うにしたことを特徴とする低エネルギ−イオンビ−ム発
生装置。 - 【請求項3】 原料ガスまたは原料蒸気を放電によって
励起しプラズマとするイオン源1と、イオン源1の前に
設けられイオンを通す穴を有し電圧を印加することによ
りイオン源からイオンをビ−ムとして引き出す引出し電
極2と、ビ−ム流路にあってイオンビ−ムを遮断通過さ
せるためのリタ−デイング電極4とを含み、引出し電極
2でイオンを高い電圧で引き出し加速してから減速し低
エネルギ−のイオンビ−ムを得るか、あるいは初めから
低い電圧で引き出し低エネルギ−のイオンビ−ムを得
て、対象物に照射することとしたイオンビ−ム発生装置
であって、原料をプラズマに励起する放電を間欠的に行
い、放電を行っている励起期間t1 はリタ−デイング電
極4に高電圧を印加しイオンビ−ムを対象物に照射せ
ず、放電を停止している休止期間t2 の一部の引出し時
間t4 にのみリタ−デイング電極4に電圧を印加せずイ
オンビ−ムをビ−ム流路に通して対象物に照射するよう
にしたことを特徴とする低エネルギ−イオンビ−ム発生
装置。 - 【請求項4】 原料ガスまたは原料蒸気を放電によって
励起しプラズマとするイオン源1と、イオン源1の前に
設けられイオンを通す穴を有し電圧を印加することによ
りイオン源からイオンをビ−ムとして引き出す引出し電
極2とを含み、引出し電極2でイオンを高い電圧で引き
出し加速してから減速し低エネルギ−のイオンビ−ムを
得るか、あるいは初めから低い電圧で引き出し低エネル
ギ−のイオンビ−ムを得て、対象物に照射することとし
たイオンビ−ム発生装置であって、原料をプラズマに励
起する放電を間欠的に行い、放電を行っている励起期間
t1 は引出し電極2に引き出し電圧を与えずイオンビ−
ムを対象物に照射しないようにし、放電を停止している
休止期間t2 の一部の引出し時間t4 にのみ引出し電極
2に引き出し電圧を印加しイオンビ−ムをビ−ム流路に
通して対象物に照射するようにしたことを特徴とする低
エネルギ−イオンビ−ム発生装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4350465A JP3066554B2 (ja) | 1992-12-02 | 1992-12-02 | 低エネルギ−イオンビ−ム発生装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4350465A JP3066554B2 (ja) | 1992-12-02 | 1992-12-02 | 低エネルギ−イオンビ−ム発生装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06176728A JPH06176728A (ja) | 1994-06-24 |
JP3066554B2 true JP3066554B2 (ja) | 2000-07-17 |
Family
ID=18410681
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4350465A Expired - Lifetime JP3066554B2 (ja) | 1992-12-02 | 1992-12-02 | 低エネルギ−イオンビ−ム発生装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3066554B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2007328965A (ja) * | 2006-06-07 | 2007-12-20 | Univ Nagoya | イオン発生装置および中性子発生装置 |
WO2014136158A1 (ja) | 2013-03-08 | 2014-09-12 | キヤノンアネルバ株式会社 | イオンビーム処理方法、およびイオンビーム処理装置 |
US20230343727A1 (en) * | 2022-04-23 | 2023-10-26 | Plasma-Therm Nes Llc | Electrostatic discharge prevention in ion beam system |
-
1992
- 1992-12-02 JP JP4350465A patent/JP3066554B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06176728A (ja) | 1994-06-24 |
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