JP3062535B2 - 浮上溶解装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、誘導コイルの内側の
導電材からなるるつぼの中に、金属等の被溶解物を入れ
ることにより、金属をるつぼから浮上させ、浮上状態で
溶解する浮上溶解装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】この浮上溶解方法によれば、セグメント
状のるつぼに誘導されるうず電流と金属に誘導されるう
ず電流は、対向する面で互いに逆方向に流れるので、反
発力が生じて金属はるつぼから離れて浮上し、自らのう
ず電流で加熱される。溶解した金属には、るつぼからの
不純物が混入しないので、純度の高い溶湯ができ、この
溶湯を使って鋳型に流し込んだりして極めて高品位の製
品の製造が可能であり、例えばチタニウム，シリコン等
の溶解に用いられる。また、溶湯は冷却されたるつぼか
らの熱伝導損失がないので、高融点の材料の溶解に適す
る。

【０００３】図３は従来例の浮上溶解装置の縦断面斜視
図、図４は図３のセグメントの斜視図である。円筒状の
高周波誘導コイル１の内側に、電気的に周方向に絶縁さ
れ、水冷された銅製の複数のセグメント２からなり底部
内面に斜面３を持つ円筒状のるつぼ４を配置する。るつ
ぼ４に溶解金属５の冷材を投入し、誘導コイル１に電源
６から kＨz 単位の電力を投入すれば、溶解金属５はる
つぼ４から浮上し、浮上状態で溶解する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記の従来例では浮上
して溶解しているのは、るつぼの上方の溶解金属だけで
あり、斜面３におけるセグメントは厚くてうず電流が誘
導されにくいため、下方の溶解金属５ａは斜面３と接触
する。このため、水冷銅製のるつぼからの熱損失が大き
く、金属を高温に溶解できない。

【０００５】この発明の目的は、被溶解金属を非接触で
安定して浮上させ、かつ高温で溶解できる浮上溶解装置
を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】発明１の浮上溶解装置
は、底部内面に斜面を持ち周方向に分割したセグメント
からなる導電性のるつぼと、このるつぼの外周に巻回さ
れる誘導コイルとからなる浮上溶解装置において、前記
るつぼの厚さを一様又は底部になるほど薄くするもので
ある。このとき、発明２において、前記誘導コイルの半
径を底部になるほど小さくしたり、また発明３におい
て、前記誘導コイルを上下に複数個に分割する。

【０００７】

【作用】図１を参照する。発明１において、斜面１３に
おけるスリットからの侵入磁束が高さ方向で一様に又は
底部になるほど多くなるため、るつぼの内面に一様な又
は底部になるほど大きいうず電流が誘起され、しかも溶
解金属１５にも侵入磁束により一様な又は底部になるほ
ど大きいうず電流が誘起される。その結果、溶解金属１
５は底部の全面で浮上しながら溶解される。発明２にお
いて、前記誘導コイルの半径を底部になるほど小さくす
るものにおいても、同様の作用が生じる。発明３におい
て、上部コイルの電源１６ａは下部電源１６ｂに比べ高
周波にすると、下側で浮上と加熱が促進され、上側で溶
湯の安定が得られ、金属を高速溶解できる。

【０００８】

【実施例】図１は実施例の浮上溶解装置の縦断面斜視
図、図２は図１のセグメントの斜視図である。図におい
て上下に分割された筒状の高周波誘導コイル１１ａ、１
１ｂの内側に、電気的に周方向に絶縁され、水冷された
銅製の複数のセグメント１２からなり底部内面に斜面１
３を持つるつぼ１４を配置する。前記るつぼ１２の上方
の厚さｔ₁ と下方の厚さｔ₂ とにおいて、厚さを一様又
は底部になるほど薄くする。このため、斜面１３におけ
るスリットからの侵入磁束が高さ方向で一様に又は底部
になるほど多くなるため、るつぼの内面に一様な又は底
部になるほど大きいうず電流が誘起され、しかも溶解金
属１５にも侵入磁束により一様な又は底部になるほど大
きいうず電流が誘起される。その結果、溶解金属１５は
全面で浮上しながら溶解される。誘導コイル１１ａ、１
１ｂ、特に下部の誘導コイル１１ｂは、半径を底部にな
るほど小さくする。そして、それぞれに別の電源１６
ａ、１６ｂで電流が供給される。上部の誘導コイルの電
源１６ａは下部電源１６ｂに比べ高周波にすると、下側
で浮上と加熱が促進され、上側で溶湯の安定が得られ、
金属を高速溶解できる。上部誘導コイル１１ａのみ円筒
状にすると製作がしやすい。

【０００９】

【発明の効果】発明１又は発明２によれば、溶解金属
は、斜面を持つ底部においても一様な又はより大きな浮
上力を受け、全面で浮上しながら溶解され、このため水
冷るつぼからの熱伝導冷却がなく高融点の金属を溶解で
きるという効果がある。発明３によれば、溶解金属は上
側で溶湯の安定が得られ、金属を高速溶解できるという
効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例の縦断面斜視図

【図２】図１のセグメントの斜視図

【図３】従来例の縦断面斜視図

【図４】図３のセグメントの斜視図

【符号の説明】

１ 誘導コイル ２ セグメント ３ 斜面 ４ るつぼ ５ 溶解金属 １１ａ 誘導コイル １１ｂ 誘導コイル １２ セグメント １３ 斜面 １４ るつぼ １５ 溶解金属 １６ａ 電源 １６ｂ 電源

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 櫻谷 和之 東京都目黒区中目黒２丁目３番12号 科 学技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 渡邉 敏昭 東京都目黒区中目黒２丁目３番12号 科 学技術庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 山崎 素央 静岡県浜松市半田町4937−３ (72)発明者 森田 公 神奈川県川崎市川崎区田辺新田１番１号 富士電機株式会社内 (72)発明者 武 達男 神奈川県川崎市川崎区田辺新田１番１号 富士電機株式会社内 (72)発明者 藤田 満 神奈川県川崎市川崎区田辺新田１番１号 富士電機株式会社内 (56)参考文献 特開 平３−287729（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−28332（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H05B 6/32 F27B 14/06 F27D 11/06

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】底部内面に斜面を持ち周方向に分割したセ
   グメントからなる導電性のるつぼと、このるつぼの外周
   に巻回される誘導コイルとからなる浮上溶解装置におい
   て、前記るつぼの厚さを一様又は底部になるほど薄くす
   ることを特徴とする浮上溶解装置。
2. 【請求項２】請求項１記載の浮上溶解装置において、前
   記誘導コイルの半径を底部になるほど小さくすることを
   特徴とする浮上溶解装置。
3. 【請求項３】請求項１又は２記載の浮上溶解装置におい
   て、前記誘導コイルを上下に複数個に分割することを特
   徴とする浮上溶解装置。