JP3042086B2 - 有機非線形光学材料及び有機非線形光学素子 - Google Patents

有機非線形光学材料及び有機非線形光学素子

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伸利 浅井
真一郎 田村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光通信・光ディスク・光
情報処理などの光エレクトロニクスシステムにおいて重
要なキーデバイスとなる有機非線形光学素子および有機
非線形光学材料に関する。
【0002】
【従来の技術】非線形光学材料は、該材料を透過した光
が高調波に変換されることから、波長変換素子、光変調
器等の素子材料としての使用が期待されている。このよ
うな非線形光学材料においては、従来より、無機材料が
素子材料として多く検討がなされてきたが、近年になっ
て、有機非線形光学材料が大容量の情報を伝達・処理す
ることを目的とした光エレクトロニクスデバイスのキー
材料として注目されている。すなわち、無機材料の非線
形光学現象が格子振動に起因しているのに対して、有機
材料の非線形光学現象はπ電子の共役に起因するため、
有機非線形光学材料を使用すれば高い応答性と大きい光
学定数が得られ、高性能な非線形光学素子を得ることが
可能であり、また、有機材料は、構造の多様性に富んで
いるため材料開発の上でも期待がかけられている。そし
て、これまで実際に無機材料を凌ぐ非線形光学特性を示
す有機非線形光学材料が得られている。
【0003】有機非線形光学材料を用いた有機非線形光
学素子を実現させるためには、有機材料の薄膜導波路化
が必須となる。しかし、上述した高い非線形性を持つ有
機材料の薄膜化技術はまだ検討段階であり、現状では確
立されていない。
【0004】この有機材料の薄膜化技術の有力な手法と
しては、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)があ
る。LB法とは、両親媒性分子を水面に展開して単分子
膜を形成し、この単分子膜を一定の二次元的圧力で押し
ながら、平板を該単分子膜を通過して垂直に上下させる
ことにより、平板表面に一定の層数だけ移しとって累積
膜を形成する方法である。
【0005】このLB法により良好な有機薄膜を得るに
は、薄膜となる有機材料が両親媒性分子(分子内に親水
性基と疎水性基を合わせ持つ分子)であることが必要で
ある。このため、従来、非線形性が大きい両親媒性分子
をLB法を用いて薄膜導波路化する試みが多くなされて
きたが、これまで良好な非線形特性を示す有機薄膜が得
られた例はまだ極めて少ない。
【0006】たとえば、Japanease Jour
nal of Applied Physics(vo
l 26 No10 October,1987,pp
1622−1624)誌において、中西らが、公知の有
機非線形光学材料である2−メチル−4−ニトロアニリ
ンのアミノ基の部分に炭素数18のアルキル基を付加し
た材料N−オクタデシル−2−メチル−4−ニトロアニ
リン(C18−MNA)を使用した場合のLB膜の作製
について報告している。しかし、ここでは、C18−M
NA単独でのLB膜の累積には成功しておらず、C18
−MNAと他の分子(例えばアラキン酸)の混合物をL
B膜として累積した結果のみが述べられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、良好な非
線形性を示す有機材料はいくつか見いだされているが、
いずれもLB膜とするには不適当であり、実際に有機非
線形素子の材料とすることができる有機材料はこれまで
得られていないのが実情である。そこで、本発明はこの
ような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、非線
形性に優れるとともにLB法によって累積膜とすること
が可能な有機非線形光学材料および有機非線形光学素子
を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】アミノ基の部分にアルキ
ル基が付加したMNAアルキル鎖誘導体は、良好な非線
形光学特性を示すことが知られており、たとえばアルキ
ル基の炭素数が18のMNAアルキル鎖誘導体が非線形
光学素子の材料として検討されている。しかしながら、
上記炭素数を有するMNAアルキル鎖誘導体は、LB法
により累積膜とするのが難かしく、現状では薄膜導波路
化することができない。LB法によって累積膜を作製す
るには、材料の疎水性基,親水性基のバランス等が重要
となる。このような点から、本発明者らが鋭意検討を重
ねた結果、MNAのアミノ基に付加させるアルキル基の
炭素数を20以上とすることにより、疎水性,親水性の
バランスが改善され、LB法によって薄膜とすることが
可能な有機非線形光学材料が得られることを見いだすに
至った。
【0009】このような知見に基づいて、本発明の有機
非線形光学材料は下記の化2で示されるもであり、また
本発明の有機非線形光学素子は化2で示される有機非線
形材料よりなるラングミュア・ブロジェット膜が積層さ
れてなるものである。
【0010】
【化2】
【0011】本発明の有機非線形光学材料は、MNAの
アミノ基にアルキル基が付加したMNAアルキル鎖誘導
体である。ここで、LB法による薄膜化を可能にするに
は、上記アルキル基の炭素数nが19以上であることが
重要である。炭素数nを19以上とすることにより、M
NAの親水性,疎水性のバランスが改善され、LB膜と
して累積し易い構造となる。炭素数nが19未満の場合
には、疎水性が不十分となり、基体への積層が困難とな
る。
【0012】上記構造を有する非線形光学材料は、MN
Aと所定の炭素数を有するハロゲン化炭化水素とを適当
な触媒存在下で反応させることにより合成することがで
きる。
【0013】ここで、MNAとハロゲン化炭化水素を反
応させる際に使用する溶媒としては、エーテル系溶媒を
使用することが好ましい。エーテル系溶媒としては、直
鎖状エーテルあるいはジオキサン等の環状エーテル等、
通常、使用されているエーテル系溶媒であればいずれで
も良い。
【0014】また、反応触媒としては、通常、アルカリ
化合物が使用されるが、このとき固体状態のアルカリ化
合物を使用すれば高い反応性が得られ、高い収率で目的
物を得ることができる。なお、固体状態のアルカリ化合
物を使用する場合には、溶液中のMNA,ハロゲン化炭
化水素と、固体であるアルカリ化合物との接触性を良好
なものとし、反応性を高めるために固体−液相間相間移
動触媒を添加する。固体−液相間相間移動触媒として
は、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の4級アン
モニウム塩の他、クラウンエーテル等が使用できる。
【0015】上記非線形光学材料はLB法により基体上
に薄膜として積層することにより、薄膜導波路化され
て、非線形光学素子として機能する。LB法によって上
記非線形光学材料よりなる薄膜を形成するには、先ず、
非線形光学材料を水面上(サブフェース)に浮かべ、横
方向から適当な圧力を加える。すると、この分子は疎水
性基を水面上に、親水性基を水面下にして、規則正しく
配列した単分子膜を水面上で形成する。分子をこのよう
な状態に保持し、固体基板(例えばガラス基板)を単分
子膜に対して、垂直方向に上下させると、この基板上に
水面上の単分子膜が移しとられて累積し、薄膜導波路化
されることとなる。
【0016】ここで、LB膜の形成に際しては、単分子
膜の表面圧、水温等の諸条件が大きく影響してくるた
め、これらを適性なものに設定することが必要である。
すなわち、良好な特性を有するLB膜を形成するには、
その累積温度において単分子膜のコラプス表面圧(単分
子膜が壊れる表面圧)が大きいこと、その累積条件に保
持した場合の単分子膜の面積変化が小さいことが要求さ
れる。
【0017】このような点を考慮して、通常、LB膜の
作製の際の水温は5℃、表面圧は20mN/m程度とさ
れる。なお、単分子膜を累積するに際して、基板移動速
度を遅くすると水面上の単分子膜を安定に基板上に移し
とることができ、良好な特性を有するLB膜を得る上で
有利である。
【0018】
【作用】有機材料において、LB膜として累積できない
原因の1つとして、コラプス表面圧が低すぎて単分子膜
として安定に存在できないということがある。本発明の
有機非線形光学材料においては、MNAアルキル鎖誘導
体において、アルキル基の炭素数nを19以上と長くし
ている。アルキル基を長くすると、分子内の疎水性が増
加し、コラプス表面圧が増大する。したがって、単分子
膜としたときに非常に安定となり、LB法によって容易
に薄膜として形成され、薄膜導波路化される。
【0019】また、有機非線形光学材料は、無機非線形
光学材料に比べて応答が速く、良好な光学特性を示す。
したがって、上記有機材料を薄膜導波路化して得られた
非線形光学素子は、光機能デバイスとして優れた機能を
発揮する。
【0020】
【実施例】本発明の好適な実施例について実験結果に基
づいて説明する。
【0021】有機非線形光学材料の薄膜化 (1)有機非線形光学材料の合成 まず、以下のようにして2−メチル−4−ニトロアニリ
ン(MNA)と臭化ドコシルを反応させて化3で示され
るMNAアルキル鎖誘導体(C22−MNA)を合成し
た。
【0022】
【化3】
【0023】2−メチル−4−ニトロアニリン1g
(0.065モル)および臭化ドコシル2.5g(0.
064モル)を10mlのジオキサンに溶解し、加熱還
流した。この溶液中に水酸化ナトリウム(固体)1g、
テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド0.1gを添
加し、2時間反応を行った。2時間経過後、反応液中に
水を加えて反応を停止させた後、溶媒を蒸発させて除
き、水洗して水酸化ナトリウム、テトラ−n−ブチルア
ンモニウムを除いた。そして、アセトンを使用して再結
晶させることにより、目的物〔N−ドコシル−2−メチ
ル−4−ニトロアニリン(C22−MNA)〕2.7g
(2−メチル−4−ニトロアニリンに対して90%)を
得た。
【0024】図1に合成物のプロトンNMRスペクトル
を示す。NMRスペクトルの各ピークは、0.8pp
m:メチル基(3H),1.2〜1.8ppm:メチレ
ン基(40H),2.2ppm:ベンゼン環に結合した
メチル基(3H),3.2ppm:アミノ基に結合した
メチレン基(2H),4.2ppm:アミノ基,6.5
ppm,8ppm:ベンゼン環のそれぞれの水素に帰属
される。
【0025】また、合成物は、融点93〜95℃、元素
分析値C29522 2 として、実測(計算%)C7
5.47(75.60),H11.28(11.3
7),N6.14(6.08)であった。
【0026】(2)LB膜形成条件の検討 良好なLB膜の形成を行うには、積層する単分子膜の特
性,安定性が重要となる。そこで、合成して得られたC
22−MNAの単分子膜を形成して該単分子膜の表面圧
−面積曲線(アイソサーム)を各種温度において調べ、
上記曲線から求められるコラプス表面圧、コラプス面積
(単分子膜が壊れる表面圧、面積)を指標として単分子
膜の特性,安定性を検討した。
【0027】なお、単分子膜は、C22−MNAをクロ
ロホルム溶液に溶解させて濃度0.6mg/mlの展開
溶液を調製し、純水をサブフェーズとして、上記展開溶
液200μlを水面上に滴下することによって形成し
た。
【0028】その結果、形成された単分子膜において、
コラプス表面圧は水温が減少するのに伴って増大し、単
分子膜の性質として妥当性のある結果が得られた。ま
た、そのコラプス面積は0.32nm2 とほぼ一定値を
示した。
【0029】ここで、コラプス面積は単分子膜中におけ
る分子の存在状態を推測する上での一つの指標となる。
上記コラプス面積は、アルキル鎖が水面に対して垂直に
配列している脂肪酸のコラプス面積0.22nm2 と比
較して、大きな値になっている。このことからC22−
MNAのアルキル鎖は水面に対して傾いて(キンクし
て)いることが推測され、簡単な見積もりにより、キン
ク角度は水面方向より約40度傾いているものと判断さ
れた。
【0030】また、単分子膜を累積してLB膜とする場
合、累積温度,表面圧がその累積性に大きく影響する。
すなわち、良好な特性を有するLB膜を得るには、設定
した累積温度における単分子膜のコラプス表面圧が大き
いこと、また、累積条件に保持した場合の単分子膜の面
積の変化が時間の変化に対して少ないことが必要であ
る。この点について検討した結果、これらの要件を満た
す条件の一つとして水温5℃、表面圧20mN/mの累
積条件が採用可能であることがわかった。
【0031】すなわち、図2に温度5℃における単分子
膜の表面圧−面積曲線を示すが、これを見てわかるよう
に、単分子膜において、温度5℃におけるコラプス表面
圧は36mN/mと高く、累積表面圧を20mN/mと
した場合に十分累積可能である。
【0032】また、図3に温度5℃、表面圧20mN/
mにおける単分子膜保持時間と表面積の関係を示すが、
上記条件に保持した場合の単分子膜の表面積は時間が経
過すると共に徐々に減少する傾向を示しているが、表面
積の減少量は1時間で約7%と微小である。したがっ
て、単分子膜は温度5℃、表面圧20mN/mにおいて
十分に安定であり、この条件はLB膜の累積条件として
適当であることが示される。
【0033】(3)LB膜累積実験 次に、実際に上記条件にて単分子膜を累積してLB膜を
形成し、累積性について検討した。
【0034】まず、LB膜を形成するための基板として
ガラス基板を用意し、このガラス基板の表面をシランカ
ップリング剤によって疎水化処理した。そしてC22−
MNAを使用して、上述と同様にして水面上に単分子膜
を形成し、この単分子膜に対して上記ガラス基板を垂直
方向に上下させることにより、ガラス基板上に単分子膜
を累積し、LB膜を形成した。
【0035】なお、累積条件は、温度5℃,表面圧20
mN/m,累積時の基板の移動スピード3〜5mm/m
inに設定した。また、単分子膜の累積は基板表面を疎
水性としているので、基板降下より開始した。また、単
分子膜の累積には、ジョイスローブルタラフ(ジョイス
ローブル社製)を用い、基板の上下移動を始めとして、
すべてコンピュータ制御で行った。
【0036】このようにして形成されるLB膜につい
て、累積時のトレース(基板の位置と累積されて減少し
た表面積の関係)により累積性を調べた結果、形成され
たLB膜は、累積比1の良好なY型LB膜であることが
確認された。
【0037】LB膜の非線形光学特性の検討 上記LB膜の非線形光学特性について検討を行った。
【0038】上述と同様の累積条件にて、C22−MN
Aの単分子膜を10層累積してLB膜を形成し、その非
線形光学特性をメイカーフリンジ法にて評価した。
【0039】なお、メイカーフリンジ法は、基体上に積
層された薄膜にレーザ光を照射し、生ずる第2次高調波
発生(SHG)、第3次高調波発生(THG)の強度を
測定するとともに、試料を回転させて実効的な厚さ(薄
膜を透過する光の光路長)を変え、SHG光またはTH
G光に起因するフリンジの干渉パターンを観測するもで
ある。このメイカーフリンジ法は位相整合がとれない場
合にも適応できるという特徴を持つ。
【0040】図4に使用したメーカーフリンジ測定装置
を模式図で示す。すなわち、この装置はYAGレーザー
14とHe−Neレーザー15よりなる光源部とIR透
過フィルター16,NDフィルター17,フレネルロム
プリズム18,偏光子19,レンズ20よりなる光学
系、鉛直方向に回転可能なサンプルステージ21、IR
吸収フィルター22,レンズ23,レンズ24,検光子
25よりなる検出部、リファレンスの為のディテクター
等よりなる光学系26、情報処理装置27,演算機28
よりなる解析部からなる。
【0041】このメーカフリンジ測定装置にて測定を行
うには、鉛直方向に回転するサンプルステージ21上に
サンプル29を載せ、これにYAGレーザー14よりI
R透過フィルター16,NDフィルター17,フレネル
ロムプリズム18,偏光子19,レンズ20を通したレ
ーザーを照射して、IR吸収フィルター22,レンズ2
3,レンズ24,検光子25にて第2高調波、第3高調
波を測定する。そして、これとリファレンスの為のディ
テクター等よりなる光学系38を通したレーザーとを情
報処理装置27,演算機28によって解析し、メーカー
フリンジパターンが決定される。たとえば平行平板状に
非線形材料が加工できた場合には、はサンプルを回転さ
せてレーザーの入射角を変えることにより、非線形媒体
を通るレーザーの光路(試料の実効的厚さ)を連続的に
変えながら、基本波と高調波の屈折率分散により生ず
る、位相ずれにより高調波発生効率が周期的に変化する
パターン(フリンジパターン)を観測する。
【0042】ここで、フリンジパターンについて、SH
G光にのみ着目して説明すると、SHG光の強度S
2wは、媒質の厚さをLとすると、数1のように示され、
この媒質の厚さL(試料の位置)を変化させることによ
り、フリンジパタンを描いて変化する。したがって、試
料となる薄膜において、このようなフリンジパタンが観
測された場合に非線形特性を有すると判断することがで
きる。
【0043】
【数1】
【0044】本実施例においては、このようなメイカー
フリンジ法において、基板に対してYAGレーザの基本
波(1.06μm)を水平に偏向させて入射し、同一の
偏波方向で、この倍波の514nmの光強度を検出する
ことによってSHGの検出を行った。
【0045】図5からわかるように、C22−MNAよ
りなるLB膜においては、2次の非線形光学性に基づく
明瞭なフリンジパタンが観測される。また、比較とし
て、LB膜の形成されていないガラス基板についても同
様にして非線形光学特性について調べたが、フリンジパ
タンは観測されなかった。したがって、このことから、
C22−MNAよりなるLB膜は、良好な非線形光学特
性を有することが判った。
【0046】また、メイカーフリンジ法にて求められる
σ定数の異方向性より、ダイポールモーメントは基板に
対して水平面内にあり、LB膜の累積方向と同一方向に
向いていることが示された。
【0047】有機非線形光学素子の作製及び評価 ここでは実際にC22−MNAを用いて非線形光学素子
の一つである波長変換素子を作製し、素子としての機能
を評価した。
【0048】なお、本実施例で作製した波長変換素子
は、YAGレーザ光の基本波1.06μmを第2高調波
発生(SHG)により0.53μmに変換するSHG素
子のうち、位相整合をチェレンコフ方式を用いて行うチ
ェレンコフ型SHG素子である。以下にチェレンコフ方
式による位相整合について簡単に説明する。
【0049】基本波モードが実効屈折率で導波層を伝わ
ると、SHG波を発生する非線形分極波も同一の位相速
度をもって伝わる。基板のSHG波における屈折率が導
波層の基本波の屈折率よりも低ければ、基板側へある角
度で位相整合されたSHG波は放射される。この非線形
分極波(SHG波)は自動的に位相整合のとれた方向に
発生され、基本波よりも位相速度が速いためチェレンコ
フ方式位相整合法とよぶ。
【0050】なお、本実施例で作製したチェレンコフ型
SHG素子の具体的な構成は図6および図7の通りであ
り、図6で示すSHG素子は、基板61上にC22−M
NA12よりなるLB膜62が積層されてなる2次元ス
ラブ導波路型SHG素子であり、図7で示すSHG素子
は、基板71上の一部にフォトレジスト73が形成さ
れ、さらに基板71上およびフォトレジスト73上にC
22−MNAよりなるLB膜72が積層されてなる3次
元リッジ導波路型SHG素子である。
【0051】ここで、チェレンコフ位相整合方式を採用
するSHG素子の場合、上述の如く基板の屈折率が重要
であり、このような点から、2次元スラブ導波路型SH
G素子においては、基板としてガラス基板PC2(屈折
率1.51)を使用し、3次元リッジ導波路型SHG素
子では、ガラス基板上に屈折率1.51のフォトレジス
トを形成した。
【0052】また、2次元スラブ導波路型SHG素子、
3次元リッジ導波路型SHG素子のいずれにおいても、
C22−MNAよりなるLB膜は、上述と同様な累積条
件によって形成し、膜厚を、モード結合理論に基づいて
0.65μmとした。
【0053】このような構成のSHG素子について、素
子評価を行った。素子評価はプリズムを用いてYAGレ
ーザ光を光導波路に導入し、導波路から出てくるSHG
光をフォトマルで検知することによって行った。
【0054】その結果、いずれの素子においても、0.
53μmのSHG光を観測することができた。したがっ
て、このことから、C22−MNAを使用する非線形光
学素子は、波長変換素子として、十分は機能を発揮する
ことがわかった。なお、本実施例では有機非線形光学材
料としてC22─MNAを使用した場合について示した
が、アルキル基が所定炭素数とされたMNAアルキル鎖
誘導体であれば、いずれのものを用いた場合でも同様に
良好な特性を発揮する非線形光学素子が得られることは
言うまでもない。
【0055】
【発明の効果】本発明の有機非線形光学材料は、アルキ
ル基の炭素数が20以上であるMNAアルキル鎖誘導体
であるので、水面上で安定な単分子膜として存在し、通
常のLB膜累積手法を用いることにより、良好なY型L
B膜の有機非線形光導波路とすることができる。
【0056】この有機非線形光導波路は、無機材料より
なる光導波路と比べて、応答が速く、良好な光学特性を
示すので、このような有機非線形光学材料を使用するこ
とにより、高性能な波長変換素子、光変調器等の非線形
光学素子を得ることができ、大容量光ディスクシステ
ム、光通信システムを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成したC22−MNAの 1H−NMRスペク
トルである。
【図2】温度5℃におけるC22−MNAよりなる単分
子膜の表面圧−面積曲線を示す特性図である。
【図3】温度5℃,表面圧20mN/m条件下における
C22−MNAよりなる単分子膜の保持時間と面積の関
係を示す特性図である。
【図4】メイカーフリンジ法の測定原理を示す模式図で
ある。
【図5】C22−MNAよりなるLB膜のメイカ−フリ
ンジパターンを示す特性図である。
【図6】2次元スラブ導波路型SHG素子の構成を示す
要部概略断面図である。
【図7】3次元リッジ導波路型SHG素子の構成を示す
要部概略断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ボーン ハワース 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (72)発明者 藤原 一郎 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (56)参考文献 Japanese Journal of Applied Physic s,Vol.26 No.10(Octob er 1987)pp.1622−1624 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/35 - 1/39 H01S 3/108 - 3/109 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の化1で示される有機非線形光学材
    料。 【化1】
  2. 【請求項2】 請求項1記載の有機非線形材料よりなる
    ラングミュア・ブロジェット膜が基体上に積層されてな
    る有機非線形光学素子。
JP3278612A 1991-09-30 1991-09-30 有機非線形光学材料及び有機非線形光学素子 Expired - Fee Related JP3042086B2 (ja)

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Japanese Journal of Applied Physics,Vol.26 No.10(October 1987)pp.1622−1624

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