JP3036634B1 - 分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房システム - Google Patents

分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房システム

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Abstract

【要約】 【課題】全体システムの省エネルギー効果が高い分散型
ヒートポンプ装置による地域冷暖房システムを提供す
る。 【解決手段】所定地域の地下に土壌と熱的に結合させて
地域配管2を貫通させ、循環水ポンプ5で地域配管2内
に水を循環させる。所定地域に分散した氷蓄熱ヒートポ
ンプ装置1aと地域配管2とを引込管6により接続する。
地域配管2の土壌と熱交換した循環水をヒートポンプ装
置1aの蓄冷槽23又は冷媒凝縮器と熱的に結合することに
より、対応する熱負荷33へ冷凍サイクルの冷媒凝縮温熱
又は冷媒蒸発冷熱を供給する。地域配管2は往復水路又
は環状エンドレス水路とすることができる。好ましく
は、地域配管2の一部分を未利用熱源と熱的に結合す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分散型ヒートポンプ
装置による地域冷暖房システムに関し、とくに所定地域
に分散した氷蓄熱ヒートポンプ装置により、当該所定地
域の地下に土壌と熱的に結合して設けた地下地域配管の
水から吸熱した温熱又は該地域配管の水へ放熱した冷熱
を熱負荷へ供給する地域冷暖房システムに関する。
【0002】
【従来の技術】地域冷暖房システムは、センタープラン
トと呼ばれる中央熱源設備から地域配管を通して各需要
家へ熱を送るシステムであり、次の利点が期待できるた
め国家レベルでの普及促進が進められている。
【0003】(a)センタープラント(中央熱源設備)
において大規模で効果的な排ガス処理等が可能になるた
め、公害防止に役立つ。
【0004】(b)各需要家において熱源設備が不要と
なり、熱の受け入れ設備(熱交換器やポンプ等)のみと
なるので、保守が簡略化される。またボイラーの煙突や
エアコンの屋外機または冷却塔が無いため、建物の美観
及び景観を損なわない。
【0005】(c)ごみ焼却の排熱、下水の保有熱、地
下鉄からの排熱など、日常生活や産業活動からの排熱又
は海水や河川の保有熱のうち未だに本格的な回収の対象
として有効利用されていない「未利用熱」の利用が図れ
る。
【0006】従来の地域冷暖房システムは、1875年にハ
ンブルグにおいて、火力発電所の排熱を周囲工場や住宅
の暖房に供給したことを起原とすることから、水蒸気や
温水の形で温熱を送る方式が基本になっている。しか
し、冷房も必要な場合もあることから、以下に述べる各
種方式が実施されている。
【0007】(A)温熱のみを供給する方式 センタープラントから各需要家へ水蒸気又は温水を供給
する方式である。エネルギー源がガスの場合は、センタ
ープラントにボイラーを設置する。水蒸気の場合は、そ
の大きな凝縮潜熱を利用できるため、地域配管が小径に
なり施設費を低く抑えることができる。
【0008】ただし本方式で冷房を行う場合は、需要家
側に吸収冷凍機と冷却塔を設置する必要があるため、上
記(b)の利点は期待できない。
【0009】北欧のように冷房が不要で温熱(暖房や給
湯)需要が主体の地域では、発電所の排熱を温水で供給
するのが一般的である。また、各種の排熱や未利用熱を
センタープラントのヒートポンプで昇温して十分に高い
温度の温水(60〜80℃程度)にして各需要家へ送る方式
もある。
【0010】(B)冷水と温水を供給する方式 センタープラントから冷房用の冷水と暖房用の温水を併
給する方式である。エネルギー源がガスの場合は、セン
タープラントにボイラーとガスタービン駆動ターボ冷凍
機、または冷温水発生機(吸収冷凍機にボイラー機能を
組み込んだもの)等を設置し、冷水配管と温水配管の4
管式で冷熱と温熱を供給する。
【0011】エネルギー源が電力の場合は、各種の排熱
や末利用熱を熱源とするセンタープラントの電動ヒート
ポンプで、使用に足る十分な温度(60〜80℃程度)に昇
温した温水を各需要家へ送り出す。冷熱需要にはセンタ
ーヒートポンプから冷水を供給する。この場合、電力負
荷の平準化を目的として、氷蓄熱槽を設置することが最
近の傾向である。
【0012】図10に示すように、センタープラント60
のヒートポンプ61で製氷し、冷水の代わりに氷スラリー
を各需要家へ供給して蓄熱することにより、冷熱搬送能
力を増やした地域冷暖房方式も提案されている。この方
式は、長い地域配管を要する地域冷暖房システムにおい
て、配管を小径とし施設費低減に大きな効果を発揮する
と試算されている。
【0013】(C)2段階に分けて昇温するヒートポン
プ方式 センタープラントのヒートポンプで常温に近い温水(25
℃前後)を作って各需要家へ送り、各需要家に設置した
ローカルヒートポンプによって必要な温度(40〜60℃程
度)まで昇温する方式である。冷房が必要な場合はロー
カルヒートポンプを冷房サイクルで運転することによ
り、この温水に熱を棄てることも可能である。
【0014】この方式の利点は、各需要家の必要温度に
合わせてローカルヒートポンプで昇温すれば良いため、
方式Aや方式Bの温水供給のように、最も高い温度を要
求する需要家に合わせて温水供給する必要がないことで
ある。また、地域配管を流れる水温が外気温度や地温と
大きく違わないため、地域配管の断熱が省略でき、コス
トダウンが可能になるとされている(IEA Heat Pump Ce
ntre Newsletter No.1/1996, "Two-step district heat
ing and cooling", pp.23-24)。
【0015】(D)地下帯水層蓄熱ローカルヒートポン
プ方式 地下帯水層(aquifer)に夏期の間に蓄熱しておき、冬
期にはここから得られる12℃程度の水を地域配管で供給
し、これを熱源として各需要家に設置したローカルヒー
トポンプで昇温することにより暖房や給湯を行う方式で
ある(IEA HeatPump Centre Newsletter No.1/1998, "L
arge energy systems", p.12)。
【0016】(E)未利用エネルギー活用ヒートポンプ
方式 我が国の最近の技術開発では、未利用熱の活用を目指し
て、図11に示すような方式が提案されている。同図の
地域冷暖房システムは、下水処理場、工場や住宅、清掃
工場(ごみ焼却)、地下鉄や地中送電線などからの排熱
および海や河川の保有熱を排熱幹線72経由でセンタープ
ラント60ヘ集め、センターヒートポンプ61により冷水と
温水を作り、センター貯熱槽70および冷水・温水幹線73
経由で工場や住宅、ビル、ホテルなどへ冷水と温水を供
給しようとするものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかし、地域冷暖房シ
ステムの上記方式A〜Eには以下の問題がある。
【0018】(1)方式A、B、Eでは、供給温度と外
界(土壌および大気)との温度差が大きいため、地域配
管の断熱が不可欠となり配管に要する施設費が高くな
る。しかも地域冷暖房システムでは地域配管が長距離と
なるので、配管に断熟してもかなりの熱損失が避けられ
ない。
【0019】方式Bでは冷水と温水の供給のためそれぞ
れ地域配管が必要となり、また方式Bの発展型と考えら
れる方式Eでは排熱幹線も必要になるため、施設費が更
に高くなる。
【0020】(2)方式Cでは、地域配管の断熱を省略
することにより施設費は下げられるものの、配管からの
熱損失はやはり生ずる。そしてヒートポンプがセンター
とローカルの両方に必要になるため、熱源装置の施設費
は安くならない。
【0021】また昇温にヒートポンプを2回(2段)使
う方式Cは、エネルギー効率的には良いとは言えない。
例えば1段のヒートポンプで50〜55℃程度の温水を作る
1段昇温では通常3以上のCOP(Coefficient Of Per
formance、成績係数)が得られるのに対し、2段昇温で
はCOPが5のセンターヒートポンプとCOPが4のロ
ーカルヒートポンプとを用いても複合したCOPは約
2.2に低下する。なお地域冷暖房の全体システムで
は、ヒートポンプ等の熱源装置に加えて地域配管の循環
ポンプ動力や各種の補機動力を加える必要があるため、
何れの方式でも総合的なCOPはさらに低下する。
【0022】(3)方式A、B、C、Eは、センター熱
源機器の故障が需要家全体に影響を及ぼす恐れがある。
【0023】(4)方式Dは、地下帯水層が存在する地
域でのみ成り立つ方式である。また方式Dで冷房行うこ
とも可能であるが、ローカルヒートポンプが蓄冷機能を
持たないため、夏期昼間電力の夜間移行による電力負荷
の平準化に対応できない。
【0024】(5)空調負荷のピークは、暖房では朝の
立ち上げ時に、冷房では午後1時から午後4時にかけて
集中しがちである。方式A、B、C、D、Eでは何れ
も、このピーク負荷に合わせた熱源設備能力や送水ポン
プ能力および地域配管容量のものを敷設する必要がある
ため、僅かなピーク時間のためにセンタープラントと地
域配管網の規模を大きくする必要があり、施設費が高く
なると共に、設備の稼動率が低下し供給コストの上昇を
招く。
【0025】方式B、Eでセンタープラントに蓄熱槽を
設けた場合は、熱源設備容量をピーク負荷に合わせて大
きくする必要はないが、地域配管網の容量はピーク負荷
に合わせて大きく設計する必要がある。
【0026】従って本発明の目的は、上記問題点を解決
するため、地域配管の熱負荷が平準化できシステム全体
として省エネルギー効果が高い分散型ヒートポンプ装置
による地域冷暖房システムを提供するにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】図1を参照するに、本発
明の分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房システム
は、冷凍サイクルの冷媒凝縮温熱又は冷媒蒸発冷熱を出
力するごとく所定地域に分散し且つ冷媒蒸発冷熱を氷と
して蓄熱可能な蓄冷槽23(図5参照)を有する複数のヒ
ートポンプ装置1a、前記所定地域の地下を土壌と熱的に
結合しつつ貫通する往復水路3、4からなる地域配管2
a、及び往復水路3,4とヒートポンプ装置1aの各々
を接続する引込管6を備え、土壌と熱交換した地域配管
2aの水をヒートポンプ装置1aと熱的に結合し、冷媒凝縮
温熱の需要が地域配管2aからの採熱を上回るヒートポン
プ装置1aでは蓄冷槽23での製氷により採熱を補い、冷媒
蒸発冷熱の需要が地域配管2aへの放熱を上回るヒートポ
ンプ装置1aでは蓄冷槽23に貯蔵した冷熱により放熱を補
うことにより、地域配管2aの熱負荷を平準化してなるも
のである。好ましくは、図2に示すように、地域配管2a
をボイラーや冷凍機などの加熱若しくは冷却熱源装置及
び/又は排熱や自然熱などの未利用熱源(以下、両者を
纏めて熱源Uということがある。)と熱的に結合する。
【0028】また図3を参照するに、本発明の他の地域
冷暖房システムは、冷凍サイクルの冷媒凝縮温熱又は冷
媒蒸発冷熱を出力するごとく所定地域に分散し且つ冷媒
蒸発冷熱を氷として蓄熱可能な蓄冷槽23(図5参照)を
有する複数のヒートポンプ装置1a、前記所定地域の地下
を土壌と熱的に結合しつつ貫通する環状エンドレス水路
からなる地域配管2b、エンドレス水路内に水を循環させ
る循環水ポンプ5、及びヒートポンプ装置1aの各々に対
しエンドレス水路の対応取水点から取水して該取水点の
下流に排水する引込管6を備え、地域配管2bの水量を引
込管6の水量より充分大きくし、地域配管2bの水の熱を
ヒートポンプ装置1aに与え、冷媒凝縮温熱の需要が地域
配管2aからの採熱を上回るヒートポンプ装置1aでは蓄冷
槽23での製氷により採熱を補い、冷媒蒸発冷熱の需要が
地域配管2aへの放熱を上回るヒートポンプ装置1aでは蓄
冷槽23に貯蔵した冷熱により放熱を補うことにより、地
域配管2bの熱負荷を平準化してなるものである。好まし
くは、同図に示すように、環状エンドレス水路を熱源U
と熱的に結合する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、地域配管2a、2bを総称して
地域配管2と表す。本発明で用いる地域配管2及び引込
管6は、地盤中に土壌と接触させて直埋設し、原則とし
て断熱を施さない。これは地域配管2内の水と土壌とを
熱交換させるためである。例えば地域配管2を、樹脂性
または防蝕した金属製の配管とし、土壌との接触面積が
大きいコルゲート管、または可撓管とすることができ
る。また地域配管2に断熱しないので、断熱する場合に
比し、配管2に要する施設費を低く抑えることができ
る。但し、地域配管2及び引込管6に地上へ露出する部
分がある場合は、その部分について冬期の凍結を避ける
目的で断熱を施す場合がある。
【0030】土壌の年間平均温度は気温の年間平均温度
にほぼ等しいとされ、東京周辺では15℃前後である。例
えば5メートル程度の深さでは年間較差が5K以下と少
なく、しかも位相が約半年遅れることが知られており、
冬期には15〜20℃程度、夏期には10〜15℃程度である。
従って、土壌と熱交換した地域配管2内の水をヒートポ
ンプ装置1へ引き込むことにより、ヒートポンプ装置1
の好ましい温熱源又は冷熱源とすることが期待できる。
ただし本発明の地域配管2は5メートル程度の深さへの
埋設に限定されず、例えば大深度地下の利用を考えるこ
ともできる。
【0031】本発明では、ヒートポンプ装置1に引き込
んだ水を地域配管2へ戻すので、冬期には暖房運転で採
熱するため地域配管2の水温が下がり、夏期には冷房運
転で放熱するため水温が上昇することになる。この場合
でも、地域配管2中の水を冬期には5〜10℃程度とすれ
ば土壌から吸熱し、夏期には20〜25℃程度とすれ土壌に
放熱することができる。
【0032】理論的には、地域配管2内の水温は土壌の
熱交換量とヒートポンプの吸熱量(暖房・給湯運転時)
又は放熱量(冷房・冷蔵運転時)との平衡状態で決まる
ものである。本発明者の計算によれば、これらの熱量を
予測して地域配管2の長さ及びこれに接続する熱負荷な
どを設計することにより、地域配管2内の水温を土壌温
度±10K以内とすることが可能である。
【0033】他方、本発明に用いる氷蓄熱ヒートポンプ
装置1aの一例を図5に示す。同図のヒートポンプ装置1a
は、蓄冷槽23内部の水を冷却して製氷することが可能な
冷媒蒸発器27と温熱利用が可能な冷媒凝縮器26とを有す
るヒートポンプユニット20aから構成されている。地域
配管2の水は、引込水路7及び戻し水路8からなる引込
管6を介して受入用熱交換器30に受け入れる。
【0034】加熱(暖房や給湯)サイクルでは蓄冷槽23
で製氷を行い、水の凝固潜熱を冷媒蒸発器27で吸収して
冷凍サイクル25のヒートポンプ作用で昇温し、冷媒凝縮
器26からの温熱(例えば35〜55℃)を利用すると共に、
蓄冷槽23の氷を融かすために地域配管2の水を用いる。
図5では、蓄冷槽23内の冷水24が受入用熱交換器30と冷
凍サイクル25との間の熱搬送媒体となり、冷水24が地域
配管2の水から吸熱して暖められ、蓄冷槽23に戻って氷
を融かすか又は冷水の温度を上昇させる。また冷媒凝縮
器26の温熱により温水熱交換器21内に温水22を生成し、
負荷側ポンプ42が温水熱交換器21の温水22を負荷熱交換
器28へ送り、熱負荷交換器28が暖空気流34や温水その他
の温熱を熱負荷33へ送る。
【0035】冷房サイクルでは、冷媒凝縮器26からの温
熱を地域配管2へ放熱することにより蓄冷槽23で製氷
し、この冷熱を熱負荷33の冷房や冷蔵等に用いる。図5
では、温水熱交換器21内の温水22が受入用熱交換器30と
冷凍サイクル25との間の熱搬送媒体となり、温水22が地
域配管2の水へ放熱して冷やされる。また負荷側ポンプ
42が蓄冷槽23内の冷水24を負荷熱交換器28へ送り熱負荷
33から吸熱し、蓄冷槽23に戻って氷を融かすか又は冷水
の温度を上昇させる。
【0036】図5の製氷方式は冷媒直膨式スタティック
製氷方式と呼ばれるが、この他に直膨式のダイナミック
製氷方式や、不凍液冷却式のスタティックおよびダイナ
ミック製氷方式などでも良い。また製氷時に凝縮器26の
温熱を利用できるようにした氷蓄熱パッケージや、氷蓄
熱ビルマルチを用いることも可能である。
【0037】ただし、本発明で用いる氷蓄熱ヒートポン
プ装置1aは地域配管2の水を蓄冷槽23又は冷媒凝縮器26
と熱的に結合するものであれば足り、機器構成は図示例
に限定されない。配管の接続法や熱交換器の有無は重要
ではなく、熱搬送媒体に水を用いる必要もない。例えば
図5の冷媒凝縮器26を空冷とすれば、温水を介さずに温
風を作ることもできる。同様のことは他の部分でも実施
できる。
【0038】本発明は、対応する熱負荷33に氷蓄熱ヒー
トポンプ装置1aを分散配置するため、地域配管2の熱負
荷平準化を図ることができる。すなわち、暖房では通常
は朝の立ち上げ運転時に最大負荷となるが、氷蓄熱ヒー
トポンプ装置1aでは地域配管2の水から直に採熱せず氷
蓄熱を介することができるため、これを暖房負荷の熱的
なバッファとして利用することができる。温熱需要が大
きい時は、製氷量が融解量を上回り貯氷量が増すが、温
熱需要が小さいときは製氷量も小さいため、融解量が上
回ることにより貯氷量が減少する。このようにしてヒー
トポンプ装置1aヘの負荷によらず長時間かけて地域配管
2から採熱するため、地域配管2の採熱負荷が平準化さ
れることになる。
【0039】ただし、加熱(暖房や給湯)サイクルで常
時製氷することは必要な条件ではない。地域配管2の水
温が高かったり加熱負荷が小さい時(例えば中間期等)
には、蓄冷槽23内の氷を融かして槽内温度を高い状態に
保つ方が、冷媒蒸発温度も高くなるため、ヒートポンプ
の運転性能は良好になるからである。
【0040】冷却サイクルでは氷蓄熱は冷房負荷の熱的
なバッファとして働くため、加熱サイクルと同様に、地
域配管2の放熱負荷平準化の効果を生ずる。例えば、図
6のように蓄熱を持たないヒートポンプ装置1bでは、夏
期昼間に発生する最大冷房負荷に合わせて機器容量およ
び地域配管2の水量を設計しなければならないのに対し
て、図5の氷蓄熱ヒートポンプ装置1aでは、夜間の蓄冷
運転に加えて昼間は追い掛け運転を行えば、ヒートポン
プ容量およびその冷却水の必要量が大幅に減少すること
になる。
【0041】この氷蓄熱を利用した地域配管2の熱負荷
平準化によれば、地域配管2の負荷容量をピーク負荷に
合わせる必要がなくなり、僅かな負荷ピーク時間のため
に地域配管2の内径や循環水ポンプ5のポンプ動力を大
きくする必要もない。
【0042】また従来のローカルヒートポンプを持たな
い地域暖房システムでは、センタープラントから供給す
る温水温度は熱負荷の内で最も高温の用途に合わせる必
要があった。例えば給湯などでは80℃近い高温水が必要
となる。このため地域配管2からの熱損失が増加するの
みならず、特にセンタープラントの熱源装置がヒートポ
ンプの場合には運転効率的に不利となる問題がある。ヒ
ートポンプは冷媒凝縮温度を上げるほどCOPが低下す
るからである。
【0043】本発明では、熱負荷33すなわち需要家ごと
に各自のヒートポンプ装置によって必要な温度の熱を得
る方式のため、こうした無駄を省き、全体システムとし
ての運転効率の向上を図ることができる。例えば高温給
湯が必要な熱負荷では、専用の高温ヒートポンプ装置を
設けることによって対応することができる。
【0044】ただし、地域配管2の水を補助的に冷却ま
たは加熱する目的で、地域配管2の一部分を一般的なボ
イラーや冷凍機からなるセンター熱源施設、または排熱
や自然熱など所謂未利用熱源である熱源Uと熱的に結合
することもできる。
【0045】さらに本発明の地域冷暖房システムは、主
要な熱源装置が各熱負荷33に分散されるため、熱源機器
の故障や修理・点検が全体システムに影響を与えるおそ
れがない。従来は、センター熱源装置(冷凍機、ボイラ
ー、ヒートポンプ等)の故障が全体システムに影響を及
ぼすため、熱源装置の信頼性を上げることが重要であ
り、場合によっては2重の設備にする必要があった。本
発明では、このような2重の設備とする必要はない。
【0046】また図3の地域冷暖房システムでは、地域
配管2の保有水量が多いことから蓄熱容量も大きいた
め、引込ポンプ9を運転するだけで長時間の採熱・放熱
が可能であり、氷蓄熱ヒートポンプ装置1aの氷蓄熱量と
相俟って、地域配管2の循環水ポンプ5が故障しても直
ちに暖冷房停止には至らない。また地域配管2の豊富な
水量を利用して、災害時の飲料水や消防用水に転用する
ことも可能である(図示せず)。
【0047】こうして本発明の目的である「地域配管の
熱負荷が平準化できシステム全体として省エネルギー効
果が高い分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房シス
テム」の提供を達成できる。
【0048】なお、本発明では、地域配管2に接続する
熱源設備の全てが氷蓄熱ヒートポンプであることを必要
としない。例えば図1に示すように、蓄熱装置を持たな
い水熱源ヒートポンプ装置1bを混在させても良い。水熱
源ヒートポンプ装置1bは、例えば図5に示すように、4
方弁を切り替えることにより加熱(例えば暖房)及び冷
却(例えば冷房)の機能を発揮するものであり、従来技
術に属するものである。例えば住宅等で蓄熱装置設置ス
ペースが取れない場合に、水熱源ヒートポンプ装置1bを
用いることができる。図5のヒートポンプから4方弁を
除去した加熱専用の給湯用ヒートポンプ、又は冷却専用
の冷蔵又は冷凍ヒートポンプを地域配管2に接続するこ
ともできる。
【0049】また、従来から土壌熱源を利用したヒート
ポンプ装置が知られている。しかし従来の土壌熱源ヒー
トポンプ装置は、地中熱交換器の埋設工事費が高く大き
な設置面積を必要とする問題がある。本発明では、地域
配管2及び引込管6を地中熱交換器として利用すること
ができるため、十分な熱交換能力を確保し易い。
【0050】さらに従来のチラー(冷水機)を用いた土
壌熱源ヒートポンプ装置では、冷媒蒸発器は0℃以下に
冷やされる場合があり、蒸発器と土壌熱交換器との間の
熱搬送媒体が水であると凍結のおそれがある。そのよう
な凍結は土壌熱交換器と蒸発器との間の熱伝達に支障を
きたし、蒸発器自体の凍結破損の原因ともなるので、グ
リコール水溶液等の不凍液を使用せざるを得なかった。
しかし不凍液は粘度が高く、ポンプ動力の増大や熱交換
器の熱伝導率の低下を招き、ヒートポンプシステムのエ
ネルギー効率を低下させていた。
【0051】本発明では、冷媒蒸発器27を氷蓄熱可能な
蓄冷槽23に熱的に結合するので、凍結破損のおそれがな
く、また水を溶かした0℃に近い低温冷水により土壌か
らの効率的な採熱を行なうことができる。そのため不凍
液利用のようなエネルギー効率の低下を生じない。
【0052】
【実施例】本発明では基本的にはセンターヒートポンプ
が不要である。しかし人口密集地域等では熱負荷密度も
大きくなり、地域配管2に接続する熱負荷が大きいにも
拘わらず地域配管2が短いため、土壌との熱交換のみで
は熱量が不足することもある。また、排熱や自然エネル
ギー等の未利用熱を積極的に導入して運転効率を改善し
たいこともある。本発明による地域冷暖房システムで
は、こうした要求にも容易に答えることができる。
【0053】図2の実施例では、地域配管2の系統中に
未利用熱と熱的に結合した熱源Uを配置することによ
り、地域配管2の水を介して未利用熱を各ヒートポンプ
装置1a、1bに供給している。こうした熱源Uに用いる未
利用熱には、水温を上げるもの(採熱源)としてごみ焼
却排熱、発電排熱、工場からの排熱、地下鉄・地下街の
排熱、地中送電線からの熱、太陽熱集熱器などがあり、
他方水温を下げるもの(放熱源)として蒸発池や冷却塔
などがある。また採熱と放熱の両方に有効な未利用熱と
して、河川水や湖沼水、下水、井水、海水等がある。
【0054】未利用熱の種類により熱源Uの内部構造は
異なるが、基本的には地域配管2と熱交換関係になるた
め、図2では簡略に表現している。また自然熱源を吸・
放熱源として利用する場合は、例えば地域配管2を湖沼
の底に沈めるだけで実現できる。従って未利用熱の利用
に際し、従来の地域冷暖房システムのように排熱幹線等
の特別の配管は不要である。未利用熱源に代えて一般的
な熱源施設、例えばボイラー等の加熱装置や冷凍機等の
冷却装置、あるいは加熱・冷却機能を持つヒートポンプ
等であっても、熱源Uとして図2のように組み合わせる
ことが可能である。
【0055】レジャー施設等を熱源Uとすることも可能
である。例えば、温水プールの加熱に地域配管2の水を
吸熱源とするヒートポンプを用いれば、地域配管2の水
の温度を下げることになる。これにより熱負荷側の氷蓄
熱ヒートポンプ装置1aの冷媒凝縮温度を下げてCOPを
改善できる。逆に冬期には、スケートリンクの冷凍機排
熱を地域配管2の水に与えて水温を上げれば、熱負荷側
の氷蓄熱ヒートポンプ装置1aの冷媒蒸発温度を上げてC
OPを改善することになる。
【0056】また、地域配管2に温熱出力ヒートポンプ
装置と冷熱出力ヒートポンプ装置とが接続されている場
合は、温熱出力ヒートポンプ装置が吸熱する一方で冷熱
出力ヒートポンプ装置から放熱することにより、熱回収
が容易に実現できる。
【0057】給湯や暖房は地域配管2の水から採熱する
(水温を下げる)ことであり、冷房や冷蔵は地域配管2
の水に放熱する(水温を上げる)ことであるため、こう
した正負の熱需要が同時に発生すれば熱回収が成立した
ことになる。例えば夏期に冷房の排熱を給湯ヒートポン
プの吸熱源に使う場合のみならず、冬期に冷蔵用冷凍機
の排熱を暖房用に吸熱する場合にも同様に熱回収を実現
することができる。
【0058】図1(A)及び図2(A)に示す地域配管
2aは、循環水ポンプ(地域配管ポンプ)5により需要家
全体へ配水するものであり、地域冷暖房では一般的な配
管方式である。同図において、各需要家のヒートポンプ
1a、1bへの取水は弁7aにより調整することができる。ま
た同図では、各ヒートポンプが均一な条件となるよう
に、地域配管2aをリバースリターン方式(reverse retu
rn system)としている。ただし本発明はリバースリタ
ーン方式の地域配管2aに限定されない。
【0059】しかし図1(A)及び図2(A)の地域配
管2は、一般的にはセンタープラントより各熱負荷へ分
配するもので、熱負荷の数や配置が確定的な場合は合理
的な配管計画が可能であるものの、竣工後の熱負荷数の
増減に対する変更の自由度が低い問題がある。また地域
配管2の往き水路3と帰り水路4とに一定の圧力差をか
けるために循環水ポンプ5の動力が大きく、暖冷房の不
要な中間期や休日等で各熱負荷33のヒートポンプ装置1
a、1bの停止が多い場合でも循環水ポンプ5を止めるこ
とができないため、ポンプ動力の年間消費量が多いとい
う問題もある。
【0060】本発明による地域冷暖房システムでは土壌
も熱源にできるため、熱源の位置は地域配管2の全体に
分散されていることになる。この特性を生かすために、
ポンプ配水方式を改良したものが図1(B)、図2
(B)及び図3のシステムである。図1(B)及び図2
(B)は、循環水ポンプ5に代えて、各需要家への引込
ポンプ9のみを設けたシステムである。ただし逆流防止
弁7bが必要である。また図3の地域配管2bは1本の環状
エンドレス水路からなり、そこを循環する水を引込ポン
プ9によりヒートポンプ装置1a、1bヘ引き込むものであ
る。図3の地域配管2bでは、ボイラーや冷凍機からなる
センター熱源施設、または排熱や自然熱などの未利用熱
源である熱源Uを環状エンドレス水路上の何処に結合し
ても良い。
【0061】地域配管2a、2bの内径を大きくすれば流速
が低く(例えば1m/s以下に)なるため、循環水ポンプ
5には低揚程の軸流(プロペラ)ポンプ等を用いて動力
を減らすことが可能になる。図1(B)、図2(B)及
び図3では、各熱負荷の引込ポンプ9をヒートポンプ装
置1a、1bに連動して発進・停止させれば、ポンプ動力の
浪費を抑えることができる。
【0062】図3の地域配管2bはゆったり流れる川に例
えることができ、各熱負荷ではここから必要に応じて地
域配管2の循環水を引き込むことになるため、熱負荷の
増減に対応し易く、施設の拡張性が高まる。
【0063】図4に例示するように、地域配管2bと引込
管6との接続部は、工事とメンテナンスの容易化の観点
からマンホール16内に設けることができる。地域配管2b
と引込管6との接続は、図4のように、引込管6の引込
水路7を地域配管2bの取水点に上流側へ向けて開口させ
ることにより取水し、引込管6の戻し水路8を前記取水
点より下流の戻し点に下流側へ向けて開口させることに
より排水するような簡単な構造とすることができる。図
中の符号7a、8aは、工事やメンテナンス時に水路7、8
を閉鎖する弁である。
【0064】図5の氷蓄熱ヒートポンプ装置1aでは、暖
房・冷房切り替えのため、蓄冷槽23の冷水24の出口に受
入用熱交換器30に接続可能な弁V1と負荷熱交換器28に接
続可能な弁V3を設け、冷水24の戻り口に受入用熱交換器
30に接続可能な弁V2と負荷熱交換器28に接続可能な弁V4
を設けている。弁V1〜V4によって冷水切換弁装置である
冷熱搬送媒体切替装置51を形成する。
【0065】また、温水熱交換器21の温水22の出口に受
入用熱交換器30に接続可能な弁V5と負荷熱交換器28に接
続可能な弁V7を設け、温水22の戻り口に受入用熱交換器
30に接続可能な弁V6と負荷熱交換器28に接続可能な弁V8
を設けている。弁V5〜V8によって温水切換弁装置である
温熱搬送媒体切替装置50を形成する。
【0066】暖房運転では、温熱搬送媒体切替装置50の
弁V7及びV8を開放すると共に弁V5及びV6を閉鎖し、冷熱
搬送媒体切替装置51の弁V1及びV2を開放すると共に弁V3
及びV4を閉鎖する。こうして、温水22を温水熱交換器21
と負荷熱交換器28との間で循環させると共に、冷水24を
蓄冷槽23と受入用熱交換器30との間で循環させる。
【0067】冷房運転では、温熱搬送媒体切替装置50の
弁V7及びV8を閉鎖すると共に弁V5及びV6を開放し、冷熱
搬送媒体切替装置51の弁V1及びV2を閉鎖すると共に弁V3
及びV4を開放する。こうして、温水22を温水熱交換器21
と受入用熱交換器30との間で循環させると共に、冷水24
を蓄冷槽23と負荷熱交換器28との間で循環させる。
【0068】図5では省略されているが、熱負荷33側に
温熱蓄熱装置を設けたり建物躯体に蓄熱することによっ
て、ヒートポンプ装置1aの運転を夜間主体にすることも
可能である。こうして暖房でも安価な夜間電力を利用す
ることができる。ただし本発明で用いるヒートポンプ装
置1a、1bは暖房・冷房切替可能なものに限定されず、暖
房専用又は冷房専用のヒートポンプ装置とすることがで
きる。
【0069】さらに図5の実施例では、受入用熱交換器
30の水をそのまま負荷熱交換器28へ流す弁(V9、V10)
を設けている。本発明では地域配管2の水温が地温に近
いことから、ヒートポンプ装置1a、1bを介さず(加熱や
冷却せず)に直接利用することも考えられる。例えば、
空調では一定の新鮮外気を導入する必要があるが、冬期
には新鮮外気の予熱に、また夏期には新鮮外気の予冷
に、地域配管2の水を直接利用することができる。中間
期には、地域配管2の水をそのまま冷房に用いることも
可能である。例えば軽負荷の冷房時には、弁V9、V10を
開放すると共に、冷熱搬送媒体切替装置51の弁V1〜V4と
温熱搬送媒体切替装置50の弁V5〜V8を閉鎖することによ
り、負荷熱交換器28の空調コイル(空気熱交換器)にお
いて土壌熱を直接利用することができる。
【0070】図9は、建物などの熱負荷施設の内部に、
氷蓄熱ヒートポンプユニット20を分散配置した実施例を
示す。同図では、熱負荷施設内を循環する水配管系であ
る分岐管路53、54を受入用熱交換器30に接続し、その分
岐管路53、54に複数の氷蓄熱ヒートポンプユニット20を
接続している。各階やゾーンまたはテナント毎に氷蓄熱
ヒートポンプユニット20を配置すれば、個別制御性が良
好になる上に電力使用量に基づいた課金の便も生ずる。
図中の符号52は、膨脹タンクを示す。
【0071】なお氷蓄熱ヒートポンプユニット20とは、
図5の点線内の部分を指す。各ユニット20毎の単独の受
入用熱交換器30は持たず、代わりに施設内水循環系全体
で単一の受入用熱交換器30を共有することになる。空調
コイル(空気熱交換器)部分は、エアハンドリングユニ
ットとして別置きするのが普通である。
【0072】図7は、水と冷媒の直接接触で製氷する氷
蓄熱ヒートポンプユニット20d(以下、直膨直接製氷蓄
熱システムということがある。)を用いたヒートポンプ
装置1aを示す。通常の氷蓄熱システムには、一般的に、
製氷時の冷媒蒸発温度が−10℃前後と低いため運転性能
が低く、製氷用機器の価格が高いことから装置価格が安
価にできず、さらに蓄熱(貯氷)槽と冷凍機を別置する
ため設置面積が大きいという問題点がある。これに対し
直膨直接製氷蓄熱システムによれば、これらの問題点が
解決できるだけでなく、以下に述べる理由から本発明の
有用性を高めることが可能になる。
【0073】(i)本発明では温熱を製氷により得るこ
とから、加熱能力と成績係数の面で製氷運転時の冷媒蒸
発温度が低くならないことが望ましい。直膨直接製氷で
は直接接触熱交換を行うため、冷媒蒸発温度を−3〜−
1℃程度と相対的に高くでき、これは外気温度が7℃に
おける空気熱源ヒートポンプの冷媒蒸発温度に近い。因
みに通常の氷蓄熱では−10℃前後まで下がるため、加熱
能力と成績係数の低下が顕著である。
【0074】(ii)製氷用の熱交換器が不要となるた
め、コストダウンが可能である。
【0075】(iii)直膨直接製氷蓄熱システムでは、
冷凍サイクルと蓄冷槽を一体的に製作することにより設
置面積を小さくできる。このことは本発明による地域冷
暖房の実用性を高めるうえで重要になる。従来の地域冷
暖房では需要家の受け入れ設備は熱交換器とポンプ程度
であり、設置面積の小さいことが利点であった。そのた
め本発明による地域冷暖房においても、需要家側の設備
を小さくすることが望ましい。
【0076】図7のヒートポンプユニット20dは暖房と
冷房に用いることができる。暖房運転では、蓄冷槽(断
熱貯氷槽)23内で製氷または水の冷却により冷媒を蒸発
させ、この蒸気冷媒を冷媒圧縮機35で圧縮し、冷媒凝縮
器26からの温熱を負荷熱交換器28へ送って暖房(または
給湯等)に用いる。そして本発明では、地域配管2から
の熱は蓄冷槽23内の氷を融かし冷水温度を上げるために
利用される。また冷房運転では、冷媒の蒸発により蓄冷
槽(断熱貯氷槽)23内で製氷しまたは水を冷却し、この
冷熱を冷房(または冷蔵等)に用いる。気化した冷媒は
圧縮機35を経て冷媒凝縮器26に至り、ここで凝縮して熱
を放出し、本発明ではこの熱を地域配管2に棄てる。な
お、図7の温熱搬送媒体切替装置50及び冷熱搬送媒体切
替装置51の弁切替方法は、図5について説明した方法と
同様である。
【0077】図示例の直膨直接製氷蓄熱システムは、蓄
冷槽23の冷水を地域配管2の水又は負荷熱交換器28と熱
交換する冷水熱交換器46を有し、冷水熱交換器46からの
戻り冷水と冷媒凝縮器26からの戻り冷媒とを直接接触さ
せ、蓄冷槽23内のノズル38から噴出することにより、水
との直接の接触下で冷媒を蒸発させる。この場合、圧縮
機35を運転して蓄冷槽23内を減圧し、そこに冷媒液と水
との混合液をノズル38から散布することにより製氷する
ものである。蒸発後の冷媒は圧縮機35に吸引して冷凍サ
イクルに戻す。図中、符号39はシャーベット状の氷を示
す。直膨直接製氷蓄熱システムの詳細は特許第2060647
号に記載されている。
【0078】ただし、本発明に用いる直膨直接製氷蓄熱
システムも、地域配管2の水を蓄冷槽23又は冷媒凝縮器
26と熱的に結合するものであれば足り、機器・配管構成
は図7の例に限定されない。また制御装置等は本発明に
とって本質的ではないため図には省略している。
【0079】図8は、図7の暖房・冷房機能に加えて、
さらに除湿機能を付加した直膨直接製氷蓄熱ヒートポン
プユニット20eの実施例を示す。本発明では冷熱が常に
蓄冷槽23内に貯蔵されており、また温熱は圧縮機35を運
転することにより容易に得られるため、これを生かした
温熱と冷熱の同時利用を図るものである。
【0080】図8で除湿運転をする場合は、温熱搬送媒
体切替装置50の弁V7及びV8を開放すると共に弁V3及びV4
を閉鎖し、冷熱搬送媒体切替装置51の弁V1及びV2を閉鎖
すると共に弁V5及びV6を開放する。こうして、温水22を
温水熱交換器21と負荷熱交換器28の加熱コイル48との間
で循環させると共に、冷水24を蓄冷槽23と負荷熱交換器
28の冷却コイル49との間で循環させる。すなわち冷却コ
イル49で空気を冷やし除湿し、このままでは空気温度が
下がり過ぎる場合には加熱コイル48で温度を上げて調整
(再熱)する。この温熱と冷熱の同時利用は、例えば冬
期においてペリメータ(窓や外壁近傍)部では暖房を必
要としインテリア部では冷房を必要とする場合などにも
適用することができる。
【0081】なお図9に示すように、建物などの熱負荷
施設内に直膨直接製氷蓄熱ヒートポンプユニット20d、2
0eを分散配置することができる。特に直膨直接製氷蓄熱
システムは設置面積を小さくできるので、小型の氷蓄熱
ヒートポンプにより個別制御性に優れた分散型熱源シス
テムを容易に構成することが可能である。
【0082】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
る分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房システム
は、とくに所定地域に分散した氷蓄熱ヒートポンプ装置
により、当該所定地域の地下に土壌と熱的に結合して設
けた地下地域配管の水から吸熱した温熱又は該地域配管
の水へ放熱した冷熱を熱負荷へ供給するので、次の顕著
な効果を奏する。
【0083】(イ)従来の地域冷暖房施設では、熱源装
置(冷凍機、ボイラー、ヒートポンプ等)の故障が全体
システムに影響を及ぼすため、熱源装置の信頼性を上げ
ることが重要であり、場合によっては2重の設備にする
必要があった。本発明では、熱源装置が各需要家に分散
されるため、熱源機器の故障や修理・点検が全体システ
ムに影響を与えることはない。
【0084】(ロ)熱負荷側には屋外機や冷却塔が不要
であり、また氷蓄熱とすることによって装置が小型化で
きるので、建物の美観及び景観を損なうおそれがない。
【0085】(ハ)氷蓄熱ヒートポンプ装置の製氷運転
を夜間主体とすることにより、安価な夜間電力利用と電
力負荷の平準化が可能になる。
【0086】(ニ)氷蓄熱ヒートポンプ装置の分散配置
により地域配管の熱負荷平準化が図れるので、負荷ピー
クのために地域配管の内径や循環水ポンプのポンプ動力
を大きくする必要がない。
【0087】(ホ)従来の地域冷暖房は、暖房と冷房に
温水(または蒸気)配管と冷水配管を用いる2系統4管
式であるため、施設費が高かった。本発明では1系統の
地域配管で暖冷房および給湯が行えるため、施設費を低
く押えることができる。
【0088】(ヘ)従来の地域冷暖房方式では温水供給
温度を最も高温の熱負荷に合わせる必要があったのに対
し、本発明は熱負荷毎に分散型ヒートポンプ装置によっ
て必要な温度の熱を得る方式のため、こうした無駄は生
じない。
【0089】(ト)熱負荷からの排熱を地域配管に戻す
ので、熱回収が容易に実現できる。
【0090】(チ)従来の地域冷暖房施設では、ランニ
ングコストの分担のため、熱負荷毎の消費熱量をカロリ
ーメーター等で計測する必要があるなど料金の請求(課
金)が煩雑であった。これに対し本発明では、冷暖房セ
ンタープラントのランニングコストが発生しないので、
従量料金は需要家各自の電力料金として払えば足り、課
金の問題も少ない。施設費などの固定費は安価な定額に
できる。
【0091】(リ)従来の地域冷暖房では、地域配管の
断熱が必要であり、さらにこれを洞道(トンネル)内に
設置する必要があるなどの理由から施設費が高かったの
に対し、本発明は地域配管には断熱が不要であり、しか
も土壌中に直埋設するため、配管設置の施設費を低く抑
えることができる。
【0092】(ヌ)従来の土壌熱源ヒートポンプでは、
埋設コストと設置面積などの地中熱交換器に係わる間題
が大きかったのに対し、本発明は地域配管を地中熱交換
器として用いるので、こうした問題を解決する。
【0093】(ル)地域配管中の保有水量が大きいた
め、地域配管の水を震災等の非常時の給水や消防用水に
転用できる。
【0094】(ヲ)従来の地域冷暖房では、排熱や自然
熱等所謂未利用熱を利用するためには熱供給幹線とは別
の排熱幹線が必要であった。本発明では熱供給配管を排
熱配管と兼用できるため、配管施設費を大幅に低減す
る。
【0095】(ワ)排熱や自然熱が得られない場合は、
従来型の熱源(ボイラー、冷凍機、ヒートポンプ等)で
補うことも容易に実施できる。
【0096】(カ)氷蓄熱ヒートポンプを水と冷媒の直
接接触製氷蓄熱とすることで、安価で運転効率に優れ、
設置面積の小さな設備が実現できる。
【0097】(ヨ)地域配管を環状エンドレス水路とす
れば、熱源装置または未利用熱源などの熱源を地域配管
ルート上に自由に配置することができる。環状エンドレ
ス水路の地域配管は、需要家数の増加や減少に対応し易
く、地域配管の循環水ポンプの動力を小さく押えること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明による地域冷暖房システムの一実施
例の説明図である。
【図2】は、熱源を付加した本発明の地域冷暖房システ
ムの説明図である。
【図3】は、地域配管を環状エンドレス水路とした本発
明の地域冷暖房システムの説明図である。
【図4】は、図3の環状エンドレス水路と引込管との接
続部を示す説明図である。
【図5】は、本発明で用いる氷蓄熱ヒートポンプ装置の
ブロック図である。
【図6】は、水熱源ヒートポンプ装置のブロック図であ
る。
【図7】は、本発明で用いる直接接触製氷蓄熱ヒートポ
ンプ装置のブロック図である。
【図8】は、暖冷房および除湿を行なう氷蓄熱ヒートポ
ンプ装置のブロック図である。
【図9】は、複数の氷蓄熱ヒートポンプユニットを用い
た分散型熱源システムのブロック図である。
【図10】は、センタープラントで製氷した氷スラリー
を各需要家の氷蓄熱槽まで搬送する従来の地域冷暖房シ
ステムの説明図である。
【図11】は、未利用熱を排熱幹線でセンタープラント
に集めて利用する従来の地域冷暖房システムの説明図で
ある。
【符号の説明】
1a…氷蓄熱ヒートポンプ装置 1b…水熱源ヒートポンプ装置 2…地域配管 3…往き水路 4…帰り水路 5…循環水ポンプ 6…引込管 7…引込水路 7a…弁 7b…逆流防止弁 8…戻り水路 8a…弁 9…引込ポンプ 11…引込水路 12…戻り水路 13…引込ポンプ 15…引込管接続部 16…マンホール 17…蓋 20…ヒートポンプユニット 20a…氷蓄熱ヒートポンプユニット 20b…水熱源ヒートポンプユニット 20d…直膨直接製氷蓄熱ヒートポンプユニット 20e…冷温熱同時供給型氷蓄熱ヒートポンプユニット 21…温水熱交換器 22…温水 23…蓄冷槽(断熱貯氷槽) 24…冷水 25…冷凍サイクル 26…冷媒凝縮器 27…冷媒蒸発器 28…負荷熱交換器 30…受入用熱交換器 33…熱負荷 34…室内空気流 35…冷媒凝縮器 36…冷媒膨脹弁 36a…トラップ 37…冷媒配管 38…ノズル 39…シャーベット状氷 40…温水ポンプ 41…温水配管 42…負荷側ポンプ 43…熱源側ポンプ 44…冷水ポンプ 44a…冷水ポンプ 45…冷水配管 45a…冷水配管 46…冷水熱交換器 47…四方弁 48…加熱コイル 49…冷却コイル 50…温熱搬送媒体切替装置 51…冷熱搬送媒体切替装置 52…膨脹タンク 53…分岐往路 54…分岐復路 60…センタープラント 61…センターヒートポンプ装置 62…スクリューコンベアー 63…氷搬送ポンプ 64…還水槽 65…製氷ポンプ 66…氷水配管 67…還水配管 68…氷蓄熱槽 69…還水ポンプ 70…センター蓄熱槽 71…未利用熱源 72…排熱幹線 73…冷水・温水幹線 74…サブステーション 75…熱負荷 G…土壌 E…地盤 U…熱源 V…切替弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F28D 20/02 F28D 20/00 C (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F25B 27/00 F25B 13/00 F25B 29/00 F24D 11/02 F28D 20/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】冷凍サイクルの冷媒凝縮温熱又は冷媒蒸発
    冷熱を出力するごとく所定地域に分散し且つ前記冷熱を
    氷として蓄熱可能な蓄冷槽を有する複数のヒートポンプ
    装置、前記所定地域の地下を土壌と熱的に結合しつつ貫
    通する往復水路からなる地域配管、及び前記往復水路と
    前記ヒートポンプ装置の各々とを接続する引込管を備
    え、前記土壌と熱交換した地域配管の水を前記ヒートポ
    ンプ装置と熱的に結合し、前記温熱の需要が前記地域配
    管からの採熱を上回るヒートポンプ装置では前記蓄冷槽
    での製氷により前記採熱を補い、前記冷熱の需要が前記
    地域配管への放熱を上回るヒートポンプ装置では前記蓄
    冷槽に貯蔵した冷熱により前記放熱を補うことにより前
    記地域配管の熱負荷を平準化してなる分散型ヒートポン
    プ装置による地域冷暖房システム。
  2. 【請求項2】請求項1の地域冷暖房システムにおいて、
    前記地域配管を熱源装置及び/又は未利用熱源と熱的に
    結合してなる分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房
    システム。
  3. 【請求項3】冷凍サイクルの冷媒凝縮温熱又は冷媒蒸発
    冷熱を出力するごとく所定地域に分散し且つ前記冷熱を
    氷として蓄熱可能な蓄冷槽を有する複数のヒートポンプ
    装置、前記所定地域の地下を土壌と熱的に結合しつつ貫
    通する環状エンドレス水路からなる地域配管、前記エン
    ドレス水路内に水を循環させる循環水ポンプ、及び前記
    ヒートポンプ装置の各々に対し前記エンドレス水路の対
    応取水点から取水して該取水点の下流に排水する引込管
    を備え、前記地域配管の水量を前記引込管の水量より充
    分大きくし、前記地域配管の水の熱を前記ヒートポンプ
    装置に与え、前記温熱の需要が前記地域配管からの採熱
    を上回るヒートポンプ装置では前記蓄冷槽での製氷によ
    り前記採熱を補い、前記冷熱の需要が前記地域配管への
    放熱を上回るヒートポンプ装置では前記蓄冷槽に貯蔵し
    た冷熱により前記放熱を補うことにより前記地域配管の
    熱負荷を平準化してなる分散型ヒートポンプ装置による
    地域冷暖房システム。
  4. 【請求項4】請求項3の地域冷暖房システムにおいて、
    前記環状エンドレス水路を熱源装置及び/又は未利用熱
    源と熱的に結合してなる分散型ヒートポンプ装置による
    地域冷暖房システム。
  5. 【請求項5】請求項1から4の何れかの地域冷暖房シス
    テムにおいて、前記地域配管と土壌、熱源装置及び/又
    は未利用熱源との熱的結合により前記地域配管内の水温
    を土壌温度±10K以内に保ってなる分散型ヒートポンプ
    装置による地域冷暖房システム。
  6. 【請求項6】請求項1から5の何れかの地域冷暖房シス
    テムにおいて、前記地域配管を可撓管により形成してな
    る分散型ヒートポンプ装置による地域冷暖房システム。
  7. 【請求項7】請求項1から6の何れかの地域冷暖房シス
    テムにおいて、前記ヒートポンプ装置に、冷凍サイクル
    の冷媒液を水との直接接触下で蒸発させることにより氷
    が含まれるか又は含まれない冷水を生成する冷媒蒸発
    器、及び冷凍サイクルの圧縮の際に前記蒸発後の冷媒を
    吸引する圧縮機を設けてなる分散型ヒートポンプ装置に
    よる地域冷暖房システム。
  8. 【請求項8】請求項1から7の何れかの地域冷暖房シス
    テムにおいて、前記ヒートポンプ装置に、前記蓄冷槽の
    冷熱を選択的に前記引込管又は熱負荷へ接続する冷熱搬
    送媒体切替装置、及び冷媒凝縮温熱を選択的に前記熱負
    荷又は引込管へ接続する温熱搬送媒体切替装置を設け、
    前記熱負荷へ冷熱搬送媒体及び温熱搬送媒体の一方又は
    双方を接続することにより温熱・冷熱の一方の供給又は
    双方の同時供給を可能としてなる分散型ヒートポンプ装
    置による地域冷暖房システム。
  9. 【請求項9】請求項8の地域冷暖房システムにおいて、
    前記ヒートポンプ装置に前記引込管を選択的に熱負荷へ
    直接接続するバイパスを設け、前記地域配管の水の熱を
    熱負荷へ直接供給可能としてなる分散型ヒートポンプ装
    置による地域冷暖房システム。
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