JP3031760U - 水切り用ガセット付きブーツ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 タングの側部から水や雪等が侵入しないよう
に、背の高いタングの前面略全高にわたって覆うガセッ
トを取りつけることができるようにすること。 【解決手段】 ロアーシェル１と一体のアッパーシェル
２が高く、そのアッパーシェル２に合わせてタング３も
高くなっているブーツ４に、変形自在な防水性のある水
切り用ガセット５を、タング３の前面略全高を覆いタン
グ３が大きく前傾できるように展延可能な一枚シートと
して取りつける。ガセット５は、その両側端５ａ，５ａ
がアッパーシェル２の左右内面に取りつけられると共
に、前端５ｂはタング３の基端部３ａの上面全幅にわた
って一体化された柔軟性のあるブーツ。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は水切り用ガセット付きブーツに係り、詳しくは、ブーツシェルがロア ーシェルとアッパーシェルからなり、タングの前面にその略全高を覆った水切り 用ガセットを取りつけたシングル型ブーツに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

雪上スポーツ等には、その運動に対する機能性と安全性等を考慮して長靴（ブ ーツ）がしばしば使用される。ブーツはよく知られているように、足の入るロア ーシェル部と踝（くるぶし）から上の下脚部を包み込むアッパーシェル部とから なる。そして、ロアーシェル部およびアッパーシェル部の開口を覆うように、甲 皮（甲被：タングともいう）が取りつけられている。

【０００３】 上記したブーツは、スキーやスノーボードに使用されることが多い。タングは 足の甲から下脚部前面に密着させた後にアッパーシェル等との間に掛け渡した靴 紐で縛りつけたりベルトをバックル掛けして固定されるが、雪上で転倒したとき などには、タングの隙間からしばしば雪や水が侵入する。これを防止するため、 ブーツ前面を覆うアタッチメントと後面を覆うアタッチメントとをブーツに固定 し、脚部を保護すると共に異物の侵入を防止することができるようにしたスキー 靴の例が、意匠第６７１，９０２号に表されている。

【０００４】 また、意匠第６５５，８２８号には、アッパーシェルの後面部に縫いつけたカ バーシートを左右側面に沿って前方まで巻きつけ、紐掛けにより固定されている タングの前面を覆うようにしたスキー靴の例が記載されている。しかし、いずれ の例もブーツの外に雪よけの類が爾後的に取りつけられ、デザイン面からの配慮 が施されなければ見栄えを損いやすいという難点がある。

【０００５】 ちなみに、雪上スポーツで使用されるブーツは、アッパーシェルとロアーシェ ルとで構成したインナーブーツと、略同様の構造のアウターブーツとからなる二 重構成とすること（ダブルブーツ）によって、水密性・保温性の向上を図ってい ることが多い。これはインナーブーツを履いて紐を締め、さらにアウターブーツ をその上から履いて紐を締める。アウターブーツを越えて水や雪等が入ることは 避けられないが、アウターブーツとインナーブーツとの間で止まるので、インナ ーブーツの中まで入ってくることはない。しかし、ダブルブーツは履く操作に二 度の手間を要するので、保温性はもちろんのこと安全性や水密性等が確保される ならば、運動性と履きやすさの観点からシングルブーツが好ましい。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上記したごとくタングの左右の隙間から水等が入るのを防止するた め、水切り用ガセットを設けたシングルシューズがある。例えば短靴（くるぶし 以下の高さのシューズ）を製造する場合セメンティッド圧着法が採用されるが、 短靴ゆえに背の低い足型（ラスト）が使用され、最終工程近くでラストを抜き取 ることは容易である。したがって、水切り用のガセットをタングの全側縁に沿っ て設けておいても製造上差し支えの出ることはほとんどない。靴を履くためにタ ングを少し持ち上げてもタングとシューズ内面を繋ぐ左右二つのガセットを拡げ ることができ、また、展開面積の大きくないガセットは靴紐を掛けるとき小さく 折り込むことができ邪魔になることもない。しかし、短靴であるがゆえにガセッ トは背の低いものになることが避けられず、小石等がガセットを越えて入ってく ることはしばしば経験するところである。

【０００７】 上記のセメンティッド圧着法によってブーツも製造されることがある。この場 合、圧着するのは足の甲から下の部分であるので、ラストは背の低いものが使用 される。したがって、アッパーシェルがあってもラストは簡単に抜きとることが できる。しかし、背の高いタングの全側縁に沿ってガセットを取りつけるとタン グを大きく前傾させることに制約が生じ、背の低いラストといえども抜き取るこ とが厄介となる。なぜなら、大きくタングを前傾できるようにガセットの展延量 を大きくとると、タング側方にガセットを格納するとき嵩張って見栄えも履き心 地も悪くなるので、展延量の少ないガセットが取りつけられることになるからで ある。それゆえ、ラストの取り去りを考慮すると、ガセットの長さをタングの高 さのせいぜい半分もしくはそれ以下として、展開したときは小さい二つの三角形 をなす面積の狭いものとせざるを得ない。その結果、山岳地帯での使用において は、水，雪，土，小石等が背の低いガセットを越えて入ってくるのは避けられな い。

【０００８】 ブーツにシュパッツを被せていることを見かけるのは、水等の侵入を阻止する ためであるが、ガセットがシュパッツに隠されて水切りとしてはほとんど機能せ ず、無用の長物と化していることが多い。なお、タングの全側縁に沿ったガセッ トを採用したとすると、タングを立てたときタングの側縁とアッパーシェルの内 面の縫いつけ部との僅かな隙間にガセットを細かく畳み込むか押し込んで格納す ることになる。したがって、ガセットとしては極めて薄いものを使用せざるを得 ず、スポーツ用ブーツとしては耐久性の劣ったものとなりやすい難点がある。

【０００９】 ブーツの製造法として、ラストに素材を取りつけた後にアッパーモールドを被 せて仮止めし、加熱窯に入れてバルカナイズ（加硫）する方法もよく知られてい る。この場合にはブーツの高さに合わせた背の高いラストが使用されるので、水 切り用のガセットを設けておくとタングを大きく前傾させることができず、ラス トを抜き取ることができなくなる。したがって、本製造法によるときは、ブーツ にガセットを設けることができないのが通常である。

【００１０】 上記したようにブーツに何らかの方法によってタングに水よけもしくは水切り としてのガセットを設けていることはあるが、ガセットはタングの左の側縁とア ッパーシェルの左内面とにわたって、および右の側縁と右内面とにわたって取り つけられた構造となっている。これは、ブーツの外観美を損なわせないための配 慮によるが、それによって上記した弊害が発生し、機能性と外観美を適度なとこ ろで妥協せざるを得なくなる欠点がある。

【００１１】 本考案は上記した背景に鑑みなされたもので、その目的は、タングの側部から 水や雪等が侵入しないように、背の高いタングの前面略全高にわたって覆うガセ ットを取りつけることができるようにすること、それによってダブルシューズ構 造とすることなくシングルブーツとして履きやすくすること、製造方法の如何に よらずラストを簡単に取り出しやすくできることを実現した水切り用ガセット付 きブーツを提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】

本考案は、ロアーシェルと一体でくるぶしから上の下脚部を包み込む部分を形 成するアッパーシェルが高く、該アッパーシェルに合わせてタングも高くなって いるブーツに変形自在な防水性のある水切り用ガセットを取りつけ、雪上スポー ツ等に好適としたシングル型ブーツ適用される。その特徴とするところは、図１ を参照して、タング３の前面略全高を覆い、タング３が大きく前傾できるように 展延可能な一枚シートのガセット５が取りつけられる。そのガセット５はタング ３を立てると、図４のように前面に沿うように密着させることができ、図２のよ うに靴紐６を掛けるに先だって、タング３の側部とアッパーシェル２との間で折 り込んで格納できるように柔軟性のあるものが採用される（図５を参照）。ガセ ット５の両側端５ａ，５ａはアッパーシェル２の左右内面に取りつけられると共 に、前端５ｂはタング３の基端部３ａの上面全幅にわたって一体化され、タング ３は前面から見て上端部分を除きガセット５から露出しないようにしたことであ る。

【００１３】 なお、靴紐６を掛けるための非金属製のループフック１４を、ブーツ４に取り つけるようにしておいてもよい。

【００１４】

【考案の効果】

本考案によれば、防水性のある水切り用ガセットの両側端がアッパーシェルの 左右内面に、前端はタングの基端部上面の全幅にわたって一体化されるように取 りつけられるので、ガセットは上端部分を除いたタングの前面略全高を覆うこと ができる。したがって、シングル型ブーツでありながら雪や水さらには小石や土 がガセットを越えてタングに侵入することは阻止され、タングの隙間から異物が 入るのを防止することができる。また、ガセットは大きく展延可能な一枚シート であり、タングを大きく前傾させることができる。したがって、製造時に使用さ れるラストが高くても、ガセットを拡げタングを大きく前傾させてラストの取り 出しが可能となる。さらには、ガセットは柔軟性があってタングを立てると前面 に沿うように密着し、靴紐を掛けるときタングの側部とアッパーシェルとの間で 折り込み格納できるので、ブーツの外観美が損なわれることもない。

【００１５】 靴紐を掛けるためのループフックをブーツに取りつけておくと、靴紐を通す操 作が極めて容易となる。しかも、非金属製であり靴紐とフックの密着性と僅かと いえども相互の伸びによる締めつけ力の増大が図られ、ブーツが足にフィットし やすく、また、ソフトな見栄えとなる。

【００１６】

【考案の実施の形態】

以下に、本考案に係る水切り用ガセット付きブーツを、その実施の形態を表し た図面をもとに詳細に説明する。図２は本考案が適用されたスノーボードシュー ズであり、主として足を入れるロアーシェル１，くるぶしから上の下脚部を覆う アッパーシェル２，ロアーシェル１の上部開口やアッパーシェル２の前面開口を 塞ぐタング３からなるシングル型ブーツ４となっている。ちなみに、ロアーシェ ル１とアッパーシェル２はブーツ４を成形する時点で上下一体とされていること は言うまでもないが、タング３の基端部はアッパーシェル２の前甲部覆い２ａと 連続するように取りつけられる。

【００１７】 このブーツ４はロアーシェル１と一体のアッパーシェル２が下脚部を覆うよう に高く、アッパーシェル２に合わせてタング３も高くなっている。そして、図１ に示すように、変形自在な防水性のある水切り用ガセット５が取りつけられてお り、雪上スポーツ等に好適なように、すなわち、前面から見てタング３が上端部 分を除きガセット５から露出しないようにして、雪や水さらには小石や土等が入 らないように配慮されている。

【００１８】 そのガセット５は柔軟性のある一枚のシートで構成されてタング３の前面略全 高を覆い、仮想線で示したようにタング３が大きく前傾できるように、図３のご とくそれ自体単独で展延可能となっている。ガセット５は薄い合成皮革でもよい し防水処理の施された布でもよいが、ブーツ４を履いてタング３を立てたとき、 図４のように、その前面に沿うように密着させることができ、図２のように靴紐 ６を掛けるに先だってタング３の側部とアッパーシェル２との間で折り込み、図 ５のように格納できるようなものであればよい。

【００１９】 ガセット５のブーツ４への取付構造は、例えば図１に示すように、ガセット５ の両側端５ａ，５ａをアッパーシェル２の左右内面に取りつけ、図５のように前 端５ｂをタング３の基端部３ａの上面全幅にわたって取りつけた恰好となってい る。一例を詳しく述べれば、図１のように、ガセット５の両側端５ａ，５ａは、 後述するＵ字状金属フック１３を鳩目締結するための裏当て７（図５を参照）と アッパーシェル２の内面とに挟み込んだ状態で縫い糸８によって固定される。前 端５ｂは、図１のようにタング３の基端部３ａとアッパーシェル２の前甲部覆い ２ａとに挟み込んだ状態で縫いつけなどされる。すなわち、ガセット５は、タン グ３と前甲部覆い２ａとアッパーシェル２とを一体化するに先だって、タング３ と前甲部覆い２ａとの間に介装される。アッパーシェル２はその後に接着帯９と 踵（かかと）補強材１０とを用いてロアーシェル１と一体化される。なお、タン グ３の基端部３ａの左右端とアッパーシェル２との間に隙間が生じないようにも 配慮されることは述べるまでもない。

【００２０】 ちなみに、靴紐を省いた前面を表す図４のガセット５の上部位に破線の矩形が 表されているが、これは、ガセット５の裏面に張りつけられたマジックテープ片 １１Ａである。そして、タング３の前面の対応する箇所にもマジックテープ片１ １Ｂ（図１を参照）が取りつけられ、図２のように靴紐６を縛る前に図５のよう に密着させてガセット５の左右がおのずと略同等としやすいように配慮されてい る。これによって、図示したようにガセット５の折り畳み量が左右で不均等にな らないようにすることができる。なお、ガセット５の表面に上下へ延びるストラ イプは装飾的に付けられたテープ１２である。

【００２１】 図５では折り込み状態が二重に表されているが、図１のガセット５を見ても分 かるように、タング３を前傾させるために大きく展開するのはガセット５の上半 分である。そのため、ガセット５を折り畳むときは、二点鎖線で表したように横 から見ると上端部位では上下に延びる三角形５Ａをなして、図５の右側部分のよ うに上から見ると二重のひだ５Ｍとなる。一方、中部位から下方は、図示しない が、一重の単なるＵ字もしくはＶ字状となる。いずれにしても、折り込み空間５ Ｎ内でアッパーシェル２の内面とタング３の側面に沿って密着する。

【００２２】 上記した二重のひだ５Ｍは、通常そのＵ字状に折り返された先端５ｐ，後端５ ｑが折り込み空間５Ｎに丁度納まる。なお、ガセット５の展延量を非常に大きく とっている場合などでは、図５の左側部分のように前方で折り返された先端５ｒ を前方へ繰り出させば、折り込み空間５Ｎ内でガセット５が嵩張ることはない。 先端５ｒが前方へ繰り出されるとはいえ、それはアッパーシェル２の上部位のみ であり、Ｕ字状金属フック１３に掛けられた靴紐６（図２を参照）によって隠さ れ、見栄えを損なうようなことはない。

【００２３】 ところで、このブーツ４には、靴紐６を掛けるＵ字状をした金属製フック１３ のほかに、その下方には非金属製のループフック１４が適数個取りつけられてい る。このループフック１４にはナイロン等の布テープが採用され、通常の金属環 よりも靴紐６を通す孔を大きくしておくことができ、また起こすこともできる。 したがって、靴紐６を通す操作が極めて容易となるだけでなく、非金属製であっ て相互の伸びによる締めつけ力の増大により、靴紐６とループフック１４との密 着性が向上し、ブーツ４が足にフィットしやすく、またデザイン的にもソフトな 感じを与えて見栄えがよくなる。

【００２４】 以上述べた水切り用ガセット付きのブーツ４の構造としておくと、ガセット５ はタング３の前面略全高を覆うことができ、雪や水さらには小石や土がガセット ５を越えてタングに侵入することが阻止され、タング３の隙間から異物が入るの を防止することができる。ブーツはシングル型であり、ダブルブーツよりは格段 に低コストで製造が可能となる。スノーボードなどでは足首でボートを操るが、 シングルであるがゆえに操作もしやすいものとなる。

【００２５】 また、ガセット５は大きく展延可能な一枚シートであり、タング３を大きく前 傾させることができる。したがって、製造時に使用されるラストが高いものであ っても、ガセット５を拡げタング３を大きく前傾させると、ラストの取り出しが 容易となる。ガセット５は柔軟性があってタング３を立てると前面に沿うように 密着し、靴紐６を掛けるときタング３の側部とアッパーシェル２との間で折り込 んだ状態の格納ができるので、ガセット５がタング３にきっちりと重なり、図２ のようにブーツ４の外観も美麗なものとなる。

【００２６】 本構造の説明はスノーボードシューズを例にして述べたが、本考案はその他の 雪上や氷上スポーツで使用されるブーツにも適用することができる。また、ルー プフックは雪上スポーツ用のブーツ等に限らず、その他のシューズ例えばハイキ ングシューズ等にも使用することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案に係る水切り用ガセット付きブーツを
表した左側面図。

【図２】 ブーツに靴紐を掛けた外観側面図。

【図３】 ガセットを展延したブーツの斜視図。

【図４】 タングを立ててガセットを折り込んだ状態で
あって、靴紐を省いて描いたブーツの前面図。

【図５】 ガセットを折り込んだ状態の平面図。

【符号の説明】

１…ロアーシェル、２…アッパーシェル、３…タング、
３ａ…タングの基端部、４…ブーツ、５…ガセット、５
ａ…ガセットの側端、５ｂ…ガセットの前端、６…靴
紐、１４…ループフック。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ロアーシェルと一体でくるぶしから上の
   下脚部を包み込む部分を形成するアッパーシェルが高
   く、該アッパーシェルに合わせてタングも高くなってい
   るブーツに変形自在な防水性のある水切り用ガセットを
   取りつけ、雪上スポーツ等に好適としたシングル型ブー
   ツにおいて、 前記タングの前面略全高を覆い、タングが大きく前傾で
   きるように展延可能な一枚シートのガセットが取りつけ
   られ、 該ガセットは前記タングを立てると前面に沿うように密
   着させることができ、靴紐を掛けるに先だってタングの
   側部とアッパーシェルとの間で折り込んで格納できるよ
   うに柔軟性があり、 前記ガセットの両側端はアッパーシェルの左右内面に取
   りつけられると共に、前端は前記タングの基端部上面の
   全幅にわたって一体化され、 前記タングは前面から見て上端部分を除き前記ガセット
   から露出していないことを特徴とする水切り用ガセット
   付きブーツ。
2. 【請求項２】 前記ブーツには、靴紐を掛けるための非
   金属製のループフックが取りつけられていることを特徴
   とする請求項１に記載された水切り用ガセット付きブー
   ツ。