JP3020321B2 - 単原子堆積法 - Google Patents

単原子堆積法

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史朗 原
克信 青柳
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、単原子堆積法に関す
るものである。さらに詳しくは、超LSIの極微細化や
量子効果による新しいデバイスの創製を可能とする微細
加工の超精密化による単原子堆積結晶成長法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術とその課題】近年のLSI技術の急速な発
展とともに、結晶成長の精密化も急速に進展し、それと
ともに、原子層や分子層を一つづつ制御しつつ形成する
ための方法についても関心が高まり、様々な手段による
検討が精力的に進められてきている。しかしながら、超
LSIの極微細化や量子効果によるデバイスの創製の可
能が期待されている、原子レベルでの人為的制御が可能
な方法は、これまでのところ実現されてきていない。
【0003】一方、結晶成長技術とは別のアプローチと
して、多数の原子を固体表面に一度に堆積することがい
わゆるSTM(走直型トンネル顕微鏡)技術の発展によ
って可能となってきた。たとえば、WF6 ガスを用いて
タングステンを金の表面に堆積することができる。しか
しながら、この場合の堆積面積は100nmにも及び、
単原子の堆積とは大きな格差がある。
【0004】また、このSTM技術については、単原子
の移動とその脱離を行った例もある。まず単原子の移動
については、4K程度の極低温において、Ni等の金属
結晶表面に物理吸着させたガス単原子にSTMの探針を
近づけ、この探針を移動させることで、単原子を引張り
移動させている。これは、基板表面とガス原子とが弱く
物理吸着しているだけで化学結合していないことによる
ものである。このため、単原子の移動ではあるが、堆積
現象とは本質的に異なっている。
【0005】単原子の脱離については、グラファイトや
二硫化モリブデン等の層状結晶物質について、STM探
針の操作によって可能としている。しかしながら、この
STMの技術による単原子の操作はいずれも結晶成長に
おける堆積現象とは本質的に異なっており、堆積という
意味で可能とされているのは、いずれにしても前記した
通り、一度に数十個から数百個に及んでしまうのが実情
である。従って、堆積の面分解能を向上すること、言い
かえると、単原子単位で堆積することが重要な課題にな
っている。
【0006】また、実際のプロセスとしては、堆積しよ
うとする原子をどのように供給するのかも重要な課題で
ある。たとえば蒸着やガス吸着では固体表面に広く堆積
してしまい、一原子のみを目的の位置に堆積するのは全
く不可能である。ガス吸着の場合には、物理吸着が生
じ、たとえばSTMによる表面観察を阻害するという問
題もある。
【0007】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな
されたものであり、前述のSTMの持つ潜在的単原子操
作能力を最大限に生かし、これまでの方法によっては困
難であった単原子堆積による結晶成長方法を提供するこ
とを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の課題を
解決するものとして、被堆積表面を不活性層で被い、所
要部位の不活性層構成原子を探針による電子励起によっ
て脱離させ、次いでその脱離により露出した被堆積表面
に所要の原子を堆積することを特徴とする単原子堆積法
を提供する。
【0009】すなわち、この発明は前記した通りのST
M技術における二つの課題を一挙に解決する手段とし
て、所要の原子を堆積する前に、被堆積表面の所要部位
を一旦不活性化しておく方法を採用する。これによっ
て、固体表面に原子を一つづつ人為的に堆積することが
でき、その結果として、原子単位での任意形状の固体結
晶を堆積するという画期的な結晶成長が可能となる。
【0010】以下、添付した図面に沿って、さらに詳し
くこの発明の単原子堆積法について説明する。
【0011】
【実施例】添付した図1は、この発明の単原子堆積法を
プロセスとして示した模式図である 。この図1に示したようにこの発明の方法は、4つのス
テップからなっている。ステップ1 まず、被堆積固体表面を不活性化物質によって不活性化
する。被堆積固体としては、金属、半導体、絶縁物等の
適宜なものが選択され、たとえばシリコン基板をその固
体とすることができる。不活性化物質としては、ガスを
好適に使用することができる。
【0012】この時、不活性物質は固体表面のほぼ全域
に不活性層を形成する。ステップ2 次いで、STMを用いて、その探針(Tip)から標的
サイトに向けてトンネル電流を流す。これによって、電
子励起されて不活性層構成原子の脱離を引き起こす。さ
らに、その脱離サイトでは、固体表面が再活性化される
ことになる。
【0013】ステップ3 堆積物質を含むガスを照射しながら、または照射後にS
TMにより再活性化サイトに探針(Tip)よりトンネ
ル電流を流し、そこに吸着した堆積物質原子と下地の固
体表面との化学結合を生じさせる。ステップ4 STMのトンネル電流を流しながら面内走査し、不要に
なった不活性物質を脱離除去し、所要の堆積原子のみを
所要部位に一個づつ堆積させる。
【0014】このようなステップ1〜4のプロセスを採
用することによって以下の通りの具体的態様が可能とな
る。 不活性化した表面は、すべすべした化学的には結合を
生じない表面であり、ガスを導入してもその表面にガス
が吸着することがない。このような不活性化表面は、も
ともとの表面原子の有する未結合手を一つ一つ不活性化
原子で終端することにより形成するので、表面は、元の
下地表面の周期的原子配列をほぼ保存している。従っ
て、STMによる観察が可能である。実際、たとえばシ
リコンの(111)表面の水素原子による不活性化表面
は、下地シリコンの表面原子配列を正確に保ったかたち
で保存されており、STM観察が可能である。なお、表
面の不活性化は、不活性化ガスを目的表面に照射するこ
とにより実現できる。ここで言う不活性化ガスとは、表
面不活性化を促す効果を有するガスであり、ヘリウム、
アルゴン等のそれ自体化学反応を極めて起こしにくい不
活性ガスに限定されることはない。
【0015】 次に、この不活性化表面上の堆積目的
位置直上にSTM探針を移動し、トンネル電流を流す。
これにより探針直下の不活性化原子は、励起され脱離す
ることになる。これにより脱離を起こした表面領域のみ
再活性化する。この時のバイアス電圧とバイアス電流
は、従来の手法よりかなり低く抑える。このことにより
トンネル電流の照射範囲は、原子一個分にまで縮小する
ことができる。一般に、表面不活性化エネルギーは、バ
ルクの結合エネルギーよりもかなり小さいので、表面不
活性化原子はもともとかなり小さなバイアス電圧電流で
脱離させることができる。実際、上述のシリコン(11
1)表面の水素による不活性化では、2eVという低い
バイアス電圧で水素の電子励起脱離が可能である。
【0016】このようにして得られた再活性化領域
は、化学的に活性であり、ガスが非常に吸着し易くなっ
ている。そこで堆積したい原料ガスを照射すると、ST
Mにより再活性化した領域のみに原子が吸着する。その
後またはそれと同時に、その吸着サイト直上に探針を移
動し、トンネル電流を再び流すことにより、吸着原子を
下地と化学吸着させることができる。
【0017】 最後に、不要となった不活性化単原子
層膜は、STMで電流を流しながら面状を走査すること
で取り除くことができる。このときバイアス電圧は不活
性化原子が脱離するのに必要な最小の値とする。このこ
とにより堆積した原子は、脱離するには至らないで表面
上に残留する。もちろん、不活性化物質の除去は、ST
M以外にも、電子線を広い範囲で照射する事により脱離
が可能である。また、被堆積物質の昇温することによっ
ても脱離が可能てある。
【0018】以上により、単原子堆積が可能になる。上
記の堆積過程は、同時に実行することも有り得る。ま
た、複数回サイクルの堆積の場合は、過程は最終サイ
クルの最後のステップで一度行うだけでもよい。また、
被堆積固体は、堆積物質と同一元素でもよいし、そうで
ない場合も有り得る。
【0019】
【発明の効果】この発明によれば、固体結晶表面に原子
を一つずつ人為的に堆積することができ、その結果とし
て、原子単位での任意形状の固体結晶を堆積するという
画期的結晶成長が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法をプロセスとして示した模式図
である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被堆積表面を不活性層で被い、所要部位
    の不活性層構成原子を探針による電子励起によって脱離
    させ、次いでその脱離により露出した被堆積表面に所要
    の原子を堆積することを特徴とする単原子堆積法。
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