JP3015854B2 - 採血管 - Google Patents

採血管

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JP3015854B2
JP3015854B2 JP10359577A JP35957798A JP3015854B2 JP 3015854 B2 JP3015854 B2 JP 3015854B2 JP 10359577 A JP10359577 A JP 10359577A JP 35957798 A JP35957798 A JP 35957798A JP 3015854 B2 JP3015854 B2 JP 3015854B2
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哲士 石本
康幸 中村
勝年 濱田
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株式会社アイ・デザイン
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血液を採取し、か
つ、その場で当該血液の分離を行う採血管に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、血液の採取及び分離は、まず注射
器等で血管内から血液を吸引し、この血液を専用の試験
管に入れた後、この試験管を遠心分離器に装填し、当該
遠心分離器を駆動することにより、比重差を利用して血
液を血球成分と血漿成分とに分離するといったことが行
われていた。しかし、このような方法では、採血作業と
分離作業とを全く別の設備で行わなければならず、採血
を始めてから分離が終了するまでに多大の時間と手間を
要する不都合がある。
【0003】そこで近年は、採血したその場で血液の分
離も行える採血管の開発が進められている。例えば実用
新案掲載公報第2526889号には、本体管内に仕切
り壁を設けて当該管内を上流室と下流室とに区画し、前
記仕切り壁にU字状の多孔質中空糸膜の両端を固定して
当該両端を上流室側に開口させ、かつ、本体管内を真空
状態にしたものが開示されている。この管において、採
血針を通じて上流室内に血液を導入すると、この血液の
導入分だけ上流室内の圧力が上昇し、下流室内との間に
圧力差が生じる。この圧力差により、血液は中空糸膜内
にその両端開口から進入するが、この中空糸膜を通過で
きるのは血液中の血漿成分のみであるため、当該中空糸
膜を境にして血液が上流室側の血球成分と下流室側の血
漿成分とに分離されることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記採血管には、次の
ような解決すべき課題がある。
【0005】1)この採血管を製造するには、多数本の
U字状中空糸膜を仕切り壁に固定し、かつ、この仕切り
壁を本体管内の所定位置に固定する作業が必要である
が、これらの作業には多大の手間を要し、コスト高は免
れ得ない。
【0006】2)下流室に流入した血漿成分を検査する
ためには、まず当該下流室から別の器具(例えば注射
器)で血漿成分を吸引し、別の容器(例えば試験管)に
入れる必要がある。従って、血液の分離ができたとして
も、その後の血漿採取に時間がかかってしまう不都合が
ある。
【0007】3)多数本の中空糸膜を用いるといえど
も、当該膜が糸状であるため、表面積は限られており、
その分、分離に時間がかかることになる。また、中空糸
内で目づまりを起こしやすい。
【0008】本発明は、このような事情に鑑み、簡単な
構造で、迅速な採血及び分離ができ、しかも分離後の血
漿成分の取扱いが容易な採血管を提供することを目的と
する。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段として、本発明は、血液入口及び血液出口をもつ
上流管と、この上流管の血液入口に装着されることによ
り当該上流管内を密閉し、かつ、採血用針が挿通可能に
構成された栓と、前記上流管の血液出口全域を塞ぐよう
に配設され、流通する血液を血球成分と血漿成分とに分
離するフィルタと、このフィルタ及び前記血液出口を覆
うように装着され、内部が密閉される下流管とを備え、
この下流管を前記上流管に対して着脱可能となるように
構成したものである。
【0010】この採血管によれば、次の要領で血液の採
取及び分離を効率良く行うことができる。
【0011】 栓に吸引管を突き刺す等して、上流管
及び下流管内を減圧する。なお、この減圧は採血管流通
前の段階で行うようにしてもよい。すなわち、メーカー
側で管内を減圧しておいてから当該採血管の提供を行う
ようにしてもよい。
【0012】 血管に採血用針の一端を突き刺した状
態で、当該針の他端を栓に挿通させる。この時、上流室
内の負圧により、血液は自動的に上流管内に流れ込む
が、この血液の導入分だけ上流管と下流管との間に差圧
が生じ、この差圧によって血液が血液出口を通じて下流
管内に流れ込もうとする。しかし、この血液出口にはフ
ィルタが配設されており、このフィルタを通過するのは
血漿成分のみであるため、当該血漿成分が血球成分と分
離されて下流管内に流れ込む。従って、採血作業と同時
に血液の分離が進行することになる。ただし、本発明
は、血液をきわめて厳密に血球成分と血漿成分とに分離
するものでなくてもよく、血球成分の中でも径の小さい
ごく一部の成分(例えば血小板)のフィルタ通過を許容
するものも含まれるものとする。
【0013】 分離完了後、上流管から下流管を切り
離す。この下流管内には血漿成分のみが採取されている
ので、この下流管をそのまま試験管として検査に利用す
ることができる。
【0014】ここで、前記上流管に対して下流管を着脱
可能とする構造としては、例えば、 a)前記上流管に前記下流管を直結するようにしてもよ
いし、b)前記下流管を、一端に開口を有して前記上流
管全体を収納する形状にし、この下流管の開口が前記上
流管の血液入口とともに共通の栓に装着されるように構
成してもよい。
【0015】a)の場合、前記上流管側及び下流管側に
互いに螺合するねじ部を形成すれば、着脱が容易とな
り、しかも下流管内の確実な密閉ができる。
【0016】b)の場合、上流管が下流管内に収められ
ることになるので、採血管全体をよりコンパクトな構造
にすることができる。
【0017】b)の場合において、前記栓に、前記上流
管及び下流管の開口端がそれぞれ嵌入可能な周溝を形成
するようにしてもよいが、当該栓に、前記下流管の開口
に嵌入可能な第1嵌入部と、この第1嵌入部から突出
し、前記上流管の血液入口に嵌入可能な第2嵌入部とを
形成するようにすれば、これら大径部及び小径部をそれ
ぞれ前記下流管開口端及び上流管開口端に嵌入するだけ
の簡単な操作で採血管全体の組上げができる。
【0018】さらに、前記上流管の血液入口周縁部に径
方向に突出する突出部を形成するとともに、前記下流管
の開口端近傍部分の内面に内方に突出する段部を形成
し、この段部に前記突出部が係止される位置まで上流管
が下流管内に挿入されるように構成すれば、当該係止及
び挿入状態にしたまま上から栓を嵌め込む操作を行うこ
とにより、前記上流管開口内への小径部の嵌入と、前記
下流管開口内への大径部の嵌入とを同時に行うことがで
きる。すなわち、単一の操作で栓を上流管と下流管の双
方に同時装着でき、作業性がさらに高まる。しかも、装
着後は、前記突出部を前記段部と栓とで挟持することに
より、上流管を下流管内により安定した状態で固定する
ことができる。
【0019】上述のように、本発明に係る採血管では、
上流管に血液出口を設け、これを塞ぐようにフィルタを
配するものであるので、血液出口の形状設定により、フ
ィルタを血液が流通する面積を大きく確保でき、その
分、分離に要する時間を短縮できる。さらに、前記上流
管の一部をその内側もしくは外側に突出させ、この突出
部分に前記血液出口を設ければ、当該血液出口を通じて
の血液流通面積をさらに拡大することが可能になる。
【0020】例えば、前記上流管の一部を略三角形状に
突出させ、この突出部分に前記血液出口を設け、この血
液出口を塞ぐように略矩形状のフィルタを配設すれば、
上流管及びフィルタの形状を簡単にしてその製造をより
容易にできる。
【0021】また、前記上流管の一部を筒状に突出させ
てその少なくとも周壁に前記血液出口を設け、この血液
出口を塞ぐようにフィルタを筒状に配設すれば、より大
きな流通面積を確保できる。
【0022】前記フィルタは、例えば上流管の内側面に
固定するようにしてもよいが、このフィルタを血液出口
の外側に配するとともに、当該フィルタを外側から押え
た状態で上流管の外面に固定されるフィルタ押えを備え
るようにすれば、上流管へのフィルタの装着がより容易
になる。
【0023】また、前記上流管とフィルタとを一体にモ
ールドすれば、フィルタ押えを省略できる分、部品点数
を削減でき、組上げの手間も省けて低コスト化を図るこ
とができる。
【0024】この場合において、前記上流管をその開口
端から離れるに従って縮怪するテーパー状に形成するこ
とにより、そのテーパー方向に沿って成形用金型を抜く
ことが可能になり、製造作業がより円滑化される。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態を図1
及び図2に基づいて説明する。
【0026】図示の採血管は、上流管10及び下流管1
2を備えている。
【0027】上流管10は、その上端が開口し、血液入
口11とされている。この血液入口11にはゴム等の弾
性部材からなる栓18が装着され、この栓18により血
液入口11が塞がれている。詳しくは、前記栓18の下
面に周溝18aが形成され、この周溝18aに前記血液
入口11の周縁部(すなわち上流管10の上端部)が圧
入されることにより、栓18が上流管10に嵌着されて
いる。
【0028】上流管10の下部には、その筒状本体部1
4よりも一段細い雄ねじ部15と、略三角形状のフィル
タ装着部16とが上から順に形成され、雄ねじ部15の
外周面には雄ねじが形成されている。フィルタ装着部1
6は、その下端が塞がれているが、その直上の左右両側
面(斜面)には、当該フィルタ装着部16の内外を連通
する血液出口18が形成されている。
【0029】この血液出口18の外側には、当該血液出
口18を含むフィルタ装着部16の略全域を覆う矩形状
のフィルタ20が装着されている。このフィルタ20
は、血液を概ね血球成分と血漿成分とに分離できるもの
であればよく、ごく一部の血球成分(例えば血小板等の
比較的小径の血球成分)の通過を許容するものであって
もよい。
【0030】具体例としては、一般的なろ過膜(メンブ
レンフィルタ)を用い、その分子ふるいの機能を利用し
て血球を捕捉するようにしてもよいし、ガラス繊維を用
いて血球を吸着するようにしてもよい。また、孔径の大
きい通常のろ紙であっても、これに抗血球抗体を含有さ
せ、当該抗体と血球との特異結合を利用することによ
り、血球成分の捕捉が可能である。さらに、フィルタに
カチオン性高分子を含有させ、表面がマイナスに帯電し
た血球成分(特に赤血球)を静電力で凝集して巨大化さ
せるようにすれば、より効率の高い分離ができる。
【0031】また、上流側から下流側(図例では上から
下)に向かうに従って孔径が小さくなるように複数種の
多孔質体を積層したものを用いれば、血球の目づまりを
確実に防いでより効率の高い分離が可能となる。このよ
うな積層構造を形成する場合、互いに孔径の異なる複数
の多孔質層を単に重ね合わせるだけでもよいし、予めラ
ミネート処理して一体化してもよい。実際に、平均孔径
が 0.5〜3.0μm,3.0〜8.0μm,8.0〜30μmの3層の
多孔質膜を積層したものを用いたところ、目づまりを起
こすことなく良好な血液分離ができることが確認されて
いる。
【0032】このフィルタは、次の第2の実施の形態以
下の実施の形態でも、同様に適用されるものである。
【0033】前記フィルタ20の外側には、フィルタ押
え22が配設されている。このフィルタ押え22は、前
記フィルタ装着部16との間にフィルタ20を挟み込む
ことが可能な略V字状をなし、その両側壁には前記血液
出口18と合致する流通口24が形成されている。この
フィルタ装着部16の上端には内側に突出する係合突起
23が形成される一方、前記フィルタ装着部16の上端
部にも外側に突出する係合突起17が形成されており、
この係合突起17を前記係合突起23が乗り越えるよう
に両突起17,23が係合されることにより、フィルタ
押え22がフィルタ装着部16に固定され、かつ、これ
らフィルタ押え22とフィルタ装着部16との間にフィ
ルタ20が挾持されるようになっている。また、フィル
タ押え22の上端と雄ねじ部15の下面との間にはリン
グ状のシール部材25が挟み込まれている。
【0034】なお、フィルタ装着部16に対してフィル
タ押え22を固定するための具体的な構造は図示のもの
に限られない。また、フィルタ押え22を省略してフィ
ルタ20をフィルタ装着部16の内側面に固定すること
も可能である。ただし、前記のようなフィルタ押え22
を用いた構造によれば、より簡単にフィルタ20の装着
ができる利点が得られる。
【0035】下流管12は、上端にのみ開口を有し、当
該開口端の内側面に雌ねじ26を有している。そして、
この雌ねじ26が前記雄ねじ部15の雄ねじと螺合され
ることにより、両管10,12が直結され、フィルタ2
0及びフィルタ装着部16が下流管12により完全に覆
われた状態となっている。
【0036】なお、下流管12内の密閉は前記ねじの螺
合のみでも可能であるが、この実施の形態では、より確
実な密閉を図るため、下流管12の上端と上流管10の
本体部14の下面との間にもリング状のシール部材28
が挟み込まれている。
【0037】また、上流管10と下流管12とを連結す
るための構造は、前記のようなねじ部同士を螺合するも
のに限らず、例えば下流管12の上端開口内側に全周に
わたるリング状のゴム層を配し、このゴム層の内側に上
流管10の下部を圧入するようにしてもよい。ただし、
前記のような互いに螺合可能なねじによる結合では、簡
単な構造で両管10,12を着脱可能に連結でき、か
つ、高いシール性を確保できる利点が得られる。
【0038】次に、この実施の形態に係る採血管の使用
要領及び作用を説明する。
【0039】まず、上流管10と下流管12とを直結し
た状態で、栓18に吸引管を突き刺して上流管10内に
臨ませ、この上流管10さらには下流管12内のエアを
吸引することにより、両管10,12内を減圧する。こ
の時の真空度は、採血管の仕様に応じて適宜設定すれば
よい。また、この減圧を採血管流通前の段階でメーカー
側で行い、減圧が完了した状態で提供を行うようにして
もよい。
【0040】次に、被検者の血管に図1の二点鎖線に示
すような採血用針Nの一端(図では上端)を突き刺し、
他端(同図下端)を栓18に突き指し、この栓18を貫
通させる。これにより、血管内の血液は、上流管10内
の負圧の作用で自動的に上流管10内に流れ込む。さら
に、この血液の導入分だけ上流管10内の圧力が下流管
12内の圧力よりも高くなるため、当該差圧により前記
血液は血液出口18を通じて下流管12内に流れ込もう
とする。
【0041】しかし、この血液出口18にはこれを塞ぐ
ようにフィルタ20が配設されているため、血液中の血
球成分は流通が阻止され、血漿成分のみがフィルタ20
を通過して下流管12内に流入する。従って、採血作業
と同時に血液の分離が進行することになる。しかも、こ
のフィルタ20を血液が通過する面積は、例えば従来の
中空糸膜を用いたものに比べて大きいので、より迅速な
分離ができる。
【0042】このようにして下流管12内への血漿成分
の回収が完了した後は、上流管10と下流管12を相対
回転させて雄ねじ部15と雌ねじ26との螺合を解き、
上流管10から下流管12を切り離せばよい。この下流
管12内には血漿成分のみが採取されているので、この
下流管12をそのまま試験管として検査に利用すること
ができる。
【0043】本発明の第2の実施の形態を図3に示す。
ここでは、前記図1に示した上流管10の雄ねじ部15
を単なる円筒部15´とし、この円筒部15´も含めて
上流管10の下部を覆うようにフィルタ押え22の形状
が設定されている。そして、このフィルタ押え22の外
周面に雄ねじ27が形成され、この雄ねじ27と下流管
12の雌ねじ26との螺合によって上流管10と下流管
12とが連結されるようになっている。
【0044】このように、本発明では必ずしも上流管1
0に直接ねじを形成しなくてもよく、この上流管10と
同じ側の部材であるフィルタ押え22にねじを形成して
も、上流管10と下流管12との直結が可能である。
【0045】第3の実施の形態を図4及び図5に示す。
この実施の形態では、フィルタ装着部16が底壁32を
もつ円筒状に形成され、その周壁に多数の血液出口18
が形成されている。この実施の形態でも、フィルタ20
には略矩形状のものが用いられ、このフィルタ20が前
記フィルタ装着部16の周囲に円筒状に巻きつけられて
いる。そして、さらにその外側にフィルタ押え30が配
され、フィルタ装着部16に固定されることにより、フ
ィルタ20の取付が行われている。
【0046】この実施の形態に係るフィルタ押え30
は、合成樹脂等の撓み変形可能な材料でシート状に形成
され、前記フィルタ20の周囲に巻付け可能とされると
ともに、当該巻付け状態で前記血液出口18と合致する
多数の流通口34を有している。図5(b)に示すよう
に、前記フィルタ装着部16の外周面の適所には凹部3
6が形成される一方、フィルタ押え30の両端には互い
に係合する係合部37,38が形成されており、これら
係合部37,38が係合された状態で両係合部37,3
8が前記凹部36に嵌着されることにより、当該係合状
態が保持され、フィルタ20がフィルタ装着部16とフ
ィルタ押え30との間に挟まれた状態で当該フィルタ押
え30がフィルタ装着部16に固定されるようになって
いる。
【0047】このような構造によれば、筒状のフィルタ
装着部16の軸寸法を増やすことにより、血液がフィル
タ20を通過する面積をさらに拡大できる利点が得られ
る。
【0048】第4の実施の形態を図6及び図7に示す。
【0049】この実施の形態では、上流管40全体が下
流管42内に完全に収納される内外二重管構造とされて
いる。上流管40は、上端に開口である血液入口41を
有し、下部には、その筒状本体部44よりも一段細いフ
ィルタ装着部46を有している。このフィルタ装着部4
6は、略半球状の底部を有し、当該底部及び側部にそれ
ぞれ血液出口50,48が設けられている。
【0050】フィルタ20は、前記フィルタ装着部46
のほぼ全体(少なくとも血液出口50,48を含む部
分)を覆うように配され、その外側にフィルタ押え52
が装着されることにより、フィルタ20がフィルタ装着
部46とフィルタ押え52とで挾持されている。
【0051】このフィルタ押え52は、前記フィルタ装
着部46全体を下から覆うキャップ状をゆし、このフィ
ルタ装着部46への装着状態で前記血液出口50,48
と合致する流通口54,56を有している。このフィル
タ押え52の上端には内側に突出する係合突起53が形
成される一方、フィルタ装着部46の上端には外側に突
出する係合突起47が形成されており、この係合突起4
7を前記係合突起53が乗り越える(すなわち両突起4
7,53が係合する)ことにより、上流管40にフィル
タ押え52が固定されるようになっている。また、フィ
ルタ20の直上方の位置には、フィルタ装着部46とフ
ィルタ押え52との間に介在するリング状のシール部材
55が配設されている。
【0052】下流管42は、上流管40よりも一回り大
きく、上端のみ開口43を有する形状をなし、この開口
43の周縁部が前記上流管40の血液入口41の周縁部
とともに共通の栓18に装着されている。詳しくは、当
該栓18の下面に内外二重の周溝18b,18cが形成
され、これら周溝18b,18cにそれぞれ前記血液入
口41の周縁部及び開口43の周縁部が圧入されること
により、栓18に対して両管40,42が着脱可能に嵌
着されている。
【0053】この採血管においても、両管40,42を
栓18に装着し、かつ管内を減圧した状態で、前記図1
に示した採血用針Nの一端を血管に突き刺し、他端を栓
18の中央に突き刺すことにより、血液を上流管40内
に導入することができる。そして、この時の上流管40
内の昇圧によって血漿成分のみをフィルタ20を通じて
外側の下流管42内に流入させることができる。すなわ
ち、血液の分離ができる。この分離が終了した後は、栓
18から下流管20のみを取り外す(すなわち上流管1
0から下流管20を切り離す)ことにより、この下流管
20をそのまま血漿成分の試料管として検査に供するこ
とができる。
【0054】第5の実施の形態を図8及び図9に示す。
【0055】この実施の形態では、前記第4の実施の形
態で示した上流管40の下部が、前記第3の実施の形態
で示した上流管10の下部の構造と全く同等とされてい
る。すなわち、フィルタ装着部46が底壁62をもつ円
筒状に形成され、その周壁に多数の血液出口48が形成
されており、このフィルタ装着部46の周囲に略矩形状
のフィルタ20が円筒状に巻付けられるとともに、その
外側のフィルタ押え60とフィルタ装着部16とによっ
てフィルタ20が挾持されている。このフィルタ押え6
0は、合成樹脂等の撓み変形可能な材料でシート状に形
成され、前記フィルタ20の周囲に巻付け可能とされる
とともに、当該巻付け状態で前記血液出口18と合致す
る多数の流通口64を有し、図9(b)に示すように、
フィルタ押え60の両端に形成された係合部67,88
が互いに係合する状態で前記フィルタ装着部46の外周
面適所に形成された凹部66に嵌着されることにより、
前記係合状態が保持され、フィルタ20がフィルタ装着
部46とフィルタ押え60との間に挟まれた状態で当該
フィルタ押え60がフィルタ装着部46に固定されるよ
うになっている。
【0056】このような構造においても、前記第3の実
施の形態に係る構造と同様、筒状のフィルタ装着部16
の軸寸法を増やすことにより、血液がフィルタ20を通
過する面積をさらに拡大することができる。
【0057】第6の実施の形態を図10及び図11に示
す。
【0058】この実施の形態では、前記図8に示したフ
ィルタ押え60が底壁70をもつ筒状(すなわちフィル
タ装着部46を下から覆うキャップ状)に形成され、前
記底壁70は中央に貫通孔をもつドーナツ板状とされて
いる。これに対し、フィルタ装着部46の底壁62から
は下向きに突出部71が突出し、この突出部71から径
方向外側に突出する突起71aが前記貫通孔を上から下
に通過するまでフィルタ押え46が上向きに押し込めら
れることにより、このフィルタ押え60がフィルタ装着
部46に固定されている。また、底壁62,70の間、
及び、上流管40の本体部44の下面とフィルタ押え6
0の上端面との間には、それぞれリング状のシール部材
72,59が配され、上流管40から下流管42への血
液のリークの防止がより確実にされている。
【0059】以上の実施の形態に示したように、本発明
では、上流管におけるフィルタ装着部の形状は特に問わ
ず、例えば上流管の底面を平面として当該底面に沿って
フィルタを固定するようにしてもよい。ただし、前記各
実施形態で示したように、フィルタ装着部16,46を
上流管10,40から外側(あるいは内側でもよい)に
突出させた上で、この突出部分であるフィルタ装着部1
6,46に血液出口18,48を形成するようにすれ
ば、当該血液出口の総面積(すなわち血液の流通面積)
をより大きく確保できる利点が得られる。
【0060】また、第7の実施の形態として図12
(a)(b)に示すように、フィルタ装着部46とフィ
ルタ20とを一体にモールドすれば、上述のフィルタ押
えは不要となり、部品点数を削減できる効果が得られ
る。この構造は、前記図1等に示すように下流管12が
直結される上流管11についても適用ができる。
【0061】第8の実施の形態を図13〜図15に示
す。
【0062】この実施の形態でも、上流管40全体が下
流管42内に完全に収納される内外二重管構造とされて
おり、上流管40は、その全体がフィルタ20とともに
一体にモールドされている。
【0063】上流管40は、開口である血液入口41を
有し、下部は完全に塞がれた有底状となっている。上流
管40の側壁は、底部に向かうに従って(すなわち上端
開口から離れるに従って)縮怪するテーパー状に形成さ
れており、この上流管40を一体成形するにあたって、
金型を下方へスムーズに抜くことができるように配慮が
なされている。
【0064】当該側壁には、縦方向のリブ40bを挟ん
で同じく縦方向に延びる複数(図例では2つ)の窓が形
成され、これらの窓が血液出口40aを構成している。
そして、この血液出口40aを内側から塞ぐようにフィ
ルタ20が上流管40と一体化されている。詳しくは、
図14に示すように、フィルタ20が円弧状に丸められ
た状態でその周方向両端部が各血液出口40aの周縁部
に埋め込まれた形で一体化されている。
【0065】なお、前記フィルタ20の材質について
は、前記第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0066】下流管42は、上流管40よりも一回り大
きく、上端のみ開口43を有する形状をなし、この開口
43の周縁部が前記上流管40の血液入口41の周縁部
とともに共通の栓18に装着されている。詳しくは、当
該栓18の上端部を残してそのすぐ下方の部分に大径部
(第1嵌入部)18dが形成されるとともに、この大径
部18の中央部から下方に当該大径部18dよりも小径
の(断面積の小さい)小径部(第2嵌入部)18eが突
出しており、この小径部18eが前記上流管40の血液
入口41にすきまなく嵌入可能とされるとともに、大径
部18dが前記下流管42の上端開口43にすきまなく
嵌入可能とされている。
【0067】さらに、この構造の特徴として、前記上流
管40の血液入口周縁部に、径方向外側に突出する鍔部
(突出部)40cが形成される一方、下流管42の上部
適所には、その上側部分に比べて下側部分が内側に突出
する形状の段部42aが形成されており、この段部42
a上に前記鍔部40cが当たる位置まで上流管40が下
流管42内に挿入できるように構成されている。
【0068】なお、この段部42aの形成は、図15
(a)に示すように、下流管42の肉厚は一定に保った
まま段を形成するようにしてもよいし、同図(b)に示
すように、下流管42の上部内側の肉を減らして下部と
の間に段を形成するようにしてもよい。また、鍔部40
cのように全周にわたって径方向外側に突出するもので
はなく、例えば周方向に間欠的に配せられた突出部を上
流管40に形成するようにしてもよい。
【0069】この構造によれば、予め前記段部42a上
に鍔部40cを係止した状態で、これらの上から栓18
を嵌め込む操作を行うことにより、血液入口41への小
径部18eの嵌入と、開口43への大径部18dの嵌入
とを同時に行うことができる。すなわち、両管40,4
2への栓18の装着作業を単一操作で同時に行うことが
できる。従って、例えば前記図6に示したように栓18
の各周溝18b,18cに管40,42の上端を個別に
嵌入する場合に比べ、組上げ作業を飛躍的に向上させる
ことができる。また、組上げ状態では、鍔部40cが栓
18と段部42aとに挟持された状態にあるので、上流
管40を下流管42内により安定した状態で固定するこ
とができる。
【0070】この組上げ後は、前記実施の形態と同様の
要領で迅速な採血ができる。
【0071】すなわち、栓18に吸引管を突き刺して上
流管40内に臨ませ、両管40,42内のエアを吸引し
て両管40,42内を仕様に応じた適当な真空度までメ
ーカー側あるいはユーザー側で減圧しておき、前記図1
の二点鎖線に示すような採血用針Nの一端(図では上
端)を突き刺し、他端(同図下端)を栓18に突き指
し、この栓18を貫通させる。これにより、血管内の血
液は、上流管40内の負圧の作用で自動的に上流管40
内に流れ込み、さらに、この血液の導入分による両管4
0,42の圧力差によって血液出口40aを通じて下流
管42内に流れ込もうとする。このとき、血液中の血球
成分がフィルタ20の通過を阻まれ、血漿成分のみがフ
ィルタ20を通過して下流管42内に流入するため、採
血作業と同時に血液の分離を行うことができる。
【0072】このようにして下流管42内への血漿成分
の回収が完了した後は、栓18ごと上流管40を下流管
42から取り外し、あるいは、栓18を両管40,42
から取り外した後に下流管42から上流管40を取り出
すことにより、この下流管42をそのまま試験管として
検査に利用することができる。
【0073】
【発明の効果】以上のように本発明は、管内の負圧を利
用して血液の吸引及び分離を行う採血管において、上流
管と下流管とを備え、上流管の血液出口を塞ぐように血
液分離用のフィルタを装着するとともに、このフィルタ
を覆うように下流管を配し、かつ、この下流管を上流管
に対して着脱可能となるように構成したものであるの
で、簡単な構造で、迅速な採血及び分離ができ、しかも
血液分離完了後は上流管から下流管を外すだけで、この
下流管をそのまま血漿成分の検査に供することができる
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る採血管の断面
正面図である。
【図2】(a)は図1に係る採血管を構成する上流管の
一部断面正面図、(b)はその底面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る採血管の分解
斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る採血管の断面
正面図である。
【図5】(a)は図4に係る採血管を構成する上流管の
一部断面正面図、(b)は(a)のA−A線断面図であ
る。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る採血管の断面
正面図である。
【図7】(a)は図6に係る採血管を構成する上流管の
一部断面正面図、(b)は(a)のB−B線断面図であ
る。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る採血管の断面
正面図である。
【図9】(a)は図8に係る採血管を構成する上流管の
一部断面正面図、(b)は(a)のC−C線断面図であ
る。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係る採血管の断
面正面図である。
【図11】(a)は図10に係る採血管を構成する上流
管の一部断面正面図、(b)は(a)のD−D線断面図
である。
【図12】(a)は本発明の第7の実施の形態に係る上
流管の一部断面正面図、(b)は(a)のE−E線断面
図である。
【図13】本発明の第8の実施の形態に係る採血管の断
面正面図である。
【図14】図13のF−F線断面図である。
【図15】(a)は図13に示す採血管の要部を示す断
面正面図、(b)は同要部の変形例を示す断面正面図で
ある。
【符号の説明】
10,40 上流管 11,41 血液入口 12,42 下流管 15 雄ねじ部 16,46 フィルタ装着部 18,40a,48,50 血液出口 20 フィルタ 22,30,52,60 フィルタ押え 26 雌ねじ 40c 鍔部(突出部) 42a 段部 43 開口 N 採血用針
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−144571(JP,A) 実開 昭50−149084(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 5/14 300 G01N 33/48

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 血液入口及び血液出口をもつ上流管と、
    この上流管の血液入口に装着されることにより当該上流
    管内を密閉し、かつ、採血用針が挿通可能に構成された
    栓と、前記上流管の血液出口全域を塞ぐように配設さ
    れ、流通する血液を血球成分と血漿成分とに分離するフ
    ィルタと、このフィルタ及び前記血液出口を覆うように
    装着され、内部が密閉される下流管とを備え、この下流
    管を前記上流管に対して着脱可能となるように構成した
    ことを特徴とする採血管。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の採血管において、前記上
    流管に前記下流管を直結したことを特徴とする採血管。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の採血管において、前記上
    流管側及び下流管側に互いに螺合するねじ部を形成した
    ことを特徴とする採血管。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の採血管において、前記下
    流管を、一端に開口を有して前記上流管全体を収納する
    形状にし、この下流管の開口が前記上流管の血液入口と
    ともに共通の栓に装着されるように構成したことを特徴
    とする採血管。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の採血管において、前記栓
    に、前記下流管の開口に嵌入可能な第1嵌入部と、この
    第1嵌入部から突出し、前記上流管の血液入口に嵌入可
    能な第2嵌入部とを形成したことを特徴とする採血管。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の採血管において、前記上
    流管の血液入口周縁部に径方向に突出する突出部を形成
    するとともに、前記下流管の開口端近傍部分の内面に内
    方に突出する段部を形成し、この段部に前記突出部が係
    止される位置まで上流管が下流管内に挿入されるように
    構成したことを特徴とする採血管。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の採血管
    において、前記上流管の一部をその内側もしくは外側に
    突出させ、この突出部分に前記血液出口を設けたことを
    特徴とする採血管。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の採血管において、前記上
    流管の一部を略三角形状に突出させ、この突出部分に前
    記血液出口を設け、この血液出口を塞ぐように略矩形状
    のフィルタを配設したことを特徴とする採血管。
  9. 【請求項9】 請求項7記載の採血管において、前記上
    流管の一部を筒状に突出させてその少なくとも周壁に前
    記血液出口を設け、この血液出口を塞ぐようにフィルタ
    を筒状に配設したことを特徴とする採血管。
  10. 【請求項10】 請求項7〜9のいずれかに記載の採血
    管において、前記血液出口の外側にフィルタを配すると
    ともに、このフィルタを外側から押えた状態で上流管の
    外面に固定されるフィルタ押えを備えたことを特徴とす
    る採血管。
  11. 【請求項11】 請求項7〜9のいずれかに記載の採血
    管において、前記上流管とフィルタとを一体にモールド
    したことを特徴とする採血管。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の採血管において、前
    記上流管をその血液入口端から離れるに従って縮怪する
    テーパー状に形成したことを特徴とする採血管。
  13. 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載の採
    血管において、その上流管及び下流管内を負圧状態にし
    たことを特徴とする採血管。
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