JP3012830B2 - 酒類発酵液の凍結混濁能の予測方法 - Google Patents

酒類発酵液の凍結混濁能の予測方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は酒類発酵液の凍結混
濁能を予測する方法、特に容器に充填された熟成後のビ
ール又は発泡酒の凍結混濁能を予測する方法や、酒類発
酵液の凍結混濁物の濃縮方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熟成が終わったビールは、酵母その他の
沈殿物や一部コロイド成分を濾過により除去して容器に
充填されるが、従来、この熟成後のビールに生じる好ま
しくない混濁としては、比較的小さい茶色っぽい沈殿が
見られる永久(酸化)混濁と、白っぽいフレーク状の沈
殿が見られる凍結混濁とが知られている。このうち、長
期間の保存や高温下での保存により、成分中のポリフェ
ノールが酸化重合して蛋白質とコンプレックスを形成
し、このコンプレックスは最初のうちは容易に再溶解す
るが、時間が経つにつれて会合して不溶性の沈殿物とな
る。これが永久混濁といわれるものである。他方、熟成
後のビールを凍結させることによって形成される混濁あ
るいは沈殿は、凍結混濁と呼ばれ、この凍結混濁により
生じる混濁物あるいは沈殿物の主体は、溶解度の低い高
分子β−グルカンやシュウ酸カルシウムであるとされて
いる。ビールを冷却すると発生する寒冷混濁と呼ばれる
混濁も知られている。
【0003】熟成後のビールに生じる混濁のうちの凍結
混濁について、その混濁能を予測する方法としては、β
−グルカン等の混濁原因成分の多寡を測定して凍結混濁
能を予測する方法や、ビール自身を凍結させて混濁物及
び沈殿物がどの程度発生するかを測定して評価する方法
も行われていたが、現在まで実用的な凍結混濁能の予測
方法として確立されたものはなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】寒冷地においては屋外
にビールを保管した場合や、倉庫内で保管した場合であ
っても厳冬期には、製品ビールが凍結することがあり、
瓶詰ビールでは凍結したことが目視により見分けられる
が、凍結混濁は生じている。缶ビールでは凍結により混
濁が生じた場合であっても外観からは判断することがで
きず、消費者がビールを飲むときになってはじめて混濁
や沈殿に気付くということがあった。そこで、本発明者
らは、まずビールが低温下にさらされたときの、混濁安
定性の違いを比較するため、寒い冬の時期に市販の缶ビ
ール9種類(イ〜リ)を1ヶ月間屋外に保管し、保管後
の濁度を測定した。これら市販の缶ビールの冬期屋外保
管試験の結果を示す図1からもわかるように、市販の缶
ビールの間で、凍結混濁安定性に違いが認められた。
【0005】次に、上記冬期屋外保管試験に用いた市販
の缶ビール(イ〜リ)について、ビールのコロイド安定
性を予測方法として知られている加熱によるフォーシン
グテスト及びアルコール・チリングテストを実施し、上
記冬期屋外保管試験結果との関係を調べてみたが、これ
らビールのコロイド安定性と凍結混濁安定性との間に相
関関係がなく、これら従来の予測方法に基づいて凍結混
濁安定性を予測することができないことがわかった。
【0006】そして、上記冬期屋外保管試験の結果か
ら、缶等に充填された熟成ビールが一度凍結し、それが
融解された際に生じる混濁物あるいは沈殿物の量は、ビ
ールの種類や製造条件等により変化することが予想され
たが、寒冷地等の1日の気温の変化で凍結融解が繰り返
される覆歴など実際的な保管条件下でのビールの凍結混
濁性を予想する方法は今日まで確立されていなかった。
【0007】本発明の課題は、寒冷地等の1日の気温の
変化で凍結融解が繰り返される覆歴などを考慮した、実
際的な保管条件下でのビール等の酒類発酵液の凍結混濁
性、特に種々のビール等の酒類発酵液が本来的・潜在的
に有する凍結混濁量の最大値、すなわち凍結混濁能を効
率的かつ正確に予測する方法を確立することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究し、種々の寒冷地の1日の外
気温変化の測定値と缶ビールの凍結の状態を調べている
うちに、一度凍結したビールは最も気温が上昇する日中
においても、シャーベット状の凍結片の全部が融解する
ことなく、その表面が部分融解し、この部分融解と凍結
との繰り返しにより、ビール中に生成する凍結混濁物の
量が増加し最大値に収斂していくことを見い出した。そ
して、かかる知見をビール等酒類発酵液の凍結混濁形成
に適用すると、効率的かつ正確にビール等酒類発酵液の
凍結混濁能を予測しうることを確認し、本発明を完成す
るに至った。
【0009】すなわち本発明は、酒類発酵液を冷却して
凍結させた後、その凍結する温度より高い温度に昇温さ
せて部分融解させ、以後この凍結−部分融解サイクルを
複数回繰り返した後、該酒類発酵液の混濁量を測定する
ことを特徴とする酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方
法や、凍結−部分融解サイクルにおける最初の凍結と部
分融解が、過冷却状態から凍結に転移する温度以下での
凍結と、その凍結に転移する温度より高い温度に昇温さ
せての部分融解である上記酒類発酵液の凍結混濁能を予
測する方法に関する。
【0010】また本発明は、最初の凍結までの冷却を徐
々に行い、部分融解後は−7℃〜−15℃に冷却する上
記酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方法や、−3℃〜
0℃に昇温させて部分融解を行う上記酒類発酵液の凍結
混濁能を予測する方法や、サイクルの繰り返しの回数が
3〜10回である上記酒類発酵液の凍結混濁能を予測す
る方法や、サイクルの周期が1日である上記酒類発酵液
の凍結混濁能を予測する方法や、酒類発酵液が容器に充
填された熟成後のビール又は発泡酒である上記酒類発酵
液の凍結混濁能を予測法に関する。
【0011】さらに本発明は、酒類発酵液を冷却して凍
結させた後、その凍結する温度より高い温度に昇温させ
て部分融解させ、以後この凍結−部分融解サイクルを複
数回繰り返すことを特徴とする酒類発酵液の凍結混濁物
の濃縮方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明における酒類発酵液として
は、ビール、日本酒、ワイン等を例示することができ、
凍結混濁能を予測する対象としては、酒類発酵液の中で
も、凍結混濁が問題になる熟成後の酒類発酵液、特に容
器に充填された熟成後のビールや熟成後の発泡酒を挙げ
ることができるが、熟成前の酒類であっても、熟成後の
凍結混濁傾向を予備的に調べるなど、必要に応じて適用
することができる。
【0013】本発明の酒類発酵液の凍結混濁能を予測す
る方法においては、まず、酒類発酵液を冷却して凍結さ
せた後、その凍結する温度より高い温度に昇温させて部
分融解させることが必要である。以下、熟成後の缶ビー
ルを例にとって説明する。ビールを凍結するための冷却
は、寒冷地等の戸外における冷却と同じく、好ましくは
1時間に1℃程度温度を低下させるなど徐々に行うこと
が望ましい。ビールの凍結温度は種類によって異なる
が、凝固点降下により約−2℃であり、容器に充填した
ビールを静置して徐々に冷却する場合など過冷却現象が
生じると、それよりずっと低い温度でないと凍結が始ま
らない。ビールの保管中の実際の凍結混濁を想定する
と、過冷却状態から凍結に転移する温度で凍結させるこ
とが好ましい。このようにビールを凍結させると、固相
の氷と液相部分が混在したシャーベット状を呈し、液相
部分のエキス分濃度が高くなり、混濁物が生成しやすく
なると考えられる。また、ビールを凍結させると、比重
の重いエキス分は下方に移動することから、上方はエキ
ス分が薄く下方に行くにしたがってエキス分は濃くなっ
ている。
【0014】次に、凍結したビールは、凍結させた温度
より高い温度に昇温させて部分融解させることが必要で
ある。この部分融解させる際の温度としては、ビールの
凍結する温度より幾分高い温度が好ましい。室温等まで
昇温させて融解すると、一度形成された混濁物や沈殿物
が再溶解する可能性がある。また、昇温速度も、戸外に
おける気温変化と同じく、徐々に行うことが好ましい。
このような条件で部分融解させると、凍結したビール中
の固相の氷の表面等から水が融解・拡散し、氷の周辺で
は一時的にエキス分濃度は低下することになるが、再度
液相より水分を凍結させた場合、固相の氷と液相との界
面におけるエキス分濃度が局所的に増大し、混濁物が生
成しやすくなると考えられる。
【0015】本発明においては、ビールが凍結したシャ
ーベット状の凍結片の全部を融解することなく、その表
面を部分融解することが特に重要である。上記のよう
に、部分融解後の再凍結により、より多くの混濁物が生
成し、混濁物を含む比重の重いエキス分はさらに下方に
移動することになる。この垂直方向でのエキス分の濃度
勾配をまず形成しておくことにより、エキス分が濃縮さ
れた液相からの凍結による水分の除去によって、このエ
キス分の濃度勾配がさらに大きくなっていく。このよう
に、凍結操作と部分融解操作を繰り返し行うことによ
り、効率よく混濁物の最大量を生成させることができ
る。これに対し、氷の凍結片の全部を融解すると、エキ
ス分が稀釈され、再凍結時における凍結混濁物の濃縮効
果が小さくなるばかりか、温度の下降上昇に伴うエネル
ギーの非効率化及び分析時間の非能率化の点で好ましく
ない。
【0016】上記のように、部分融解されたビールは、
再度冷却され凍結される。この2回目以降の凍結は、部
分融解によってビール中に残存する氷の凍結片が核とな
り、最初の過冷却状態が破れ凍結に転移する温度よりも
高い温度で凍結させることができる。そして、この再凍
結後、再び凍結する温度より高い温度に昇温させ部分融
解させる。この2回目以降の部分融解においては、液相
におけるエキス分中の溶質濃度が最初の部分融解時より
も上昇しており、凝固点降下度が大きくなり、凍結する
温度も低下するので、最初の温度より低い温度で部分融
解させることができる。以上のことからわかるように、
凍結−部分融解サイクルを繰り返すことにより、上記垂
直方向でのエキス分の濃度勾配が形成され、凍結混濁量
が増大していく。
【0017】上記のように、凍結−部分融解サイクル
中、ビールの凍結温度は変化するが、戸外における温度
変化の傾向と一致させる方がより実際的であること、ま
た、凍結混濁能を予測する上で、あらかじめ凍結させる
温度と部分融解させる温度を定めて凍結−部分融解サイ
クルを繰り返す方が操作上より簡便であることからし
て、例えば、凍結温度を−12℃、部分融解温度を−2
℃に設定し、凍結−部分融解サイクルを複数回繰り返
し、凍結混濁量を測定することもできる。
【0018】このような凍結−部分融解サイクルを複数
回繰り返した後、該ビール中の混濁量を測定することに
より凍結混濁能を予測することが可能となる。混濁量の
測定は、所定回数の凍結−部分融解サイクル終了後、4
℃に設定した冷蔵庫内で3日間保存して、凍結したビー
ルをゆっくりと融解した後、混濁したビールを均一に
し、ガラスフィルターを用いて濾過し、ガラスフィルタ
ー上に回収された混濁物(沈殿物)の重量を測定する方
法により行うことができる。
【0019】ビールの凍結混濁能の予測は、複数個の同
一試料に対し、同一条件で、凍結−部分融解サイクルを
繰り返し行い、所定のサイクル数終了後の試料ビールを
その都度取り出し、上記の凍結混濁量の測定方法によ
り、例えばビール100ml当たりの混濁量として求
め、各サイクル数終了後の凍結混濁量の測定値を縦軸、
サイクル数を横軸とした座標にプロットし、凍結混濁量
の増加の割合等を各プロットの推移から読みとることに
より行うことができる。例えば、数点の各サイクル数に
対する凍結混濁量との関係から近似式を得て、凍結混濁
能を推計することができる。その際、同一種のビールに
ついて、予め凍結−部分融解サイクルと凍結混濁量の増
加標準曲線を作成しておくと、該サイクルを所定回数行
ったものから凍結混濁能を求めることも可能である。
【0020】本発明の凍結混濁能の予測方法における、
凍結−部分融解サイクルの繰り返し回数としては3〜1
0回が好ましく、3回未満であると凍結混濁能の予測が
難しい場合もあり、10回を超えて実施しても凍結混濁
物の生成量は余り増加しない。また凍結−部分融解サイ
クルの周期としては、寒冷地等の戸外での保管状態にお
けると同様に、1日とすることが好ましい。そして、凍
結混濁能の予測に際してのビールの昇温や冷却には、自
動的温度設定が可能なプログラム式恒温槽を用いること
ができる。
【0021】そして、本発明によると、ビール等酒類発
酵液の凍結混濁能を効率よくかつ正確に予測することが
できることから、その予測結果は凍結混濁の防止対策上
有用である。例えば、ビール原料の種類と凍結混濁能と
の相関を調べ、特定の種類の原料を用いると凍結混濁量
が多いとわかった場合は、該原料の種類を変えるとか、
あるいは仕込み条件を変えるとか、凍結混濁能の予測結
果に基づいて、種々の凍結混濁の防止対策を講じること
ができる。
【0022】さらに、上記ビール等の酒類発酵液の凍結
混濁量の予測に用いた方法を凍結混濁物の濃縮にも応用
することができる。例えば、凍結混濁物の成分分析が必
要になったとき、酒類発酵液を冷却して凍結させた後、
その凍結する温度より高い温度に昇温させて部分融解さ
せ、以後凍結−部分融解サイクルを複数回繰り返すこと
により、酒類発酵液の凍結混濁物を効率よく濃縮するこ
とができる。
【0023】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
るが、本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定
されるものではない。 実施例 (凍結混濁を形成するための温度条件)寒冷地等の1日
の気温の変化で凍結融解が繰り返される覆歴など実際的
な保管条件下でのビールの凍結混濁性を実験室で予想す
るには、凍結混濁を形成するための温度条件の設定が必
要であり、例えば北海道等の種々の寒冷地の1日の外気
温変化の測定値をもとに、凍結混濁を形成するためのモ
デルパターンを策定した。この図2で示される1日24
時間の温度変化のモデルパターンは、最高温度が−2
℃、最低温度が−12℃で24時間で1サイクルとなっ
ている。
【0024】(F&Tサイクル)350ml缶詰ビール
を複数個用意し、これを立てた状態でプログラム式恒温
槽に入れ、上記モデルパターンにしたがって、まず−1
2℃まで冷却して、過冷却状態を破過して缶中のビール
を凍結させた後、その凍結に転移する温度より高い−2
℃まで昇温させて部分融解させた。この凍結−部分融解
を1日で行うサイクルをF&T(Freeze&Tho
w)サイクルと称し、10サイクルからなるF&Tサイ
クルテスト中の温度経過を図3に示した。
【0025】(F&Tサイクルテスト)F&Tサイクル
をそれぞれ1回、2回、3回、5回、7回、10回及び
15回繰り返した後の、すなわち、それぞれ1日目、2
日目、3日目、5日目、7日目、10日目及び15日目
の缶ビールを取り出し、約4℃で3日間凍結混濁物の再
溶解を避けてゆっくりと全体を融解した後、混濁したビ
ールを均一にし、その内の100mlをガラスフィルタ
ーにて濾過し、ガラスフィルター上に回収された混濁物
の重量を測定した。F&Tサイクル数毎の混濁物生成重
量を上記方法により測定した結果を図4(図中、▲印)
に示す。図4からもわかるように、F&Tサイクルを繰
り返すとだんだん混濁量が増加し、やがて最大値に収斂
していく。このように、F&Tサイクルを複数回繰り返
してその混濁量の増加傾向を知れば、混濁量の最大値、
すなわち凍結混濁能を予測することができる。
【0026】(比較例)F&Tサイクルテストとの比較
のため、同じサンプルの缶ビールを用い、温度を−10
℃一定に維持したものと、温度を−20℃一定に維持し
たものをそれぞれ用意し、1日目、2日目、3日目、5
日目、7日目、10日目及び15日目の缶ビールを取り
出し、約4℃で3日間凍結混濁物の再溶解を避けてゆっ
くりと全体を融解し、以後F&Tサイクルテストにおけ
ると同様にして、生成した混濁物の重量をそれぞれ測定
した。測定結果を、比較のため同じく図4に示す。これ
ら比較例のように単に一定温度に維持するだけでは、F
&Tサイクルにおけるように、効果的な凍結混濁物(及
び沈殿物)を生成させることができず、混濁量の最大値
を導くことはできないことから、結局、これら比較例の
方法で凍結混濁能を予測することは困難であることがわ
かった。なお、図4中の0日目の値は、前記寒冷混濁に
おける混濁量に相当する、4℃で3日間保存後の混濁量
を示す。
【0027】(F&Tサイクルテストによる市販ビール
の凍結安定性の比較)市販の缶ビールを使用して、10
サイクルからなるF&Tサイクルテストを行った。結果
を図5に示す。図5中、横軸は市販缶ビールのAからI
を、縦軸はF&Tサイクルテストで生じた混濁量(沈殿
量)を示しており、図5から、Dのビールに対してFの
ビールは約3倍量の混濁物が発生していることがわか
る。また、Iについては、約2mgが回収されたもの
の、これは、透明なビールを4℃で冷やしたときに得ら
れる値とほぼ同程度であった。
【0028】(F&Tサイクルテストとビール成分との
関係)上記(F&Tサイクルテストによる市販ビールの
凍結安定性の比較)において用いられた市販缶ビール
(A〜I)におけるビール中のβ−グルカン濃度をそれ
ぞれ測定した。β−グルカン濃度の測定は、混濁物をま
ずゲル濾過処理し、分析値の変動要因となる物質を除い
た後、分子量約1万を越える高分子β−グルカンと結合
することにより蛍光強度が強くなる性質を有するカルコ
フローを用い、このカルコフローの蛍光強度の変化によ
りβ−グルカン濃度を測定する「ポストカラム・フロー
インジェクション分析法」を用いた。
【0029】上記F&Tサイクルテスト結果とビール成
分との関係を比較するため、β−グルカン濃度を横軸と
し、上記10サイクルのF&Tサイクルテスト後の混濁
物量を縦軸とした座標に、市販缶ビール(A〜I)のそ
れぞれについての測定値をプロットした。結果を図6に
示す。図6中、●印で表されるビール(以下「ノーマル
ビール」という)の場合、ビール中のβ−グルカン濃度
と10サイクルのF&Tサイクルテスト後の混濁物量と
の間には、相関係数0.92という高い相関が認められ
たが、β−グルカン濃度は低いが凍結混濁量が多い■印
で表されるブランドBのビール(以下「センシティブビ
ール」という)や、β−グルカン濃度は高いが凍結混濁
量が少ない▲印で表されるブランドIのビール(以下
「ステイブルビール」という)は相関を示さなかった。
【0030】(凍結混濁物の定量分析)ノーマルビール
とセンシティブビールから回収した混濁物の定量分析を
行った結果を表1に示す。通常、凍結混濁物の大部分は
β−グルカンで占められているといわれているが、セン
シティブビールではβ−グルカンとほぼ同量のα−グル
カンが存在しており、この高分子α−グルカンの含有量
はノーマルビールの約10倍であった。このように、本
発明の凍結混濁能の予測方法によると、β−グルカンの
寄与が低い混濁物をも検出することができることがわか
った。
【表1】
【0031】(F&Tサイクルテスト後に形成された密
度勾配の測定)ノーマルビールとステイブルビールを用
いてF&Tサイクルテストを行った後の缶内部に形成さ
れた密度勾配を測定した。結果を図7に示す。図7にお
いて、横軸は密度を、縦軸は缶上部からの深さを示して
いる。この図7から、ノーマルビールは、F&Tサイク
ルテストにより、凍結−部分融解の繰り返し回数の増加
に伴って混濁物の凍結濃縮が進行し、缶の底部ほどエキ
ス分が濃縮されていることがわかる。一方、ステイブル
ビールは、容器内での密度は一定であり、このことから
ステイブルビールは、上記F&Tサイクルテストの凍結
条件である−12℃では凍結しなかったことがわかっ
た。
【0032】(温度センサーによるビールの凍結温度の
測定)内部温度センサーを用いて、ノーマルビールとス
テイブルビールの凍結温度の測定を行った。開缶後のビ
ールの内部に温度センサをセットし、液温を1時間に1
℃ずつゆっくりとした速度で冷却し、凍結が始まる温度
を測定したところ、ノーマルビールは−2.2℃で凍結
し、ステイブルビールは−1.6℃で凍結した。しか
し、F&Tサイクルテストでは、−12℃まで冷却して
おり、この測定方法による凍結温度では説明できないこ
とがわかった。
【0033】そこで、図8に示すように缶ビールにテー
プ形状の表面温度センサーを貼り付け、1時間に−1℃
の速度でビールをゆっくりと冷却し、過冷却状態から凍
結に転移する温度を測定したところ、Aは−10.0
℃、Bは−8.1℃、Cは−11.1℃、Dは−9.3
℃、Eは−10.3℃、Fは−7.1℃、Gは−7.3
℃、Hは−11.2℃、ステイブルビールのIは−1
3.8℃であった。この結果から、缶等の容器に充填さ
れたビールは過冷却現象が生じること、及びステイブル
ビールがF&Tサイクルテストで混濁物を形成しなかっ
たのは、このビールの過冷却の度合いが大きかったため
であることが明らかとなった。したがって、このステイ
ブルビールの凍結には−14℃程度まで冷却する必要が
ある。
【0034】
【発明の効果】本発明によると、酒類発酵液、特にビー
ルを凍結し部分融解するサイクルを複数回実施すること
で、その凍結混濁能を効率よくかつ正確に予測すること
ができることから、その予測結果は凍結混濁の防止策を
講じる上で有用である。また、本発明による予測結果
は、ビール中の凍結混濁原因成分の1つとされるビール
中のβ−グルカンのみでは説明できない、実際の寒冷地
域で起こりうる凍結混濁の危険を予測する直接的な指標
にもなりうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】市販ビールの冬期屋外保管試験の結果を示す図
である。
【図2】凍結混濁を形成するための温度変化のモデルパ
ターンを示す図である。
【図3】F&Tサイクルテスト中の温度経過を示す図で
ある。
【図4】F&Tサイクルテストによる凍結混濁物の測定
結果を示す図である。
【図5】F&Tサイクルテストによる市販ビールの凍結
安定性の測定結果を示す図である。
【図6】F&Tサイクルテスト結果とビール成分である
β−グルカンの濃度との関係を示す図である。
【図7】F&Tサイクルテスト後に形成された密度勾配
の測定結果を示す図である。
【図8】表面温度センサーによる缶ビール内部の凍結温
度測定を示している概略斜視図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/14 C12H 1/00 G01N 25/00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酒類発酵液を冷却して凍結させた後、そ
    の凍結する温度より高い温度に昇温させて部分融解さ
    せ、以後この凍結−部分融解サイクルを複数回繰り返し
    た後、該酒類発酵液の混濁量を測定することを特徴とす
    る酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方法。
  2. 【請求項2】 凍結−部分融解サイクルにおける最初の
    凍結と部分融解が、過冷却状態から凍結に転移する温度
    以下での凍結と、その凍結に転移する温度より高い温度
    に昇温させての部分融解であることを特徴とする請求項
    1記載の酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方法
  3. 【請求項3】 凍結までの冷却を徐々に行うことを特徴
    とする請求項1又は2記載の酒類発酵液の凍結混濁能を
    予測する方法。
  4. 【請求項4】 凍結させる温度及び部分融解させる温度
    をあらかじめ一定値に設定して、凍結−部分融解サイク
    ルを複数回繰り返すことを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか記載の酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方法。
  5. 【請求項5】 凍結−部分融解サイクルの繰り返しの回
    数が、3〜10回であることを特徴とする請求項1〜4
    のいずれか記載の酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方
    法。
  6. 【請求項6】 凍結−部分融解サイクルの周期が、1日
    であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の
    酒類発酵液の凍結混濁能を予測する方法。
  7. 【請求項7】 酒類発酵液が、容器に充填された熟成後
    のビール又は発泡酒であることを特徴とする請求項1〜
    6のいずれか記載の酒類発酵液の凍結混濁能を予測法。
  8. 【請求項8】 酒類発酵液を冷却して凍結させた後、そ
    の凍結する温度より高い温度に昇温させて部分融解さ
    せ、以後この凍結−部分融解サイクルを複数回繰り返す
    ことを特徴とする酒類発酵液の凍結混濁物の濃縮方法。
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